JP3586287B2 - 義歯安定用根面部材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、永久磁石による磁気吸引力を利用して義歯を保持固定するための義歯安定用根面部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
義歯を口腔内に固定するに際して、義歯内に埋設した永久磁石と歯根に固定した軟磁性合金部材との磁気吸引力を利用する試みは従来からすでに種々行われており、例えば、「オッセオインテグレーテッド・インプラントに対する希土類磁石製保持部材の応用」(T.R.Jackson 、「オーラル・マキシロフェイシャル・インプラント」、Vol. 1、 No. 2、77〜89頁 (1987年))にその例が記載されている。
【0003】
図5は永久磁石の磁気吸引力を利用した義歯固定手段の例を示す要部縦断面図である。図5において、歯根1には、歯根1内の空孔を充填するとともに歯根1の露出部分をカバーする根面部材本体2と、本体2の端面に固着されたほぼ円板状の保持板3とからなる根面部材4が固着されている。本体2は例えばパラジウム合金のような耐蝕性非磁性材料により形成されており、保持板3は例えばSUS447J1のような耐蝕性磁性ステンレス鋼により形成されている。
【0004】
義歯床13には、義歯14を植設すると共に前記根面部材4と対向する位置に永久磁石組立体12を埋設してある。永久磁石組立体12は、例えば耐蝕性磁性ステンレス鋼からなるケース内に希土類永久磁石を密閉封止して形成する。上記の構成により、永久磁石組立体12と根面部材4との間には磁気的吸引力が作用し、もって義歯床13は歯根1上の根面部材4にしっかり固定することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の義歯固定手段は義歯の保持が確実であるとともに、その着脱を容易に行うことができるが、この義歯固定手段を装着した人がMRI(磁気共鳴診断装置)による検査を受けると、永久磁石及び軟磁性保持板3によりMRI画像が乱れるため、正確な検査ができないと言う問題がある。この場合、たとえ永久磁石組立体12を埋設した義歯床を取り外しても、根面部材4の端部に設けた軟磁性保持板3により、MRI画像の乱れが続く。しかし、従来の義歯固定手段では、保持板3は根面部材4に鋳ぐるみ若しくは溶接によって一体化されているため、簡単には取り外すことができない。従って、永久磁石による磁気吸引力を利用した義歯固定手段を適用した人には、MRIによる診断ができなかった。
【0006】
特開平 5−103797 号公報には非磁性材料からなる歯根内に埋設される本体と、該本体に着脱可能な軟磁性材料からなる保持板が記載されている。そして保持版と本体とを螺着構造で着脱することが記載されている。しかしながら本公知文献のように保持板自体に螺着構造やねじ頭部を設けてしまうと、着脱の際に永久磁石体との吸着面が傷つきやすく、磁石構造体との吸着力及び耐食性が低下することが危惧される。したがって、本発明の目的は、MRI画像の乱れを発生することなく、正確な診断を可能とすると同時に永久磁石体との吸着面の平滑度を損なうことのない繰り返しの着脱に好適な構造である義歯安定用根面部材を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため鋭意検討の結果、本発明者らは、義歯安定用根面部材に設けられている軟磁性材料からなる保持板がMRIの画像を乱す原因であることに注目して、その保持板を着脱自在とし、かつ永久磁石体との吸着面の平滑度が繰り返しの着脱に影響しない構造とする必要性を見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の義歯安定用根面部材は、歯根内に埋設されるとともに、義歯床に埋設された永久磁石と対向する端面を有する非磁性材料製本体と、前記本体の端面に形成された凹部と、前記凹部に収容される軟磁性材料製保持板とを有し、前記凹部は前記保持板を着脱可能に固定する各々特有の手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
【作用】
上記構成により、軟磁性保持板を根面部材と着脱可能とし、義歯床装着時においては、保持板が繰り返し着脱されても所定の保持力を維持する一方、MRI等の磁場に影響を及ぼすおそれがある時には、保持板を除去できる。
【0010】
【実施例】
以下、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の第一の実施例による義歯安定用根面部材を示す。根面部材4はパラジウム合金等の非磁性材料で形成された根面部材本体2と、Mo2%とCr30%とを含む極低カーボンフェライトステンレスやSUS447J1等の耐蝕性軟磁性材料でできた保持板3で構成されている。根面部材本体2の端面には、その直径方向に延在し一端が側面に開口する凹部11を有する。凹部11は、底面11a より小さい上端開口部11b を有し、側面の入口11c から奥にかけてテーパ状である。一方、保持板3は凹部11と相補的な外形を有する。すなわち、保持板3の平坦な上面3aより底面3bの方が幅広であり、かつ先端方向にテーパ状である。また、保持板3の根元部分には突起部6が設けられている。根面部材本体2または保持板3には歯科用治具等でひっかけて保持板3を取り外すための切り欠き5が設けてある(図1では根面部材本体側に形成。)
【0011】
上記の構成の根面部材により義歯床を保持するには、図1に示すように、保持板3を凹部11内に挿入し、保持板3のテーパした側面と凹部11のテーパした側面との摺接により抵抗を感じたら、適度な押圧力で保持板3を押し入れる。こうすることによって、保持板3は凹部11内に固定される。なお、凹部の上部開口部11b は底面11a より小さいので、保持板3が上部開口部11b から脱離することはない。
【0012】
保持板3を取り外す場合には、歯科用治具の先端を切り欠き5に入れて保持板3の側面にひっかけ、スライドさせる。着脱構造がスライド式であるため、着脱の際に歯科用器具が保持板にかける押圧力は保持板側面に集中し、吸着面を傷つけることがない。また、保持板3の除去により、磁場の乱れがなくなるので、MRIによる正確な診断ができる。
【0013】
図2は本発明の第二の実施例による根面部材を示す。根面部材本体2はその端面に円形状の凹部11を有し、保持板3は凹部11に嵌合するように相補的な外形(円形状)を有する。また、凹部11の底面部にはねじ9を螺着するためのねじ穴10が形成されている。保持板3にはねじ9により固定するための貫通孔3cが設けてある。ねじ9の螺着の際に保持板3が回動するのを防止するために、保持板3の側面には突起部6が設けられており、凹部11の側面にはその突起部6に対応する切り欠き5が形成されている。なお、本体2及び保持板3の材質は図1のものと同じでよい。
【0014】
上記の構成の根面部材により義歯床を保持するには、図2に示すように保持板3を根面部材本体2の凹部11内に入れ、ねじ9により螺着する。保持板3を除去する場合には、おねじ9を逆に回転すればよい。保持板とは別におねじ9を設け、ねじ頭部もおねじ9に設けられているために着脱を繰り返しても保持板自体の吸着面に傷はつき難い。保持板3の除去により、磁場の乱れがなくなるので、MRIによる正確な診断ができる。
【0015】
図3は本発明の第三の実施例による根面部材を示す。根面部材本体2には保持板3を嵌合させるための凹部11が形成されており、凹部11の周囲は切り欠き7を有する環状壁8となっている。この環状壁8の切り欠き7は幅の狭い上部7aと幅の広い下部7bからなる。また保持板3は上記切り欠き7に嵌合させるための突起部6を有する。突起部6には、保持板3の脱着を行うための歯科用治具を引っ掛ける切り欠き6aが形成されている。なお、本体2及び保持板3の材質は図1のものと同じでよい。
【0016】
上記の構成の根面部材により義歯床を保持するには、図3に示すように保持板3の突起部6が切り欠き7に入るようにして、保持板3を凹部11内に入れる。次に保持板3を回転させ、突起6を切り欠き下部7bの奥まで入れる。この状態で歯科用レジン等で突起部6を切り欠き7内に固着する。保持板3を除去する場合には、上記の歯科用レジン等を取り除き、切り欠き6aに歯科用治具をひっかけて、取付け時と逆方向に回転させる。着脱の機構が保持板3の側面にのみ構成されているので、着脱を繰り返しても保持板の永久磁石組立体との吸着面を傷つけることがない。保持板3の除去により、磁場の乱れがなくなるので、MRIによる正確な診断ができる。
【0017】
図4は本発明の第四の実施例による根面部材を示す。この実施例は第三の実施例の変更例であり、異なる点は、保持板3の突起部6が半分の厚さを有するとともに、切り欠き7の下部7bの厚さも半分としたことである。この構成により、切り欠き7部分の環状壁8の上端面を平坦とすることができる。
【0018】
この例では、本体2に保持板3を嵌合させた後保持板3を回転させ、突起6を切り欠き下部7bの奥に当接させ、歯科用レジン剤等で固定する。保持板3を除去する場合には、上記の歯科用レジン等を取り除き、下部7bの奥の切り欠き5に歯科用治具等を引っかけて、保持板3を取り付け時と逆方向に回転させる。保持板3の除去により、磁場の乱れがなくなるので、MRIによる正確な診断ができる。
【0019】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の義歯安定用根面部材においては、軟磁性保持板を容易に着脱できるので、これを装着した人でも、不都合なくMRIの診断を受けることができ、かつ保持板の永久磁石組立体との吸着面の平滑度を保ちやすい構造のため、吸着力や耐食性を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例による根面部材を示す部分分解斜視図である。
【図2】本発明の第二実施例による根面部材を示す部分分解斜視図である。
【図3】本発明の第三実施例による根面部材を示す部分分解斜視図である。
【図4】本発明の第四実施例による根面部材を示す部分分解斜視図である。
【図5】従来の磁気吸引力を利用した義歯固定手段の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1・・・歯根
2・・・根面部材本体
3・・・保持板
4・・・根面部材
5・・・切り欠き
6・・・突起部
7・・・切り欠き
8・・・環状突起
9・・・ねじ
10・・・ねじ穴
11・・・凹部
Claims (4)
- 歯根内に埋設されるとともに、義歯床に埋設された永久磁石と対向する端面を有する非磁性材料製本体と、前記本体の端面に形成された凹部と、前記凹部に収容される軟磁性材料製保持板とを有する義歯安定用根面部材において、前記凹部は前記本体の直径方向に延在するとともに一端が側面に開口しており、前記凹部の上端開口部は底面より小さく、かつ側面の入口から奥にかけてテーパ状であり、前記保持板は前記凹部と相補的な外形を有し、もって前記保持板を前記凹部内に挿入し押圧することにより、前記保持板を前記凹部内に固定することを特徴とする義歯安定用根面部材。
- 歯根内に埋設されるとともに、義歯床に埋設された永久磁石と対向する端面を有する非磁性材料製本体と、前記本体の端面に形成された凹部と、前記凹部に収容される軟磁性材料製保持板とを有する義歯安定用根面部材において、前記凹部は底面部にねじ穴を有し、かつ前記保持板は前記ねじ穴と整合する位置に貫通孔を有し、もって前記保持板をねじにより前記凹部に螺着することを特徴とする義歯安定用部材。
- 請求項2に記載の義歯安定用根面部材において、前記保持板が前記本体の端面に形成された凹部と相補的な外形を有する義歯安定用根面部材。
- 歯根内に埋設されるとともに、義歯床に埋設された永久磁石と対向する端面を有する非磁性材料製本体と、前記本体の端面に形成された凹部と、前記凹部に収容される軟磁性材料製保持板とを有する義歯安定用根面部材において、前記凹部の周囲の環状部分に切り欠きが設けられており、前記切り欠きは幅の狭い上部と幅の広い下部とからなり、前記保持板は前記切り欠きに係合する突起部を有し、前記突起部が前記切り欠き内に位置するように前記保持板を前記凹部に挿入した後で前記保持板を回転し、前記突起部を前記切り欠き内にレジンで固着することにより前記保持板を固定することを特徴とする義歯安定用根面部材。
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1993
- 1993-11-26 JP JP32096393A patent/JP3586287B2/ja not_active Expired - Lifetime
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