JP3584264B2 - X線回折試料極低温冷却装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、試料を極低温に冷却してX線分析を行うことのできるX線回折試料極低温冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のX線回折試料極低温冷却装置としては、図4ないし図6に示すようなものが知られている。
【0003】
図4において符号1はX線回折試料極低温冷却装置であり、ヘリウムガスを閉回路で循環させながら断熱圧縮・膨張を繰り返して低温を得る冷却機のヘッドを形成する冷却部2の先端に、試料ホルダ3を固定し、この試料ホルダ3に試料4を取り付けるようにしたものである。
【0004】
冷却部2は、内部を真空に保持するための円筒状の気密ケース5で覆われており、この気密ケース5の下部付近には、試料4に照射するX線を透過させるためのBe製のX線透過窓6が設けてある。また、気密ケース5の下端部は、ゴニオメータ7の試料回転台8に固定され、さらに試料回転台8を挟んでゴニオメータ7の両側には、前記試料4にX線透過窓6を介してX線を照射させるX線発生装置9と、試料4からの回折X線をX線透過窓6を介して検出するX線計数装置10とが設けてある。X線計数装置10は試料4の回りに所定の角速度で回転可能となっており、したがってX線透過窓6は、気密ケース5の周方向に中心角190゜程度の範囲で形成されている。
【0005】
上記試料ホルダ3は、図5,図6に示すようにフランジ部3aとホルダ部3bとが一体に成形され、フランジ部3aが冷却部2の下端に形成された冷却部位2aに固定されることで試料4が装置内の計測位置に保持される。そして試料ホルダ3のホルダ部3bの表面(冷却部の中心側)には、試料4が固定された試料板4aがネジ等の取付部材11で取り付けてある。また、冷却部位2aの上面には、温度センサ12が取り付けられ、これによってX線回折測定時の試料4の温度を検出し、冷却部位2aの温度制御を行うようにしている。また、冷却部2の下端、即ち冷却部位2aの直上付近には、ヒータ13が巻き付けてあり、このヒータ13で試料4の温度を制御できるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、X線回折測定の場合においてX線回折測定に寄与するのは、試料4の表面部の極薄い層である。したがって、X線回折測定における試料温度というときには、正確には、実際にX線回折に寄与している試料4の表面部の温度をさすことになる。
【0007】
ところが、上述の従来の装置では、温度センサ12の検出温度が、実際にX線回折に寄与している試料4の表面部の温度を示していない場合のあることが判明した。
【0008】
本発明者等がその原因を究明したところ、以下の事実が判明した。すなわち、上述の従来の装置では、冷却部位2aと試料ホルダ3とはこれを共に熱良導体で構成して結合できるので、両者の間の温度差を小さくすることは可能である。従来は、一般的な感覚でみて試料4の熱容量が小さくかつその厚さも十分に薄いと考えられていたので、当然、試料4の温度も該試料4が熱的に接触している試料ホルダ3の温度とほぼ等しくなるものと考えられていた。この従来の考え方は、試料4が熱良導体である場合にはその通りであった。しかしながら、試料4については、これを常に熱良導体で構成することはできない。すなわち、試料によっては著しく熱伝導率が小さく、粉末状試料のように、むしろ、熱絶縁体に近いものである場合も少なくない。そこで、試料4がこのような熱絶縁体に近いものである場合から熱良導体に近いものである場合の種々の場合について、冷却部位2a、試料ホルダ3及び試料4の各部の温度を測定したところ、試料4が熱絶縁体に近いものになればなるほど、試料4のX線回折に寄与する表面部と他の部位との間の温度差が大きくなり、これが無視できない程になる場合のあることが判明した。
【0009】
本発明者等の考察によれば、試料4は、その底面部及び側面部が試料ホルダ3に接触されて熱伝導によって冷却されるが、X線を照射する表面部は空間に接することになる。すなわち、底面部及び側面部からは熱が奪われるが、表面部からは熱が奪われず、むしろ、X線透過窓6等を通じて侵入する外部からの熱輻射線等によって表面部には熱が供給される。もし、試料4が熱良導体であれば、底面部及び側面部と表面部との間で熱伝導による十分な熱交換が行われるので、外部輻射線等によって表面部に供給されるわずかな熱を十分に吸収でき、表面部の温度もほぼ試料ホルダ3の温度と等しいものにできるが、試料4が熱伝導の悪いものである場合には、表面部から供給される熱を十分に吸収することができなくなり、これがために、表面部の温度と他の部位の温度との間に無視できない程の温度差が生じてしまうものと推定された。
【0010】
この発明は、上述の解明結果に基づいてなされたものであり、冷却部位の温度とX線分析の測定対象たる試料温度との差を少なくして、試料の正確なX線分析を行うことのできるX線回折試料極低温冷却装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、内部に試料を配置する気密ケースと、この気密ケースの内部に設けられて前記試料を所定の温度に冷却する冷却部と、この冷却部に固定されて前記試料を前記気密ケース内の測定位置に保持する試料ホルダとを有し、前記気密ケースの外側に設けたX線源からこの気密ケースのX線透過窓を介してX線を照射すると共に、前記試料からの回折X線を前記X線透過窓を介してX線計数装置で検出するようにしたX線回折試料極低温冷却装置であって、前記試料ホルダに前記試料の外周を覆う均熱ブロックを設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の発明はいる試料ホルダ3の温度とほぼ等しくなるものと考えられていた。この従来の考え方は、試料4が熱良導体である場合にはその通りであった。に設けられて、このブロック材で囲まれる内部空間を覆うX線透過用の薄板とからなることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記均熱ブロックのブロック材の開放端がX線の光軸方向に沿って中心角180゜ないし190゜の円弧状に形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記冷却部がファーストステージとこのファーストステージの先端部に設けられたセカンドステージの2段の冷却部からなり、前記試料ホルダをセカンドステージの先端部に形成された第2の冷却部位に固定する一方、前記ファーストステージの先端に形成された第1の冷却部位には、前記セカンドステージと試料ホルダを覆う遮蔽体を固定し、この遮蔽体に前記X線を透過させる遮蔽体透過窓を形成したことを特徴としている。
【0015】
【作用】
この発明によれば、試料ホルダに試料の外周を覆う均熱ブロックを設けたことにより、冷却部位や試料ホルダと試料表面部との間の温度差を極めて小さくすることが可能になった。これは、試料の外周が均熱ブロックで覆われたことにより、試料表面部と均熱ブロックとの間に温度差が生じた場合に、近接する両者の間で主として熱輻射による熱交換が行なわれ、その熱交換の量が、外部熱輻射線で外部から試料表面に供給される熱を十分に吸収できる程度を越えるものであるためであると考えられる。すなわち、外部熱輻射線で外部から試料表面に供給される熱は極めて僅かであるが、従来は、このわずかな熱によって無視できない温度差が生じていたものであるが、このわずかな熱は、近接して試料を覆うように設けられた均熱ブロックとの間での熱輻射による熱交換によって十分に吸収できるためであると考えられる。その結果、例えば、温度センサを冷却部位や試料ホルダに設けても試料温度とほぼ同じ温度を検出することが可能になった。
【0016】
請求項2では、均熱ブロックを、X線源から照射されるX線の光軸方向に沿って試料の両側に形成された2つのブロック材と、このブロック材の開放端側に設けられてこのブロック材で囲まれる内部空間を覆うX線透過用の薄板とを備えたものにしたので、均熱ブロックが試料への入射X線や回折X線の障害となることがなく、また、均熱ブロック内がX線透過用の薄板で覆われているため、外部からの熱輻射線の侵入度合いを軽減することができ、冷却部位や試料ホルダと試料表面部との間の温度差をさらに小さくすることができる。
【0017】
請求項3では、ブロック材の開放端がX線の光軸方向に沿って中心角180゜ないし190゜の円弧状に形成したもので、これにより、X線透過用の薄板が上記ブロック材の開放端の表面に沿って円弧状に形成されることになるので、このX線透過用の薄板に対してX線が常時垂直に通過することになって、X線の通過厚さがX線の入・出射角度にかかわらず常時最小厚さで一定になる。したがって、この通過によるX線の減衰量を最小でかつ一定にすることができ、感度低下や測定誤差発生の防止ができる。また、試料表面に対するX線照射角度や回折角度をほぼ0〜180度の全範囲をとることが可能となる。
【0018】
請求項4では、試料ホルダ及びセカンドステージが遮蔽体でシールドされるので、外部からの熱輻射線が試料近傍に達するのを軽減でき、外部熱輻射線によって試料表面が加熱されるのを有効に軽減できるとともに、遮蔽体内部の冷却を促進することができる。
【0019】
【実施例】
図1ないし図3はこの発明の一実施例を示すものである。これらの図において従来の図に示したものと同じ要素には同一符号を付して、説明を省略する。
【0020】
符号21はこの実施例のX線回折試料極低温冷却装置であり、22はこのX線回折試料極低温冷却装置21の冷却部としてのクライオスタットである。クライオスタット22は、ヘリウムガスを内部のエキスパンダ(図示せず)内に導き入れる基台部23と、この基台部23に取り付けられた冷却部のファーストステージ24と、このファーストステージ24の先端に設けられたセカンドステージ25とからなり、基台部23内に設けられたバルブデイスク(図示せず)で高圧と低圧を切り換え、サージボリュームによる圧力変動でファーストステージ24とセカンドステージ25を往復動させ、これによってヘリウムガスを断熱自由膨張させて、ファーストステージ24の先端に形成された第1の冷却部位である第1のヒートステーション26とセカンドステージ25の先端に形成された第2の冷却部位である第2のヒートステーション27とを冷却して極低温を生成するようにしたものである。
【0021】
基台部23のフランジ23aには、ファーストステージ24とセカンドステージ25とを覆う気密ケース5が取り付けられている。またファーストステージ24の第1のヒートステーション26には遮蔽体としてのラジェーションシールド31が取り付けられ、さらにセカンドステージ25の第2のヒートステーション27には試料ホルダ41が取り付けられている。そして、試料ホルダ41には、表面に試料4が充填された試料板11が取り付けられている。
【0022】
気密ケース5は、円筒状に形成されており、基台部23にフランジを介して固定された上筒5aと、この上筒5aにフランジを介して接続された有底円筒状の下筒5bとからなり、上筒5aには気密ケース5内を真空にするための真空引き口5c並びに制御及び試料温度測定用熱電対等に連絡する接続コネクタ部5dが設けられ、下筒5bには、外部から試料4を試料ホルダ41に着脱可能にするために開閉自在に形成されたX線透過窓6が設けられている。
【0023】
このX線透過窓6は下筒5bに形成された開口部6aとこの開口部6aを覆う窓本体6bとからなり、開口部6aは下筒5bの周方向に中心角190゜の範囲で開口されている。そしてこの開口部6aに取り付けられる窓本体6bは、開口部6aの周囲を囲んで設けられる窓枠と、この窓枠に前記開口部6aを覆って取り付けられる長方形状のBe製の薄板とからなっている。窓本体6bはOリング5eを介しての下筒5bに対して上下方向に摺動自在に取り付けられており、該窓本体6bを開口部6aに対して上方へ摺動させることで開口部6aが外部に対して開放され、該開口部6aを通じて試料4を出し入れできるようになっている。
【0024】
さらに下筒5bの底板部には気密ケース5をゴニオメータ7の試料回転台8に固定するためのフランジ5fが取り付けられ、気密ケース5が試料回転台8に固定されることで内部の試料4がX線源9から照射されるX線の光軸線上に配置されると共に、試料4が回転可能となる。
【0025】
ラジェーションシールド31は、有底円筒状の遮蔽体であり、この遮蔽体の開口端に形成されたフランジ32がファーストステージ24のヒートステーション26にネジで固定されている。ラジェーションシールド31の下端部付近には、前記X線透過窓6の開口部6aに重なる遮蔽体透過窓33が設けられ、この遮蔽体透過窓33は、周方向に沿って中心角180゜〜190゜の範囲で形成された開口部34aと、この開口部34aの外側に着脱可能に取り付けられたX線透過性のアルミ箔やベリリウム箔等から構成される蓋体34bとからなっている。そしてラジェーションシールド31はファーストステージ24の第1のヒートステーション26で固定端側から冷却されることで、ラジェーションシールド31内を所定の温度領域に維持するものである。
【0026】
試料ホルダ41は、図2に示すようにフランジ部42とホルダ部43とが一体に形成され、フランジ部42がセカンドステージ25の第2のヒートステーション27の下面に固定されることで試料4が測定位置に保持されるものである。ホルダ部43は厚肉平板状に形成されて、フランジ部42と直角にかつクライオスタット22の中心線より外側に位置をずらして固定されている。
【0027】
ホルダ部43の表面側の下端には試料板11を係止するための係合突起44が形成され、試料板11がこの係合突起44に係止された状態で、試料板11に取り付けられた試料4の表面がクライオスタット(あるいは試料回転台8)の中心線上に位置するように構成されている。また、ホルダ部43の表面側には、このホルダ部43に装着される試料板11の裏面に接触する温度センサ45が取り付けられ、これによって試料4の温度を検出するようにしている。
【0028】
試料板11の表面には、図2,図3に示すように試料4の表面温度を試料ホルダ41側の温度と略等しく保持するための均熱ブロック51が設けられている。この均熱ブロック51は、図中、試料4を挟んで試料板11の上下に間隙をおいて平行に配置される略半月板状の上ブロック部52と下ブロック部53とを有し、これらが半月形状における直線形状部の両サイドで上下に結合されたような構成となっている。この均熱ブロック51は、上ブロック部52,下ブロック部53がX線の光軸方向と平行になるように配置される。また、これら上ブロック部52,下ブロック部53は、その半月形状の円弧の開き角が180〜190°程度になるように形成される。そして、均熱ブロック51は、上ブロック部52及び下ブロック部53の円弧形状部が気密ケース5の下筒5bの開口部6aの円筒形状の内周面に略平行に沿うかたちになるようにして配置される。
【0029】
また、上ブロック部52と下ブロック部53の円弧形状部には、これら円弧形状部に沿って両者をかけわたすようにしてX線透過性のアルミ箔等からなる薄板たる遮蔽板54が取り付けられる。すなわち、試料4の上下の側部が上ブロック部52と下ブロック部53で囲まれ、かつ、これら両ブロック部の間に形成される空間が外部へ解放される曲面窓状部が遮蔽板54によって覆われるようにしたものである。これによって、まず、外部からの熱輻射線が試料4に達するのを遮蔽板54によって軽減し、同時に、試料4の表面が僅かな外部熱輻射線によって温度上昇した場合に上ブロック部52及び下ブロック部53との間で熱輻射による熱交換が行われるようにしてその温度上昇を押さえることができるようにしたものである。
【0030】
なお、上ブロック部52及び下ブロック部53は、遮蔽板54を装着した状態で試料板11と共にネジ55でホルダ部43の表面に着脱可能に固定され、これによって試料板11を試料ホルダ41に着脱可能としている。また、上ブロック部52は、下ブロック部53より厚肉に形成され、厚肉部の上端部56を試料板11の上側面に沿わせてホルダ部43の表面まで延ばして試料板11の表面との間に段部を形成することで、試料板11をこの段部と上記試料ホルダ41の係止部44との間に挾みこむようにして試料板11の縦方向の位置決めを行うと同時に均熱ブロック51の縦方向の位置決めが行なえるようになっている。さらに、図3に示されるように、上ブロック部52と下ブロック部53とをこれらの両側部で結合する結合部に、ホルダ部43の両側部と係合する段部を設けて均熱ブロック51の横方向の位置決めが行なえるようになっている。
【0031】
セカンドステージ25の下端部にはヒータ13が巻き付けてあり、このヒータ13やヒートステーション27の上面に取り付けられたサーモスタット57等によって、試料ホルダ41に取付られた試料4の温度を10Kから室温まで温度調整をすることができるようになっている。
【0032】
上述の実施例によれば、試料4の表面部の温度と均熱ブロック51や試料ホルダ41等の温度との間の温度差を無視できる程度に小さくすることが可能になった。これにより、通常の測定の場合に、温度センサ45の温度をそのまま試料温度としても誤差がほとんど無視できる程度になった。それゆえ、試料の極低温におけるX線分析を十分な測定の自由度を確保しつつ迅速にかつ正確に行うことができるようになった。
【0033】
これは、上記実施例では、均熱ブロック51の上下の均熱ブロック部52,53が試料を挟んでX線の光軸方向と平行に配置されるようにすると共に、均熱ブロック部52,53の開放端が周方向へ中心角180゜ないし190゜の円弧状に形成されるようにすることによって、試料4の表面部との間で熱交換を行なう均熱ブロックの表面を試料にできるだけ近接させつつその表面積をできるだけ広くとれるようにして、試料4の表面部と均熱ブロックとの間で十分な熱交換が行なわれるようにし、同時に測定の自由度を確保し、さらに、試料4の近傍をX線透過性の遮蔽板54と蓋体34bとによって2重に遮蔽することによって、外部輻射線が試料近傍に達するのを著しく軽減するようにしているためである。
【0034】
なお、上記実施例におけるラジェーションシールド31の内部空間、及び、均熱ブロック51の内部空間は、気密ケース5の内部空間と連通させて真空状態としてもよく、あるいは、ラジェーションシールド31の遮蔽体開口部34aを遮蔽するアルミ箔やベリリウム箔等のX線透過性薄板の蓋体34bで外部から密封したり、均熱ブロック51の内部空間をアルミ箔やベリリウム箔等のX線透過性薄板の遮蔽板54で外部から密封したりして、これらラジェーションシールド31や均熱ブロック51の内部空間に熱伝導の良好なヘリウムガスを充填することで空間内の温度分布を良好に保持できるようにしてもよい。ヘリュウムガスを前記空間部内へ供給する方法としては、これらの空間部内へパイプを接続し、このパイプを介して供給するようにしてもよく、あるいは試料を装置の外部へ取り出した際に、空間部内へ供給するようにしてもよい。
【0035】
また上記実施例ではこの発明の装置を試料縦型としたが、これを試料横型や試料水平型とすることができるのは勿論である。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、試料ホルダに試料の外周を覆う均熱ブロックを設けたことにより、冷却部位や試料ホルダと試料表面部との間の温度差を極めて小さくすることが可能になった。その結果、例えば、温度センサを冷却部位や試料ホルダに設けても試料温度とほぼ同じ温度を検出することが可能になった。
【0037】
また、この発明において、均熱ブロックを、X線源から照射されるX線の光軸方向に沿って試料の両側に形成された2つのブロック材と、このブロック材の開放端側に設けられてこのブロック材で囲まれる内部空間を覆うX線透過用の薄板とを備えたものにすると、均熱ブロックが試料への入射X線や回折X線の障害となることがなく、また、均熱ブロック内がX線透過用の薄板で覆われているため、外部からの熱輻射線の侵入度合いを軽減することができ、冷却部位や試料ホルダと試料表面部との間の温度差をさらに小さくすることが可能になる。
【0038】
さらに、ブロック材の開放端がX線の光軸方向に沿って中心角180゜ないし190゜の円弧状になるように形成すると、X線透過用の薄板が上記ブロック材の開放端の表面に沿って円弧状に形成されることになるので、このX線透過用の薄板に対してX線が常時垂直に通過することになって、X線の通過厚さがX線の入・出射角度にかかわらず常時最小厚さで一定になるようにできる。したがって、この通過によるX線の減衰量を最小でかつ一定にすることができ、感度低下や測定誤差発生の防止が可能になる。また、試料表面に対するX線照射角度や回折角度としてほぼ0〜180度の全範囲をとることが可能になる。
【0039】
また、試料ホルダ及びセカンドステージを遮蔽体でシールドするようにすれば、外部からの熱輻射線が試料近傍に達するのを軽減でき、外部熱輻射線によって試料表面が加熱されるのを有効に軽減できるとともに、遮蔽体内部の冷却を促進することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例のX線回折試料極低温冷却装置の要部の正面断面図である。
【図2】図1の均熱ブロック付近の拡大断面図である。
【図3】図1の均熱ブロック付近の斜視図である。
【図4】従来のX線回折試料極低温冷却装置の全体の概要を説明するための説明図である。
【図5】図4の試料ホルダの付近の拡大正面図である。
【図6】図4の試料ホルダ付近の拡大側面図である。
【符号の説明】
4…試料、5…気密ケース、6…X線透過窓、9…X線源、10…X線計数装置、21…X線回折試料極低温冷却装置、22…冷却部、24…ファーストステージ(冷却部)、25…セカンドステージ(冷却部)、26…第1のヒートステーション(第1の冷却部位)、27…第2のヒートステーション(第2の冷却部位)、31…ラジェーションシールド(遮蔽体)、33…遮蔽体透過窓、41…試料ホルダ、45…温度センサ、51…均熱ブロック、52…上ブロック部、53…下ブロック部、54…遮蔽体。
【産業上の利用分野】
この発明は、試料を極低温に冷却してX線分析を行うことのできるX線回折試料極低温冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のX線回折試料極低温冷却装置としては、図4ないし図6に示すようなものが知られている。
【0003】
図4において符号1はX線回折試料極低温冷却装置であり、ヘリウムガスを閉回路で循環させながら断熱圧縮・膨張を繰り返して低温を得る冷却機のヘッドを形成する冷却部2の先端に、試料ホルダ3を固定し、この試料ホルダ3に試料4を取り付けるようにしたものである。
【0004】
冷却部2は、内部を真空に保持するための円筒状の気密ケース5で覆われており、この気密ケース5の下部付近には、試料4に照射するX線を透過させるためのBe製のX線透過窓6が設けてある。また、気密ケース5の下端部は、ゴニオメータ7の試料回転台8に固定され、さらに試料回転台8を挟んでゴニオメータ7の両側には、前記試料4にX線透過窓6を介してX線を照射させるX線発生装置9と、試料4からの回折X線をX線透過窓6を介して検出するX線計数装置10とが設けてある。X線計数装置10は試料4の回りに所定の角速度で回転可能となっており、したがってX線透過窓6は、気密ケース5の周方向に中心角190゜程度の範囲で形成されている。
【0005】
上記試料ホルダ3は、図5,図6に示すようにフランジ部3aとホルダ部3bとが一体に成形され、フランジ部3aが冷却部2の下端に形成された冷却部位2aに固定されることで試料4が装置内の計測位置に保持される。そして試料ホルダ3のホルダ部3bの表面(冷却部の中心側)には、試料4が固定された試料板4aがネジ等の取付部材11で取り付けてある。また、冷却部位2aの上面には、温度センサ12が取り付けられ、これによってX線回折測定時の試料4の温度を検出し、冷却部位2aの温度制御を行うようにしている。また、冷却部2の下端、即ち冷却部位2aの直上付近には、ヒータ13が巻き付けてあり、このヒータ13で試料4の温度を制御できるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、X線回折測定の場合においてX線回折測定に寄与するのは、試料4の表面部の極薄い層である。したがって、X線回折測定における試料温度というときには、正確には、実際にX線回折に寄与している試料4の表面部の温度をさすことになる。
【0007】
ところが、上述の従来の装置では、温度センサ12の検出温度が、実際にX線回折に寄与している試料4の表面部の温度を示していない場合のあることが判明した。
【0008】
本発明者等がその原因を究明したところ、以下の事実が判明した。すなわち、上述の従来の装置では、冷却部位2aと試料ホルダ3とはこれを共に熱良導体で構成して結合できるので、両者の間の温度差を小さくすることは可能である。従来は、一般的な感覚でみて試料4の熱容量が小さくかつその厚さも十分に薄いと考えられていたので、当然、試料4の温度も該試料4が熱的に接触している試料ホルダ3の温度とほぼ等しくなるものと考えられていた。この従来の考え方は、試料4が熱良導体である場合にはその通りであった。しかしながら、試料4については、これを常に熱良導体で構成することはできない。すなわち、試料によっては著しく熱伝導率が小さく、粉末状試料のように、むしろ、熱絶縁体に近いものである場合も少なくない。そこで、試料4がこのような熱絶縁体に近いものである場合から熱良導体に近いものである場合の種々の場合について、冷却部位2a、試料ホルダ3及び試料4の各部の温度を測定したところ、試料4が熱絶縁体に近いものになればなるほど、試料4のX線回折に寄与する表面部と他の部位との間の温度差が大きくなり、これが無視できない程になる場合のあることが判明した。
【0009】
本発明者等の考察によれば、試料4は、その底面部及び側面部が試料ホルダ3に接触されて熱伝導によって冷却されるが、X線を照射する表面部は空間に接することになる。すなわち、底面部及び側面部からは熱が奪われるが、表面部からは熱が奪われず、むしろ、X線透過窓6等を通じて侵入する外部からの熱輻射線等によって表面部には熱が供給される。もし、試料4が熱良導体であれば、底面部及び側面部と表面部との間で熱伝導による十分な熱交換が行われるので、外部輻射線等によって表面部に供給されるわずかな熱を十分に吸収でき、表面部の温度もほぼ試料ホルダ3の温度と等しいものにできるが、試料4が熱伝導の悪いものである場合には、表面部から供給される熱を十分に吸収することができなくなり、これがために、表面部の温度と他の部位の温度との間に無視できない程の温度差が生じてしまうものと推定された。
【0010】
この発明は、上述の解明結果に基づいてなされたものであり、冷却部位の温度とX線分析の測定対象たる試料温度との差を少なくして、試料の正確なX線分析を行うことのできるX線回折試料極低温冷却装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、内部に試料を配置する気密ケースと、この気密ケースの内部に設けられて前記試料を所定の温度に冷却する冷却部と、この冷却部に固定されて前記試料を前記気密ケース内の測定位置に保持する試料ホルダとを有し、前記気密ケースの外側に設けたX線源からこの気密ケースのX線透過窓を介してX線を照射すると共に、前記試料からの回折X線を前記X線透過窓を介してX線計数装置で検出するようにしたX線回折試料極低温冷却装置であって、前記試料ホルダに前記試料の外周を覆う均熱ブロックを設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の発明はいる試料ホルダ3の温度とほぼ等しくなるものと考えられていた。この従来の考え方は、試料4が熱良導体である場合にはその通りであった。に設けられて、このブロック材で囲まれる内部空間を覆うX線透過用の薄板とからなることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記均熱ブロックのブロック材の開放端がX線の光軸方向に沿って中心角180゜ないし190゜の円弧状に形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記冷却部がファーストステージとこのファーストステージの先端部に設けられたセカンドステージの2段の冷却部からなり、前記試料ホルダをセカンドステージの先端部に形成された第2の冷却部位に固定する一方、前記ファーストステージの先端に形成された第1の冷却部位には、前記セカンドステージと試料ホルダを覆う遮蔽体を固定し、この遮蔽体に前記X線を透過させる遮蔽体透過窓を形成したことを特徴としている。
【0015】
【作用】
この発明によれば、試料ホルダに試料の外周を覆う均熱ブロックを設けたことにより、冷却部位や試料ホルダと試料表面部との間の温度差を極めて小さくすることが可能になった。これは、試料の外周が均熱ブロックで覆われたことにより、試料表面部と均熱ブロックとの間に温度差が生じた場合に、近接する両者の間で主として熱輻射による熱交換が行なわれ、その熱交換の量が、外部熱輻射線で外部から試料表面に供給される熱を十分に吸収できる程度を越えるものであるためであると考えられる。すなわち、外部熱輻射線で外部から試料表面に供給される熱は極めて僅かであるが、従来は、このわずかな熱によって無視できない温度差が生じていたものであるが、このわずかな熱は、近接して試料を覆うように設けられた均熱ブロックとの間での熱輻射による熱交換によって十分に吸収できるためであると考えられる。その結果、例えば、温度センサを冷却部位や試料ホルダに設けても試料温度とほぼ同じ温度を検出することが可能になった。
【0016】
請求項2では、均熱ブロックを、X線源から照射されるX線の光軸方向に沿って試料の両側に形成された2つのブロック材と、このブロック材の開放端側に設けられてこのブロック材で囲まれる内部空間を覆うX線透過用の薄板とを備えたものにしたので、均熱ブロックが試料への入射X線や回折X線の障害となることがなく、また、均熱ブロック内がX線透過用の薄板で覆われているため、外部からの熱輻射線の侵入度合いを軽減することができ、冷却部位や試料ホルダと試料表面部との間の温度差をさらに小さくすることができる。
【0017】
請求項3では、ブロック材の開放端がX線の光軸方向に沿って中心角180゜ないし190゜の円弧状に形成したもので、これにより、X線透過用の薄板が上記ブロック材の開放端の表面に沿って円弧状に形成されることになるので、このX線透過用の薄板に対してX線が常時垂直に通過することになって、X線の通過厚さがX線の入・出射角度にかかわらず常時最小厚さで一定になる。したがって、この通過によるX線の減衰量を最小でかつ一定にすることができ、感度低下や測定誤差発生の防止ができる。また、試料表面に対するX線照射角度や回折角度をほぼ0〜180度の全範囲をとることが可能となる。
【0018】
請求項4では、試料ホルダ及びセカンドステージが遮蔽体でシールドされるので、外部からの熱輻射線が試料近傍に達するのを軽減でき、外部熱輻射線によって試料表面が加熱されるのを有効に軽減できるとともに、遮蔽体内部の冷却を促進することができる。
【0019】
【実施例】
図1ないし図3はこの発明の一実施例を示すものである。これらの図において従来の図に示したものと同じ要素には同一符号を付して、説明を省略する。
【0020】
符号21はこの実施例のX線回折試料極低温冷却装置であり、22はこのX線回折試料極低温冷却装置21の冷却部としてのクライオスタットである。クライオスタット22は、ヘリウムガスを内部のエキスパンダ(図示せず)内に導き入れる基台部23と、この基台部23に取り付けられた冷却部のファーストステージ24と、このファーストステージ24の先端に設けられたセカンドステージ25とからなり、基台部23内に設けられたバルブデイスク(図示せず)で高圧と低圧を切り換え、サージボリュームによる圧力変動でファーストステージ24とセカンドステージ25を往復動させ、これによってヘリウムガスを断熱自由膨張させて、ファーストステージ24の先端に形成された第1の冷却部位である第1のヒートステーション26とセカンドステージ25の先端に形成された第2の冷却部位である第2のヒートステーション27とを冷却して極低温を生成するようにしたものである。
【0021】
基台部23のフランジ23aには、ファーストステージ24とセカンドステージ25とを覆う気密ケース5が取り付けられている。またファーストステージ24の第1のヒートステーション26には遮蔽体としてのラジェーションシールド31が取り付けられ、さらにセカンドステージ25の第2のヒートステーション27には試料ホルダ41が取り付けられている。そして、試料ホルダ41には、表面に試料4が充填された試料板11が取り付けられている。
【0022】
気密ケース5は、円筒状に形成されており、基台部23にフランジを介して固定された上筒5aと、この上筒5aにフランジを介して接続された有底円筒状の下筒5bとからなり、上筒5aには気密ケース5内を真空にするための真空引き口5c並びに制御及び試料温度測定用熱電対等に連絡する接続コネクタ部5dが設けられ、下筒5bには、外部から試料4を試料ホルダ41に着脱可能にするために開閉自在に形成されたX線透過窓6が設けられている。
【0023】
このX線透過窓6は下筒5bに形成された開口部6aとこの開口部6aを覆う窓本体6bとからなり、開口部6aは下筒5bの周方向に中心角190゜の範囲で開口されている。そしてこの開口部6aに取り付けられる窓本体6bは、開口部6aの周囲を囲んで設けられる窓枠と、この窓枠に前記開口部6aを覆って取り付けられる長方形状のBe製の薄板とからなっている。窓本体6bはOリング5eを介しての下筒5bに対して上下方向に摺動自在に取り付けられており、該窓本体6bを開口部6aに対して上方へ摺動させることで開口部6aが外部に対して開放され、該開口部6aを通じて試料4を出し入れできるようになっている。
【0024】
さらに下筒5bの底板部には気密ケース5をゴニオメータ7の試料回転台8に固定するためのフランジ5fが取り付けられ、気密ケース5が試料回転台8に固定されることで内部の試料4がX線源9から照射されるX線の光軸線上に配置されると共に、試料4が回転可能となる。
【0025】
ラジェーションシールド31は、有底円筒状の遮蔽体であり、この遮蔽体の開口端に形成されたフランジ32がファーストステージ24のヒートステーション26にネジで固定されている。ラジェーションシールド31の下端部付近には、前記X線透過窓6の開口部6aに重なる遮蔽体透過窓33が設けられ、この遮蔽体透過窓33は、周方向に沿って中心角180゜〜190゜の範囲で形成された開口部34aと、この開口部34aの外側に着脱可能に取り付けられたX線透過性のアルミ箔やベリリウム箔等から構成される蓋体34bとからなっている。そしてラジェーションシールド31はファーストステージ24の第1のヒートステーション26で固定端側から冷却されることで、ラジェーションシールド31内を所定の温度領域に維持するものである。
【0026】
試料ホルダ41は、図2に示すようにフランジ部42とホルダ部43とが一体に形成され、フランジ部42がセカンドステージ25の第2のヒートステーション27の下面に固定されることで試料4が測定位置に保持されるものである。ホルダ部43は厚肉平板状に形成されて、フランジ部42と直角にかつクライオスタット22の中心線より外側に位置をずらして固定されている。
【0027】
ホルダ部43の表面側の下端には試料板11を係止するための係合突起44が形成され、試料板11がこの係合突起44に係止された状態で、試料板11に取り付けられた試料4の表面がクライオスタット(あるいは試料回転台8)の中心線上に位置するように構成されている。また、ホルダ部43の表面側には、このホルダ部43に装着される試料板11の裏面に接触する温度センサ45が取り付けられ、これによって試料4の温度を検出するようにしている。
【0028】
試料板11の表面には、図2,図3に示すように試料4の表面温度を試料ホルダ41側の温度と略等しく保持するための均熱ブロック51が設けられている。この均熱ブロック51は、図中、試料4を挟んで試料板11の上下に間隙をおいて平行に配置される略半月板状の上ブロック部52と下ブロック部53とを有し、これらが半月形状における直線形状部の両サイドで上下に結合されたような構成となっている。この均熱ブロック51は、上ブロック部52,下ブロック部53がX線の光軸方向と平行になるように配置される。また、これら上ブロック部52,下ブロック部53は、その半月形状の円弧の開き角が180〜190°程度になるように形成される。そして、均熱ブロック51は、上ブロック部52及び下ブロック部53の円弧形状部が気密ケース5の下筒5bの開口部6aの円筒形状の内周面に略平行に沿うかたちになるようにして配置される。
【0029】
また、上ブロック部52と下ブロック部53の円弧形状部には、これら円弧形状部に沿って両者をかけわたすようにしてX線透過性のアルミ箔等からなる薄板たる遮蔽板54が取り付けられる。すなわち、試料4の上下の側部が上ブロック部52と下ブロック部53で囲まれ、かつ、これら両ブロック部の間に形成される空間が外部へ解放される曲面窓状部が遮蔽板54によって覆われるようにしたものである。これによって、まず、外部からの熱輻射線が試料4に達するのを遮蔽板54によって軽減し、同時に、試料4の表面が僅かな外部熱輻射線によって温度上昇した場合に上ブロック部52及び下ブロック部53との間で熱輻射による熱交換が行われるようにしてその温度上昇を押さえることができるようにしたものである。
【0030】
なお、上ブロック部52及び下ブロック部53は、遮蔽板54を装着した状態で試料板11と共にネジ55でホルダ部43の表面に着脱可能に固定され、これによって試料板11を試料ホルダ41に着脱可能としている。また、上ブロック部52は、下ブロック部53より厚肉に形成され、厚肉部の上端部56を試料板11の上側面に沿わせてホルダ部43の表面まで延ばして試料板11の表面との間に段部を形成することで、試料板11をこの段部と上記試料ホルダ41の係止部44との間に挾みこむようにして試料板11の縦方向の位置決めを行うと同時に均熱ブロック51の縦方向の位置決めが行なえるようになっている。さらに、図3に示されるように、上ブロック部52と下ブロック部53とをこれらの両側部で結合する結合部に、ホルダ部43の両側部と係合する段部を設けて均熱ブロック51の横方向の位置決めが行なえるようになっている。
【0031】
セカンドステージ25の下端部にはヒータ13が巻き付けてあり、このヒータ13やヒートステーション27の上面に取り付けられたサーモスタット57等によって、試料ホルダ41に取付られた試料4の温度を10Kから室温まで温度調整をすることができるようになっている。
【0032】
上述の実施例によれば、試料4の表面部の温度と均熱ブロック51や試料ホルダ41等の温度との間の温度差を無視できる程度に小さくすることが可能になった。これにより、通常の測定の場合に、温度センサ45の温度をそのまま試料温度としても誤差がほとんど無視できる程度になった。それゆえ、試料の極低温におけるX線分析を十分な測定の自由度を確保しつつ迅速にかつ正確に行うことができるようになった。
【0033】
これは、上記実施例では、均熱ブロック51の上下の均熱ブロック部52,53が試料を挟んでX線の光軸方向と平行に配置されるようにすると共に、均熱ブロック部52,53の開放端が周方向へ中心角180゜ないし190゜の円弧状に形成されるようにすることによって、試料4の表面部との間で熱交換を行なう均熱ブロックの表面を試料にできるだけ近接させつつその表面積をできるだけ広くとれるようにして、試料4の表面部と均熱ブロックとの間で十分な熱交換が行なわれるようにし、同時に測定の自由度を確保し、さらに、試料4の近傍をX線透過性の遮蔽板54と蓋体34bとによって2重に遮蔽することによって、外部輻射線が試料近傍に達するのを著しく軽減するようにしているためである。
【0034】
なお、上記実施例におけるラジェーションシールド31の内部空間、及び、均熱ブロック51の内部空間は、気密ケース5の内部空間と連通させて真空状態としてもよく、あるいは、ラジェーションシールド31の遮蔽体開口部34aを遮蔽するアルミ箔やベリリウム箔等のX線透過性薄板の蓋体34bで外部から密封したり、均熱ブロック51の内部空間をアルミ箔やベリリウム箔等のX線透過性薄板の遮蔽板54で外部から密封したりして、これらラジェーションシールド31や均熱ブロック51の内部空間に熱伝導の良好なヘリウムガスを充填することで空間内の温度分布を良好に保持できるようにしてもよい。ヘリュウムガスを前記空間部内へ供給する方法としては、これらの空間部内へパイプを接続し、このパイプを介して供給するようにしてもよく、あるいは試料を装置の外部へ取り出した際に、空間部内へ供給するようにしてもよい。
【0035】
また上記実施例ではこの発明の装置を試料縦型としたが、これを試料横型や試料水平型とすることができるのは勿論である。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、試料ホルダに試料の外周を覆う均熱ブロックを設けたことにより、冷却部位や試料ホルダと試料表面部との間の温度差を極めて小さくすることが可能になった。その結果、例えば、温度センサを冷却部位や試料ホルダに設けても試料温度とほぼ同じ温度を検出することが可能になった。
【0037】
また、この発明において、均熱ブロックを、X線源から照射されるX線の光軸方向に沿って試料の両側に形成された2つのブロック材と、このブロック材の開放端側に設けられてこのブロック材で囲まれる内部空間を覆うX線透過用の薄板とを備えたものにすると、均熱ブロックが試料への入射X線や回折X線の障害となることがなく、また、均熱ブロック内がX線透過用の薄板で覆われているため、外部からの熱輻射線の侵入度合いを軽減することができ、冷却部位や試料ホルダと試料表面部との間の温度差をさらに小さくすることが可能になる。
【0038】
さらに、ブロック材の開放端がX線の光軸方向に沿って中心角180゜ないし190゜の円弧状になるように形成すると、X線透過用の薄板が上記ブロック材の開放端の表面に沿って円弧状に形成されることになるので、このX線透過用の薄板に対してX線が常時垂直に通過することになって、X線の通過厚さがX線の入・出射角度にかかわらず常時最小厚さで一定になるようにできる。したがって、この通過によるX線の減衰量を最小でかつ一定にすることができ、感度低下や測定誤差発生の防止が可能になる。また、試料表面に対するX線照射角度や回折角度としてほぼ0〜180度の全範囲をとることが可能になる。
【0039】
また、試料ホルダ及びセカンドステージを遮蔽体でシールドするようにすれば、外部からの熱輻射線が試料近傍に達するのを軽減でき、外部熱輻射線によって試料表面が加熱されるのを有効に軽減できるとともに、遮蔽体内部の冷却を促進することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例のX線回折試料極低温冷却装置の要部の正面断面図である。
【図2】図1の均熱ブロック付近の拡大断面図である。
【図3】図1の均熱ブロック付近の斜視図である。
【図4】従来のX線回折試料極低温冷却装置の全体の概要を説明するための説明図である。
【図5】図4の試料ホルダの付近の拡大正面図である。
【図6】図4の試料ホルダ付近の拡大側面図である。
【符号の説明】
4…試料、5…気密ケース、6…X線透過窓、9…X線源、10…X線計数装置、21…X線回折試料極低温冷却装置、22…冷却部、24…ファーストステージ(冷却部)、25…セカンドステージ(冷却部)、26…第1のヒートステーション(第1の冷却部位)、27…第2のヒートステーション(第2の冷却部位)、31…ラジェーションシールド(遮蔽体)、33…遮蔽体透過窓、41…試料ホルダ、45…温度センサ、51…均熱ブロック、52…上ブロック部、53…下ブロック部、54…遮蔽体。
Claims (4)
- 内部に試料を配置する気密ケースと、この気密ケースの内部に設けられて前記試料を所定の温度に冷却する冷却部と、この冷却部に固定されて前記試料を前記気密ケース内の測定位置に保持する試料ホルダとを有し、前記気密ケースの外側に設けたX線源からこの気密ケースのX線透過窓を介してX線を照射すると共に、前記試料からの回折X線を前記X線透過窓を介してX線検出器で検出するようにしたX線回折試料極低温冷却装置であって、前記試料ホルダに前記試料の外周を覆う均熱ブロックを設けたことを特徴とするX線回折試料極低温冷却装置。
- 前記均熱ブロックが、前記X線源から照射されるX線の光軸方向に沿って前記試料の両側に形成されたブロック材と、このブロック材の開放端側に設けられてこのブロック材で囲まれる内部空間を覆うX線透過用の薄板とを備えたことを特徴とする請求項1記載のX線回折試料極低温冷却装置。
- 前記均熱ブロックのブロック材の開放端がX線の光軸方向に沿って中心角180゜ないし190゜の円弧状に形成されていることを特徴とする請求項2記載のX線回折試料極低温冷却装置。
- 前記冷却部がファーストステージとこのファーストステージの先端部に設けられたセカンドステージの2段の冷却部を有し、前記試料ホルダをセカンドステージの先端部に形成された第2の冷却部位に固定する一方、前記ファーストステージの先端に形成された第1の冷却部位には、前記セカンドステージと試料ホルダを覆う遮蔽体を固定し、この遮蔽体に前記X線を透過させる遮蔽体透過窓を形成したことを特徴とする請求項1、2、叉は3のいずれかに記載のX線回折試料極低温冷却装置。
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