JP3586510B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に乗用車等の車両に設置して用いられる冷暖房併用型の車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車(車両)は冷暖房併用型の空調装置がインスツルメントパネル部に設置されていて、エンジンの熱と冷凍サイクルとを併用して、車室内を快適に空調することが行われている。
【0003】
こうした車両用空調装置は、図5および図6に示されるようにケーシング1内に、冷凍サイクルのエバポレータ(図示しない)、エンジン冷却水の熱を放熱するヒータ2と呼ばれる熱交換器、さらにはヒータ2を通過する空気とヒータ2をバイパスする空気とを分配するエアミックスダンパ3を設けた構造が用いられている。
【0004】
そして、ケーシング1の図示しない一端側に設けてある空気吸込口(図示しない)から吸込まれた空気を、エアミックスダンパ3の開度(左右の移動)によって所定に温調して、ケーシング1の他端側に設けてある吹出口、例えばFACE吹出口4(第1の吹出口)、DEF吹出口5(第2の吹出口)といった各種の吹出口から吹き出せるようにしてある。
【0005】
具体的には、エバポレータにて熱交換されて冷却された空気は、ヒータ2の上流にあるエアミックスダンパ3の左右方向の作動によって、ヒータ2を通過する空気とヒータ2をバイパスする空気とに所定に分配されて分配量が調整され、さらにヒータ2の後流側の空気流路部分で合流、混合されて所定の温度に調節された後、各種の吹出口から吹き出される。
【0006】
こうした車両用空調装置では、通常、車体の所望の部位に在る吹出口から車室内へ温調された空気を吹き出させるために、ヒータ2と吹出口、例えばFACE吹出口4,DEF吹出口5との間の流路部分に流路切換装置7が設けてある。
【0007】
一般には、板状のダンパを用いた構造が採用される(図示していない)。
ところが、この板状のダンパを用いた構造だと、構造が複雑である上、ケーシング1内の空気流路の抵抗が大きいといった難点がある。
【0008】
そこで、図5および図6に示されるように、構造が簡単となり、空気流路の抵抗が小さくてすむなどの利点があるロータリダンパ8を用いた流路切換装置7が提案されている。
【0009】
これは、並行に配置されているFACE吹出口4、DEF吹出口5の直下の空気流路部分に同部位を遮蔽するよう円弧側を吹出口側に向けて略半円筒形のシールケース9を設け、このシールケース9にロータリダンパ8を組合わせた構造が用いられている。
【0010】
詳しくは、シールケース9は、両端面壁がケーシング1の内側面に密着して、ケーシンング1の内面とシールケース9の外面との間で風もれが無いよう、ねじ等の固定具10で固定してある。
【0011】
シールケース9の下部開口は、ヒータ2側の空気流路中に開放されて流入通路としてあり、所定の温度に調節された空気の全量がシールケース9内へ送り込まれるようにしている。
【0012】
そして、このシールケース9の円弧壁のち、FACE吹出口4およびDEF吹出口5と相対する部分には、FACE通風口11およびDEF通風口12が穿設してある。
【0013】
こうしたシールケース9の内側に、同シールケース9の内面と摺接自在な扇状形をなしたロータリダンパ8が組合わせてある。
すなわち、ロータリダンパ8は、シールケース9の円弧壁の内面と接する、シールケース9の円弧形と同心円の円弧面形をなした円弧壁15、この円弧壁15の両端からシールケース9の端面壁と接しながら中心側に延びて端部がシールケース9の円弧壁と同一な軸中心となる部位に挿通してある駆動軸14に固定された端面壁16と有して構成されている。
【0014】
これにより、ロータリダンパ8は、駆動軸14を回転させると、円弧壁15がシールケース9の円弧壁の内面を摺動しながら回動変位して、FACE通風口11あるいはDEF通風口12を開閉したり、両FACE通風口11,DEF通風口12を閉塞して、吹出側の流路切換が行われるようにしてある。
【0015】
この流路切換にて、シールケース9に送り込まれた空気をFACE通風口11を通過してFACE吹出口4から、DEF通風口12を通過してDEF吹出口5から、車室内へ吹き出させるようにしている。
【0016】
すなわち、今、ロータリダンパ8を、駆動軸14を介し、図5に示す位置から図上において右方向に回転させて、円弧壁15の内面で形成されるダンパシール面14aがFACE通風口11を完全に通過した位置で止めると、シールケース9の内部とケーシング1のFACE吹出口4との間に、FACE通風口11を通じる風路が形成され、シールケース9内に至る空気がFACE吹出口4から車室内へ吹き出される。
【0017】
同様にロータリダンパ8を、図5に示す位置から図上において左方向に回転させて、ダンパシール面14aがDEF通風口12を完全に通過した位置で止めると、シールケース9の内部とケーシング1のDEF吹出口5との間に、DEF通風口12を通じる風路が形成され、シールケース9内に至る空気がDEF吹出口5から車室内へ吹き出される。
【0018】
ところで、車両に搭載される空調装置は、ロータリダンパ8で、同ロータリダンパ8とシールケース9との間から風もれなく、吹出口、すなわちFACE通風口11、DEF吹出口5を全閉させることが求められている。
【0019】
そこで、従来では、ロータリダンパ8とシールケース9との隙間からの風もれを防ぐために、同隙間を可能な限り小さくしたり、図7に示されるようにロータリダンパ8の円弧壁14の両側端などのシール面にシールケース9の円弧壁内面と接するシール部材17(緩衝材等などが用いられる)を設けて、FACE通風口11,DEF吹出口5の全閉状態時、ロータリダンパ8とシールケース9との隙間から風がもれるのを抑制することが行われている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前者の構造は、シールケース9とロータリダンパ8との間の隙間を小さく保つことが要求される。
このため、両部品の加工及びこれらの組立精度を維持するのが難しいといった難点があった。
【0021】
これに対し後者の構造は、隙間の対策では良好な結果は得られるものの、常にシール部材17はシールケース9の円弧壁に接しているために、ロータリダンパ8の移動にはかなりの抵抗を伴い、ロータリダンパ13の作動は重たくなりやすい。
【0022】
このため、ロータリダンパ8の操作性が損なわれる、すなわちロータリダンパ8の円滑な駆動が損なわれる難点があり、こうした不具合を改善できるものが要望されている。
【0023】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、高い加工および組立精度を必要とせず、かつロータリダンパの円滑な作動を損なわずに、全閉状態時、シールケースとロータリダンパとを風もれのない状態にシールすることができる車両用空調装置を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に記載した発明は、ケーシング中の熱交換器と第1、第2の吹出口との間の同吹出口に近接した位置に設けてある空気流路を遮断するシール壁を、ケーシング内の点を中心とする等間隔の三重同心円により形成される三つの円弧のうち、最外側の円弧上の一端側の点を第1の点、中間の円弧上の中央の点を第2の点、最内側の円弧上の他端側の点を第3の点としたとき、この三つの点を通る円弧で形成し、同シール壁の第1、第2の吹出口と相対する位置にそれぞれ第1、第2の通風口を設け、同第1、第2の通風口に対し、一方の通風口を三重同心円の中心を軸中心として回転可能で、かつシール壁の外側に摺接して同通風口を開閉する円弧面を有する第1のロータリダンパと、他方の通風口を三重同心円の中心を軸中心として回転可能で、かつシール壁の内側に摺接して同通風口を開閉する円弧面を有する第2のロータリダンパとを設置した構成にしたことにある。
【0025】
請求項1に記載の発明によると、三重の同心円弧と交叉する円弧状をなすシール壁に対して、シール壁の外側の第1のロータリダンパが三重同心円の中心を軸中心として回動可能になっているから、全閉位置に在る第1のロータリダンパは開側に作動させると、同ダンパのシール面がシール壁の外側面から離れながら全開位置まで回動変位して、一方の通孔を開放させる。
【0026】
また第1のロータリダンパを全開位置まで戻せば、今度はシール面がシール壁の外側面に外方から面接触して密着するので、通孔は隙間なく閉じられる(全閉)。そして、第1のロータリバンパは、その全閉位置で止まり、シール壁との間で隙間がない状態を保つ。
【0027】
一方、全閉位置に在る第2のロータリダンパを開側に作動させると、同ダンパは、シール面がシール壁の内側面から離れながら全開位置まで回動変位して、他方の通孔を開放させる。
【0028】
また第2のロータリダンパを全閉位置まで戻せば、今度はシール面がシール壁の内側面に内方から面接触して密着するので、通孔は隙間なく閉じられる(全閉)。そして、第2のロータリバンパは、その全閉位置で止まり、シール壁との間で隙間がない状態を保つ。
【0029】
こうした第1、第2のロータリダンパの挙動により、部品の高い加工および組立精度を必要とせずに、全閉状態時にはシール壁とロータリダンパとの間を風もれのない状態にシールできるようになる。
【0030】
しかも、各ロータリダンパは、全開側に移動するときには、シール面がシール壁から完全に離れて回動、すなわちシール壁とは摺動(接触)せずに回動するので、摩擦抵抗の付加はなく、円滑な作動が約束される。
【0031】
請求項2に記載した発明は、上記目的に加え、ダンパ構造の簡素化を図るために、請求項1に記載のシール壁をケーシングと一体成形したことにある。
請求く3に記載した発明は、上記目的に加え、第1、第2のロータリダンパの支持構造の簡素化を図るために、請求項1又は請求項2に記載の第1、第2のロータリダンパをそれぞれ回転可能に支持する軸を三重同心円の中心を軸中心とする二重同心軸で構成したことにある。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図1ないし図4に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は、本発明を適用した車両用空調装置の吹出系廻りの側断面図、図2は同部位の縦断面図をそれぞれ示し、図中21は例えば自動車のインスツルメントパネル部(図示しない)に設置された空調装置のケーシングである。
【0033】
ケーシング21は、例えば箱状に形成され、一端側となる図示しない下部側には空気吸込口が遠心ファン(いずれも図示せず)と共に設けられている。
またケーシング21の、他端側となる上部壁には、温調した空気を車室内に配風するための吹出口、例えば第1の吹出口としてのFACE吹出口22と第2の吹出口としてのDEF吹出口23とが並設されている。
【0034】
そして、ケーシング21の内部に、空気吸込口とFACE吹出口22,DEF吹出口23との間を連通するような空気流路24を形成している。
この空気流路24中には、空気吸込口側から、冷凍サイクルのエバポレータ(図示しない)、エンジン冷却水の熱を放熱するヒータ25と呼ばれる熱交換器、同ヒータ25を通過する空気とヒータ25をバイパスする空気とを分配するエアミックスダンパ26が設けられている。
【0035】
またヒータ25と吹出口22,23との間の流路部分、具体的には吹出口22,23の直下には、ロータリダンパ式の流路切換装置28が設けられていて、エアミックスダンパ26の開度によって所定に温調された空気をFACE吹出口22,DEF吹出口23から車室内へ吹き出せるようにしている。
【0036】
この流路切換装置28に本発明が適用されている。
この流路切換装置28の構造について説明すれば、図中29は略半円筒形をなしたシール壁である。
【0037】
シール壁29は、円弧側が吹出口側に向き、開口側がヒータ26側に向いて、FACE吹出口22,DEF吹出口23と近接するように配置されている。このシール壁29の周部は、例えばケーシング21の周壁と一体に連続していて、空気流路24を遮っている。つまり、シール壁29はケーシング1と一体成形してある。
【0038】
このシール壁29には特別な円弧形状が設定してある。
具体的には、図3に示されるように円弧PQRを通過する円弧形状をなしている。
【0039】
すなわち、円弧PQRは、ケーシシング1内の在る点、例えば図1および図2に示されるようにヒータ25の上側となるケーシング1の両内壁部分21a,21bをシール壁29の長手方向に沿って貫通している二重同心軸、例えば中空の駆動軸30(第1)および同駆動軸30を摺動自在に挿通している駆動軸31(第2)の軸心を中心とする略等間隔の三重同心円により形成される三つの仮想円弧A,B,Cを描き、このうち最外側の円弧A上にある一端側の点、例えばFACE吹出口側の端となる点をP点(第1点)と定め、中間の円弧B上において中央の点となる部位をQ点(第2点)と定め、最内側の円弧C上にある他端側の点、例えばDEF吹出口側の端となる点をRと定め、これら三つの点PQRを通る円弧で形成してある。
【0040】
つまり、円弧PQRは、同心円弧A,B,Cとは各PQR点で交叉する特別な形状をなしている。
こうして構成されたシール壁29には、FACE吹出口22と相対する位置にFACE通風口32(第1の通風口に相当)が設けられ、DEF吹出口23と相対する位置にDEF通風口33(第2の通風口に相当)が設けられていて、シール壁29に到達した空気をFACE吹出口22、DEF吹出口23へ導く通風路を形成している。
【0041】
そして、このシール壁29の外側には、FACE通風口32を開閉するFACEロータリダンパ34(第1のロータリダンパに相当)が設けられ、また内側にはDEF通風口33を開閉するDEFロータリダンパ35(第2のロータリダンパに相当)が設けられている。
【0042】
FACEロータリダンパ34は、図4(b)に示されるように例えばFACE通風口32が在るシール壁29の外面の円弧形状にならう円弧面をもつ円弧壁36を有していて、この円弧壁36の内面がシール壁29の外面に沿って接触して、FACE通風口32を遮閉している。なお、円弧壁36の内面にはシール壁29の外面に密接する円弧面のダンパシール面36aが形成してある。
【0043】
そして、円弧壁36は、ケーシング21の一方の内壁、例えばシール壁29の一端部を摺動自在に貫通して内壁部分21aの内面に沿いに下方へ延びる端面壁37を介して、駆動軸31の外面に摺動自在に嵌挿してある駆動軸30に連結されている。
【0044】
つまり、FACEロータリダンパ34は、三重同心円A,B,Cの中心を軸中心として回転可能に支持してある。
そして、このダンパ構造により、例えば駆動軸30の端部に在るレバー38で全閉位置に在るロータリダンパ34を開側、すなわち右側へ回動させれば、図4(a)に示されるように同心円形状と三重同心の各部を交叉する円弧形状との差異によって、ロータリダンパ34のダンパシール面36aがシール壁29の外面(外側面)から離反する方向に移動しながら全開位置(右側端)へ回動変位してFACE通風口32が開放され、全閉位置へ戻せばダンパシール面36aがシール壁29の外面に外側から同シール壁29の円弧形状に沿って面接触(摺接)して同FACE通風口32を閉塞する挙動が得られるようにしてある。
【0045】
またDEFロータリダンパ35は、図4(b)に示されるように例えばDEF通風口33が在るシール壁29の内面の円弧形状にならう円弧面を有する円弧壁39を有していて、この円弧壁39の外面がシール壁29の内面に接触して、DEF通風口33を遮閉している。なお、円弧壁39の外面にはシール壁29の外面に密接する円弧形のダンパシール面39aが形成してある。
【0046】
そして、円弧壁39は、ケーシング21の他方の内壁、例えばシール壁29の内壁部分29bの内面に沿いに下方へ延びる端面壁40を介して、ボス部42で回動自在に支持してある駆動軸31に連結されている。
【0047】
つまり、DEFロータリダンパ35は、三重同心円A,B,Cの中心を軸中心として回転可能に支持してある。
そして、このダンパ構造により、例えば駆動軸31の端部に在るレバー41で全閉位置に在るロータリダンパ34を開側、すなわち左側へ回動させれば、図4(c)に示されるように同心円形状と三重同心円の各部を交叉する円弧形状との差異によって、ロータリダンパ34のダンパシール面39aがシール壁29の内面(内側面)から離反する方向に移動しながら全開位置(左側端)へ回動変位してDEF通風口33が開放され、全閉位置(右側端)へ戻せばダンパシール面39aがシール壁29の内面に内側から同シール壁29の円弧形状に沿って面接触(摺接)してDEF通風口33を閉塞する挙動が得られるようにしてある。
【0048】
つぎに、このように構成された車両用空調装置の作用について説明する。
今、図示しない空気吸込口から空気が導入されたとする。
すると、この空気は、図示しない遠心ファンにて圧送され、図示しないエバポレータと熱交換して冷却された後、ヒータ25の上流部に在るエアミックスダンパ26により、ヒータ25を通過して加熱(熱交換による)される空気と、ヒータ25をバイパスする空気とに分配される。
【0049】
この冷却空気と加熱空気とに分流された空気は、ヒータ25の後流の空気流路部分で合流し、所定の温度に調整されて、シール壁29内に導入される。
そして、この温調された空気が、流路切換装置28を通じて、各種の吹出口、つまりFACE吹出口22、DEF吹出口23から車室内へ吹き出される。
【0050】
すなわち、FACE吹出口22から車室内へ温調空気を吹き出させるときは、図1、図2および図4(b)に示すFACE通風口32の全閉状態から駆動軸30を図上において右回転する。
【0051】
すると、図4(b)に示されるようにシール壁29の外壁面P1 Q1 と接触しているFACEロータリダンパ34の円弧壁36は、駆動軸30の軸心を中心として回転変位する。
【0052】
具体的には、FACEロータリダンパ34の円弧壁36は、三重の同心円弧A,B,Cと交叉する円弧PQRに対して外側に離れる方向を描きながら回動変位する。
【0053】
それ故、FACEロータリダンパ34は、図4(a)に示されるようにダンパシール面36aがシール壁29の外壁面P1 Q1 から離れながら全開位置まで回動変位する。
【0054】
これにより、シール壁29のFACE通風口32は、FACEロータリダンパ34による空気抵抗がない全開状態となって開放され、温調された空気が同通風口32を経てFACE吹出口22から車室内へ吹き出される。
【0055】
またこの位置から、今度は駆動軸30を図上において左回転させると、FACEロータリダンパ32のダンパシール面36aはシール壁29の外壁面P1 Q1 に戻る。
【0056】
このとき、シール壁29は、三重同心円A,B,Cと交叉する円弧PQR(P1 Q1 R1 )をなしているから、同心円A上を移動するダンパシール面36aの先端P2 の軌跡は、外側からシール壁29のP1 点で交叉し、同じく同心円B上を移動するダンパシール面36aの先端Q2 の軌跡は、外側からシール壁29のQ1 点で交叉する。
【0057】
つまり、戻るFACEロータリダンパ34は、ダンパシール面36aがシール壁29の外側面に外方から面接触して密着する。
これにより、全閉位置でのFACEロータリダンパ34は、シール壁29とは隙間なく接触するので、FACE通風口32は隙間なく閉じられる(全閉)。
【0058】
そして、FACEロータリバンパ34は、その全閉位置で止まり、シール壁29との間で隙間がない状態、すなわちFACE通風口32からの風もれがない状態を維持し、吹き出しを止める。
【0059】
またDEF吹出口23から車室内へ温調空気を吹き出させるときは、図1および図2に示すDEF通風口33の全閉状態から駆動軸31を図上において左回転する。
【0060】
すると、図4(b)に示されるようにシール壁29の外壁面QRと接触しているDEFロータリダンパ35の円弧壁39は、駆動軸31の軸心を中心として回転変位する。
【0061】
具体的には、DEFロータリダンパ35の円弧壁39は、三重の同心円弧A,B,Cと交叉する円弧PQRに対して内側に離れる方向を描きながら回動変位する。
【0062】
それ故、DEFロータリダンパ35は、図4(c)に示されるようにシール面39aがシール壁29の内壁面QRから離れながら全開位置まで回動変位する。これにより、シール壁29のDEF通風口33は、DEFロータリダンパ35による空気抵抗がない全開状態となって開放され、温調された空気が同通風口33を経てDEF吹出口23から車室内へ吹き出される。
【0063】
またこの位置から、今度は駆動軸31を図上において右回転させると、DEFロータリダンパ35のダンパシール面39aはシール壁29の外壁面QRに戻る。
【0064】
このとき、シール壁29は、三重同心円A,B,Cと交叉する円弧PQRをなしているから、FACEロータリダンパ34の場合と同様に、同心円B上を移動するダンパシール面39aの後端Q3 の軌跡は、内側からシール壁29のQ点で交叉し、同じく同心円C上を移動するダンパシール面39aの先端R3 の軌跡は、内側からシール壁29のR点で交叉する。
【0065】
つまり、戻るDEFロータリダンパ35は、ダンパシール面39aがシール壁29の内側面に内方から面接触して密着する。
これにより、全閉位置でのDEFロータリダンパ35は、シール壁29とは隙間なく接触するので、DEF通風口33は隙間なく閉じられる(全閉)。
【0066】
そして、DEFロータリバンパ35は、その全閉位置で止まり、シール壁29との間で隙間がない状態、すなわちDEF通風口33からの風もれがない状態を維持し、吹き出しを止める。
【0067】
このようにシール壁29の円弧に対して、交叉したり離反したりする方向に回動変位するロータリダンパ34,35の挙動を用いた開閉構造を採用により、FACE通風口32、DEF通風口33共、シール壁29との直接接触により隙間のない全閉状態に維持させることができる。
【0068】
この結果、部品の高い加工および組立精度を必要とせずに、風もれのない状態にシールできる。
しかも、各ロータリダンパ34、35は、全開までの作動過程においてダンパシール面36a,39aがシール壁29から完全に離れて回動、すなわちシール壁29とは摺動(接触)せずに回動するので、摩擦抵抗の付加はなく、円滑な作動が約束され、円滑な駆動、効率のよい各ロータリダンパ34,35の操作が可能となる。
【0069】
またシール壁29をケーシング1と一体成形したことにより、ダンパ構造の簡素化を図ることができる。
加えて、FACEロータリダンパ34、DEFロータリダンパ35をそれぞれ回転可能に支持する軸部(軸)を三重同心円A,B,Cの中心を軸中心とする二重同心軸30,31で構成したので、両ロータリダンパ34,35の支持構造の簡素化が図れる。
【0070】
なお、上述した一実施形態では、本発明をFACE吹出口、DEF吹出口を有する車両用空調装置に適用したが、これに限らず、それ以外の吹出口を有する車両用空調装置、例えばFOOT吹出口等などを有する車両用空調装置に本発明を適用してもよい。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、円弧形のシール壁に対して、交叉したり離反したりする方向に移動する第1、第2のロータリダンパの挙動により、部品の高い加工および組立精度を必要とせずに、全閉状態時、シール壁とロータリダンパとの間を風もれのない状態にシールできる。
【0072】
しかも、各ロータリダンパは、全開側に移動するときには、シール面がシール壁から完全に離れて回動、すなわちシール壁とは摺動(接触)せずに回動するので、摩擦抵抗の付加はなく、円滑な作動が約束され、ロータリダンパを円滑に作動させることができ、同ロータリダンパの効率の良い操作が可能となる。
【0073】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、ダンパ構造の簡素化を図ることができるという効果を奏する。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2の発明の効果に加え、、第1、第2のロータリダンパの支持構造の簡素化を図れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用空調装置の流路切換構造廻りを示す側断面図。
【図2】同流路切換構造廻りの縦断面図。
【図3】同流路切換構造を構成する、FACE/DEFロータリダンパと組合うシール壁の円弧形状を説明するための図。
【図4】同円弧形状のシール壁に対する内・外のロータリダンパの開閉に伴う挙動を説明するための図。
【図5】従来の車両用空調装置の流路切換構造を説明するための側断面図。
【図6】同流路切換構造の縦断面図。
【図7】同流路切換構造を構成しているロータリダンパ廻りの構造を説明するための図。
【符号の説明】
21…ケーシング
22…FACE吹出口(第1の吹出口)
23…DEF吹出口(第2の吹出口)
24…空気流路
25…ヒータ(熱交換器)
29…シール壁
30,31…駆動軸(二重同心軸)
32…FACE通風口(第1の通風口)
33…DEF通風口(第2の通風口)
34…FACEロータリダンパ(第1のロータリダンパ)
35…DEFロータリダンパ(第2のロータリダンパ)
36a,39a…ダンパシール面(円弧面)
A,B,C…三重同心円
P…第1点
Q…第2点
R…第3点。
Claims (3)
- ケーシングの一端側に空気吸込口を設け、他端側に至る空気流路中に吸込み空気を温調する熱交換器を配設し、他端側に温調した空気を車室内に配風する第1、第2の吹出口を設けた車両用空調装置において、
前記ケーシング中の前記熱交換器と第1、第2の吹出口との間の同吹出口に近接した位置に前記空気流路を遮断するシール壁を設け、
前記シール壁を、前記ケーシング内の点を中心とする等間隔の三重同心円により形成される三つの円弧のうち、最外側の円弧上の一端側の点を第1の点、中間の円弧上の中央の点を第2の点、最内側の円弧上の他端側の点を第3の点としたとき、この三つの点を通る円弧で形成し、
同シール壁の前記第1、第2の吹出口と相対する位置にそれぞれ第1、第2の通風口を設け、
同第1、第2の通風口に対し、一方の通風口を前記三重同心円の中心を軸中心として回転可能で、かつ前記シール壁の外側に摺接して同通風口を開閉する円弧面を有する第1のロータリダンパと、他方の通風口を前記三重同心円の中心を軸中心として回転可能で、かつ前記シール壁の内側に摺接して同通風口を開閉する円弧面を有する第2のロータリダンパとを設置してなることを特徴とする車両用空調装置。 - 前記シール壁を前記ケーシングと一体成形してなることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
- 前記第1、第2のロータリダンパをそれぞれ回転可能に支持する軸を前記三重同心円の中心を軸中心とする二重同心軸としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置。
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