JP3591578B2 - 音響放射体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、板状の発音体を備えスピーカ等として使用される音響放射体に関する。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】
従来、板状の発音体を備えた音響放射体としては、種々の平板スピーカが提案されている。平板スピーカに関しては、板状体の端部を実質的に単純支持し或いは固定支持した上で、その板状体の中央部付近を一点あるいは複数点で集中的に加振する方式が数多く提案されている。ここで、単純支持とは、板状体を支持するに当たり板状体との接触部において板状体厚さ方向への変位を制止し回転を許容する支持形態をいい、固定支持とは、板状体を支持するに当たり板状体との接触部において板状体厚さ方向への変位及び回転の双方を制止する支持形態をいう。
【0003】
しかしながら、従来の平板スピーカは、振動板としてカーボンクロス等の振動特性の優れたものを用い、中央部付近の集中的加振により、分割振動を抑え振動板をできるだけ一体に振動させるというものが多かった(例えば、特公昭42−10890号、特公昭47−6974号、特開平10−243491号各公報等)。すなわち、一体的振動に適した高振動特性の材質を前提にして、コーン型等の立体形スピーカに匹敵する音質を得ることを開発の中心とし、広範な材質への適用はあまり考慮されていなかった。
【0004】
平板スピーカの中には、振動板の分割振動を積極的に利用しようとするものもある。しかしながら、従来の平板スピーカは、前述のように板状体を実質的に単純支持し或いは固定支持したものであったので、駆動周波数に応じて分割モードが相違し、その結果、音響放射効率が大きく異なり、放射音の周波数特性は著しく不均一なものとなっていた。これについては、Maidanikらの研究、及びC. E.Wallace の研究が知られている。C. E. Wallace は、論文「Radiation Resistance of a Rectangular Panel」(JASA. Vol.51-No.3)において、無限大バッフル板に単純支持された矩形の有限大パネルを対象とし、分割振動モードでの遠方音場への音響放射を理論解析している。これによると、周辺部を単純支持した矩形板を駆動したときに、縦方向及び横方向に現れるモードの数により、音響放射効率が異なることが示されている。すなわち、矩形板の縦(又は横)方向及び横(又は縦方向)に現れるモードの数により、奇数-奇数モード、奇数-偶数モード、偶数-偶数モードに分ける。そうすると、奇数-奇数モードが最も放射効率が高く、偶数-偶数モードのときに最も大きなキャンセレーション(隣接モード間での疎密波放射エネルギの打ち消し合い)が発生し、放射効率が低くなることが示されている。図19は、正方形板についてモードタイプと放射効率との関係を表したグラフである。このグラフから、1-1モード(奇数-奇数モード)が最も放射効率が高く、2-2モード(偶数-偶数モード)のときに最も放射効率が低くなることが明らかである。このように、分割振動のモードにより音響放射効率が大きく異なるので、放射音の周波数特性は著しく不均一なものとなっていたのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、広範な材質の板状体を使用することができ周波数に対する均一性に優れた音響放射特性を実現し得る音響放射体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、音響放射のための駆動周波数帯域において弾性体特性を呈する板状体と、該板状体の周辺部が実質上自由振動可能な状態となるようにして該板状体を支持する支持部と、前記板状体への周辺部駆動により音響放射を行なわせるように該板状体の周辺部に沿って配設されて当該板状体を加振する駆動部とを備え、前記板状体が、前記支持部を構成する紐により吊り下げられていることを特徴とする音響放射体により達成される。
【0007】
また、本発明の上記目的は、音響放射のための駆動周波数帯域において弾性体特性を呈する板状体と、該板状体の周辺部が実質上自由振動可能な状態となるようにして該板状体を支持する支持部と、前記板状体への周辺部駆動により音響放射を行なわせるように該板状体の周辺部に沿って配設されて当該板状体を加振する駆動部とを備え、該駆動部が、前記板状体の面に沿う方向に、該板状体を加振するように配設されていることを特徴とする音響放射体により達成される。
【0008】
前記駆動部は、板状体の縁端から中心までの距離の1/2以内の端縁側領域に配設されているのが望ましい。
【0009】
前記板状体は、少なくとも中央部が透明に構成されることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下に示す複数の実施形態においては同一乃至同種の部分には、同一参照符号を付してその説明を省略することがある。
【0011】
図1及び図2は、本発明の1実施形態に係る音響放射体を示している。この音響放射体は、平板(以下の説明において、板状体が平面状の場合には「平板」と記す)1の裏面に点状駆動部2aが間隔をおいて取り付けられ、支持部3によって壁Wに吊り下げられたものである。
【0012】
本発明においては、駆動部の特有の配置により、後述するように広い周波数帯域に亘って良好な音響放射効率を得ることができるので、平板1には、種々の材質のものを使用でき、例えば、アクリル等のプラスチック板、ガラス板、金属板、木製板等を使用することができる。なお、この例のように、板状体を平面状の平板とする他、円柱、球、円錐等の一部をなす曲面等、種々の形態の板体とすることができる。また、外形も、矩形の他、円形、楕円形、多角形等、種々の形状とすることができる。
【0013】
駆動部2aは、この例では駆動源20と該駆動源から平板1に延びる伝達部材21とを備えている。駆動源20としては、圧電型、動電型、電磁型、静電型等の種々のタイプのアクチュエータを使用することができる。但し、多数の駆動箇所に設けることができるよう、小型で高出力のものが望ましく、圧電型や動電型のコンパクトなものが望ましい。或いは、そのような点状駆動源に代えて、後述する例のような線状駆動源を使用することもできる。伝達部材21は、接着、ねじ止め等により、一端を駆動源20の振動板に結合され、他端を平板1の裏面に結合されている。伝達部材21は、軽量で剛性の高いロッド状のものが望ましく、例えば、樹脂製、金属製、木製製のもの等とすることができる。なお、図1及び図2、並びに以下に説明する実施形態の図においては、駆動部への配線が省略されている。
【0014】
駆動部2aは、平板1への周辺部駆動により音響放射を行なわせるように該平板の周辺部に沿って複数配設されている。平板1は、点在する駆動部2aの位置でその面に垂直に加振される。図において、矢印Dは、駆動部2aの駆動方向を示している。この加振位置は、板状体の縁端から中心までの距離の1/2以内の端縁側領域で行なわれるのが望ましい。この加振位置の望ましい範囲は、以下の実施形態においても同様である。望ましい加振位置についての詳細は、後述する。
【0015】
駆動源20は、振動板と、これを自由に振動するように支持するフレームとを備えている。望ましくは、フレームには質量体Mが結合され、これにより該質量体Mが慣性質量として働き、振動板の加振力を外部へ放出し易くする。
【0016】
この例では、平板1を吊り下げる支持部3は、壁Wから壁面に垂直に延びる吊り下げ棒30と該吊り下げ棒30の先端部と平板1の上端部とに結合された紐31とからなる。紐31は、吊り下げ棒30先端部及び平板1上端部に各々形成された貫通孔を通してこれらに結合されている。すなわち、平板1は、支持部を構成する紐31により、吊り下げ棒30に吊り下げられている。さらにこの例では、平板1の下端部は、保持部4により、平板1が壁Wの面に平行になるように姿勢を保持されている。保持部4は、支持部3と同様に、壁Wから壁面に垂直に延びる保持棒40と該保持棒の先端部と平板1の下端部とに結合された紐41とからなる。紐41は、保持棒40先端部及び平板1下端部に各々形成された貫通孔を通してこれらに結合されている。この吊り下げ支持により、発音体である平板1は、周辺部を実質上自由振動可能な状態で支持されている。
【0017】
なお、支持部3及び保持部4と平板1との結合部を図1の破線で示すように平板1の中央寄りとすることにより、平板周辺部の自由振動をより促進することができる。また、保持部4は、平板1の支持上必ずしも必要とされるものではなく、平板が壁面に対して傾いてもよい場合は単に保持部4を省略すればよく、駆動部2aとのバランスをとるように支持部3の支持位置を調整したり、バランス用錘を平板等に付着することにより保持部4を省略することもできる。
【0018】
駆動部は、図3に示すように、伝達部材21と平板1との間に伝達用ビーム22を介在させた駆動部2bとすることもできる。この場合、伝達部材21は、接着、ねじ止め等によりビーム22に結合され、ビーム22は、接着剤等により平板と結合される。これにより、平板1は、周辺部を線状の加振部により加振される。
【0019】
図4は、さらに他の形態の支持部を備えた音響放射体を示している。この支持部6は、平板1の背面から延びる支持片60と、壁等に取り付けられる吊り下げ棒61と、吊り下げ棒61の先端部と支持片60とを繋ぐ紐62とを備えている。支持片60における紐62の結合位置は、平板1及び駆動部2aの全質量(他の部材が付加される場合はそれをも含めた質量)の重心を通り且つ平板1に平行な面内に設けるのが望ましい。これにより、平板1を鉛直面に沿って支持することができる。この場合、平板1の振動への抵抗をできるだけ小さくするために支持部の数を少なくするのが望ましい。そのためには、支持片60と紐62との結合位置を前記重心を通る水平面より上にすることが望ましく、これにより、平板及び駆動部の全質量(他の部材が付加される場合はそれをも含めた質量)を、その重心より上で吊すこととなり、支持片60は平板1の1箇所又は2箇所に設けるだけで済む。また、支持片60は、平板1の周辺部の自由振動を促進するために、平板1の中央寄りに設けるのが望ましい。尤も、支持部は、平板1の大きさや形状により適宜の数を設けることができる。
【0020】
図5及び図6は、駆動部2cが、線状の駆動源23と、ロッド状の伝達部材21とにより構成されている例を示している。この線状の駆動源23としては、動電素子、圧電素子、折り重ねた圧電フィルム等を使用することができる。駆動源23は、振動板と、これを自由に振動するように支持するフレームとを備えている。前の例と同様、望ましくは、フレームには質量体が結合され、これにより該質量体が慣性質量として働き、振動板の加振力を外部へ放出し易くする。伝達部材21は、駆動源23の振動部分及び平板1に対し、接着、ねじ止め等により結合されている。
【0021】
なお、図示の例では、一体に連続した駆動源又は駆動部となっているが、線状駆動源の一部を長手方向に分離する等により、複数の駆動部とすることもできる。この場合は、複数の駆動部に共通の駆動信号を入力してもよいが、後述するように、複チャンネルの相互に異なる駆動信号を入力することもできる。
【0022】
図7は、駆動部2eとして、線状駆動源23’、伝達部材21’、及び支持枠25’を備えた音響放射体の例を示している。線状駆動源23’は、前述の線状駆動源23と同様の構成を備えているが、この例では、駆動方向D’が平板1の面に沿う方向となるように配置されている。駆動源23’は、振動部分を接着剤により平板1に結合されており、駆動源23’のフレーム部分(振動部分を囲む部分)は、接着により、筐体を兼ねた板状の支持枠25’に結合されている。伝達部材21’も前述の伝達部材21と同様のものであるが、駆動源の駆動方向に対応して、線状駆動源23’の振動部分から平板1に沿って延び平板1の縦横縁部に垂直に当接して結合されている。支持枠25’は、線状駆動源23’を囲む枠部分と該枠部分の後端縁から平板1の背面を覆うように延びる面部分とを備えた筺体となっている。この例では、線状駆動源23’は、矩形平板1の各辺に沿って1本ずつ計4本設けられている。この他、2本以上に分割された線状駆動源を平板の1辺に設け、或いは平板の形状に応じた配置とする等、必要に応じて適宜の本数の線状駆動源を設けることができる。駆動源23’は、平板1をその面に沿う方向に加振する。これにより、平板1は、その厚さ方向にも振動して音響を放射する。特に、平らな平板1に代えて、湾曲した曲面をなす板状体を使用した場合は、面に沿う方向への加振により、板状体の曲面形状が変化して厚さ方向の振動を生じやすい。この音響放射体を壁等に固定するには、図7に示したように、支持枠25’を、支持部3を構成する紐31により、吊り下げ棒30に吊り下げる手段を用いることができる。この例においても、支持枠25’は、或る程度大きな質量を備えることにより慣性質量として働き、駆動源23’の加振力を外部へ放出し易くしている。
【0023】
本発明の効果を明らかにするために、縦300mm、横450mm、厚さ5mmのアクリル製平板を発音体として、放射音の周波数特性のシミュレーション解析を行なった。以下、これについて説明する。
【0024】
先ず、板の支持条件についての解析をした。その支持条件は、次の2種類とした。
(a) 周辺部を固定支持する。
(b) 図1に示すように板を紐で吊し、周辺部が実質上自由振動可能な状態となるように支持する。
【0025】
いずれの場合も、加振は、アクリル製平板の周縁から20mm内側の位置で周縁に平行に延びる線状駆動部によって行なうものとした。また、振動−音響の連成系における50〜800Hzの周波数帯域での解析とし、無限大バッフル付きの構造という設定とした。
【0026】
上記(a)の支持条件での解析により、図8のグラフに示す結果を得た。このグラフから明らかなように、(1,1)、(3,1)、(1,3)、(5,1)、(3,3)という低次の奇数−奇数モードでの放射音の音圧レベルが大きなピークを生じる現象が明確に現れている。また、板から1m及び2mの各地点でほぼ同じ傾向となっているので、この特性は遠方音源での周波数特性とみなすことができる。
【0027】
次に、上記(b)の支持条件での解析により、図9のグラフに示す結果を得た。このグラフから明らかなように、周辺部を自由振動可能にした場合は、放射される音のエネルギーは上記(a)の場合のピーク値より20dB程度低くなるが、周波数特性はほぼ平坦である。この場合も板から1m及び2mの各地点でほぼ同じ傾向となっているので、この特性は遠方音場での周波数特性とみなすことができる。この結果から、加振源の周波数特性がフラットであれば、放射される音に際だったピーク及びディップは現れ難い傾向を示すと言える。
【0028】
次に、板の加振位置の影響についての解析をした。その加振条件は、図10に概略的に示す次の3種類とした(図中、Pが加振点又は加振線)。
(p)板中央部を加振する(図10 (1))。
(q)板周辺部を複数点で加振する(図10 (2))。
(r)板周辺部を全体に亘って線状駆動部で加振する(図10 (3))。
【0029】
いずれの場合も、アクリル製平板は、図1に示すように紐で吊し、周辺部が実質上自由振動可能な状態となるように支持した。また、振動−音響の連成系における50〜800Hzの周波数帯域での解析とし、無限大バッフル付きの構造という設定とした。
【0030】
上記(p)、(q)、(r)の各加振位置での解析により、図11、図12、図13のグラフに示す結果を得た。図11では、約225,525Hzに大きなピークがあり、約95,185,575Hzに大きなディップがある。これに対し、図12のグラフでは、約575Hzに大きなピーク、約525Hzに大きなディップがある以外は、多少の凹凸はあっても大きなピーク、ディップはない。また、図13のグラフでは、約95,525,575Hzに大きなピークがある以外は、多少の凹凸はあっても大きなピーク、ディップはない。
【0031】
このように、図12及び図13のグラフは、図11のグラフに比べて平坦化されている。これらの結果は、以下の理由によるものと考えられる。周辺部が自由振動可能となるように支持された板状体の板全面を、同時に同相で面加振した場合には、板は全体が一体的に振動(いわゆる剛体としてのピストン運動)をし、弾性板としての性質(屈曲振動)は現れ難い。ここで、加振点を減らしていくと、次第に板状体の固有振動の影響が現れることになる。周辺部が自由振動可能な板状体の固有振動モードにおいては、板の周縁が振動の腹(ループ)の状態で振動する。板状体の加振点を減らして中央部分で加振した場合は、この固有振動モードの影響が大きく現れ、周波数特性曲線では固有振動数で音圧のピークが顕在化する。一方、板状体の周辺部で加振した場合には、板状体周縁の振動が加振箇所自体により制御され、その結果、固有振動モードの発生が抑制される。したがって、板状体周辺部で印加される加振力の変化に対する振動速度の変化も滑らかとなり、放射音の周波数特性が平坦化する傾向を示す。すなわち、板状体周辺部の固有振動の腹となる箇所を加振することにより、固有振動モードの発生を抑えることができる。例えば、図14の(c)に示す固有振動モードにおいて、板状体両端部での振動の腹の発生を抑制するために加振箇所とすべき位置は、そのモードが現れる板状体の長さの1/8よりも端縁側ということになる。同図(b)に示す固有振動モードでは、そのモードが現れる板状体の長さの1/6よりも端縁側ということになる。そして、最も低い周波数での振動姿態を考えた場合は、同図(a)に示すように、そのモードが現れる板状体の長さの1/4よりも端縁側ということになる。言い換えれば、最も低い固有振動周波数でのピークの発生を抑制するためには、板状体の端縁から中心までの距離の1/2以内の端縁側領域で加振すればよいことになる。なお、自由振動可能な支持に起因して、エッジ部付近に大きな振幅が現れるモードを生じることがあっても、そのレベルはイコライザ等での制御が可能な範囲である。
【0032】
このアクリル製板を用いた支持条件及び加振位置に関する解析から明かなように、発音体を駆動周波数帯域において弾性体特性を呈する板とし、板状体の周辺部を実質上自由振動可能な状態で支持し、板の周辺部駆動により音響放射を行なわせるようにすれば、著しいピーク及びディップがなく平坦化された周波数特性をもつ音響放射体を得ることができるのである。
【0033】
図8から図13に示した解析では、全ての駆動部を1種類の駆動信号で駆動したが、複チャンネル化された音源等の異なる種類の駆動信号を駆動部に入力することもでき、複数種の駆動信号により音像定位等の三次元音場再生効果を得ることもできる。図15及び図16は、そのような駆動信号の入力機能を持たせた音響放射体の例を示している。図15は、前述の例と同様の平板1の背面における周辺部上下左右の領域に線状の駆動部80T、80B、80L、80Rを取り付けたものである。これらの線状駆動部は、図5、図7に示したもの等、種々の形態とすることができるが、各領域間で異なる駆動信号を受け得るように領域毎に分割されている。駆動部への入力部(図示せず)は、各駆動部に接続され各々を独立して駆動するようになっている。
【0034】
図16は、円形の平板1”の背面の周辺部において上下左右及びその中間の左上、右上、左下、左上の領域に8個の駆動部81T、81B、81L、81R、81LT、81RT、81LB、81RBを取り付けたものである。これらの駆動部は、図1〜4に示したもの等、種々の形態とすることができる。これらの駆動部の各々に入力部(図示せず)が設けられ、相互間で異なる駆動信号を受けて独立して駆動されるようになっている。すなわち、8チャネルの駆動信号を受け得るようになっている。
【0035】
なお、図15及び図16の例において、各領域に複数の駆動部を設けることも可能である。この場合は、1つの領域内の複数の駆動部に共通の入力線が接続される等により、領域内では共通し且つ領域相互間では異なる駆動信号を受けるように、入力部が配設される。
【0036】
本願発明においては、以上のように、板状体の周辺部に駆動部を配置するので、板状体の中央部に駆動部を設ける必要はない。したがって、映像再生に伴う音声再生などの場合には、この中央部分を透明にして、映像再生エリアとし利用することが可能となる。例えば、テレビジョンのCRT画面の前面に、樹脂・ガラス等の透明な板状体を備えた音響放射体を設けることにより、板状体背後の映像を透過させ、音響放射を重ねることが可能となる。この構成によれば、周辺両側部からの音響放射により、駆動部の存在しない画面中央にも音源が存在し音響放射があるように聴き取られ、実施上、画面中央から前方に向けて十分な指向性が確保され、テレビジョン画面の内側に音像を定位させることが可能となる。
【0037】
また、本発明によれば、複数の駆動源を生かして、一点毎の入力が小さくても全体として大きな出力の音響放射体とすることができるので、駆動源の駆動効率を高くすることができる。
【0038】
図17及び図18は、本発明に係る音響放射体の種々の適用例を示している。図17(a)及び(b)は壁掛け型のスピーカであり、音響放射体A1,A2が、吊り紐Rにより壁に掛けられるようになっている。図17(c)は、卓上型のスピーカであり、音響放射体A3が支持台Pにより立てられるようになっている。図18(a)、(b)は、各々テレビ及びパーソナルコンピュータへの適用例であり、音響放射体A4、A5が、各々テレビ及びパーソナルコンピュータのCRTを覆うように取り付けられる。図18(c)は、音響放射体A6が冷蔵庫の扉に取り付けられる例を示している。
【0039】
このように以上に記載した利点を生かして、本発明に係る音響放射体は、以下のような種々の用途におけるスピーカ等の音響放射体として使用することができる。
【0040】
オーディオ製品、携帯情報機器、パーソナルコンピュータ、テレビ、音響発生効果を有する床、発音機能付スクリーン、発音機能付きポスター、宣伝用ディスプレイ、宣伝用ウインドウシステム、楽器発音体(響板、譜面台)、家具、玩具、自動車、ホール、舞台床、補聴器。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、音響放射のための駆動周波数帯域において弾性体特性を呈する板状体と、該板状体の周辺部が実質上自由振動可能な状態となるようにして該板状体を支持する支持部と、前記板状体への周辺部駆動により音響放射を行なわせるように該板状体の周辺部に沿って配設されて当該板状体を加振する駆動部とを備えているので、周辺部での加振により板状体端部の振動が制御され、その結果、固有振動モードの発生が抑制され、放射音の周波数特性が平坦化傾向を示す。したがって、広い周波数帯域に亘って均一化された効率で音響放射を行なうことができる。また、このように均一化された周波数特性を得やすい結果、音響放射体に広範な材質の板状体を適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態に係る音響放射体の正面図である。
【図2】図1に示す音響放射体の側面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る音響放射体の側面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態に係る音響放射体の側面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態に係る音響放射体の正面図である。
【図6】図5に示す音響放射体の側面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態に係る音響放射体の正面図である。
【図8】従来の音響放射体の音響特性を示すグラフである。
【図9】本発明に係る音響放射体の例の音響特性を示すグラフである。
【図10】板状体の駆動形態の説明図である。
【図11】従来の音響放射体の音響特性を示すグラフである。
【図12】本発明に係る音響放射体の例の音響特性を示すグラフである。
【図13】本発明に係る音響放射体の例の音響特性を示すグラフである。
【図14】板状体の振動形態の説明図である。
【図15】本発明のさらに他の実施形態に係る音響放射体の正面図である。
【図16】本発明のさらに他の実施形態に係る音響放射体の正面図である。
【図17】本発明の適用例を示す図である。
【図18】本発明の適用例を示す図である。
【図19】モードタイプと放射効率との関係を表したグラフである。
【符号の説明】
1、1 ':板状体(平板)、 2a,2b,2e:駆動部、 3,6:支持部、20,23,23',80B,80L,80R,80T、81B、81L、81LB、81LT、81R、81RB、81RT、81T:駆動源、 21,21':伝達部材、 A1〜A3:音響放射体
Claims (5)
- 音響放射のための駆動周波数帯域において弾性体特性を呈する板状体と、該板状体の周辺部が実質上自由振動可能な状態となるようにして該板状体を支持する支持部と、前記板状体への周辺部駆動により音響放射を行なわせるように該板状体の周辺部に沿って配設されて当該板状体を加振する駆動部とを備え、前記板状体が、前記支持部を構成する紐により吊り下げられていることを特徴とする音響放射体。
- 音響放射のための駆動周波数帯域において弾性体特性を呈する板状体と、該板状体の周辺部が実質上自由振動可能な状態となるようにして該板状体を支持する支持部と、前記板状体への周辺部駆動により音響放射を行なわせるように該板状体の周辺部に沿って配設されて当該板状体を加振する駆動部とを備え、該駆動部が、前記板状体の面に沿う方向に、該板状体を加振するように配設されていることを特徴とする音響放射体。
- 前記駆動部が、前記板状体の縁端から中心までの距離の1/2以内の端縁側領域に配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の音響放射体。
- 前記板状体が、少なくとも中央部が透明に構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載の音響放射体。
- 複数の前記駆動部を備え、前記駆動部が前記板状体における複数の領域に配置されており、少なくとも2つの領域において、領域内の駆動部間では共通し領域相互間では異なる駆動信号を受け得るように、入力部が配設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載の音響放射体。
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