JP3582811B2 - 立向エレクトロガス溶接装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、立向エレクトロガス溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
立向自動溶接法としてエレクトロガス溶接が造船,円筒形貯油タンクをはじめ鉄骨,橋梁,重電機器,製鉄機械等の鋼壁溶接に主として用いられている。エレクトロガス溶接において電圧,電流を上昇して入熱を上げると、高能率であるが、高張力鋼の溶接には溶接入熱量が大きいために溶接金属や母材熱影響部等の切欠靭性を劣化させる要因となる。
【0003】
特に最近は熱影響部の健全性を保つために低入熱溶接が強く要求される傾向にあり、このような要求に対して、細径フラックス入りワイヤを用い板厚方向に高速振動でアーク点を移動させるエレクトロガス溶接は、開先断面積を極力小さくした挟開先溶接を低入熱で高能率におこなえるため、鋼壁の立向溶接に適している。
【0004】
このようなエレクトロガス溶接を行なう装置の概略を説明すると、垂直に立てられ隣り合う2鋼板の間の開先〔垂直方向(上下方向)zに延びる〕の裏側に、ガラステープを介して自然空冷あるいは水冷の銅当金を固定し、表側には水冷の摺動銅当金を当てて、この摺動銅当金の溝(開先に対向)と開先で囲まれる空間に溶接用扁平カーブドチップ(溶接ト−チの先部材)を挿入し、これを板厚方向xに高速振動させながら、カ−ブドチップを通して細径フラックス入りワイヤを該空間に連続的に供給し、かつカ−ブドチップ(溶接ト−チ)および摺動銅当金を連続的に上方(z)に駆動しながら、開先の立向溶接を行なう。
【0005】
溶接トーチ,ト−チ振動装置および摺動銅当金は、溶接の進行に伴って自動的に高速,低速に切り換り速度制御されながら上昇する溶接台車に搭載されている。シールドガスは炭酸ガスを使用し、摺動銅当金の上部に設けられたノズルより開先空間に送り込み、溶接トーチは所定のサイクルで、鋼板の厚み方向xに振動させる。このようにして挟開先を欠陥なく溶接すると同時に、高速振動と細径フラックス入りワイヤの連続送給との相乗効果によって、波形が非常に細かい美しいビード外観が得られる(特公昭54−148155号公報,特公昭63−66634号公報,特公平1−22067号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような立向エレクトロガス溶接が適用できる開先の深さ(鋼板の厚み)は60mm程度までであり、板厚がこれ以上の極厚鋼になると開先部の端縁部に溶込み不良が生じるなど、部分的な溶込み不良を生じ易い。
【0007】
本発明は、溶込み不良なく板厚が厚い鋼板を溶接することを第1の目的とし、これを能率良く行なうことを第2の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)実質上垂直に立てられた鋼板(WL,WR)の上下方向(z)に延びる開先(α)に、フラックス入りワイヤ(w1,w2)を供給しつつ、上方向(z)に溶接する、本発明の立向エレクトロガス溶接装置は、
前記開先(α)内に先端が進入する第1電極(T1);
前記開先(α)内の、第1電極(T1)の先端よりも鋼板の板厚方向xで開先開口側に近い位置に進入する第2電極(T2);
第1電極 (T1) に正極性アークを発生する電圧を印加し、第2電極 (T2) に逆極性アークを発生する電圧を印加する、溶接電源( 10,20 );
走行駆動用モータを含み、前記開先(α)に沿って上昇する台車(100);および、
前記台車(100)に支持され、第1および第2電極(T1,T2)を、板厚方向xに揺動駆動する振動手段(E);
を備えることを特徴とする。なお、理解を容易にするためにカッコ内には、図面に示し後述する実施例の対応要素又は対応事項の記号を、参考までに付記した。
これによれば、開先(α)の深さ方向(x)の2点すなわち開先の奥側と開口側で溶融プ−ルにア−クを介して入熱が行なわれるので、開先横断面において温度分布が均一化する。更に、振動手段(E)が第1および第2電極(T1,T2)を、板厚方向xに揺動駆動するので、開先の深さ方向(x)の温度分布が更に均一化し、したがって厚みが60mmを越える極厚鋼も、比較的に均一な溶込みで溶接しうる。また、当然のことながら、一電極を用いる場合よりも溶接速度が2倍程度となり、溶接作業能率が向上する。
正極性ア−ク溶接ではア−クの広がりがあり溶込みが広く浅いので、開先の底まで十分にア−クが届き、底部の溶込みが良好となる。一方逆極性ア−クはア−クの集中性が高いので、これが2電極のア−クの干渉を避けるのに好都合である。
フラックス入りワイヤが各電極を通して溶融プ−ルに向けて送給されてア−クにより溶融し、これにより溶融プ−ルに溶融金属および溶融スラグが順次に供給され、溶融金属は開先を埋めて行き、溶融プ−ル上の溶融スラグは、開先の開口を覆う摺動銅当金が溶接の進行に伴って上昇するのに従って、順次摺動銅当金と溶接ビ−ドとの間に流入し、溶接ビ−ド上に固化して行き、これにより消費されて行くが、ア−クにより溶融スラグの流れが部分的に妨げられるので、溶融スラグ厚(深さ)は、開先の開口側よりも奥側で厚く(深く)なる。本発明のように2電極を用いる場合には、開先の開口側の第2電極(T2)を通して送給される溶接ワイヤと溶融プ−ルとの間に発生するア−ク(第2ア-ク)が、それより奥側の溶融スラグの開口側への移動を抑制するように作用するので、奥側で溶融スラグ厚が厚くなり易い。ア−クによりスラグスパッタが発生し溶融スラグ厚が厚いとスラグスパッタが強くノズルチップに付着する確率が高くなる。溶接開始前に、前の溶接作業で付着したスパッタを除去したり、ノズルチップを交換したりするが、ノズルチップのスパッタ付着確率が高くなると、この作業が多くなり作業能率が低下するが、正極性ア−ク溶接ではスラグスパッタが少いので、奥側を正極性とする本実施形態によれば、スラグスパッタを生じ易い奥側のスラグスパッタ発生が抑制され、上述の溶込みの均一化に加えて、作業能率の低下を抑制する効果も得られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
(2)前記第2電極 (T2) への給電回路に、第2電極 (T2) に流れる溶接電流を検出するための電流検知回路 (30)を備える。第2電極 (T2) は逆極性アークを発生するものであり、アーク電流値がより安定であるので、検出した溶接電流に基づくワイヤの突き出し長を一定にするための台車 (100) の上昇制御が安定する。
【0010】
フラックス入りワイヤが各電極を通して溶融プ−ルに向けて送給されてア−クにより溶融し、これにより溶融プ−ルに溶融金属および溶融スラグが順次に供給され、溶融金属は開先を埋めて行き、溶融プ−ル上の溶融スラグは、開先の開口を覆う摺動銅当金が溶接の進行に伴って上昇するのに従って、順次摺動銅当金と溶接ビ−ドとの間に流入し、溶接ビ−ド上に固化して行き、これにより消費されて行くが、ア−クにより溶融スラグの流れが部分的に妨げられるので、溶融スラグ厚(深さ)は、開先の開口側よりも奥側で厚く(深く)なる。本発明のように2電極を用いる場合には、開先の開口側の第2電極(T2)を通して送給される溶接ワイヤと溶融プ−ルとの間に発生するア−ク(第2ア−ク)が、それより奥側の溶融スラグの開口側への移動を抑制するように作用するので、奥側で溶融スラグ厚が厚くなり易い。ア−クによりスラグスパッタが発生し溶融スラグ厚が厚いとスラグスパッタが強くノズルチップに付着する確率が高くなる。溶接開始前に、前の溶接作業で付着したスパッタを除去したり、ノズルチップを交換したりするが、ノズルチップのスパッタ付着確率が高くなると、この作業が多くなり作業能率が低下するが、正極性ア−ク溶接ではスラグスパッタが少いので、奥側を正極性とする本実施形態によれば、スラグスパッタを生じ易い奥側のスラグスパッタ発生が抑制され、上述の溶込みの均一化に加えて、作業能率の低下を抑制する効果も得られる。
【0011】
(3)第1電極(T1)と第2電極(T2)の間の板厚方向xの距離を調整する手段(J);を更に備える。これによれば、開先の横断面形状(深さ,幅)に対応して、開先辺各部で溶込みが所望の分布となるように、両電極間の距離(極間)を調整しうる。
【0012】
本発明の他の目的および特徴は、図面を参照した以下の実施例の説明より明らかになろう。
【0013】
【実施例】
図1に本発明の一実施例の平面図を示す。図1において紙面に対して垂直に裏面より表面に向う方向を垂直方向(上下方向)zの上方向とし、矢印yの示す方向を水平横方向(左右方向)yの左方向とするとともに、矢印xの示す方向を板厚方向xの手前方向とする。つまり、図1は本実施例を上方より見下した図であり、図1に1点鎖線2Aで示す方向より見た背面を図2に、図1に1点鎖線3Aで示す方向より見た左側面を図3に示す。以下、各図において矢印zの示す方向を上方向、矢印yの示す方向を左方向とするとともに、矢印xの示す方向を手前(開先の開口側/矢印が示す方向と反対の方向が奥側)とする。
【0014】
垂直に立てられた鋼板は、左垂直板WLと右垂直板WRとからなり、左垂直板WLの右端縁には、右垂直板WRの左端縁が対向して、両板の間に開先αが形成されている。左垂直板WLの右端面と右垂直板WRの左端面は、それぞれ傾斜しており、開先αは、x方向の、第1,第2溶接ト−チT1,T2に対向する平板面(以下表面と称す)の位置で開口幅が広い。
【0015】
本実施例においては、右垂直板WRの表面に、平板状のレ−ルLが、垂直かつ右垂直板WRの表面に対して平行に固着されている。このレ−ルLに台車100が装着されている。
【0016】
1.レ−ルLおよびそれを支持する構造
レ−ルLは、その上端部に固着されたレ−ルスタンドLsおよび下端部に固着された同型のレ−ルスタンド(図示せず)で、右垂直板WRに固着されている。図1を参照すると、レ−ルスタンドLsは、アルミ板Ls1の表面に支持ア−ムLs3a,Ls3bを垂直に固着し、裏面にはマグネットLs2a,Ls2bを固着したものであり、マグネットLs2a,Ls2bが右垂直板WRに吸着することにより、アルミ板Ls1が右垂直板WRに平行に結合し、右垂直板WRに対して支持ア−ムLs3a,Ls3bが直立している。レ−ルLは、支持ア−ムLs3a,Ls3bによりアルミ板Ls1に平行に支持されており、右垂直板WRに平行となる。レ−ルLには、それと平行に延びるラックLaが固着されている。レ−ルLの側端面は、台車100の車輪のx方向位置を規定するために、山型(図1)となっており、台車100で支持された左/右のロ−ラ101,102がレ−ルLを挟んでいる。なお、レ−ルLが長い場合には、上述の上,下レ−ルスタンドLsの間に、更に1つ以上の同様な構造のレ−ルスタンドを固着する。
2.台車100
台車100は、レ−ルLのラックLaに噛み合うピニオン103を有し、台車100内部の昇降駆動モ−タ(図示せず)が減速機(図示せず)を介して該ピニオン103を回転駆動すると、レ−ルLに沿って上移動(上昇)または下移動(下降)する。
【0017】
3.ト−チのy方向調節機構A
図1及び図2を参照されたい。台車100には、摘子a1とそれに連結された台車100内部にある図示しない歯車機構および、該歯車機構に連結され、台車100にy方向に摺動可能に支持されたスライド棒a2(図2)からなるy方向調節機構Aがある。台車100内部の歯車機構は、摘子a1の回転をスライド棒a2の左右方向(y方向)の動きに変換する。すなわち、摘子a1を右ねじの方向に回すと、歯車機構を介してスライド棒a2が右方向に移動する。摘子a1を右ねじの方向と反対の方向に回すと、各要素が逆に作用してスライド棒a2が左方向に移動する。
【0018】
スライド棒a2の左先端に固着された連結子acには、ト−チのz方向調節機構Cのベ−スc3が固着支持されている。スライド棒a2のy方向の移動に伴いz方向調節機構Cが同じくy方向に移動する(y方向調節機構Aによるト−チT1,T2のy位置調整)。
【0019】
4.ト−チのz方向調節機構C
ト−チのz方向調節機構Cのベ−スc3には、z方向に延びる回転軸c2が回動自在に貫通し、ベ−スc3の上面より突出した回転軸c2の上端には、摘子c1が固着している。ベ−スc3の内部において、回転軸c2の周面は螺子であり、図示しないスライダがねじ結合している。該スライダには左方向に延びるア−ムが固着され、該ア−ムの左先端は、ベ−スc3の左側面にz方向に切られたスリット(図示せず)より突出し、スリットに沿ってz方向に案内される。摘子c1を右ねじの方向に廻すと、回転軸c2にねじ結合したスライダ及びそれに固着されたア−ムが、ベ−スc3の左側面に切られたスリットに案内されて、上駆動される。また、摘子c1を右ねじと反対の方向に廻すと、回転軸c2にねじ結合したスライダ及びそれに固着されたア−ムが、スリットに案内されて、下駆動される。
【0020】
ト−チのz方向調節機構Cのア−ムの先端には、後述するト−チのx方向調節機構Dが支持されている。従って、摘子c1を右ねじ方向あるいは、その反対方向に回転させることにより、x方向調節機構D(ト−チT1,T2)を上駆動あるいは、下駆動することができ、ト−チT1,T2のz方向位置を調節することができる。
【0021】
5.ト−チのx方向調節機構D
ト−チのx方向調節機構Dは、「ト−チのz方向調節機構C」と同じ機構であり、「ト−チのz方向調節機構C」をxz面に水平な状態で摘子が後方にくるように90度回転させたものである。摘子d1を右ねじの方向に廻すと、x方向に延びる回転軸d2にねじ結合したスライダ及び該スライダに固着された左方に延びるア−ムが、ベ−スd3の左側面に切られたx方向に延びるスリットに案内されて、開先の手前方向に駆動される。また、摘子d1を右ねじと反対の方向に廻すと、回転軸d2にねじ結合したスライダ及び該スライダに固着されたア−ムが、スリットに案内されて、開先の奥側に駆動される。
【0022】
ト−チのx方向調節機構Dのア−ムの先端には、後述するト−チをx方向に揺動駆動するオシレ−ト機構Eが固着支持されている。従って、摘子d1を右ねじ方向あるいは、その反対方向に回転させることにより、ト−チのオシレ−ト機構E(ト−チT1,T2)を開先の手前方向に移動あるいは、開先の奥側に移動させることができ、ト−チのx方向位置を調節することができる。
【0023】
6.ト−チのオシレ−ト機構E
さらに、図3を参照されたい。ト−チのx方向調節機構Dのア−ムには、オシレ−ト機構Eのベ−スe1が固着されている。オシレ−ト機構Eは、電気モ−タ(図示せず)およびその回転を、x方向に延び、その前端がベ−スe1の前面を摺動可能に貫通する支持ア−ムe2の、x方向の往,復動に変換する振動機構(図示せず)を内蔵している。支持ア−ムe2の前端には、ト−チの進入角度調整機構Fの固定プレ−トf1が装着されている。
【0024】
7.ト−チの進入角度調整機構F
オシレ−ト機構Eで支持された固定プレ−トf1には、弧状の案内溝f1a(図2,図3)がある。固定プレ−トf1には、略3角形平板である調節プレ−トf2が面接触している。先端に摘子を有する角度調節ねじf2aは、先端のねじ部が細径となっており、このねじ部が、固定プレ−トf1の案内溝f1aを貫通して、調節プレ−トf2のねじ穴にねじ込まれている。このねじ込みにより、調節ねじf2aが、固定プレ−トf1に調節プレ−トf2を締め付けるので、調節プレ−トf2が固定プレ−トf1に固定される。調節プレ−トf2の左面には、左方に延びる支持部材f2bが立てられている。
【0025】
8.ト−チの左右角度調整機構G
調節プレ−トf2に立てられた支持部材f2bの左端には、ト−チの左右角度調整機構Gの支持板g2の上端が、x方向に延びるピンg2a(図2)を中心に回動自在に支持されている。支持板g2には支持板g2の側面に対して長手方向に延びる楕円状の案内溝g2b(図2,図3)が貫通しており、該案内溝g2bにねじ棒g1aが通る。ねじ棒g1aは、左先端に摘子g1が固着され、右先端がねじになっている。ねじ棒g1aの右端のねじ部は、調節プレ−トf2上方に開けられたねじ穴f2d(図1,図2)にねじ結合している。
【0026】
支持板g2の先端には、第1溶接ト−チT1を挾持する第1ト−チ挾持部材h1が支持されている。摘子g1を右ねじの方向に回転させると、支持板g2の下端が、ピンg2a(図2)を中心に調節プレ−トf2に近づく方向に回転し、第1ト−チ挾持部材h1(第1溶接ト−チT1)が図2において反時計方向に回転する。また、第1ト−チ挾持部材h1には、接続部材h3および極間調節機構Jを介して、第2溶接ト−チT2を挾持する第2ト−チ挾持部材h2が支持されており、第1ト−チ挾持部材h1(第1溶接ト−チT1)の回転に伴い、第2ト−チ挾持部材h2(第2溶接ト−チT2)が図2において反時計方向に回転する。調節プレ−トf2と支持板g2の間には、反発スプリングg1bが介挿されており、反発スプリングg1bの中心をねじ棒g1aが通る。従って、摘子g1を右ねじの方向と反対方向に回転させると、反発スプリングg1bの反発力に押されて支持板g2の下端が、ピンg2a(図2)を中心に調節プレ−トf2より離れる方向に回転し、第1ト−チ挾持部材h1(第1溶接ト−チT1)及び第2ト−チ挾持部材h2(第2溶接ト−チT2)が図2において時計方向に回転する。
9.第1,第2溶接ト−チ支持機構H
第1ト−チ挾持部材h1は、支持板g2の下端に固着支持された板状部材と、それとヒンジ結合したもう一枚の板部材の間に第1ト−チT1を挾持している。ハンドルh1aはト−チ保持のロックと解除を行なうものであり、ハンドルh1aを廻わしてロックを解除し、第1ト−チ挾持部材h1から第1溶接ト−チT1を取り外すことができる。
【0027】
支持板g2の下端に固着支持された第1ト−チ挾持部材h1の板状部材には、その前方下方に接続部材h3が固着されている。さらに、接続部材h3には極間調節機構Jが支持されており、第2ト−チ挾持部材h2は極間調節機構Jに支持されている。第2ト−チ挾持部材h2は、第1ト−チ挾持部材h1と同型であるが、第1ト−チ挾持部材h1がxz面に平行にしかもヒンジ結合部を左方に向けている時には(図2)、第2ト−チ挾持部材h2はxy面に平行にしかもヒンジ結合部を下方に向けている(図2)。第2ト−チ挾持部材h2は、極間調節機構Jに支持された板状部材と、それとヒンジ結合したもう一枚の板部材の間に第2ト−チT2を挾持している。ハンドルh2aはト−チ保持のロックと解除を行なうものであり、ハンドルh2aを廻わしてロックを解除し、第2ト−チ挾持部材h2から第2溶接ト−チT2を取り外すことができる。
【0028】
10.極間調節機構J
接続部材h3には極間調節機構Jが支持されている。y方向に延び、先端に摘子j1のついた回転軸のもう一端は、極間調節機構Jの箱型のベ−スj2に進入しており、回転自在である。ベ−スj2の下面にはx方向に延びるスリットが開いている。極間調節機構Jのベ−スj2に進入した該回転軸の先端には、図示しないピニオンが固着されており、該ピニオンにx方向に延び、該方向にスライドするラック(図示せず)が噛み合う。該ラックには、下方に延びるア−ムが装着されており、該ア−ムの先端は、ベ−スj2の下面にあるx方向に延びたスリットより突出し、そこに第2ト−チ挾持部材h2が固着されている。摘子j1を回転させることにより、ベ−スj2内部にあるピニオンが回転し、それに噛み合うラックがx方向にスライドし、該ラックにア−ムにより固着された第2ト−チ挾持部材h2がx方向に移動し、第2ト−チ挾持部材h2に支持された第2溶接ト−チT2が、第1溶接ト−チT1に近づき、あるいは第1溶接ト−チT1より遠ざかる。すなわち、極間を調整することができる。
【0029】
11.銅当金のx方向駆動機構B
図2を参照すると台車100には、銅当金のx方向駆動機構Bが装着されている。x方向駆動機構Bはスプライン軸b3を支持し、ベ−スb2内の駆動機構を介してその摘子b1を廻すことによりスプライン軸b3のy位置を定める。スプライン軸b3には支持部材b4が固着され、さらに、支持部材b4に固着された支持部材b5により銅当金の押し付け機構Kが支持されている。
【0030】
12.銅当金の押し付け機構K
銅当金の押し付け機構Kは、銅当金x方向駆動機構Bの支持部材b5に支持される。図4の(a)には、図1に1点鎖線4Aで示す押し付け機構Kの縦断面を示し、図4の(b)には、図4の(a)の4B−4b線断面を示す。支持部材b5で支持されたスリ−ブk1にはボスk5が挿入されてスリ−ブk1に一体に固着されている。ボスk5にはスプライン穴があり、この穴に、外周面にスプライン溝を切った支持ア−ムk4が挿入されており、この支持ア−ムk4は、ボスk5に対してy方向に移動自在であるが回転は阻止されている。スリ−ブk1には、摘子k3が付いた突出し調整スリ−ブk2がねじ込まれている。支持ア−ムk4を、突出し調整スリ−ブk2で支えられた圧縮コイルスプリングk6が、スリ−ブk2を開先に近付く方向に押している。支持ア−ムk4には、スリ−ブk2および圧縮コイルスプリングk6を貫通するねじ棒k4aがねじ込まれており、このねじ棒k4aの頭部が、スリ−ブk1から支持ア−ムk4が脱落するのを防止する。
【0031】
支持ア−ムk4の先端には、z方向に延びるピンk9を中心に回動自在に支持ブロックk11が装着されている。支持ブロックk11は、y方向に延びるピンk12aを中心に回動自在に、銅当金Pを保持している。したがって、銅当金Pは、支持ア−ムk4に対して、z軸およびy軸を中心とする回動が可能である。z軸を中心とする回動は、銅当金Pが2垂直板WL,WRに同時に密着するのを許し、y軸を中心とする回動は、銅当金Pが、2垂直板WL,WRのx方向の傾斜又はうねりに対して倣うように密着するのを許す。
【0032】
摘子k3を時計方向に廻わすと調整スリ−ブk2がスリ−ブk1の内部に進入し圧縮コイルスプリングk6を介して支持ア−ムk4が左方に押され、これにより銅当金Pが2垂直板WL,WRに密着する。摘子k3を更に時計方向に廻わすと、2垂直板WL,WRに銅当金Pを押し付ける力が強くなる。摘子k3を反時計方向に廻わすと押し付け力は弱くなり、更に反時計方向に廻わすと銅当金Pが2垂直板WL,WRから離れる。前方に垂直板WL,WRがないときに摘子k3を、スリ−ブk1に対する調整スリ−ブk2のねじ込み限度まで、時計方向に廻しても、ねじ棒k4aの頭部k4bが調整スリ−ブk2から抜けないので、支持ア−ムk4はボスk5から脱落しない。さらに、ねじ棒k4aの長さは本実施例において、頭部k4bの右端面が摘子k3の右端面と面一になった時に圧縮コイルスプリングk6の支持ア−ムk4を介して銅当金Pを2垂直板WL,WRに押し付ける力が2kkとなる長さである。摘子k3の右端面をねじ棒k4aの頭部k4bの右端面k4bと面一になるよう廻し調節することにより常に2kkの押し付け力が銅当金Pにかかる。
【0033】
13.銅当金P
銅ブロックp1の、垂直板WL,WRに対向する面(表面)には、表面ビ−ド形状を規制する、z方向に延びる溝がある。表面に対向する背面には、銅ブロックp1内の冷却水路p1aに連なった2個(注水用と排水用)のホ−スジョイントがあり、その1個のホ−スジョイントjwaが図4に表われている。銅ブロックp1の表面の、ビ−ド形成用の溝には、シ−ルドガス供給管p2が連通した開口p2aがある。このガス供給管p2は、銅ブロックp1に斜めに固着されている。ガス供給管p2の側面には、ホ−スジョイントjkが装着されており、これを通してガス供給管p2にシ−ルドガスが供給される。
【0034】
なお、垂直板WL,WRの開先αの裏面には、溶融メタルおよび溶融スラグのたれ落ちを防止するセラミック製の固形裏当材40(または銅当金でもよい)が固定される。
【0035】
14.溶接手順
以上に説明した各機構により作業者は、第1,第2溶接ト−チT1,T2のy方向位置(A)z方向位置(C)、x方向位置(D)、開先αへの進入角度(F)、そして、第1溶接ト−チT1と、第2溶接ト−チT2との間の距離(極間)を調整することができる。また、銅当金Pのy方向位置(B)を調整し、垂直板WR,WLに押し付ける。こうして、溶接装置の溶接体勢が整うと、作業者は溶接を開始する。
【0036】
図5に第1,第2溶接ト−チT1,T2に電圧を供給するブロック図を示す。図示しない操作盤を介して作業者が溶接開始を指示すると、電源回路20が溶接ト−チT1に正極性(ト−チT1:負極,垂直板WL,WR:正極)の電圧を供給する。電源回路10は、溶接ト−チT2に逆極性(ト−チT1:正極,垂直板WL,WR:負極)の電圧を供給する。また、第1,第2溶接ト−チには、溶接ワイヤw1,w2がそれぞれ、図示しないワイヤ供給装置により一定速度で供給される。
【0037】
電源回路10と垂直板WL,WRの間には、電流検知回路30が介挿されている。溶接の進行に伴い開先α内には、溶融メタルが形成され、さらにその上に溶融スラグが溜る。溶接ト−チのz位置が動かないと、溶融メタルおよび溶融スラグが開先に溜ってゆき、その表面が上昇するので溶接ト−チから突き出されるワイヤの突き出し長が短くなる。電流検知回路30は、溶融メタル(溶融プ−ル)の表面が上昇して第2溶接ト−チT2のワイヤw2の突き出し長が短くなり、電源回路10と垂直板WL,WRの間の電流値が上昇することにより、溶融プ−ルの形成とその上昇を検知する。そして、垂直板WL,WRの間の電流値が所定値より上昇すると、台車100に上昇指示を出す。そして、台車100が上昇指示に従ってレ−ルLに沿って上昇し、再び溶融メタルの表面から第2溶接ト−チT2の先端が離れ、ワイヤw2の突き出し長が長くなり、垂直板WL,WRの間の電流値が所定値以下となると、台車100に停止指示を出す。この動作を繰り返すことにより、溶融プ−ルの表面と第2溶接ト−チT2の先端との距離が略一定となり、ワイヤw2の突き出し長が略一定(本実例においては、35〜40mm)となる。第1溶接ト−チT1は、第2溶接ト−チT2と一体で動く。従って、第2溶接ト−チT2の上昇・停止に合わせて上昇・停止するので、溶融プ−ルと第1溶接ト−チT1の先端との距離も略一定となり、ワイヤw1の突き出し長も略一定となる。
【0038】
ここで、電流検知回路30を、第2溶接ト−チT2に電圧を与える電源回路10と垂直板WL,WRの間に接続したのは、第2溶接ト−チT2は逆極性ア−クを発生するものであり、ア−ク電流値がより安定であるからである。図6には、上記溶接装置によるエレクトロガス溶接の溶接条件の一例を示す。
【0039】
上記溶接装置によれば、2本の溶接ト−チで同時に溶接を行うので板厚の厚い母材を溶接する時においても、開先辺各部の溶込みが良好で、しかも溶接速度が速いので、作業効率が良い。
【0040】
しかも、開先の奥側を溶接する第1溶接ト−チT1を正極性にすることにより、ア−クに広がりが生じ、開先の奥に十分にア−クが及び、開先の底部でも良好な溶込みが得られる。しかも、溶融スラグスパッタが少く、ノズルチップのスパッタ被着が少く、ノズルチップの清掃,交換の頻度の大きな上昇はなく、そのための作業能率の低下は少い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を、上方から下方に見降ろした平面図である。
【図2】図1の1点鎖線矢印2Aで示す方向より見た背面図である。
【図3】図1の1点鎖線矢印3Aで示す方向より見た左側面図である。
【図4】(a)は図2に示す矢印4Aの方向で見た、銅当金の押し付け機構Kの縦断面面であり、(b)は(a)に示す矢印4Bの方向で見た、銅当金の押し付け機構Kの横断面図である。
【図5】本発明のシステム構成を示すブロック図を示す。
【図6】図1に示す溶接装置によるエレクトロガス溶接の溶接条件の一例を示す表である。
【符号の説明】
α :開先 10:電源回路
20:電源回路 30:電流検知回路
40:固形裏当材 100:台車
101,102:ロ−ラ 103:ピニオン
A:ト−チのy方向調節機構
a1:摘子 a2:スライド棒
ac:連結子
B:銅当金のx方向駆動機構
b1:摘子 b3:スプライン軸
b4,b5:支持部材
C:ト−チのz方向調節機構
c1:摘子 c2:回転軸
c3:ベ−スト−チ
D:ト−チのx方向調節機構
d1:摘子 d2:回転軸
d3:ベ−ス
E:ト−チのオシレ−ト機構
e1:ベ−ス e2:支持ア−ム
F:ト−チの進入角度調整機構
f1:固定プレ−ト f1a:案内溝
f2:調節プレ−ト f2a:角度調節ねじ
f2b:支持部材 f2d:ねじ穴
G:ト−チの左右角度調整機構
g1:摘子 g1a:ねじ棒
g1b:反発スプリング g2:支持板
g2a:ピン g2b:案内溝
H:第1,第2溶接ト−チ支持機構
h1:第1ト−チ挾持部材 h1a:ハンドル
h2:第2ト−チ挾持部材 h2a:ハンドル
h3:接続部材
J:極間調節機構
j1:摘子 j2:ベ−ス
K:銅当金の押し付け機構
k1,k2:スリ−ブ k3:摘子
k4:支持ア−ム k4a:ねじ棒
k4b:頭部 k5:ボス
k6:圧縮コイルスプリング k9:ピン
k11:支持ブロック k12a:ピン
L:レ−ル
La:ラック
Ls:レ−ルスタンド
Ls1:アルミ板 Ls2a,Ls2b:マグネット
Ls3a,Ls3b:支持ア−ム
P:銅当金
p1:銅ブロック p1a:冷却水路
p2:シ−ルドガス供給管 p2a:開口
T1:第1溶接ト−チ T2:第2溶接ト−チ
WL:左垂直板 WR:右垂直板
w1,w2:溶接ワイヤ jk,jwa:ホ−スジョイント

Claims (3)

  1. 実質上垂直に立てられた鋼板の上下方向zに延びる開先にフラックス入りワイヤを供給しつつ、上方向に溶接する立向エレクトロガス溶接装置において、
    前記開先内に先端が進入する第1電極;
    前記開先内の、第1電極の先端よりも鋼板の板厚方向xで開先開口側に近い位置に進入する第2電極;
    第1電極に正極性アークを発生する電圧を印加し、第2電極に逆極性アークを発生する電圧を印加する、溶接電源;
    走行駆動用モータを含み、前記開先に沿って上昇する台車;および、
    前記台車に支持され、第1および第2電極を、板厚方向xに揺動駆動する振動手段;
    を備えることを特徴とする立向エレクトロガス溶接装置。
  2. 前記第2電極への給電回路に、第2電極に流れる溶接電流を検出するための電流検知回路を備える請求項1記載の立向エレクトロガス溶接装置。
  3. 第1電極と第2電極の間の板厚方向xの距離を調整する手段;を更に備える請求項1又は請求項2記載の立向エレクトロガス溶接装置。
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