JP3591338B2 - ジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの新規な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
α−オレフィンを、マグネシウム、チタン、ハロゲン、そして電子供与体(内部電子供与体)を含む固体触媒成分、有機アルミニウム化合物成分そして外部電子供与体からなる触媒組成物の存在下にて重合してα−オレフィン重合体を製造する技術は以前より良く知られている。そして、α−オレフィンの重合によって生成するα−オレフィン重合体の立体規則性を高めるために、補助触媒成分としてアミノシラン化合物を用いることが有効であることが近年の研究によって明らかにされており、そのような効果を示すアミノシラン化合物については、数多くの提案がある。例えば、特開平3−74393号、同7−118320号、同7−173212号そして同8−100019号の各公報には、α−オレフィンの重合用の補助触媒成分として有効なアルキル(炭化水素アミノ)ジアルコキシシランが記載されている。
【0003】
特開平8−120021号公報および同8−143621号公報には、環状アミノ基を含有するアミノシラン化合物であるモノ(環状アミノ)アルキルアルコキシシランあるいはジ(環状アミノ)ジアルコキシシラン化合物を用いるα−オレフィンの重合方法が開示されている。
【0004】
アミノシラン化合物の合成法としては、有機リチウム化合物とアミンとの反応で得られるリチウムアミドとアルキル(トリアルコキシ)シランとの反応が特開平3−74393号公報に記載されている。
【0005】
前記の特開平8−120021号公報には、第二級環状アミン化合物とハロゲン化ケイ素化合物或はSi−O結合含有ケイ素化合物との反応によってモノ(環状アミノ)アルキルアルコキシシラン化合物を得る方法が記載されている。
【0006】
前記の特開平8−143621号公報には、第二級環状アミン化合物とハロゲン化ケイ素化合物との反応、あるいは第二級環状アミン化合物のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩とテトラアルコキシシランとの反応によって、ジ(環状アミノ)ジアルコキシシラン化合物を得る方法が記載されている。
【0007】
特開平9−67379号公報には、ジアルキルアミンとブチルリチウムとを反応させて得たリチウムアミドとテトラアルコキシシランとの反応、あるいはテトラアルコキシシランをジエチルアミドマグネシウムクロリドなどのグリニヤール試薬とジエチルエーテル中で反応させてジアミノアルコキシシランを製造する方法が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
最近、本願発明者等の研究により、マグネシウム、チタン、ハロゲン、そして内部電子供与体を含む固体触媒成分、有機アルミニウム化合物成分そして外部電子供与体からなる触媒組成物の存在下にてα−オレフィンを重合させてα−オレフィン重合体を製造するに際して、補助触媒成分としてジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランを用いることにより、高度の立体規則性を持ち、かつ広い分子量分布を有するα−オレフィン重合体が得られることが判明した(特願平8−294231号明細書およびその国内優先出願である特願平9−300579号明細書(特開平10−218926号公報)。
【0009】
上記の特願平8−294231号明細書には、ジ(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランを製造する方法として、パーヒドロイソキノリンとブチルリチウムとを反応させて得たパーヒドロイソキノリンのリチウム塩とテトラメトキシシランとの反応を利用する方法が記載されている。
【0010】
上記のブチルリチウムを原料として用いるジ(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランの製造法は、ブチルリチウムが発火性を持つことから、その取り扱いに特別な注意を必要とするという欠点がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、RMgX(ただし、Rは炭化水素基、そしてXはシグマ結合性の配位子である。)で示される有機マグネシウム化合物と第2級多環状アミンとをエーテル溶媒中で反応させてマグネシウム多環状アミド化合物を得たのち、このマグネシウム多環状アミド化合物とテトラアルコキシシランとをエーテル溶媒と不活性炭化水素溶媒との混合溶媒中で反応させることを特徴とするジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法にある。
【0012】
すなわち、本発明は、有機マグネシウム化合物(RMgX)と第2級多環状アミンとを反応させて多環状アミノ基を持つ多環状アミドマグネシウム化合物を製造(第一工程)し、次いでこの多環状アミドマグネシウム化合物とテトラアルコキシシアンとを反応(第二工程)させることからなる新規なジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法にある。但し、本発明のジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法における有機マグネシウム化合物と第2級多環状アミンとの反応(第一工程)は、エーテル溶媒中で、そして多環状アミドマグネシウム化合物とテトラアルコキシシランとの反応(第二工程)は、エーテル溶媒と不活性炭化水素溶媒との混合溶媒中で行なう必要がある。この第二工程の実施の際に、エーテル溶媒あるいは不活性炭化水素溶媒のいずれか一方のみを用いると、目的化合物のジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの分離が容易ではなく、収率も低下するため、工業的な製法としては不利となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のRMgXで示される有機マグネシウム化合物において、Rは炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜24の炭化水素基であり、その例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、フェニル、ベンジルなどの基を挙げることができる。
【0014】
Xは、シグマ結合性の配位子であり、その例としては、ハロゲン、炭化水素オキシ、炭化水素アミド、カルボキシなどを挙げることができる。
【0015】
RMgXで表わされる有機マグネシウム化合物の例としては、アルキルマグネシウムクロライド、アルキルマグネシウムブロマイド、アルキルマグネシウムアイオダイド、アルキルマグネシウムメトキサイド、アルキルマグネシウムエトキサイド、アルキルマグネシウムイソプロポキサイド、アルキルマグネシウムブトキサイド(アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル及びオクチルなど)等を挙げることができる。
【0016】
通常の有機マグネシウム化合物は、エーテル溶液として安定に存在するため、製造時、あるいは、保存時にはエーテル溶液として保存されることが多い。エーテル溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテルなどのジアルキルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エーテル等が挙げられる。
【0017】
本発明において、有機マグネシウム化合物と第2級多環状アミンとの反応(第一工程)は、エーテル溶媒中で行なわれる。この反応溶媒として用いられるエーテル溶媒の例としては、上記の保存用に用いられる各種エーテル溶媒と同様なエーテル溶媒を挙げることができる。反応溶媒としては、特にイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル溶媒とテトラヒドロフランなどの環状エーテルとを組み合わせて用いることが好ましい。この場合の好ましい割合(体積比)は、ジアルキルエーテル:環状エーテル=20:1〜1:1である。なお、この反応用のエーテル溶媒の使用に際しては、後述する不活性炭化水素溶媒を併用してもよい。
【0018】
本発明において、第二工程では、第一工程で得られる多環状アミドマグネシウム化合物とテトラアルコキシシランとを反応させるが、この第二工程の反応は、エーテル溶媒と不活性炭化水素溶媒との混合溶媒中で行なう必要がある。本発明に於ける多環状アミどマグネシウム化合物の製造の際に、エーテル溶媒あるいは不活性炭化水素溶媒のいずれか一方のみを用いると、反応混合物からの目的化合物のジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの分離回収が困難になり、収率が低下するため、工業的な製法としては不利となる。エーテル溶媒と不活性炭化水素溶媒を混合溶媒として用いる場合の混合割合(容量比)は、エーテル溶媒:不活性炭化水素溶媒=1:10〜1:0.5(前者:後者)の範囲、特に1:5〜1:0.5の範囲にあることが好ましい。
【0019】
第二工程のエーテル溶媒としては、第一工程の反応溶媒として用いられたエーテル溶媒をそのまま用いてもよく、あるいはエーテル溶媒を追加したり、交換してもよい。
【0020】
エーテル溶媒と併用して用いられる不活性炭化水素溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ミネラルオイル、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。特に好ましいのは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの低沸点炭化水素溶媒である。
【0021】
本発明で用いる第2級多環状アミンとしては、パーヒドロ第2級多環状アミンが好ましい。パーヒドロ第2級多環状アミンの具体例としては、パーヒドロインドール、パーヒドロイソインドール、パーヒドロキノリン、パーヒドロイソキノリン、パーヒドロカルバゾール、パーヒドロイミノスチルベン、パーヒドロアクリジン、及びパーヒドロベンゾ[f]キノリン、パーヒドロベンゾ[g]キノリン、パーヒドロベンゾ[g]イソキノリン、パーヒドロフェナントリジンのようなシクロヘキシル環が縮合したアミン化合物、さらにはこれらのアミン化合物の炭素原子に結合している水素原子の一部がアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基で置換されたアミン化合物を挙げることができる。本発明で用いる第2級多環状アミンとして特に好ましい化合物は、パーヒドロインドール、パーヒドロイソインドール、パーヒドロキノリン、パーヒドロイソキノリンおよびそれらの置換誘導体、シス、トランス異性体である。
【0022】
なおアミン類は一般的に吸水性があるが、本発明の反応で用いる第2級多環状アミンの水含有量は、通常は1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.03重量%以下とする。また、一般にアミン類は酸素の存在下で酸化され易く、着色の原因になるので、本発明の第一工程の反応に使用する前に反応系における溶存酸素は窒素などの不活性ガスで置換、脱酸素されていることが好ましい。
【0023】
本発明において用いるテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、それらの混合物などが挙げられる。特に好ましいのはテトラメトキシシランである。
【0024】
第一工程の有機マグネシウム化合物と第2級多環状アミンとの反応において、各成分の接触は、通常−30℃〜100℃、好ましくは−10℃〜80℃、の温度で、1〜360分かけて行うことができる。各成分の使用量は、反応時間を短くするためには、第2級多環状アミン/有機マグネシウム化合物のモル比で、通常20〜0.05、好ましくは3〜0.1、特に好ましくは1〜0.5である。各成分の接触順序は特に限定されない。
【0025】
第一工程の有機マグネシウム化合物と第2級多環状アミンとの反応により、多環状アミドマグネシウム化合物(或は、多環状アミノマグネシウム化合物と呼ぶこともできる)が得られる。多環状アミドマグネシウム化合物の例としては、パーヒドロ多環状アミドマグネシウムが挙げられる。
【0026】
第二工程の多環状アミドマグネシウム化合物とテトラアルコキシシランとの反応によって、本発明の目的化合物であるジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランが生成する。この反応では、所望の反応生成物[ジ(多環状アミノ)ジアルコキシシラン]以外に、マグネシウムアルコキシ化合物が副生する。従って、この副生物のマグネシウムアルコキシ化合物を不溶性の固体生成物として濾過あるいは遠心分離し、残りの反応溶液からジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランを、蒸留などの方法で単離することが好ましい。
【0027】
上記の反応において、各成分の接触順序は特に限定されないが、多環状アミドマグネシウム化合物にテトラアルコキシシランを添加することが好ましい。各反応成分の接触は、通常−20℃〜140℃、好ましくは0℃〜100℃にて、1〜600分行なわれる。各成分の使用量は、多環状アミドマグネシウム化合物/テトラアルコキシシランのモル比で、通常20〜0.1、好ましくは5〜0.5である。反応時間を短くするためには上記モル比を1以上にすることが好ましいが、この場合には、未反応の多環状アミドマグネシウム化合物の損失が大きくなることから、多環状アミドマグネシウム化合物が高価である場合には製造費が高くなるという欠点がある。従って、多環状アミドマグネシウム化合物の損失を避けるためには、未反応の多環状アミドマグネシウム化合物が残存しないようにモル比を1未満となるような条件で反応成分の仕込を行なうことが好ましい。この場合には、副生成物として生成する多環状アミノトリアルコキシシランを分離回収して、これを、新たに導入する多環状アミドマグネシウム化合物と反応させてジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランに変換することができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒の存在下でのα−オレフィンの重合により、高度の立体規則性を持ち、かつ広い分子量分布を有するα−オレフィン重合体を製造するための有効な補助触媒成分であるジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランを、取り扱いが容易な原料を用いて、高い収量で製造することができる。
【0029】
【実施例】
[実施例1]
滴下ロートを備えた容量1000mLのガラスフィルター付きフラスコ内にスターラーピースを入れ、真空ポンプを用いてフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内に、テトラヒドロフランを100mL、n−ヘプタン300mL、そしてパーヒドロイソキノリン(トランス/シス=1/3.2)53.7g(0.36モル)を入れた。滴下ロートには1.68モル/Lのブチルマグネシウムクロライドのイソプロピルエーテル溶液220mL(0.42モル)を入れた。室温下でブチルマグネシウムクロライドのイソプロピルエーテル溶液をフラスコ内にゆっくりと滴下した後、室温にて1時間、更に60℃にて3時間攪拌を行ない、反応溶液を得た。次に、空になった滴下ロートにテトラメトキシシラン27.4g(0.18モル)を入れた。室温下でテトラメトキシシランをフラスコ内の反応溶液にゆっくりと滴下した後、60℃にて3時間、更に80℃にて8時間攪拌を行った。この間、テトラヒドロフランとイソプロピルエーテル混合溶媒を200mLほど留去し、二回に分けて200mLのn−ヘプタンを追加した。反応で生成したメトキシマグネシウムクロライドの固体を濾過分離し、ろ液を蒸留して、目的物であるジ(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン(トランス−トランス、トランス−シス、シス−シス異性体は約6/36/58)を得た。沸点は181℃/lmmHgであり、ガスクロマトグラフィーにおける純度は96.6%、収量は90.7%であった。
【0030】
[実施例2]
テトラヒドロフランの使用量を200mLに、n−ヘプタンの使用量を250mLに変えた以外は実施例1と同様に反応を行った。ろ液を蒸留して目的物であるジ(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランを得た。沸点は181℃/lmmHgであり、ガスクロマトグラフィーにおける純度は96.1%で、収量は90.2%であった。
【0031】
[比較例1]
テトラヒドロフランを使用せず、n−ヘプタンの使用量を450mLに変えた以外は実施例1と同様に反応を行った。ろ液を蒸留して目的物であるジ(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランを得た。沸点は181℃/lmmHgであり、ガスクロマトグラフィーにおける純度は95.9%で、収量は82.5%であった。
【0032】
[比較例2]
n−ヘプタンを使用せず、テトラヒドロフランの使用量を450mLに変えた以外は実施例1と同様に反応を行った。反応で生成したメトキシマグネシウムクロライドの固体を含む反応混合物にn−ヘプタン300mLを加えてから、固体を濾過分離し、ろ液を蒸留して目的物であるジ(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランを得た。沸点は181℃/lmmHgであり、ガスクロマトグラフィーにおける純度は95.5%で、収量は85.3%であった。
【0033】
[実施例3]
滴下ロートを備えた容量1000mLのフラスコ内にスターラーピースを投入し、真空ポンプを用いてフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内に、テトラヒドロフラン35mL、トルエン185mL、そしてパーヒドロイソキノリン(トランス/シス=1/3.2)50.8mL(0.34モル)を入れた。滴下ロートには1.69モル/Lのブチルマグネシウムクロライドのイソプロピルエーテル溶液211mL(0.357モル)を入れた。室温下でブチルマグネシウムクロライドのイソプロピルエーテル溶液をフラスコ内にゆっくりと滴下した後、室温にて1時間、更に60℃にて3時間攪拌を行ない、反応溶液を得た。次に、空になった滴下ロートにテトラメトキシシラン25.1mL(0.17モル)を入れた。テトラメトキシシランをフラスコ内の反応溶液(60℃に加温)にゆっくりと滴下した後、85℃にて8時間攪拌を行った。反応で生成したメトキシマグネシウムクロライドの固体をG4ガラスフィルタで濾過分離した後、ろ液を蒸留して、目的物であるジ(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン(トランス−トランス、トランス−シス、シス−シス異性体は約6/36/58)を得た。上記の濾過操作は短時間で完了し、また、ろ液蒸留後に残留物は殆ど観察されたなかった。留分の主成分の沸点は181℃/lmmHgであり、ガスクロマトグラフィーにおける純度は96.6%、収量は90.7であった。
【0034】
[実施例4]
テトラヒドロフランの使用量を20mLに、トルエンの使用量を200mLに変えた以外は実施例3と同様に反応を行った。ろ液を蒸留して目的物であるジ(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランを得た。この場合も濾過操作は短時間で完了し、また、ろ液蒸留後に残留物は殆ど観察されたなかった。留分の主成分の沸点は181℃/lmmHgであり、ガスクロマトグラフィーにおける純度は96.1%で、収量は89.2%であった。
【0035】
[実施例5]
パーヒドロイソキノリンとしてトランス/シス=1/1のものを用いた以外は実施例3と同様に反応を行った。ろ液を蒸留して、目的物であるジ(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン(トランス−トランス、トランス−シス、シス−シス異性体は約25/50/25)を得た。この場合も濾過操作は短時間で完了し、また、ろ液蒸留後に残留物は殆ど観察されたなかった。留分の主成分の沸点は181℃/lmmHgであり、ガスクロマトグラフィーにおける純度は96.8%で、収量は91.3%であった。
【0036】
[実施例6]
ブチルマグネシウムクロライドのイソプロピルエーテル溶液の代わりに、ブチルマグネシウムクロライドのn−ブチルエーテル溶液162mL(0.357モル)を用いた以外は実施例3と同様に反応を行った。ろ液を蒸留して、目的物であるジ(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランを得た。この場合も濾過操作は短時間で完了し、また、ろ液蒸留後に残留物は殆ど観察されたなかった。留分の主成分の沸点は181℃/lmmHgであり、ガスクロマトグラフィーにおける純度は94.9%で、収量は88.8%であった。
【0037】
[比較例3]
テトラヒドロフランを使用せず、トルエンの使用量を220mLに変えた以外は、実施例3と同様に反応を行った。ろ液を蒸留して目的物であるジ(パーヒドロイソキノリル)ジメトキシシランを得た。沸点は181℃/lmmHgであり、ガスクロマトグラフィーにおける純度は95.9%で、収量は81.6%であった。
【0038】
[比較例4]
トルエンを使用せず、テトラヒドロフランの使用量を220mLに変えた以外は、実施例3と同様に反応を行った。反応で生成したメトキシマグネシウムクロライドの固体を含む反応混合物にn−ヘプタン100mLを加えてから、固体を濾過分離し、ろ液を蒸留して目的物であるジ(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランを得た。沸点は181℃/lmmHgであり、ガスクロマトグラフィーにおける純度は95.4%で、収量は78.4%であった。
Claims (9)
- RMgX(但し、Rは炭化水素基、そしてXはシグマ結合性の配位子である。)で示される有機マグネシウム化合物と第2級多環状アミンとをエーテル溶媒中で反応させて多環状アミドマグネシウム化合物を得たのち、この多環状アミドマグネシウム化合物とテトラアルコキシシランとをエーテル溶媒と不活性炭化水素溶媒との混合溶媒中で反応させることを特徴とするジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法。
- 混合溶媒中でのエーテル溶媒と不活性炭化水素溶媒との混合割合が、体積比で、エーテル溶媒:不活性炭化水素溶媒=1:10〜1:0.5の範囲内にある請求項1に記載のジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法。
- 有機マグネシウム化合物と第2級多環状アミンとの反応に用いるエーテル溶媒が、ジアルキルエーテルと環状エーテルとの混合物である請求項1に記載のジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法。
- 有機マグネシウム化合物と第2級多環状アミンとの反応に用いるエーテル溶媒、及び混合溶媒中のエーテル溶媒が、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、およびジオキサンからなる群から選ばれる一つ以上のエーテル溶媒である請求項1乃至2のうちのいずれかの項に記載のジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法。
- 不活性炭化水素溶媒が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ミネラルオイル、ベンゼン、トルエン、およびキシレンからなる群から選ばれた一つ以上の不活性炭化水素溶媒である請求項1もしくは2に記載のジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法。
- RMgXにおけるRが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、およびフェニル基からなる群より選ばれる請求項1に記載のジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法。
- RMgXにおけるXが、ハロゲン、炭化水素オキシ、炭化水素アミド、及びカルボキシからなる群より選ばれる原子もしくは基である請求項1に記載のジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法。
- 第2級多環状アミンが、パーヒドロ第2級多環状アミンである請求項1に記載のジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法。
- パーヒドロ第2級多環状アミンが、パーヒドロキノリン、パーヒドロイソキノリン、もしくはそれらの化合物の炭素原子に結合している水素原子がアルキル基、フェニル基もしくはヒドロアルキル基で置換された誘導体である請求項8に記載のジ(多環状アミノ)ジアルコキシシランの製造方法。
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