JP3578907B2 - 義歯アタッチメント用キーパー - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気吸引力を利用した義歯アタッチメントを構成する一要素であって、歯根側根面板に固定されるキーパーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、磁気吸引力を利用した義歯アタッチメントの一要素であるキーパー101は、通常鋳接によって根面板103に固定されている。図6に示すように歯根部106に根面板103が埋設され、更に、この根面板103上部にキーパー101が埋め込まれ、固定されている。キーパー101は歯根部106を復元するために残歯根部106上部に埋設される根面板103に鋳接され、磁性体103が埋め込まれている義歯床104内に吸着され、義歯105を固定する役割を果たしている。
【0003】
上記キーパーは、図6に示したように上記根面板103上部にキーパー101は鋳接により埋設固定されているため、上記根面板103よりキーパー101のみを取り外すことは困難である。他方、キーパー101は、キーパー101自体が磁性材料で形成されているため、MRI(核磁気共鳴)による脳等の診断の際には画像を乱すという問題があった。そこで、上記根面板103より上記キーパー101を取り外すことができる構造がいくつか提案されている。
【0004】
例えば、特開平7−323037号公報で提案されている歯科用磁気アタッチメントのキーパーは、図4に示すように、耐食性非磁性材料により歯根204内に根面部材203の端部にキーパー210が鋳ぐるみにより一体に埋設され、キーパー210は磁性体からなるキーパー本体210aと、非磁性対体からなるキーパー支持体210bとからなり、キーパー本体210a(例えば、雄ネジ211あり。)とキーパー支持体210b(例えば、雌ネジ212あり。)とが着脱自在(例えば、雄ネジ211と雌ネジ212とがある。)とされ、MRI診断時等には雄ネジ211と雌ネジ212の螺合を解除して、キーパー支持体210bからキーパー本体210aを離脱させることによりMRI診断等の結果への悪影響を防止している。
【0005】
また、特開平8−646号公報で提案されている義歯安定用根面部材は、図5に示すように、非磁性材料からなる根面部材本体301を略キノコ形の形状に形成し、前記本体の永久磁石組立側の端部の凹部には、非磁性材料からなり、めねじを形成した保持部材310を、前記保持部材310の底面が前記本体301のカサ部下面322より0.3mm以上上方の位置になるように配置し鋳ぐるみした形状とし、頭付き平小ねじ形状321の軟磁性保持板303をその頭部が前記本体301の端面よりは突出するように、前記保持部材310に形成しためねじに螺着固定することにより、MRI利用等の磁気的特性に影響を及ぼすおそれがあるときはねじにより容易に保持板が除去できるようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以上に説明した従来のキーパー及び義歯安定用根面部材には、次のような問題があった。
すなわち、特開平7−323037号では円柱状キーパー210を雄ネジ211を有する磁性体の円板状キーパー本体210aと雌ネジ212を有するリング状キーパー支持体210bとに分割し、ねじの作用を利用して、根面部材203に埋設固定されているキーパー支持体210bからキーパー本体210aを着脱自在にしているが、キーパー本体210a及びキーパー支持体210bとが雄ネジ211と雌ネジ212とを介して接合された状態の円柱状キーパー210が鋳ぐるみにより一体に埋設固定されているため、根面部材203に拘束されているキーパー本体210aのみを回転させて取り外すことは困難である。また、キーパー本体210aを再度キーパー支持体へ装着する際に、根面部材203の内周側にキーパー本体210aを回転させて挿入することも困難である。さらに、雄ネジ211が磁性材料のために強度が不足してネジ部が破壊するという不都合が生じやすい。
【0007】
次に、特開平8−646号公報ではめねじを形成した保持部材310と頭付き平小ねじ形状321を有するT字形の軟磁性保持板303とに分割して、ねじの作用を利用して、保持部材310に固定されている保持板303を保持部材310から着脱自在にしているが、義歯床に埋設した永久磁石組立体が磁気吸着するために必要な軟磁性保持板の大きさを確保することを目的として保持部材310の大きさに合わせるように保持板303の頭部を根面部材301よりは突出させているので、義歯床との間に空隙を生じて永久磁石組立体と軟磁性保持板303との磁気吸着性の不都合が生じやすい。また、雄ネジ311が磁性材料のために強度が不足してネジ部が破壊するという不都合が生じやすい。
【0008】
本発明は上記の従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、磁石構造体と軟磁性材料からなるキーパーとの磁気吸着性能を低下させず、キーパーの取り外しを容易にならしめることにより、MRI診断等には軟磁性材料からなるキーパーによる画像の乱れという問題を解消し、並びにMRI診断等の後に再びキーパーの取り付けを容易にならしめる義歯アタッチメント用キーパーを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは磁石構造体と磁気吸着するキーパーとの間における磁束流による磁気吸着性とキーパーが容易に繰り返し脱着できるねじ部材に関して鋭意研究した結果、キーパーは中央部に孔を有するリング状の形状としても磁気吸着性は低下しないことをも知見し、その知見からねじ部材は非磁性材料からなる雄ネジを有するT字形ネジに強度を向上させるとネジ部の破壊が少なくなることを見い出して本発明を完成したものである。
【0010】
本発明は、義歯床内に保持される磁石構造体と歯根部に埋設される根面板内に固定されるキーパーからなる義歯アタッチメントにおいて、根面板に鋳接されかつ外周側にR部を有し、内周側にT字形ネジにより固定できるリング状の耐食性磁性材料からなるキーパー本体と、前記キーパー本体の根面板側に当接して根面板に鋳接され、前記キーパー本体をT字形ネジの雄ネジによって脱着可能に螺着するための雌ネジを有する耐食性非磁性材料からなる保持板と、前記キーパー本体を上記保持板に螺着固定するための耐食性非磁性材料からなるT字形ネジとかなる。
【0011】前記キーパー本体には、リング状のキーパー本体の歯根部より鋳接面に1若しくは複数の窪み又は1若しくは複数の皿状の凹部を有してもよい。
また、リング状のキーパー本体が磁石構造体と隣接する外周部0.1〜0.3mmは円筒状が好ましい。
前記保持板には、根面板にキーパーを鋳接する際に鋳接作業を簡易にかつ確実に行えるように耐食性非磁性材料からなるホルダーを有してもよい。
前記のT字形ネジ、保持板及びホルダーの耐食性非磁性材料はTi合金等の高強度材料がより好ましい。
【0012】
即ち、本発明のキーパーは、キーパー本体と、保持板と、T字形ネジとから構成されている。
前記キーパー本体は、耐食性磁性材料からなり、キーパー本体を保持板に螺着固定するためのT字形ネジを挿着できるようにその中央部に開口する孔を有するリング状からなる。そのリングの内周側にはT字形ネジのネジ部が貫通する貫通孔とその貫通孔に連続して頭部の座面を支える支持部を有し、T字形ネジの頭部の貫通孔へと連続した孔を設けている。次に、リングの外周側から磁石構造体と磁気吸着する面の反対側(以下、下面側という。)は、保持板と当接する部分を除いて根面板に鋳接される。この鋳接されるリング外周側から下面側にかけての形状はR状をなしている。R状とすることにより、キーパー本体を保持板に固定しているT字形ネジを取り外した後に、鋳接後の根面板に埋設固定されているキーパー本体を根面板から容易に取り外すことができる。
【0013】
また、キーパー本体の下面側には1若しくは複数の窪み又は1若しくは複数の皿状の凹部を設けることによりキーパー本体が根面板上で回転することが防止できる。MRI診断等の後に再びキーパー本体を挿着する場合にT字形ネジを回転させて根面板にキーパー本体を固定することが容易となる
【0014】
さらに、鋳接後の根面板に埋設固定されているキーパー本体が根面板から抜け落ち易い場合には、リング外周側のR状の一部であるリング状のキーパー本体が磁石構造体と隣接する外周部0.1〜0.3mmを円筒状とする。すなわち、キーパー本体の外周側が根面板上部の内周側との当接部による拘束力が働くからである。
【0015】
前記キーパー本体の耐食性磁性材料としては、19Cr−2Mo−Ti鋼、13Cr−2Mo−Ti鋼、17Cr−2Mo−Ti鋼などがある。また、これらの材料の耐食性をさらに改善すべくメッキ等の表面処理を行ってもよい。
【0016】
前記保持板は、耐食性非磁性材料からなり、キーパー本体の下面側にT字形ネジにより螺着固定され、キーパー本体の根面板側に当接して根面板に鋳接される。保持板には雌ネジを有している。
また、保持板には根面板に鋳型内で鋳接する際に、キーパー本体と保持板とT字形ネジとからなるキーパーを鋳接する作業を簡易にかつ確実に所定位置に行うための耐食性非磁性材料からなるホルダーを保持板の外周側に設けてもよい。
【0017】
前記T字形ネジは、耐食性非磁性材料からなり、頭部上面には保持板に螺着するためのスリットを設けている。
【0018】
前記保持板及び前記T字形ネジの耐食性非磁性材料としては、SUS316等の非磁性ステンレス鋼がある。また、強度をさらに向上させる場合にはTi合金などがよい。
【0019】
【作用】
次に、本発明の作用につき説明する。
本発明のキーパーは、キーパー本体と保持板とをT字形ネジで螺着固定により一体化して根面板内に埋設固定される。一方、MRI診断等で磁性材料で形成されたキーパー本体を根面板より取り外す必要がある時は、容易にキーパー本体を根面板から取り除くことができる作用がある。
即ち、キーパー本体を固定しているT字形ネジのスリットにドライバーを差し込み、所定の方向に回して保持板との螺着固定を解除してT字形ネジをキーパー本体より浮上させ外した後に、前記T字形ネジを破壊することなく機械的に取り外すことができるのである。
さらに、MRI診断等を終えた後にキーパー本体を容易に挿着できる作用がある。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の義歯アタッチメント用キーパーに関する実施例について図に基づいて具体的に説明する。
本発明の実施例にかかる義歯アタッチメント用キーパーにつき、図1、図2及び図3により説明する。図1は義歯アタッチメント用キーパーを歯腔内に装着した断面図であり、図2は根面板にキーパーを埋設固定した要部縦断面図であり、図3はキーパーの分解図である。
【0021】
図1において、キーパー1は耐食性軟磁性材料AUM20(愛知製鋼株式会社製にて19Cr−2Mo−Ti鋼)からなるリング状のキーパー本体11と、Ti合金(Ti−6Al−4V)からなるホルダー12b付きの保持板12と、Ti合金からなるT字形ネジ13とから構成され、根面板3に鋳接されている。なお、根面板は歯根部5に埋設され、キーパー1に磁気吸着する磁石構造体2は義歯床4に埋設されている。
【0022】
キーパー本体11には、リングの外周側から下面側にかけては根面板3から容易に取り外しができるようにR部11aが設けられており、着脱時や使用中にキーパー本体が回転しないように下面側に窪み11bが2ケ所設けられている。また、リングの内周側にはT字形ネジ13の頭部座面13aを支える支持部11cがもうけられている。
【0023】
保持板12には、キーパー本体11を固定するためのT字形ネジ13の雄ネジ13bを螺合できる雌ネジ12bが形成され、キーパーを根面板に容易かつ確実に鋳接作業ができるようにホルダー12bが保持板側面の上部にレーザー溶接にて取り付けられている。
【0024】
T字形ネジ13には、保持板12に螺着させるためにその頭部上面にはスリットを設けて、ドライバー先端を挿入して回転できるようになっている。
【0025】
また、図1は、キーパー本体11をリング状の形状としても磁石構造体2とキーパー1との磁気吸着性が従来の円板状のキーパーと差異がないことを示している。
即ち、磁石構造体2はNdFeB焼結磁石からなる磁石21と耐食性軟磁性材料AUM20とからなるケース22とから構成され、磁気吸着性に及ぼす磁石21からの磁束流23はケース22の外周を介してキーパー本体11に流れ、キーパー本体11から磁石21へと戻る磁束流23を形成している。従って、キーパー本体11の中央部は開口孔としても磁気吸着性への影響は少ないのである。
【0026】
図2において、キーパー本体11はAUM20からなりリング上部平坦部が直径4.0mmで、円筒部は0.2mm、R部は半径0.6mmからなり、窪みは直径0.5mmにてその深さは0.25mmである。また、キーパー本体11にはT字形ネジ13が挿入できるようにT字形ネジ頭部13aが挿入できる直径1.6mm、深さ0.5mmの孔が、その孔と同心上に雄ネジ13bの山部を挿入できるように直径0.8mmの孔が加工されている。
【0027】
保持板12はTi合金からなり、直径1.6mm、高さ1.0mmにて内周にはM0.8、ピッチ0.2mmで雌ネジ12aが加工されている。外周には直径0.5mm、長さ15mmのホルダーがレーザー溶接により接合されている。
【0028】
T字形ネジ13は、Ti合金からなり、頭部13aの寸法は直径1.6mm、厚さ0.5mmにて雄ネジ13bはM0.8、ピッチ0.2mmで長さは1.3mmである。そして、頭部平坦部13cには幅0.3mm、深さ0.3mmのスリットが切削加工されている。
【0029】
キーパー本体11は、保持板12にT字形ネジ13によりセットされ、根面板3に鋳接によって一体化される。
ここで、図3に示されるように、キーパー本体11を保持板12に固定しているT字形ネジ13は、保持板12とは自在に着脱することができるため、キーパー本体11を根面板3から自在に着脱することができるのである。また、磁石構造体2の大きさとキーパー本体11の大きさが同一とすることができ、磁気吸着性にも不都合を生ぜず、低下もしない。さらに、保持板12とT字形ネジ13との同じ強度を有する非磁性材料としているのでネジ部が破壊するという不都合も発生しない。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明によればキーパー本体はT字形ネジと保持板との螺着固定を介して保持板及び根面板に固定されるため、MRI等の診断時には容易にキーパー本体を取り外すことができ、また、MRI等の診断終了後には簡単かつ確実に、そして繰り返し装着することができる義歯アタッチメント用キーパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における実施例において義歯アタッチメント用キーパーを歯腔内に装着した断面図である。
【図2】本発明における実施例において根面板にキーパーを埋設固定した要部縦断面図である。
【図3】本発明における実施例においてキーパーの分解図である。
【図4】従来の義歯アタッチメント用キーパーを歯腔内に装着した断面図である。
【図5】従来の義歯アタッチメント用キーパー要部縦断面図である。
【図6】従来の義歯アタッチメント用キーパー要部縦断面図である。
【符号の説明】
1 キーパー
11 キーパー本体
11a キーパー本体のR部
11b キーパー本体の窪み
11c キーパー本体の支持部
11d キーパー本体円筒部
12 保持板
12a 保持板の雌ネジ
12b 保持板のホルダー部
13 T字形ネジ
13a T字形ネジの頭部
13b T字形ネジの雄ネジ
13c T字形ネジのスリット
2 磁石構造体
21 磁石
22 ケース
23 磁束流
3 根面板
4 義歯床
5 歯根部
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気吸引力を利用した義歯アタッチメントを構成する一要素であって、歯根側根面板に固定されるキーパーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、磁気吸引力を利用した義歯アタッチメントの一要素であるキーパー101は、通常鋳接によって根面板103に固定されている。図6に示すように歯根部106に根面板103が埋設され、更に、この根面板103上部にキーパー101が埋め込まれ、固定されている。キーパー101は歯根部106を復元するために残歯根部106上部に埋設される根面板103に鋳接され、磁性体103が埋め込まれている義歯床104内に吸着され、義歯105を固定する役割を果たしている。
【0003】
上記キーパーは、図6に示したように上記根面板103上部にキーパー101は鋳接により埋設固定されているため、上記根面板103よりキーパー101のみを取り外すことは困難である。他方、キーパー101は、キーパー101自体が磁性材料で形成されているため、MRI(核磁気共鳴)による脳等の診断の際には画像を乱すという問題があった。そこで、上記根面板103より上記キーパー101を取り外すことができる構造がいくつか提案されている。
【0004】
例えば、特開平7−323037号公報で提案されている歯科用磁気アタッチメントのキーパーは、図4に示すように、耐食性非磁性材料により歯根204内に根面部材203の端部にキーパー210が鋳ぐるみにより一体に埋設され、キーパー210は磁性体からなるキーパー本体210aと、非磁性対体からなるキーパー支持体210bとからなり、キーパー本体210a(例えば、雄ネジ211あり。)とキーパー支持体210b(例えば、雌ネジ212あり。)とが着脱自在(例えば、雄ネジ211と雌ネジ212とがある。)とされ、MRI診断時等には雄ネジ211と雌ネジ212の螺合を解除して、キーパー支持体210bからキーパー本体210aを離脱させることによりMRI診断等の結果への悪影響を防止している。
【0005】
また、特開平8−646号公報で提案されている義歯安定用根面部材は、図5に示すように、非磁性材料からなる根面部材本体301を略キノコ形の形状に形成し、前記本体の永久磁石組立側の端部の凹部には、非磁性材料からなり、めねじを形成した保持部材310を、前記保持部材310の底面が前記本体301のカサ部下面322より0.3mm以上上方の位置になるように配置し鋳ぐるみした形状とし、頭付き平小ねじ形状321の軟磁性保持板303をその頭部が前記本体301の端面よりは突出するように、前記保持部材310に形成しためねじに螺着固定することにより、MRI利用等の磁気的特性に影響を及ぼすおそれがあるときはねじにより容易に保持板が除去できるようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以上に説明した従来のキーパー及び義歯安定用根面部材には、次のような問題があった。
すなわち、特開平7−323037号では円柱状キーパー210を雄ネジ211を有する磁性体の円板状キーパー本体210aと雌ネジ212を有するリング状キーパー支持体210bとに分割し、ねじの作用を利用して、根面部材203に埋設固定されているキーパー支持体210bからキーパー本体210aを着脱自在にしているが、キーパー本体210a及びキーパー支持体210bとが雄ネジ211と雌ネジ212とを介して接合された状態の円柱状キーパー210が鋳ぐるみにより一体に埋設固定されているため、根面部材203に拘束されているキーパー本体210aのみを回転させて取り外すことは困難である。また、キーパー本体210aを再度キーパー支持体へ装着する際に、根面部材203の内周側にキーパー本体210aを回転させて挿入することも困難である。さらに、雄ネジ211が磁性材料のために強度が不足してネジ部が破壊するという不都合が生じやすい。
【0007】
次に、特開平8−646号公報ではめねじを形成した保持部材310と頭付き平小ねじ形状321を有するT字形の軟磁性保持板303とに分割して、ねじの作用を利用して、保持部材310に固定されている保持板303を保持部材310から着脱自在にしているが、義歯床に埋設した永久磁石組立体が磁気吸着するために必要な軟磁性保持板の大きさを確保することを目的として保持部材310の大きさに合わせるように保持板303の頭部を根面部材301よりは突出させているので、義歯床との間に空隙を生じて永久磁石組立体と軟磁性保持板303との磁気吸着性の不都合が生じやすい。また、雄ネジ311が磁性材料のために強度が不足してネジ部が破壊するという不都合が生じやすい。
【0008】
本発明は上記の従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、磁石構造体と軟磁性材料からなるキーパーとの磁気吸着性能を低下させず、キーパーの取り外しを容易にならしめることにより、MRI診断等には軟磁性材料からなるキーパーによる画像の乱れという問題を解消し、並びにMRI診断等の後に再びキーパーの取り付けを容易にならしめる義歯アタッチメント用キーパーを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは磁石構造体と磁気吸着するキーパーとの間における磁束流による磁気吸着性とキーパーが容易に繰り返し脱着できるねじ部材に関して鋭意研究した結果、キーパーは中央部に孔を有するリング状の形状としても磁気吸着性は低下しないことをも知見し、その知見からねじ部材は非磁性材料からなる雄ネジを有するT字形ネジに強度を向上させるとネジ部の破壊が少なくなることを見い出して本発明を完成したものである。
【0010】
本発明は、義歯床内に保持される磁石構造体と歯根部に埋設される根面板内に固定されるキーパーからなる義歯アタッチメントにおいて、根面板に鋳接されかつ外周側にR部を有し、内周側にT字形ネジにより固定できるリング状の耐食性磁性材料からなるキーパー本体と、前記キーパー本体の根面板側に当接して根面板に鋳接され、前記キーパー本体をT字形ネジの雄ネジによって脱着可能に螺着するための雌ネジを有する耐食性非磁性材料からなる保持板と、前記キーパー本体を上記保持板に螺着固定するための耐食性非磁性材料からなるT字形ネジとかなる。
【0011】前記キーパー本体には、リング状のキーパー本体の歯根部より鋳接面に1若しくは複数の窪み又は1若しくは複数の皿状の凹部を有してもよい。
また、リング状のキーパー本体が磁石構造体と隣接する外周部0.1〜0.3mmは円筒状が好ましい。
前記保持板には、根面板にキーパーを鋳接する際に鋳接作業を簡易にかつ確実に行えるように耐食性非磁性材料からなるホルダーを有してもよい。
前記のT字形ネジ、保持板及びホルダーの耐食性非磁性材料はTi合金等の高強度材料がより好ましい。
【0012】
即ち、本発明のキーパーは、キーパー本体と、保持板と、T字形ネジとから構成されている。
前記キーパー本体は、耐食性磁性材料からなり、キーパー本体を保持板に螺着固定するためのT字形ネジを挿着できるようにその中央部に開口する孔を有するリング状からなる。そのリングの内周側にはT字形ネジのネジ部が貫通する貫通孔とその貫通孔に連続して頭部の座面を支える支持部を有し、T字形ネジの頭部の貫通孔へと連続した孔を設けている。次に、リングの外周側から磁石構造体と磁気吸着する面の反対側(以下、下面側という。)は、保持板と当接する部分を除いて根面板に鋳接される。この鋳接されるリング外周側から下面側にかけての形状はR状をなしている。R状とすることにより、キーパー本体を保持板に固定しているT字形ネジを取り外した後に、鋳接後の根面板に埋設固定されているキーパー本体を根面板から容易に取り外すことができる。
【0013】
また、キーパー本体の下面側には1若しくは複数の窪み又は1若しくは複数の皿状の凹部を設けることによりキーパー本体が根面板上で回転することが防止できる。MRI診断等の後に再びキーパー本体を挿着する場合にT字形ネジを回転させて根面板にキーパー本体を固定することが容易となる
【0014】
さらに、鋳接後の根面板に埋設固定されているキーパー本体が根面板から抜け落ち易い場合には、リング外周側のR状の一部であるリング状のキーパー本体が磁石構造体と隣接する外周部0.1〜0.3mmを円筒状とする。すなわち、キーパー本体の外周側が根面板上部の内周側との当接部による拘束力が働くからである。
【0015】
前記キーパー本体の耐食性磁性材料としては、19Cr−2Mo−Ti鋼、13Cr−2Mo−Ti鋼、17Cr−2Mo−Ti鋼などがある。また、これらの材料の耐食性をさらに改善すべくメッキ等の表面処理を行ってもよい。
【0016】
前記保持板は、耐食性非磁性材料からなり、キーパー本体の下面側にT字形ネジにより螺着固定され、キーパー本体の根面板側に当接して根面板に鋳接される。保持板には雌ネジを有している。
また、保持板には根面板に鋳型内で鋳接する際に、キーパー本体と保持板とT字形ネジとからなるキーパーを鋳接する作業を簡易にかつ確実に所定位置に行うための耐食性非磁性材料からなるホルダーを保持板の外周側に設けてもよい。
【0017】
前記T字形ネジは、耐食性非磁性材料からなり、頭部上面には保持板に螺着するためのスリットを設けている。
【0018】
前記保持板及び前記T字形ネジの耐食性非磁性材料としては、SUS316等の非磁性ステンレス鋼がある。また、強度をさらに向上させる場合にはTi合金などがよい。
【0019】
【作用】
次に、本発明の作用につき説明する。
本発明のキーパーは、キーパー本体と保持板とをT字形ネジで螺着固定により一体化して根面板内に埋設固定される。一方、MRI診断等で磁性材料で形成されたキーパー本体を根面板より取り外す必要がある時は、容易にキーパー本体を根面板から取り除くことができる作用がある。
即ち、キーパー本体を固定しているT字形ネジのスリットにドライバーを差し込み、所定の方向に回して保持板との螺着固定を解除してT字形ネジをキーパー本体より浮上させ外した後に、前記T字形ネジを破壊することなく機械的に取り外すことができるのである。
さらに、MRI診断等を終えた後にキーパー本体を容易に挿着できる作用がある。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の義歯アタッチメント用キーパーに関する実施例について図に基づいて具体的に説明する。
本発明の実施例にかかる義歯アタッチメント用キーパーにつき、図1、図2及び図3により説明する。図1は義歯アタッチメント用キーパーを歯腔内に装着した断面図であり、図2は根面板にキーパーを埋設固定した要部縦断面図であり、図3はキーパーの分解図である。
【0021】
図1において、キーパー1は耐食性軟磁性材料AUM20(愛知製鋼株式会社製にて19Cr−2Mo−Ti鋼)からなるリング状のキーパー本体11と、Ti合金(Ti−6Al−4V)からなるホルダー12b付きの保持板12と、Ti合金からなるT字形ネジ13とから構成され、根面板3に鋳接されている。なお、根面板は歯根部5に埋設され、キーパー1に磁気吸着する磁石構造体2は義歯床4に埋設されている。
【0022】
キーパー本体11には、リングの外周側から下面側にかけては根面板3から容易に取り外しができるようにR部11aが設けられており、着脱時や使用中にキーパー本体が回転しないように下面側に窪み11bが2ケ所設けられている。また、リングの内周側にはT字形ネジ13の頭部座面13aを支える支持部11cがもうけられている。
【0023】
保持板12には、キーパー本体11を固定するためのT字形ネジ13の雄ネジ13bを螺合できる雌ネジ12bが形成され、キーパーを根面板に容易かつ確実に鋳接作業ができるようにホルダー12bが保持板側面の上部にレーザー溶接にて取り付けられている。
【0024】
T字形ネジ13には、保持板12に螺着させるためにその頭部上面にはスリットを設けて、ドライバー先端を挿入して回転できるようになっている。
【0025】
また、図1は、キーパー本体11をリング状の形状としても磁石構造体2とキーパー1との磁気吸着性が従来の円板状のキーパーと差異がないことを示している。
即ち、磁石構造体2はNdFeB焼結磁石からなる磁石21と耐食性軟磁性材料AUM20とからなるケース22とから構成され、磁気吸着性に及ぼす磁石21からの磁束流23はケース22の外周を介してキーパー本体11に流れ、キーパー本体11から磁石21へと戻る磁束流23を形成している。従って、キーパー本体11の中央部は開口孔としても磁気吸着性への影響は少ないのである。
【0026】
図2において、キーパー本体11はAUM20からなりリング上部平坦部が直径4.0mmで、円筒部は0.2mm、R部は半径0.6mmからなり、窪みは直径0.5mmにてその深さは0.25mmである。また、キーパー本体11にはT字形ネジ13が挿入できるようにT字形ネジ頭部13aが挿入できる直径1.6mm、深さ0.5mmの孔が、その孔と同心上に雄ネジ13bの山部を挿入できるように直径0.8mmの孔が加工されている。
【0027】
保持板12はTi合金からなり、直径1.6mm、高さ1.0mmにて内周にはM0.8、ピッチ0.2mmで雌ネジ12aが加工されている。外周には直径0.5mm、長さ15mmのホルダーがレーザー溶接により接合されている。
【0028】
T字形ネジ13は、Ti合金からなり、頭部13aの寸法は直径1.6mm、厚さ0.5mmにて雄ネジ13bはM0.8、ピッチ0.2mmで長さは1.3mmである。そして、頭部平坦部13cには幅0.3mm、深さ0.3mmのスリットが切削加工されている。
【0029】
キーパー本体11は、保持板12にT字形ネジ13によりセットされ、根面板3に鋳接によって一体化される。
ここで、図3に示されるように、キーパー本体11を保持板12に固定しているT字形ネジ13は、保持板12とは自在に着脱することができるため、キーパー本体11を根面板3から自在に着脱することができるのである。また、磁石構造体2の大きさとキーパー本体11の大きさが同一とすることができ、磁気吸着性にも不都合を生ぜず、低下もしない。さらに、保持板12とT字形ネジ13との同じ強度を有する非磁性材料としているのでネジ部が破壊するという不都合も発生しない。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明によればキーパー本体はT字形ネジと保持板との螺着固定を介して保持板及び根面板に固定されるため、MRI等の診断時には容易にキーパー本体を取り外すことができ、また、MRI等の診断終了後には簡単かつ確実に、そして繰り返し装着することができる義歯アタッチメント用キーパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における実施例において義歯アタッチメント用キーパーを歯腔内に装着した断面図である。
【図2】本発明における実施例において根面板にキーパーを埋設固定した要部縦断面図である。
【図3】本発明における実施例においてキーパーの分解図である。
【図4】従来の義歯アタッチメント用キーパーを歯腔内に装着した断面図である。
【図5】従来の義歯アタッチメント用キーパー要部縦断面図である。
【図6】従来の義歯アタッチメント用キーパー要部縦断面図である。
【符号の説明】
1 キーパー
11 キーパー本体
11a キーパー本体のR部
11b キーパー本体の窪み
11c キーパー本体の支持部
11d キーパー本体円筒部
12 保持板
12a 保持板の雌ネジ
12b 保持板のホルダー部
13 T字形ネジ
13a T字形ネジの頭部
13b T字形ネジの雄ネジ
13c T字形ネジのスリット
2 磁石構造体
21 磁石
22 ケース
23 磁束流
3 根面板
4 義歯床
5 歯根部
Claims (4)
- 義歯床内に保持される磁石構造体と歯根部に埋設される根面板内に固定されるキーパーからなる義歯アタッチメントにおいて、
根面板に鋳接されかつ外周側にR部を有し、内周側にT字形ネジにより固定できるリング状の耐食性磁性材料からなるキーパー本体と、
前記キーパー本体の根面板側に当接して根面板に鋳接され、前記キーパー本体をT字形ネジの雄ネジによって脱着可能に螺着するための雌ネジを有する耐食性非磁性材料からなる保持板と、
前記キーパー本体を上記保持板に固定するための耐食性非磁性材料からなるT字形ネジとからなることを特徴とする義歯アタッチメント用キーパー。 - 請求項1において、リング状のキーパー本体の鋳接面に1又は複数の窪みを有することを特徴とする義歯アタッチメント用キーパー。
- 請求項1において、保持板に耐食性非磁性材料からなるホルダーを有することを特徴とする義歯アタッチメント用キーパー。
- 請求項1および3において、耐食性非磁性材料はTi合金等の高強度材料からなることを特徴とする義歯アタッチメント用キーパー。
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