JP3583872B2 - 炭素・樹脂複合材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素材料とフェノール樹脂組成物との複合材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カーボンやグラファイトなどの炭素材料は、耐火性、電磁波シールド性、滑性などに優れるために、これらの特性を活かした各種の用途に使用されているが、炭素材料を単一で用いることは極めて少なく、殆どは炭素材料と樹脂との複合材、例えば炭素材料と樹脂の複合成形品として使用されている。このような炭素・樹脂複合材では、樹脂は炭素材料を結合させるバインダーとして作用するものであり、炭素・樹脂複合材の機械的強度は炭素材料と樹脂との界面の接着性に大きく影響される。
【0003】
ここで、接着は、「同種または異種物質の接触面が接着剤によって結合すること」(日経技術図書社「接着応用技術」)と定義されるものであり、接着強さは接着結合したものの破壊強度であって、接着剤と被着材の間の界面の相互作用の強さや、被着材と接着剤自身の凝集力などの力学的性質や、その他多くの因子が働いている。そして一般に被着材は平滑表面であっても数百Åの凹凸があり、接着剤の役割はまずこの凹凸のギャップを埋め、かつ被着材の表面を完全に濡らし、表面の極性基と接着剤自身が有する極性基の間で化学反応や水素結合などの相互作用を強く働かせることである。このように接着剤は、▲1▼液体として流動し、▲2▼細かい間隙に流れ込み、▲3▼被着材を良く濡らし、▲4▼最終的には固化して強靱な相を形成するものである必要がある。
【0004】
従って、炭素材料と樹脂との複合材にあっても、結合剤として使用される樹脂は▲1▼〜▲4▼の性能を有することが必要であり、特に液状であり、且つ炭素材料に対する濡れ性の良いものであることが必要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしカーボンやグラファイトなどの炭素材料は表面の撥水性や撥油性が高いために、フェノール樹脂など樹脂は一般に炭素材料に対する濡れ性が悪く、機械的強度の高い炭素・樹脂複合材を得ることが難しい、という問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、炭素材料との接着性が高いフェノール樹脂組成物を用いて、機械的強度の高い炭素・樹脂複合材を得ることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る炭素・樹脂複合材は、炭素材料が、液状のジメチレンエーテル型フェノール樹脂と液状の硬化促進剤とを配合して25℃での粘度を10〜5000mPa・sに調製したフェノール樹脂組成物の硬化物をバインダーとして結合されていることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
ジメチレンエーテル型フェノール樹脂(ベンジリックエーテル型フェノール樹脂)は、フェノール類とホルムアルデヒド類とを、二価金属のナフテン酸塩、二価金属のカルボン酸塩又は二価金属の水酸化物を反応触媒として用い、100〜140℃の温度で反応させることによって得られるフェノール樹脂の一種であり、液体、半固形、固形のものを調製することができる。
【0008】
ここで、上記のフェノール類は、フェノール及びフェノールの誘導体を意味するものであり、例えばフェノールの他に、m−クレゾール、レゾルシノール、3,5−キシレノールなどの3官能性のもの、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルメタンなどの4官能性のもの、o−クレゾール、p−クレゾール、p−terブチルフェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4又は2,6−キシレノールなどの2官能性のo−又はp−置換のフェノール類などを挙げることができ、さらに塩素又は臭素で置換されたハロゲン化フェノールなども使用することができる。勿論、これらから1種を選択して用いる他、複数種のものを混合して用いることもできる。
【0009】
また上記のホルムアルデヒド類としては、水溶液の形態であるホルマリンが最適であるが、パラホルムアルデヒドやトリオキサン、テトラオキサンのような形態のものを用いることもでき、その他ホルムアルデヒドの一部をフルフラールやフルフリルアルコールに置き換えて使用することも可能である。
フェノール類とホルムアルデヒド類との配合比率は、フェノール類とホルムアルデヒド類のモル比が1:1〜1:3.5の範囲になるように設定するのが好ましい。
【0010】
さらに反応触媒の二価金属のナフテン酸としては、ナフテン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸バリウムなどを、二価のカルボン酸塩としては、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウム、酢酸バリウム、酢酸カルシウムなどを、二価金属の水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化バリウムなどを挙げることができる。
【0011】
このジメチレンエーテル型フェノール樹脂は、一般的なレゾール型フェノール樹脂と比較して経時変化が小さく、取り扱い易いが、硬化速度が遅いために、本発明では、加熱硬化させるにしても、常温硬化させるにしても、硬化促進剤を添加して、硬化を促進させるようにしてある。硬化促進剤としては、常温硬化には、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、あるいはパラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸などの有機酸を用いることができる。また加熱硬化には、前記の酸の他に、アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物を用いることができ、さらにジメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジエチレントリアミン、ジシアンジアミドなどの脂肪族の第一級、第二級、第三級アミン、N,N−ジメチルベンジルアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン、アニリン、1,5−ナフタレンジアミンなどの芳香族アミン、ヘキサメチレンテトラミンなどの潜在性触媒を用いることもできる。硬化促進剤の添加量は、その種類や、硬化温度等の条件によって異なるが、一般的には、ジメチレンエーテル型フェノール樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲が好ましい。
【0012】
そしてジメチレンエーテル型フェノール樹脂と硬化促進剤を配合することによって本発明に係る炭素材料結合用のフェノール樹脂組成物を得ることができるものであるが、既述のように、炭素材料の結合剤として用いる場合、樹脂組成物は液状である必要があり、本発明ではジメチレンエーテル型フェノール樹脂及び硬化促進剤はそれぞれ液状のものを用いるものである。
【0013】
ジメチレンエーテル型フェノール樹脂を液状に調製した場合にはそのまま用いることができるが、半固形や固形のジメチレンエーテル型フェノール樹脂の場合は溶剤に溶解して液状にして使用するものである。また硬化促進剤は無機酸のように液状のものであればそのまま用いることができるが、固形のものは水やアルコールなどの溶剤に分散したり溶解したりして液状にして使用するものである。そして、液状のジメチレンエーテル型フェノール樹脂と液状の硬化促進剤を配合することによって調製される本発明に係る炭素材料結合用フェノール樹脂組成物は、その粘度を10〜5000mPa・s(測定温度25℃;以下同じ)の範囲に調整するのが好ましい。粘度が5000mPa・sを超えて高くなると、炭素材料との濡れが不十分になるおそれがあり、逆に粘度が10mPa・sを超えて小さくなると、炭素材料と樹脂組成物とが分かれて均一性が悪くなるおそれがある。
【0014】
一方、炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、コークス、木炭、籾殻炭などの粉粒体を用いることができ、その他、炭素繊維などを用いることもできる。勿論これらのみに限定されるものではなく、炭素質のものであれば制限されることなく使用することができる。
そしてこの炭素材料と上記の炭素材料結合用フェノール樹脂組成物との複合材を製造するにあたっては、炭素材料の表面に炭素材料結合用フェノール樹脂組成物を浸透させることによって炭素材料とこのフェノール樹脂組成物とを混在させ、この状態でフェノール樹脂組成物を硬化させることによって、炭素材料結合用フェノール樹脂組成物の硬化物マトリックスをバインダーとして炭素材料を結合させて炭素・樹脂複合材を得ることができるものである。
【0015】
炭素材料の表面に炭素材料結合用フェノール樹脂組成物を浸透させるにあたっては、炭素材料とこのフェノール樹脂組成物を混合したり、炭素材料にフェノール樹脂組成物を含浸させたりして行なうことができるものである。そして、炭素材料に対する樹脂の濡れ性は一般的に悪いが、この炭素材料結合用フェノール樹脂組成物中のジメチレンエーテル型フェノール樹脂は炭素材料に対する濡れ性が良好であり、機械的強度の高い炭素・樹脂複合材を得ることができるものである。
【0016】
この炭素・樹脂複合材は、炭素の優れた滑性を利用して軸受け等として使用したり、炭素の優れた耐熱性を利用して耐火材として利用してたり、炭素の優れた電磁波シールド性を利用して電磁波シールド材として使用したりすることができるものである。またこの炭素・樹脂複合材は、単独で使用する他に、他のボード類に積層したり複合したりして使用することもできるものである。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(ジメチレンエーテル型フェノール樹脂Aの調製)
攪拌機と還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに、フェノールを940g、37%ホルマリンを893g、反応触媒として酢酸亜鉛を5g仕込み、これを混合攪拌しつつ、60分を要して還流させ、そのまま5時間反応させた。次いで内温が140℃になるまで常圧で脱水を行ない、さらに100トールの減圧下で100℃まで脱液を行なった。得られたジメチレンエーテル型フェノール樹脂Aの25℃における粘度は2.5Pa・s、135℃で60分間熱処理した後の不揮発分は69重量%、25℃におけるpHは5.3であった。
【0018】
(ジメチレンエーテル型フェノール樹脂Bの調製)
攪拌機と還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに、フェノールを940g、92%パラホルムアルデヒドを489g、反応触媒としてナフテン酸亜鉛を20g仕込み、これを混合攪拌しつつ、60分を要して還流させ、そのまま3時間反応させた。次いで内温が140℃になるまで常圧で脱水を行ない、さらに100トールの減圧下で100℃まで脱液を行なった。得られたジメチレンエーテル型フェノール樹脂Bの25℃における粘度は1.8Pa・s、135℃で60分間熱処理した後の不揮発分は67重量%、25℃におけるpHは5.5であった。
【0019】
(レゾルシノール・ホルムアルデヒド樹脂Cの調製)
攪拌機と還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに、レゾルシンを1000g、37%ホルマリンを450g仕込み、約90分を要して還流させ、そのまま60分反応させた。次いで濃度30重量%の苛性ソーダ水溶液を加えてpHを8.5に調整した。得られたレゾルシノール・ホルムアルデヒド樹脂Cの25℃における粘度は0.35Pa・s、135℃で60分間熱処理した後の不揮発分は65.7重量%であった。
【0020】
(レゾール型フェノール樹脂Dの調製)
攪拌機と還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに、フェノールを940g、37%ホルマリンを973g、反応触媒として48重量%濃度の苛性ソーダ水溶液を40g仕込み、約60分を要して80℃まで昇温させ、そのまま3時間反応させた。次にこれにベンゼンスルホン酸を加えてpHを9.0に調整した。得られたレゾール型フェノール樹脂Dの25℃における粘度は0.6Pa・s、135℃で60分間熱処理した後の不揮発分は66重量%であった。
【0021】
上記のようにして得られた各樹脂A,B,C,Dについて、黒鉛ボードに対する接触角を測定した。この黒鉛ボードに対する接触角の測定は、日本黒鉛社製の薄片化黒鉛「EXP−P」をバインダーレスで50kgf/cm2 の成形圧で加圧して黒鉛ボードを作製し、この黒鉛ボードの上に樹脂A,B,C,Dをのせ、エルマ社製の常温用接触角測定器「G−1型」を用いて接触角を計測することによって行なった。結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1にみられるように、黒鉛ボードに対するジメチレンエーテル型フェノール樹脂の接触角は小さく、炭素材料に対するジメチレンエーテル型フェノール樹脂の濡れ性が良好であることが確認される。
(硬化促進剤Eの調製)
パラトルエンスルホン酸を水に溶解させ、30重量%濃度に調整して液状の硬化促進剤Eを調製した。
【0024】
(硬化剤Fの調製)
三井東圧化学社製の92%パラホルムアルデヒドを粒径74μm以下になるように粉砕して、硬化剤Fを調製した。
(実施例1)
ジメチレンエーテル型フェノール樹脂Aと硬化促進剤Eとを表2の配合量で配合して混合し、フェノール樹脂組成物を調製した。
【0025】
(実施例2)
ジメチレンエーテル型フェノール樹脂Bと硬化促進剤Eとを表2の配合量で配合して混合し、フェノール樹脂組成物を調製した。
(比較例1)
レゾルシノール・ホルムアルデヒド樹脂Cと硬化剤Fとを表2の配合量で配合して混合し、フェノール樹脂組成物を調製した。
【0026】
(比較例2)
レゾール型フェノール樹脂Dと硬化促進剤Eとを表2の配合量で配合して混合し、フェノール樹脂組成物を調製した。
上記のようにして得た実施例1〜2、比較例1〜2のフェノール樹脂組成物について、25℃における粘度及び、黒鉛ボードに対する接触角を測定した。結果を表2に示す。また実施例1〜2、比較例1〜2のフェノール樹脂組成物についてそれぞれ、ゲル化時間を測定した。ゲル化時間の測定は、容量100ミリリットルのカップに表2に示す温度に調整した樹脂を10g入れると共に表2の配合割合で硬化促進剤あるいは硬化剤を入れ、良く混合した後の、ゲル化に至る時間を計測することによって行なった。結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2にみられるように、ジメチレンエーテル型フェノール樹脂の実施例1,2のものは、ゲル化時間が長く、しかも温度依存性も小さく、保存安定性が良好であって取り扱い易い樹脂であることが確認される。
次に、東レ社製の炭素繊維「トレカ糸」(タイプT400、フィラメント数6000本、引張強度420kgf/mm2 、引張弾性率24.0×103 kgf/mm2 )の束を長さ2cmに切取った。そして、容量100ミリリットルのカップに実施例1〜2、比較例1〜2で使用する樹脂A,B,C,Dを50g入れ、この上に上記の切り取った炭素繊維の束を乗せ、カップの底面に達するまでの時間を25℃の雰囲気下で測定し、炭素繊維への樹脂の浸透性を評価した。結果を表3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
表3にみられるように、実施例1,2のジメチレンエーテル型フェノール樹脂は炭素繊維に対する濡れが良く、炭素繊維への浸透性が極めて高いことが確認される。
次に、上記の炭素繊維「トレカ糸」の束に実施例1〜2、比較例1〜2のフェノール樹脂組成物をそれぞれ、炭素繊維と樹脂硬化物との体積比が60:40になるように浸漬させて含浸し、130℃、10kgf/cm2 、120分の条件でプレス成形することによって、炭素・樹脂複合材を作製した。
【0031】
この炭素・樹脂複合材について、JIS K 7074「炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して曲げ性能を測定した。またこの炭素・樹脂複合材中の空洞率を測定するため、走査電子顕微鏡(日立製作所製「S−2150」)により破断面を観察した。結果を表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】
表4にみられるように、炭素に対する濡れ性が良好なジメチレンエーテル型フェノール樹脂を含有する組成物をバインダーとする実施例1,2のものは、炭素・樹脂複合材の物理的強度が高く、空洞が発生しないことが確認される。
(実施例3)
ジメチレンエーテル型フェノール樹脂Aと硬化促進剤Eとを表5の配合量で配合して混合し、フェノール樹脂組成物を調製した。一方、上記の炭素繊維「トレカ糸」の束を6mmに切断した後、空気中、500℃で60分間焼成することによって、束中の集束剤を焼き飛ばして除去した。そしてこの集束剤を除去した炭素繊維とフェノール樹脂組成物を、炭素繊維と樹脂硬化物との重量比が60:40になるように配合し、ヘンシェルミキサーを用いて10分間混練した後、この混練物をバットに広げて室内で2日間養生し、成形材料を調製した。
【0034】
次に、この成形材料を151mm×131mmの縦・横寸法で開口するキャビティを有する金型に入れ、160℃、200kgf/cm2 、20分間の条件で加熱加圧成形し、さらに200℃で8時間ポストキュアすることによって、151mm×131mm×厚み5mm、密度1.45g/cm3 の炭素・樹脂複合材を得た。
【0035】
また、この炭素・樹脂複合材を耐熱箱に入れ、コークスで被覆した後、電気炉に入れて、4℃/分の等速昇温で1200℃まで昇温させると共に1200℃の温度を3時間保持した後、室温まで降温させることによって、炭素・樹脂複合材を焼成した焼成材を得た。
(比較例3)
レゾルシノール・ホルムアルデヒド樹脂Cと硬化剤Fとを表5の配合量で配合して混合し、フェノール樹脂組成物を調製した。そして実施例3と同様にして集束剤を除去した炭素繊維とフェノール樹脂組成物を、炭素繊維と樹脂硬化物との重量比が60:40になるように配合し、ヘンシェルミキサーを用いて5分間混合し、これを払い出し、この払い出し直後の成形材料を実施例3と同様にして加熱加圧成形し、実施例3と同じ寸法、同じ密度の炭素・樹脂複合材を得た。また実施例3と同様に焼成して焼成材を得た。
【0036】
実施例3及び比較例3で得た炭素・樹脂複合材及びその焼成材について、外観を観察し、またJIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験法」に準拠して成形収縮率を測定し、焼成収縮率を
焼成収縮率(%)=(焼成前の寸法−焼成後の寸法)/(焼成前の寸法)×100の式から計算してもとめた。またJIS K 7074「炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して曲げ強さ、曲げ弾性率を測定した。結果を表5に示す。
【0037】
【表5】
【0038】
表5にみられるように、炭素に対する濡れ性が良好なジメチレンエーテル型フェノール樹脂を含有する組成物をバインダーとする実施例3のものは、炭素・樹脂複合材の収縮率が小さく、物理的強度が高いことが確認される。
(実施例4)
反応容器に、平均粒径が5μmの鱗片状黒鉛を1100重量部、フェノールを770重量部、37%ホルマリンを1328重量部、反応触媒としてヘキサメチレンテトラミンを80重量部仕込み、これを混合攪拌しつつ60分を要して、90℃まで昇温し、そのまま3時間反応を維持した。このように反応させることによって、黒鉛とフェノール樹脂とからなる黒色顆粒状物が生成された。そして冷却後にこの黒色顆粒状物を濾別することによって、熱硬化性の黒鉛・フェノール樹脂顆粒体を得た。
【0039】
この黒鉛・フェノール樹脂顆粒体を151mm×131mmの縦・横寸法で開口するキャビティを有する金型(予め160℃に加熱)に入れ、160℃、50kgf/cm2 、20分間の条件で加熱加圧成形することによって、151mm×131mm×厚み10mm、密度1.6g/cm3 の黒鉛ボードを得た。
次に、実施例3で調製した成形材料をこの黒鉛ボードの上に厚みが1mmになるように流し、160℃、50kgf/cm2 、10分間の条件で加熱加圧成形することによって、黒鉛ボードに炭素・樹脂複合材を積層した複合ボードを作製した。
【0040】
(比較例4)
実施例3の成形材料の代わりに、比較例3で得た払い出し直後の成形材料を用いるようにした他は、実施例4と同様にして黒鉛ボードに炭素・樹脂複合材を積層した複合ボードを作製した。
上記のようにして作製した実施例4及び比較例4の複合ボードについて、さらに黒鉛ボードについて、外観を観察し、またJIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験法」に準拠して曲げ強さ、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強さを測定した。結果を表6に示す。
【0041】
【表6】
【0042】
表6にみられるように、炭素に対する濡れ性が良好なジメチレンエーテル型フェノール樹脂を含有する組成物をバインダーとする実施例4のものは、物理的強度が高いことが確認される。
【0044】
【発明の効果】
上記のように本発明に係る炭素・樹脂複合材は、炭素材料が、液状のジメチレンエーテル型フェノール樹脂と液状の硬化促進剤とを配合して25℃での粘度を10〜5000mPa・sに調製したフェノール樹脂組成物の硬化物をバインダーとして結合されていることを特徴とするものであり、ジメチレンエーテル型フェノール樹脂は炭素材料に対する濡れ性が良好であって炭素材料との接着性が高く、機械的強度の高い炭素・樹脂複合材を得ることができるものである。
Claims (1)
- 炭素材料が、液状のジメチレンエーテル型フェノール樹脂と液状の硬化促進剤とを配合して25℃での粘度を10〜5000mPa・sに調製したフェノール樹脂組成物の硬化物をバインダーとして結合されていることを特徴とする炭素・樹脂複合材。
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