JP3584616B2 - マイクロプレート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は酵素免疫反応による病理診断のための固相免疫測定検査用治具に関するもので、特には、マイクロプレートと呼ばれる反応と検出を兼用する成型品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年医学の幅広い分野で免疫反応を利用した分析手法が取り入れられ、癌性蛋白質の検出や血中薬物の定量等に用いられ、非常に有用な臨床データーが得られている。
この免疫反応を利用するもののうち、抗原抗体反応を利用して微量の抗原物質を精度良く分析測定する免疫分析法、特に固相抗体を用いる免疫分析法が注目されている。
【0003】
固相抗体を用いる免疫分析法は、固相上に抗原もしくは抗体を固定し、ラジオアイソトープ、蛍光性物質もしくは酵素等の標識物を結合させた抗体もしくは抗原と抗原抗体反応を行わせる。反応物と未反応物の分離は洗浄によって容易に行うことができ、固相表面上に抗原抗体反応によって固定された抗原もしくは抗体は標識物質を定量することによって定量できる。
【0004】
ところで、この方法では抗原もしくは抗体を固相に多量に且つ安定性良く、反応性部位が上向きになるように吸着(特異吸着)させることが重要である。
これまでは固相としてポリスチレン樹脂を軸に各種のプラスチック素材にガンマー線照射等の物理処理を行うことや化学的に官能基を導入するなどで特異吸着を多量に固定して反応性向上を図ってきた(特開昭62−242657号公報、特開昭59−80442号公報、特開昭48−7303号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のマイクロプレートでは抗体及び抗原吸着部位は接液部である側面部及び底面部に吸着され、EIA法により免疫測定が行われている。ここで、本発明者の知見によれば接液面積が大きく影響している。現在まではウェルの底面部及び側面部のみが反応部位であり、マット処理で表面積を稼ぐ程度の発明は行われているが十分な感度をえるために試薬を多量に必要としており大部分を無駄にしているのが現状である。
【0006】
本発明の目的は、従来の固相免疫測定用成型品の固相特異吸着性を改善することで、反応性を向上させるため表面積を拡大し、かつ、試料を節約する構造のマイクロプレートを提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は抗原または抗体が現在ウェルでは側面部及び底面部に吸着することになり、ウェルの上方及びウェル接液面以外の試薬中の浮遊抗体も吸着に関与しないことが予想される。本発明は液中浮遊抗体及び抗原の吸着効率を高めるために反応兼検出用ウェルである通常のウェル内部に、もう一枚の反応ウェルである穴あきウェルを嵌め込み2重のウェルを形成させる。そして、試薬液が十分行き渡るように反応兼検出用ウェルと反応ウェルの間に隙間を設ける。この反応ウェルは発色試薬で発色させてから取り外してOD値(光学濃度)測定を行う。更に、表面積を大きくするために反応ウェルである穴あきウェルは全体をマット処理することでさらに吸着効率アップが可能となる。
【0008】
更に本発明を詳細に述べると、抗原や抗体を特異吸着させる素材はポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリメタクリレート樹脂等がある。このうち、本発明のマイクロプレートの場合は外側の比色測定を行うセルを兼ねる反応兼検出用ウェルは特に透明性が必要なため、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルニトリルスチレン共重合体樹脂等が適している。内側の反応ウェルである穴あきウェルの素材には特に限定はない。
【0009】
上述の素材を用いたウェルの形状は一般的には円柱状であるが四角柱状でも良い。また、射出成形法で製造されているため底部ほど円の直径は小さくなっている。通常のマイクロプレートは全体で96穴で構成されており、8×12の格子状でウェル内径は開口部6.5mm、底面部6.15mm、深さ11.4mmとされている。
【0010】
ウェル底面部の周辺を吸光度測定に支障無い範囲でマット処理することも可能である。更に、このマイクロプレートに低温プラズマ処理(250w〜1kw、真空度1.0Torr以内)や紫外線処理(150〜300nm)、ガンマー線処理(1kGy以上)等により−C−O−官能基を5%以内導入する手段を併用することでマイクロプレートの感度向上が期待できる。
【0011】
本発明のマイクロプレートによれば、抗体及び抗原吸着部位の表面積が格段に拡がり、濃度の低い試薬でも十分な感度を得ることができる。また、ウェルを反応兼検出用ウェルの内側に反応ウェルを嵌合させた2重ウェルにすることで試薬使用量は削減できる。更に物理処理による−C−O−官能基導入も表面積が格段に増したので感度アップがはかれる。また、場合により抗原や抗体の濃度が低くても十分な感度が得られることが判明した。
【0012】
【実施例】
以下、図面により本発明の実施形態にかかるマイクロプレートを説明する。
〈実施例1〉
(1)本発明のマイクロプレート1は、図1、2、3、に示すように、マイクロプレート本体10の上に上部マイクロプレート20を重ね合わせた構成で、ウェル2は2重構造となっている。
【0013】
(2)マイクロプレート本体10は、ポリスチレン樹脂を用い射出成形法により作製される。このマイクロプレート本体の平面部11には反応用凹部としての反応兼検出用ウェル12が96穴(8×12)形成されている。個々の反応兼検出用ウェル12は円柱形状を有し、内寸が底面部は直径6.15mm、開口部は直径6.4mm、高さは12.5mmである。また肉厚は0.6mmである。
【0014】
(3)上部マイクロプレート20も、ポリスチレン樹脂を用い射出成形法により作製される。この上部マイクロプレートの平面部21には反応用凹部としての反応ウェル22が96穴(8×12)形成されている。個々の反応ウェル22は円柱形状を有し、外寸が底面部は直径5.15mm、開口部は直径5.4mm、高さは8.5mmである。また肉厚は0.6mmである。
なお、底面部には内径3mmの孔23が1か所穿設されている。また、反応ウェル22の側面部には、自動洗浄機のノズルが通過できるようにスリット24が十文字状に形成されている。
【0015】
(4)こうして作製したマイクロプレート本体10の上から、上部マイクロプレート20を被せるように重ねると、マイクロプレート本体の個々の反応兼検出用ウェル12の内側に上部マイクロプレートの対応する反応ウェル22が嵌合され、反応兼検出用ウェル12と反応ウェル22との間に側面部で1mm、底面部で4mmの隙間を有する2重構造のウェル2が形成される。
この2重構造を有するウェル2の内側の反応ウェル底面には孔23が穿設されているので、試薬が内側の反応ウェルと外側の反応兼検出用ウェル双方を自由に流れるように構成されている。
また、内側の反応ウェル側面には十文字状にスリット24が設けられているので、自動洗浄機のノズルが通過可能になっている。
【0016】
(5)つぎに、このマイクロプレート1にて免疫反応試験を行った。この試験において、マイクロプレート1のウェル2には、HCG補足抗体(Mouse IgG)の濃度が1μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、25μg/mlに区別されるように、リン酸バッファー調製液を調製した。各濃度のリン酸バッファー調製液をそれぞれ1つのウェルあたり、200μl/ウェル塗布した。塗布したマイクロプレートは4°Cで1昼夜放置した。
なお、HCGはヒト絨毛性ゴナドトロピンを示し、Mouse IgGはマウスのモノクロナール抗体を示す。
【0017】
(6)マイクロプレートの放置により、HCG補足抗体がウェル底部に吸着しているので上澄み液を捨てる。上澄み液を廃棄したマイクロプレートを洗浄する。この洗浄にはTween20(関東化学株式会社製の界面活性剤=ポリオキシエチレンソルビタレモノラウレート(しょ糖脂肪酸エステル))を0.01%含有させた純水液を用いた。洗浄回数は3回であった。
【0018】
(7)洗浄後、HCG補足抗体が吸着したウェル内にブロッキング液(カゼイン25%)を250μl/ウェル分注して2時間以上室温放置する。
【0019】
(8)ブロッキング液を捨てて、再度3回洗浄する。
【0020】
(9)抗原(HCG)の添加を行って免疫反応を行う。4.0ng/mlの試験用バッファーで調製したものを200μl/ウェル分注して4°Cで2時間以上反応させる。
【0021】
(10)上澄み除去後、(6)工程と同様の洗浄を4回繰り返し、抗HCG抗体HRP(ペルオキシターゼ)の標識溶液を200μl/ウェル分注して1.5時間反応させる。この抗HCG抗体HRPの標準溶液には、リン酸バッファー0.2%を含むTween20が0.1モル濃度含まれる。
【0022】
(11)再度上澄みを除去した後、洗浄を3回繰り返す。
【0023】
(12)発色基質テトラメチルベンジレン(TMB)溶液20mlに過酸化水素5μl調製したものを200μl/ウェル分注して発色1時間室温放置する。
【0024】
(13)2規定の硫酸50μlを添加して反応を停止し、450nmのOD値(光学濃度)を吸光光度計で測定し、表1に示す結果を得た。なお、OD値は半透明物質の不透明の程度を示す値であり、入射光IO と透過光Iとの比率IO /Iの対数Log(IO /I)で示される。
【0025】
〈実施例2〉
(1)実施例1において、反応兼検出用ウェルの内側側面全体と、底面の周囲を側端から内方に向けて1mmまでをマット処理Mしたマイクロプレート本体10aと、反応ウェルの内側全体をマット処理Mした上部マイクロプレート20aを、ポリスチレン樹脂を用いて210〜230°Cで射出成形法により作製した。マイクロプレート本体10aの上から上部マイクロプレート20aを被せるように重ねて、2重構成のウェル2aを有するマイクロプレートが作製された(図4参照)。
(2)このマイクロプレートを用いて実施例1と同様の免疫反応試験を行い、表1に示す結果を得た。
【0026】
〈実施例3〉
(1)実施例2のマイクロプレートに窒素ガス雰囲気下で低温プラズマ処理を施した。このプラズマ処理の条件は、真空度1Torr、出力500w×2基、発振時間 約30秒とした。
(2)このマイクロプレートを用いて実施例1と同様の免疫反応試験を行い、表1に示す結果を得た。
【0027】
〈比較例1〉
(1)比較例として、図5に示すような円筒状のウェル51を有し、ウェル51の側面部52および底面部53が平滑なポリスチレン樹脂製のマイクロプレートを射出成形法により成形した。
(2)このマイクロプレートを用いて実施例1と同様の免疫反応試験を行い、表1に示す結果を得た。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
本発明の固相免疫反応測定用のマイクロプレートは、抗原もしくは抗体の吸着反応性に優れ、感度の高い免疫学的分析結果が得られることから、医療検査において癌等の早期発見が可能で、治癒の確率が高くなる。また、試験試薬の削減効果もあり医療費抑制政策が予想されるおり、合理化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のマイクロプレートの(a)はウェルの断面図であり、(b)はウェルの斜視図である。
【図2】同実施例のマイクロプレート本体の(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図3】同実施例の上部マイクロプレートの(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図4】同実施例で、マット処理を施したマイクロプレートのウェルの(a)は断面図であり、(b)は斜視図である。
【図5】マイクロプレートのウェルの従来例を示し、(a)は断面図であり、(b)は斜視図である。
【符号の説明】
1‥‥マイクロプレート
2‥‥ウェル
2a‥ウェル
10‥‥マイクロプレート本体
10a‥マイクロプレート本体
11‥‥平面部
12‥‥反応兼検出用ウェル
20‥‥上部マイクロプレート
20a‥上部マイクロプレート
21‥‥平面部
22‥‥反応ウェル
23‥‥孔
24‥‥スリット
51‥‥ウェル
52‥‥側面部
53‥‥底面部
M‥‥マット処理
Claims (7)
- 透明材料から形成され、複数列からなる多数の反応兼検出用ウェル及び該反応兼検出用ウェル内に嵌合される同一素材の反応ウェルからなることを特徴とするマイクロプレート。
- 前記反応ウェルの少なくとも側面部が貫通した構造となっていることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレート。
- 前記反応ウェルのさらに底面部も貫通した構造となっていることを特徴とする請求項2記載のマイクロプレート。
- 前記貫通した構造がスリットであることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の何れかのマイクロプレート。
- 前記貫通した構造が孔であることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の何れかのマイクロプレート。
- 前記反応ウェルの試薬液接部表面、及び反応兼検出用ウェルの底面中央部近傍を除いた試薬液接部表面がマット処理されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5記載の何れかのマイクロプレート。
- 前記透明材料に−C−O−結合が5%以内導入されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6記載の何れかのマイクロプレート。
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