JP3584730B2 - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機の変速制御装置に関し、特に、トラックやバス等の大型車両に用いて好適の、自動変速機の変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車等の車両では、車両の走行状態に応じて変速段を自動的に切り替えるようにした自動変速機が広く採用されている。一般に、このような自動変速機には、車速とスロットル開度(又はアクセル開度)とをパラメータとして目標変速段を設定する変速マップが設けられており、この変速マップを用いて変速制御が行なわれる。
【0003】
ところで、車両の減速にともないシフトダウンが実行されると駆動輪には制動トルクが生じるため、摩擦抵抗の低い路面ではこの制動トルクが摩擦抵抗に打ち勝ってタイヤがロックしてしまう場合がある。特に、重量の重い大型車両(バスやトラック等)は、減速時に要求される制動トルクが大きいため、乗用車と比較してこのようなタイヤのロックがより生じやすい。
【0004】
そして、このように駆動輪がロックしてしまうと、自動変速機のコントローラでは、車速がゼロになったと判定してしまい、さらなるシフトダウンが実行され、ロックの解消が困難なものとなる。
これは、通常、車速情報は各車輪に設けられた車輪速センサや、プロペラシャフト又はトランスミッション出力軸に設けられた回転数センサからの検出情報に基づいて算出されるためであり、このようなタイヤロックが生じると、車輪速やプロペラシャフト回転数がゼロとなって、車速がゼロになったと判定してしまい、さらなるシフトダウンが実行されるのである。
【0005】
これに対して、特開平9−14429号公報には、上述のようなタイヤロックが生じた場合に、意図しないシフトダウンを防止するようにした技術が開示されている。
この技術では、車速検出信号を所定周期毎に制御手段に取り込んで、現車速が、前回の変速判断に用いた車速から減速度制限値を引いた値よりも小さければ、通常の減速ではない、即ち、駆動輪がロックしていると判定して、前回の車速から減速度制限値を引いた値の車速を疑似車速として設定するとともに、この疑似車速を変速マップに適用するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術では、駆動輪がロックした後のさらなるシフトダウンを防止することは可能であるが、駆動輪のロック自体を解消することはできないという課題がある。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、シフトダウンにより駆動輪がロックした場合に、確実にロックを解消できるようにした、自動変速機の変速制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明の自動変速機の変速制御装置では、車両の運転状態に応じて変速段が自動的に変更される。このとき、自動変速機の変速状態は変速制御手段により制御される。一方、車輪ロック判定手段により車両の駆動輪がロックしたか否かが判定され、シフトダウン後に駆動輪がロックしていると判定されると、変速制御手段によりシフトダウンされる前の変速段へのシフトアップが行なわれる。これにより、シフトダウンにともない発生する駆動輪の制動トルクが減少し、駆動輪のロックが解消される。
【0008】
また、請求項2記載の本発明の自動変速機の変速制御装置では、このようなシフトアップが実行されると、変速制御手段により、このシフトアップ後の変速段が所定時間保持される。これにより、上記シフトアップ直後に再びシフトダウンが行なわれることが防止され、変速制御のハンチングが防止される。
また、請求項3記載の本発明の自動変速機の変速制御装置では、メモリによりシフトダウン前の変速段が記憶される。これにより、シフトダウン後にタイヤロックが生じた場合、記憶された変速段(元の変速段)へシフトアップすることができ、確実にタイヤロックを解消することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の一実施形態としての自動変速機の変速制御装置について説明すると、図1はその要部構成を示す模式的なブロック図、図2はその動作を説明するためのフローチャートである。
なお、本実施形態では、ABS(アンチロックブレーキシステム)が付設された車両に本発明を適用した場合について説明する。もちろん、ABSが設けられていない車両にも本発明を適用することができるが、近年ではABS付きの車両が広く普及しており、このようなABS付き車両に本発明を適用した場合について説明する。
【0010】
さて、図1に示すように、本装置が適用される車両5には、各車輪1〜4の回転速度を検出する車輪速センサ10及びABSの作動を制御するためのABSコントローラ(車輪ロック判定手段)20が設けられている。
そして、ABSコントローラ20では、車輪速センサ10からの検出情報に基づいて車輪1〜4がロックしたか否かを判定するようになっており、車輪1〜4がロックした場合には、ロックした車輪1〜4のブレーキ液圧を低減して車両5のスリップを防止するようになっている。
【0011】
ここで車輪のロック判定方法について説明すると、まず、ABSコントローラ20では、車輪速センサ10で検出された全車輪1〜4の車輪速を取り込んで、他の車輪に比較して著しく車輪速変化率が負に大となる車輪があると、この車輪についてロックしていると判定するようになっているのである。なお、このようなABSに関する技術は既に公知のものである。
【0012】
一方、図1において、30はATコントローラ(変速制御手段)、40は自動変速機、50はギアシフトユニット(又はGSUという)である。ここで、本実施形態では自動変速機40として、手動変速機と同様の歯車機構を用いて自動変速を行なうようにした機械式自動変速機が適用されている。この機械式自動変速機には、クラッチを自動的に断接するクラッチアクチュエータ(図示省略)が設けられるとともに、ギアの噛合状態(即ち変速段)を変更するためのギアシフトアクチュエータ(図示省略)も設けられており、これらのアクチュエータの作動状態を制御することにより、自動変速が行なわれるようになっている。
【0013】
これらのアクチュエータは、例えば空気圧や油圧等の流体圧を駆動源として作動するものであって、上記流体圧の供給状態を変更することによりその作動が制御されるように構成されている。また、上記ギアシフトアクチュエータには、流体圧の供給状態を制御するための電磁弁が複数付設されており、このようなギアシフトアクチュエータと電磁弁とによりギアシフトユニット(GSU)50が構成されている。
【0014】
さらに、この機械式自動変速機では、通常の自動変速を行なう自動変速モード以外にもドライバの操作により所望の変速段に切り替え可能な手動変速モードもそなえている。
なお、このような機械式の自動変速機自体は、すでに実用化されているものであり、自動変速機の機械的な構成については詳細な説明を省略する。
【0015】
また、このGSU50はATコントローラ30からの制御信号に基づいてその作動が制御されるようになっている。すなわち、図示はしないが、ATコントローラ30には種々のセンサ類が接続されており、ATコントローラ30では、これらのセンサ類からの検出情報に基づいて車両走行状態に応じた変速段を目標変速段として設定するようになっているのである。そして、目標変速段が設定されると、自動変速機40が上記目標変速段となるように、ATコントローラ30から制御信号が出力されるのである。
【0016】
このように、GSU50ではATコントローラ30からの制御信号に基づいてその作動が制御されて自動変速機40の変速段が変更されるのである。
そして、本装置では、自動変速機40のシフトダウン後、所定時間内に駆動輪3,4がロックすると、変速制御手段(ATコントローラ)30では、シフトダウン前の変速段へシフトアップするようになっている。
【0017】
つまり、このような場合には、シフトダウンによって駆動輪3,4に生じる制動トルクが路面の摩擦抵抗よりも大きくなって駆動輪3,4がロックしているため、シフトダウン前の元の変速段に一旦シフトアップすることにより、駆動輪3,4の制動トルクを減少させ、ロックを解消するようになっているのである。
なお、このようにして、元の変速段へシフトアップされると、その後所定時間は、車両5の走行状態にかかわらずこの変速段が維持されるようになっており、これによりシフトのハンチングを防止するようになっている。つまり、元の変速段へのシフトアップ直後には再びシフトダウンの条件が成立する場合が考えられ、このような場合を考慮して、何らかの対策を用意しておかないと、再びシフトダウンが実行されて、シフトアップとシフトダウンとが交互に実行されることになる。
【0018】
そこで、上述したように、本装置では、元の変速段へシフトアップされると、所定時間はこの変速段を維持するようになっているのである。これにより、元の変速段へのシフトアップ直後に再びシフトダウンの条件が成立しても、シフトダウンが禁止され、ハンチングを防止することができるのである。
ところで、この自動変速機40は、例えば5速から2速への飛び越しシフトが可能に構成されており、シフトダウン前には、一旦現在の変速段をATコントローラ30のメモリ等に記憶させてからシフトダウンを実行するようになっている。そして、シフトダウン後にタイヤロックが生じた場合には、1段だけシフトアップするのではなく、上述により記憶された変速段(元の変速段)へシフトアップするようになっているのである。
【0019】
これにより、シフトダウン後にタイヤロックが生じても、確実に駆動輪3,4の制動トルクを減少させ、確実にタイヤロックを解消することができるのである。
なお、飛び越しシフトを行なわずに、必ず1段ずつシフトダウン及びシフトアップを行なうように設定された自動変速機では、シフトダウン前に変速段を記憶する必要はなく、制御をさらに簡素化することができる。
【0020】
本発明の一実施形態としての自動変速機の変速制御装置は、上述のように構成されているので、例えば図2に示すようなフローチャートにしたがってその作動が制御される。
まず、ステップS10において、自動変速機40の変速モードが自動変速モードか手動変速モードかが判定される。これは、本実施形態で適用される変速機40が自動変速モードと手動変速モードとをそなえた自動変速機であるためであり、手動変速モードをそなえていない自動変速機の場合には、このステップS10の処理は省略される。そして、ステップS10で自動変速モードであると判定されると、次に、ステップS20に進み、そうでない場合にはリターンする。
【0021】
ステップS20では、変速制御を行なうか否かが判定され、変速制御を行なうと判定されるとステップS30に進み、そうでなければリターンする。さらに、ステップS30では、変速がシフトダウンであるかシフトアップであるかが判定される。ここで、シフトアップである場合にはステップS90に進み、通常の変速制御と同様に目標変速段へのシフトアップが実行される。
【0022】
一方、シフトダウン時には、ステップS30からステップS40に進み、例えばATコントローラ30のメモリに現在の変速段が一旦記憶される。そして、その後ステップS50で、目標変速段へのシフトダウンが実行される。
シフトダウンが実行されると、次にステップS60に進み、駆動輪3,4がロック(タイヤロック)しているか否かが判定される。このとき、タイヤロックが生じていなければ、そのままリターンし、また、タイヤロックが生じている場合には、ステップS70に進み、ステップS40で記憶されたシフトダウン前の変速段にシフトアップする。
【0023】
そして、その後ステップS80に進み、シフトアップされた変速段を所定時間保持した後リターンする。
なお、必ず1段ずつシフトダウン及びシフトアップを行なうように設定された自動変速機では、ステップS40を省略して、ステップS70での制御内容を単に「シフトアップ」とすればよい。
【0024】
このように、本発明の自動変速機の変速制御装置によれば、例えば摩擦抵抗が低い路面を車両5が走行中に、シフトダウンにより駆動輪3,4がロックしてしまった場合でも、自動変速機40がもとの変速段にシフトアップされるので、この駆動輪3,4のロックが解消されて車両5の安全性が向上する利点がある。
また、本実施形態のようにABS付きの車両5では、新たなセンサ類を追加する必要もなく、制御ロジックを追加するだけでよいので、コストの増加も抑制することができる。
【0025】
また、もとの変速段にシフトアップされると、所定時間はこの変速段が保持されるので、シフトアップ直後のシフトダウンが禁止され、変速制御のハンチングが確実に防止される利点がある。
なお、本装置は、シフトダウン時の制動トルクが大きく、重量の重い大型車両(例えば、バスやトラック)に適用するのが特に有用である。すなわち、このような車両では、一旦車輪がロックすると、このロックを解消するのは容易ではなく、また、トレーラでは駆動輪がロックするといわゆるジャックナイフ現象を生じることも考えられるからである。したがって、本装置はこのような大型の車両には特に適している。
【0026】
なお、本実施形態では、自動変速機40として機械式自動変速機を用いた場合について説明したが、本発明はこのような機械式自動変速機のみに適用されるものではなく、トルクコンバータと遊星歯車機構とを組み合わせた一般的な自動変速機にも適用できるほか、その他の種々の自動変速機にも適用することができる。また、無段変速機に本発明を適用する場合には、「変速段」という概念に対して「変速比」という概念を適用すればよい。
【0027】
また、駆動輪3,4のロックを検出するためのセンサとしては、上述の車輪速センサ10に限定されるものではなく、プロペラシャフトの回転数やトランスミッション出力軸の回転数を検出するセンサを用いてもよい。
さらに、本発明は、ABS付きの車両にのみ適用されるものではなく、ABSを備えていない車両にも適用することができる。この場合、車輪1〜4のロックを検出するためのセンサ、例えば車輪速センサやプロペラシャフトの回転数を検出するためのセンサを設ければよい。また、上述では、ロック判定手段としてABSコントローラ20を用いたが、ロック判定手段はABSコントローラ20に限定されるものではなく、例えば変速制御手段30内でロックの判定を行なってもよい。
【0028】
また、駆動輪のロックの判定方法は上述のものに限定されるものではなく、上述以外の方法で駆動輪のロックを判定してもよい。
【0029】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明の自動変速機の変速制御装置によれば、例えば摩擦抵抗が低い路面を車両が走行中に、シフトダウンにより駆動輪がロックしてしまった場合でも、自動変速機の変速段がもとの変速段にシフトアップされるので、駆動輪のロックを確実に解消することができ、車両の安全性が大幅に向上するという利点がある。
【0030】
また、請求項2記載の本発明の自動変速機の変速制御装置によれば、もとの変速段にシフトアップされると、所定時間はこの変速段が保持されるので、シフトアップ直後のシフトダウンが禁止され、変速制御のハンチングが確実に防止されるという利点がある。
また、請求項3記載の本発明の自動変速機の変速制御装置によれば、メモリによりシフトダウン前の変速段を記憶することができ、これにより、シフトダウン後にタイヤロックが生じた場合、記憶された変速段(元の変速段)へシフトアップすることができ、確実にタイヤロックを解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての自動変速機の変速制御装置における要部構成を示す模式的なブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態としての自動変速機の変速制御装置における動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
10 車輪速センサ
20 車輪ロック判定手段(ABSコントローラ)
30 変速制御手段(ATコントローラ)
40 自動変速機
50 ギアシフトユニット
Claims (3)
- 車両の運転状態に応じて変速段を自動的に変更しうる自動変速機の変速制御装置において、
該車両の駆動輪がロックしたか否かを判定しうる車輪ロック判定手段と、
該自動変速機の変速状態を制御する変速制御手段とをそなえ、
シフトダウン後に該車輪ロック判定手段により該駆動輪がロックしていると判定されると、該変速制御手段により該シフトダウン前の変速段へシフトアップするように変速制御が行なわれる
ことを特徴とする、自動変速機の変速制御装置。 - 該変速制御手段は、該シフトアップ後の変速段を所定時間保持することを特徴とする、請求項1記載の自動変速機の変速制御装置。
- 該変速制御手段は、該シフトダウン前の変速段を記憶するメモリをそなえる
ことを特徴とする、請求項1または2記載の自動変速機の変速制御装置。
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1998
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