JP3582322B2 - プロペラシャフト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両(例えば、自動車)の動力伝達系を構成する、プロペラシャフトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の動力伝達系においてプロペラシャフトを採用したものがあり、例えばFR(フロントエンジン・リアドライブ)方式の自動車では、エンジンからの駆動力を後輪(駆動輪)へ伝達すべくプロペラシャフトが設けられている。
【0003】
このようなプロペラシャフト100は、一般に、図6に示すように、鉄あるいはアルミニウム等の金属製の中空軸101を備えて構成され、この金属製中空軸101の両端部にはそれぞれ金属製のヨーク102,103が溶接等により固着されている。
また、軽量化を目的として中空軸を繊維強化プラスティック(FRP)製としたものも提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、FR方式の自動車に備えられるプロペラシャフト100は、例えば車両の正面衝突時(又は、追突時)に、図7(a)に示すように、プロペラシャフト100の軸方向に荷重Fが作用すると、図7(b)に示すように、プロペラシャフト100の金属製中空軸101は座屈により変形し、破壊されることになる。
【0005】
このようにプロペラシャフト100の金属製中空軸101が座屈により変形する場合、変形に至るまでに大きな荷重が作用することになるため、車両の衝突時の荷重Fによる衝撃エネルギを十分に吸収することができないことになる。
このため、少なくとも一方のヨークを、金属製中空軸とは回転方向に対しては拘束され、且つ軸方向には所定以上の荷重が加わると変位するように嵌挿して、車両の正面衝突時(又は、追突時)に荷重Fが作用した場合には、ヨークと金属製中空軸との間の摩擦抵抗を利用して車両の衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収できるようにし、乗員の安全性を確保できるようにした技術が提案されている。
【0006】
しかしながら、このような技術では、車両の衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収するのに十分な摩擦力が生じるようにヨークと中空軸とを設計する必要があるが、どんなに正確に設計したとしても製造誤差等により寸法のバラツキが生じるのは避けられないため、ヨークと中空軸との間の摩擦力を正確に調整するのは困難である。
【0007】
また、例えば、特開平4−339022号公報には、繊維強化プラスティック(FRP)製のプロペラシャフトにおいて、接続部材と中空軸の管端部との間に結合部材を設け、接続部材と管端部と結合部材との間の摩擦力によって車両の衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収できるようにした技術が開示されている。この技術は、接続部材と管端部と結合部材との間の摩擦力によって車両の衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収するものであるが、結合部材を介在させて製造誤差等による寸法のバラツキを解消できたとしても、車両の衝突時に発生する接続部材と管端部と結合部材との間の摩擦力を正確に調整するのは難しく、車両の衝突時の荷重による衝撃エネルギを確実に吸収するのは困難である。
【0008】
一方、プロペラシャフトを構成する中空軸を繊維強化プラスティック(FRP)により構成する場合、車両の衝突時に所定以上の荷重が作用するとFRP製中空軸が破壊されるように設計して衝撃エネルギを吸収することも考えられる。
この場合、プロペラシャフトは、エンジンからの駆動力を伝達する役割を担うものであるとともに、車両の衝突時には、衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収する役割を担うものである。
【0009】
このため、プロペラシャフトを構成する中空軸は、エンジンからの駆動力を確実に伝達できるようにねじり強度を大きくする必要がある一方、車両の衝突時に確実に破壊されて衝撃エネルギを吸収できるように軸圧縮強度を小さくする必要がある。
しかしながら、このような条件を満たすようにプロペラシャフトを設計するのは難しく、設計自由度も少ない。
【0010】
また、プロペラシャフトの中空軸をFRPにより構成する場合、ねじり強度を大きくする必要があるため、例えば炭素繊維強化プラスティック(CFRP)等を採用することになるが、このようなねじり強度の大きい炭素繊維強化プラスティック(CFRP)は一般に高価なものであるため、コストがかかることになる。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、コストを低く抑えつつ、設計自由度を多くして設計を容易に行なえるようにしながら、車両の衝突時の荷重による衝撃エネルギの吸収を確実に行なえるようにした、プロペラシャフトを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明のプロペラシャフトでは、金属製中空軸とヨークとを備え、金属製中空軸の少なくとも一方の端部に、金属製中空軸に対して回転方向に拘束され、且つ軸方向に所定以上の荷重が加わると変位するようにヨークの軸部が嵌挿されている。そして、金属製中空軸とヨークとを介してエンジンからの駆動力が伝達される。また、金属製中空軸にはFRP製中空軸が嵌挿されており、また、金属製中空軸の他方の端部にはFRP製中空軸の軸方向への移動を規制する規制手段も設けられている。そして、プロペラシャフトを構成する金属製中空軸の軸方向に所定以上の荷重が加わった場合に、FRP製中空軸の一端にヨークの軸部端部が当接する一方、FRP製中空軸の他端に規制手段が当接し、ヨークと規制手段との間でFRP製中空軸が破壊されることでこの荷重による衝撃エネルギが吸収される。これにより、金属製中空軸及びFRP製中空軸の設計自由度が多くなる。
【0013】
請求項2記載の本発明のプロペラシャフトでは、FRP製中空軸の少なくとも一方の端部側に破壊起点となる脆弱部が備えられており、この脆弱部はFRP製中空軸の該一方の端部に向かうにしたがって肉厚が減少するように形成されている。そして、プロペラシャフトの軸方向に所定以上の荷重が加わった場合には、この脆弱部に応力が集中し、常に、FRP製中空軸の端部から変形(破壊)が開始して、順に変形(破壊)が進行することになり、衝撃エネルギを確実に吸収できるようになる。
【0014】
【発明の実施形態】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の一実施形態にかかるプロペラシャフトは、例えばFR(フロントエンジン・リアドライブ)方式の自動車に備えられ、エンジンからの駆動力を後輪(駆動輪)へ伝達するものである。
【0015】
このプロペラシャフト1は、図1に示すように、アウタシャフト2と、アウタシャフト2の一端部2aに溶接等により固着された固定ヨーク3と、アウタシャフト2の他端部2bに移動可能に組み付けられた可動ヨーク4とを備えて構成され、これらの固定ヨーク3,アウタシャフト2及び可動ヨーク4を介してエンジン(図示せず)からの駆動力を伝達するようになっている。
【0016】
また、このアウタシャフト2にはインナシャフト5が嵌挿されており、プロペラシャフト1を構成するアウタシャフト2の軸方向に所定以上の荷重Fが加わった場合に、このインナシャフト5が破壊されて衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収するようになっている。
このうち、アウタシャフト2は、鉄あるいはアルミニウム等の金属製の中空軸として構成される。
【0017】
このアウタシャフト2は、エンジンからの駆動力を伝達する役割のみを担うものであるため、その設計に際しては、車両衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収するのに必要な強度(例えば、軸圧縮強度)をあまり考慮する必要はなく、主にエンジンからの駆動力を伝達するのに必要な強度(例えば、ねじり強度)を考慮すれば良い。このため、アウタシャフト2の設計自由度が多くなり、容易に設計が行なえるようになる。
【0018】
固定ヨーク3は、例えば金属製であり、先端側に互いに対向する一対のアーム部3a,3bを備えて構成され、これらのアーム部3a,3bにより構成されるユニバーサルジョイントを介してプロペラシャフト1がエンジンの出力軸(図示せず)に連結されている。
なお、この固定ヨーク3は、例えば車両の正面衝突時(又は、追突時)に軸方向に所定以上の荷重が加わった場合に、インナシャフト5の軸方向への移動を規制する規制手段として機能することになる。
【0019】
可動ヨーク(単に、ヨークともいう)4は、例えば金属製であり、先端側に互いに対向する一対のアーム部4a,4bを有し、基端側に軸部4Aを有して構成される。
この可動ヨーク4の軸部4Aには、その外周面の所定の位置にアウタシャフト2の軸方向に沿うようにセレーション4Bが形成されている。なお、セレーション4Bの代わりにスプラインを軸部4Aの外周面に設けた構造としても良い。
【0020】
また、アウタシャフト2の他端部2bには、接合部材6が溶接等により固着されている。
そして、この接合部材6を可動ヨーク4の軸部4Aに形成されたセレーション4Bの位置でかしめることによって、可動ヨーク4がアウタシャフト2の回転方向に対して拘束され、且つ軸方向に対して所定以上の荷重が加わると変位するように固定されている。
【0021】
このように、可動ヨーク4の軸部4Aはアウタシャフト2の他端部2bに嵌挿され、可動ヨーク4がアウタシャフト2の他端部2bに固定されている。
なお、可動ヨーク4の軸部4AのストロークLは、車両のキャビンが潰れないような長さになるように車両毎に適宜調整される。
このように、可動ヨーク4は、アウタシャフト2の回転方向に対して拘束されるように固定されるため、エンジンからの駆動力を確実に伝達できることになる。
【0022】
一方、アウタシャフト2の軸方向に対して所定以上の荷重が加わると接合部材6による可動ヨーク4のセレーション4Bの位置での固定が外れ、可動ヨーク4の軸部4Aがアウタシャフト2の軸方向に沿ってアウタシャフト2内に進入していき、アウタシャフト2内に嵌挿されたインナシャフト5によって衝撃エネルギが吸収されるようになっている。
【0023】
インナシャフト5は、FRP(繊維強化プラスティック)製の中空軸、例えばGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製の中空軸として構成される。
このようにインナシャフト5をFRP製としたのは、FRPは破壊したものがアウタシャフト2内に詰まらないようにすべく肉厚を薄くできる一方、壊れる時の荷重の調整、即ち軸圧縮強度の調整が容易に行なえるという特性を有するからである。
【0024】
このインナシャフト5は、車両衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収する役割のみを担うものであるため、その設計に際しては、エンジンからの駆動力を伝達するのに必要な強度(例えば、ねじり強度)を考慮する必要はなく、車両衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収するのに必要な強度(例えば、軸圧縮強度)のみを考慮すれば良い。このため、インナシャフト5の設計自由度が多くなり、容易に設計が行なえるようになる。
【0025】
具体的には、インナシャフト5は、車両の衝突時の荷重による衝撃エネルギを確実に吸収するのに必要な軸圧縮強度が得られるように、ガラス繊維の巻き角度等の繊維配向が選定され、多数のガラス繊維を巻いて積層した構造が採用される。なお、このガラス繊維の巻き数や巻き角度を調整することによりインナシャフト5の軸圧縮強度を調整することができる。
【0026】
また、ここではコストがかからないGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を採用しているが、FRPの材質を変更することによってもインナシャフト5の軸圧縮強度を調整することもできる。したがって、インナシャフト5の軸圧縮強度の要求度合に応じてFRPの材質を変更すれば良い。例えば、多少コストがかかっても軸圧縮強度を高めたい場合は、炭素繊維強化プラスティック(CFRP)を採用すれば良い。
【0027】
このようにFRPはガラス繊維強化プラスティック(GFRP)に限られるものではなく、コスト等の諸条件を満たすのであれば、炭素繊維強化プラスティック(CFRP)やアラミド繊維強化プラスティック(AFRP)等の他の強化繊維を用いたものであっても良い。
また、インナシャフト5の形状は、応力分布が均一となり、軸圧縮強度の調整が容易である円筒状とするのが好ましい。これは、角状であると衝突時に荷重が作用した場合に角部に応力が集中してしまうため軸圧縮強度の調整が難しくなるからであり、また、プロペラシャフト1は高回転で回転するものであるため、角状であると回転中心が偏心しやすくガタツキの原因になるからである。しかしながら、このような課題を解決できるのであれば、必ずしも円筒状とする必要はない。
【0028】
インナシャフト5は、上述のように構成されるため、例えば車両の正面衝突時(又は、追突時)には、図2に示すように、インナシャフト5の一端に可動ヨーク4の軸部端部4AAが当接する一方、インナシャフト5の他端に固定ヨーク3が当接し、可動ヨーク4と固定ヨーク3との間でインナシャフト5が押し潰されて破壊(圧壊)され、これにより、車両の衝突時の荷重Fによる衝撃エネルギが吸収されることになる。
【0029】
ところで、インナシャフト5の端部には、インナシャフト5の破壊起点となるテーパ部(脆弱部)5aが形成されている。
このテーパ部5aは、例えばインナシャフト5の端部に向かうに従って肉厚が減少するように形成される。インナシャフト5の端部をこのように形成することにより、荷重Fの入力時に強度的に弱くなっているインナシャフト5のテーパ部5aに応力を集中させて、常に、インナシャフト5の端部から変形(破壊)が起きるようにすることができる。
【0030】
これにより、インナシャフト5の強度の弱いところから剪断破壊等により折れて衝突時の衝撃エネルギを吸収できないという事態を防止し、インナシャフト5の端部から順に変形(破壊)させながら衝撃エネルギを吸収することができることになる。
なお、ここでは肉厚を変えることによりテーパ部5aを形成するようにしているが、例えば肉厚を変えずに端部だけ強化繊維の積層数を他の部分よりも少なくして脆弱部を形成するようにしても良い。
【0031】
また、ここでは、インナシャフト5の端部のうち、可動ヨーク4側の端部(図1中、右側)にテーパ部5aを形成するようにしているが、固定ヨーク3側の端部(図1中、左側)にテーパ部5aを形成するようにしても良い。また、インナシャフト5の両方の端部にテーパ部5aを形成するようにしても良い。
また、インナシャフト5の端部に形成される脆弱部の形状は、これに限られるものではなく、インナシャフト5の端部に向かうに従って肉厚が減少するようになっていれば、例えば、図3(a)〜(d)に示すように形成することもできる。
【0032】
つまり、図3(a)は、インナシャフト5の端部にその断面が三角形状となるように脆弱部5bを形成したものを示している。また、図3(b)は、インナシャフト5の端部にその外周が尖るようなテーパ部として脆弱部5cを形成したものを示しており、図3(c)は、インナシャフト5の端部にその断面がV溝になるように脆弱部5dを形成したものを示している。さらに、図3(d)は、インナシャフト5の端部にその断面が円弧状になるように脆弱部5eを形成してものを示している。
【0033】
また、このように構成されるインナシャフト5をアウタシャフト2に嵌挿する際には、高速回転するプロペラシャフト1にガタツキが生じないように、インナシャフト5とアウタシャフト2との間にはゴム等の緩衝材を介在させるのが望ましい。
このように緩衝材を介在させることにより、インナシャフト5とアウタシャフト2との間の寸法誤差も許容されることになり、インナシャフト5とアウタシャフト2とを確実に嵌合させることができることになる。
【0034】
また、このように構成されるプロペラシャフト1は、ここでは、固定ヨーク3が車両前方側、可動ヨーク4が車両後方側になるように車両に配置しているが、この配置については、車両の重量配分を考慮して決定すればよく、固定ヨーク3を車両後方側、可動ヨーク4を車両前方側になるように配置しても良い。
また、ここでは、アウタシャフト2の両端に組み付けられるヨークの構造を固定ヨーク3と可動ヨーク4として異なるものとしているが、これに限られるものではなく、図4に示すように、両方とも可動ヨーク4として構成しても良い。
【0035】
本発明の一実施形態としてのプロペラシャフトは、上述のように構成されるため、以下に示すような作用,効果がある。
例えば、車両の正面衝突時に車体の前方側から衝撃力が加わり、プロペラシャフト1に軸方向から圧縮させるような所定以上の荷重Fが加わったとする。
この場合、接合部材6による可動ヨーク4のセレーション4Bの部分での固定が外れて、可動ヨーク4の軸部4Aがアウタシャフト2内に進入し、可動ヨーク4の軸部端部4AAが車両前方方向に向けて変位する。
【0036】
これにより、可動ヨーク4の軸部端部4AAがインナシャフト5のテーパ部5aに当接して、強度的に弱くなっているテーパ部5aに応力が集中するように荷重Fが加わり、インナシャフト5の軸部に形成されたテーパ部5aから変形(破壊)が起きる。
このテーパ部5aの破壊に続いて、可動ヨーク4の車両前方方向への変位に従って逐次インナシャフト5の破壊が進行し、この変位(破壊)は時間の経過とともに増大するから、この破壊を利用して衝撃エネルギが確実に吸収されることになる。
【0037】
実験によれば、図5の軸圧縮による荷重変位曲線の線図中、破線Aで示される特性のように、その端部にテーパ部5aがないGFPR製のインナシャフト5の場合は大きな圧縮荷重を加えないと破壊しないことがわかる。しかも、変形は強度の弱い部分にだけ、例えばインナシャフト5の軸方向中央だけが折れるという現象となって現れるから、衝撃エネルギの吸収には至らないこともわかる。
【0038】
これに対し、本実施形態にかかるインナシャフト5では、GFPR製のインナシャフト5の端部にテーパ部5aが形成された構造となっているため、図5の軸圧縮による荷重変位曲線の線図中、実線Bで示される特性のように、小さな圧縮荷重でインナシャフト5は破壊を起こし、しかもこの変位(破壊)は時間の経過とともに増大するから、この破壊を利用して衝撃エネルギの吸収が確実に行なわれることになるのである。
【0039】
したがって、本実施形態にかかるプロペラシャフトによれば、エンジンからの駆動力伝達はアウタシャフト2に行なわせる一方、車両の正面衝突時(又は、追突時)の荷重による衝撃エネルギの吸収はインナシャフト5に行なわせるようにしているため、アウタシャフト2及びインアシャフト5の設計自由度が多くなり、設計が容易になるという利点がある。
【0040】
つまり、アウタシャフト2は、エンジンからの駆動力を伝達する役割のみを担うものであり、その設計に際しては、エンジンからの駆動力を伝達するのに必要な強度(例えば、ねじり強度)のみを考慮すれば良いため、アウタシャフト2の設計自由度が多くなり、容易に設計が行なえるという利点がある。
一方、インナシャフト5は、車両衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収する役割のみを担うものであり、その設計に際しては、車両衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収するのに必要な強度(例えば、軸圧縮強度)のみを考慮すれば良いため、インナシャフト5の設計自由度が多くなり、容易に設計が行なえるという利点がある。
【0041】
また、車両の衝突時の荷重による衝撃エネルギの吸収をコストを低く抑えながら確実に行なえるという利点がある。つまり、車両衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収するのに必要な強度(例えば、軸圧縮強度)のみを考慮すればよいため、例えばコストがかからないGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を採用することができ、コストを低く抑えることができるという利点もある。
【0042】
また、インナシャフト5の端部に向かうにしたがって肉厚が減少するようにテーパ部5aを形成することにより、プロペラシャフト1の軸方向に所定以上の荷重が加わった場合には、このテーパ部5aに応力を集中させるようになっているため、常に、インナシャフト5の端部から変形(破壊)が開始し、順に変形(破壊)が進行するようにして衝撃エネルギを確実に吸収できるようにすることができるという利点がある。
【0043】
なお、本実施形態にかかるプロペラシャフトでは、1本のプロペラシャフトを備える場合について説明してきたが、例えば、プロペラシャフトを複数本に分割して配置する場合には、そのうちの少なくとも1本を上述のような構成のプロペラシャフトとすれば良い。
また、本プロペラシャフトでは、アウタシャフト2の他端部2bと可動ヨーク4の軸部4Aとは接合部材6をかしめることにより固定しているが、これに限られるものではなく、アウタシャフト2の他端部2bと可動ヨーク4の軸部4Aとにそれぞれ孔を形成し、この孔にピンを挿入しておいて、このピンが所定以上の荷重Fが作用した場合に折れるように構成しても良い。
【0044】
また、本プロペラシャフトでは、FRP製中空軸5を金属製中空軸2に内挿しているが、逆に、FRP製中空軸5を金属製中空軸2に外挿してもよい。この場合、可動ヨーク4の軸部4Aは金属製中空軸2の端部の外周に嵌挿し、車両の衝突時には、可動ヨークの軸部4Aが金属製中空軸2の軸方向に沿って変位するようにする必要がある。また、金属製中空軸2の固定ヨーク3側の端部には、規制手段として、例えば突起部のようなものを設け、車両の衝突時にFRP製中空軸5の端部が当接するようにする必要もある。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明のプロペラシャフトによれば、エンジンからの駆動力伝達は金属製中空軸に行なわせる一方、車両の正面衝突時の荷重による衝撃エネルギの吸収はFRP製中空軸に行なわせるようにしているため、金属製中空軸及びFRP製中空軸の設計自由度が多くなり、設計が容易になるという利点がある。また、FRP製中空軸の設計に際しては、車両衝突時の荷重による衝撃エネルギを吸収するのに必要な強度(例えば、軸圧縮強度)のみを考慮すればよいため、例えばコストがかからないGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を採用することができ、コストを低く抑えることができるという利点もある。
【0046】
請求項2記載の本発明のプロペラシャフトによれば、FRP製中空軸の端部に向かうにしたがって肉厚が減少するように脆弱部が形成されており、プロペラシャフトの軸方向に所定以上の荷重が加わった場合には、この脆弱部に応力を集中させるようになっているため、常に、FRP製中空軸の端部から変形(破壊)が開始し、順に変形(破壊)が進行するようにして衝撃エネルギを確実に吸収できるようにすることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるプロペラシャフトの全体構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるプロペラシャフトの荷重作用時の状態を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるプロペラシャフトのインナシャフトの破壊起点となる脆弱部の形状を示す模式的断面図であり、(a)はその断面が三角形状になるように脆弱部を形成したもの、(b)はその外周が尖るように脆弱部を形成したもの、(c)はその断面がV溝になるように脆弱部を形成したもの、(d)はその断面が円弧状になるように脆弱部を形成したものをそれぞれ示している。
【図4】本発明の一実施形態にかかるプロペラシャフトの変形例の全体構成を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるプロペラシャフトの軸圧縮による荷重変位曲線を示す図である。
【図6】従来のプロペラシャフトの全体構成を模式的に示す断面図である。
【図7】従来のプロペラシャフトの荷重作用時の破壊状態を説明するための模式的な断面図であり、(a)は荷重作用前の状態、(b)は荷重作用後の座屈した状態をそれぞれ示している。
【符号の説明】
1 プロペラシャフト
2 アウタシャフト(金属製中空軸)
2a アウタシャフトの一端部
2b アウタシャフトの他端部(端部)
3 固定ヨーク(規制手段)
4 可動ヨーク(ヨーク)
4A 軸部
4AA 軸部端部
4B セレーション
5 インナシャフト(FRP製中空軸)
5a〜5e 脆弱部
6 接合部材
Claims (2)
- 金属製中空軸と、
該金属製中空軸の少なくとも一方の端部に軸部を嵌挿され、該金属製中空軸に対して回転方向に拘束され、且つ軸方向に所定以上の荷重が加わると変位するように固定されたヨークとを備え、
該金属製中空軸と該ヨークとを介してエンジンからの駆動力を伝達するとともに、
該金属製中空軸に嵌挿されたFRP製中空軸と、
該金属製中空軸の他方の端部に設けられ、該FRP製中空軸の軸方向への移動を規制する規制手段とを備え、
該軸方向に所定以上の荷重が加わった場合に、該FRP製中空軸の一端に該ヨークの軸部端部が当接する一方、該FRP製中空軸の他端に該規制手段が当接し、該ヨークと該規制手段との間で該FRP製中空軸が破壊されることで該荷重による衝撃エネルギを吸収することを特徴とする、プロペラシャフト。 - 該FRP製中空軸が、少なくとも一方の端部側に破壊起点となる脆弱部を備え、
該脆弱部が、該FRP製中空軸の該一方の端部に向かうにしたがって肉厚が減少するように形成されていることを特徴とする、請求項1記載のプロペラシャフト。
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