JP3590481B2 - 顔料分散物及びそれを用いた被覆剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顔料分散レジスト、インキ、塗料等の技術分野における非水溶媒を用いた顔料分散物、及びそれを用いた被覆剤組成物に関し、特に液晶表示用カラーフィルターの製造に好適に使用される顔料分散レジストに有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、顔料分散レジスト、インキ、塗料等には、着色、遮光、防錆、内層保護等を目的として有機、無機の顔料が幅広く使用されており、これらの塗布物や印刷物には、光学濃度、着色力、透明度又は表面平滑性が高いことが要求される。さらに、塗布、印刷又は取扱い時に必要となる十分な流動性等が要求され、これらの性能は長期間の保存後においても維持されなけらばならない。このためには、顔料粒子が微細化されて高濃度に含まれても分散安定性が優れていなければならない。しかし、顔料粒子は一旦は微分散化されても再凝集し易いため、安定な微分散体を得ることは困難なことが多い。
【0003】
特に、近年のカラー液晶表示装置に対する可視光の高透過率化と高コントラスト化の要望の強まりから顔料粒子の微細化が進んでいる顔料分散レジストの分野では、顔料粒子径を少なくとも可視光の波長以下にする必要があるため、顔料粒子の比表面積が通常よりもかなり大きくなり、安定な微分散体を得ることが困難となる。また、R(赤)、G(緑)、B(青)の三原色の画素に適したスペクトルを得るのにそれぞれの顔料分散レジスト中に2種以上の顔料が混合されて用いられるため、ヘテロ凝集が生じやすく分散がさらに難しくなっている。
【0004】
これらの問題を解決するために顔料分散剤を用いる種々の方法が行われてきた。例えば、特開昭60−237403号公報等には、塩基性官能基等を有する有機顔料または染料の誘導体を顔料分散剤として用いる方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、この方法は、顔料分散効果においては良好な効果は認められるが、顔料分散剤自身の着色で顔料分散レジストの色調が変化するために適用範囲が限られるという問題を有するものであった。
【0006】
また、特開平3−212601号公報等には、イオン系あるいは非イオン系の界面活性剤、具体的には、長鎖アルキルアミンアセテート、4級アンモニウム塩、高分子多価カルボン酸、ポリオキシエチレン誘導体、長鎖脂肪酸のソルビタンエステル等を顔料分散剤として用いる方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、この方法は、顔料分散安定化においてはある程度の効果は認められるものの、依然満足しうる効果が得られないものであった。
【0008】
これらの問題点により、従来技術においては、顔料の選択や組合わせが限られたり、不充分な顔料分散安定性のまま使用せざるをえないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものである。すなわち、色素誘導体ではない実質的に無色の新規な顔料分散剤を用いることにより、非水溶媒中で顔料濃度が高くても微分散安定化の向上された顔料分散物、及びそれを用いた被覆剤組成物を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく研究を重ねた結果、以下に示す特定の化合物群により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、(1)顔料、溶媒、顔料分散剤、及び必要に応じてバインダー樹脂を含む顔料分散物において、顔料分散剤として、重量平均分子量3,000〜100,000のグラフト共重合体であって、当該グラフト共重合体中に、一般式(1)で表される構成単位を少なくとも5モル%相当する量含有するグラフト共重合体を、顔料100重量部に対して少なくとも0.2重量部含有することを特徴とする顔料分散物に関する。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、Xは炭素数が2〜4の範囲にある二価の炭化水素基を、iは1〜100の範囲の整数を、Y1、Y2はそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を、Rは水素原子又はメチル基を示す)
また、本発明は、(2)前記(1)項記載の顔料分散物を用いたことを特徴とする被覆剤組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、(3)前記(1)記載の顔料分散物、ラジカル重合性化合物、及び光重合開始剤を含有することを特徴とするカラーフイルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明においては、顔料分散剤として前記特定のグラフト共重合体を使用することにより、長期間に渡り顔料微分散体の顔料再凝集と構造粘性が抑制される。これにより、顔料分散レジスト、インキ、塗料等の塗布物や印刷物の光学濃度、着色力、透明度あるいは表面平滑性を高くすることができる。またこれらの塗布、印刷あるいは取扱い時に必要となる十分な流動性を得ることができる。このグラフト共重合体は実質的に無色であるために応用範囲が広く、また、耐熱性にも優れることから、カラーフィルターの可視光の透過率低下が抑制される。
【0015】
以下、本発明の、顔料、溶媒、顔料分散剤、及び必要に応じてバインダー樹脂を含む顔料分散物において、顔料分散剤としてグラフト共重合体を含有せしめた顔料分散物及びそれを用いた被覆剤組成物について詳しく説明する。
【0016】
本発明は、顔料分散剤として、一般式(1)で表される構成単位を必須とする特定のグラフト共重合体、即ち、ポリアルキレンオキサイド鎖がグラフトしたp−ビニルフェノールもしくはその誘導体の単独重合体又は共重合体を使用することに特徴がある。
【0017】
本発明のグラフト共重合体は、(1)p−ビニルフェノールもしくはその誘導体の5〜100モル%と、必要に応じてその他のエチレン性不飽和単量体0〜95モル%との単独重合体又は共重合体の芳香族性水酸基の活性水素に常法によりアルキレンオキサイドを開環付加させることにより、又は(2)p−ビニルフェノールもしくはその誘導体の芳香族性水酸基の活性水素に常法によりアルキレンオキサイドを開環付加させて得られる単量体5〜100モル%と、必要に応じてその他のエチレン性不飽和単量体0〜95モル%とを過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤を用い、常法により反応させることにより得ることができる。
【0018】
本発明のグラフト共重合体の製造に用いるp−ビニルフェノールおよびその誘導体としてはp−ビニルフェノールの他に、その塩素化物、臭素化物などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
本発明のグラフト共重合体の製造に用いるその他のエチレン性不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ノルボニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシドデシル、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェニル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレンや、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、臭素化スチレン、フルオロスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、フェノキシスチレン、β−クロロスチレン等のスチレン誘導体類;ビニルナフタレン;メチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等のビニルエーテル類;アリルアセテート等の各種の酸のアリルエステル類;N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、それらの酸無水物、酸イミド等の誘導体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
尚、本発明のグラフト共重合体を得るには、市販のp−ビニルフェノールの単独重合体、共重合体及びその塩素化物、臭素化物、スチレン化物、アミノ化物等を使用することもできる。
【0021】
これらの具体例としては、丸善石油(株)製の、マルカリンカーM(p−ビニルフェノールの単独重合体)、マルカリンカーCMM、CHM、CST、CBA(それぞれp−ビニルフェノールとメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、スチレン、ブチルアクリレートとの共重合体)、及びマルカリンカーMB(ポリ−p−ビニルフェノールの臭素化物)等が挙げられる。
【0022】
本発明のグラフト共重合体の製造に用いるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられる。これらアルキレンオキサイドは単独で、或いは2種類以上を混合して使用することができる。
【0023】
一般式(1)において、Xは炭素数が2〜4の範囲にある二価の炭化水素基を、iは1〜100の範囲の整数を、Y1、Y2はそれぞれ独立に水素原子或いはハロゲン原子を、Rは水素原子或いはメチル基を示す。ハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、フッ素原子等があげられる。
【0024】
これらの適切な構造と適切な値は、使用する顔料の種類、顔料粒子の比表面積や粒子径、顔料表面処理剤の性質、分散媒の極性等に応じて変化するものであり、用途に応じて適切な構造と最適値を選ぶのが好ましい。iの値が前記範囲を超えても顔料分散性をそれ以上改善することはできない。
【0025】
本発明のグラフト共重合体は、一般式(1)で表される構成単位を必ず持っていなければならない。グラフト共重合体中、一般式(1)で表される構成単位を少なくとも5モル%相当する量、なかんづく5〜100モル%相当する量含有するのが好ましい。尚、一般式(1)で表される構成単位を少なくとも5モル%相当する量含有するとは、グラフト共重合体をエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位に分割し、全構成単位中、一般式(1)で表される構成単位を少なくとも5モル%含有することである。これが所定モル%相当する量含まれていない場合には、十分な顔料分散性が得られない。ただし、適切な値は、使用する顔料の種類、顔料粒子の比表面積や粒子径、顔料表面処理剤の性質、分散媒の極性等に応じて変化するものであり、用途に応じて適切な構造と最適値を選ぶのが好ましい。
【0026】
本発明のグラフト共重合体の分子量は、重量平均分子量で3,000〜100,000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が3,000未満でも顔料分散効果はあるが、重合反応が難しくなり、それとともに多用される重合開始剤や連鎖移動剤による末端基の影響等で乳化適性の改善効果が低下する。一方、重量平均分子量が100,000を超えると十分な顔料分散効果が得られなくなる。
【0027】
本発明の対象となる顔料としては一般的な無機又は有機顔料が使用できる。有機顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリレン系、チオインジゴ系、イソインドリノン系、トリフェニルメタン系、或いはカーボンブラック等が挙げられる。無機顔料としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン等の体質顔料や、磁性酸化鉄等が挙げられる。これらの有機又は無機顔料は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
また、本発明の溶媒としては、顔料分散物中の樹脂成分又は顔料分散物と共に用いられる樹脂成分を溶解するするものであればよく、公知のものから用途に応じて適宜選択すればよい。
【0029】
また、本発明のバインダー樹脂としては、顔料分散レジスト、塗料、オフセット印刷インキ組成物等の分野に使用されている公知の各種バインダ−が使用できる。
【0030】
本発明の顔料分散物を得るには、顔料分散剤として、グラフト共重合体を顔料100重量部に対し少なくとも0.2重量部含有させることが望ましい。顔料分散剤の量がこれより少ないと十分な顔料分散効果が得られない。一方顔料分散剤を顔料100重量部に対して100重量部より多量に使用しても顔料分散効果はそれ以上向上しない。
【0031】
但し、顔料分散効果は顔料の種類、顔料粒子の比表面積や粒子径、顔料表面処理剤の性質、分散媒の極性等に応じて異なるため、個々の場合で最適化するのが好ましい。
【0032】
次に、本発明の顔料分散物を用いた被覆剤組成物をカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物を例にして具体的に説明する。
【0033】
顔料分散物に含まれる顔料分散剤は、一般式(1)で表わされる構成単位を有するグラフト共重合体である。
【0034】
本発明の顔料分散物を用いたカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物に用いる顔料としては、この分野で公知のものを使用することができる。
【0035】
具体例には、赤顔料としては、アントラキノン系のC.I.ピグメントレッド177、アンサンスロン系のC.I.ピグメントレッド168、緑顔料としては、ハロゲン化フタロシアニン系のC.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、青顔料としては、β型フタロシアニン系のC.I.ピグメントブルー15:3、ε型フタロシアニン系のC.I.ピグメントブルー15:6、黄顔料としては、ジスアゾ系のC.I.ピグメントイエロー83、イソインドリノン系のC.I.ピグメントイエロー139、紫顔料としては、ジオキサジン系のC.I.ピグメントバイオレット23、クロモフタール系のC.I.ピグメントバイオレット37等を示すことができる。
【0036】
これらの顔料については、塗膜の光学濃度を高く維持した上で光透過度を上げるため、粒子径が可視光の波長の下限の400nm以下である必要があり、好ましくはその1/2である200nm以下、更に好ましくは100nm程度であるのがよい。
【0037】
本発明のグラフト共重合体を用いることで、このような微細顔料でも分散安定化することができる。R、G、Bの三原色のそれぞれの画素に適するスペクトルを得るため、例えば、赤顔料及び緑顔料には黄顔料を、青顔料には紫顔料を組み合わせたり、また2種類以上の赤顔料を用いるなど、複数の顔料を組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、上述した体質顔料を含む本発明の顔料分散物をカラーフィルターのオーバーコート材に用いるレジスト中に用いることができる。
【0039】
本発明の顔料分散物を、カラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物に使用する場合は、グラフト共重合体を顔料100重量部に対して0.2〜100重量部、好ましくは、1〜50重量部含有させることが望ましい。
【0040】
本発明の顔料分散物を用いたカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物に用いる溶媒としては、この分野で用いられる樹脂成分を溶解する有機溶媒であれば、公知のものを用いることができる。
【0041】
具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールモノエーテルアセテート類、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、酢酸ブチル等の酢酸エステル類等が挙げられる。これらは、樹脂成分の溶解性や組成物の塗工適性を考慮して、単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
本発明の顔料分散物を用いたカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物に用いるバインダ−樹脂としては、使用される有機溶媒との相溶性等を考慮した上であれば公知のものが使用できる。カラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物の用途には樹脂の着色が少ないものが好ましい。具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等を挙げることができる。
【0043】
ラジカル重合による光硬化後、画像形成のために塗膜をアルカリ現像する必要があれば、バインダ−樹脂として酸性官能基を導入したものを使用すればよい。この用途でのアクリル系樹脂としてはエチレン性不飽和二重結合を有する単量体と(メタ)アクリル酸を共重合したもの、スチレン系樹脂としてはスチレンと無水マレイン酸の共重合体、更に各種の(メタ)アクリル酸誘導体を添加した共重合体、あるいはこれらの共重合体の酸無水物環をアルコールと反応させてハーフエステルとしたもの等が挙げられる。ウレタン系樹脂としてはジメチロールプロピオン酸等でカルボキシル基を導入したもの等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を導入すれば光硬化性を付与することもできる。エポキシ系樹脂としてはエポキシ基に酸成分をエポキシエステル化した後、生じた水酸基に酸無水物を反応させたもの等が挙げられる。該酸成分に(メタ)アクリル酸を用いれば、光硬化性を付与することができる。この他、アミノ樹脂等を添加して光硬化の後に熱硬化させることもできる。これらは単独で、もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
本発明の顔料分散物を用いたカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物を調製するためのラジカル重合性化合物としては、多官能の(メタ)アクリレート類を用いることができる。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールのエステルのジ(メタ)アクリレート、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールのエステルのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類、また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、ロジンや乾性油等の変性による脂環族または脂肪族のエポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ基と(メタ)アクリル酸との反応による多官能のエポキシ(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上を混合して用いてもよい。これらに単官能の(メタ)アクリレート類を併用することもできる。硬化速度を上げるためには前記(メタ)アクリレート類のうちアクリレート類を用いることが好ましい。
【0045】
本発明の顔料分散物を用いたカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物の調製に用いるラジカル重合の光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の公知の光重合開始剤が使用できる。具体的には、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、1−フェニルプロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等のチオキサントン系開始剤、あるいはジベンゾイル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2−ビスイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、メチルフェニルグリオキシエステル等の開始剤、またはチタノセン化合物等を挙げることができる。これらは単独で、もしくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
更に、ベンゾフェノン系やチオキサントン系の開始剤、またジカルボニル化合物等の水素引き抜き型開始剤には、水素供与体となるトリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル等のα−水素を有する三級アミン類を促進剤として用いることができる。更に、キサンテン、アクリジン、オキサジン、シアニン等の長波長の光に対する増感効果のある染料を加えてもよい。これらは単独、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
また、ハドロキノン、ハイドロキノンメチルエーテル、カテコール、ピクリン酸等の安定剤を用いることもできる。
【0048】
本発明の顔料分散物を用いてカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物の調製するには、上述した材料の他にも滑剤や界面活性剤等、各種の添加剤を用いることができる。
【0049】
本発明のカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物における成分の含有量の好ましい範囲を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
これらの成分のうち、顔料、グラフト共重合体、溶媒の全量又は一部、及び必要に応じてバインダー樹脂の一部又は全部を混合し、ビーズミルや3本ロ−ルを用いて混練りすることによって、本発明の顔料分散物を得ることができる。これに残りの溶媒とバインダー樹脂、ラジカル重合性化合物、及び光重合開始剤を加えて更に混練り或いは十分に攪拌し、必要に応じてフィルター濾過や遠心分離を行なうことによって、本発明のカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物を得ることができる。
【0052】
インキや塗料等、顔料分散レジスト以外の被覆剤組成物に本発明の顔料分散物を用いる場合には、従来よりそれらの被覆剤組成物で使用されてきた各種のバインダー樹脂、溶媒、及び添加剤を用いることができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。主旨と適用範囲を逸脱しない限り、これらは本発明を限定するものではない。記述中の「部」は重量部を示す。
【0054】
[顔料分散剤]
顔料分散剤1
ポリ−p−ビニルフェノール(丸善石油(株)製のマルカリンカーM−S1)に水酸基1つあたり15.8モルのエチレンオキサイドを重付加し、グラフト共重合体(顔料分散剤1)を得た。重量平均分子量(GPC測定による、以下同様)は4,000であった。
【0055】
顔料分散剤2
顔料分散剤1の合成におけるエチレンオキサイドを水酸基1つあたり12.0モルのプロピレンオキサイドに置き換え、重量平均分子量4,100のグラフト共重合体(顔料分散剤2)を得た。
【0056】
顔料分散剤3
顔料分散剤1の合成におけるエチレンオキサイドを水酸基1つあたり9.7モルのブチレンオキサイドに置き換え、重量平均分子量4,000のグラフト共重合体(顔料分散剤3)を得た。
【0057】
顔料分散剤4
顔料分散剤2の合成におけるプロピレンオキサイドの付加モル数を、水酸基1つあたり6.0モルとして、重量平均分子量3,000のグラフト共重合体(顔料分散剤4)を得た。
【0058】
顔料分散剤5
顔料分散剤2の合成におけるプロピレンオキサイドの付加モル数を、水酸基1つあたり24.0モルとして、重量平均分子量7,100のグラフト共重合体(顔料分散剤5)を得た。
【0059】
顔料分散剤6
顔料分散剤2の合成におけるポリ−p−ビニルフェノールをポリ−p−ビニルフェノール(丸善石油(株)製のマルカリンカーM−S2)として、重量平均分子量14,000のグラフト共重合体(顔料分散剤6)を得た。
【0060】
顔料分散剤7
顔料分散剤2の合成におけるポリ−p−ビニルフェノールをp−ビニルフェノールとスチレンのモル比1:1の共重合体(丸善石油(株)製のマルカリンカーCST50)として、重量平均分子量6,800のグラフト共重合体(顔料分散剤7)を得た。
【0061】
顔料分散剤8
顔料分散剤2の合成におけるポリ−p−ビニルフェノールをポリ−p−ビニルフェノールとスチレンのモル比7:3の共重合体(丸善石油(株)製のマルカリンカーCST70)として、重量平均分子量6,600のグラフト共重合体(顔料分散剤8)を得た。
【0062】
顔料分散剤9
顔料分散剤2の合成におけるポリ−p−ビニルフェノールをp−ビニルフェノールとメチルメタクリレートのモル比1:1の共重合体(丸善石油(株)製のマルカリンカーCMM)として、重量平均分子量9,900のグラフト共重合体(顔料分散剤9)を得た。
【0063】
顔料分散剤10
顔料分散剤2の合成における−ポリp−ビニルフェノールをポリ−p−ビニルフェノールの臭素化物(丸善石油(株)製のマルカリンカーMB)として、重量平均分子量15,000のグラフト重合体(顔料分散剤10)を得た。
【0064】
顔料分散剤11
顔料分散剤2の合成におけるポリ−p−ビニルフェノールをp−ビニルフェノールと2−ヒドロキシエチルメタクリレートのモル比1:1の共重合体(丸善石油(株)製のマルカリンカーCHM)として、重量平均分子量9,600のグラフト共重合体(顔料分散剤11)を得た。この場合、p−ビニルフェノール由来の芳香族性水酸基1つあたり6モルのプロピレンオキサイドが付加している。
【0065】
[比較顔料分散剤]
顔料分散剤12
ブタノールにエチレンオキサイドが平均で22.7モル付加した片末端に水酸基を持つポリエーテルを顔料分散剤12とした。
【0066】
顔料分散剤13
市販のソルビタン脂肪酸エステル系化合物を顔料分散剤13とした。
【0067】
顔料分散剤14
市販のポリアミド系化合物を顔料分散剤14とした。
【0068】
[カラーフィルター用光硬化性顔料分散ペ−スト]
実施例1〜13及び比較例1〜3
顔料分散剤1〜11、及び比較顔料分散剤(顔料分散剤12〜14)を用い、上述した方法によりビ−ズミルを用いて混練りし、表2に示した組成の顔料分散組成物を調製した。これにラジカル重合性化合物と光重合開始剤を加えて更に混練りし、最終的に表3に示した組成のカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物を得た。ここで溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、バインダー樹脂としては、メタクリル酸とベンジルメタクリレートを共重合成分に含み、酸価100mgKOH/g、重量平均分子量45,000のアクリル樹脂を、ラジカル重合性化合物としては、トリメチロ−ルプロパントリアクリレート(共栄社化学(株)製、TMA−A)を、光重合開始剤としては、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン(チバガイギ−社製、IRGACURE−907)を用いた。R、G、及びBの各色の顔料分散レジストに用いた顔料の種類と全顔料中に対する重量%を表4に示した。なお、顔料分散物の調製においては、表2に示すごとく顔料分散剤の使用量に応じて溶剤の使用量を増減して組成物全量が100重量%になるようにした。顔料分散レジストの調製においても、同時に組成物全量が100重量%になるようにした。また、比較例4では顔料分散剤を使用せず顔料分散剤相当量をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで置き換えた。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
[評価試験]
得られた顔料分散物及びカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物の性状と硬化膜の評価結果を表5に示した。
【0073】
(1)粘弾性
顔料分散物及びカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物について、製造直後の粘度、TI(チキソトロピー・インデックス)を測定し、さらに40℃の恒温に保持された暗所で1月間保存したのち再度粘度、TIを測定し、粘度とTIの経時変化を調べた。測定には、ハーケ社製回転粘度計を用い、25℃で測定した。粘度が低く、TIが1.0に近く、これらの経時変化が少なく、顔料分散レジスト組成物のスピンコート適性に何等問題がないものを粘弾性に優れるとして3、粘度やTIが若干高く、或いはこれらの経時変化が若干大きいもののスピンコートが可能なものを2、粘度やTIが著しく高く、スピンコート適性が無く、経時での不安定性が大きいものを1で示した。また、顔料の沈降や分離が認められる場合も1で示した。
【0074】
(2)透過率
各カラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物をガラス基板上にスピンコートし、2分間100℃に加熱した後200mJ/cm2の紫外光により露光して厚さ0.9〜1.1μmの硬化膜を形成した。この硬化膜を形成したガラス基板について参照にガラス基板を用いて可視光の透過スペクトルを測定した。表5には各色塗膜の透過域(R:610nm、G:540nm、B:450nm)の透過率を示した。表5に示す透過率の値は硬化膜の厚さを1.0μmとしたばあいの換算値である。尚、透過率の値は高い程優れている。
【0075】
(3)耐熱性
硬化膜を250℃、1時間加熱した後、透過域の透過率の変化を調べた。低下が3%未満である場合を3、3%以上7%未満であるものを2、7%以上の場合を1で示した。
【0076】
【表5】
【0077】
本発明のグラフト共重合体を用いることにより、顔料分散物及びそれを用いたカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物の粘弾性が改善され、透過率の高い硬化膜が得られた。一方、比較例では、粘弾性が悪く、透過率も低かった。
【0078】
【発明の効果】
本発明のグラフト共重合体を用いることにより、顔料分散物及びそれを用いた被覆剤組成物の顔料凝集と構造粘性を抑制し、特にこれをカラーフィルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物に用いることにより、顔料分散性に起因する分光特性、保存安定性等の性能も向上する。
Claims (3)
- 請求項1記載の顔料分散物を用いたことを特徴とする被覆剤組成物。
- 請求項1記載の顔料分散物、ラジカル重合性化合物、及び光重合開始剤を含有することを特徴とするカラーフイルター用光硬化性顔料分散レジスト組成物。
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