JP3588989B2 - 光学素子及び光学素子の駆動方法 - Google Patents

光学素子及び光学素子の駆動方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学系を構成する光学素子及び交換可能な光ディスクを用いた情報記憶装置並びに印刷装置及び画像投影装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
まず、従来の回折格子について説明する。
【0003】
図10は、従来の反射型回折格子の一例の構成を示す説明図である。回折格子は、一定間隔に溝を設けた基板1に、反射膜2を付けた構成を有する。前記溝からなる表面の凹凸により入射光に位相差を発生させて、特定の方向に回折光を生じせしめるものである。前記基板1は、ガラス等の光学素材を加工して作られる。また、前記の回折の角度、効率等の光学特性は形状で決定するため、1つの素子の特性は、言うまでもなく変更不可能であった。
【0004】
次に、従来の光ヘッドについて説明する。
【0005】
図11は、従来の光ヘッドの構成を示す説明図である。前記光ヘッドは、半導体レーザ3、フォトダイオード12、ホログラム4、コリメータレンズ5、立ち上げミラー6、対物レンズ7より構成される。前記半導体レーザ3から出射したレーザ光は、前記ホログラム4を通り抜け、前記コリメータレンズ5により平行光に変換され、前記立ち上げミラー6によって方向を変えられ、前記対物レンズ7で集光されて光ディスク8上にスポットを形成する。前記光ディスク8からの反射光は、前記対物レンズ7を通り、前記立ち上げミラー6によって方向を変えられ、前記コリメータレンズ5と前記ホログラム4により前記フォトダイオード12上に集光される。
【0006】
ところで、近年色々な規格を有する光ディスクが市場に出回っている。なかでも、DVD規格の光ディスクは、今後CDに替わって市場を席巻する可能性がある。一方で、過去のCD資産の活用も求められるため、DVD/CD双方のディスクに対応可能な光学式記録再生装置が求められている。DVD規格とCD規格で異なるのは、主にトラックピッチと基板厚である。この違いに対応するため、色々な方法が提案されている。
【0007】
その1つに、まず対物レンズを切り替え、基板厚ごとに設計された独立の光学系を用いる方法がある。この方法は、構成が大規模になり、コストアップはまぬがれない。
【0008】
次に、2重焦点光学系を用いて、常時2種類の基板厚に対応するスポットを形成する方法がある。これは、使用してない方のスポットの光量を常に無駄にすることになるので、エネルギーロスが大きく、DVD−RAMのような記録可能な光ディスクに対応させる場合、高出力レーザを用いなければならない。また、2重焦点レンズは一般に製造コストが高い。よって、やはりコストアップの原因となる。
【0009】
他に、光学系に開口制限要素を挿入する方法がある。特開平8−335330では、あらかじめDVD用に設計された光学系に環状フィルタを挿入し、開口率を低下させてCDに対応させる方法が開示されている。また、特開平9−50647では、同様に偏光フィルタを挿入する方法が開示されている。しかし、これらの方法では、機械的にフィルタを出し入れする機構を付加しなければならず、コストアップはもとより、光学的な精度を実現するのも難しい。
【0010】
一方、特開平9−161306あるいは特開平9−161307では、液晶素子による電気的に制御する開口制限要素を用いている。よって、機械的な操作は行われないので、前記のような弊害は避けることができる。
【0011】
また、従来の印刷装置について説明する。図12は、従来の印刷装置の構成を示す説明図である。印刷装置は、半導体レーザ3、コリメータレンズ14、シリンドリカルレンズ15、ミラー34、ポリゴンミラー16、球面レンズ17、トーリックレンズ18、感光ドラム19、制御回路20より構成される。前記半導体レーザ3から出射したレーザ光21は、コリメータレンズ14により平行光のビームとなり、シリンドリカルレンズ15を経て、ポリゴンミラー16に入射する。ポリゴンミラー16の反射光は、球面レンズ17、トーリックレンズ18を経て、感光ドラム19上に集光される。ポリゴンミラー16は、回転によりレーザビームの方向を一定角度内で素早く変化させ、感光ドラム19上を走査せしめる。前記半導体レーザ3、前記ポリゴンミラー16、前記感光ドラム19は、前記制御回路20により制御される。即ち、前記制御回路20は、ホストコンピュータよりデータを受け取り、印字データに変換後、前記印字データに応じて前記半導体レーザ3に流れる電流を変調し、同時に前記電流に同期させて前記ポリゴンミラー16及び前記感光ドラム19を回転させる。これにより前記感光ドラム19上に画像の静電潜像が形成される。
【0012】
ところで、印刷装置で扱う画像は、一般に微細な絵柄の部分と、一面を均一に着色するベタ領域に大きく分かれる。微細な絵柄を印刷するためには、感光ドラム19上のレーザスポットは十分小さくなければならないが、逆にベタ領域を美しく印刷するためには、レーザスポットを大きくすることが望ましい。しかし、従来の印刷装置では常にスポットの径は一定であった。
【0013】
また、従来の印刷装置では、レーザビームの方向を一定角度内で素早く変化させ、感光ドラム19上を走査せしめるのに、前記ポリゴンミラー16のような、回転式のミラーを用いていた。
【0014】
また、ガスレーザを用いる方法による従来の印刷装置では、前記レーザビームの強度変調にはAOM、液晶素子等等の素子を用いていた。
【0015】
また、従来の画像投影装置について説明する。図13は、従来の画像投影装置の構成を示す説明図である。画像投影装置は、白色光源21、集光レンズ22、カラーフィルタ35、受光レンズ23、ミラー27、光変調素子24、投影レンズ25、制御回路20より構成される。前記白色光源21から出射した光は、前記集光レンズ22を介して、前記カラーフィルタ35に入射する。前記カラーフィルタ35は、緑、青、赤それぞれの光のみを透過させる扇形の3つの領域からなる円盤状の形状をしており、モータにより回転している。前記モータは前記光変調素子24とともに制御回路20により同期的に制御される。前記光変調素子24は、画面のピクセル数に対応した数の微小なミラーあるいはライトバルブを集積したもので、前記カラーフィルタ35と協動して画面上の各ピクセルに色と明暗を与える。その結果、前記投影レンズ25を経てスクリーン26に画面が映し出されるような構成を有していた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
まず、前記の光ヘッドにおける前記の液晶素子による開口制限でスポットを切り替える方法では、余分に素子を搭載しなければならない上、液晶素子自体が高価であるばかりか、光の損失も大きいため、やはりDVD−RAMのような記録可能な光ディスクに対応させる場合、高出力レーザを用いなければならないという課題を有していた。
【0017】
また、常にスポットの径は一定であった従来の印刷装置では、ベタ領域にむらが生じ、微細な絵柄からベタ領域まで美しく印刷するのは困難であった。さらに、高精細な画像への要求は今後高まると予想され、スポットの径はさらに小さくなると予想されるが、同時により均一なベタ領域の印刷は困難になるという課題を有していた。
【0018】
また、前記ポリゴンミラー16のような、回転式のミラーを用いていた従来の印刷装置では、前記ポリゴンミラー16は、モーターにより回転されので、印刷装置の大型化、大消費電力化、騒音、発熱等の原因になっていた。同時に、高速印刷の要求に対し、ポリゴンミラーによる方法は限界にきていた。
【0019】
また、前記レーザビームの強度変調にAOMや液晶素子等の素子を用いていた従来の印刷装置では、素子が一般に高価であり、応答速度も遅かった。よって、高速かつローコストな印刷装置を構成するのは難しいという課題を有していた。
【0020】
また、モーターによりカラーフィルタ35を回転する従来の画像投影装置では、大型であること、消費電力、騒音、発熱等が問題になっていた。一方で、近年、周辺機器の小型軽量化に伴い、画像投影装置の小型化の要求が高まっており、前記問題の解決はますます重要な課題となっている。
【0021】
そこで、本発明では、 前記の諸問題を解決した光ヘッド、光学式記録再生装置、印刷装置及び画像投影装置並びに前記各装置に用いられる光学素子及び前記光学素子の駆動方法を提供することを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の光学素子は、
(1)凸である領域及び凹である領域を有する基板と、前記基板を覆うように設けられた弾性変形する膜とを有し、周期的に変化する静電力により前記膜を波状に変形させることを特徴とする。
【0023】
(2)前記(1)の光学素子において、前記波状の変形の振幅は、入射する光の波長の1/2から1/4の範囲内にあることを特徴とする。
【0024】
(3)また、本発明の光学素子の駆動方法は、前記(1)の光学素子において、前記静電力の大きさを変化させることにより、変形させる形状の深さを変更することを特徴とする。
【0025】
(4)さらに、前記(1)の光学素子において、前記静電力の加わる周期を変化させることにより、変形させる形状の間隔を変更することを特徴とする。
【0026】
(5)本発明の光学式記録再生装置用光ヘッドは、前記(1)の光学素子を具備することを特徴とする。
【0027】
(6)本発明の光学式記録再生装置は、前記(5)の光ヘッドを具備することを特徴とする。
【0028】
(7)本発明の印刷装置は、光源と、電気信号により必要に応じて入射光の一部を回折させて開口制限する回折手段と、前記回折手段に光ビームを導く入射手段と、感光体と、前記光ビームの方向を制御して前記光ビームを走査する走査手段と、前記回折手段から出射する前記光ビームのスポットを前記感光体に結像させる結像手段と、前記回折手段、前記走査手段及び前記感光体を制御する制御手段を有する印刷装置において、前記回折手段を制御することによって前記光ビームの前記スポットの大きさを変化させることを特徴とする。
【0029】
(8)本発明の画像投影装置は、白色光源と、電気信号により回折角を変化させる回折手段と、前記回折手段から光を受光する受光手段と、前記受光手段より導かれた光を変調する光変調手段と、投影手段と、前記回折手段及び前記光変調手段を制御する制御手段を有する画像投影装置において、前記回折手段によって白色光を有色光に分光し、さらに前記回折手段を制御することによって前記有色光を選択的に前記受光手段に入射させることを特徴とする。
【0030】
(9)本発明の印刷装置は、光源と、電気信号により回折角を変化させる回折手段と、前記回折手段に光ビームを導く入射手段と、感光体と、前記回折手段から出射する光ビームを前記感光体に結像させる結像手段と、前記回折手段及び前記感光体を制御する制御手段を有する印刷装置において、前記回折手段を制御することによって前記光ビームを走査し、前記感光体上に静電潜像を形成することを特徴とする印刷装置。
【0031】
(10)本発明の印刷装置は、光源と、電気信号により回折効率を変化させる回折手段と、前記回折手段に光ビームを導く入射手段と、感光体と、前記光ビームの方向を制御して前記光ビームを走査する走査手段と、前記回折手段から出射する前記光ビームの回折光を前記感光体に結像させる結像手段と、前記回折手段及び前記感光体を制御する制御手段を有する印刷装置において、前記回折手段を制御することによって前記回折光の強度を変化させ、前記感光体上に静電潜像を形成することを特徴とする。
【0032】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
以下に本発明の実施例を示し、図を用いて説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施例である光学素子の構成を示す説明図である。前記光学素子は、ガラス製の基板1、前記基板の凹部に取り付けられた電極9、前記基板を覆うように設けられたシリコンの膜10より構成される。前記電極9は、前記膜10と前記基板1の間に静電力を生じせしめるためのものである。具体的にはITOを蒸着したもの等で構成される。あるいは、前記基板をガラス−AuCr−ガラスの3層構造にして、エッチングにより、前記凹部に一面にAuCr電極9が存在する構成にしてもよい。前記基板1は、中央の楕円部分及び、凹部を除く周辺部分が同一の高さで凸になっており、この部分において、前記膜と陽極接合されている。また、楕円状の前記凹部は当然ながら前記膜10と前記基板1に囲まれた空間を有する、中空な領域になっている。前記膜10はシリコンであるため導電性であり、静電力を働かせる際の電極を兼ねている。尚、前記膜10は高分子膜等の導電性でない素材に、別途電極をつけたものでもよい。また、前記膜10の、前記基板1と対向する面の反対側には、前記膜に入射する光を十分な反射率で反射するように金あるいは金クロム等の反射膜が積層されている。尚、本文中では前記反射膜が積層されている面を反射面と呼ぶことにする。
【0034】
まず、前記膜10及び前記基板1の電極が同電位であれば、両者間に引力は働かず、前記膜10は、自身の張力によって平坦な面を形成している。よって、前記反射面に入射した光は、そのまま入射角と同じ角度で反射する。
【0035】
次に、前記膜10及び前記基板1の電極間に、交流電圧を印加する。すなわち、前記基板1と前記膜10が周期的に電位差を持ったり同電位になったりするようにする。すると、両者間には、静電力により、電位差に応じて吸引力が発生する。電位差を持った瞬間においては、反射面から見て窪む方向に弾性変形する。一方、同電位になる瞬間においては、吸引力は解除され、前記膜10は弾性により、再び平坦な状態に戻ろうとする。前記過程を繰り返すことにより、前記膜10に振動が発生する。
【0036】
ここで、前記交流電圧の周波数に対して前記膜10の剛性が十分高ければ、駆動電圧に完全に同期して、前記膜全体が一体で振動する。しかし、剛性が十分高くない場合、前記交流電圧の周波数が一定値を超えると、前記膜10は一体で動くことが不可能になる。その結果、前記電極付近で発生した波は固定端に向かって伝播する。前記波は固定端となる前記凹部と凸部の境界で反射され、もとの波と干渉して、定在波を前記膜上に形成する。
【0037】
本例では、前記基板1の凹部と凸部の境界は楕円になっており、この線に沿って同心楕円状の定在波が生じ、破線で示したように波状に変形する。その結果、膜面に光が入射した場合、前記定在波の波長と入射光の波長で決まる特性を有する反射型の回折格子として機能する。即ち、定在波のピッチをp、入射光の波長をλ、整数をnとすると、nλ/p=sinθを満たすθの方向に光を回折させる働きを有する。ここで、前記電極9の巾は、前記ピッチpの1/2程度の寸法にすれば、より効率的に前記定在波を生じうる。
【0038】
すなわち、装置に応用した場合、光源の波長に前記の式で相関づけられる値に前記ピッチpと前記回折角を設定すべく、前記光学素子の固定端の間隔即ち凹部の巾と前記交流電圧の周波数を決定する。また、最も効率よく回折させるためには、前記波状の変形の振幅が前記光源の波長の略1/4となるようにすればよい。例えば前記光源の波長が780nmだとすると、前記振幅は195nm程度にすればよい。前記振幅は、前記光学素子の前記膜の厚さ、凹部の深さ、前記交流電圧のレベル等で決定する。
【0039】
一方、中央部は常に平面を維持するので、交流電圧を印加するしないにかかわらず、常に平面鏡として働く。これにより、本光学素子全面に平行光が入射した場合、中央部の領域にあたる光は入射角と等しい角度で反射されるが、一方で波状に変形した領域にあたる光は散乱されて前記の光と違う方向に導かれる。入射角と等しい角度で反射された光のみを集光して用いるように光学系を構成すれば、交流電圧の印加によって開口率を制限する機能を有する鏡として用いることができる。
【0040】
尚、図中の破線は前記膜の変形の様子を概念的に示したもので、山の数は3つしか描いていなが、実際の応用では、本光学素子の実用的な大きさに対して前記ピッチpははるかに小さいため、山の数もまたはるかに多くなることは言うまでもない。
【0041】
また、前記基板1の凹部と凸部の境界は楕円になっているが、これは本光学素子に対して入射光が斜め入射し、開口制限された後のビームが円形でなくてはならないような光学系に用いることを想定したためで、入射角が0ならば前記境界は真円となり、入射角が増大するにつれて偏平率の大きな楕円となる。つまり、前記境界の形は、求めるビームの形により任意に決められる。よって、前記境界の形は、楕円に限られるものではない。
【0042】
図2は、本発明の光学素子を用いた光ヘッドの一実施例の構成を示す説明図である。図1及び図2を用いて、本実施例の光ヘッドの動作を説明する。
【0043】
前記光ヘッドは、半導体レーザ3、フォトダイオード12、ホログラム4、コリメータレンズ5、光学素子11、対物レンズ7より構成される。まず、DVD再生時には、前記光学素子の前記膜10及び前記基板の前記電極9は同電位になるようにする。すると、前記膜10は、自身の張力によって平坦な面となっているので、従来の立ち上げミラーと同様に機能する。尚、この状態において、光学系はDVDディスクに対して最適設計しておく。すると、前記半導体レーザ3から出射したレーザ光は、ホログラム4を通り抜け、前記コリメータレンズ5により平行光に変換され、前記光学素子11によって方向を変えられ、対物レンズ7で集光されて光ディスク8上にDVDディスクに適したスポットを形成する。前記光ディスクからの反射光は、対物レンズ7を通り、光学素子11によって方向を変えられ、コリメータレンズ5とホログラム4によりフォトダイオード12上に集光される。
【0044】
一方、 CD再生時には、前記光学素子の前記膜及び前記基板の前記電極間に、交流電圧を印加する。すると、前記光学素子の、前記基板が凹になっている領域では、同心楕円状に定在波が形成される。その結果、中央部の前記基板が凸になっている領域は依然平坦であるから、光は入射角と等しい角度で反射されるが、波状に変形した領域では回折、散乱されるため、前記光ディスクのスポットには集光されない。すなわち、前記光学素子は、開口率を制限されたミラーとして機能する。この様子を図2において破線で示した。これにより、 CD再生に適したスポットが形成される。前記中央部の領域の大きさを調整することにより、前記スポットの径を最適にすることができる。
【0045】
なおここで、前記光学素子の前記ピッチpは、前記回折光が前記スポットに集光されない様な最小の角度をθ、入射光の波長をλ、整数をnとすると、nλ/p=sinθを満たすように決められる。これは、前記光学素子の固定端の間隔と前記交流電圧の周波数により決定する。また、最も効率よく回折させるためには、前記波状の変形の振幅が前記光源の波長の略1/4となるようにすればよい。例えば前記光源の波長が780nmだとすると、前記振幅は195nm程度のすればよい。また、前記電極9の巾は、前記ピッチpの1/2程度の寸法にすれば、より効率的に前記定在波を生じうる。
【0046】
以上のように、前記光学素子への交流電圧を印加という、電気信号のON/OFFのみの操作により、DVDとCDを自在に再生可能な光ヘッドを構成することが可能になる。本実施例では、従来の立ち上げミラーに代えて前記光学素子を挿入する構成のため、部品数は増えることはない。また、前記光学素子は、半導体プロセスで容易に量産可能であり、素子単価も安価である。また、スパッタリング等によって前記膜に反射率が90%以上の材質を積層するのは容易であるので、光の損失も小さい。このため、 本光ヘッドをDVD−RAMのような記録可能な光ディスクに応用する場合でも、比較的出力の小さなレーザで済ませることができる。
【0047】
よって、本発明によれば、装置のコストアップを招くことなく、電気信号の切り替えのみでCD/DVDの光ディスクに対応可能な光ヘッド、光学式記録再生装置を提供することが可能である。
【0048】
(実施例2)
図3は、本発明の一実施例である光学素子の構成を示す説明図である。光学素子は、ガラス製の基板1、前記基板の凹部に取り付けられた電極9、前記基板を覆うように設けられた膜10、液状物質13より構成される。前記電極9は、前記膜10と前記基板1の間に静電力を生じせしめるためのものであり、ITO等の透明電極である。前記基板1は、中央の円形部分及び、凹部を除く周辺部分が同一の高さで凸になっており、この部分において、前記膜10と接合されている。また、円形状の凹部は当然ながら前記膜と前記基板に囲まれた空間を有する、中空な領域になっている。前記中空な領域には、屈折率が空気と異なる前記液状物質13が充填されている。前記膜10は高分子膜等の透明な材質で作られており、 ITO等の透明電極14が取り付けられている。他の動作については実施例1と同様であるので、詳しい説明は省略する。本構成では、光学素子は透過型回折格子として機能する。よって、実施例と同様に、交流電圧の印加によって開口率を制限する機能を有する光学素子として用いることができる。
【0049】
図4は、図3の光学素子を用いた光ヘッドの一実施例の構成を示す説明図である。図3及び図4を用いて、本実施例の光ヘッドの動作を説明する。
【0050】
前記光ヘッドは、半導体レーザ3、フォトダイオード12、ホログラム4、コリメータレンズ5、光学素子11、対物レンズ7より構成される。本例では、図2で示した様な光ヘッドとは異なる、光軸に沿って直線状に光学部品を位置せしめた構成の光ヘッドを示している。
【0051】
まず、DVD再生時には、前記光学素子11の前記膜10及び前記基板1の電極は同電位になるようにする。すると、前記膜10は、自身の張力によって平坦な面となっているので、そのまま光を素通しする。尚、この状態において、光学系はDVDディスクに対して最適設計しておく。すると、前記半導体レーザ3から出射したレーザ光は、ホログラム4を通り抜け、前記コリメータレンズ5により平行光に変換され、前記光学素子11を通り抜け、対物レンズ7で集光されて光ディスク8上にDVDディスクに適したスポットを形成する。光ディスク8からの反射光は、対物レンズ7を通り、前記光学素子11を通り抜け、コリメータレンズ5とホログラム4によりフォトダイオード12上に集光される。
【0052】
一方、 CD再生時には、前記光学素子11の前記膜10及び前記基板1の電極間に、交流電圧を印加する。すると、前記光学素子11の、前記基板1が凹になっている領域では、同心円形状に定在波が形成される。その結果、中央部の領域にあたる光は入射角と等しい角度で透過するが、波状に変形した領域にあたる光は散乱されて光ディスク8のスポットには集光されない。すなわち、前記光学素子11は、開口率を制限する光学素子として機能する。これにより、スポットの径は前記DVD再生時より大きくなる。中央部の領域の大きさを最適にすることにより、 CD再生に適したスポットを実現することができる。
【0053】
よって、実施例1と同様に、本光ヘッドにおいても、前記光学素子11への交流電圧を印加という電気信号のON/OFFのみの操作により開口率を切り替え、 DVDとCDを自在に再生可能な光ヘッドを構成することが可能になる。本光ヘッドでは、前記光学素子11を新たに挿入しなければならないが、従来同じような構成の光ヘッドで用いられていた液晶パネル等による方法と比較すると、前記光学素子11は、半導体プロセスで容易に量産可能であり、素子単価も安価である。また、液晶パネル等に比べて、光の損失もはるかに小さい。よって、大幅な装置のコストアップを招くことなく、電気信号の切り替えのみでCD/DVDの光ディスクに対応可能な光ヘッド、光学式記録再生装置を提供することが可能である。
【0054】
(実施例3)
図5は、実施例1で示したのと同様の本発明の光学素子を用いたページプリンタの一実施例の構成を示す説明図である。
【0055】
ページプリンタは、半導体レーザ3、コリメータレンズ14、シリンドリカルレンズ15、光学素子11、ポリゴンミラー16、球面レンズ17、トーリックレンズ18、感光ドラム19、制御回路20より構成される。前記半導体レーザ3から出射したレーザ光21は、コリメータレンズ14により平行光のビームとなり、シリンドリカルレンズ15を経て、ポリゴンミラー16に入射する。ポリゴンミラー16の反射光は、球面レンズ17、トーリックレンズ18を経て、感光ドラム19上に集光される。ポリゴンミラー16は、回転によりレーザビームの方向を一定角度内で素早く変化させ、感光ドラム19上を走査せしめる。前記半導体レーザ3、前記光学素子11、前記ポリゴンミラー16、前記感光ドラム19は、前記制御回路20により制御される。即ち、前記制御回路20は、ホストコンピュータよりデータを受け取り、印字データに変換後、前記印字データに応じて前記半導体レーザ3に流れる電流を変調し、同時に前記電流に同期させて前記ポリゴンミラー16及び前記感光ドラム19を回転させる。これにより前記感光ドラム19上に画像の静電潜像が形成される。
【0056】
ところで、ページプリンタで扱う画像は、一般に微細な絵柄の部分と、一面を均一に着色するベタ領域に大きく分かれる。微細な絵柄を印刷するためには、感光ドラム19上のレーザスポットは十分小さくなければならないが、逆にベタ領域を美しく印刷するためには、レーザスポットを大きくすることが望ましい。すなわち、スポットの径を切り替える手段を搭載すれば、微細な絵柄からベタ領域まで美しく印刷可能なプリンタを実現できる。
【0057】
そこで、前記光ヘッドと同様の光学素子を用いて、電気信号のON/OFFにより開口率を制限/解除することによりスポットの径を変更し、前記のようなプリンタを構成することが可能である。
【0058】
前記制御回路20は、前記光学素子11をも制御する。即ち、これから前記感光ドラム19上に描く絵柄が微細な明暗の変化を持つ画像と判断された場合は、前記光学素子11の前記膜10と前記基板1を同電位にして平坦な鏡とする。一方、ベタ領域であると判断された場合、前記光学素子11の前記膜10と前記基板1間に交流電圧を印加し、周辺部を回折格子にして散乱させ、開口制限されたミラーとする。中央部の常に平面ミラーとなる領域の大きさは、ベタ領域を美しく印刷するのに最適なスポットを形成する開口数になるように設計する。
【0059】
以上の構成により、前記光学素子11への交流電圧を印加という電気信号のON/OFFのみの操作により、スポットの径を切り替え、微細な絵柄の部分でもベタ領域でも、美しく印刷可能なプリンタを構成することが可能になる。本構成では、前記光学素子11は、半導体プロセスで容易に量産可能なため、素子単価も安価であり、また比較的大型でミラーを多用するページプリンタの光学系においては、前記光学素子11を挿入するのは困難ではない。よって、低コストで画質の美しいページプリンタを実現することができる。
【0060】
(実施例4)
図6は、本発明の他の一実施例で光学素子を説明するための説明図である。
【0061】
光学素子は、基板1、前記基板の凹部に取り付けられた電極9、前記基板を覆うように設けられた膜10より構成される。前記電極9は、前記膜10と前記基板1の間に静電力を生じせしめるためのもので、ITOを蒸着したものでもよいし、基板を3層構造にして、凹部に一面に電極が存在する構成にしてもよい。
【0062】
前記基板1は、周辺の矩形部分が同一の高さで凸になっており、この部分において、前記膜10と陽極接合されている。また、矩形状の凹部は当然ながら前記膜10と前記基板1に囲まれた空間を有する、中空な領域になっている。前記膜10はシリコン等の導電性の膜であり、静電力を働かせる際の電極を兼ねている。高分子膜等の導電性でない素材を用いるならば、別途電極をつければよい。また、前記膜10の、前記基板1と対向しない側の面には、入射する光を十分な反射率で反射するように金あるいは金クロム等の反射膜が積層されている。
【0063】
さて、前記膜10と前記基板1の電極9を同電位にしておけば、前記膜10は、自身の張力によって平坦な面を形成している。よって、前記膜10に入射した光は、そのまま入射角と同じ角度で反射する。
【0064】
次に、前記膜10及び前記基板1の電極9の間に、交流電圧を印加する。すなわち、電極9と膜10が周期的に電位差を持ったり同電位になったりするようにする。すると、二者間には、静電力により、電位差に応じて吸引力が発生する。電位差を持った瞬間においては、反射面から見て窪む方向に弾性変形する。一方、同電位になる瞬間においては、吸引力は解除され、前記膜10は弾性により、再び平坦な状態に戻ろうとする。前記過程を繰り返すことにより、前記膜10に振動が発生する。
【0065】
ここで、前記交流電圧の周波数に対して前記膜10の剛性が十分高ければ、駆動電圧に完全に同期して、前記膜10全体が一体で振動する。しかし、剛性が十分高くない場合、前記交流電圧の周波数が一定値を超えると、前記膜10は一体で動くことが不可能になる。その結果、変形により前記膜10上に波が発生し、固定端に向かって伝播する。前記波は前記固定端で反射され、もとの波と干渉して、波の速度および固定端の距離で決まる定在波を膜上に形成する。
【0066】
本例では、基板の凹部と凸部の境界は直線になっており、前記膜10上には、この線に平行線な節と腹を持つ一定間隔の山谷が生じる。この様子を破線で示す。前記膜10に光が入射した場合、前記膜10は、前記山谷のピッチで決まる特性を有する反射型の回折格子として機能する。即ち、山谷のピッチをpとすると、nλ/p=sinθを満たすθの方向に光を回折させる働きを有する。
【0067】
ところで、前記ピッチpは、前記交流電圧の周波数を変化させることによって、前記定在波の波長を固定端の整数分の1の段階で、意図的に変化させることが可能である。すなわち、本光学素子を回折格子と見た場合、その特性は変更可能であり、特定の波長に対する回折角を自在に制御することができる。
【0068】
たとえば、白色光を本光学素子に入射させると、回折により光は各色に分光される。さらに、各色の成分が回折する方向は、前記交流電圧の周波数により決めることができる。よって、反射光を捕らえる窓を設定し、前記窓の方向に目的の色成分の光を回折させるように駆動周波数を制御すれば、特定の色を選択的に取り出すことが可能である。即ち、カラーフィルターとして用いうる。
【0069】
図7は、本実施例の光学素子を用いたプロジェクタの例である。以下図6及び図7を用いて本実施例のプロジェクタについて説明する。
【0070】
プロジェクタは、白色光源21、集光レンズ22、光学素子27、受光レンズ23、光変調素子24、投影レンズ25、制御回路20より構成される。前記白色光源21から出射した光は、前記集光レンズ22を介して、前記光学素子23に入射する。前記光学素子23は、ある周波数frの交流電圧で駆動されている。よって、この状態において、前記光学素子27の膜10はピッチPrで波状に変形しているので、反射型の回折格子として機能する。回折格子は、入射光の波長に応じた回折角をもって入射光を回折する。よって、入射した白色光を、赤、緑、青等の各色に分光して反射する。受光レンズ23は、前記光学素子がfrで駆動されているとき、赤の領域の光を捕らえるように位置決めしておく。
【0071】
次に、光学素子を、前記frと異なる周波数fgの交流電圧で駆動する。前記と同様に、本光学素子は反射型の回折格子として機能するので、入射した白色光を、赤、緑、青に分光して反射する。しかし、前記frの場合とは周波数が異なるので、前記光学素子の表面の波状の変形の間隔も異なり、回折角も異なる。すなわち、分光された赤、緑、青の光が反射される方向は、frの場合と異なる。
【0072】
ここで、前記fgは、前記レンズ23がそのままの位置にありながら、緑の成分の光が前記レンズ23に入射するような値に設定する。すると、前記光学素子を前記frで駆動した場合は赤の光を、 前記fgで駆動した場合は緑の光を前記レンズ23で捕らえることが可能になる。すなわち、光学系を固定したままで、前記光学素子の駆動周波数の変更のみで、赤及び緑の光を選択的に取り出しうる。
【0073】
さらに同様に、青の光が前記レンズ23に入射するような、別の周波数fbを設定することができる。すると、今度は前記fbで駆動した場合は青の光を前記レンズ23で捕らえることが可能になる。すなわち、上記のようにして、駆動周波数の切り替えのみで白色光源から選択的に有色光を取り出しうるカラーフィルタとして前記光学素子は機能する。
【0074】
前記光学素子27の反射光は前記受光レンズ23を経て前記光変調素子24に入射する。さらにその反射光は前記投影レンズ25により拡大されてスクリーン26に導かれる。前記制御回路20は、前記光変調素子24と同期させてfr、fg、fbを切り替えることで、時分割でカラー画像を生成する。
【0075】
従来のプロジェクタでは、モーターによりカラーフィルタを回転していた。よって、大型であること、消費電力、騒音、発熱等が問題になっていた。一方、本構成では、そうした機構部分も必要なく、小型、超低消費電力、静粛で発熱のないカラーフィルタを実現可能である。よって、プロジェクタを小型・軽量・ローコスト化することが可能である。
【0076】
尚、本実施例で示した発明の意図するところは、電気信号により回折角を変化させる素子を用いて、白色光を色分解することである。よって、前記光学素子を図6で示した光学素子に限定するものではなく、他の素子によって実現してもよい。
【0077】
(実施例5)
また、実施例4と同様の、図6に示した光学素子を用いて、走査光学系を構成することができる。即ち、前記交流電圧の周波数を連続的に変化させることによって、前記定在波の波長を変化させ、回折角を連続的に変化させるのは実施例4と同じであるが、入射光を単色光源にして、1つの光ビームを自在な角度に反射させるような光学系を構成するものである。
すなわち、前記光学素子は、前記ピッチをp、前記回折光の回折角をθ、入射光の波長をλ、整数をnとすると、nλ/p=sinθを満たすような方向に入射光を回折させる。前記ピッチpは、前記光学素子の固定端の間隔と前記交流電圧の周波数により決定する。入射光を偏向させようとする角度の応じて、前記交流電圧の周波数を変化させればよい。
【0078】
また、最も効率よく回折させるためには、前記波状の変形の振幅が前記光源の波長の略1/4となるようにすればよい。例えば前記光源の波長が780nmだとすると、前記振幅は195nm程度のすればよい。前記振幅は、前記光学素子の前記膜の厚さ、凹部の深さ、前記交流電圧のレベル等で決定する。
【0079】
また、前記電極9の巾は、前記ピッチpの1/2程度の寸法にすれば、より効率的に前記定在波を生じうる。
【0080】
図8は、前記の効果を用いたページプリンタの例である。以下、図6及び図8を用いて本実施例のページプリンタについて説明する。
【0081】
ページプリンタは、半導体レーザ3、コリメータレンズ14、シリンドリカルレンズ15、ミラー34、光学素子27、球面レンズ17、トーリックレンズ18、感光ドラム19、制御回路20より構成される。前記半導体レーザ3から出射したレーザ光21は、前記コリメータレンズ14により平行光のビームとなり、前記シリンドリカルレンズ15を経て、ミラー34で進路を変更され、前記光学素子27に入射する。前記光学素子27の反射光は、前記球面レンズ17、前記トーリックレンズ18を経て、前記感光ドラム19上に集光される。前記光学素子27は、レーザビームの方向を一定角度内で素早く変化させ、感光ドラム19上を走査せしめる。前記半導体レーザ3、前記光学素子27、前記感光ドラム19は、前記制御回路20により制御される。即ち、前記制御回路20は、ホストコンピュータよりデータを受け取り、印字データに変換後、前記印字データに応じて前記半導体レーザ3に流れる電流を変調する一方、前記電流に同期させて前記光学素子27の駆動周波数を連続的に変化させ、前記感光ドラム19を回転させる。これにより前記感光ドラム19上に画像の静電潜像が形成される。
【0082】
従来のページプリンタでは、モーターによりポリゴンミラーを回転して、レーザビームを走査していた。よって、大型、消費電力、騒音、発熱等が問題になっていた。また、高速印刷の要求に対し、ポリゴンミラーによる方法は限界にきていた。本構成では、そうした機構部分も必要なく、小型、超低消費電力、静粛で発熱のない、高速の走査光学系を実現可能である。よって、ページプリンタを小型・軽量・ローコスト化することが可能である。
【0083】
尚、本実施例で示した発明の意図するところは、電気信号により回折角を変化させる素子を用いて、レーザビームを走査することである。よって、前記光学素子を図6で示した光学素子に限定するものではなく、他の素子によって実現してもよい。
【0084】
(実施例6)
図6で示した光学素子は、前記交流電圧のレベルを変化させることにより、前記膜10上の波型の振幅を変えることができる。即ち、回折効率を変更可能である。回折光のみを用いるような光学系を構成すれば、光強度変調素子として用いうる。
【0085】
図9に、図6の光学素子を光強度変調素子として用いたページプリンタの実施例を示す。以下、図6及び図9を用いて本実施例のページプリンタについて説明する。ページプリンタは、He−Neレーザ28、ビームコンプレッサ29、光学素子27、ビームエクスパンダ30、シリンダレンズ31、ポリゴンミラー16、トロイダルレンズ32、f−θレンズ33、感光ドラム19、制御回路20より構成される。 前記He−Neレーザ28から出射したレーザ光21は、前記ビームコンプレッサ29により前記光学素子27に入射せしめられる。前記光学素子27は一定周波数の交流電圧によって駆動されている。よって回折格子として機能し、入射光と同じ角度で反射する0次光以外に、±1次、2次、3次・・・等の回折光を生ずる。前記ビームエクスパンダ30は、+1次光のみが入射するように設置されている。レーザ光は、前記シリンダレンズ31を経て、前記ポリゴンミラーに入射する。前記ポリゴンミラーの反射光は、前記トロイダルレンズ32、前記f−θレンズ33球面レンズを経て、前記感光ドラム19上に集光される。前記ポリゴンミラー16は、回転によりレーザビームの方向を一定角度内で素早く変化させ、前記感光ドラム19上を走査せしめ、前記感光ドラム19上には静電潜像が形成される。
【0086】
さてここで、回折効率は、光学素子の前記膜10上の波の深さによって決まる。よって、光学素子を駆動している交流電圧のレベルを変化させ、前記膜10の変形量を操作すれば、シリンドリカルレンズに入射している+1次の回折光の光量を制御することができる。即ち、レーザビームを強度変調することが可能である。
【0087】
前記制御回路20は、ホストコンピュータよりデータを受け取り、印字データに変換後、前記印字データに応じて前記光学素子27の駆動電圧を変化させ、レーザビームの強度を変調する一方、それと同期させて前記ポリゴンミラー16と前記感光ドラム19を回転させる。これにより前記感光ドラム19上に画像の静電潜像が形成される。
【0088】
従来ガスレーザを用いる機器では、強度変調が必要な場合はAOM等を用いていた。本構成では、AOMのような素子を用いることなく、安価な本発明の光学素子によってレーザ光の強度変調が可能である。よって、機器をローコスト化することが可能である。また、静電力によっている本発明の光学素子は、応答がAOMより1桁から2桁速い。よって、さらに高速な変調を要求される機器を実現できる。
【0089】
尚、本実施例で示した発明の意図するところは、電気信号により回折角を変化させる素子を用いて、レーザ光を強度変調することである。よって、前記光学素子を図6で示した光学素子に限定するものではなく、他の素子によって実現してもよい。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、以下に示す効果がもたらされる。
【0091】
(1)本発明の光学素子は、交流電圧の印加/解除という単純な制御によって平坦な鏡の状態と回折格子の状態を切り替えることができる。一部のみ回折格子に切り替わるように構成すれば、開口率を制限する機能を有する鏡として用いることができる。
【0092】
前記のような光学素子を用いた光ヘッドでは、交流電圧の印加/解除のみの操作により、DVDとCDに自在に対応可能な光ヘッドを構成することができる。また、従来の立ち上げミラーに代えて前記光学素子を挿入する構成ですむため、部品数は増えることはない。また、前記光学素子は、半導体プロセスで容易に量産可能であり、素子単価も安価である。また、反射率を高くするのは容易であるので、光の損失も小さい。このため、 本光ヘッドをDVD−RAMのような記録可能な光ディスクに応用する場合でも、比較的出力の小さなレーザで済ませることができる。よって、本発明によれば、装置のコストアップを招くことなく、CD/DVDの光ディスクに対応可能な光ヘッド、光学式記録再生装置を提供することが可能である。
【0093】
(2)本発明の光学素子を、光透過性の材質で構成すれば、交流電圧の印加/解除という単純な制御によって素通しの状態と透過型回折格子の状態を切り替えることができる。一部のみ回折格子に切り替わるように構成すれば、開口率を制限する機能を有する鏡として用いることができる。
【0094】
前記のような光学素子を用いた光ヘッドでは、前記光学素子への交流電圧を印加という電気信号のON/OFFのみの操作により開口率を切り替え、 DVDとCDを自在に再生可能な光ヘッドを構成することが可能になる。本光ヘッドでは、前記光学素子を新たに挿入しなければならないが、従来同じような構成の光ヘッドで用いられていた液晶パネル等による方法と比較すると、前記光学素子11は、半導体プロセスで容易に量産可能であり、素子単価も安価である。また、液晶パネル等に比べて、光の損失もはるかに小さい。よって、大幅な装置のコストアップを招くことなく、電気信号の切り替えのみでCD/DVDの光ディスクに対応可能な光ヘッド、光学式記録再生装置を提供することが可能である。
【0095】
(3)本発明の光学素子を用いたページプリンタでは、前記光学素子への交流電圧を印加という電気信号のON/OFFのみの操作により、スポットの径を切り替え、微細な絵柄の部分でもベタ領域でも、美しく印刷可能なプリンタを構成することが可能になる。また、スポットの径を切り替えはnsオーダーの高速性が要求されるが、静電駆動される本発明の光学素子は液晶パネル等他の素子にみられない十分な高速性を有している。また、本構成では、前記光学素子11は、半導体プロセスで容易に量産可能なため、素子単価も安価であり、また比較的大型でミラーを多用するページプリンタの光学系においては、前記光学素子を挿入するのは困難ではない。よって、低コストで画質の美しいページプリンタを実現することができる。
【0096】
(4)本発明の光学素子は、駆動交流電圧の周波数を変化させることによって、回折格子としての特性を変更可能であり、特定の波長に対する回折角を自在に制御することができる。たとえば、白色光を本光学素子に入射させ、特定の方向に目的の色成分の光を回折させるように駆動周波数を制御すれば、特定の色を選択的に取り出すカラーフィルターとして用いうる。
【0097】
本発明の光学素子をカラーフィルタに用いたプロジェクタでは、従来のモーターによりカラーフィルタを回転するプロジェクタに比べ、小型、超低消費電力、軽量、ローコスト化することが可能である。
【0098】
(5) また、本発明の光学素子は、駆動交流電圧の周波数を変化させることによって、特定の波長に対する回折角を自在に制御することができるので、入射光を単色光源にして、走査光学系を構成することができる。
【0099】
従来のページプリンタでは、モーターによりポリゴンミラーを回転して、レーザビームを走査していた。よって、大型、消費電力、騒音、発熱等が問題になっていた。また、高速印刷の要求に対し、ポリゴンミラーによる方法は限界にきていた。本発明の光学素子を走査光学系に用いたページプリンタでは、小型、超低消費電力、静粛で発熱のない、高速の走査光学系を実現可能である。よって、ページプリンタを小型・軽量・ローコスト化することが可能である。
【0100】
(6)また、本発明の光学素子は、駆動交流電圧のレベルを変化させることにより、回折効率を変更可能である。回折光のみを用いるような光学系を構成すれば、光強度変調素子として用いうる。
【0101】
本発明の光学素子を光強度変調素子として用いたページプリンタでは、AOMのような素子を用いることなく、安価な本光学素子によってレーザ光の強度変調が可能である。よって、機器をローコスト化することが可能である。また、静電力によっている本発明の光学素子は、応答が速いので、高速な変調を要求される機器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学素子の一実施例を示す説明図。
【図2】本発明の光ヘッドの一実施例を説明するための説明図。
【図3】本発明の光学素子の他の一実施例を説明するための説明図。
【図4】本発明の光ヘッドの他の一実施例を説明するための説明図。
【図5】本発明のページプリンタの一実施例を説明するための説明図。
【図6】本発明の光学素子の他の一実施例を説明するための説明図。
【図7】本発明のプロジェクタの一実施例を説明するための説明図。
【図8】本発明のページプリンタの他の一実施例を説明するための説明図。
【図9】本発明のページプリンタの他の一実施例を説明するための説明図。
【図10】従来の光学素子の一例を説明するための説明図。
【図11】従来の光ヘッドの一例を示す説明図。
【図12】従来のページプリンタの一例を説明するための説明図。
【図13】従来のプロジェクタの一例を示す説明図。
【符号の説明】
1 基板
2 反射膜
3 半導体レーザ
4 ホログラム
5 コリメータレンズ
6 立ち上げミラー
7 対物レンズ
8 光ディスク
9 電極
10 膜
11 光学素子
12 フォトダイオード
13 液状物質
14 コリメータレンズ
15 シリンドリカルレンズ
16 ポリゴンミラー
17 球面レンズ
18 トーリックレンズ
19 感光ドラム
20 制御回路
21 光源
22 集光レンズ
23 受光レンズ
24 光変調素子
25 投影レンズ
26 スクリーン
27 光学素子
28 He−Neレーザ
29 ビームコンプレッサ
30 ビームエクスパンダ
31 シリンダレンズ
32 トロイダルレンズ
33 f−θレンズ
34 ミラー
35 カラーフィルター

Claims (2)

  1. 凸である領域及び凹である領域を有する基板と、前記基板を覆うように設けられた弾性変形する膜とを有し、周期的に変化する静電力により前記膜を波状に変形させ、前記波状の変形の振幅は、入射する光の波長の1/2から1/4の範囲内にあることを特徴とする光学素子。
  2. 前記静電力の加わる周期を変化させることにより、変形させた形状の間隔を変更することを特徴とする請求項1記載の光学素子の駆動方法。
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