JP3587066B2 - 自動分注装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬剤や検体などの液状の試料を分注する自動分注装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
物質の生化学的反応などの試験を系統的に行う際に用いられる装置として、自動分注装置が知られている。この自動分注装置は、試料収納体であるプレート内の薬剤や検体などの液状試料取り出し、移し替えなどの操作を自動的に行うものである。試料収納体であるプレートには小さな凹部が格子状に多数設けられており、この凹部内の液状の試料を分注ヘッドに装着された分注チップによって吸入し、また吐出することにより、各種の分注操作を行うようになっている。分注チップは、分注操作を行う液状試料の種類が変わる毎、もしくは分注操作毎に新しいものと交換して使用される。
【０００３】
ところで、分注ヘッドによってプレート内の液体を分注する際、プレートの全ての凹部を一括して分注操作の対象とする場合と、プレートの一部の凹部のみを分注操作の対象とする場合とがある。このため、分注ヘッドにはプレートの凹部の配列に対応した数の分注チップを格子状に装着したものや、プレートの一部の凹部の列を対象として分注チップが列状に装着されたものなどがあり、分注操作の内容によりこれらの分注ヘッドの使い分けを行っている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上述した分注チップの交換は迅速に行うことが望ましい。このためには分注ヘッドの複数個のノズルに分注チップを一括して装着できるようにすることが望ましい。また上述したように、分注ヘッドには分注チップを格子状に装着するものや列状に装着するものなどがあり、したがって分注ヘッドの種類によってこれに装着される分注チップの配列や個数は異るが、いずれの分注ヘッドであっても分注チップの装着は迅速・確実に行うことが望ましい。また分注チップは、一般に樹脂などのぜい弱な素材にて長パイプ状に形成されているので、装着時にこれを破損しないようにしなければならない。
【０００５】
そこで本発明は、分注ヘッドに対する分注チップの装着を迅速・確実に行うことができる自動分注装置を提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
請求項１記載の自動分注装置は、試料収納体の試料収納部に液状試料の分注操作を行う分注ステージと、分注チップを保持するチップ保持器をストックするチップストッカーと、チップ交換ステージと、チップストッカーにストックされたチップ保持器をピックアップしてチップ交換ステージに搬送する移載ヘッドと、分注チップを着脱自在に装着する複数個の装着部を有し前記チップ交換ステージと前記分注ステージの間を移動して分注作業を行う分注ヘッドと、分注ヘッドを前記チップ交換ステージの前記チップ保持器に対して相対的に上下動させる上下動手段とを備え、前記チップ交換ステージが、前記チップ保持器を支持する支持体と、この支持体を上下動自在に弾持する弾持手段と、前記分注ヘッドの前記装着部に装着される分注チップの個数およびまたは品種に応じてこの弾持手段の弾持力を調整する弾持力調整手段を備えた。
【０００７】
請求項２記載の自動分注装置は、請求項１記載の自動分注装置において、前記弾持手段がエアシリンダであり、かつ前記弾持力調整手段がこのエアシリンダのエア圧の大きさを調整する圧力調整手段である。
【０００８】
上記構成の本発明において、チップストッカーのチップ保持器を移載ヘッドによりチップ交換ステージの支持体上に移載し、そこで分注ヘッドをチップ保持器に対して相対的に上下動させることにより、チップ保持器に備えられた複数個の分注チップを分注ヘッドの装着部に一括して装着する。この場合、分注ヘッドに装着する分注チップの個数などに応じて弾持手段の弾持力を調整すれば、分注チップに適度のクッション力を発生させて装着部に確実に装着することができる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図１は本発明の一実施の形態の自動分注装置の斜視図、図２（ａ），（ｂ）は同自動分注装置の分注ヘッドの部分斜視図、図３は同自動分注装置の正面図、図４は同自動分注装置の平面図、図５は同自動分注装置の部分斜視図、図６は同自動分注装置のプレートの側断面図、図７（ａ）は同自動分注装置の支持部の斜視図、図７（ｂ）は同自動分注装置のチップ保持器を載置した支持部の斜視図、図７（ｃ）は同自動分注装置のチップ保持器を載置した支持部の断面図、図８、図９、図１０、図１１、図１２、図１３は同チップ交換ステージの側面図、図１４は同シリンダの配管図である。このうち図８〜図１３は分注チップの装着作業を動作順に示している。
【００１０】
まず図１を参照して自動分注装置の全体構造を説明する。図１において、自動分注装置１は型材を組み合わせて構成されたフレーム２およびフレーム２に固着されたベースプレート３を備えている。自動分注装置１はフレーム２とベースプレート３によって３つの部分、すなわち分注部Ａ、ストック部Ｂおよび処理部Ｃに区分される。分注部Ａはベースプレート３上に配設されており、試料を収納した試料収納体であるプレートへの分注操作を行う。ストック部Ｂは分注部Ａで用いられるプレートや分注チップをストックする。処理部Ｃは分注操作後にインキュベータなど他装置に送られ、戻って来たプレートの分析や洗浄などの処理を行う。
【００１１】
次に図１を参照して分注部Ａについて説明する。ベースプレート３上には、プレート４を載置する３つのステージ、すなわち分注ステージ１０、バッファステージ１１および待機ステージ１２が設けられている。分注ステージ１０には分注操作が行われる薬剤や検体のプレート４が載置される。バッファステージ１１は分注ステージ１０内に載置されるプレート４を一時的に載置するバッファの役割を果たすものである。また待機ステージ１２はベースプレート３に設けられた搬送孔３ａを介して下方の処理部Ｃへ搬送されるプレート４の待機用のステージである。
【００１２】
分注ステージ１０の側方には、移動テーブル１３が分注ステージ１０の長手方向に沿って配設されている。移動テーブル１３には、第１の分注ヘッド１４（後述）が収納されたボックス１４Ａおよび第２の分注ヘッド１６（後述）が収納されたボックス１６Ａが装着されており、第１の分注ヘッド１４および第２の分注ヘッド１６は駆動手段（図示せず）によってそれぞれ個別に移動テーブル１３に沿って分注ステージ１０上をＹ方向へ移動する。すなわち分注ステージ１０は第１の分注ヘッド１４および第２の分注ヘッド１６の共通の作業範囲となっている。分注ヘッド１４，１６の下面には、分注チップ１５を着脱自在に装着する装着部としてのノズル１７が備えられている（図１０も参照）。なお図１１〜図１３ではボックス１４Ａは省略している。
【００１３】
次に、図２を参照して分注チップ１５について説明する。分注チップ１５は先細りのテーパ状のノズル部品であり、分注ヘッドに交換自在に装着され、使用の都度交換されるいわゆる使い捨て部品である。図２（ａ）に示すように、第１の分注ヘッド１４には、分注チップ１５が格子状に複数個（本実施の形態では８個×１２列、計９６個）装着されており、また図２（ｂ）に示すように、第２の分注ヘッド１６には分注チップ１５が列状に複数個（本実施の形態では８個）装着されている。
【００１４】
これらの分注チップ１５の先端部を、図２（ａ）に示すプレート４に格子状に設けられた試料収納部としての凹部４ａ内に下降させ液状の薬剤や検体を吸入し、他のプレート４の凹部４ａに吐出することにより、異なるプレート４間で試料の移し替えなどの各種の分注操作を行う。第１の分注ヘッド１４を用いることにより、プレート４の全ての凹部４ａ内の試料を一括して分注することができる。また、第２の分注ヘッド１６を用いることにより、プレート４の任意の列を選択してその列を構成する凹部４ａ内の試料のみを分注することができる。
【００１５】
分注チップ１５は、図７（ｂ）に示すように、プレート４の凹部４ａと同様の格子状の配列で分注チップ１５を装着する無底箱形のチップ保持器５に保持されており、チップ保持器５上に分注ヘッド１４，１６を下降させることにより、分注チップ１５が分注ヘッド１４，１６の下面のノズル１７に強制的に弾性挿着されて自動的に装着されるようになっている。また、使用後には、分注ヘッド１４，１６を分注部Ａに配設されたチップ取り外し機構部１９（図１参照）上で昇降させることにより、チップ取り外し機構部１９の櫛歯状プレートに分注チップ１５を係止して分注ヘッド１４，１６から自動的に取り外すようになっている。また、ベースプレート３上の、移動テーブル１３の反対側の端部には、蓋取外しユニット１８が配設されている。蓋取外しユニット１８は、プレート４のストック時にプレート４を覆う蓋の取外しを行う。
【００１６】
次に図３および図４を参照してストック部Ｂについて説明する。図３に示すように、ストック部Ｂには、プレートストッカー３０が配設されている。フレーム２にはモータ３１ａを備えたＺ軸テーブル３１が固着されており、Ｚ軸テーブル３１のスライダ３２には背板３３が結合されている。背板３３には複数段の棚板３４が複数列設けられており、棚板３４上にはプレート４が載置される。
【００１７】
プレート４の種類によって載置される棚板の列が特定されており、図４に示すように、棚板列３４Ａ，３４Ｂには希釈液を容れた希釈プレート４Ａが、棚板列３４Ｃ，３４Ｄには薬剤を容れた薬剤プレート４Ｂが、また棚板列３４Ｅ，３４Ｆには検体を容れた検体プレート４Ｃが載置される。Ｚ軸テーブル３１のモータ３１ａを駆動することにより、棚板３４上に載置された任意のプレート４を移載ヘッド（後述）がクランプ可能な高さまで上昇させ、また下降させることができる。
【００１８】
プレートストッカー３０と対向して、チップストッカー３５が配設されている。チップストッカー３５は、垂直に配設されモータ３６ａを備えたＺ軸テーブル３６に、ストックテーブル３７を結合して構成されている。ストックテーブル３７上には分注チップ１５を保持するチップ保持器５が段積みしてストックされる。Ｚ軸テーブル３６を駆動することにより、ストックされたチップ保持器５を移載ヘッド（後述）がクランプ可能な高さまで上昇させ、また下降させることができる。
【００１９】
次に図１を参照して搬送手段である天井送行ロボット２０について説明する。天井送行ロボット２０は、Ｙ軸テーブル２１、Ｘ軸テーブル２３、昇降回転ユニット２４および移載ヘッド２６より成る。Ｙ軸テーブル２１は端部のフレーム２上に長手方向に配設されており、Ｘ軸テーブル２３はＹ軸テーブル２１に一端を駆動され、他端をフレーム２上に配列されたガイドレール２２に支持されている。昇降回転ユニット２４はＸ軸テーブル２３によって駆動され、昇降回転ユニット２４から下垂するアーム２５の下端部に移載ヘッド２６が装着されている。
【００２０】
天井送行ロボット２０は、分注部Ａとストック部Ｂとの間または分注部Ａと他装置との間でプレート４やチップ保持器５の搬送を行う。すなわち、プレートストッカー３０の棚板３４上のプレート４や、チップストッカー３５のストックテーブル上のチップ保持器５を、移載ヘッド２６でクランプして保持し所定位置まで搬送して載置する。
【００２１】
次に図３を参照して処理部Ｃについて説明する。図３において、ベースプレート３の下方には分析器４０および洗浄器４１が配設されている。分析器４０はプレート４に収められた試料に関する各種の測定などの分析を行う。洗浄器４１は必要な分析が終了したプレート４の洗浄を行う。洗浄器４１の側方には、廃液タンク４９が配設されている。廃液タンク４９は、図外の処理水タンクから供給され、洗浄器４１によって洗浄処理に用いられた使用後の処理廃水を貯溜する。
【００２２】
次に図３および図５を参照して、分注部Ａと処理部Ｃとの間でプレート４を搬送する第２の搬送手段について説明する。図３、図５に示すように、ベースプレート３の開口部３ａの外側の下面には、Ｙ軸テーブル４２が配設されており、Ｙ軸テーブル４２にはモータ４３ａを備えたＺ軸テーブル４３が垂直に結合されている。Ｚ軸テーブル４３には，Ｌ字型の２本の爪を備えた垂直搬送アーム４４が装着されている。垂直搬送アーム４４はモータ４３ａの駆動によって上下に昇降する。垂直搬送アーム４４は開口部３ａと同一位置にあり、プレート４を載置してＺ軸テーブル４３に平行して上下方向に搬送する。
【００２３】
またベースプレート３の下面には、Ｙ軸テーブル４２と平行してスライドユニット４５が配設されており、スライドユニット４５のスライダ４６には、連結部材４７を介して水平搬送アーム４８が装着されている。水平搬送アーム４８は開口部３ａを介してベースプレート３上まで延出しており、ベースプレート３上でプレート４を水平方向に搬送する。スライドユニット４５を駆動させて水平搬送アーム４８を垂直搬送アーム４４の２本の爪の間に位置させることにより、水平搬送アーム４８上に載置されたプレート４は、垂直搬送アーム４４の上方に移動する。次いで垂直搬送アーム４４を上昇させてプレート４を持ち上げた状態でスライドユニット４５を後退させることにより、プレート４は垂直搬送アーム４４上に移載される。
【００２４】
この後Ｚ軸テーブル４３のモータ４３ａを駆動して垂直搬送アーム４４上のプレート４を下降させ、更にＹ軸テーブル４２を駆動することにより、プレート４は分析器４０や洗浄器４１へ受け渡される。また、ストック部Ｂの側方には廃却箱３９が設けられている。使用済の分注チップ１５はチップ保持器５に収納された後、天井送行ロボット２０によって搬送され、シュート３８上に落されることにより廃却箱３９内に回収される。
【００２５】
次に図４を参照して分注部Ａの分注ステージ１０でのステージの配置について説明する。分注ステージ１０には、図４に示すように１０Ａ〜１０Ｆまでの６つのステージが設定されており、それぞれのステージに載置されるプレート４の種類が特定されている。ステージ１０Ａ，１０Ｂには検体プレート４Ｃが、ステージ１０Ｃには試料収納体である希釈プレート４Ａが、ステージ１０Ｄには薬液プレート４Ｂがそれぞれ載置される。また、ステージ１０Ｅはチップ交換ステージとなっており、分注チップ１５がセットされたチップ保持器５が載置される。
【００２６】
次に図８を参照してチップ交換ステージ１０Ｅの構造を説明する。５０はベースプレート３に局所的に設けられた凹入部であり、シリンダ５１が設置されている。シリンダ５１のロッド５２にはプレート状の支持体５３が支持されている。シリンダ５１のロッド５２が突没すると支持体５３は上下動する。５４は支持体５３の上下動を案内するガイドロッドである。
【００２７】
支持体５３上にはピン状の突起５５が複数本立設された台体５６が載置されている（図７（ａ）も参照）。チップ保持器５は移載ヘッド２６にクランプされて支持体５３上に移載される（図７（ｂ），（ｃ）も参照）。図７（ｃ）に示すように、その状態で突起５５はチップ保持器５の上板５ａの下面に当接し、可撓性を有する上板５ａが下方へたわまないように下方から支持する。なおチップ保持器５は、合成樹脂などの可撓性を有する素材で形成されている。
【００２８】
図１４はシリンダ５１の配管系を示している。圧力源６０は、複数個（本例では２個）のレギュレータ（圧力調整器）６１，６２、バルブ６３を介してシリンダ５１に接続されている。レギュレータ６１，６２、バルブ６３などはシリンダ５１に付与するエア圧の大きさを調整する圧力調整手段６４を構成している。バルブ６３は制御部６５で制御される。
【００２９】
分注ヘッドの分注チップ１５の個数や品種などに応じてレギュレータ６１とレギュレータ６２を切替える。本例では、分注チップ１５が８個のときは一方のレギュレータ６１をシリンダ５１に接続する。また分注チップ１５の個数が９６個のときは他方のレギュレータ６２をシリンダ５１に接続する。すなわち、シリンダ５１は、チップ保持器５を下方から上下動自在に弾持する弾持手段であるが、分注チップ１５の個数が少ないときは、圧力の小さいレギュレータ６１をシリンダ５１に接続し、個数が多いときは圧力の大きいレギュレータ６２をシリンダ５１に接続する。
【００３０】
次に図１０を参照して分注ヘッドの上下動手段について説明する。分注ヘッド１４はホルダー７０に保持されている。ホルダー７０にはナット７１が装着されており、ナット７１には垂直な送りねじ７２が螺入している。モータ７３を駆動して送りねじ７２を回転させると、ナット７１は送りねじ７２に沿って上下動し、分注ヘッド１４は支持体５３上のチップ保持器５に対して上下動する。７４はモータ７３の回転を送りねじ７２に伝動するベルトである。したがって、ナット７１，送りねじ７２，モータ７３，ベルト７４などは、分注ヘッド１４の上下動手段となっている。
【００３１】
図１０において、送りねじ７２はカギ型のフレーム７５に装着されている。フレーム７５の背面のスライダ７６は、移動テーブル１３の前面の水平なガイドレール１３ａにスライド自在に嵌合している。なお図１０は、第１の分注ヘッド１４の保持構造を示しているが、第２の分注ヘッド１６の保持構造も図１０に示す第１の分注ヘッド１４の保持構造と同じである。
【００３２】
この自動分注装置は上記のように構成されており、以下その動作を説明する。図３において、チップストッカー３５にストックされたチップ保持器５を移載ヘッド２６でチップ交換ステージ１０Ｅの支持体５３上に移載する（以上、図８および図９を参照）。
【００３３】
次に第１の分注ヘッド１４または第２の分注ヘッド１６をチップ保持器５上に位置させる（図１０）。次いでチップ保持器５に対して下降させて、第１の分注ヘッド１４または第２の分注ヘッド１６のノズル１７を分注チップ１５の頭部に強制的に挿入して装着する（図１１、図１２）。このとき、第１の分注ヘッド１４または第２の分注ヘッド１６に以前の分注操作で用いた分注チップが既に装着されている場合には、前記分注チップ１５の装着に先立ってチップ取外し機構１９によって既装着の分注チップの取外しを行う。
【００３４】
図１１、図１２は、分注ヘッド１４を下降させてノズル１７を分注チップ１５の頭部に強制的に挿入して装着する状態を示している。分注ヘッド１４を下降させると、ノズル１７は分注チップ１５の円筒状の頭部に挿着される（図１１）。なおノズル１７およびまたは分注チップ１５は合成樹脂などの若干の弾性を有する素材にて形成されており、したがってノズル１７を分注チップ１５の頭部に弾性的に強制挿着することができる。このとき支持体５３はシリンダ５１のロッド５２に弾持されている。そこで図１２に示すように分注ヘッド１４をなおも若干下降させると、この下降力によりシリンダ５１のロッド５２をシリンダ５１の弾持力に抗して下方へ引き込ませながら、ノズル１７に分注チップ１５の頭部を完全に挿着することができる。この場合、図７（ｃ）を参照して説明したように、突起５５はチップ保持器５の上板５ａが下方へたわまないように下方からこれを支持するので、ノズル１７を分注チップ１５の頭部に確実に挿着することができる。
【００３５】
次いで図１３に示すように分注ヘッド１４を上昇させれば、分注チップ１５はノズル１７に吸着されてピックアップされ、また負荷が解除されたことによりシリンダ５１のロッド５２は原位置まで上昇する。以上により分注チップ１５の装着動作は終了する。分注チップ１５の装着動作は、第２の分注ヘッド１６の場合も同様である。
【００３６】
第１の分注ヘッド１４に装着される分注チップ１５の個数は９６個である。したがって第１の分注ヘッド１４に上記のようにして分注チップ１５を装着するときは、圧力の大きいレギュレータ６２をシリンダ５１に接続し、これにより大きな弾持力で支持体５３を下方から弾持する。また第２の分注ヘッド１６に装着される分注チップ１５の個数は８個である。したがって第２の分注ヘッド１６に上記のようにして分注チップ１５を装着するときは、圧力の小さいレギュレータ６１をシリンダ５１に接続し、これにより小さな弾持力で支持体５３を下方から弾持する。
【００３７】
このように分注ヘッドに装着する分注チップの個数や品種などに応じて支持体５３の弾持力を調整することにより、分注ヘッドを下降させてノズルに分注チップを装着するときに適度の上下方向のクッション力が得られるようにし、これにより多数個の分注チップを一括して確実に分注ヘッドに装着できるとともに、分注チップが装着時に破損するのを防止できる。また上記クッション力を確保することにより、分注ヘッドの下降ストロークに多少の狂いがあっても、この狂いをクッション力により吸収することができる。本形態では２個のレギュレータ６１，６２を用いて、第１の分注ヘッド１４と第２の分注ヘッド１６に対してシリンダ５１の弾持力を２段階切替えるようにしているが、弾持力の大きさは何段階切替えてもよく、あるいはアナログ的に切替えてもよいものである。
【００３８】
さて、以上のようにして分注チップ１５の装着作業を行うが、この装着作業と並行して、ステージ１０Ａ，１０Ｂにはプレートストッカー３０の棚板列３４Ｅ，３４Ｆから検体が容れられた検体プレート４Ｃが、ステージ１０Ｃには希釈液が容れられた希釈プレート４Ａが、またステージ１０Ｄには薬剤プレート４Ｂがそれぞれプレートストッカー３０の各棚板から搬送されて載置される。
【００３９】
次に図６を参照して第２の分注ヘッド１６を用いて行われる希釈系列作成操作について説明する。まず第２の分注ヘッド１６に備えられた一列の分注チップ１５により、ステージ１０Ｄ上の薬剤プレート４Ｂから規定量の薬液を吸入し、ステージ１０Ｃ上の希釈プレート４Ａの第１列目の凹部４ａに注入し、分注チップ１５により凹部４ａ内を撹拌する。これにより、薬液は希釈プレートの凹部４ａ中に既に容れられている希釈液と混合され、所定の希釈率の希釈薬液が作成される。
【００４０】
次いで、この希釈薬液を第２の分注ヘッド１６の分注チップ１５により再び規定量だけ吸入して、同一の希釈プレート４Ａの第２列目の凹部４ａに注入する。これにより、第２列目の凹部４ａ内には、第１列目の凹部４ａの希釈薬液を更に所定希釈倍率だけ希釈した希釈薬液が作成される。同様の操作を繰り返すことにより、希釈プレート４Ａには、同一の薬剤を異る希釈倍率で希釈した希釈薬液の複数の列、すなわち希釈系列が作成される。
【００４１】
次に、これらの希釈薬液は第１の分注ヘッド１４によって一括してステージ１０Ａ，１０Ｂに載置された検体プレート１０Ｃに分注される。第１の分注ヘッド１４には、プレート４の凹部４ａの配列に対応して分注チップ１５が装着されているため、異る希釈倍率の希釈薬液を一回の操作で分注することができる。
【００４２】
このように、複数のプレート４を載置するプレートステージ１０を共通の作業範囲とする第１の分注ヘッド１４と第２の分注ヘッド１６を設けることにより、異る希釈倍率の希釈薬液（希釈系列）を作成する作業や、作成された希釈系列を検体プレート４Ｃに一括して分注する作業を同一の分注ステージ１０内で行うことができる。従来は複数の分注装置によって行われていたこれらの作業を同一の分注装置で行うことができるので、スペースを省いた低コストの自動分注装置が実現できるとともに、同一のステージ内で集中して分注操作を行うことにより、作業効率を向上させることができる。
【００４３】
この後、所定の希釈薬液が注入された検体プレート４Ｃは、移載ヘッド２６によってプレートステージ１０から搬出され、インキュベータ（図示せず）など他の試験用装置に渡される。そして所定の試験操作を終えた検体プレート４Ｃは、再び移載ヘッド２６によって受け取られ、待機ステージ１２に載置されて待機する。この検体プレート４Ｃは、第２の搬送手段によって開口部３ａを通過して処理部Ｃへ搬送される。
【００４４】
このときの動作について説明する。図５において、待機中の検体プレート４Ｃはまず水平搬送アーム４８上に載置され、次いで垂直搬送アーム４４に渡され（矢印ａ）、開口部３ａより下降（矢印ｂ）した後、分析器４０に渡される（矢印ｃ）。この後、所定の分析操作を終了した検体プレート４Ｃのうち、更に試験操作が行われるものは再び第２の搬送手段によって分注部Ａまで搬送され、次いで移載ヘッド２６によりストック部Ｂのプレートストッカー３０の所定の棚板３４まで、あるいは他の試験用装置まで搬送される。
【００４５】
また、試験操作を終了した検体プレート４Ｃは、処理部Ｃの洗浄器４１に渡され、洗浄処理を行った後にプレートストッカー３０の所定の棚板３４に収納される。このとき、分注部Ａと処理部Ｃは同一装置の上下位置関係にあり、極めて近接した位置にあるので搬送距離が短く、従来の自動分注装置と比較して搬送に要する時間を短縮して、試験作業の効率を大幅に向上させることができる。
【００４６】
なお、上記実施の形態では、第１の分注ヘッド、第２の分注ヘッドにそれぞれ格子状、列状に配列された複数の分注チップが装着された例を示しているが、本発明は、前記分注チップの配列の態様には限定されず、格子状、列状以外の異なる配列の態様であってもよく、また同一の配列の態様の分注チップが装着された複数の分注ヘッドを備えたものであっても良い。これらの場合においても、複数の分注ヘッドを共通の分注ステージ内で作業させることにより、従来は複数の分注装置を用いて行われていた作業を同一の分注装置で行わせることができ、スペースを省いた低コストの自動分注装置が実現できるとともに、分注操作の作業効率を向上させることができる。
【００４７】
以上のように共通の分注ステージを作業範囲とする複数の分注ヘッドを備えたので、従来は複数の分注装置によって行われていたこれらの作業を同一の分注装置で行うことにより、スペースを省いた低コストの自動分注装置が実現できるとともに、分注操作の作業効率を向上させることができる。更には、第１の分注ヘッドに格子状に配列された複数の分注チップを装着し、第２の分注ヘッドに列状に配列された複数の分注チップを装着するようにすれば、薬剤の希釈系列を作成する作業や、希釈薬液を検体プレートに一括して分注する作業を同一の分注ステージ内で行うことができる。したがって、分注ヘッドの使い分けが必要とされる分注作業の効率を大幅に向上させることができる。
【００４８】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、チップ保持器を弾持手段で弾持するようにし、かつこの弾持力の大きさを調整できるようにしているので、分注ヘッドに所定個数の分注チップを一括して確実に自動装着することができ、かつ装着時に分注チップが破損するのを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施の形態の自動分注装置の斜視図
【図２】（ａ）本発明の一実施の形態の自動分注装置の分注ヘッドの部分斜視図
（ｂ）本発明の一実施の形態の自動分注装置の分注ヘッドの部分斜視図
【図３】本発明の一実施の形態の自動分注装置の正面図
【図４】本発明の一実施の形態の自動分注装置の平面図
【図５】本発明の一実施の形態の自動分注装置の部分斜視図
【図６】本発明の一実施の形態の自動分注装置のプレートの側断面図
【図７】（ａ）本発明の一実施の形態の自動分注装置の支持部の斜視図
（ｂ）本発明の一実施の形態の自動分注装置のチップ保持器を載置した支持部の斜視図
（ｃ）本発明の一実施の形態の自動分注装置のチップ保持器を載置した支持部の断面図
【図８】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図９】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図１０】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図１１】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図１２】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図１３】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図１４】本発明の一実施の形態のシリンダの配管図
【符号の説明】
１ 自動分注装置
３ ベースプレート
４ プレート（試料収納体）
４ａ 凹部（試料収納部）
５ チップ保持器
１０ 分注ステージ
１０Ｅ チップ交換ステージ
１４ 第１の分注ヘッド
１５ 分注チップ
１６ 第２の分注ヘッド
１７ ノズル（装着部）
２０ 天井走行ロボット
２１ Ｙ軸テーブル
２３ Ｘ軸テーブル
２６ 移載ヘッド
３０ プレートストッカー
３４ 棚板
３５ チップストッカー
４０ 分析器
４１ 洗浄器
４２ Ｙ軸テーブル
４５ スライドユニット
５１ シリンダ
５３ 支持体
５５ 突起
６１，６２ レギュレータ
６３ バルブ
６４ 圧力調整手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬剤や検体などの液状の試料を分注する自動分注装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
物質の生化学的反応などの試験を系統的に行う際に用いられる装置として、自動分注装置が知られている。この自動分注装置は、試料収納体であるプレート内の薬剤や検体などの液状試料取り出し、移し替えなどの操作を自動的に行うものである。試料収納体であるプレートには小さな凹部が格子状に多数設けられており、この凹部内の液状の試料を分注ヘッドに装着された分注チップによって吸入し、また吐出することにより、各種の分注操作を行うようになっている。分注チップは、分注操作を行う液状試料の種類が変わる毎、もしくは分注操作毎に新しいものと交換して使用される。
【０００３】
ところで、分注ヘッドによってプレート内の液体を分注する際、プレートの全ての凹部を一括して分注操作の対象とする場合と、プレートの一部の凹部のみを分注操作の対象とする場合とがある。このため、分注ヘッドにはプレートの凹部の配列に対応した数の分注チップを格子状に装着したものや、プレートの一部の凹部の列を対象として分注チップが列状に装着されたものなどがあり、分注操作の内容によりこれらの分注ヘッドの使い分けを行っている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上述した分注チップの交換は迅速に行うことが望ましい。このためには分注ヘッドの複数個のノズルに分注チップを一括して装着できるようにすることが望ましい。また上述したように、分注ヘッドには分注チップを格子状に装着するものや列状に装着するものなどがあり、したがって分注ヘッドの種類によってこれに装着される分注チップの配列や個数は異るが、いずれの分注ヘッドであっても分注チップの装着は迅速・確実に行うことが望ましい。また分注チップは、一般に樹脂などのぜい弱な素材にて長パイプ状に形成されているので、装着時にこれを破損しないようにしなければならない。
【０００５】
そこで本発明は、分注ヘッドに対する分注チップの装着を迅速・確実に行うことができる自動分注装置を提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
請求項１記載の自動分注装置は、試料収納体の試料収納部に液状試料の分注操作を行う分注ステージと、分注チップを保持するチップ保持器をストックするチップストッカーと、チップ交換ステージと、チップストッカーにストックされたチップ保持器をピックアップしてチップ交換ステージに搬送する移載ヘッドと、分注チップを着脱自在に装着する複数個の装着部を有し前記チップ交換ステージと前記分注ステージの間を移動して分注作業を行う分注ヘッドと、分注ヘッドを前記チップ交換ステージの前記チップ保持器に対して相対的に上下動させる上下動手段とを備え、前記チップ交換ステージが、前記チップ保持器を支持する支持体と、この支持体を上下動自在に弾持する弾持手段と、前記分注ヘッドの前記装着部に装着される分注チップの個数およびまたは品種に応じてこの弾持手段の弾持力を調整する弾持力調整手段を備えた。
【０００７】
請求項２記載の自動分注装置は、請求項１記載の自動分注装置において、前記弾持手段がエアシリンダであり、かつ前記弾持力調整手段がこのエアシリンダのエア圧の大きさを調整する圧力調整手段である。
【０００８】
上記構成の本発明において、チップストッカーのチップ保持器を移載ヘッドによりチップ交換ステージの支持体上に移載し、そこで分注ヘッドをチップ保持器に対して相対的に上下動させることにより、チップ保持器に備えられた複数個の分注チップを分注ヘッドの装着部に一括して装着する。この場合、分注ヘッドに装着する分注チップの個数などに応じて弾持手段の弾持力を調整すれば、分注チップに適度のクッション力を発生させて装着部に確実に装着することができる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図１は本発明の一実施の形態の自動分注装置の斜視図、図２（ａ），（ｂ）は同自動分注装置の分注ヘッドの部分斜視図、図３は同自動分注装置の正面図、図４は同自動分注装置の平面図、図５は同自動分注装置の部分斜視図、図６は同自動分注装置のプレートの側断面図、図７（ａ）は同自動分注装置の支持部の斜視図、図７（ｂ）は同自動分注装置のチップ保持器を載置した支持部の斜視図、図７（ｃ）は同自動分注装置のチップ保持器を載置した支持部の断面図、図８、図９、図１０、図１１、図１２、図１３は同チップ交換ステージの側面図、図１４は同シリンダの配管図である。このうち図８〜図１３は分注チップの装着作業を動作順に示している。
【００１０】
まず図１を参照して自動分注装置の全体構造を説明する。図１において、自動分注装置１は型材を組み合わせて構成されたフレーム２およびフレーム２に固着されたベースプレート３を備えている。自動分注装置１はフレーム２とベースプレート３によって３つの部分、すなわち分注部Ａ、ストック部Ｂおよび処理部Ｃに区分される。分注部Ａはベースプレート３上に配設されており、試料を収納した試料収納体であるプレートへの分注操作を行う。ストック部Ｂは分注部Ａで用いられるプレートや分注チップをストックする。処理部Ｃは分注操作後にインキュベータなど他装置に送られ、戻って来たプレートの分析や洗浄などの処理を行う。
【００１１】
次に図１を参照して分注部Ａについて説明する。ベースプレート３上には、プレート４を載置する３つのステージ、すなわち分注ステージ１０、バッファステージ１１および待機ステージ１２が設けられている。分注ステージ１０には分注操作が行われる薬剤や検体のプレート４が載置される。バッファステージ１１は分注ステージ１０内に載置されるプレート４を一時的に載置するバッファの役割を果たすものである。また待機ステージ１２はベースプレート３に設けられた搬送孔３ａを介して下方の処理部Ｃへ搬送されるプレート４の待機用のステージである。
【００１２】
分注ステージ１０の側方には、移動テーブル１３が分注ステージ１０の長手方向に沿って配設されている。移動テーブル１３には、第１の分注ヘッド１４（後述）が収納されたボックス１４Ａおよび第２の分注ヘッド１６（後述）が収納されたボックス１６Ａが装着されており、第１の分注ヘッド１４および第２の分注ヘッド１６は駆動手段（図示せず）によってそれぞれ個別に移動テーブル１３に沿って分注ステージ１０上をＹ方向へ移動する。すなわち分注ステージ１０は第１の分注ヘッド１４および第２の分注ヘッド１６の共通の作業範囲となっている。分注ヘッド１４，１６の下面には、分注チップ１５を着脱自在に装着する装着部としてのノズル１７が備えられている（図１０も参照）。なお図１１〜図１３ではボックス１４Ａは省略している。
【００１３】
次に、図２を参照して分注チップ１５について説明する。分注チップ１５は先細りのテーパ状のノズル部品であり、分注ヘッドに交換自在に装着され、使用の都度交換されるいわゆる使い捨て部品である。図２（ａ）に示すように、第１の分注ヘッド１４には、分注チップ１５が格子状に複数個（本実施の形態では８個×１２列、計９６個）装着されており、また図２（ｂ）に示すように、第２の分注ヘッド１６には分注チップ１５が列状に複数個（本実施の形態では８個）装着されている。
【００１４】
これらの分注チップ１５の先端部を、図２（ａ）に示すプレート４に格子状に設けられた試料収納部としての凹部４ａ内に下降させ液状の薬剤や検体を吸入し、他のプレート４の凹部４ａに吐出することにより、異なるプレート４間で試料の移し替えなどの各種の分注操作を行う。第１の分注ヘッド１４を用いることにより、プレート４の全ての凹部４ａ内の試料を一括して分注することができる。また、第２の分注ヘッド１６を用いることにより、プレート４の任意の列を選択してその列を構成する凹部４ａ内の試料のみを分注することができる。
【００１５】
分注チップ１５は、図７（ｂ）に示すように、プレート４の凹部４ａと同様の格子状の配列で分注チップ１５を装着する無底箱形のチップ保持器５に保持されており、チップ保持器５上に分注ヘッド１４，１６を下降させることにより、分注チップ１５が分注ヘッド１４，１６の下面のノズル１７に強制的に弾性挿着されて自動的に装着されるようになっている。また、使用後には、分注ヘッド１４，１６を分注部Ａに配設されたチップ取り外し機構部１９（図１参照）上で昇降させることにより、チップ取り外し機構部１９の櫛歯状プレートに分注チップ１５を係止して分注ヘッド１４，１６から自動的に取り外すようになっている。また、ベースプレート３上の、移動テーブル１３の反対側の端部には、蓋取外しユニット１８が配設されている。蓋取外しユニット１８は、プレート４のストック時にプレート４を覆う蓋の取外しを行う。
【００１６】
次に図３および図４を参照してストック部Ｂについて説明する。図３に示すように、ストック部Ｂには、プレートストッカー３０が配設されている。フレーム２にはモータ３１ａを備えたＺ軸テーブル３１が固着されており、Ｚ軸テーブル３１のスライダ３２には背板３３が結合されている。背板３３には複数段の棚板３４が複数列設けられており、棚板３４上にはプレート４が載置される。
【００１７】
プレート４の種類によって載置される棚板の列が特定されており、図４に示すように、棚板列３４Ａ，３４Ｂには希釈液を容れた希釈プレート４Ａが、棚板列３４Ｃ，３４Ｄには薬剤を容れた薬剤プレート４Ｂが、また棚板列３４Ｅ，３４Ｆには検体を容れた検体プレート４Ｃが載置される。Ｚ軸テーブル３１のモータ３１ａを駆動することにより、棚板３４上に載置された任意のプレート４を移載ヘッド（後述）がクランプ可能な高さまで上昇させ、また下降させることができる。
【００１８】
プレートストッカー３０と対向して、チップストッカー３５が配設されている。チップストッカー３５は、垂直に配設されモータ３６ａを備えたＺ軸テーブル３６に、ストックテーブル３７を結合して構成されている。ストックテーブル３７上には分注チップ１５を保持するチップ保持器５が段積みしてストックされる。Ｚ軸テーブル３６を駆動することにより、ストックされたチップ保持器５を移載ヘッド（後述）がクランプ可能な高さまで上昇させ、また下降させることができる。
【００１９】
次に図１を参照して搬送手段である天井送行ロボット２０について説明する。天井送行ロボット２０は、Ｙ軸テーブル２１、Ｘ軸テーブル２３、昇降回転ユニット２４および移載ヘッド２６より成る。Ｙ軸テーブル２１は端部のフレーム２上に長手方向に配設されており、Ｘ軸テーブル２３はＹ軸テーブル２１に一端を駆動され、他端をフレーム２上に配列されたガイドレール２２に支持されている。昇降回転ユニット２４はＸ軸テーブル２３によって駆動され、昇降回転ユニット２４から下垂するアーム２５の下端部に移載ヘッド２６が装着されている。
【００２０】
天井送行ロボット２０は、分注部Ａとストック部Ｂとの間または分注部Ａと他装置との間でプレート４やチップ保持器５の搬送を行う。すなわち、プレートストッカー３０の棚板３４上のプレート４や、チップストッカー３５のストックテーブル上のチップ保持器５を、移載ヘッド２６でクランプして保持し所定位置まで搬送して載置する。
【００２１】
次に図３を参照して処理部Ｃについて説明する。図３において、ベースプレート３の下方には分析器４０および洗浄器４１が配設されている。分析器４０はプレート４に収められた試料に関する各種の測定などの分析を行う。洗浄器４１は必要な分析が終了したプレート４の洗浄を行う。洗浄器４１の側方には、廃液タンク４９が配設されている。廃液タンク４９は、図外の処理水タンクから供給され、洗浄器４１によって洗浄処理に用いられた使用後の処理廃水を貯溜する。
【００２２】
次に図３および図５を参照して、分注部Ａと処理部Ｃとの間でプレート４を搬送する第２の搬送手段について説明する。図３、図５に示すように、ベースプレート３の開口部３ａの外側の下面には、Ｙ軸テーブル４２が配設されており、Ｙ軸テーブル４２にはモータ４３ａを備えたＺ軸テーブル４３が垂直に結合されている。Ｚ軸テーブル４３には，Ｌ字型の２本の爪を備えた垂直搬送アーム４４が装着されている。垂直搬送アーム４４はモータ４３ａの駆動によって上下に昇降する。垂直搬送アーム４４は開口部３ａと同一位置にあり、プレート４を載置してＺ軸テーブル４３に平行して上下方向に搬送する。
【００２３】
またベースプレート３の下面には、Ｙ軸テーブル４２と平行してスライドユニット４５が配設されており、スライドユニット４５のスライダ４６には、連結部材４７を介して水平搬送アーム４８が装着されている。水平搬送アーム４８は開口部３ａを介してベースプレート３上まで延出しており、ベースプレート３上でプレート４を水平方向に搬送する。スライドユニット４５を駆動させて水平搬送アーム４８を垂直搬送アーム４４の２本の爪の間に位置させることにより、水平搬送アーム４８上に載置されたプレート４は、垂直搬送アーム４４の上方に移動する。次いで垂直搬送アーム４４を上昇させてプレート４を持ち上げた状態でスライドユニット４５を後退させることにより、プレート４は垂直搬送アーム４４上に移載される。
【００２４】
この後Ｚ軸テーブル４３のモータ４３ａを駆動して垂直搬送アーム４４上のプレート４を下降させ、更にＹ軸テーブル４２を駆動することにより、プレート４は分析器４０や洗浄器４１へ受け渡される。また、ストック部Ｂの側方には廃却箱３９が設けられている。使用済の分注チップ１５はチップ保持器５に収納された後、天井送行ロボット２０によって搬送され、シュート３８上に落されることにより廃却箱３９内に回収される。
【００２５】
次に図４を参照して分注部Ａの分注ステージ１０でのステージの配置について説明する。分注ステージ１０には、図４に示すように１０Ａ〜１０Ｆまでの６つのステージが設定されており、それぞれのステージに載置されるプレート４の種類が特定されている。ステージ１０Ａ，１０Ｂには検体プレート４Ｃが、ステージ１０Ｃには試料収納体である希釈プレート４Ａが、ステージ１０Ｄには薬液プレート４Ｂがそれぞれ載置される。また、ステージ１０Ｅはチップ交換ステージとなっており、分注チップ１５がセットされたチップ保持器５が載置される。
【００２６】
次に図８を参照してチップ交換ステージ１０Ｅの構造を説明する。５０はベースプレート３に局所的に設けられた凹入部であり、シリンダ５１が設置されている。シリンダ５１のロッド５２にはプレート状の支持体５３が支持されている。シリンダ５１のロッド５２が突没すると支持体５３は上下動する。５４は支持体５３の上下動を案内するガイドロッドである。
【００２７】
支持体５３上にはピン状の突起５５が複数本立設された台体５６が載置されている（図７（ａ）も参照）。チップ保持器５は移載ヘッド２６にクランプされて支持体５３上に移載される（図７（ｂ），（ｃ）も参照）。図７（ｃ）に示すように、その状態で突起５５はチップ保持器５の上板５ａの下面に当接し、可撓性を有する上板５ａが下方へたわまないように下方から支持する。なおチップ保持器５は、合成樹脂などの可撓性を有する素材で形成されている。
【００２８】
図１４はシリンダ５１の配管系を示している。圧力源６０は、複数個（本例では２個）のレギュレータ（圧力調整器）６１，６２、バルブ６３を介してシリンダ５１に接続されている。レギュレータ６１，６２、バルブ６３などはシリンダ５１に付与するエア圧の大きさを調整する圧力調整手段６４を構成している。バルブ６３は制御部６５で制御される。
【００２９】
分注ヘッドの分注チップ１５の個数や品種などに応じてレギュレータ６１とレギュレータ６２を切替える。本例では、分注チップ１５が８個のときは一方のレギュレータ６１をシリンダ５１に接続する。また分注チップ１５の個数が９６個のときは他方のレギュレータ６２をシリンダ５１に接続する。すなわち、シリンダ５１は、チップ保持器５を下方から上下動自在に弾持する弾持手段であるが、分注チップ１５の個数が少ないときは、圧力の小さいレギュレータ６１をシリンダ５１に接続し、個数が多いときは圧力の大きいレギュレータ６２をシリンダ５１に接続する。
【００３０】
次に図１０を参照して分注ヘッドの上下動手段について説明する。分注ヘッド１４はホルダー７０に保持されている。ホルダー７０にはナット７１が装着されており、ナット７１には垂直な送りねじ７２が螺入している。モータ７３を駆動して送りねじ７２を回転させると、ナット７１は送りねじ７２に沿って上下動し、分注ヘッド１４は支持体５３上のチップ保持器５に対して上下動する。７４はモータ７３の回転を送りねじ７２に伝動するベルトである。したがって、ナット７１，送りねじ７２，モータ７３，ベルト７４などは、分注ヘッド１４の上下動手段となっている。
【００３１】
図１０において、送りねじ７２はカギ型のフレーム７５に装着されている。フレーム７５の背面のスライダ７６は、移動テーブル１３の前面の水平なガイドレール１３ａにスライド自在に嵌合している。なお図１０は、第１の分注ヘッド１４の保持構造を示しているが、第２の分注ヘッド１６の保持構造も図１０に示す第１の分注ヘッド１４の保持構造と同じである。
【００３２】
この自動分注装置は上記のように構成されており、以下その動作を説明する。図３において、チップストッカー３５にストックされたチップ保持器５を移載ヘッド２６でチップ交換ステージ１０Ｅの支持体５３上に移載する（以上、図８および図９を参照）。
【００３３】
次に第１の分注ヘッド１４または第２の分注ヘッド１６をチップ保持器５上に位置させる（図１０）。次いでチップ保持器５に対して下降させて、第１の分注ヘッド１４または第２の分注ヘッド１６のノズル１７を分注チップ１５の頭部に強制的に挿入して装着する（図１１、図１２）。このとき、第１の分注ヘッド１４または第２の分注ヘッド１６に以前の分注操作で用いた分注チップが既に装着されている場合には、前記分注チップ１５の装着に先立ってチップ取外し機構１９によって既装着の分注チップの取外しを行う。
【００３４】
図１１、図１２は、分注ヘッド１４を下降させてノズル１７を分注チップ１５の頭部に強制的に挿入して装着する状態を示している。分注ヘッド１４を下降させると、ノズル１７は分注チップ１５の円筒状の頭部に挿着される（図１１）。なおノズル１７およびまたは分注チップ１５は合成樹脂などの若干の弾性を有する素材にて形成されており、したがってノズル１７を分注チップ１５の頭部に弾性的に強制挿着することができる。このとき支持体５３はシリンダ５１のロッド５２に弾持されている。そこで図１２に示すように分注ヘッド１４をなおも若干下降させると、この下降力によりシリンダ５１のロッド５２をシリンダ５１の弾持力に抗して下方へ引き込ませながら、ノズル１７に分注チップ１５の頭部を完全に挿着することができる。この場合、図７（ｃ）を参照して説明したように、突起５５はチップ保持器５の上板５ａが下方へたわまないように下方からこれを支持するので、ノズル１７を分注チップ１５の頭部に確実に挿着することができる。
【００３５】
次いで図１３に示すように分注ヘッド１４を上昇させれば、分注チップ１５はノズル１７に吸着されてピックアップされ、また負荷が解除されたことによりシリンダ５１のロッド５２は原位置まで上昇する。以上により分注チップ１５の装着動作は終了する。分注チップ１５の装着動作は、第２の分注ヘッド１６の場合も同様である。
【００３６】
第１の分注ヘッド１４に装着される分注チップ１５の個数は９６個である。したがって第１の分注ヘッド１４に上記のようにして分注チップ１５を装着するときは、圧力の大きいレギュレータ６２をシリンダ５１に接続し、これにより大きな弾持力で支持体５３を下方から弾持する。また第２の分注ヘッド１６に装着される分注チップ１５の個数は８個である。したがって第２の分注ヘッド１６に上記のようにして分注チップ１５を装着するときは、圧力の小さいレギュレータ６１をシリンダ５１に接続し、これにより小さな弾持力で支持体５３を下方から弾持する。
【００３７】
このように分注ヘッドに装着する分注チップの個数や品種などに応じて支持体５３の弾持力を調整することにより、分注ヘッドを下降させてノズルに分注チップを装着するときに適度の上下方向のクッション力が得られるようにし、これにより多数個の分注チップを一括して確実に分注ヘッドに装着できるとともに、分注チップが装着時に破損するのを防止できる。また上記クッション力を確保することにより、分注ヘッドの下降ストロークに多少の狂いがあっても、この狂いをクッション力により吸収することができる。本形態では２個のレギュレータ６１，６２を用いて、第１の分注ヘッド１４と第２の分注ヘッド１６に対してシリンダ５１の弾持力を２段階切替えるようにしているが、弾持力の大きさは何段階切替えてもよく、あるいはアナログ的に切替えてもよいものである。
【００３８】
さて、以上のようにして分注チップ１５の装着作業を行うが、この装着作業と並行して、ステージ１０Ａ，１０Ｂにはプレートストッカー３０の棚板列３４Ｅ，３４Ｆから検体が容れられた検体プレート４Ｃが、ステージ１０Ｃには希釈液が容れられた希釈プレート４Ａが、またステージ１０Ｄには薬剤プレート４Ｂがそれぞれプレートストッカー３０の各棚板から搬送されて載置される。
【００３９】
次に図６を参照して第２の分注ヘッド１６を用いて行われる希釈系列作成操作について説明する。まず第２の分注ヘッド１６に備えられた一列の分注チップ１５により、ステージ１０Ｄ上の薬剤プレート４Ｂから規定量の薬液を吸入し、ステージ１０Ｃ上の希釈プレート４Ａの第１列目の凹部４ａに注入し、分注チップ１５により凹部４ａ内を撹拌する。これにより、薬液は希釈プレートの凹部４ａ中に既に容れられている希釈液と混合され、所定の希釈率の希釈薬液が作成される。
【００４０】
次いで、この希釈薬液を第２の分注ヘッド１６の分注チップ１５により再び規定量だけ吸入して、同一の希釈プレート４Ａの第２列目の凹部４ａに注入する。これにより、第２列目の凹部４ａ内には、第１列目の凹部４ａの希釈薬液を更に所定希釈倍率だけ希釈した希釈薬液が作成される。同様の操作を繰り返すことにより、希釈プレート４Ａには、同一の薬剤を異る希釈倍率で希釈した希釈薬液の複数の列、すなわち希釈系列が作成される。
【００４１】
次に、これらの希釈薬液は第１の分注ヘッド１４によって一括してステージ１０Ａ，１０Ｂに載置された検体プレート１０Ｃに分注される。第１の分注ヘッド１４には、プレート４の凹部４ａの配列に対応して分注チップ１５が装着されているため、異る希釈倍率の希釈薬液を一回の操作で分注することができる。
【００４２】
このように、複数のプレート４を載置するプレートステージ１０を共通の作業範囲とする第１の分注ヘッド１４と第２の分注ヘッド１６を設けることにより、異る希釈倍率の希釈薬液（希釈系列）を作成する作業や、作成された希釈系列を検体プレート４Ｃに一括して分注する作業を同一の分注ステージ１０内で行うことができる。従来は複数の分注装置によって行われていたこれらの作業を同一の分注装置で行うことができるので、スペースを省いた低コストの自動分注装置が実現できるとともに、同一のステージ内で集中して分注操作を行うことにより、作業効率を向上させることができる。
【００４３】
この後、所定の希釈薬液が注入された検体プレート４Ｃは、移載ヘッド２６によってプレートステージ１０から搬出され、インキュベータ（図示せず）など他の試験用装置に渡される。そして所定の試験操作を終えた検体プレート４Ｃは、再び移載ヘッド２６によって受け取られ、待機ステージ１２に載置されて待機する。この検体プレート４Ｃは、第２の搬送手段によって開口部３ａを通過して処理部Ｃへ搬送される。
【００４４】
このときの動作について説明する。図５において、待機中の検体プレート４Ｃはまず水平搬送アーム４８上に載置され、次いで垂直搬送アーム４４に渡され（矢印ａ）、開口部３ａより下降（矢印ｂ）した後、分析器４０に渡される（矢印ｃ）。この後、所定の分析操作を終了した検体プレート４Ｃのうち、更に試験操作が行われるものは再び第２の搬送手段によって分注部Ａまで搬送され、次いで移載ヘッド２６によりストック部Ｂのプレートストッカー３０の所定の棚板３４まで、あるいは他の試験用装置まで搬送される。
【００４５】
また、試験操作を終了した検体プレート４Ｃは、処理部Ｃの洗浄器４１に渡され、洗浄処理を行った後にプレートストッカー３０の所定の棚板３４に収納される。このとき、分注部Ａと処理部Ｃは同一装置の上下位置関係にあり、極めて近接した位置にあるので搬送距離が短く、従来の自動分注装置と比較して搬送に要する時間を短縮して、試験作業の効率を大幅に向上させることができる。
【００４６】
なお、上記実施の形態では、第１の分注ヘッド、第２の分注ヘッドにそれぞれ格子状、列状に配列された複数の分注チップが装着された例を示しているが、本発明は、前記分注チップの配列の態様には限定されず、格子状、列状以外の異なる配列の態様であってもよく、また同一の配列の態様の分注チップが装着された複数の分注ヘッドを備えたものであっても良い。これらの場合においても、複数の分注ヘッドを共通の分注ステージ内で作業させることにより、従来は複数の分注装置を用いて行われていた作業を同一の分注装置で行わせることができ、スペースを省いた低コストの自動分注装置が実現できるとともに、分注操作の作業効率を向上させることができる。
【００４７】
以上のように共通の分注ステージを作業範囲とする複数の分注ヘッドを備えたので、従来は複数の分注装置によって行われていたこれらの作業を同一の分注装置で行うことにより、スペースを省いた低コストの自動分注装置が実現できるとともに、分注操作の作業効率を向上させることができる。更には、第１の分注ヘッドに格子状に配列された複数の分注チップを装着し、第２の分注ヘッドに列状に配列された複数の分注チップを装着するようにすれば、薬剤の希釈系列を作成する作業や、希釈薬液を検体プレートに一括して分注する作業を同一の分注ステージ内で行うことができる。したがって、分注ヘッドの使い分けが必要とされる分注作業の効率を大幅に向上させることができる。
【００４８】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、チップ保持器を弾持手段で弾持するようにし、かつこの弾持力の大きさを調整できるようにしているので、分注ヘッドに所定個数の分注チップを一括して確実に自動装着することができ、かつ装着時に分注チップが破損するのを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施の形態の自動分注装置の斜視図
【図２】（ａ）本発明の一実施の形態の自動分注装置の分注ヘッドの部分斜視図
（ｂ）本発明の一実施の形態の自動分注装置の分注ヘッドの部分斜視図
【図３】本発明の一実施の形態の自動分注装置の正面図
【図４】本発明の一実施の形態の自動分注装置の平面図
【図５】本発明の一実施の形態の自動分注装置の部分斜視図
【図６】本発明の一実施の形態の自動分注装置のプレートの側断面図
【図７】（ａ）本発明の一実施の形態の自動分注装置の支持部の斜視図
（ｂ）本発明の一実施の形態の自動分注装置のチップ保持器を載置した支持部の斜視図
（ｃ）本発明の一実施の形態の自動分注装置のチップ保持器を載置した支持部の断面図
【図８】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図９】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図１０】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図１１】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図１２】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図１３】本発明の一実施の形態のチップ交換ステージの側面図
【図１４】本発明の一実施の形態のシリンダの配管図
【符号の説明】
１ 自動分注装置
３ ベースプレート
４ プレート（試料収納体）
４ａ 凹部（試料収納部）
５ チップ保持器
１０ 分注ステージ
１０Ｅ チップ交換ステージ
１４ 第１の分注ヘッド
１５ 分注チップ
１６ 第２の分注ヘッド
１７ ノズル（装着部）
２０ 天井走行ロボット
２１ Ｙ軸テーブル
２３ Ｘ軸テーブル
２６ 移載ヘッド
３０ プレートストッカー
３４ 棚板
３５ チップストッカー
４０ 分析器
４１ 洗浄器
４２ Ｙ軸テーブル
４５ スライドユニット
５１ シリンダ
５３ 支持体
５５ 突起
６１，６２ レギュレータ
６３ バルブ
６４ 圧力調整手段
Claims (2)
- 試料収納体の試料収納部に液状試料の分注操作を行う分注ステージと、分注チップを保持するチップ保持器をストックするチップストッカーと、チップ交換ステージと、チップストッカーにストックされたチップ保持器をピックアップしてチップ交換ステージに搬送する移載ヘッドと、分注チップを着脱自在に装着する複数個の装着部を有し前記チップ交換ステージと前記分注ステージの間を移動して分注作業を行う分注ヘッドと、分注ヘッドを前記チップ交換ステージの前記チップ保持器に対して相対的に上下動させる上下動手段とを備え、前記チップ交換ステージが、前記チップ保持器を支持する支持体と、この支持体を上下動自在に弾持する弾持手段と、前記分注ヘッドの前記装着部に装着される分注チップの個数およびまたは品種に応じてこの弾持手段の弾持力を調整する弾持力調整手段を備えたことを特徴とする自動分注装置。
- 前記弾持手段がエアシリンダであり、かつ前記弾持力調整手段がこのエアシリンダのエア圧の大きさを調整する圧力調整手段であることを特徴とする請求項１記載の自動分注装置。
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