JP3587437B2 - フィラーレンズの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、LCD、EL、FED等のディスプレイに好適に用いられ、特に、これらディスプレイの輝度ムラ防止、コントラスト向上に優れた効果を発揮するフィラーレンズの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
LCD、EL、FED等のディスプレイは、近年開発が目覚ましい。特に、LCDは、ノートパソコン、携帯端末等あらゆる分野に普及しており、将来への期待も大きい。このLCDは、液晶パネルを照明する光の取り入れ方式により、反射型と透過型とに大分される。反射型は、反射率の高いアルミニウム膜等を貼った反射板を液晶パネルの背面に配し、ディスプレイ表面側から入射する外光を反射板で反射させて液晶パネルを照明し液晶画像を得る。一方、透過型は、液晶パネルの背面に配したバックライトユニットにより液晶パネルを照明する方式である。反射型にあっては、アルミニウムの地色が出てコントラストが悪化することを防ぐために、液晶パネルと反射板との間に光を適度に拡散する媒体を介装して背景色をペーパーホワイト色に近づけることが行われている。また、透過型におけるバックライトユニットは、一般に、冷陰極管を備えたアクリル導光板等の光源と、この光源の光を拡散する光拡散板とを備え、均一な面状の光が液晶パネルを照明する構成となっている。
【0003】
このように、反射型、透過型のいずれの方式にあっても、概ね光拡散性の媒体(以下光拡散体と記す)は用いられている。この光拡散体としては、例えば、透明樹脂フィルムの片面に、光拡散性のフィラーが分散された結着樹脂を積層したものが挙げられる。このような従来の光拡散体は、結着樹脂に溶剤を混合した溶液中にフィラーを分散させて塗料とし、この塗料をスプレーやコーターでフィルム上に塗工するといった方法で製造されていた。図10は、そのような製造方法で得られる光拡散体を模式的に示しており、フィルム1上に結着樹脂の溶液が硬化した結着層2が形成され、この結着層2中にフィラー3が分散している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の光拡散体の全光線拡散透過率と全光線拡散反射率は、入射光の方向が、フィラー側とフィルム側で、大差なく、ほぼ同じ値を示す。光の入射方向によらず、光拡散性が同じであること、即ち、指向性がないことが分かる。この理由としては、フィラーが結着層中に完全に埋め込まれ、更に、フィラーが厚さ方向に重なり複層の状態になっていたりすることや、フィラーの充填密度が粗の場合に表面形状が比較的対称なサインカーブ(正弦曲線)になることなどがあげられる。
同じ様な光拡散性を示す媒体として、透明フィルムの片面上に、フォトリソグラフ等の方法でマイクロレンズを形成したレンズフィルムが提案されている。このレンズフィルムの全光線拡散透過率と全光線拡散反射率は、レンズ側から光を入射した場合と、フィルム側から光を入射した場合で、大きな差があり、光拡散性に指向性があることが分かっている。この指向性を応用することで、例えば、上記反射型LCDに搭載した場合など、外光を効率よく反射させ、明るい画像を得ることが可能となる。
また、従来の光拡散体は、その構成から拡散した光が互いに打ち消し合う結果となり、透過率が減衰(光エネルギーが損失)していたが、レンズフィルムの場合、光がレンズ面で指向性をもって拡散されるため、この減衰が極めて少ないことも分かっている。この特徴から、例えば、上記透過型LCDに搭載した場合など、透過率の減衰が少ないことから、高コントラストで明るい画像を得ることができる。
このように、レンズ形状を有する光拡散体は、光拡散体として非常に好ましいことが理解される。しかしながら、フォトリソグラフは、1μm以下の微小レンズをつくるのには向いているが、それ以上大きなレンズ加工には不向きであり、レンズが小さすぎると、ニュートンリングが発生するためフォトリソグラフでは製造が困難となる。
【0005】
そこで、本発明者らは、フィラーを結着層の表層に一部が突出するよう埋め込み、突出したフィラーが微細なレンズとなるような構成であれば、上記レンズフィルムと同様の指向性がある光拡散性(以下レンズ効果と記す)が発現されるのではないかと考え、次のような製造方法を試みた。それは、まずフィルム上に結着層を形成し、次いで結着層にフィラーを付着させ、その後、加圧ローラを用いて、該フィラーを結着層に埋め込むというものである。この方法は、加圧ローラの圧力バランスが重要となるが、フィルム厚のバラツキ等で、両端部と中央部に圧力差が生じ、フィラーの埋め込み深さに差が出ることが判った。これは、特に大きな面積で処理する場合は顕著であった。また、粒子径10μm以下のフィラーを埋め込む場合は、加圧ローラから個々のフィラーに伝わる圧力が分散し圧力不足となるため、フィラーを十分に結着層に埋め込むことができないことも認められた。このように従来の光拡散体はレンズ効果が不十分であるか、製造上問題があった。
【0006】
したがって本発明は、フィラーのレンズ効果が十分発現され、例えば、上記光拡散体と同じ様に適用した場合、その機能が著しく増大するようなフィラーレンズの製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のフィラーレンズの製造方法は、
〔1〕基体上に、直接または他の層を介して結着層を積層する工程、
〔2〕フィラーを加圧媒体によって結着層に埋め込む工程、
〔3〕前記工程で得た積層体に付着した余剰フィラーを除去する工程、
を具備していることを特徴とする。〔2〕の工程の前に、〔1〕’フィラーを結着層上に積層する工程、をまず行うことにより、フィラーの抜け等外観上の欠点が減少し、フィラーの埋め込みが確実に行えることから好ましい。〔2〕のフィラーを結着層に埋め込む具体的方法としては、加圧媒体を粒状物とし、この加圧媒体を振動させることにより、加圧媒体がフィラーを打撃して結着層に埋め込むといった形態が挙げられる。この方法によれば、フィラーの埋め込み深さが均一化される等の利点を有する。
本発明のフィラーレンズの製造方法によれば、基体と、この基体上に、直接または他の層を介して積層された結着層と、この結着層の表層に、当該結着層の表面から一部が突出する状態で埋め込まれたフィラー層とを備えたフィラーレンズを好適に製造することができる。このフィラー層は、突出している部分が微細なレンズ形状を呈しているため、上述のレンズ効果を得ることが可能となる。
上記フィラー層は、フィラーによるレンズ効果を顕著に得ることができる点で、結着層表層に単層で、フィラーの一部が結着層の表面から突出するように埋め込まれている構成が好ましい。更に、一個一個のフィラーが、面方向で高密度に配置していることが好ましい。また、良好なレンズ効果を引き出すには、フィラーは球状であることが望ましく、その真円度は、80%以上、より好ましくは90%以上が良い。球状フィラーは、埋め込まれる深さのばらつきが生じ難いというメリットもある。フィラーの埋め込めこまれる深さは、結着層からのフィラーの剥離が抑えられ、かつ結着層の表面から突出して確実にレンズ効果が発現され得るために、結着層に、直径の10〜90%、好ましくは30〜90%、より好ましくは40〜70%埋め込まれていることが望ましい。
なお、本明細書では、「真円度」とは下記一般式(1)で定義される。
真円度=4πA/B 2 …(1)
A:フィラー粒子の投影面積
B:フィラー粒子の周囲長
この真円度は、例えばフィラー粒子を透過型電子顕微鏡で撮影して投影像を得、それを画像解析装置(例えば日本アビオニクス社製、商品名:EXECLII)を用いて画像解析することにより得た上記A、Bから算出することができる。
上式から明らかなように、真円度は粒子が真球に近づけば1に近くなり、不定形の場合はそれより小さな値となる。
また、本発明により製造されるフィラーレンズは、フィラー層を構成するフィラーの屈折率が1.45〜1.55であることが好ましく、更に、基体、結着層及びフィラーの各々の屈折率の差が0.30以下であることを好ましい形態としている。
【0011】
図1は、上記製造方法によって得られる本発明のフィラーレンズの一例を模式的に示した断面図である。このフィラーレンズLは、基体1上に結着層2が直接積層され、この結着層2の表層に、多数のフィラー3が、単層で、結着層2の表面から一部突出する状態で、更に、面方向で高密度になるように埋め込まれることにより、フィラー層3Aが形成されている。
【0012】
A.材料の具体例
次に、本発明により製造されるフィラーレンズに用いる好適な材料を示す。
(1)基体
本発明における基体としては、公知の透明なフィルムを使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリアレート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等からなる各種樹脂フィルムを好適に使用することができる。本発明における基体は、このようなフィルムに限定されず、上記樹脂からなる硬質板や、樹脂板以外にも石英ガラス、ソーダガラス等ガラス材料からなるシート状部材も用いることができる。
基体としては光が透過されるものであれば非透明状物のものでもかまわないが、液晶ディスプレイに用いる場合等は屈折率の適合上、屈折率(JIS K−7142)が1.45〜1.55の範囲にある透明基体が望ましい。具体例には、トリアセチルセルロース(TAC)やポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂フィルム等をあげることができる。これら透明基体の透明性は高いもの程良好であるが、光線透過率(JIS C−6714)としては80%以上、より好ましくは90%以上のもの、ヘイズ( JIS K7105)としては1.0以下、より好ましくは0.5以下のものである。また、その透明基体を小型軽量の液晶ディスプレイに用いる場合には、透明基体はフィルムであることがより好ましい。透明基材の厚さに関しては、軽量化の観点から薄いほうが望ましいが、その生産性を考慮すると、1μ〜5mmの範囲のものを使用することが好適である。
【0013】
(2)結着層
本発明における結着層は、例えば、粘着剤を上記基体上にコーティングして得られる粘着剤層が好適である。その粘着剤としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂製粘着剤を挙げることができる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用してもよい。特に、アクリル系樹脂は、耐水性、耐熱性、耐光性等に優れ、粘着力、透明性がよく、更に、液晶ディスプレイに用いる場合には屈折率をそれに適合するように調整しやすい等から好ましい。アクリル系粘着剤としては、アクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル、アクリルアミド、アクリルニトリル等のアクリルモノマーの単独重合体もしくはこれらの共重合体、更に、前記アクリルモノマーの少なくとも1種と、酢酸ビニル、無水マレイン酸、スチレン等の芳香族ビニルモノマーとの共重合体を挙げることができる。特に、粘着性を発現するエチレンアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の主モノマー、凝集力成分となる酢酸ビニル、アクリルニトリル、アクリルアミド、スチレン、メタクリレート、メチルアクリレート等のモノマー、更に粘着力向上や、架橋化起点を付与するメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸等の官能基含有モノマーからなる共重合体で、Tg(ガラス転移点)が−60〜−15℃の範囲にあり、重量平均分子量が20万〜100万の範囲にあるものが好ましい。Tgが−60℃以下では結着層が柔らかすぎて、埋め込まれたフィラー層に傷が付きやすくなる。Tgが−15℃以上では、フィラーの埋め込みが悪くなる。
【0014】
粘着剤には、硬化剤として、例えば金属キレート系、イソシアネート系、エポキシ系の架橋剤が必要に応じて1種あるいは2種以上混合されて用いられる。このようなアクリル系粘着剤の粘着力は、100g/25mm 以上になるよう配合されると実用上好ましい。粘着力が100g/25mm未満ではフィラーの脱離が起きたり、耐環境性が悪くなったりする。特に、高温高湿下では、結着層が透明基体から剥離したりするおそれがある。粘着剤は、粘度が低過ぎるとフィラーが過度に埋め込まれやすくなり、粘度が高過ぎると埋め込まれ難い。粘度は粘着剤を酢酸エチルに全固形分濃度が25%になるように溶解、液温23℃における粘度をB型粘度計により測定した値で、500〜20000cpsの範囲が好ましい。特に、好ましくは1500〜5000cpsの範囲が良い。
【0015】
(3)フィラー
本発明におけるフィラーとしては、シリカ、アルミナ等の無機系の透明または白色顔料、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、テフロン(登録商標)等有機系の透明または白色顔料等を使用することができる。特にシリカ、アクリルビーズ、シリコーンビーズが好ましい。フィラーは、前述したように球状であることが好ましく、その平均粒子径(JIS B9921)は、1〜50μmが好適であり、3〜30μmであればより好ましい。良好なレンズ効果を得るには、粒径分布は狭い方が良く、単分散時に、最も良い効果が得られる。液晶ディスプレイに用いる場合等は屈折率の適合上、フィラーの屈折率は、1.45〜1.55の範囲にあることが望ましい。
基体と結着層、基体とフィラー、結着層とフィラーの各々の屈折率の差は近い方がよく、0.30以下であることが望ましい。より好ましくは、0.15以下がよい。
【0016】
(4)他の層
他の層として、光の屈折率や透過性を調整するための調整層、または基体と結着層とを強固に接着させるための接着層等を設けてもよい。
【0017】
B.製造方法の具体例
次に、本発明のフィラーレンズの製造方法の具体例を示す。
「工程1:結着層の積層」
上記基体の片面または両面に、直接あるいは他の層を介して、上記粘着剤を、エアドクターコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、電着コーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングやフレキソ印刷等の凸版印刷、ダイレクトグラビア印刷、オフセットグラビア印刷等の凹版印刷、オフセット印刷等の平版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等の手段により塗布し、結着層として積層させる。特に、ロールコーターを使用するコーティングが、均一な層厚が得られることから好ましい。結着層の厚さは、埋め込むフィラーの平均粒子径の0.5〜2倍程度が好ましい。
【0018】
更に、基体上の結着層にフィラーを付着させることが望ましい。その方法としては、例えば、容器内に充填したフィラーを振動もしくは流動化エアーにより流動化させ、そのフィラーに基体をくぐらせたり、スプレーによりフィラーを結着層に吹き付けたりする方法が挙げられる。結着層にフィラーを付着させる目的は、後の加圧媒体によりフィラーを結着層に埋め込む工程において加圧媒体が結着層に付着することを防止することにあり、したがって、ここでは単にフィラーが結着層の表面全面に、結着層の粘着力によって高密度状態で付着していればよい。
【0019】
「工程2:結着層へのフィラーの埋め込み」
結着層の表面に付着させたフィラーを、加圧媒体を介して結着層に埋め込む。その方法としては、適当な容器に加圧媒体を投入し、容器ごと加圧媒体を振動させ、この中に、フィラーが結着層に付着した状態の基体を投入するか、あるいはくぐらせることにより、フィラーに外力を与える。すると、フィラーは加圧媒体により打撃され、結着層の表層に埋め込まれる。このような方法により、フィラーは、埋め込み深さが均一な状態で結着層の一部から突出し、かつ全体に高密度に埋め込まれ、結着層中において積層せず単層の状態のフィラー層として形成される。なお、フィラーを埋め込むために与える外力としては、振動の他に、回転、落下等を採用してもよい。回転の場合には、回転容器や、内側に撹拌羽を有する容器等が用いられる。また、外力として落下を採用する場合には、Vブレンダー、タンブラー等が用いられる。
【0020】
ここで、フィラーの埋め込みに用いる加圧媒体を例示する。
加圧媒体は、上記のように振動等によりフィラーを打撃して結着層に埋め込む作用をなす粒状物であり、鉄、炭素鋼、合金鋼、銅及び銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金、その他の各種金属、合金からなるもの、あるいは、Al 2 O 3 、SiO 2 、TiO 2 、ZrO 2 、SiC等のセラミックスからなるもの、更には、ガラス、硬質プラスチックス等からなるものが用いられる。また、十分な打撃力をフィラーに与えることができるのであれば、硬質のゴムを用いてもよい。いずれにしろ、加圧媒体の材質はフィラーの材質等に応じて適宜選択される。また、その形状は、フィラーに対する加圧力が均一になるように真球に近いものが好ましく、かつ全体の粒子分布がなるべく狭い方が好ましい。加圧媒体の粒子径としては、フィラーの材質やフィラーの埋め込み深さに応じて適宜選択されるが、概ね0.3〜2.0mm程度が好適である。
【0021】
「工程3:余剰フィラーの除去」
結着層へのフィラーの埋め込み工程の後は、余剰フィラーを除去する。余剰フィラーとは、例えば、結着層へ不完全に埋め込まれていたり、埋め込まれたフィラーにファンデルワールス力等の粒子間力によって付着しているだけのフィラー等を言い、このような余剰フィラーを、水洗浄やエアーブロー等による流体圧をフィラー層に与えることにより除去する。フィラーの粒子径が比較的小さい場合は、イオン交換水等を用いて湿式洗浄することが好ましい。
【0022】
【実施例】
次に、本発明をより具体化した実施例を説明する。なお、下記において部とは重量部を示す。
[実施例1]
透明基体として、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(商品名:富士タックUVD80、富士写真フィルム社製、屈折率1.49)を用いた。このフィルムの片面上に、アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン811L 全固形分23%エチルアセテート溶解液、総研化学社製)100部に対しイソシアネート系硬化剤(商品名:D−90、全固形分90%エチルアセテート溶解液、総研化学社製)を1.5部添加した塗料を、乾燥後の厚さが10μmになるようにリバースコーターで塗工、100℃で2分間乾燥し、結着層を形成した。
【0023】
次に、フィラーとして、粒子径が5μmの単分散で、屈折率1.50のポリメチルメタクリレートからなるアクリル系フィラーを用い、このフィラーを、底部からエアーを噴出する多孔板容器に投入した。その後、この容器を振動させ、振動と噴出エアーの相乗効果によって、フィラーを流動化させる。結着層を表面に形成した上記フィルムを適宜時間をかけてくぐらせ、結着層の表面にフィラーを付着させた。
【0024】
次いで、図2に示す加振装置により、結着層の表層にフィラーを埋め込んだ。この加振装置は、加振機構V上にセットされた容器C内に、加圧媒体、フィラー及び上記フィルムが投入され、これら投入物を、加振機構Vで容器Cごと振動させることにより、フィルムの結着層にフィラーを埋め込むものである。
【0025】
容器Cは、硬質合成樹脂あるいは金属等の硬質材からなるもので、上部に開口部c1を有する椀状に形成されており、その底部c2の中央部には、上方に膨出して開口部c1と同程度の高さに達する柱状部c3が突設されている。一方、加振機構Vは、機台F上にコイルスプリングf1、f2を介して振動板f3が取り付けられ、振動板f3の上面中央部に上方に延びる垂直軸f4が突設され、振動板f3の下面中央部にモータf5が固定され、このモータf5の出力軸f6に重錘f7が偏心して取り付けられた構成となっている。容器Cは、振動板f3に置かれた状態で、柱状部c3の上端が垂直軸f4の上端に固定されることによりセットされ、モータf5が駆動されて重錘f7が回転すると加振されるようになっている。
【0026】
この加振装置の容器C内に、加圧媒体として粒子径が0.5mmの真球状ジルコニア球を3kgを投入し、更に、上記アクリル系フィラーを30gを投入して両者を混合した。次に、加振装置を、容器Cが図2に示す状態から45度傾く状態に保持して容器Cを振動させながら、上記フィルムを、フィラーが付着された結着層側を上方に向くようにして容器Cの底を30cm/分の速度で移動させることにより加圧媒体中でくぐらせた。これによって、フィラーは振動する加圧媒体に打撃されて結着層の表層に埋め込まれ、フィラー層が形成される。
【0027】
次に、イオン交換水を用いてフィラー層に水圧シャワーをかけてフィラー層を洗浄することにより余剰フィラーを除去し、この後、エアーブローにより全体を乾燥させて実施例1のフィラーレンズを得た。
【0028】
[実施例2]
体積平均粒子径が15μmのフィラーを用いた点、及び粒子径が1.0mmの加圧媒体を用いた点を変更点とし、これ以外は実施例1と同様にして実施例2のフィラーレンズを得た。
【0029】
[比較例1]
下記成分からなる混合物をサンドミルにて30分間分散することによって得られた塗料を、膜厚80μm、透過率92%からなる透明基体のトリアセチルセルロース(商品名:富士タックUVD80、富士写真フィルム社製、屈折率1.49)の片面上に、リバースコーティング方式にて塗布し、100℃で2分間乾燥後、120w/cm集光型高圧水銀灯1灯で紫外線照射を行い(照射距離10cm、照射時間30秒)、塗工膜を硬化させた。このようにして得た光拡散フィルムを比較用のサンプルとした。
・エポキシアクリレート系UV樹脂 95部
(商品名 KR−566 固形95%溶液、旭電化社製)
・架橋アクリルビーズ顔料 10部
(商品名 MX150 粒径1.5μm±0.5、綜研化学社製)
・イソプロピルアルコール 230部
【0030】
・フィラー層の観察
実施例1,2のフィラーレンズの平面及び断面を、電子顕微鏡によって観察した。図3(a),(b),(c)は、それぞれ実施例1のフィラーレンズの平面を1000倍、2000倍、5000倍の倍率で撮影した顕微鏡写真、図4(a),(b)は、それぞれ実施例1のフィラーレンズの断面を2000倍、5000倍の倍率で撮影した顕微鏡写真である。また、図5(a),(b),(c)は、それぞれ実施例2のフィラーレンズの平面を1000倍、2000倍、5000倍の倍率で撮影した顕微鏡写真、図6(a),(b)は、それぞれ実施例2のフィラーレンズの断面を2000倍、5000倍の倍率で撮影した顕微鏡写真である。実施例1,2ともに、平面写真からわかるようにフィラーはほぼ均一に結着層中に密な状態で分散している。また、断面写真からわかるように、フィラーは、実施例1の場合は直径の70%程度が結着層に埋め込まれ、実施例2では直径の40%程度が埋め込まれた状態で、結着層の表面から一様に突出している。
【0031】
・光拡散性試験
上記実施例1,2及び比較例1のフィラーレンズについて、図7(a)に示すように光をフィルム1側から入射させた場合と図7(b)に示すように光をフィラー3側から入射させた場合の、全光線拡散透過率:T%と全光線拡散反射率:R%を、島津製作所製の分光光度計UV3100で積分球式を用いて測定した。その測定方法は、全光線拡散透過率:T%については、図8(a)に示すように、入射光と基準白色板(硫酸マグネシウム)10との間にフィラーレンズLを介在させて前方に散乱した光の全光線拡散透過率を測定した。なお、図8(a)では図7(a)のようにフィルム側から光を入射させているが、図7(b)のようにフィラー側から光を入射させた場合も同様に行った。
また、全光線拡散反射率:R%は、まず、基準白色板(硫酸マグネシウム)に光をあてその後方に散乱した光の全光線拡散反射値を測定しその値を100とする。次に図8(b)に示すように、フィラーレンズLに光を入射して全光線拡散反射値を測定し、上記基準白色板の全光線拡散反射値との割合で算出した。なお、図8(b)では図7(a)のようにフィルム側から光を入射させているが、図7(b)のようにフィラー側から光を入射させた場合も同様に行った。この場合の測定波長は400〜700nmであり、測定値はこの波長領域の平均値で示した。その結果を、表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1によれば、比較例1においては、光がフィルム側とフィラー側のいずれから入射しても、全光線拡散透過率は約91%、全光線拡散反射率は約26%と差はみられなかった。一方、実施例1,2の光散乱性は、光の入射方向がフィルム側からとフィラー側からとで差が認められた。光がフィルム側から入射する場合の全光線拡散透過率は比較例1より低いが、全光線拡散反射率は高い。また、光がフィラー側から入射する場合の全光線拡散透過率はきわめて高く、逆に全光線拡散反射率は低い。すなわち、本発明のフィラーレンズによれば、光の入射方向が表裏いずれであるかによって光散乱性が異なり、レンズ効果が認められる。これを利用して目的に応じた光学的な特性を得ることが可能である。
【0034】
例えば、透過型の液晶ディスプレイに用いる場合、図9(a)に示すように、液晶パネル20とバックライト21との間に、光拡散板として、本発明のフィラーレンズLのフィルム1を液晶パネル20側に向けて配置すると、バックライト21の光の透過率がきわめて高く、これに加えてディスプレイの前面側(図で上側)から入射する太陽光や電灯光は反射しやすい状態となる。したがって、液晶パネル20を照明する光量がきわめて多くなり、液晶画像の鮮明化ならびに節電効果を得ることができる。また、図9(b)に示すように、液晶パネル20の前面側にフィルム1を前方に向けて配置すると、バックライト21の透過率が高いことから、視野角がきわめて広い光拡散レンズとして使用することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、基体上に積層された結着層の表層に、当該結着層の表面から一部が突出する状態でフィラー層が埋め込まれた構成であることから、光散乱性が基体側からとフィラー層側からとでは異なったり、フィラーのレンズ効果が増大したりし、その結果、多様な目的に応じたレンズ効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフィラーレンズの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のフィラーレンズを製造するにあたって好適な加振装置の正面断面図である。
【図3】本発明の実施例1のフィラーレンズの平面を(a)1000倍、(b)2000倍、(c)5000倍で示す顕微鏡写真である。
【図4】本発明の実施例1のフィラーレンズの断面を(a)2000倍、(b)5000倍で示す顕微鏡写真である。
【図5】本発明の実施例2のフィラーレンズの平面を(a)1000倍、(b)2000倍、(c)5000倍で示す顕微鏡写真である。
【図6】本発明の実施例2のフィラーレンズの断面を(a)2000倍、(b)5000倍で示す顕微鏡写真である。
【図7】フィラーレンズに対する光散乱性を説明するための図であって、全光線拡散透過率と全光線拡散反射率を示す模式図である。
【図8】光散乱性の測定方法を説明するための図であって、(a)全光線拡散透過率、(b)全光線拡散反射率の測定方法を示す模式図である。
【図9】(a)、(b)はそれぞれ本発明のフィラーレンズを液晶ディスプレイに適用した例を模式的に示す断面図である。
【図10】従来のフィラーレンズの一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1…フィルム(基体)、2…結着層、3…フィラー、3A…フィラー層、
T…加圧媒体、L…フィラーレンズ。
Claims (5)
- 基体上に、直接または他の層を介して結着層を積層する工程と、粒状物の加圧媒体を振動させてフィラーを打撃することにより、上記結着層の表面から一部が突出する状態でかつ単層を形成するように、フィラーを結着層の表層に埋め込む工程と、上記工程で得た積層体に付着した余剰フィラーを除去する工程とを具備することを特徴とするフィラーレンズの製造方法。
- 前記フィラーの埋め込み工程は、フィラーを、面方向で高密度に、かつ単層に埋め込み、フィラー層を形成することを特徴とする請求項1に記載のフィラーレンズの製造方法。
- 前記フィラーの屈折率が1.45〜1.55であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィラーレンズの製造方法。
- 前記基体、結着層及びフィラーの各々の屈折率の差が0.15以下であることを特徴とする請求項3に記載のフィラーレンズの製造方法。
- 前記フィラーは、真円度が80%以上の球であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィラーレンズの製造方法。
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