JP3582895B2 - 焼結含油軸受及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不安定な振動を起こし易いスピンドル、例えば軸姿勢が縦向きであるレーザビームプリンタやデジタルコピーのスキャナモータスピンドル等の軸受として用いられる焼結含油軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザビームプリンタやデジタルコピーのスキャナモータは、最近、より高速化・小型化される傾向にあり、例えば、レーザビームプリンタではスピンドルの回転数として毎分1万回以上の高速回転が要求されるようになってきている。その一方で、低コスト化の要望も強く、転がり軸受等に比べて安価な焼結含油軸受の適用が検討されている。しかし、このような高速回転する回転軸を支持する軸受として、内周面(軸受面)が真円形状である通常の焼結含油軸受を用いると、レーザビームプリンタでは、通常、縦軸配置となるので、一般にホワールと呼ばれる振れ回り現象が発生しやすく、安定した回転精度が得られない。
【0003】
図6は、図4に概略的に示す構成のスキャナモータ実機を用いて測定した結果を示す。図4に示すスキャナモータは、ロータ1、および、ハウジング5と一体となったステータからなる電動機の回転軸3を焼結含油軸受4’でハウジング5に対し回転自在に支持したものである。回転軸3の凸形状とした下端部は、ハウジング5の底面中心に配設されたスラスト軸受6で回転自在に接触支持される。焼結含油軸受4’は、軸受面となる内周面が真円形状のものである{図6(a)}。図6に示すように、この構成のスキャナモータでは、回転周波数の1/2の周波数にピークをもつ振れ回り現象(ホワールW)が発生しており{図6(c)}、軸心軌跡(リサージュ図形)が安定していないことがわかる{図6(b)}。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題を解決するため、内周面に複数の軸方向溝を形成して、内周面にステップ状パターンを設けたいわゆるレーリーステップ軸受と呼ばれる焼結含油軸受が実公昭47−36739号、特開平5−180229号などに提案されている。また、これら特許公報において、内周面の凸部の表面開孔率を他の領域よりも小さくすることが併記されている。
【0005】
しかし、図4に示す構成のスキャナモータ実機を用いて測定したところ、内周面の表面開孔率を全領域ほぼ同じに仕上げたものでは、軸振れが大きく、レーザビームプリンタに要求される仕様を満足しなかった。また、凸部の表面開孔率を他の領域部分よりも小さく仕上げたものでは、図7に示すように、軸振れがさらに大きくなると同時に、軸心軌跡(リサージュ図形)が全く不安定なものとなった。これらの現象は、軸受面となる凸部表面で油膜が形成される前に、凹部の開孔から潤滑油が軸受内部に流入してしまうことが主な要因であると推察される。すなわち、レーリーステップ軸受における内周面の凹部は油溜まりとしての役割があり、凹部に潤沢にある潤滑油が、軸回転に伴って、凸部表面と回転軸外周面との間の狭い領域(軸受隙間)に引き込まれることにより動圧作用が発生して、回転軸を安定して支持するのであるが、上述した従来軸受では、凹部が油溜まりとして有効に機能せず、そのため軸受面に充分な油膜が形成できず、安定した回転精度が得られないのである。
【0006】
一方、レーリーステップ軸受を製造する方法としては、例えば、単に外周がステップ形状(矩形断面形状)であるサイジングピンを用いてサイジングすることが考えられるが、サイジングピンを高精度でステップ形状に加工することが難しく、特に、軸受面(凸部表面)を成形する凹状部分の加工が困難で、要求される寸法、真円度、円筒度、面粗さなどの精度を高精度に確保することができなかった。また、一度に凹部と凸部とを仕上げようとすると、塑性変形に無理が生じ、むしれ、欠け等が生じたりするので、形状寸法や表面開孔率などを精度良く管理することができないと同時に、作業効率の低下、不良発生率の増大、トータルコストの増大の要因ともなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み提案されたもので、その目的とするところは、回転軸を安定して支持することのできる焼結含油軸受を提供し、また、そのような焼結含油軸受を高精度にかつ効率良く製造できる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の焼結含油軸受は、焼結合金により多孔質体に形成された軸受本体に潤滑油が含浸されると共に、回転軸が挿通される軸受孔の内周面に、複数の凹部と凸部とが円周方向に交互に形成されたステップ状パターンを有するものにおいて、凹部の表面開孔率を凸部の表面開孔率よりも小さくすると共に、凹部を表面開孔率の異なる2つの領域に分け、回転軸の回転方向に対して、回転側に位置する一の領域の表面開孔率を、反回転側に位置する他の領域の表面開孔率よりも小さくしたものである。凹部の一の領域の表面開孔率は表面積比で0〜10%、凹部の他の領域の表面開孔率は表面積比で3〜20%、凸部の表面開孔率は5〜25%とすると良い。
【0009】
上記のような焼結含油軸受は、通常の焼結含油軸受の製造工程において、軸受本体の略真円形状に成形した軸受孔の内周面に、第1サイジングピンによる第一回目のサイジングと、第2サイジングピンによる第2回目のサイジングを施すことにより製造することができる。すなわち、この発明における第1サイジングピンは、その外周に複数の円弧状成形面と平面状成形面とを円周方向に交互に有し、かつ、円弧状成形面の一部領域に微小突起を有するものであり、第2サイジングピンは、その外周に真円状成形面を有するものであり、第一回目のサイジングでは、第1サイジングピンをサイジング代大で軸受孔の内周面に挿入し、その円弧状成形面および微小突起で凹部のみを所定形状寸法に仕上げると共に、その平面状成形面で凸部を平面状に仮成形し、第2回目のサイジングでは、第2サイジングピンをサイジング代小で軸受孔の内周面に挿入し、その真円状成形面で凸部のみを所定形状寸法に仕上げることにより得ることができる。
【0010】
また、本発明は、焼結合金により多孔質体に形成された軸受本体に潤滑油が含浸されると共に、回転軸が挿通される軸受孔の内周面に、複数の凹部と凸部とが円周方向に交互に形成されたステップ状パターンを有し、凹部の表面開孔率が凸部の表面開孔率よりも小さい焼結含油軸受を製造する方法を提供する。
【0011】
すなわち、上記のような焼結含油軸受は、通常の焼結含油軸受の製造工程において、軸受本体の略真円形状に成形した軸受孔の内周面に、第1サイジングピンによる第一回目のサイジングと、第2サイジングピンによる第2回目のサイジングを施すことにより製造することができる。第1サイジングピンは、その外周に複数の円弧状成形面と平面状成形面とを円周方向に交互に有するものであり、上記第2サイジングピンは、その外周に真円状成形面を有するものであり、第一回目のサイジングでは、第1サイジングピンをサイジング代大で軸受孔の内周面に挿入し、その円弧状成形面で凹部のみを所定形状寸法に仕上げると共に、その平面状成形面で凸部を平面状に仮成形し、第2回目のサイジングでは、第2サイジングピンをサイジング代小で軸受孔の内周面に挿入し、その真円状成形面で凸部のみを所定形状寸法に仕上げることにより得ることができる。
【0012】
凹部が油溜まりとして有効に機能し、凹部に潤沢に保持された潤滑油が凸部表面と回転軸外周面との間の狭い領域(軸受隙間)に引き込まれるため、本来目的としていた動圧作用が充分発揮され、軸振れが抑えられて軸心軌跡(リサージュ図形)も安定したものとなる。
【0013】
また、製造方法として、軸受面となる凸部表面の仕上げを真円状成形面を有する第2サイジングピンで行なうので、矩形断面のサイジングピンを用いる従来方法に比べ、寸法、真円度、円筒度、面粗度などを高精度に確保することができる。さらに、凹部となる領域と凸部となる領域を別々のサイジング工程で行なうので、塑性変形に無理がなく、むしれ、欠け等が生じにくい。そのため、作業効率が向上し、不良発生率の低減、トータルコストの低減につながる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【0015】
図1に示す焼結含油軸受4は、例えば図4に示すようなレーザビームプリンタのスキャナモータにおいて、ロータ1とステータ2との間の励磁力によって高速回転する回転軸3をハウジング5に対して回転自在に支持するものである。この焼結含油軸受4は、焼結合金により多孔質体に形成された軸受本体に、回転軸3が挿通される軸受孔4aを形成すると共に、軸受孔4aの内周面に、複数の凹部例えば少なくとも3本以上の軸方向の凹部4bと、複数の凸部例えば少なくとも3本以上の軸方向の凸部4cとを円周方向に交互に形成してステップ状パターンを設け、さらに、軸受本体に潤滑油を含浸させたものである。凹部4bの表面および凸部4cの表面は、いずれも円弧面である。また、回転軸3の外周面と凸部4cの表面との間には適当な軸受隙間C1が設けられており、この軸受隙間C1は、例えば回転軸3の軸径Rに対してC1/R=2/10000〜500/10000の範囲内で最適値に設定されている。また、回転軸3の外周面と凹部4bの表面との間の軸受隙間C2は、例えば軸受隙間C1に対してC2/C1=1.2〜5.0の範囲内で最適値に設定されている。尚、図1(a)において、軸受隙間C1、C2の大きさ及びステップ状パターンは実際よりもかなり誇張して示されている。
【0016】
この実施例の焼結含油軸受4は、軸受孔4aの内周面において、凹部4bの表面開孔率が凸部4cの表面開孔率よりも小さくなっている。この表面開孔率は、凹部4bが表面積比で0〜10%、凸部4cが表面積比で5〜25%の範囲内とするのが望ましい。
【0017】
凹部4bと凸部4cの表面開孔率を上記のように設定することにより、図2に示すように、回転軸3の回転時(同図に示すA方向)、凹部4bの表面開孔から軸受内部に逃げ込んでしまう潤滑油Sが少なくなり、凹部4bが油溜まりとして有効に機能する。そのため、回転軸3の回転に伴い逃げ場を失った潤滑油Sが回転軸3の外周面と凸部4cの表面との間の軸受隙間C1に引き込まれて動圧が発生しやすく、これにより、回転軸3を安定して支持することができる。上述したように、凹部4bの表面開孔率は0〜10%とするのが望ましい。凹部4bの表面開孔率が10%以上であると、図3に示すように、凹部4bの表面開孔から軸受内部に逃げ込んでしまう潤滑油Sが多くなり、凹部4bが油溜まりとして有効に機能しなくなるからである。また、凸部4cの表面開孔率は5〜25%とするのが望ましい。凸部4cの表面開孔率が25%以上であると、凸部4cの表面開孔から軸受内部に逃げ込んでしまう潤滑油が多くなって動圧発生が減じられるので、回転軸3を安定して支持することができないからである。逆に、凸部4cの表面開孔率が5%以下であると、起動時に回転軸3と凸部4cとの間に潤滑油が瞬時に供給されないので(停止時は回転軸3と凸部4cとが接触しているため)、起動トルクが大きくなり、かつ、摩耗の原因となるからである。
【0018】
この実施例の焼結含油軸受4を組み込んだレーザビームプリンタのスキャナモータ実機(図4に示すものと同様の構成)を用いて測定した結果を図5に示す。図6および図7に比べて、軸振れが小さくリサージュ図形が安定しており{図5(b)}、周波数分析の結果も回転数成分とその高周波成分しかなく、ホワールの発生は見られなかった{図5(c)}。これは、回転軸3の外周面と軸受面である凸部4cの表面との間に油膜が形成され、動圧発生により回転軸3が安定して支持されていることを示している。
【0019】
この実施例の焼結含油軸受4は、通常の焼結含油軸受の製造工程において、以下に説明するサイジング工程を2回行うことによって得ることができる。
【0020】
一般に、焼結含油軸受は、組成材料を所定量配合して秤量した後、混合して圧縮成形し、焼結後、サイジングピンを軸受本体の軸受孔に挿入して軸受面を所定形状寸法に仕上げ、さらに所定の潤滑油を含浸して製品化される。このような製造工程において、図9に示す形状の第1サイジングピンP1を用いて第1回目のサイジングを行ない、次いで、図10に示す形状の第2サイジングピンP2を用いて第2回目のサイジングを行なうことにより、上記実施例の焼結含油軸受4を製造することができる。
【0021】
第1サイジングピンP1は、円周方向に交互に配列された複数の円弧状成形面P1aと平面状成形面P1bとを有し、第2サイジングピンP2は、真円状成形面P2aを有するものである。第1サイジングピンP1の円弧状成形面P1aは、軸受孔4aの凹部4bに対応した形状、寸法、円周方向位相を有する。第2サイジングピンP2の真円状成形面P2aは、第1サイジングピンP1の円弧成形面P1aの外接円径R1よりも小さく、かつ、平面状成形面P1bの内接円径R’1よりも大きな外径R2を有し、この外径R2は軸受孔4aの凸部4cの内径に対応している。
【0022】
第1回目のサイジング工程では、圧縮成形で略真円形状に成形された軸受孔4aの内周面に第1サイジングピンP1をサイジング代大で挿入し、その円弧状成形面P1aで凹部4bとなる領域を所定形状寸法に仕上げる。この時点では、凸部4cとなる領域は、第1サイジングピンP1の平面状成形面P1bに倣って平面形状に仮成形されるだけで、所定形状寸法にはなっていない。
【0023】
第2回目のサイジング工程では、第1回目のサイジング工程を経た軸受孔4aの内周面に第2サイジングピンP2をサイジング代小で挿入し、その真円状成形面P2aで凸部4cとなる領域のみを所定形状寸法に仕上げる。真円状成形面P2aは、その外径R2が上述したような寸法に設定されているため、第1回目のサイジングで平面状に仮成形された領域にのみ接触し、この領域を所定寸法形状の凸部4cに仕上げる。
【0024】
この実施例の製造方法によれば、凹部4bを仕上げる際のサイジング代が、凸部4cを仕上げる際のサイジング代よりも大きくなるので、凹部4bの表面開孔がよく潰れ、凸部4cに比べ、その表面開孔率は小さくなる。そのため、凹部4bは潤滑油が軸受内部に逃げにくい構造となり、油溜まりとして有効に機能する。
【0025】
また、軸受面となる凸部4cの表面を、第2サイジングピンP2の真円状成形面P2aで仕上げるので、矩形断面のサイジングピンを用いた従来方法に比べ、凸部4cの寸法、真円度、円筒度、面粗度などの精度を高精度に仕上げることができる。
【0026】
さらに、凹部4bとなる領域と凸部4cとなる領域を別々のサイジング工程で仕上げるので、塑性変形に無理がなく、むしれ、欠け等が生じにくい。そのため、作業効率の向上、不良発生率の低減、トータルコストの低減につながる。
【0027】
尚、以上のサイジング工程において、成形面に微小突起を設けたサイジングピンを用いることにより、表面開孔をよく潰すことができる。特に、図11に示すように、円弧状成形面P’1aに微小突起P’1cを設けた第1サイジングピンP’1を第1回目のサイジング工程で用いることにより、凹部4bの表面開孔をよく潰すことができ、表面開孔率数%以下を達成することができる。
【0028】
図8に示す実施例は、凹部4bを表面開孔率の異なる2つの領域4b1、4b2に分けたものである。回転軸3の回転方向Aに対して、領域4b1は回転側に位置し、領域4b2は反回転側に位置し、かつ、領域4b1の表面開孔率が領域4b2の表面開孔率よりも小さくなっている。したがって、表面開孔率の大きさは、凸部4c〉領域4b2〉4b1の順になる。表面開孔率は、凹部4bの領域4b1が表面積比で0〜10%、領域4b2が表面積比で3〜20%、凸部4cが表面積比で5〜25%の範囲内とするのが望ましい。領域4b1および領域4b2の円周方向幅は、回転軸3の回転に伴って流れる潤滑油Sが衝突する領域を領域4b1とし、残りの領域を領域4b2として設定する。このような領域4b1の円周方向幅は、使用条件、使用潤滑油の特性等を考慮して設定するが、一般的には、凹部4bの全円周方向幅に対して、領域4b1の円周方向幅を30〜90%、領域4b2の円周方向幅を10〜70%とするのが望ましい。
【0029】
この実施例の焼結含油軸受4は、凹部4b(領域4b1、領域4b2)と凸部4cの表面開孔率が上記のように設定されているので、回転軸3の回転時(同図に示すA方向)、軸受内部から領域4b2の開孔を介して潤滑油Sが滲み出やすく、しかも、この滲み出した潤滑油Sが領域4b1に溜まって油溜まりが形成される。そのため、凹部4bが油溜まりとして、より一層有効に機能する。
【0030】
この実施例の焼結含油軸受4は、上述した実施例の製造工程において、図12に示す形状の第1サイジングピンP”1を用いて第1回目のサイジングを行ない、次いで、図10に示す形状の第2サイジングピンP2を用いて第2回目のサイジングを行なうことにより製造することができる。この実施例の第1サイジングピンP”1は、円弧状成形面P”1aの一部領域に微小突起P”1cを有するものである。微小突起P”1cの円周方向幅は、凹部4bの領域4b1に対応し、円弧状成形面P”1aの円周方向幅は、凹部4bの領域4b2に対応している。
【0031】
第1回目のサイジング工程において、円弧状成形面P”1aの一部領域に微小突起P”1cを有する第1サイジングピンP”1を用いることにより、凹部4bの領域4b1の表面開孔をよく潰すことができるので、領域4b1の表面開孔率を上記のような範囲にすることができる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、軸受面となる凹部の表面開孔率を凸部の表面開孔率よりも小さくすると共に、凹部を表面開孔率の異なる2つの領域に分け、回転軸の回転方向に対して、回転側に位置する一の領域の表面開孔率を、反回転側に位置する他の領域の表面開孔率よりも小さくしたので、回転軸の回転時、凹部の表面開孔から軸受内部に逃げ込んでしまう潤滑油が少なくなり、凹部が油溜まりとして有効に機能する。そのため、凹部に保持された潤沢な潤滑油が凸部と回転軸との間の狭い領域(軸受隙間)に引き込まれて動圧が発生しやすく、これにより、回転軸を安定して支持することができる。また、凸部表面には開孔が確保されているので、起動時、軸受内部の潤滑油が瞬時にして軸受面に供給されるので、起動トルクが小さく、摩耗も少ない。
【0033】
また、製造方法として、軸受面となる凸部を、真円状成形面を有する第2サイジングピンで仕上げるので、矩形断面のサイジングピンを用いた従来方法に比べ、寸法、真円度、円筒度、面粗度などの精度を高精度に仕上げることができる。さらに、凹部となる領域と凸部となる領域とを別々のサイジング工程で仕上げるので、塑性変形に無理が生じず、むしれ、欠け等が生じにくい。そのため、作業効率の向上、不良発生率の低減、トータルコストの低減を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係わる焼結含油軸受を示す横断面図(図a)、縦断面図(図b:図aにおけるb−b断面)である。
【図2】凹部と凸部の周辺部における潤滑油の流れを模式的に示す図である。
【図3】凹部と凸部の周辺部における潤滑油の流れを模式的に示す図である。
【図4】スキャナモータの一般的構成を示す縦断面図である。
【図5】実施例に係わる焼結含油軸受を組み込んだスキャナモータ実機を用いて測定した結果を示す図である。
【図6】従来の焼結含油軸受を組み込んだスキャナモータ実機を用いて測定した結果を示す図である。
【図7】従来の焼結含油軸受を組み込んだスキャナモータ実機を用いて測定した結果を示す図である。
【図8】他の実施例に係わる焼結含油軸受の凹部と凸部の周辺部を示す拡大断面図(図a)、凹部と凸部の周辺部における潤滑油の流れを模式的に示す図(図b)である。
【図9】第1サイジングピンを示す側面図(図a)、断面図(図b:図aにおけるb−b断面)である。
【図10】第2サイジングピンを示す側面図(図a)、断面図(図b:図aにおけるb−b断面)である。
【図11】他の実施例に係わる第1サイジングピンを示す部分側面図(図a)、部分断面図(図b:図aにおけるb−b断面)である。
【図12】他の実施例に係わる第1サイジングピンを示す部分側面図(図a)、部分断面図(図b:図aにおけるb−b断面)である。
【符号の説明】
3 回転軸
4 焼結含油軸受
4a 軸受孔
4b 凹部
4b1 回転側領域
4b2 反回転側領域
4c 凸部
P1 第1サイジングピン
P’1 第1サイジングピン
P”1 第1サイジングピン
P2 第2サイジングピン

Claims (4)

  1. 焼結合金により多孔質体に形成された軸受本体に潤滑油が含浸されると共に、回転軸が挿通される軸受孔の内周面に、複数の凹部と凸部とが円周方向に交互に形成されたステップ状パターンを有する焼結含油軸受において、
    上記凹部の表面開孔率が上記凸部の表面開孔率よりも小さく、
    上記凹部が表面開孔率の異なる2つの領域を有し、回転軸の回転方向に対して、回転側に位置する一の領域の表面開孔率が、反回転側に位置する他の領域の表面開孔率よりも小さいことを特徴とする焼結含油軸受。
  2. 上記凹部の一の領域の表面開孔率が表面積比で0〜10%、上記凹部の他の領域の表面開孔率が表面積比で3〜20%、上記凸部の表面開孔率が5〜25%であることを特徴とする請求項1に記載の焼結含油軸受。
  3. 軸受本体の略真円形状に成形した軸受孔の内周面に、第1サイジングピンによる第一回目のサイジングと、第2サイジングピンによる第2回目のサイジングを施して、請求項1又は2の焼結含油軸受を製造する方法であって、
    上記第1サイジングピンは、その外周に複数の円弧状成形面と平面状成形面とを円周方向に交互に有するものであり、上記第2サイジングピンは、その外周に真円状成形面を有するものであり、
    第一回目のサイジングでは、上記第1サイジングピンをサイジング代大で上記軸受孔の内周面に挿入し、上記円弧状成形面で上記凹部のみを所定形状寸法に仕上げると共に、上記平面状成形面で上記凸部を平面状に仮成形し、
    第2回目のサイジングでは、上記第2サイジングピンをサイジング代小で上記軸受孔の内周面に挿入し、上記真円状成形面で上記凸部のみを所定形状寸法に仕上げることを特徴とする焼結含油軸受の製造方法。
  4. 軸受本体の略真円形状に成形した軸受孔の内周面に、第1サイジングピンによる第一回目のサイジングと、第2サイジングピンによる第2回目のサイジングを施して、請求項又はの焼結含油軸受を製造する方法であって、
    上記第1サイジングピンは、その外周に複数の円弧状成形面と平面状成形面とを円周方向に交互に有し、かつ、上記円弧状成形面の一部領域に微小突起を有するものであり、上記第2サイジングピンは、その外周に真円状成形面を有するものであり、
    第一回目のサイジングでは、上記第1サイジングピンをサイジング代大で上記軸受孔の内周面に挿入し、上記円弧状成形面および微小突起で上記凹部のみを所定形状寸法に仕上げると共に、上記平面状成形面で上記凸部を平面状に仮成形し、
    第2回目のサイジングでは、上記第2サイジングピンをサイジング代小で上記軸受孔の内周面に挿入し、上記真円状成形面で上記凸部のみを所定形状寸法に仕上げることを特徴とする焼結含油軸受の製造方法。
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