JP3587576B2 - テトラ(置換フェニル)ホスホニウム・テトラ(置換フェニル)ボレートおよび工業用防腐防黴剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な化合物としてテトラ(置換フェニル)ホスホニウム・テトラ(置換フェニル)ボレートに関し、またこれを有効成分として含有する工業用防腐防黴剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、エマルジョン塗料、油性塗料、電着塗料、有機質接着剤、糊料、粘土、インキ、切削油、研削油、木材、皮革、繊維および紙製造時の白水などの工業用原材料および製品などが糸状菌、細菌、酵母などの微生物により劣化されるのを防止する薬剤として、チアベンダゾール、テトラクロロフタロニトリル、2,3,3−トリヨードアリルアルコールなどが知られている(「防菌防黴剤事典」日本防菌防黴学会、昭和61年8月22日発行)。
【0003】
一方、本発明の一般式(I)の新規な化合物に近似する既知の化合物としては、例えば次の化合物がある。
【0004】
▲1▼ 特開昭49−118798号公報には、下記の一般式(A) で表されるリン化合物とホウ素化合物との錯体を用いることにより、フェノールノボラック樹脂の硬化性と貯蔵安定性を改善することが記載されている。
【0005】
(式中、R1 〜R4 はアルキル基、アルケニル基またはアリール基を示し、R5 は置換されてもよいフェニル基を示す)。
【0006】
▲2▼ 特開平2−206667号公報には、下記の一般式(B) で表されるテトラ置換ホスホニウム・テトラフェニルボレートの使用により、熱湿時の樹脂に優れた電気特性を与えることが記載されている。
【0007】
(式中、Rはブチル基またはフェニル基を示す)。
【0008】
▲3▼ 特開昭62−132893号公報には、エポキシ化合物の硬化触媒又は難燃剤として有用であるとされ且つ下記一般式(C) で表されるテトラオルガノホスホニウム・テトラアリールボレートとして、数例の化合物が例示されている。
【0009】
(式中、R1 は水素原子、メチル基またはメトキシ基を示し、R2 、R3 は同じまたは異ってよいアルキル基、フェニル基、トリル基またはアニシル基などを示す)。
【0010】
但し、特開昭62−132893号公報の実施例で具体的に開示されたテトラオルガノホスホニウム・テトラアリールボレートは、ホスホニウム部分にフェニル基が結合する場合にそのフェニル基上に置換基をもたず且つテトラフェニルボレート部分のフェニル基上に置換基をもたない型のものに限られる。これに比べて、本発明による一般式(I)の化合物のボレート部分のフェニル基4個は置換基(R2 )を必らず有する点で相違する。
【0011】
さらに、上記の一般式(A) 、(B) 、(C) の化合物が防腐防黴効果をもつことは知られていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
工業用原材料や製品を細菌、糸状菌、酵母などの微生物による劣化からまもるため、これらの微生物を非選択的にしかも撲滅的に防腐防黴効果をます薬剤が必要とされている。
【0013】
しかしながら、前記した従来の防腐防黴剤などは人畜に対する毒性、防腐防黴効果において、必ずしも満足しうるものではない。したがって新しい化学構造を有し、上記した問題のない工業用防腐防黴剤が望まれている。
【0014】
本発明はこのような観点からなされたものであって、従来の薬剤に代って、各種微生物を非選択的にしかも撲滅的に防腐防黴効果を発揮させしかも微生物の発生を長期にわたって防止する工業用防腐防黴剤を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した目的に合致した工業用防腐防黴剤を開発するために、種々の化合物を合成し、検討した。
【0016】
その結果、下記の一般式で表わされるテトラ(置換フェニル)ホスホニウム・テトラ(置換フェニル)ボレートが工業用防腐防黴剤としての効果を有して有用であることを見い出した。
【0017】
したがって、第1の本発明の要旨とするところは、次の一般式
(式中、R1 及びR2 はそれぞれに低級アルキル基又は低級アルコキシ基を表し、mおよびnはそれぞれに0又は1〜4の整数であるが、但しmとnとの合計が4である)で示されるテトラ(置換フェニル)ホスホスホニウム・テトラ(置換フェニル)ボレートにある。
【0018】
一般式(I)の本発明化合物は、陽電荷をもつテトラ(置換フェニル)ホスホニウムと、陰電荷をもつテトラ(置換フェニル)ボレートとのイオン結合物の形である。一般式(I)の本発明化合物において、R1 およびR2 としての低級アルキル基又は低級アルコキシ基は、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4を含むものであり、直鎖状もしくは分岐鎖状であってよい。低級アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、 sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などがあり、また低級アルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、 sec−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基が挙げられる。R1 およびR2 としてのこれら低級アルキル基又は低級アルコキシ基はフェニル基上のオルト位、メタ位又はパラ位の何れにも置換できる。
【0019】
本発明による一般式(I)の化合物の具体的な例には、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−トリル)ボレート,テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−エチルフェニル)ボレート,テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−メトキシフェニル)ボレート,テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−エトキシフェニル)ボレート,テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−ターシャリーブトキシフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(m−トリル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ(m−メトキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)フェニルホスホニウム・テトラ(p−トリル)ボレート、テトラ(p−トリル)ホスホニウム・テトラ(p−トリル)ボレート、トリ(p−メトキシフェニル)フェニルホスホニウム・テトラ(p−トリル)ボレート等があげられる。
【0020】
本発明による一般式(I)の化合物について上記した具体例化合物の化学構造を化合物No. と共に次の表1に示すが、本発明化合物は表1に示す化合物例に限定されるものでない。なお、化合物No. は後記の実施例および試験例でも参照される。
【0021】
【表1】
一般式(I):
【0022】
次に、本発明による一般式(I)の化合物の製造方法について説明する。
一般式(I)のテトラ(置換フェニル)ホスホニウム・テトラ(置換フェニル)ボレートは下記の反応式(A) に従って合成できる。
【0023】
反応式 (A) :
【0024】
但し、上記の反応式でR1 およびR2 はそれぞれに前記のアルキル基又はアルコキシ基であり、mおよびnは0又は1〜4の整数であるがmとnの合計は4である。Xはハロゲン原子、好ましくは塩素、臭素又はヨウ素であり、Meはアルカリ金属、特にナトリウム、カリウム又はリチウムであり、ナトリウムであるのが好ましい。
【0025】
すなわち、一般式(I)の化合物は式 (III)のテトラ(置換フェニル)ホスホニウムハライドと、式(II)のアルカリ金属テトラ(置換フェニル)ボレートとを含水の有機溶媒中で反応させることにより製造できる。
なお、この反応は対イオン交換反応である。この反応は室温で進行するが、加温してもよい。
上記の反応式(A) による反応では、式 (III)のホスホニウム化合物と式(II)のボレート化合物とを混合させる割合はモル比で1:0.9 〜1.1 の範囲であるが、好ましくは1:1である。
【0026】
反応式(A) の対イオン交換反応は、メタノール又は水とメタノールとの混合物(100: 0.1〜10:90の容量比) 、アセトニトリル、又は水とアセトニトリルとの混合物(100:0.1 〜10:90の容量比)等の有機溶媒又は含水混合溶媒中で両化合物 (III)および(II)とを常温で混合することにより容易に行える。
【0027】
本反応ではアルカリ金属ハライド(MeX) 、例えば塩化ナトリウムが副生するが、この副生した塩を除去するため、反応生成物として得た化合物(I)を水洗するか、あるいは再結晶することにより、塩濃度を数百ppm 以下、好ましくは数10ppm 以下まで除去するとよい。
【0028】
反応終了後、式(I)の化合物は、微細な不溶物として沈澱して得られるから、これをろ過して乾燥すればよい。一般式(I)の本発明化合物の製造例は後記の実施例1〜3に示す。
【0029】
なお、上記の製造方法で原料として用いた式 (III)のホスホニウム化合物のうち、テトラフェニルホスホニウムブロマイドは公知の物質であるが、置換基のついたテトラアリールホスホニウムハライドも公知の方法、例えば「ビュレタン ドゥ ラ ソシェテ シミク ドゥ フランス」(Bull.Soc,Chim.Fr.,)1293(1969)に記載の方法に準じてトリアリールホスフィンとアリールハライドとの反応により合成される。
【0030】
式(III) のホスホニウム化合物の合成は次の反応式(B) で示される方法で行うことができる。
【0031】
反応式 (B) :
【0032】
反応式(B) でYは水素原子又はメチル基を示し、Zは水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。
【0033】
また、上記の方法で用いられる式(II)のボレート化合物は既知な物質であり、これはアルキル又はアルコキシ置換フェニルのグリニヤール試薬を作り、これを公知の方法、例えば米国特許第 2853525号明細書記載の方法に準じて硼素トリハライドと反応させて合成される。
【0034】
式(II)のボレート化合物の合成は下記の反応式(C) で示される方法で行うことができる。
反応式 (C) :
【0035】
【0036】
但し反応式(C) において、R2 は前記に同じ低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、Xは臭素又は塩素であり、Meはアルカリ金属、例えばナトリウム、カリウム又はリチウムである。
【0037】
上記の反応式(C) の方法の反応(i)はグリニヤール反応に準じて行われ、ここで使用される三ハロゲン化ボロン(V)は通常はエーテル、テトラヒドロフラン等の錯体を使用するのが望ましい。反応(ii)の反応終了後、その反応液を濃縮すると、化合物(II)が容易に結晶として得られるが、反応液から化合物(II)を水で抽出して、そのまま抽出液を化合物 (III)と反応させてもよい。
式(II)化合物の製造例は後記の参考製造例3〜4に示す。
【0038】
以下に、参考製造例と実施例を示して本発明を具体的に説明する。
【0039】
参考製造例1
テトラフェニルホスホニウムブロマイド〔式(III) の化合物〕の合成
フラスコに塩化ニッケル(II) 4.7g,DMF 350g,トリフェニルホスフィン50.0gおよびブロムベンゼン84.1gを仕込み、8時間、 150℃で加熱攪拌した。次いで反応液を室温まで冷却し、セライトろ過した。反応液を減圧濃縮後、水 750g,トルエン 170gを加えて加熱し、均一化した。水層を冷却し、析出した結晶をろ過した。
【0040】
次いでこの結晶を 300mlのトルエンで洗浄後、乾燥して白色結晶状の表題化合物の78.9gをえた。トリフェニルホスフィンに基づいた収率は98%であった。
【0041】
参考製造例2
トリ(p−トリル)フェニルホスホニウムブロマイド〔式(III) の化合物〕の合成
参考製造例1で用いたトリフェニルホスフィンの代わりにトリ(p−トリル)ホスフィンを用いる以外は参考製造例1と全く同様に合成反応と後処理とを行った。表題化合物が白色結晶として68.6g(収率78%)得られた。
【0042】
参考製造例3
ソジウム・テトラ−(p−トリル)ボレート〔式(II)の化合物〕の合成
p−トリル・マグネシウムクロライド1350ml(1.73モル)のTHF溶液に、三フッ化ボロンのジエチルエーテル錯体53.3g(0.375モル) のトルエン溶液を攪拌しながら30℃以下で1時間で滴下した後、2時間反応させた。次いで、反応生成物を含む反応液系に20%NaCl水溶液 576gを20〜25℃で滴下し、30分熟成した。
【0043】
有機層をデカントし、水層をトルエン 500mlで抽出した抽出液を前記の有機層にあわせ、これらをセライトろ過した。ろ液をトルエンに溶媒置換しながら濃縮し、析出した結晶を濾別した。次いで、この結晶を 300mlのトルエンで洗浄後、乾燥して白色結晶状の表題化合物の 119.3g(0.3モル) を得た。三フッ化ボロンに基づいた収率は80%であった。
【0044】
参考製造例4
ソジウム・テトラ−(p−メトキシフェニル)ボレート〔式(II)の化合物〕の合成
参考製造例1で用いたp−トリル・マグネシウムクロライドの代りにp−メトキシフェニル・マグネシウムクロライドを用いる以外は参考製造例1と全く同様に合成反応と後処理とを行った。表題化合物が白色結晶として81.6g(収率45%)得られた。
【0045】
実施例1
テトラフェニルホスホニウム・テトラ−(p−トリル)ボレート(化合物 No.1)の合成
テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド 125.8g(0.30モル)をメタノール−水(1:1、容量比)混合溶媒2000mlに溶解してその溶液をフラスコに入れ、その溶液に、1000mlの水に溶解したソジウム・テトラ−(p−トリル)ボレート 119.3g(0.30モル)を攪拌しながら滴下すると、白濁し微細な不溶物が生じる。滴下終了後、室温で1時間攪拌を続け、次いで結晶を濾別した後、水で洗浄し、乾燥して白色粉末状結晶として表題化合物の 182g(収率85%,Clイオン含有量 10ppm)を得た。
【0046】
この結晶の融点は 247℃であり、元素分析値は次のとおりである。
元素分析値
実測値:C 87.02 ,H 6.68,P 4.46%
計算値:C 87.39 ,H 6.77,P 4.33%
表題化合物の赤外吸収スペクトル(KBr錠)を添付図面の図1に示す。
上記の元素分析値およびNMRスペクトル、等により上記の白色結晶の化合物はテトラフェニルホスホニウム・テトラ−(p−トリル)ボレートと確認された。
【0047】
実施例2
テトラフェニルホスホニウム・テトラ−(p−メトキシフェニル)ボレート(化合物 No.3)の合成
実施例1で用いたソジウム・テトラ−(p−トリル)ボレートに代えて、ソジウム・テトラ−(p−メトキシフェニル)ボレートを用いる以外は実施例1と全く同様に反応と後処理を行った。白色粉末状結晶として表題化合物の 119.0g(収率87%,Clイオン含量 10ppm)を得た。
【0048】
この結晶の融点は 204℃であり、元素分析値は次のとおりである。
元素分析値
実測値:C 80.01 ,H 6.36,P 3.80%
計算値:C 80.20 ,H 6.21,P 3.98%
表題化合物の赤外吸収スペクトル(KBr錠)を添付図面の図2に示す。
上記の元素分析値およびNMRスペクトル、等により上記の白色結晶の化合物はテトラフェニルホスホニウム・テトラ−(p−メトキシフェニル)ボレートと確認された。
【0049】
実施例3
トリ(p−トリル)フェニルホスホニウム・テトラ(p−トリル)ボレート(化合物 No.8)の合成
実施例1で用いたテトラフェニルホスホニウム・ブロマイドに代えて、トリ(p−トリル)フェニルホスホニウムブロマイド 138.4gを用いる以外は実施例1と全く同様に反応と後処理を行った。
白色粉末状結晶として表題化合物の 197.5g(収率87%、Clイオン含量 10ppm)を得た。
【0050】
この結晶の融点は 270℃であり、元素分析値は次のとおりである。
元素分析値
実測値:C 87.03 ,H 7.32,P 4.00%
計算値:C 87.29 ,H 7.19,P 4.08%
表題化合物の赤外吸収スペクトル(KBr錠)を添付図面の図3に示す。
上記の元素分析値およびNMRスペクトル、等により上記の白色結晶の化合物はトリ(p−トリル)フェニルホスホニウム・テトラ(p−テトラ)ボレートと確認された。
【0051】
更に、第1の本発明による一般式(I)の化合物は、前記したとおり、各種の工業的材料の微生物による劣化を防止できる防腐活性、防黴活性を有するものであるから、それを工業用防腐防黴剤の有効成分として利用できる。
【0052】
従って、第2の本発明においては、次の一般式
(式中、R1 及びR2 はそれぞれに低級アルキル基又は低級アルコキシ基を表し、mおよびnはそれぞれに0又は1〜4の整数であるが、但しmとnとの合計が4である)で示されるテトラ(置換フェニル)ホスホスホニウム・テトラ(置換フェニル)ボレートを有効成分として含有することを特徴とする、工業用防腐防黴剤が提供される。
【0053】
第2の本発明による防腐防黴剤は一般式(I)の化合物の単独から成ることもできるが、これを担体及び(又は)補助剤と混和してなる組成物の形であってもよい。
【0054】
第2の本発明による工業用防腐防黴剤は、上記の組成物の形にする場合、次のような方法で製剤化できる。
【0055】
すなわち、本発明の一般式(I)の有効成分化合物と適当な担体及び補助剤、例えば界面活性剤、結合剤、安定剤などを配合して混合し、常法によって水和剤、乳剤、ゾル剤(フロアゾル)及びその他の適当な剤形に製剤化すればよい。
【0056】
これらの製剤中の本発明の一般式(I)の化合物の含有量は、水和剤、乳剤、液剤、ゾル剤およびその他の適当な製剤などに、1から90%(重量%;以下同じ)の範囲で有り得る。
【0057】
使用できる担体としては、工業用防腐防黴剤に常用されるものであれば固体あるいは液体のいずれも使用でき、特定のものに限定されるものではない。
【0058】
固体担体としては、鉱物質粉末、例えばカオリン、ベントナイト、クレー、モンモリロナイト、珪藻土、雲母、バーミキュライト、石膏、炭酸カルシウム、燐灰石、ホワイトカーボン、消石灰、珪砂、硫安、尿素など;植物性粉末、例えば大豆粉、小麦粉木粉、タバコ粉、でんぷん、結晶セルロースなど;さらにアルミナ、珪酸塩、糖重合体、高分散性珪酸、ワックス類、などが上げられる。
【0059】
また液体担体としては、水、アルコール類、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコールなど;芳香族炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロルベンゼン、クメン、メチルナフタレンなど;ハロゲン化炭化水素類、例えばクロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロルエチレン、トリクロロフルオルメタン、ジクロルジフルオルメタンなど;エーテル類、例えばエチルエーテル、エチレンオキシド、ジオキサン、テトラヒドロフランなど;ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなど;エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールアセテート、酢酸アミルなど;ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリルなど;スルホキシド類、例えばジメチルスルフォキシドなど;アルコールエーテル類、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど;アミン類、例えばエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、イソブチルアミンなど;脂肪族または脂環族炭化水素類、例えばn−ヘキサン、シクロヘキサンなど;さらに工業用ガソリン(石油エーテル、ソルベントナフサなど)及び石油留分(パラフィン類、灯油、軽油など)、などがあげられる。
【0060】
また乳剤、水和剤、ゾル剤(フロアブル剤)などの製剤の場合には、乳化、分散、可溶化、湿潤、発泡、拡展などの目的で界面活性剤が配合される。
【0061】
このような界面活性剤としては、次に示されるものが上げられるが下記のもののみに限定されるものではない。
【0062】
【0063】
非イオン型界面活性剤:
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステルなど
【0064】
陰イオン型界面活性剤:
アルキルベンゼンスルフォネート、アルキルスルフォサクシネート、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート、アリールスルフォネート、ラウリルサルフェートなど
【0065】
陽イオン型界面活性剤:
アルキルアミン類(ラウリルアミン、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド)など
【0066】
両性型界面活性剤:
カルボン酸(ベタイン型)硫酸エステルなど。
【0067】
またこれらの他に、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビアゴム、ポリビニルアセテート、ゼラチン、カゼイン、アルギンサンソーダ、トラガカントガム、グアガム、ザンサンガム、ヒドロキシプロピルセルロースなどの増粘剤および各種補助剤が配合することができる。
【0068】
さらに必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤などのような安定化剤を適量加えることができる。
また、第2の本発明の工業用防腐防黴剤は他の各種の農業用殺菌剤や各種の工業用防腐防黴剤と混合して用いることができる。
【0069】
第2の本発明の工業用防腐防黴剤はつぎのように使用される。すなわち、一般式(I)の化合物を単独にそのまゝ、もしくは後記の実施例に準じて製剤化した各種の製剤をそのまま、あるいは水もしくは適当な有機溶剤で希釈して、
1)各種の工業用原材料中にまたは製造工程中にあるいは製品に添加混合する
方法
2)各種の工業用原材料や製品の表面に塗布または噴霧する方法
3)各種の工業用原材料や製品を本発明の工業用防腐防黴剤の希釈液中に浸漬
する方法など
を含めて、これまでに一般に行われてきた工業用防腐防黴剤の使用方法にしたがって各種の方法により使用できるが、何等特定の方法のみに限定されるものではない。
【0070】
なお、本発明による一般式(I)のホスホニウム・ボレート化合物は各種の合成樹脂、例えばエポキシ樹脂に難燃剤として配合して利用できる。
【0071】
以下に、第2の本発明の薬剤について実施例を若干あげるが、有効成分の配合割合、補助成分及びその他の添加量などは以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
実施例4 フロアブル剤
化合物 No.1の化合物20部、ラウリルサルフェート2部、ザンサンガム2部、ヒドロキシプロピルセルロース1部、蒸留水75部をボールミルに入れ12時間粉砕混合して有効成分20%を含むブロアブル剤を得た。
【0073】
実施例5 水和剤
化合物 No.2の化合物20部、ラウリルサルフェート7部及びクレー73部を均一に混合粉砕して有効成分20%を含む水和剤を得た。
【0074】
実施例6 乳 剤
化合物 No.3の化合物5部、ジメチルスルフォキシド85部、メチルイソブチルケトン5部、ソルポール 800A(東邦化学工業株式会社製の乳化剤の商品名)5部を混合溶解して有効成分5%を含む乳剤を得た。
【0075】
試験例1 エマルジョン塗料の防黴現場試験
実施例4に準じ調製した供試薬剤の所定量を、市販の酢酸ビニルエマルジョン白色塗料中に種々な有効成分濃度で加え、充分に混合して塗料液とした。
【0076】
この塗料液をコンクリート壁面に塗布し3か月後、6か月後、12か月後、18か月後、および24か月後にカビなどの雑菌の発生を次の基準により調査した。
その結果は下記の表2のとおりである。
【0077】
調査基準
3:カビなどの雑菌の発生無し
2:カビなどの雑菌の発生が塗布面の1部に認められ、カビ及び雑菌の発生表面の面積は全面積の3分の1をこえない
1:カビなどの雑菌の発生が塗布面の全体に認められ、カビ及び雑菌の発生表面の面積は全面積の3分の1以上におよぶ
【0078】
【表2】
【0079】
試験例2 でんぷん糊の劣化試験
タピオカでんぷん15部と、実施例5に準じて調製した水和剤を所定の有効成分濃度となるよう加えた水85部とを 200mlのフラスコに入れ、かき混ぜながら70℃としついで徐々に冷却しながらでんぷん糊を調製した。このでんぷん液をビーカーにいれアルミ箔で蓋をし35℃±2℃、湿度99〜95%の恒温恒湿器で培養した。
【0080】
1か月、2か月、及び3か月後のでんぷん溶液の雑菌による劣化を次の基準により調査した。
その結果は表3のとおりである。
【0081】
調査基準
A:正常
B:粘度低下あり
C:粘度低下及び腐敗臭あり
【0082】
【表3】
【0083】
試験例3 カゼイン溶液の劣化試験
カゼイン10部と、実施例6に準じて調製した水和剤を所定の有効成分濃度となるよう加えた水88部とアンモニア水2部とを 200mlのフラスコに入れ、かき混ぜながら80℃としついで徐々に冷却しながらカゼイン溶液とした。このカゼイン溶液をビーカーにいれアルミ箔で蓋をし27℃±2℃、湿度99〜95%の恒温恒湿器で保存した。
【0084】
1か月、2か月、及び3か月後のカゼイン溶液の雑菌による劣化を次の基準により調査した。
その結果は表4のとおりである。
【0085】
調査基準
A:正常
B:粘度低下あり
C:粘度低下及び腐敗臭あり
【0086】
【表4】
【0087】
試験例4 樹脂シートの劣化現場試験
塩化ビニル樹脂 100部、可塑剤50部、安定剤2部、滑剤 0.2部、顔料4部、充填剤 0.2部に化合物 No.3を後記の表5に示す濃度になるように加え、混合後に
200℃で処理し常法により成型し樹脂シートを得た。
【0088】
また、上記の塩化ビニル樹脂をプロピレン樹脂に、化合物 No.3を化合物 No.1にそれぞれ代え、混合後の温度を 230℃として処理し、樹脂シートを得た。
【0089】
さらに、上記の塩化ビニル樹脂をABS樹脂に、化合物 No.3を化合物 No.8にそれぞれ代え、混合後の温度を 250℃として処理し、樹脂シートを得た。
【0090】
各樹脂の成型シートを、カビの生えた北側スレート板に張り付け1か月後、2か月後および3か月後にカビの発生を下記の基準により調査した。
その結果は表5のとおりである。
【0091】
調査基準
−:かびの発生無し
+:かびの発生あり
【0092】
【表5】
【0093】
【発明の効果】
本発明の一般式(I)の化合物、あるいはこれを含有する工業用防腐防黴剤を使用すると次のような効果がもたらされる。
第1に強力な防腐防黴効果を示す。
第2に強力な防腐防黴効果が長期にわたり発揮される。
第3に本発明の薬剤は細菌、酵母、糸状菌などの各種微生物の発生を非選択的にかつ撲滅的に阻止する。従って、工業用防腐防黴剤として幅広く使用できる。
第4に人畜毒性などの問題が少ない。
第5に工業用原材料製品に散布、噴霧、塗布、混入などの種々の方法で使用できるが、いずれの方法を用いても工業用原材料や製品に悪影響を与えることはない。
【0094】
本発明の一般式(I)の化合物、あるいはこれを含有する防腐防黴剤は上記したような特徴を有しているので、水性または油性塗料、カゼイン、ポリビニルアルコール、でんぷんなどの接着剤または糊料、湿潤パルプおよびチップなどの製紙用原料、木材、合板、竹材、皮革などの加工品及び材料、天然繊維、合成繊維及びこれらの混紡製品、材料、合成エマルジョンまたはエマルジョンタックス、コンクリート混和剤、作動油剤、プラスチック、特に家電装置の構造材用の合成樹脂およびゴムなどにおける劣化障害の防止や抄紙工程中のスライム障害の防止、並びに材料表面のかび発生の防止などのような種々の工業用原材料や製品の防腐防黴剤として幅広く使用することができる。また、エポキシ樹脂に難燃剤としても配合できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−トリル)ボレートの赤外吸収スペクトルを示すチャート。
【図2】テトラフェニルホスホニウム・テトラ(p−メトキシフェニル)ボレートの赤外吸収スペクトルを示すチャート。
【図3】トリ(p−トリル)フェニルホスホニウム・テトラ(p−トリル)ボレートの赤外吸収スペクトルを示すチャート。
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