JP3583179B2 - おむすび用乾燥具材 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、おむすび用成形乾燥具材及びその利用に関するものである。この成形乾燥具材は、比較的低水分でももとの具材に復元しうるので、これを炊いたごはんの内部に収容するだけで具入りおむすびとなるものである。したがって、本発明は、該成形乾燥具材を用いるおむすびの製造方法、及びそれによって得られた具入りおむすび自体にも関するものである。
【0002】
本発明に係る乾燥具材は、これを炊いたご飯の中に入れるだけで、もとの具材に復元するというきわめて卓越した性質を有するものであるので、炊いたご飯さえ用意すれば希望する時間、場所において必要な量だけ具入りおむすびを製造することができ、家庭内はもとより、特に工業上ないし商業上すぐれたものである。
【0003】
【従来の技術】
おむすび、特にその中心部に鮭や梅干等の具材を入れた具入りおむすびは、消費者の嗜好性が高く、家庭内はもとよりスーパーマーケットやコンビニエンスストアにおいて非常に良く売れている商品のひとつである。具入りおむすびは、従来、乾燥鮭・たらこ・梅はお茶づけやふりかけなどの乾燥食品にのりなどの他の具材や粉末調味料といっしょに利用されているが、おむすびの中心に入れて使用することを目的として加工された乾燥具材は過去に例が無い。さらに炊いたご飯の水分だけで復元させて食するおむすびの具は今までに無い新しいものである。また、マグロを主原料に使ってマヨネーズで味つけを行ったものは、コンビニエンスストアのおむすびでは人気メニューであり、簡便乾燥加工食品として実現することの新規性は非常に高いものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようにおむすびが一種の商品ないし工業製品のレベルにまで高まっていることに鑑み、その工業的製造法の開発の必要性を痛感し、これを本発明の技術課題として設定した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、各方面から検討した結果、具入りおむすびの工業的製造には発想の大転換が必要であるとの観点にたち、従来のように加熱調理済の具材を用意しておき、炊きたての御飯の中心部にこれを入れるシステムとは全く別異の、腐敗することのない具材を新規に開発し、特に工業化に適した新しいシステムを開発することとした。
【0006】
そこで、ご飯の水分だけで復元させて食することがきるよう、戻り性の非常によい乾燥食品を作るための原料の配合を探索することと、中心に入れる具材として適した形状および、大きさのものを作ることの研究を行ってきた。
【0007】
しかしながら、鮭などの肉をいったんほぐすことなく、おむすびの具材として適当な大きさにカットを行い、それを凍結乾燥して得られる乾燥具材は、おむすびに用いてもご飯の水分だけでは十分に給水することなく芯まで復元しない。そこで鮭の肉などをいったんほぐしてフレーク化し、それを再度結着剤等を用いて成形しさらに乾燥前水分量のシビアな配合割合を決定し、乾燥する前の素材の持つ味をできる限り損なうことなく見栄えが良く、戻り性の良い(味噌汁やスープのような汁液食品ではもちろんのこと、水蒸気で蒸らして戻す例えばおむすびや混ぜご飯のような比較的水分の少ない条件下でも戻り性の良い)、利用範囲の広い成形乾燥具材を製造するのに成功し、この成形乾燥具材を炊いたご飯の中心部に入れて握り、おむすびにしたところ、おむすびご飯の水分を吸水してもとの鮭に復元しており、加熱処理した鮭を入れておむすびにしたものと全くそん色のないことを確認し、この新知見を基礎として本発明は完成されたものである。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に係る成形乾燥具材は、これを炊きたてのごはんの中に入れておくだけでもとの具に復元せしめるという全く新しい具入りおむすびの製造システムに使用するものであるから、この目的に合致させるために、おむすびご飯の水分のみで充分に復元するよう卓越した復元性を付与する必要がある。そのために各方面から検討した結果、復元性にすぐれたおむすび用の成形乾燥具材を製造するには、(1)素材の予備処理(ブランチング処理、カット・粉砕処理、成形処理)、及び、(2)乾燥処理を行う必要があることが判明し、目的とする乾燥具材の製造に成功した。以下、これらについて詳細に説明する。
【0010】
(1)素材の予備処理
本発明において素材としては、野菜類、畜肉類、卵類、魚介類、海藻類、その他各種の素材がすべて包含され、本発明によればこわれ易い素材や取扱いにくい素材であっても容易に成形乾燥することができる点でも、本発明は特徴的である。そして、素材の予備処理は、ブランチング処理、必要あれば調味処理、カット・粉砕処理、及び成形処理から構成される。
【0011】
i)ブランチング処理
素材を、熱水、蒸気、直火、遠赤加熱、オーブン等の加熱手段で処理して、殺菌、酵素失活、組織軟化、調味を行う。調味は必要に応じて行い、食塩、砂糖、醤油などの天然系調味料のほか、各種アミノ酸類、核酸類、有機酸類などの調味料を用いて、常法にしたがって調味すればよい。
【0012】
ii)カット・粉砕処理
ブランチング処理後、それぞれの素材をほぐしたり、細かくカット又は粉砕する。その際、最終用途に応じて商品価値が無くならないよう細かくしすぎないことに注意する必要がある。ここで細かくカット又は粉砕を行うことは、乾燥処理を行った後のその具材の戻り性を良くさせるために必要な工程となる。おむすびのように水蒸気で蒸らして戻すような低水分食品のような条件下では素材をいったん細かくしてから成形することによって細かくしないものに比べて水分の浸透性が良くなり結果として戻り性が良くなるのである。また、希望するのであれば、ブランチング処理とカット・粉砕処理は、その順序を逆にしてもよい。
【0013】
iii)成形処理
粉砕処理を行った素材に、粉末化基材を加える。これ(ら)は、そのままでもよいが、溶液状にして加えるのがよい。その例としては、澱粉、化工澱粉、糊料、糖アルコール、オリゴ糖類が例示され、これらの内の1つあるいは複数を組み合わせて使用する。これらの内、澱粉と糊料については成形の際に結着剤として働き、化工澱粉、例えば特にデキストリンと糖アルコールは賦形剤として戻り性の向上化の働きをするが、これらの作用は厳格に区別できない場合もある。
【0014】
澱粉としては、バレイショ澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、小麦澱粉その他の生澱粉に水を加えて加熱糊化させたもののほか、α化澱粉、化工澱粉(デキストリン、ソリューブルスターチ、ブリティッシュガム、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)の糊化水溶液が用いられる。これらの内、デキストリンとしては、直鎖状、分枝状、環状デキストリンが適宜使用可能であるが、好適には、溶解性が良く、甘味の少ないすなわち水分の吸収性が良く、素材の風味を損わないものが良く、分枝デキストリンは好適に使用することができるものの一例である。
【0015】
糊料としては、増粘多糖類が用いられ、次のようなものが例示される:キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、タマリンドガム、カラギーナン、ファーセレラン、アラビアガム、ジェランガム、サイリューム、カードラン等、海藻、種子、樹脂及び微生物由来の物質の1種又は2種以上。糊料は、澱粉の代用として用いることができるし、もちろん両者を併用しても何ら差し支えはない。
【0016】
糖アルコールとしては、マルチトール、ソルビトールその他各種の糖アルコールが適宜使用できる。オリゴ糖類としては、既知の各種オリゴ糖が単用又は混用され、また、市販品も適宜使用できる。オリゴ糖類、糖アルコール、デキストリン、糊料は、水に溶解し、必要あれば加熱溶解を行い、それぞれの水溶液として用いると好適である。
【0017】
素材は、上記のように、ほぐしたり、細かくカットしたり、粉砕したりするほか、ペースト化してもよい。その場合、水分を50〜90%に調整すると、非常に復元性のよいすぐれたおむすび用の成形乾燥具材が得られる。ペースト化しない場合であっても、上記範囲に水分を調節すると、好適である。
【0018】
先に述べたように粉砕処理又はペースト化を行った素材は、澱粉、化工澱粉(デキストリン等)、糊料、糖アルコール及び/又はオリゴ糖類と混合し、この混合物を、アルミトレイのようなパット容器かあるいはケーシング容器に移し、アルミトレイの場合は厚さ20mm以下に調整し、またケーシング容器の場合は直径30mm以下になるように充填する。その後この物を組織を壊さぬように速やかに冷凍する。凍結後、それぞれ所定の大きさにカットするのであるが、厚さ20mmの板状の場合は30mm×30mm以下の大きさにカットすることが後の壊れの問題や、商品見栄え上、充填性の点で適当である。又直径30mm以下のケーシング容器に充填した物は、幅20mm以下にカットすることによって戻り性の良いものができる。
【0019】
成形の形状、大きさは、上記のとおりであるが、おむすびの形状、大きさに合わせて、上記に限定されることなく、適宜選択すればよい。
【0020】
(2)乾燥処理
上記にしたがって成形した素材は、次いで乾燥処理する。乾燥処理としては、凍結状態のままの真空凍結乾燥、その他マイクロ波真空乾燥、遠赤外真空乾燥法が例示される。
【0021】
素材としては、前記した各種食品が広く使用されるが、おむすびの具材として多用される素材が好適に使用される。その好適例としては、鮭、たらこ、マグロ、おかか、シーチキン、梅肉、納豆等が挙げられる。具材の内、加熱処理を必要とする素材は加熱して可食化した後、粉砕処理等を行い、梅肉や納豆のように加熱処理する必要のない素材は、そのまま(必要あれば調味し)、ペースト化、粉砕処理等を行う。その際、水分含量を50〜90%に調整しておくと、具入りおむすびの製造に更に適した成形乾燥具材が得られる。
【0022】
本発明は、このようにしてなる成形乾燥具材の製造に関するものであるが、更に本発明は、この成形乾燥具材を用いて具入りおむすびを製造する方法及びそれによって得られた具入りおむすびにも関するものである。本発明に係る具入りおむすびを製造するには、該成形乾燥具材を、炊き上った白米、おこわ、麦飯、炊きこみご飯、栗ご飯、五目ご飯、茶飯その他成形可能なご飯製品の内部(通常は中心部に1個所、必要あれば各所に2個所以上、なおその場合、成形乾燥具材の種類を変えてもよい)に入れておむすびを作り、これを室温に30分〜3時間程度放置することにより、内部の具材は充分に吸水して復元し、食感もよくおいしい乾燥前の素材に戻り、きわめて美味な具入りおむすびが出来る。
【0023】
【発明の効果】
本発明においては、成形乾燥具材を使用して具入りおむすびを製造するため、生の具材とは異なり、計量、移送、取扱い、操作が非常に容易であり、したがって、手作業はもちろんのこと、機械化ないし工業的処理が可能である点で非常に特徴的である。
【0024】
また本発明によれば、具材の種類、炊飯の水分や温度によって成形乾燥具材の復元時間を操作することが可能であるので、販売する時間に合わせて、あらかじめ調製時間を計算しておき、工場ないし売場で成形乾燥具材を炊飯内部に入れておけば、その時間に具材が復元して食べ頃になっている。そのうえ、本発明においては成形乾燥具材を使用するため、貯蔵、保管しても腐敗することがなく、ご飯さえ炊飯すればいつでもおにぎりが食べられ、製造あるいは販売することができる。更にまた本発明によれば、種類の異なる具材を入れた新規なおにぎりも製造、販売することができる。
【0025】
以下、本発明の実施例について述べる。
【0026】
【実施例1】
紅鮭の切り身1kgに食塩を適量加え味付けを行う。その切り身を遠赤外線オーブンにて中心まで火がとおる程度に、表面に焼き色が付くように焼く。焼いた切り身は骨、皮などを除き、ほぐし機などにより細かくほぐす。この時点で約600gの鮭のほぐし身を得た。次に、デキストリン(DE=8)20%、バレイショ澱粉2%からなる加熱糊化した水溶液を用意し、先の鮭ほぐし身600gに対し300gを加えてよく混合する。混合し終わったら深さ10mm、1辺30mmの三角形(角にRをつける)のプラスチック製成形用トレイにすりきり量充填する。これをマイナス25℃の冷凍庫に3時間以上おいて冷凍させたのち真空凍結乾燥して、乾燥成形鮭約350gを得た。
【0027】
炊飯ジャーで白米を炊き、炊き上がったご飯を用いてその中心に先の乾燥成形鮭1個を入れ、手で握っておむすびとした。そのまま室温に置いて2時間後に食したところ、中心の鮭は吸水して戻っており、食感もよくおいしい焼き鮭のおむすびが出来上がっていた。
【0028】
【実施例2】
生食用たらこ1kgをガスオーブンで中心まで火がとおる程度に、表面に焼き色が付くように焼く。焼いたたらこは表面の皮を取り除き、ほぐし機などにより細かくほぐす。この時点で約650gの焼きたらこを得た。次に、デキストリン(DE=8)10%、マルチトール10%、キサンタンガム0.3%からなる粘性ある水溶液を用意し、先のたらこのほぐし身650gに対し350gを加えてよく混合する。混合し終わったらこれを径30mmのケーシング包材に充填しマイナス15℃以下で冷凍する。冷凍棒状品のケーシング包材を除去して、スライサーにて10mm厚に切断する。この冷凍品を遠赤真空乾燥して乾燥成形焼きたらこ約270gを得た。
実施例1同様に焼き上がった白米でおむすびを作って食したところ、食感もよくおいしい焼たらこのおむすびが出来上がっていた。
【0029】
【実施例3】
梅干1kgの種を除きペースト状にすると、約700gの梅肉ペーストが得られる。次にデキストリン70g、水700gを用意し、先の梅肉ペースト700gに加えてよく混合する。混合し終わったら、深さ15mm、20mm四方の成形トレイ容器に移してマイナス20℃以下で完全に冷凍し真空凍結乾燥して、成形乾燥泡具材約300gを得た。
実施例1同様に炊き上がった白米でおむすびを作って食したところ、食感もよくおいしい梅のおむすびが出来上がっていた。
【0030】
【実施例4】
マグロの水煮1kgをフレーク状にする。次ぎにマヨネーズ500g、デキストリン250g、水2kgを加えてよく混合する。混合し終わったら、径30mmのケーシング泡材に充填しマイナス15℃以下で冷凍する。冷凍棒状品のケーシング包材を除去して、スライサーにて10mm厚に切断する。この冷凍品を凍結真空乾燥して乾燥成形ツナマヨネーズ具材を約900g得た。
実施例1同様に炊き上がった白米でおむすびを作って食したところ、食感もよくおいしいツナマヨのおむすびが出来上がっていた。

Claims (8)

  1. おむすびに適した素材を細砕し、ほぐし、及び/又は、ペースト化した後、これを固めて成形し、次いで凍結後、真空乾燥させて、比較的低水分でも復元しうるようにしてなること、を特徴とするおむすび用成形乾燥具材。
  2. おむすびに適した素材を細砕し、ほぐし、及び/又は、ペースト化し、水分量は50〜90%に調整した後、これを固めて成形し、次いで凍結後、真空乾燥させて、比較的低水分でも復元してなること、を特徴とするおむすび用成形乾燥具材。
  3. おむすびに適した素材として、加熱調理をしない素材又は加熱調理済の素材を使用してなること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のおむすび用成形乾燥具材。
  4. おむすびに適した素材を調味処理してなること、を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のおむすび用成形乾燥具材。
  5. 上記細砕した素材を固めて成形する際に、粉末化基材として、澱粉、化工澱粉、糊料、糖アルコール、及び/又は、オリゴ糖類を使用してなること、を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のおむすび用成形乾燥具材。
  6. 凍結真空乾燥、マイクロ波真空乾燥、及び/又は、遠赤外真空乾燥によって真空乾燥処理を行うこと、を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のおむすび用成形乾燥具材。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のおむすび用成形乾燥具材を炊飯内に収容して、炊飯の水分のみで該具材を復元すること、を特徴とする具入りおむすびの製造方法。
  8. 請求項7に記載の方法で製造してなる具入りおむすび。
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