JP3585296B2 - 自転車用フリーホイール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フリーホイール、特に、自転車の後ハブに装着される自転車用フリーホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、自転車の後ハブには、ペダルの踏み力を変換して得られた駆動力を後輪に一回転方向にのみ伝達するためのフリーホイールが装着されている。このフリーホイールを装着することにより、下り坂等でペダルをこぐのを止めた状態でもペダルが回転することなく自転車が自由に前進できる。この種のフリーホイールとして、後ハブのボスにネジ込みにより装着されるボス型フリーホイールと、後ハブに一体で装着されたフリーハブ型フリーホイールとが知られている。いずれの型のフリーホイールとも、外周に小ギヤが回転不能に取り付けられる外筒部と、外筒部の内周側に外筒部と相対回転自在に配置され、後ハブに装着される内筒部と、外筒部と内筒部との間に配置され、小ギヤに伝達された駆動力を外筒部から内筒部に一回転方向にのみ伝達する一方向クラッチとを備えている。
【0003】
このフリーホイールの外筒部および内筒部は、従来、円筒状の素材を金型により冷間鍛造した後、ネジ切り加工等の機械加工を行って製造される。冷間鍛造工程では、複数回の鍛造を繰り返して所望の形状の外筒部および内筒部を得る。この鍛造前に金型との間の潤滑性を良好にするためのボンデと、一度鍛造された素材の加工硬化を取り除くための焼どんとが実施される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の構成では、素材を繰り返し冷間鍛造して外筒部および内筒部を製造しているので、鍛造に加えてボンデや焼どんといった工程が繰り返し行われることになり、製造工程が多くなる。この結果、製造期間が長くなり製造コストが高くなるとともに、部品の滞留在庫が常に存在することになり、物流コストも高くなる。また、生産設備として、鍛造設備のような大掛かりな設備が必要になり、設備コストが高くなる。
【0005】
本発明の課題は、自転車用フリーホイールにおいて、短期間で製造でき、かつ簡単な設備で製造できるようにすることにある。
【0006】
発明1に係る自転車用フリーホイールは、自転車の後ハブに装着されるフリーホイールであって、外筒部と、内筒部と、一方向伝達部と、1対の鋼球とを備えている。外筒部は、1または複数のギヤを回転不能に保持するために連続して外周に形成された第1凹凸部と、ギヤに伝達された駆動力を一回転方向にのみ伝達するための係止部を含み連続して内周に形成された第2凹凸部と、第2凹凸部より後ハブ側の第1端部内周部に第1凹凸部よりさらに外周側に拡がるように形成された第1玉わんと、第1端部と逆側の第2端部内周部に形成された第2玉わんとを有し、第1凹凸部の凹部が第2凹凸部の凸部となり第1凹凸部の凸部が第2凹凸部の凹部となるように配置され、肉厚が実質的に均一となるように形成されている。内筒部は、外筒部の内周側に外筒部と相対回転自在に配置され、後ハブに装着される。一方向伝達部は、外筒部と内筒部との間に配置され、第2凹凸部に係止および係止解除されることで、ギヤに伝達された駆動力を外筒部から内筒部に一回転方向にのみ伝達する。1対の鋼球は、外筒部の両玉わんと内筒部との間に配置されている。
【0007】
ここでは、外筒部において、第1凹凸部の凹部が第2凹凸部の凸部となるように2つの凹凸部が配置されているので、外筒部をたとえばプレス加工(絞り加工)のような簡単な製造方法により製造可能になる。このため、外筒部を短期間で製造できかつより簡単な設備で製造できる。また、肉厚が実質的に均一な外筒部および内筒部のうちの一方もプレス加工による製造が可能であり、同様に短期間で製造できかつ簡単な設備で製造できる。
【0008】
発明2に係る自転車用フリーホイールは、発明1記載のフリーホイールにおいて、外筒部は、肉厚が実質的に均一となるようにプレス加工により形成され、内筒部は、その一端外周部に一方の鋼球を押圧する第1玉押しを有する内筒本体と、内筒本体の他端に螺合され、他方の鋼球を押圧する第2玉押しを有する調整ナット部とを備え、肉厚が実質的に均一となるようにプレス加工により形成されている。
発明に係る自転車用フリーホイールは、発明1又は2記載のフリーホイールにおいて、外筒部は、その端部に一体で形成された1枚のギヤを有している。
発明に係る自転車用フリーホイールは、発明1から3のいずれかに記載のフリーホイールにおいて、内筒部は、その端部内周に後ハブに螺合するネジ部を有している。
発明に係る自転車用フリーホイールは、発明1から3のいずれかに記載のフリーホイールにおいて、内筒部は、その端部が後ハブに固着されている。
【0010】
発明6に係る自転車用フリーホイールは、発明1から5のいずれかに記載のフリーホイールにおいて、一方向伝達部は、内筒部の外周に揺動自在に配置された係止爪部と、係止爪部の先端を外筒側に付勢する付勢部材とを備えたラチェット方式の一方向クラッチである。
発明7に係る自転車用フリーホイールは、発明1から5のいずれかに記載のフリーホイールにおいて、一方向伝達部は、内筒部の外周に転動自在に配置されたローラ部と、ローラ部を保持するローラ保持部とを備えたカムローラ方式の一方向クラッチである。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態を採用したマウンテンバイク(MTB)の側面図である。
図1において、MTBは車体の骨格をなすダイヤモンド形のフレーム1を備えている。フレーム1は、たとえばアルミニウムパイプのTig溶接構造のフレーム体2と、フレーム体2の前部に斜め縦軸回りに回転自在に支持され、下部が2股に分かれた前ホーク3とを有している。また、MTBは、前ホーク3に連結されたハンドル部4と、フレーム体2の下部に取り付けられ、踏み力を駆動力に変換する駆動部5と、前ホーク3の下端に係止された前ハブ6を有する前輪7と、フレーム体2の後部に係止された後ハブ8を有する後輪9と、前後の制動装置10,10とを備えている。
【0012】
フレーム体2にはサドル20を装着したシートスティ21が上下に移動可能に固定されている。ハンドル部4はハンドルバー22を有しており、ハンドルバー22の両端にはグリップ23とチェンジレバー付のブレーキレバー24とが装着されている。駆動部5は、フレーム体2のハンガ部に回転自在に支持された3段の大ギヤを有するギヤクランク25と、後ハブ8に装着された、たとえば6段の小ギヤ26と、ギヤクランク25のギヤと小ギヤ26とに巻き回されたチェーン27とを有している。
【0013】
前輪7は、前ハブ6と、前ハブ6からほぼ放射状に外方に延びるスポーク11と、スポーク11の先端にネジ止めされたリム12と、リム12に装着されたチューブ付のタイヤ13とを有している。
後輪9は、後ハブ8と、後ハブ8からほぼ放射状に外方に延びるスポーク11と、スポーク11の先端にネジ止めされたリム12と、リム12に装着されたチューブ付のタイヤ13とを有している。
【0014】
後ハブ8は、図2に示すように、クイックレリーズ式のものである。後ハブ8の右端にはフリーホイール31が装着されている。後ハブ8は、左右に間隔を隔てて配置された1対の鍔部35を有する中空のハブ体36と、ハブ体36を回転自在に支持するハブ軸37とを有している。鍔部35にはスポーク孔(図示せず)が周方向に等間隔で形成されており、スポーク孔にスポーク11を挿通可能である。ハブ軸37にはクイックハブロッド38を含むクイックレリーズ部40が装着されている。ハブ体36は、図3に示すように、雄ネジが形成されたボス部41を右端部に有している。このボス部41にフリーホイール31が螺合されている。
【0015】
フリーホイール31はボス型のものであり、外周に6枚の小ギヤ26が回転不能に装着可能な外筒部45と、外筒部45の内周側に外筒部45と相対回転自在に配置された内筒部46と、外筒部45と内筒部46との間に配置され、小ギヤ26に伝達された駆動力を外筒部45から内筒部46に一回転方向にのみ伝達する一方向クラッチ47とを備えている。
【0016】
外筒部45は、図4に示すように、略均一の肉厚で形成された筒状の部材である。外筒部45は、中央部外周に略三角波状の凹凸に形成され、小ギヤ26を回転不能に保持するギヤ保持部50と、中央部周にギヤ保持部50の凹凸に対応するように略三角波状の凹凸に形成された爪係止部51とを有している。また、外筒部45は、図3左端部にアールをつけて拡径されて形成された左玉わん52と、図3右端部に内側に折り曲げてアールをつけて形成された右玉わん53とを有している。これらの玉わん52,53には鋼球54が装着されている。
【0017】
内筒部46は、内筒本体55と、内筒本体55の図3右端に螺合された調整ナット56とを有している。内筒本体55は、略均一の肉厚で形成された筒状の2段に縮径された部材であり、その左端部には、左玉わん52とで鋼球54を挟持する左玉押し57がフランジ状に形成されている。内筒本体55の左玉押し57の右側の1段目の縮径部内周には、ハブ体36のボス部41に螺合する雌ネジ58が形成されている。内筒本体55の1段目の縮径部外周には1対の突起60とその間に形成された凹部61とからなる爪収納部62が円周上に2か所対向配置されている。内筒本体55の右端部の2段目の縮径部は大きく縮径されており、その外周には調整ナット56に螺合する雄ネジ63が形成されている。また、この縮径部内周には、このフリーホイール31をボス部41に対して脱着する際に用いる特殊工具を装着するための凹凸形状の工具係止部64が形成されている。
【0018】
調整ナット56は、略均一の肉厚の皿状のリング部材であり、その外周側には右玉わん53とで鋼球54を挟持する左玉押し65が形成されている。調整ナット56の内周部は右方に折り曲げられおり、そこには内筒本体55に螺合する雌ネジ66が形成されている。
上記、玉わん52,53、鋼球54および玉押し57,65により外筒部45を内筒部46が相対回転自在に支持するための軸受部を構成している。また、内筒本体55と調整ナット56との間には軸受部の玉当たりを調整するための複数枚のシム67が配置されている。
【0019】
一方向クラッチ47は、ラチェット方式のクラッチであり、外筒部45と内筒部46との間で爪収納部62に揺動自在に配置されたラチェット爪70と、ラチェット爪70の先端を外筒部45側に付勢するリングバネ72とを有している。ラチェット爪70は、先端に鋭角状の爪部71を有している。この爪部71が、外筒部45の内周に形成された爪係止部51の角部75に係止される。ラチェット爪70の幅方向の中央部にリングバネ72を係止するための係止溝73を有している。また、内筒部46の突起60には、リングバネ72を通すための通過溝74が形成されている。
【0020】
このような構成の外筒部45は肉厚が均一であり、またギヤ保持部50の凹凸と爪係止部51の凹凸とが凸部と凹部とが対応するように配置されているので、外筒部45を絞り加工や折り曲げ加工を含むプレス加工により簡単に製造できる。また、内筒本体55および調整ナット56を含む内筒部46も肉厚が均一であるため、プレス加工により簡単に製造できる。また、このようなプレス加工は、冷間鍛造に比べて簡単な設備で行えるとともに、製造に要する時間を短縮できる。
【0021】
このように構成されたMTBでは、ペダルが前方に踏み込まれると、その踏み力がギヤクランク25の大ギヤ、チェーン27および小ギヤ26を介してフリーホイール31の外筒部45に伝達される。この結果、外筒部45が図4に矢印で示す時計回りに回転する。このとき、ラチェット爪70がリングバネ72に付勢され、その爪部71が外筒部45の爪係止部51の角部75に係止されているので、外筒部4の回転が内筒部46に伝達される。そして、内筒部46から後ハブ8に駆動力が伝達され後輪9が回転する。
【0022】
一方、ペダルが後方に踏み込まれた場合には、外筒部45が反時計回り回転する。すると、爪係止部51の斜面に押圧されてリングバネ72の付勢力に抗してラチェット爪70が回転中心側に揺動し、駆動力が伝達されず外筒部45が空転する。また、坂道等で、内筒部46が時計回りに回転した場合にも同様にラチェット爪70が揺動して駆動力が伝達されず、内筒部46が空転する。
【0023】
〔他の実施形態〕
(a) 図5に示すように、外筒部45の右端部を内側に折り曲げて右玉わん53aを形成してもよい。他の構成は図3と同様であるので説明を省略する。この場合には、外筒部45の右端部の剛性が折り曲げ部を設けることで高くなる。
(b) 図6に示すように、外筒部45を、左玉わん52から径方向外方に延ばし、ロー側の小ギヤ26aを外筒部45と一体で形成してもよい。他の構成は、図3と同様であるので説明を省略する。これにより小ギヤのコンパクト化を図れる。なお、外筒部45の右端部を径方向外方に延ばしてハイ側の小ギヤを一体で形成してもよい。
(c) 図7に示すように、ラチェット方式の一方向クラッチに代えて、カムローラ方式のクラッチにしてもよい。この一方向クラッチ47aは、外筒部45の内周面に形成された三角波状の傾斜面51aに接触可能に配置された多数のローラ80と、ローラ80を周方向に等間隔に保持する保持器81と、保持器81を図7の反時計回りに付勢する付勢バネ82とを有している。外筒部45の内周面および外周面に形成された凹凸は、図4に示す凹凸と鏡像関係のようになっており、傾斜面51aは反時計方向にいくにつれて外方に傾斜している。ローラ80の径は、内筒部46と傾斜面51aとの間の隙間の最大値未満でかつ最小値を超えた値である。
【0024】
この実施形態では、図7に矢印で示す反時計回りに外筒部45が回転すると外筒部45と内筒部46との間にローラ80が噛み込んで動力が伝達される。また、逆方向に回転したり、内筒部46が矢印方向に回転するとローラ80の噛み込みがはずれて回転側が空転する。
このようなカムローラ方式の一方向クラッチを用いると、空転時のクリック音が生じなくなり、空転時の騒音を低減できる。
(d) ボス型フリーホイールに代えて、フリーハブ型フリーホイールにも本発明を適用できる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、外筒部において、第1凹凸部の凹部が第2凹凸部の凸部となるように2つの凹凸部が配置されているので、外筒部をたとえばプレス加工(絞り加工)のような簡単な製造方法により製造可能になる。このため、外筒部を短期間で製造できかつより簡単な設備で製造できる。また、肉厚が実質的に均一な外筒部および内筒部のうちの一方もプレス加工による製造が可能であり、同様に短期間で製造できかつ簡単な設備で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を採用したMTBの側面図。
【図2】本発明の一実施形態によるフリーホイールを装着した後ハブの側面図。
【図3】後ハブに装着されたフリーホイールの縦断面図。
【図4】図3のIV−IV断面図。
【図5】他の実施形態の図3に相当する図。
【図6】他の実施形態の図3に相当する図。
【図7】他の実施形態の図4に相当する図。
【符号の説明】
8 後ハブ
26,26a 小ギヤ
31 フリーホイール
45 外筒部
46 内筒部
47 一方向クラッチ
52 左玉わん
53 右玉わん
54 鋼球
55 内筒本体
56 調整ナット
57 左玉押し
58 雌ネジ
65 右玉押し
70 ラチェット爪
72 リングバネ
80 ローラ
81 保持器

Claims (7)

  1. 自転車の後ハブに装着される自転車用フリーホイールであって、
    1または複数のギヤを回転不能に保持するために連続して外周に連続して形成された第1凹凸部と、前記ギヤに伝達された駆動力を一回転方向にのみ伝達するための係止部を含み連続して内周に形成された第2凹凸部と、前記第2凹凸部より前記後ハブ側の第1端部内周部に前記第1凹凸部よりさらに外周側に拡がるように形成された第1玉わんと、前記第1端部と逆側の第2端部内周部に形成された第2玉わんとを有し、前記第1凹凸部の凹部が前記第2凹凸部の凸部となり第1凹凸部の凸部が第2凹凸部の凹部となるように配置され、肉厚が実質的に均一となるように形成された外筒部と、
    前記外筒部の内周側に前記外筒部と相対回転自在に配置され、前記後ハブに装着される内筒部と、
    前記外筒部と内筒部との間に配置され、前記第2凹凸部に係止および係止解除されることで、前記ギヤに伝達された駆動力を前記外筒部から内筒部に一回転方向にのみ伝達する一方向伝達部と、
    前記外筒部の前記両玉わんと前記内筒部との間に配置された1対の鋼球と、
    を備えた自転車用フリーホイール。
  2. 前記外筒部は、肉厚が実質的に均一となるようにプレス加工により形成され、
    前記内筒部は、その一端外周部に一方の前記鋼球を押圧する第1玉押しを有する内筒本体と、前記内筒本体の他端に螺合され、他方の前記鋼球を押圧する第2玉押しを有する調整ナット部とを備え、肉厚が実質的に均一となるようにプレス加工により形成されている、請求項1に記載の自転車用フリーホイール。
  3. 前記外筒部は、その端部に一体で形成された1枚のギヤを有している、請求項1又は2に記載の自転車用フリーホイール。
  4. 前記内筒部は、その端部内周に前記後ハブに螺合するネジ部を有している、請求項1から3のいずれかに記載の自転車用フリーホイール。
  5. 前記内筒部は、その端部が前記後ハブに固着されている、請求項1から3のいずれかに記載の自転車用フリーホイール
  6. 前記一方向伝達部は、前記内筒部の外周に揺動自在に配置された係止爪部と、前記係止爪部の先端を前記外筒側に付勢する付勢部材とを備えたラチェット方式の一方向クラッチである、請求項1から5のいずれかに記載の自転車用フリーホイール。
  7. 前記一方向伝達部は、前記内筒部の外周に転動自在に配置されたローラ部と、前記ローラ部を保持するローラ保持部とを備えたカムローラ方式の一方向クラッチである、請求項1から5のいずれかに記載の自転車用フリーホイール。
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