JP3582137B2 - 蒸発燃料量推定装置および該装置を備えたエンジンの制御装置 - Google Patents
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- F02D2041/1431—Controller structures or design the system including an input-output delay
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、キャニスタの蒸発燃料捕集量を推定する蒸発燃料量推定装置、及び該蒸発燃料量推定装置又は蒸発燃料捕集量検出手段を備えていて蒸発燃料捕集量等に基づいて蒸発燃料パージ量を算出するエンジンの制御装置、さらには上記蒸発燃料パージ量等に基づいて空燃比を制御するエンジンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用の燃料噴射式エンジンにおいては空燃比を目標値(目標空燃比)に合わせるために、基本的にはエアフローセンサによって検出される吸入空気量に対応する基本燃料噴射量(基本パルス幅)で、燃料噴射弁から吸気系又は燃焼室に燃料が噴射されるようになっている。しかしながら、燃料噴射弁の噴射量コントロールの精度には限度があり、また燃料噴射弁から噴射された燃料の一部は吸気通路壁に付着するなどしてすぐには燃焼室に入らない。また、燃料噴射弁の噴射特性は経時的に変化することがある。このため、単に吸入空気量に対応する基本燃料噴射量で燃料を噴射するだけでは、高精度で空燃比を目標空燃比に一致させることはむずかしい。
【0003】
そこで、通常、燃料噴射式エンジンにおいては、所定の運転領域(フィードバック領域)では、リニアO2センサ又はλO2センサで排気ガス中のO2濃度を検出して該O2濃度から空燃比を算出し、この空燃比の目標空燃比に対する偏差(空燃比偏差)に応じて該空燃比偏差をなくす方向に作用するフィードバック補正値を演算し、該フィードバック補正値で上記基本燃料噴射量を補正して空燃比を目標値に追従させるといった空燃比制御、すなわち空燃比のフィードバック制御を行うようにしている。なお、フィードバック補正値を中立値に固定したときには、フィードバック制御は行われずオープンループ制御が行われることになる。
なお、リニアO2センサは空気過剰率λが1より大きいとき領域においてもO2濃度を検出することができるが、λO2センサは基本的には空気過剰率λが1より大きいか否かを検出するだけである。
【0004】
他面、自動車において燃料タンク内の空気を直接大気中に排出すると大気汚染を招くとともに燃料の損失となるので、自動車には通常、燃料タンクから排出された空気に含まれる蒸発燃料を捕集(吸着)するキャニスタが設けられる。そして、かかるキャニスタには、該キャニスタ内に捕集されている蒸発燃料を適宜吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段が設けられる。かかる蒸発燃料パージ手段には、普通、キャニスタと吸気系とを接続するパージ通路と、該パージ通路を適宜開閉するパージ制御弁とが設けられ、パージ制御弁が開かれたときにキャニスタ内の蒸発燃料が吸気系にパージ(キャニスタパージ)されるようになっている。
【0005】
したがって、キャニスタパージが行われるとキャニスタ内の蒸発燃料が吸気系に供給されることになるので、吸入空気量に応じた基本燃料噴射量で燃料噴射を行っているとき(オープンループ制御時)にキャニスタパージを行うと空燃比が目標値から大幅にずれてしまう。そこで、フィードバック領域で空燃比のフィードバック制御を行うようにしたエンジンでは、普通、フィードバック制御時にキャニスタパージを行うようにしている。
【0006】
しかしながら、このように空燃比のフィードバック制御時にキャニスタパージを行う場合、該キャニスタパージによって吸気系に供給される蒸発燃料は空燃比制御側からみれば外乱となり、キャニスタ内に蒸発燃料がトラップされている場合、この外乱はフィードバック補正値を中立値よりもリーン側に変化させることによってフィードバック動作により補償されることになる。そして、この場合、キャニスタパージによって吸気系に供給される蒸発燃料の量(蒸発燃料パージ量)が一定であり、かつエンジンが定常状態にあるときには、キャニスタパージに起因する外乱はほぼ完全に補償されるものの、蒸発燃料パージ量が急変する際、例えばパージ制御弁が閉状態から開状態に変化する際又は開状態から閉状態に変化する際、あるいはパージ制御弁の前後差圧が急変する際、あるいはキャニスタパージ時においてエンジンが過渡状態にあるとき例えば加減速時には、空燃比の検出遅れ(タイムラグ)あるいはフィードバック動作の遅れによりキャニスタパージに起因する外乱が十分には補償されず、空燃比が目標値からずれてしまうといった問題がある。かかる現象が生じるのは、およそ次のような理由による。
【0007】
すなわち、空燃比のフィードバック制御時において、例えばパージ制御弁が閉状態から開状態になったときには、蒸発燃料パージ量に応じて空燃比がリッチ化することになる。そして、かかる空燃比のリッチ化は排気通路に臨設されたリニアO2センサ又はλO2センサによって検出された後、これに基づいてフィードバック補正値がリーン方向に変更されて上記空燃比のリッチ化が是正されることになる。換言すれば、キャニスタパージによって空燃比がリッチ化した場合、このリッチ化がリニアO2センサ又はλO2センサによって実際に検出されるまでは該空燃比のリッチ化は何ら是正されないことになる(タイムラグ)。
逆に、パージバルブが開状態から閉状態になったときには空燃比がリーン化することになるが、この場合もキャニスタパージの停止によって空燃比がリーン化した後、このリーン化がリニアO2センサ又はλO2センサによって実際に検出されるまでは該空燃比のリーン化は何ら是正されないことになる(タイムラグ)。
【0008】
また、キャニスタパージ時においてエンジンが過渡状態にあるとき、例えば加速時においては、パージ制御弁の前後差圧が急低下するので、1回の吸入行程で燃焼室に供給される蒸発燃料の量(蒸発燃料流入量)ないしは該蒸発燃料流入量が全燃料流入量中に占める比率が急低下して空燃比がリーン化し、他方減速時には空燃比がリッチ化する。そして、かかる空燃比のリーン化あるいはリッチ化も、これらがリニアO2センサ又はλO2センサによって実際に検出されるまでは何ら是正されないことになる(タイムラグ)。
【0009】
このため、蒸発燃料パージ量の急変時あるいはキャニスタパージ時においてエンジンが過渡状態にあるときには、一時的に空燃比がリッチ化して燃料が無駄に消費され燃費性能が低下するとともにHC排出量が増加してエミッション性能が低下するなどといった問題が生じたり、逆に空燃比がリーン化して十分なエンジン出力が得られない場合があるなどといった問題が生じたりする。
【0010】
また、蒸発燃料パージ量の急増と急減とが頻繁に繰り返されたとき、あるいはキャニスタパージ時において加速と減速とが頻繁に繰り返されたときには、前記のタイムラグ或いはフィードバック動作遅れにより空燃比の是正が後手後手にまわりハンチングあるいはサイクリングが生じて空燃比のフィードバック制御の安定性が悪くなるといった問題が生じる。
【0011】
なお、蒸発燃料を空燃比フィードバック制御の外乱として処理する場合、蒸発燃料パージ量が非常に多いときには、これに起因する外乱を補償するためにフィードバック補正値がリーン側の限界値にはりついてしまい、その他の外乱に対処することができなくなるおそれもある。
【0012】
これに対して、蒸発燃料パージ量を検出し、本来必要とされる最終的な燃料噴射量すなわちキャニスタパージがない場合に必要とされる最終的な燃料噴射量(以下、これを必要燃料噴射量という)を上記蒸発燃料パージ量分だけ減量補正することにより、キャニスタパージの影響を空燃比のフィードバック制御から排除するといった対応、すなわちキャニスタパージによって吸気系に供給される蒸発燃料を空燃比フィードバック制御の外乱とはならないようにするといった対応が考えられるが、蒸発燃料パージ量を直接的に高精度で検出することができる実用的な手段は現時点では見当たらない。
【0013】
そこで、間接的に蒸発燃料パージ量を推定し、必要燃料噴射量を上記推定値分だけ減量補正するようにしたエンジンが提案されている(例えば、特開平2−245441号公報参照)。そして、このような従来のエンジン、例えば特開平2−245441号公報に開示されているエンジンでは、フィードバック補正値とその中立値との差に基づいて蒸発燃料パージ量を推定するようにしている。なお、この従来のエンジンでは、蒸発燃料パージ量の推定値をエンジン回転数で除算して1回転当たりの蒸発燃料パージ量を算出し、基本燃料噴射量をこの1回転当たりの蒸発燃料パージ量分だけ減量補正するようにしている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に、蒸発燃料パージ量は、エンジンの運転状態の変化に伴って非常に短い周期で変動する。例えば、吸入空気量の変化、吸気圧の変化、エンジン回転数の変化等に伴って非常に短い周期で変動する。他方、例えば特開平2−245441号公報に開示されているような従来のエンジンでは、蒸発燃料パージ量をフィードバック補正値に基づいて推定するようにしているが、前記したとおりフィードバック補正値は、リニアO2センサ又はλO2センサによって検出される空燃比に基づいて演算される関係上どうしてもタイムラグが伴われるので、エンジンの運転状態の変化すなわち実際の蒸発燃料パージ量の変化の周期が短いときには、蒸発燃料パージ量の推定精度が低下し、ひいては空燃比の目標値からのずれを生じさせるといった問題が生じる。
【0015】
かかる従来の問題点と従来の技術とに鑑みれば、蒸発燃料パージ量を高精度で把握することができれば、必要燃料噴射量を該蒸発燃料パージ量で減量補正することにより、空燃比のずれを生じさせることなくキャニスタパージを行うことができるものと考えられる。そこで、本願発明者は、蒸発燃料パージ量、より正確には燃焼室に流入する蒸発燃料の流量(蒸発燃料流入量)を高精度で把握することができる手段を見出だすことにより、上記の各問題点を解決しようと考えた。
【0016】
そして、本願発明者は、キャニスタに捕集されている蒸発燃料の量すなわち蒸発燃料捕集量の経時変化はエンジンの運転状態の経時変化に比べれば非常に緩やかであり、蒸発燃料捕集量は前記のタイムラグ程度の時間内あるいは空燃比制御の1ルーチン実行時間内ではほとんど変化しないといった事実に着目し、かかる蒸発燃料捕集量に基づいて蒸発燃料パージ量を算出することができれば、空燃比検出におけるタイムラグにかかわりなく蒸発燃料パージ量ないしは蒸発燃料流入量を高精度で把握することができ、ひいては必要燃料噴射量をこの蒸発燃料パージ量で減量補正することにより、空燃比のずれを生じさせることなくキャニスタパージを行うことができるであろうと考察した。
【0017】
本発明は、上記考察結果に基づいて、上記従来の各問題点を解決するためになされたものであって、キャニスタの蒸発燃料捕集量を高精度で推定することができる手段を提供することを目的とする。
そして、キャニスタの蒸発燃料捕集量に基づいて、蒸発燃料パージ量あるいは蒸発燃料流入量を高精度で算出することができる手段を提供することを目的とする。
さらには、蒸発燃料パージ量あるいは蒸発燃料流入量に基づいて、空燃比の目標値に対するずれを生じさせることなくキャニスタパージを行うことができる手段を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達するため、図1にその構成を示すように、第1の発明は、空燃比を検出する空燃比検出手段Aと、該空燃比検出手段Aによって検出された空燃比の目標値に対する偏差に基づいてフィードバック補正値を設定するフィードバック補正値設定手段Bと、該フィードバック補正値設定手段Bによって設定されたフィードバック補正値に基づいて空燃比(燃料供給手段の燃料供給量)を制御する空燃比制御手段Cと、蒸発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段Dと、該蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段Eとが設けられているエンジンの蒸発燃料量推定装置であって、フィードバック補正値設定手段Bによって設定されたフィードバック補正値の平均値(平均フィードバック補正値)を演算する平均フィードバック補正値演算手段Fと、該平均フィードバック補正値演算手段Fによって演算された平均フィードバック補正値に基づいて、蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料の量(蒸発燃料捕集量)を推定する蒸発燃料捕集量推定手段Gと、該蒸発燃料捕集量推定手段Gにより推定された蒸発燃料捕集量からエンジンに吸入される蒸発燃料流入量を演算する蒸発燃料流入量演算手段R’と、該蒸発燃料流入量演算手段R’により演算された蒸発燃料流入量を必要燃料供給量から減量する燃料供給量減量手段U’とが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0019】
第2の発明は、第1の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定手段Gが、平均フィードバック補正値演算手段Fによって演算された平均フィードバック補正値が中立値より小さいか否かに応じて前回の蒸発燃料捕集量推定値を増減させて今回の蒸発燃料捕集量を推定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0020】
第3の発明は、第2の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定手段Gが、蒸発燃料捕集量推定値を増減させる補正量を、平均フィードバック補正値が大きいときほど大きく設定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0021】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下では、蒸発燃料捕集量推定手段Gによる蒸発燃料捕集量の推定を禁止する蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0022】
第5の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、蒸発燃料の吸気系へのパージが停止されているときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が存在しない条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0023】
第6の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、充填効率が所定値以上であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0024】
第7の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、吸気圧が所定値以下であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0025】
第8の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、空燃比のフィードバック制御が停止されているときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が存在しない条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0026】
第9の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、蒸発燃料の吸気系へのパージが停止されている状態と、吸入空気量が所定値以上である状態と、吸気圧が所定値以下である状態と、空燃比のフィードバック制御が停止されている状態のうちの少なくとも1つの状態が成立しているときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0027】
第10の発明は、第1〜第9の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置において、平均フィードバック補正値の絶対値が所定の限界値未満となったときに、蒸発燃料捕集量推定手段Gによる蒸発燃料捕集量の推定が完了しているものと判定する推定完了判定手段Iが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0028】
第11の発明は、第10の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、推定完了判定手段Iが、蒸発燃料捕集量の推定が完了していると判定した後において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hによって蒸発燃料捕集量の推定が所定期間以上継続して禁止されたときには、蒸発燃料捕集量の推定が完了しているとの判定を撤回するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0029】
第12の発明は、第1〜第11の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置において、空燃比制御手段Cが、フィードバック補正値が中立値となるように、制御出力特性を学習により補正するといった学習機能を備えていて、蒸発燃料捕集量推定手段Gが、空燃比制御手段Cの学習が終了した後で蒸発燃料捕集量を推定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0030】
第13の発明は、第1〜第9の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置において、空気過剰率λが1より大きい領域においてもO2濃度を検出することができるリニアO2センサが、空燃比検出手段Aとして設けられ、平均フィードバック補正値演算手段Fが、一定時間毎のフィードバック補正値の相加平均値又は重み付けした加重平均値を、上記のフィードバック補正値の平均値として演算するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0031】
第14の発明は、第1〜第9の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置において、空気過剰率λが1より大きいか否かを検出することができるλO2センサが、空燃比検出手段Aとして設けられ、平均フィードバック補正値演算手段Fが、フィードバック補正値の加重平均値を、上記のフィードバック補正値の平均値として演算するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0032】
第15の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、吸気圧が所定値以上であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0033】
第16の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、充填効率が所定値以下であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0034】
第17の発明は、図2にその構成を示すように、第1〜第14の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置Lと、該蒸発燃料量推定装置Lによって推定された蒸発燃料捕集量に基づいて、吸気系への蒸発燃料のパージ流量 ( 蒸発燃料パージ量 ) を算出する蒸発燃料パージ量算出手段Kとが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0035】
第18の発明は、蒸発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段Dと、該蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段Eと、蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料の量 ( 蒸発燃料捕集量 ) を検出若しくは推定する蒸発燃料捕集量検出手段Jと、該蒸発燃料捕集量検出手段Jによって検出若しくは推定された蒸発燃料捕集量に基づいて、吸気系への蒸発燃料のパージ流量 ( 蒸発燃料パージ量 ) を算出する蒸発燃料パージ量算出手段Kとが設けられ、蒸発燃料パージ量算出手段Kが、蒸発燃料捕集手段Dから吸気系側に放出される蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料放出量 ) を算出する蒸発燃料放出量算出手段Mと、該蒸発燃料放出量算出手段Mによって算出された蒸発燃料放出量に基づいて、燃焼室へ流入する蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料流入量 ) を算出する蒸発燃料流入量算出手段Nとを備え、蒸発燃料放出量推定手段Mが、蒸発燃料パージ手段Eの制御弁の開度と該制御弁の前後の差圧とに基づいてパージ空気量を演算するパージ空気量演算手段Oと、該パージ空気量演算手段Oによって演算されたパージ空気量と、蒸発燃料捕集量とに基づいて蒸発燃料放出量を演算する蒸発燃料放出量演算手段Pとを備えていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0036】
第19の発明は、第18の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、蒸発燃料流入量算出手段Nが、蒸発燃料捕集手段Dから燃焼室に至る蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性を設定する輸送遅れ特性設定手段Qと、蒸発燃料放出量演算手段Pによって演算された蒸発燃料放出量と、エンジン回転数と、輸送遅れ特性設定手段Qによって設定された輸送遅れ特性とに基づいて蒸発燃料流入量を演算する蒸発燃料流入量演算手段Rとを備えていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0037】
第20の発明は、第19の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、蒸発燃料流入量算出手段Nが、蒸発燃料放出量演算手段Pによって演算された蒸発燃料放出量とエンジン回転数とに基づいて蒸発燃料の全燃料中に占める比率(蒸発燃料比率)を演算する蒸発燃料比率演算手段Sを備えていて、蒸発燃料流入量演算手段Rが、蒸発燃料比率演算手段Sによって演算された蒸発燃料比率と、輸送遅れ特性設定手段Qによって設定された輸送遅れ特性とに基づいて、蒸発燃料流入量の全燃料中に占める比率(正味蒸発燃料比率)を演算するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0038】
第21の発明は、第20の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ空気量演算手段Oと、蒸発燃料放出量演算手段Pと、輸送遅れ特性設定手段Qと、蒸発燃料比率演算手段Sと、蒸発燃料流入量演算手段Rとが、夫々、所定のモデル式でもって出力値を演算又は設定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0039】
第22の発明は、第17〜第21の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、蒸発燃料の吸気系へのパージを規制するパージ規制手段Tが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0040】
第23の発明は、第22の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ規制手段Tによる蒸発燃料のパージ規制が、蒸発燃料の吸気系へのパージの禁止であることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0041】
第24の発明は、第22の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ規制手段Tが、アイドル時に蒸発燃料の吸気系へのパージを禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0042】
第25の発明は、第22又は第24の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ規制手段Tが、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了するまでは蒸発燃料のパージ速度を小さくするようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0043】
第26の発明は、第22又は第24の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ規制手段Tが、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了するまでは蒸発燃料のパージ量を少なくするようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0044】
第27の発明は、第25の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ規制手段Tが、蒸発燃料パージ手段Eの制御弁が閉弁状態から開弁状態に移行する際には、蒸発燃料のパージ速度を目標値に達するまで徐々に増加させるようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0045】
第28の発明は、蒸発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段Dと、該蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段Eと、蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料の量 ( 蒸発燃料捕集量 ) を検出若しくは推定する蒸発燃料捕集量検出手段Jと、該蒸発燃料捕集量検出手段Jによって検出若しくは推定された蒸発燃料捕集量に基づいて、吸気系への蒸発燃料のパージ流量 ( 蒸発燃料パージ量 ) を算出する蒸発燃料パージ量算出手段Kとが設けられ、蒸発燃料パージ量算出手段Kが、蒸発燃料捕集手段Dから吸気系側に放出される蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料放出量 ) を算出する蒸発燃料放出量算出手段Mと、該蒸発燃料放出量算出手段Mによって算出された蒸発燃料放出量に基づいて、燃焼室へ流入する蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料流入量 ) を算出する蒸発燃料流入量算出手段Nとを備え、蒸発燃料パージ量算出手段Kが、蒸発燃料放出量に対して蒸発燃料捕集手段の脱気特性を加味して、質量流量で蒸発燃料流入量を算出するようになっていることを特徴とするエンジンの制御装置を提供する。
【0046】
第29の発明は、第28の発明にかかるエンジンの制御装置において、上記脱気特性が、蒸発燃料捕集手段Dにおけるパージ空気量に対する蒸発燃料パージ質量流量の吸気温依存性であることを特徴とするエンジンの制御装置を提供する。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
図3は、本発明にかかる蒸発燃料推定装置及び制御装置を備えたエンジンのシステム構成図である。図3に示すように、燃料噴射式の4気筒ガソリンエンジンCEの各気筒1(1つの気筒のみ図示)においては、吸気弁2が開かれたときに吸気ポート3から燃焼室4に混合気が吸入され、この混合気がピストン5で圧縮された後点火プラグ(図示せず)によって着火・燃焼させられ、排気弁6が開かれたときに燃焼ガス(排気ガス)が排気ポート7を介して排気通路8に排出されるようになっている。排気通路8には、排気ガス中のO2濃度を検出するリニアO2センサ9が臨設されている。そして、リニアO2センサ9で検出されたO2濃度はコントロールユニットCUに入力され、コントロールユニットCUではこのO2濃度に基づいて混合気の空燃比を演算するようになっている。ここで、リニアO2センサ9によって検出されるO2濃度と該O2濃度に基づいて演算される空燃比とは一義的な対応関係にあるので、以下では便宜上、上記空燃比を「リニアO2センサ9によって検出された空燃比」又は「実空燃比」ということにする。
ここで、リニアO2センサ9に代えて、λO2センサを用いてもよい。なお、リニアO2センサ9は、空気過剰率λが1より大きい領域でもO2濃度ひいては空燃比を検出することができるが、λO2センサは基本的には空気過剰率λが1より大きいか否かを検出するだけである。
【0050】
エンジンCEの各気筒1(燃焼室4)に燃料燃焼用の空気を供給するために吸気系10が設けられ、この吸気系10には上流端が大気に開放された共通吸気通路11が設けられている。そして、共通吸気通路11にはアクセルペダル(図示せず)と連動して開閉されるスロットル弁12が介設され、共通吸気通路11の下流端は吸入空気の流れを安定させるサージタンク13に接続されている。さらに、サージタンク13には、各気筒1に夫々個別に空気を供給する独立吸気通路14(1つのみ図示)が接続され、これらの各独立吸気通路14の下流端は夫々対応する気筒1の吸気ポート3に接続されている。
【0051】
吸気ポート3近傍において各独立吸気通路14には、吸気ポート3内ないしは燃焼室4内に燃料を噴射する燃料噴射弁15が、噴射口が下流側に向くようにして臨設されている。ここで、燃料噴射弁15の燃料噴射量(噴射パルス幅)及び噴射タイミングは、後で説明するようにコントロールユニットCUによって制御されるようになっている。
なお、燃料噴射弁15は特許請求の範囲に記載された「燃料供給手段」に相当する。
【0052】
そして、燃料の気化・霧化を促進するために各燃料噴射弁15にアシストエアを供給するアシストエア供給手段16(以下、これをAMI16という)が設けられている。このAMI16には、詳しくは図示していないが、上流端がスロットル弁12より上流側で共通吸気通路11と連通するアシストエア導入通路17が設けられ、このアシストエア導入通路17にはコントロールユニットCUによって開閉されるソレノイド式のアシストエア制御弁18が介設されている。なお、アシストエア制御弁18をバイパスしてアシストエアを通すバイパスアシストエア通路19が設けられ、このバイパスアシストエア通路19には所定の圧力損失(圧力低下)を生じさせ、流量を規制するためのオリフィス20が介設されている。
【0053】
アシストエア導入通路17の下流端はミキシングチャンバ21に接続され、このミキシングチャンバ21にはさらにアシストエア供給通路22が接続されている。そして、アシストエア供給通路22は下流側で4つの分岐アシストエア供給通路23に分岐し、各分岐アシストエア供給通路23は夫々、その下流端で対応する気筒1の燃料噴射弁15に接続され、対応する燃料噴射弁15に個別にアシストエアを供給するようになっている。
【0054】
エンジンCEには、燃料タンク(図示せず)から排出される空気に含まれる蒸発燃料(ガソリンベーパ)を捕集する蒸発燃料捕集手段と、該蒸発燃料捕集手段に捕集されている蒸発燃料を適宜吸気系10にパージする蒸発燃料パージ手段とを備えた蒸発燃料回収手段24が設けられているが、以下この蒸発燃料回収手段24について説明する。
この蒸発燃料回収手段24には、内部に蒸発燃料を捕集(吸着)することができる吸着材(例えば、活性炭)が充填されたキャニスタ25が設けられている。そして、このキャニスタ25には、先端が燃料タンクの上部空間部と連通し燃料タンク内の上部空間部の空気を該キャニスタ25内にリリーフするリリーフ通路26と、先端が大気に開放された大気開放通路27と、先端がミキシングチャンバ21に接続されたパージ通路28とが接続されている。なお、大気開放通路27の先端をスロットル弁12よりも上流側で共通吸気通路11に接続するようにしてもよい。また、キャニスタ25内に吸着材を充填するのではなく、吸着以外の現象(例えば、吸収、反応等)を利用して蒸発燃料を捕集する材料を充填してもよい(ただし、空気によるパージが可能なもの)。
なお、キャニスタ25は特許請求の範囲に記載された「蒸発燃料捕集手段」に相当する。
【0055】
パージ通路28にはこれを任意に開閉することができるデューティソレノイド式のパージ制御弁29が介設され、このパージ制御弁29はコントロールユニットCUによってその開度がデューティ制御されるようになっている。このパージ制御弁29は、コントロールユニットCUから印加される駆動デューティ比に従って開閉制御され、例えば駆動デューティ比が0のときには全閉され、駆動デューティ比が100%のときには全開され、両者間では駆動デューティ比が大きいときほど開弁度合が大きくなるようになっている。
なお、パージ通路28とパージ制御弁29とからなる組立体は特許請求の範囲に記載された「蒸発燃料パージ手段」に相当する。
【0056】
そして、この蒸発燃料回収手段24において、パージ制御弁29が全閉(駆動デューティ比0)されているときには燃料タンク内の空気はリリーフ通路26を通してキャニスタ25内にリリーフされた後、大気開放通路27を通して大気中に排出されるが、この空気に含まれている蒸発燃料はキャニスタ25内の吸着材層を通過する際に吸着材に捕集され、大気中には排出されない。
【0057】
他方、パージ制御弁29が開かれているときには吸気系10の負圧によって、大気中の空気が、まず大気開放通路27を通してキャニスタ25内に吸い込まれて吸着材層を通り抜け、この後パージ通路28とAMI16(ミキシングチャンバ21〜分岐アシストエア供給通路23)とを通して吸気系10にひいては燃焼室4にパージされる。ここで、パージ制御弁29の開弁度合(すなわち、駆動デューティ比)に応じてパージされる空気の流量(以下、これをパージ空気量という)が変化するのはもちろんである。そして、その際キャニスタ25内の吸着材に捕集されている蒸発燃料の一部が吸着材から離脱し、パージされた上記空気(以下、これをパージ空気という)ともに吸気系10にひいては燃焼室4にパージされる。なお、以下ではこのように吸気系10ひいては燃焼室4にパージされる蒸発燃料の流量を「蒸発燃料パージ量」という。
【0058】
しかしながら、キャニスタ25から燃焼室4に至るパージ空気ないしは蒸発燃料の輸送経路はかなりの容量を有しているので、キャニスタ25からパージ通路28に放出された蒸発燃料が燃焼室4に実際に達するまでには、上記輸送経路の容積及び形状(輸送特性)に相応する輸送遅れが伴われる。したがって、ある時刻において、キャニスタ25からパージ通路28に放出される蒸発燃料の流量(以下、これを蒸発燃料放出量という)と、燃焼室4に実際に流入する蒸発燃料の流量(以下、これを蒸発燃料流入量という)とは、定常状態にある特別な場合を除けば通常は一致しない。このため、以下では蒸発燃料パージ量を、蒸発燃料放出量と蒸発燃料流入量とに区別して説明することにする。
なお、キャニスタ25から燃焼室4に至るパージ空気ないしは蒸発燃料の輸送経路の容積が非常に小さい場合は、輸送遅れを無視することができるので蒸発燃料放出量と蒸発燃料流入量とをとくには区別せず、蒸発燃料パージ量という概念を用いてもとくには不具合は生じない。
【0059】
ところで、図3に示すエンジンCEでは、パージ通路28の下流端をミキシングチャンバ21に接続し、キャニスタ25に捕集されている蒸発燃料をAMI16を介して吸気系10にパージするようにしているが、AMIが設けられていないエンジンの場合は、パージ通路28の下流端を各独立吸気通路14に分岐して接続すればよい。
また、図4に示すように、AMIが設けられていないエンジンCE’の場合は、パージ通路28の下流端をサージタンク13に接続し、キャニスタ25に捕集されている蒸発燃料を直接的に吸気系10にパージするようにすれば、何ら不具合は生じない。なお、図4において、図3と共通する部材には同一番号を付している。
【0060】
コントロールユニットCUは、特許請求の範囲に記載された「フィードバック補正値設定手段」、「空燃比制御手段」、「平均フィードバック補正値演算手段」、「蒸発燃料捕集量推定手段」、「蒸発燃料捕集量推定禁止手段」、「推定完了判定手段」、「蒸発燃料パージ量算出手段」、「蒸発燃料放出量算出手段」、「蒸発燃料流入量算出手段」、「パージ空気量演算手段」、「蒸発燃料放出量演算手段」、「輸送遅れ特性設定手段」、「蒸発燃料流入量演算手段」、「蒸発燃料比率演算手段」、「パージ規制手段」、「燃料供給量減量手段」、「蒸発燃料量推定装置」及び「空燃比検出手段(一部)」を含む、マイクロコンピュータで構成された、エンジンCE(エンジンCE’を含む、以下でも同様)の総合的な制御装置であって、リニアO2センサ9(あるいはλO2センサ)によって検出される空燃比(実空燃比)、スロットル開度センサ31によって検出されるスロットル開度、エアフローセンサ32によって検出される吸入空気量、回転数センサ33によって検出されるエンジン回転数、アイドルスイッチ34から出力されるアイドル信号等を制御情報として、エンジンCE(蒸発燃料回収手段24を含む)の各種制御、キャニスタ25に捕集されている蒸発燃料の量(以下、これをトラップ量という)の推定、蒸発燃料放出量の算出(演算)、蒸発燃料流入量の算出(演算)等を行うようになっている。
なお、トラップ量は特許請求の範囲に記載された「蒸発燃料捕集量」に相当する。
【0061】
しかしながら、エンジンCEの一般的な制御はよく知られており、またかかる一般的な制御は本発明の要旨とするところでもないのでその説明を省略し、以下では本発明の要旨に関連する、空燃比制御(燃料噴射量制御)の制御方法と、キャニスタパージ制御の制御方法と、トラップ量の推定方法と、蒸発燃料放出量の算出方法(演算方法)と、蒸発燃料流入量の算出方法(演算方法)とについてのみ説明する。
【0062】
以下、図5を参照しつつコントロールユニットCUの基本的な機能について説明する。
図5に示すように、コントロールユニットCUは機能的にみれば、空燃比制御(燃料噴射量制御)及びキャニスタパージ制御を行うエンジン制御ブロックSLと、トラップ量の推定を行うトラップ量推定ブロックSMと、トラップ量に基づいて蒸発燃料放出量及び蒸発燃料流入量を演算する蒸発燃料パージ量演算ブロックSNとに大別される。
エンジン制御ブロックSLは、基本的には、空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射弁15の噴射パルス幅すなわち燃料噴射量を運転状態に応じてフィードバック制御又はオープンループ制御するとともに(空燃比制御)、キャニスタパージを行うべき運転領域では運転状態に応じてキャニスタパージを行う(キャニスタパージ制御)。
【0063】
この空燃比制御においては、エンジンCEの運転状態が所定のフィードバック領域(例えば、高負荷領域と高回転領域を除いた領域)に入っていれば実空燃比の目標空燃比に対する偏差(以下、これを空燃比偏差という)に基づいてフィードバック制御が行われ、フィードバック領域に入っていなければ空燃比偏差には基づかないオープンループ制御が行われる。ここでの空燃比のフィードバック制御の制御手法はおよそ次のとおりである。
すなわち、吸入空気量とエンジン回転数とに応じて燃料噴射弁15の基本パルス幅すなわち基本燃料噴射量が演算される(ベース演算)。
【0064】
そして、他方では空燃比偏差(例えば、目標空燃比−実空燃比)に基づいて、例えば空燃比偏差に基づいて、フィードバック補正値cfbが演算される(ステップS1)。ここで、フィードバック補正値cfbは、中立値すなわち空燃比をいずれの方向にも補正しない中立的な値が0とされ、cfb>0のときは空燃比(燃料噴射量)をリッチ方向に補正し、cfb<0のときは空燃比(燃料噴射量)をリーン方向に補正する。
【0065】
そして、基本パルス幅とフィードバック補正値cfbとに基づいて、例えば基本パルス幅にcfbを乗算するなどして、基本パルス幅が空燃比偏差が縮小する方向に補正されて要求パルス幅すなわち要求燃料噴射量が演算される(ステップS2)。例えば、実空燃比が目標空燃比よりもリーンなときにはcfb>0となり、これに伴って燃料噴射量が増量補正され空燃比がリッチ方向に補正されて空燃比偏差が縮小される。逆に、実空燃比が目標空燃比よりもリッチなときにはcfb<0となり、これに伴って燃料噴射量が減量補正され空燃比がリーン方向に補正されて空燃比偏差が縮小される。かくして、空燃比偏差に応じて該空燃比偏差をなくすように空燃比(燃料噴射量)がフィードバック制御される。
なお、要求パルス幅すなわち要求燃料噴射量は、特許請求の範囲に記載された「必要燃料供給量」に相当する。
【0066】
他方、空燃比のオープンループ制御が行われる場合は、フィードバック補正値cfbが0に固定される。この場合は、基本パルス幅が空燃比偏差に応じては何ら補正されずにそのまま要求パルス幅となるので、フィードバックのないオープンループ制御となる。
【0067】
さらに、要求パルス幅すなわち要求燃料噴射量から、後で説明する蒸発燃料流入量に対応するパルス幅(以下、これをパージ補正パルス幅という)を減算して燃料噴射弁15の実際の噴射パルス幅(以下、これを実噴射パルス幅という)すなわち実燃料噴射量(実際の燃料噴射量)が演算される。そして、この実噴射パルス幅すなわち実燃料噴射量でもって、所定のタイミングで燃料噴射弁15から燃料が噴射される。かくして、実空燃比が目標空燃比に保持される。
【0068】
キャニスタパージ制御は、キャニスタパージ条件が成立しているとき例えば水温が所定値(80℃)以上のときに、よく知られた普通の手法でエンジンCEの運転状態に応じて行われる、すなわち、パージ制御弁29にエンジンCEの運転状態に応じたデューティ比が印加され、キャニスタパージが行われる。
【0069】
トラップ量推定ブロックSMは、キャニスタパージ時に、エンジン制御ブロックSLのステップS1で演算されたフィードバック補正値cfbを平均化処理することにより平均フィードバック補正値cfbaveを演算し(ステップS3)、さらにこの平均フィードバック補正値cfbaveに基づいて間接的にトラップ量を推定する(ステップS4)。すなわち、平均フィードバック補正値cfbaveを、現在把握しているトラップ量(トラップ量推定値)が真のトラップ量よりも大きいか小さいかを判定する指標として用いることによりトラップ量を把握する。
【0070】
後で説明するように、コントロールユニットCUは、所定の演算式を用いてトラップ量推定値に基づいて蒸発燃料流入量を演算し、さらに要求燃料噴射量から蒸発燃料流入量を減算することによって実燃料噴射量を設定するようにしている。ここで、トラップ量推定値が正確であればすなわち真のトラップ量と一致していれば蒸発燃料流入量が正確に演算されるので、キャニスタパージによって燃焼室4に供給される蒸発燃料はフィードバック制御の外乱とはならずフィードバック補正値cfbにとくには影響を与えない。この場合、ほかに大きな外乱がなければフィードバック補正値cfbは中立値(すなわち0)を中心にして若干変動するだけであり、したがって平均フィードバック補正値cfbaveはほぼ中立値0となる。換言すれば、平均フィードバック補正値cfbaveが0であれば、トラップ量推定値は真のトラップ量に一致していることになる。
【0071】
しかしながら、トラップ量推定値が真のトラップ量よりも大きいとこれに伴って蒸発燃料流入量演算値が真値よりも大きくなり、したがって実燃料噴射量が適正値よりも小さくなるので燃焼室4に実際に供給される燃料が必要とされる燃料量(要求燃料噴射量)よりも少なくなり、実空燃比がリーン化する。この場合、このリーン化を是正するためにフィードバック補正値cfbがリッチ方向に変化して0より大きくなり、これに伴って平均フィードバック補正値cfbaveが0より大きくなる。換言すれば、cfbave>0であれば、トラップ量推定値は真のトラップ量よりも大であるということになる。
【0072】
なお、前記したとおりフィードバック補正値cfbは変動するので、トラップ量推定値が真のトラップ量より大であっても必ずしもcfb>0になるとは限らず、したがってcfb>0であってもトラップ量推定値が真のトラップ量よりも大であるとは限らない。したがって、フィードバック補正値cfbに基づいてトラップ量を推定した場合は、その推定精度は非常に低くなるものと考えられる。かかる事情に鑑み、本実施例では平均フィードバック補正値cfbaveに基づいてトラップ量を推定するようにしている。
【0073】
逆に、トラップ量推定値が真のトラップ量よりも小さいとこれに伴って蒸発燃料流入量演算値が真値よりも小さくなり、したがって実燃料噴射量が適正値よりも大きくなるので、燃焼室4に供給される燃料は必要とされる燃料量よりも多くなり、実空燃比がリッチ化する。この場合、このリッチ化を是正するためにフィードバック補正値cfbがリーン方向に変化して0より小となり、これに伴って平均フィードバック補正値cfbaveが0より小となる。換言すれば、cfbave<0であれば、トラップ量推定値が真のトラップ量よりも小であるということになる。
【0074】
したがって、最初にトラップ量推定値に適当な初期値を設定した上で、cfbave>0であればトラップ量推定値を所定の補正量σだけ減らし、cfbave<0であればトラップ量推定値を補正量σだけ増やすといった操作を繰り返せば、トラップ量推定値はやがて真のトラップ量に収束(到達)し、トラップ量が把握されることになる。かくして、平均フィードバック補正値cfbaveに基づいてトラップ量が推定される。
【0075】
ここで、トラップ量推定値が真のトラップ量にほぼ一致しているか否か、すなわちトラップ量の推定がほぼ完了しているか否かは、平均フィードバック補正値cfbaveの絶対値│cfbave│が所定の限界値ε以下であるか否かで判定するのが好ましい。│cfbave│が非常に小さければ、トラップ量推定値が真のトラップにほぼ一致していると考えられるからである。
【0076】
このトラップ量の推定手法においては、トラップ量ないしは蒸発燃料パージ量と、フィードバック補正値cfbないしは平均フィードバック補正値cfbaveとの間に、前記のような相関性(相関関係)が成立していることを前提としている。したがって、かかる相関性が低い状況下あるいは相関性が存在しない状況下では、トラップ量を高精度で推定することはできない。このため、上記相関性が低い状況下あるいは相関性が存在しない状況下では、トラップ量の推定を禁止するのが好ましい。ここで、上記相関性が低い状況としては、後で説明するように、例えば充填効率や吸気圧が非常に高いとき、充填効率や吸気圧が非常に低いとき等があげられる。また、上記相関性が存在しない状況としては、例えばキャニスタパージが停止されているとき、空燃比のフィードバック制御停止されているとき(オープンループ制御時)等があげられる。
なお、上記相関性が低い状況あるいは相関性がない状況がいくつか重複して存在するときにのみトラップ量の推定を禁止するようにしてもよいのはもちろんである。
【0077】
また、このトラップ量の推定手法においては、蒸発燃料流入量が正確に把握されていれば、すなわちキャニスタパージによる蒸発燃料の供給がフィードバック補正値cfbに対して影響を与えなければ、フィードバック補正値cfbが中立値0を中心にして変動し、したがって平均フィードバック補正値cfbaveは中立値0になるということを前提としている。ところで、一般に、フィードバック補正値cfbが平均的には中立値0となるように、制御出力特性すなわち燃料噴射弁の噴射特性を学習により自動的に補正してゆくといった空燃比学習を行うようにしたエンジンが広く用いられているが、かかる空燃比の学習機能を備えたエンジンでトラップ量を推定する場合は、かかる空燃比学習が終了してからトラップ量の推定を行うのが好ましい。けだし、空燃比学習が終了していれば、キャニスタパージの影響がない場合には、平均フィードバック補正値cfbaveが確実に中立値0になるからである。
【0078】
なお、このようにしてトラップ量の推定が禁止されている期間がある程度以上継続されたときには、トラップ量推定値が真のトラップ量からずれているおそれがあるので、すでにトラップ量の推定が完了していると判定されている場合でも該判定を撤回(リセット)するのが好ましい。
【0079】
上記補正量σが大きいときには、推定開始後においてトラップ量推定値の収束に要する時間、すなわちトラップ量を推定するのに要する時間を短くすることができるものの、トラップ量推定値の精度が低下する。他方、補正量σが小さいときには、トラップ量推定値の収束に要する時間は長くなるものの、トラップ量推定値の精度を高めることができる。したがって、収束に要する時間に対する要求と、トラップ量推定値の精度に対する要求とが両立するように、補正量σを適切な値に設定するのが好ましい。
【0080】
なお、補正量σは一定値とする必要はなく、トラップ量の推定中に変化させてもよい。例えば、トラップ量の推定の進行状況に応じて変化させ、あるいは平均フィードバック補正値cfbaveの値に応じて設定してもよい。例えば、トラップ量の推定開始時には補正量σを大きくして収束を早め、トラップ量推定値がある程度収束した後は補正量σを小さくしてトラップ量推定値の精度を高めるようにしてもよい。また、平均フィードバック補正値cfbaveが大きいときほど補正量σを大きくすれば、トラップ量推定値が真のトラップ量からかけ離れているときには収束を早めることができ、他方トラップ量推定値が真のトラップ量に近いときにはその精度を高めることができる。
【0081】
蒸発燃料パージ量演算ブロックSNは、基本的には、トラップ量推定ブロックSMのステップS4で推定されたトラップ量推定値に基づいて蒸発燃料放出量を演算し、さらにこの蒸発燃料放出量に基づいて蒸発燃料流入量を演算し、この蒸発燃料流入量に相当する燃料噴射弁15のパルス幅すなわちパージ補正パルス幅を演算し、このパージ補正パルス幅をエンジン制御ブロックSLに出力する。つまり、フィードフォワード制御(見込み制御)により、タイムラグを生じさせることなくひいては空燃比のずれを生じさせることなく空燃比制御に対するキャニスタパージの影響を補償することになる。
より詳しくは、まずパージ通路28内におけるパージ制御弁29の前後差圧すなわちパージ制御弁29の直上流側と直下流側との間の圧力差(以下、これをパージ制御弁前後差圧という)が演算される一方(ステップS5)、パージ制御弁29に印加されている駆動デューティ比からパージ制御弁開度(パージSOL開度)が演算され(ステップS6)、続いてパージ制御弁前後差圧とパージ制御弁開度とに基づいてパージ空気量(キャニスタ脱気Air量)が演算される(ステップS7)。
【0082】
ここで、パージ制御弁前後差圧は、吸気充填効率に基づいて演算されるようになっているが、このようにする理由はおよそ次のとおりである。
すなわち、吸気圧はよく知られた手法で充填効率から演算することができ、かつパージ制御弁29の直下流側の圧力は吸気圧とほぼ同一である。他方、パージ制御弁29の直上流側の圧力は実質的に一定値(大気圧)とみなすことができる。そして、パージ制御弁前後差圧はパージ制御弁29の直上流側の圧力と直下流側の圧力の差、すなわち大気圧と吸気圧との差である。したがって、充填効率に所定の演算処理を施すことによりパージ制御弁前後差圧を得ることができることになる。このようにすれば、吸気圧センサを設ける必要がなくなり、吸気系10が簡素化される。
なお、パージ制御弁29の直下流側の圧力を吸気圧センサを用いて検出するようにしてもよいのはもちろんである。また、パージ制御弁前後差圧を直接検出する差圧センサを設けてもよい。
【0083】
パージ空気量は、パージ制御弁前後差圧とパージ制御弁開度とに基づいて、よく知られた手法で演算される。
すなわち、一般に気体の密閉通路に介設された機器の前後差圧ΔPすなわち圧力損失と、該機器を流通する気体の流速uとの間には、流体力学の分野でよく知られていた一定の関数関係が成立する(例えば、ΔP=k・u2)。したがって、前後差圧に基づいて該機器内における気体の流速を演算することができる。そして、この流速に該機器の流通断面積を乗算すれば該流路を流れている気体の体積流量を得ることができる。
したがって、かかる一般原理に鑑みれば、本実施例においては、パージ制御弁開度からパージ制御弁29の流通断面積を容易に求めることができるので、パージ制御弁前後差圧とパージ制御弁開度(駆動デューティ比)とに基づいてパージ空気量(体積流量)を求めることができるわけである。
なお、パージ空気量を直接検出することができる流量検出センサを設け、該流量検出センサでパージ空気量を検出するようにしてもよい。
【0084】
そして、ステップS7で演算されたパージ空気量と、トラップ量推定値とに基づいて蒸発燃料放出量(パージガス質量流量すなわち蒸発燃料の質量流量)が演算される(ステップS8)。次に、エンジン回転数が計測され(ステップS9)、このエンジン回転数とステップS8で演算された蒸発燃料放出量とに基づいてパージガス比率が演算される(ステップS10)。ここで、パージガス比率とは、キャニスタ25からパージ通路28に放出された蒸発燃料が、必要とされる全燃料(要求燃料噴射量)中に占める比率であって、蒸発燃料の燃焼への寄与率をあらわしている。
なお、パージガス比率は特許請求の範囲に記載された「蒸発燃料比率」に相当する。
【0085】
この後、キャニスタ25から燃焼室4に至るパージ空気ないしは蒸発燃料の輸送経路(以下、これを蒸発燃料輸送経路という)の輸送遅れ特性(吸入空気量モデル)を設定し(ステップS11)、続いてステップ10で演算されたパージガス比率とステップS11で設定された吸入空気量モデルとに基づいて正味パージガス比率が演算される(ステップS12)。この正味パージガス比率は、燃焼室4に流入する蒸発燃料が、必要とされる全燃料(要求燃料噴射量)中に占める比率、すなわち蒸発燃料流入量が要求燃料噴射量中に占める比率である。したがって、燃料噴射弁15から噴射すべき燃料量は、要求燃料噴射量に(1−正味パージガス比率)を乗算したものとなる。
なお、正味パージガス比率は特許請求の範囲に記載された「正味蒸発燃料比率」に相当する。
【0086】
そして、ステップS12で演算された正味パージガス比率(蒸発燃料流入量)に相当する燃料噴射弁15のパルス幅すなわちパージ補正パルス幅が演算され(ステップS13)、このパージ補正パルス幅が、前記のエンジン制御ブロックSLに出力される。
【0087】
以下、図7〜図14に示すフローチャートに従って、適宜図3〜図6を参照しつつ、コントロールユニットCUによる各種制御の制御手法ないしは各種演算の演算手法について説明する。
まず、図7に示すフローチャート従って、該制御手法ないしは演算手法の全体フローすなわちメインルーチンを説明する。
このメインルーチンにおいては、まずステップT1で初期化が行われる。具体的には、トラップ量推定値trapと、空燃比学習完了フラグxlrndと、トラップ量推定完了フラグxtraplrnと、トラップ量推定可能フラグxtlexとに夫々初期値として0がセットされる。ここで、空燃比学習完了フラグxlrndは、空燃比学習が完了したときに1がたてられるフラグである。トラップ量推定完了フラグxtraplrnは、トラップ量の推定が完了したときに1がたてられ、トラップ量の推定の禁止が所定時間以上継続されたときに0にリセットされるフラグである。トラップ量推定可能フラグxtlexは、トラップ量推定条件が成立したときに1がたてられ、上記トラップ量推定条件が不成立となったときに0にリセットされるフラグである。
【0088】
次に、ステップT2でエンジン回転数neが演算され、続いてステップT3で充填効率ceが演算される。ここで、充填効率ceは、吸入空気量、エンジン回転数ne、吸気温等に基づいてよく知られた手法で演算される。
【0089】
この後、ステップT4〜ステップT8が順に実行される。ここで、ステップT4〜T8は、夫々、後で説明する各種サブルーチンを用いて実行される。具体的には、ステップT4では、図11又は図12にそのフローチャートが示されているサブルーチンを用いて燃料噴射量の演算が行われる。ステップT5では、図14にそのフローチャートが示されているサブルーチンを用いてパージ実行判定が行われる。ステップT6では、図13にそのフローチャートが示されているサブルーチンを用いてパージ量の演算が行われる。ステップT7では、図10にそのフローチャートが示されているサブルーチンを用いてトラップ量推定の実行判定が行われる。ステップT8では、図8又は図9にそのフローチャートが示されているサブルーチンを用いてトラップ量の演算が行われる。この後、ステップT2に復帰する。
【0090】
以下、各サブルーチンについて具体的に説明する。
まず、図8に示すフローチャートに従って適宜図3〜図6を参照しつつ、メインルーチンのステップT8で実行(起動)されるトラップ量演算サブルーチン、すなわちコントロールユニットCUによるトラップ量の具体的な推定手法を説明する。
【0091】
このサブルーチンにおいては、まずステップ#2で、所定のトラップ量推定条件が成立しているか否か、すなわちエンジンCEの運転状態がトラップ量を高精度で推定することが可能な状態にあるか否かが判定される。ここでは、次の4つの条件がすべて成立しているときにはトラップ量推定条件が成立しているものと判定するようにしている。
(1)キャニスタパージが行われていること
(2)空燃比のフィードバック制御が行われていること
(3)充填効率が所定値未満であること(図10中のステップ#33参照)
(4)空燃比学習が完了していること(図10中のステップ#34参照)
なお、上記(1)〜(4)に加えて、吸気圧が所定値以下の時、トラップ量の推定が禁止できるように、吸気圧、または吸気圧相当を求めることができる充填効率が、上記(3)の所定値(上限値)より低い下限値(第2の所定値)以上であることをトラップ量推定条件としても良い。
【0092】
換言すれば、キャニスタパージが停止されているとき、空燃比のフィードバック制御が停止されているとき、充填効率が所定値以上であるとき、又は空燃比学習が完了していないときには、トラップ量の推定を禁止するようにしている。このようにする理由は、およそ次のとおりである。
すなわち、前記したとおり、キャニスタパージ又はフィードバック制御が停止されているときは、トラップ量とフィードバック補正値ないしは平均フィードバック補正値との間に相関性が存在せず、したがってトラップ量を推定することができないのでトラップ量の推定を禁止するようにしている。
充填効率ないし吸気圧が非常に高いときには、パージ制御弁前後差圧が非常に小さくなるとともに吸気脈動が激しくなりフィードバック補正値が変動し、このためパージ空気量を高精度で演算することができなくなるので、トラップ量の推定を禁止するようにしている。
また、充填効率ないし吸気圧が非常に低いときには、パージ制御弁前後差圧が大きくなりすぎパージ空気量を高精度で演算することができなくなるので、トラップ量の推定を禁止するようにしている。
さらに、空燃比学習が完了した後でトラップ量の推定を行うようにしているのは、前記したとおり、空燃比学習が完了した後はトラップ量の推定精度が非常に高くなるからである(段落0075参照)。
【0093】
かくして、ステップ#2でトラップ量推定条件が成立していると判定された場合は(YES)、ステップ#3でトラップ量推定可能フラグxtlexに1がたてられるとともに、トラップ量推定禁止カウンタctに初期値ct0がセットされる。トラップ量推定禁止カウンタctは、トラップ量推定条件が不成立となってトラップ量の推定が禁止されている期間(時間)をカウントするためのカウンタである。
【0094】
続いて、ステップ#4で、次の式1により平均フィードバック補正値cfbaveが演算されるとともに、平均フィードバック補正値cfbaveの演算回数をカウントするための演算回数カウンタPが1だけインクリメントされる(P=P+1)。すなわち、リニアO2センサ9を用いたこのエンジンでは、一定時間毎のフィードバック補正値の相加平均値が平均フィードバック補正値cfbaveとされている。
【数1】
cfbave=Σ(k=0→n−1)[cfb(i−k)]/n……………………………式1
cfbave:平均フィードバック補正値
cfb(i):今回のフィードバック補正値
cfb(i−k):k回前のフィードバック補正値
n:平均化処理されるcfbのサンプル数
なお、式1において、Σ(k=α→β)[f(k)]は、関数f(k)の、k=αからk=βまでのシグマ演算(Σ)をあらわすものとする。
【0095】
次に、ステップ#5で演算回数カウンタPが所定の設定値P0以上であるか否かが判定され、P<P0であると判定された場合は(NO)、以下の全ステップをスキップし、すなわちトラップ量の推定を行わずにステップ#2に復帰する。このトラップ量演算サブルーチンでは、演算回数カウンタPのカウント値が設定値P0未満の場合は、平均フィードバック補正値cfbaveがまだ十分には安定していないものと考えられるので(フィードバック補正値cfbの変動の影響が残っている)トラップ量の推定を行わないようにしている。
【0096】
他方、ステップ#5でP≧P0であると判定された場合は(YES)、ステップ#6で平均フィードバック補正値cfbaveの絶対値│cfbave│が所定の限界値ε以上であるか否かが判定される。
ここでは│cfbave│<εであればトラップ量の推定が完了しているものと判定し、この場合はトラップ量推定値が真のトラップ量とほぼ一致しているものと考えられるので、この現時点におけるトラップ量推定値trapを変化させずにそのまま保持するようにしている。
例えば、図15に模式的に示すように、真のトラップ量がa2である場合、トラップ量推定値trapがa1〜a3の範囲内に入ったときにトラップ量の推定が完了しているものと判定されることになる。なお、図15においてグラフG1は│cfbave│をあらわしている。また、trap>a2の範囲内ではcfbave>0であり、trap<a2の範囲内ではcfbave<0である。
他方、│cfbave│≧εであれば平均フィードバック補正値cfbaveが0以下であるか又は0より大きいかに応じてトラップ量推定値trapを補正量σだけ増加又は減少させ、トラップ量推定値trapを真のトラップ量に近付けるようにしている。なお、補正量σの設定方法は前に説明したとおりである(段落0077、段落0078参照)。
【0097】
具体的には、ステップ#6で│cfbave│<εであると判定された場合は(NO)、ステップ#10でトラップ量推定完了フラグxtraplrnに1がたてられる。他方、ステップ#6で│cfbave│≧εであると判定された場合は(YES)、ステップ#7でcfbaveが0以下であるか否かが判定される。ここで、cfbave≦0であると判定された場合は(YES)ステップ#8でトラップ量推定値trapが補正量σだけ増やされ(trap=trap+σ)、他方cfbave>0であると判定された場合は(NO)ステップ#9でトラップ量推定値trapが補正量σだけ減らされる(trap=trap−σ)。
【0098】
ところで、前記のステップ#2でトラップ量推定条件が成立していないと判定された場合は(NO)、ステップ#11でトラップ量推定禁止カウンタctが1だけデクリメントされてトラップ量の推定が禁止されている期間(時間)のカウントが開始されるとともに(ct=ct−1)、演算回数カウンタPが0にリセットされる(P=0)。
【0099】
次に、ステップ#12でトラップ量推定禁止カウンタctが0以下であるか否か、すなわちトラップ量の推定が禁止された後所定期間ct0が経過したか否かが判定され、ct≦0であると判定された場合は(YES)、すでにct0を経過しているのでステップ#13でトラップ量推定完了フラグxtraplrnが0にリセットされる。この場合は、前記したとおり、トラップ量推定値trapが真のトラップ量からずれているおそれがあるので、トラップ量推定完了フラグxtraplrnをリセットするようにしている。他方、ステップ#12でct>0であると判定された場合は(NO)、まだct0を経過していないのでステップ#13をスキップする。
【0100】
図16に、かかるトラップ量推定ルーチンが実行された場合において、時刻t1でキャニスタパージが開始されたときの、パージ制御弁29に印加される駆動デューティ比dpg(グラフG2)、フィードバック補正値cfb(グラフG3)、平均フィードバック補正値cfbave(グラフG4)及びトラップ量推定値trap(グラフG5)の経時変化の一例を示す。
図16から明らかなとおり、トラップ量推定値trapは時刻t1から推定が開始され、まもなく一定値に収束している。このようにして、トラップ量が高精度で推定される。
【0101】
この図8に示すトラップ量演算サブルーチンでは、ステップ#4で、前記したとおり、一定時間毎のフィードバック補正値cfbの相加平均が平均フィードバック補正値cfbaveとされているが、このようにせず、次の式2を用いてフィードバック補正値cfbを重み付けした加重平均値すなわちなまし値を求め、この加重平均値を平均フィードバック補正値cfbaveとしてもよい。
【数2】
cfbave=α・cfb(i)+(1−α)・cfb(i−1)…………………………式2
α;重み係数
cfbave:平均フィードバック補正値
cfb(i):今回のフィードバック補正値
cfb(i−1):前回のフィードバック補正値
【0102】
ここで、O2センサとしてλO2センサを用いる場合は、かかる加重平均値を平均フィードバック補正値cfbaveとするのが好ましい。
図9に、このように加重平均をとることにより平均フィードバック補正値cfbaveを演算する場合のトラップ量演算サブルーチンのフローチャートを示す。なお、図9に示すフローチャートは、ステップ#4’を除けば図8に示すフローチャートと同一である。
【0103】
図20に、リニアO2センサを用いたエンジンにおいて、フィードバック補正値cfbの相加平均値を平均フィードバック補正値cfbaveとした場合の(図8中のステップ#4参照)、フィードバック補正値cfb(グラフM1)及び平均フィードバック補正値cfbave(グラフM2)の、時間に対する変化特性を示す。
図20から明らかなとおり、リニアO2センサを用いてフィードバック補正値cfbの相加平均値を平均フィードバック補正値cfbaveとした場合は、精度の高い平均フィードバック補正値cfbaveが得られる。
【0104】
また、図21に、λO2センサを用いた場合において、フィードバック補正値cfbの加重平均値すなわちなまし値を平均フィードバック補正値cfbaveとした場合の(図9中のステップ#4’参照)、フィードバック補正値cfb(グラフM3)及び平均フィードバック補正値cfbave(グラフM4)の時間に対する変化特性を示す。
図21から明らかなとおり、λO2センサを用いてフィードバック補正値cfbの加重平均値を平均フィードバック補正値cfbaveとした場合は、過渡時において応答遅れの少ない平均フィードバック補正値cfbaveが得られる。なお、PID制御では、反転値サンプルの相加平均値(グラフM5)は、応答遅れが大きくなる。
【0105】
ところで、コントロールユニットCUが空燃比の学習機能を備えている場合は、前に説明したとおり、空燃比学習が終了した後でトラップ量の推定を行うのが好ましい。なお、空燃比学習が終了した後でトラップ量の推定を行う場合の利点は前に説明したとおりである(段落0075参照)。
【0106】
以下、図10に示すフローチャートに従って、適宜図3〜図6を参照しつつ、メインルーチンのステップT7で実行(起動)されるトラップ量推定実行判定サブルーチン、すなわち空燃比の学習機能を備えている場合の好ましいトラップ量の推定手法を説明する。
このサブルーチンでは、基本的にはアイドル時において所定の空燃比学習条件が成立しているときに空燃比学習を行う一方、該空燃比学習が終了した後において所定のトラップ量推定条件が成立しているときにトラップ量の推定を行うようにしている。
【0107】
具体的には、図10に示すように、まずステップ#22でアイドル判定フラグxidlが1であるか否かが判定される。アイドル判定フラグxidlは、エンジンCEがアイドル状態にあるときには1がたてられ、非アイドル状態にあるときには0にリセットされるフラグである。ここで、xidl=1であると判定された場合は(YES)、ステップ#23〜ステップ#29の空燃比学習を行うためのアイドル時用ルーチンが実行される。他方、xidl≠1(xidl=0)であると判定された場合は(NO)、ステップ#30で空燃比学習実行カウンタclrnとアイドル継続時間カウンタtidlとが夫々0にリセットされた後、後で説明するステップ#31が実行されることになる。
【0108】
アイドル時用ルーチンが実行される場合は、まずステップ#23とステップ#24とで、順に、空燃比フィードバック制御実行フラグxfbが1であるか否かと、アイドル継続時間カウンタtidlが所定値αを超えているか否かとが判定される。ここで、空燃比フィードバック制御実行フラグxfbは空燃比のフィードバック制御が行われているときには1がたてられ、フィードバック制御が行われていないとき(オープンループ制御時)には0にリセットされるフラグである。また、アイドル継続時間カウンタtidlは、アイドル時におけるアイドル運転開始後の経過時間をカウントするためのカウンタである。
【0109】
このトラップ量推定実行判定サブルーチンでは、アイドル時における空燃比のフィードバック制御時において、アイドル運転継続時間が所定期間α以下の場合は、エンジンCEが安定したアイドル状態に達していないものと考えられるので、空燃比学習を行わないようにしている。
かくして、ステップ#23でxfb≠1(xfb=0)であると判定された場合は(NO)、空燃比学習を行うことができないので、ステップ#24〜ステップ#29は実行されず、前記のステップ#30で空燃比学習実行カウンタclrnとアイドル継続時間カウンタtidlとが夫々0にリセットされた後、ステップ#31が実行される。
【0110】
また、ステップ#23でxfb=1であると判定された場合(YES)、すなわちフィードバック制御時であっても、ステップ#24でtidl≦αであると判定された場合は(NO)、やはり空燃比学習を行うことができないので、ステップ#28で、アイドル継続時間カウンタtidlが1だけインクリメントされた後(tidl=tidl+1)、ステップ#31が実行される。
【0111】
他方、ステップ#24でtidl>αであると判定された場合は(YES)、ステップ#25で空燃比学習実行カウンタclrnが所定値β未満であるか否かが判定される。空燃比学習実行カウンタclrnは、アイドル運転開始後において空燃比学習が実行された回数をカウントするためのカウンタである。ここでは、空燃比学習の実行回数が所定値β以上となったときに空燃比学習が終了しているものと判定するようにしている。
【0112】
かくして、ステップ#25でclrn<βであると判定された場合は(YES)、まだ空燃比学習が終了していないのでステップ#26で空燃比学習が継続され、続いてステップ#27で空燃比学習実行カウンタclrnが1だけインクリメントされ(clrn=clrn+1)、この後ステップ#31が実行される。なお、空燃比学習は、空燃比偏差が0のときにはフィードバック補正値cfbが平均的には中立値0となるように、燃料噴射弁15の噴射特性を変化させるなどといった普通の手法で行われる。
【0113】
他方、ステップ#25でclrn≧βであると判定された場合は(NO)、空燃比学習が終了しているのでステップ#29で空燃比学習完了フラグxlrndに1がたてられ、この後ステップ#31が実行される。
【0114】
かくして、ステップ#31〜ステップ#34では、トラップ推定条件が成立しているか否かが判定される。ここでは、次の4つの条件がすべて成立しているときには、トラップ量推定条件が成立しているものと判定し、これらのうちのいずれか1つでも不成立であればトラップ量推定条件が不成立であると判定するようにしている。
(1)キャニスタパージが行われていること
(2)空燃比のフィードバック制御が行われていること
(3)充填効率(または吸気圧)が所定値未満であること
(4)空燃比学習が完了(終了)していること
これらの4つの条件(1)〜(4)を設ける理由は、図8にフローチャートを示している前記のトラップ量演算サブルーチンのステップ#2の場合と同様である。なお、上記(1)〜(4)に加えて、吸気圧が所定値以下の時、トラップ量の推定が禁止できるように、吸気圧、または吸気圧相当を求めることができる充填効率が、上記(3)の所定値(上限値)より低い下限値(第2の所定値)以上であることをトラップ量推定条件としても良い。
【0115】
具体的には、ステップ#31〜ステップ#34の4つのステップで、順に、パージ実行フラグxpgが1であるか否かすなわちキャニスタパージが行われているか否かと、空燃比フィードバック制御実行フラグxfbが1であるか否かすなわち空燃比のフィードバック制御が行われているか否かと、充填効率ceが所定値γ未満であるか否かと、空燃比学習完了フラグxlrndが1であるか否かすなわち空燃比学習が終了しているか否かとが判定される。
【0116】
ここで、xpg=1であり、xfb=1であり、ce<γであり、かつxlrnd=1であると判定された場合(ステップ#31〜ステップ#34がすべてYES)、すなわちトラップ量推定条件が成立していると判定された場合は、ステップ#35でトラップ量が推定される。なお、トラップ量の具体的な推定方法は、図6にフローチャートを示すトラップ量演算サブルーチンの場合と同様である。
【0117】
他方、xpg=0であるか、xfb=0であるか、ce≧γであるか、又はxlrnd=0であると判定された場合は(ステップ#31〜ステップ#34のいずれか1つがNO)、トラップ量推定条件が成立していないので、ステップ#35をスキップする。
このように、図10にフローチャートを示すこのトラップ量推定手法によれば、空燃比学習が終了した後でトラップ量が推定されるので、トラップ量の推定精度が大幅に高められる。
【0118】
以下、図11に示すフローチャートに従って、適宜図3〜図6を参照しつつ、メインルーチンのステップT4で実行(起動)される燃料噴射量演算サブルーチン、すなわちコントロールユニットCUによるパージガス比率(蒸発燃料放出量)及び正味パージガス比率(蒸発燃料流入量)の演算手法と、空燃比制御(燃料噴射量制御)の制御手法とについて具体的に説明する。
この燃料噴射量演算サブルーチンでは、ステップ#41〜ステップ#47が順に実行される。
ステップ#41では、パージ制御弁前後差圧テーブルtable1を検索することにより、吸気充填効率ceに基づいてパージ制御弁前後差圧dpが演算される。ここでsipol(table1,ce)は、ceを独立変数としdpを従属変数とする所定の関数関係をあらわすtable1において、あるceに対応するdpを意味する。パージ制御弁前後差圧テーブルtable1は、吸気充填効率ceとパージ制御弁前後差圧dpとの間の関数関係をあらわすテーブルである。吸気充填効率ceに基づいてパージ制御弁前後差圧dpを演算することができる所以は前に説明したとおりである(段落0080参照)。
なお、パージ制御弁前後差圧dpを、このようなテーブル検索によるのではなく、ceとdpの関係をあらわす関数f1(ce)を用いて直接的に演算するようにしてもよい(dp=f1(ce))。
【0119】
ステップ#42では、パージ空気量マップmap1を検索することにより、パージ制御弁前後差圧dpとパージ制御弁29に印加される駆動デューティ比dpgとに基づいてパージ空気量qpgが演算される。ここでsmap(map1,dpg,dp)は、dpg及びdpを独立変数としqpgを従属変数とする所定の関数関係をあらわすmap1において、あるdpg及びdpに対応するqpgを意味する。パージ空気量map1は、駆動デューティ比dpg、パージ制御弁前後差圧dp及びパージ空気量qpgの相互間の関数関係をあらわすマップである。駆動デューティ比dpgとパージ制御弁前後差圧dpとに基づいてパージ空気量qpgを演算することができる所以は前に説明したとおりである(段落0081参照)。
なお、パージ空気量qpgを、このようなマップ検索によるのではなく、dpg、dp及びqpgの相互関係をあらわす関数f2(dpg,dp)を用いて直接的に演算するようにしてもよい(qpg=f2(dpg,dp))。
【0120】
ステップ#43では、蒸発燃料放出量マップmap2を検索することにより、パージ空気量qpgとトラップ量trapとに基づいて蒸発燃料放出量gpgが演算される。ここでsmap(map2,qpg,trap)は、qpg及びtrapを独立変数としgpgを従属変数とする所定の関数関係をあらわすmap2において、あるqpg及びtrapに対応するgpgを意味する。パージ空気量map2は、パージ空気量qpg、トラップ量trap及び蒸発燃料放出量gpgの相互間の関数関係をあらわすマップである。
図17に、蒸発燃料放出量gpgの、パージ空気量qpg及びトラップ量trapに対する依存特性の一例を示す。蒸発燃料放出量マップmap3は、例えば図17に示すような関数関係をマップ化したものである。
なお、蒸発燃料放出量gpgを、このようなマップ検索によるのではなく、qpg、trap及びgpgの相互関係をあらわす関数f3(gpg,trap)を用いて直接的に演算するようにしてもよい(gpg=f3(qpg,trap))。
【0121】
ステップ#44では、次の式3によりパージガス比率cpgoが演算される。
【数3】
cpgo=Ys・120/(γ0・Vc)・gpg/ne…………………………式3
cpgo:パージガス比率
Ys:吸入空気量を燃料噴射量に換算するための換算係数
γ0:密度
Vc:シリンダ有効容積
gpg:蒸発燃料放出量
ne:エンジン回転数[r.p.m.]
なお、式3において、120/(γ0・Vc・ne)は、単位時間(秒)当たりの燃焼室4への吸入空気量(質量流量)の逆数であり、したがってこれに換算係数Ysを乗算したYs・120/(γ0・Vc・ne)は単位時間あたりの要求燃料噴射量の逆数である。したがって、パージガス比率cpgoは、蒸発燃料放出量を要求燃料噴射量で除算した値、すなわち蒸発燃料放出量の全燃料流量に対する比率である。
【0122】
ステップ#45では、次の式4により正味パージガス比率cpgが演算される。
【数4】
cpg=λ・cpg+(1−λ)・cpgo………………………………………式4
cpg:正味パージガス比率
λ:一次フィルタ係数(0<λ<1)
cpgo:パージガス比率
式4は蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性をあらわすモデル式である。エンジンCEの吸気系10、AMI16及びパージ通路28の形状に応じて好ましく一次フィルタ係数λを設定することにより、式4を用いて正味パージガス比率cpg(蒸発燃料流入量)を正確に演算することができる。
【0123】
ステップ#46では、次の式5により実パルス幅ta(実燃料噴射量)すなわち燃料噴射弁15から実際に噴射すべき燃料噴射量が演算される。
【数5】
ta=K・ (ce・ctotal−cpg)……………………………………式5
ta:実パルス幅
K:換算係数
ce:吸気充填効率
ctotal:補正係数
式5において、K・ce・ctotalは要求パルス幅(要求燃料噴射量)すなわち燃焼室4で実際に必要とされる燃料量をあらわしている。また、k・cpgはパージによる供給燃料量を噴射パルス幅相当に換算したものである。したがって、式5では燃料噴射弁15から実際に噴射すべき燃料量(実燃料噴射量)に対応する噴射パルス幅すなわち実パルス幅taが演算されることになる。
【0124】
ステップ#47では、ステップ#46で演算された実パルス幅taで燃料噴射弁15から燃料が噴射され、この後ステップ#41に復帰する。このようにして燃焼室4には、キャニスタパージを行っているときでも、運転状態に応じて必要とされる量の燃料が正確に供給され、空燃比制御(燃料噴射量制御)の制御精度が高められ、実空燃比が目標値に保持される。この場合、運転状態に応じて要求燃料噴射量を決定するプロセスすなわち空燃比制御本体はフィードバック制御であるが、要求燃料噴射量から蒸発燃料流入量を差し引いてキャニスタパージによる影響を排除するプロセスはフィードフォワード制御である。したがって、正味パージガス比率ないしは蒸発燃料流入量の演算にはタイムラグが伴われない。このため、キャニスタパージに起因する実空燃比の目標値に対するずれは生じない。
図18に、かかる制御が行われた場合において時刻t2でキャニスタパージが開始されたときの、駆動デューティ比dpg(グラフH1)、パージガス比率cpgo(グラフH2)、正味パージガス比率cpg(グラフH3)及び実パルス幅ta(グラフH4)の時間に対する変化特性の一例を示す。
【0125】
このように、エンジンCEにおいては、トラップ量を推定し、該トラップ量に基づいて蒸発燃料流入量(正味パージガス比率)を正確に演算し、要求燃料噴射量から蒸発燃料流入量を差し引いて実燃料噴射量を設定するようにしているので、キャニスタパージによって吸気系10ないしは燃焼室4に流入する蒸発燃料が空燃比のフィードバック制御の外乱とはならない。このため、トラップ量の推定が完了しているときにはキャニスタパージによっては空燃比の目標値に対するずれは生じない。
しかしながら、トラップ量の推定が完了していないときすなわちトラップ量推定完了フラグxtraplrnが0であるときには、正味パージガス比率ないしは蒸発燃料流入量が正確には把握されない。したがって、トラップ量の推定が完了していないときには、キャニスタパージを規制するのが好ましい。
【0126】
かかるキャニスタパージの具体的な規制方法としては、例えば次のようなものが考えられる。
すなわち、トラップ量の推定が完了するまでは、キャニスタパージを禁止し、あるいはパージ速度(パージ空気量)を小さくするようにしてもよい。なお、キャニスタパージを禁止する場合は、該禁止をアイドル時のみとしてもよい。
また、パージ制御弁29が閉状態から開状態に変化してキャニスタパージが開始される際には、燃焼室4への燃料供給特性の急変を防止するために、パージ制御弁29の駆動デューティ比(パージ空気量)を、運転状態に応じて設定される目標駆動デューティ比まで一挙に増加させるのではなく、徐々に増加させるのが好ましい。
そして、このように駆動デューティ比を目標駆動デューティ比に達するまで徐々に増加させるようにした場合において、トラップ量の推定が完了していないときにはキャニスタパージ開始時における駆動デューティ比の増加速度を小さくするのが好ましい。つまり、トラップ量の推定が完了しているときには駆動デューティ比の増加速度を大きくし、トラップ量の推定が完了していないときには駆動デューティ比の増加速度を小さくすることになる。
【0127】
ところで、燃料噴射量演算サブルーチンにおいては、パージ空気量qpg及びトラップ量trapだけではなく、さらにキャニスタの25の脱気特性をも加味して蒸発燃料放出量gpgを演算するようにしてもよい。ここで、上記脱気特性としては、例えば、パージ空気によってキャニスタ25からパージされる燃料の質量流量(パージ質量流量)の吸気温依存性等を用いるのが好ましい。
なお、図22に、トラップ量を一定とした場合における、パージ質量流量の吸気温依存性の一例を示す。
【0128】
また、図6に、図22に示すようなパージ質量流量の吸気温依存性を考慮した場合における、制御システムの一例を示す。この図6に示す制御システムは、ステップS8でパージガス質量流量を演算する際に、吸気温ないしは吸気温依存性を考慮する点を除けば、前記の図5に示す制御システムと同様である。
さらに、図12に、図22に示すようなパージ質量流量の吸気温依存性を考慮した場合における燃料噴射量演算サブルーチンのフローチャートを示す。この図12に示す燃料噴射量演算サブルーチンは、ステップ#43aと、ステップ#43bで、上記吸気温依存性を考慮して次の式6、式7を用いて蒸発燃料放出量gpgを演算する点を除けば、前記の図11に示す燃料噴射量演算サブルーチンと同様である。
【数6】
gpgφ=smap(map2,qpg、trap)…………………………………………式6
(gpgφ=f3(qpg,trap)
【数7】
gpg=gpgφ・sipol(table2,thaa)………………………………………式7
gpgφ:吸気温補正前蒸発燃料放出量
gpg:吸気温補正後蒸発燃料放出量
thaa:吸気温
このように、吸気温依存性を考慮した場合、燃料タンク等の配置にかかわらず、燃料パージ量を高精度で演算することができる。
【0129】
以下、図13に示すフローチャートに従って、適宜図3〜図6を参照しつつ、メインルーチンのステップT6で実行(起動)されるパージ量演算サブルーチン、すなわちキャニスタパージ開始時に駆動デューティ比を徐々に増加させるようにした場合における、駆動デューティ比の増加速度の制御方法を説明する。
このパージ量演算サブルーチンでは、まずステップ#51で、パージ実行フラグxpgが1であるか否かが判定され、xpg≠1(xpg=0)であれば(NO)、ステップ#52でパージ補正値cmodが0とされる。
【0130】
パージ補正値cmodは、キャニスタパージが開始される際に、エンジンCEの運転状態に応じて設定された目標駆動デューティ比を補正するための0以上1以下の補正値であって、目標駆動デューティ比とパージ補正値cmodの積がパージ制御弁29に実際に印加される駆動デューティ比dpgとなる。そして、パージ補正値cmodは、キャニスタパージ開始前は0とされ、キャニスタパージ開始後は増分SPで徐々に増やされ、したがってパージ空気量が徐々に増やされる。そして、パージ補正値cmodが1に達した後は、1に保持される。なお、パージ補正値cmodが0である場合は目標駆動デューティ比の値にかかわらずキャニスタパージが停止され、パージ補正値cmodが1である場合は目標駆動デューティ比がそのままパージ制御弁29に印加されることになる。
【0131】
他方、ステップ#51で、xpg=1であると判定された場合は(YES)、ステップ#53でパージ補正値cmodが1であるか否かが判定される。ここで、cmod≠1(すなわち、cmod<1)であると判定された場合は(NO)、キャニスタパージ開始後においてパージ補正値cmodを徐々に増加させるべき状態にあるので、ステップ#54〜ステップ#57で、トラップ量の推定が完了しているか否かを考慮して、パージ補正値cmodが徐々に増やされる。
【0132】
具体的には、ステップ#54で、トラップ量推定完了フラグxtraplrnが1であるか否か、すなわちトラップ量の推定が完了しているか否かが判定される。ここで、xtraplrn=1であると判定された場合は(YES)、ステップ#55で増分SPが比較的大きい値KM1とされ、この後ステップ#57が実行される。この場合は、トラップ量の推定が完了しているので、正味パージガス比率ないしは蒸発燃料流入量を正確に演算することができる。したがって、フィードフォワード制御でキャニスタパージの影響を確実に補償することができる。すなわち、ある程度急激にキャニスタパージを開始しても、その影響は十分に補償され、空燃比制御に乱れを生じさせない。そこで、増分SPを大きくして、すなわちパージ補正値cmodの増加速度を大きくして、早期に目標駆動デューティ比でキャニスタパージを行うようにしている。
この場合、実際にパージ制御弁29に印加される駆動デューティ比dpgの時間に対する変化特性は、例えば図19中のグラフL1のようになる。なお、図19中において、グラフL1,L2が時間軸と平行になっている部分は、目標駆動デューティ比をあらわしている。
【0133】
他方、ステップ#54でxtraplrn≠1(xtraplrn=0)であると判定された場合は(NO)、ステップ#56で増分SPが比較的小さい値KM2(KM2<KM1)とされ、この後ステップ#57が実行される。この場合は、トラップ量の推定がまだ完了していないので、正味パージガス比率ないしは蒸発燃料流入量を正確に演算することができない。したがって、フィードフォワード機能が十分にははたらかないので、急激にキャニスタパージを開始すると、その影響が十分に補償されず、空燃比制御に乱れを生じる。そこで、増分SPを小さくして、すなわちパージ補正値cmodの増加速度を小さくするようにしている。
この場合、実際にパージ制御弁29に印加される駆動デューティ比dpgの時間に対する変化特性は、例えば図19中のグラフL2のようになる。
【0134】
ステップ#57では、前回のパージ補正値cmodにSPを加算して今回のパージ補正値cmodが演算される。なお、加算の結果今回のパージ補正値cmodが1を超える場合には1にとどめられる。ここで、addclip(cmod,SP,1)は、cmodにSPを加算するが上限値を1とするといった演算処理をあらわしている。このようにして、パージ補正値cmodが徐々に増やされる。
【0135】
次に、ステップ#58で、次の式8によりパージ制御弁29に実際に印加すべき駆動デューティ比dpgが演算される。
【数8】
dpg=cmod・smap(map3,ne,ce)………………………………………式8
dpg:駆動デューティ比
cmod:パージ補正値
smap(map3,ne,ce):目標駆動デューティ比
ne:エンジン回転数
ce:吸気充填効率
なお、式8において、smap(map3,ne,ce)は、ne及びceを独立変数としdpgを従属変数とする所定の関数関係をあらわすデューティ比map3において、あるne及びceに対応するdpgを意味する。デューティ比map3は、エンジン回転数ne、吸気充填効率ce及び駆動デューティ比dpgの相互間の関数関係をあらわすマップである。
このようにして、キャニスタパージが開始される際には、駆動デューティ比dpgすなわちパージ空気量が徐々に増やされる。
【0136】
ところで、前記のステップ#53でcmod=1であると判定された場合は(YES)、キャニスタパージ開始後においてcmodがすでに1に達していることになるので、ステップ#54〜ステップ#57をスキップして、ステップ#58でパージ補正値cmodを1として駆動デューティ比dpgが演算される。
【0137】
以下、図14に示すフローチャートに従って、適宜図3〜図6を参照しつつ、メインルーチンのステップT5で実行(起動)されるパージ実行判定サブルーチンについて説明する。
このパージ実行判定サブルーチンでは、まずステップ#61でパージ実行可であるか否かが判定され、パージ実行可でなければ(NO)、ステップ#66でパージ実行フラグxpgに0がセットされる。この後、ステップ#61に復帰する。
なお、ここでは水温が80℃以上である場合において、エンジンCEの運転状態がフィードバックゾーン又はエンリッチゾーンにあるときには、パージ実行可とされている。
【0138】
他方、ステップ#61でパージ実行可であると判定された場合は(YES)、ステップ#62でアイドル判定フラグxidlが1であるか否か、すなわちアイドル時であるか否かが判定され、xidl≠1(xidl=0)であれば(NO)、すなわちアイドル時でなければ、ステップ#65でパージ実行フラグxpgに1がセットされる。
【0139】
ステップ#62で、xidl=1であると判定された場合は(YES)、ステップ#63とステップ#64とで、夫々、空燃比学習完了フラグxlrndが1であるか否かと、トラップ量推定完了フラグxtraplrnが1であるか否かとが判定される。ここでは、アイドル時において、xlrnd=1でありかつxtraplrn=1である場合、すなわち空燃比学習が完了しておりかつトラップ量推定が完了している場合にのみ、パージ実行を許可するようにしている(パージ実行フラグxpgに1をセットする)。
【0140】
かくして、ステップ#63とステップ#64とで、xlrnd=1でありかつxtraplrn=1であると判定された場合は、ステップ#65でパージ実行フラグxpgに1がセットされる。他方、xlrndとxtraplrnのうちの少なくとも一方が0であれば、ステップ#66でパージ実行フラグxpgに0がセットされる。
【0141】
このようにして、アイドル時においても、空燃比制御に乱れを生じさせずに、すなわち空燃比の目標値に対するずれを生じさせずにキャニスタパージを行うことができる。
【0142】
前記の実施例では、トラップ量を平均フィードバック補正値に基づいて推定するようにしているが、トラップ量を直接検出するトラップ量検出センサを設け、このトラップ量検出センサによって検出されたトラップ量に基づいて蒸発燃料放出量(パージガス比率)ないしは蒸発燃料流入量(正味パージガス比率)を演算するようにしてもよい。
この場合、トラップ量検出センサとしては、キャニスタ25内の吸着材の静電容量に基づいてトラップ量を検出するもの、あるいはHCセンサ等をもちいることが可能である。
【0143】
【発明の作用・効果】
第1の発明によれば、平均フィードバック補正値に基づいて蒸発燃料捕集量が正確に推定される。したがって、該蒸発燃料捕集量とパージ空気量とに基づいて、好ましくは蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性を考慮することによって、タイムラグのない蒸発燃料パージ量あるいは燃焼室への蒸発燃料流入量を正確に把握することが可能となる。そして、このようにして把握されたタイムラグのない蒸発燃料パージ量ないしは蒸発燃料流入量で燃料噴射量を減量補正することによって、キャニスタパージによって燃焼室に供給される蒸発燃料を、空燃比フィードバック制御の外乱から切り離すことができ、空燃比制御の制御精度を高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれの発生を有効に防止することができる。
また、平均フィードバック補正値に基づいて蒸発燃料捕集量を推定するようにしているので、フィードバック補正値が変動している場合でも蒸発燃料捕集量が正確に推定され、蒸発燃料捕集量の推定精度が大幅に高められる。
【0144】
第2の発明によれば、基本的には第1の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、平均フィードバック補正値が中立値より小さいか否かに応じて前回の蒸発燃料捕集量推定値を増減させ今回の蒸発燃料捕集量を推定するようにしているので、蒸発燃料捕集量の推定が極めて容易となる。
【0145】
第3の発明によれば、基本的には第2の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、平均フィードバック補正値が大きいときほど補正量が大きく設定されるので、蒸発燃料捕集量推定値の収束を速めることができる。
【0146】
第4の発明によれば、基本的には第1〜第3の発明のいずれか1つと同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下、すなわち平均フィードバック補正値に基づいて蒸発燃料捕集量を正確に推定することが困難な状況下では蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が高められる。
【0147】
第5の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性がないパージ停止時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0148】
第6の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い高充填効率時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0149】
第7の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い低吸気圧時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0150】
第8の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性がない空燃比フィードバック制御停止時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0151】
第9の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、相関性の低い条件が重複しているときに蒸発燃料の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量の推定が過度に禁止されるのが防止される。
【0152】
第10の発明によれば、基本的には第1〜第9の発明のいずれか1つと同様の作用・効果が得られる。さらに、平均フィードバック補正値の絶対値が所定の限界値未満となったときに蒸発燃料捕集量の推定が完了しているものと判定されるので、蒸発燃料捕集量の推定完了判定が容易となる。
【0153】
第11の発明によれば、基本的には第10の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量の推定が完了していると判定された後において、蒸発燃料捕集量の推定が所定期間以上継続して禁止されたときには、上記の完了判定が撤回されるので、蒸発燃料捕集量の推定が長時間継続されたことによって蒸発燃料捕集量推定値が真値からずれている場合に、蒸発燃料捕集量の推定が完了していると誤判定するのが防止される。
【0154】
第12の発明によれば、基本的には第1〜第11の発明のいずれか1つと同様の作用・効果が得られる。さらに、空燃比制御における空燃比学習が終了した後で蒸発燃料捕集量が推定される。したがって、蒸発燃料捕集量推定値が真値より大きいときには平均フィードバック補正値が中立値よりも確実に大きくなり、他方蒸発燃料捕集量推定値が真値よりも小さいときには平均フィードバック補正値が中立値よりも確実に小さくなるので、蒸発燃料捕集量の推定精度が大幅に高められる。
【0155】
第13の発明によれば、基本的には第1〜第9の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、空燃比検出手段が空気過剰率λが1より大きい領域でもO2濃度を検出することができるリニアO2センサとされるので、フィードバック補正値の相加平均値又は加重平均値である平均フィードバック補正値の算出精度が高められ、蒸発燃料捕集量の推定精度がさらに高められる。
【0156】
第14の発明によれば、基本的には第1〜第9の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、空燃比検出手段が空気過剰率λO2センサとされ、フィードバック補正値の加重平均値が平均フィードバック補正値とされるので、過渡時においては応答遅れの少ない平均フィードバック補正値が得られ、蒸発燃料捕集量の推定精度が大幅に高められる。
【0157】
第15の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い高吸気圧時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0158】
第16の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い低充填効率時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0159】
第17の発明によれば、蒸発燃料量推定装置によって推定された蒸発燃料捕集量に基づいて蒸発燃料パージ量が算出されるので、タイムラグのない正確な蒸発燃料パージ量が得られる。そして、このようにして得られたタイムラグのない蒸発燃料パージ量で燃料噴射量を減量補正することにより、キャニスタパージによって燃焼室に供給される蒸発燃料を、空燃比のフィードバック制御の外乱から切り離すことができ、空燃比制御の制御精度を高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれの発生を有効に防止することができる。
なお、蒸発燃料捕集量を推定する上においては、第1〜第14の発明のいずれか1つと同様の作用・効果が得られる。
【0160】
第18の発明によれば、蒸発燃料捕集量検出手段によって検出された蒸発燃料捕集量に基づいて蒸発燃料パージ量が算出されるので、タイムラグのない正確な蒸発燃料パージ量が得られる。そして、このようにして得られたタイムラグのない蒸発燃料パージ量で燃料噴射量を減量補正することにより、キャニスタパージによって燃焼室に供給される蒸発燃料を、空燃比のフィードバック制御の外乱から切り離すことができ、空燃比制御の制御精度を高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれの発生を有効に防止することができる。
さらに、まず蒸発燃料放出量が算出され、この蒸発燃料放出量に基づいて、好ましくは蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性を考慮するなどして、実際に燃焼室へ流入する蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料流入量 ) が正確に算出される。したがって、燃料噴射量の減量補正を正確に行うことが可能となり、空燃比制御の制御精度を一層高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれを一層有効に防止することができる。
さらに、蒸発燃料パージ手段の制御弁の開度と該制御弁の前後の差圧とに基づいてパージ空気量が演算され、さらにこのパージ空気量と蒸発燃料捕集量とに基づいて蒸発燃料放出量が演算されるので、蒸発燃料放出量の演算精度が大幅に高められる。
【0161】
第19の発明によれば、基本的には第18の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性を考慮して、蒸発燃料放出量に基づいて蒸発燃料流入量が演算されるので、蒸発燃料流入量が正確に求められる。このため、燃料噴射量の減量補正を正確に行うことが可能となり、空燃比制御の制御精度を一層高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれを一層有効に防止することができる。
【0162】
第20の発明によれば、基本的には第19の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料放出量とエンジン回転数とに基づいて蒸発燃料比率が演算され、さらにこの蒸発燃料比率と、蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性とに基づいて蒸発燃料流入量に対応する正味蒸発燃料比率が演算されるので、蒸発燃料流入量(正味蒸発燃料比率)の演算が簡略化される。
【0163】
第21の発明によれば、基本的には第20の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、パージ空気量演算手段と、蒸発燃料放出量演算手段と、輸送遅れ特性設定手段と、蒸発燃料比率演算手段と、蒸発燃料流入量演算手段とが、夫々、所定のモデル式でもって出力値を演算又は設定するようになっている(モデル化されている)ので、パージ空気量、蒸発燃料放出量及び蒸発燃料流入量の演算が極めて容易となる。
【0164】
第22の発明によれば、基本的には第17〜第21の発明のいずれか1つと同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、キャニスタパージが規制されるので、蒸発燃料流入量の算出精度が低いのにもかかわらずキャニスタパージに起因する空燃比制御の乱れを抑制することができる。
【0165】
第23の発明によれば、基本的には第22の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、キャニスタパージが禁止されるのでキャニスタパージによる空燃比制御の乱れを確実に防止することができる。
【0166】
第24の発明によれば、基本的には第22の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、キャニスタパージの禁止がアイドル時のみとされるので、非アイドル時にはキャニスタパージを行うことができ、不必要にキャニスタパージを禁止するのを防止することができる。
【0167】
第25の発明によれば、基本的には第22又は第24の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、キャニスタパージのパージ速度を小さくするようにしているので、キャニスタパージによる空燃比制御の乱れを一層有効に抑制することができる。
【0168】
第26の発明によれば、基本的には第22又は第24の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、キャニスタパージのパージ量を少なくするようにしているので、キャニスタパージによる空燃比制御の乱れを一層有効に抑制することができる。
【0169】
第27の発明によれば、基本的には第25の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料パージ手段の制御弁が閉弁状態から開弁状態に移行する際にはパージ速度が徐々に増加させられ、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、上記増加速度が小さく設定されるので、キャニスタパージ開始時における空燃比制御の乱れを防止することができる。
【0170】
第28の発明によれば、蒸発燃料捕集量検出手段によって検出された蒸発燃料捕集量に基づいて蒸発燃料パージ量が算出されるので、タイムラグのない正確な蒸発燃料パージ量が得られる。そして、このようにして得られたタイムラグのない蒸発燃料パージ量で燃料噴射量を減量補正することにより、キャニスタパージによって燃焼室に供給される蒸発燃料を、空燃比のフィードバック制御の外乱から切り離すことができ、空燃比制御の制御精度を高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれの発生を有効に防止することができる。
さらに、まず蒸発燃料放出量が算出され、この蒸発燃料放出量に基づいて、好ましくは蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性を考慮するなどして、実際に燃焼室へ流入する蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料流入量 ) が正確に算出される。したがって、燃料噴射量の減量補正を正確に行うことが可能となり、空燃比制御の制御精度を一層高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれを一層有効に防止することができる。
さらに、蒸発燃料捕集手段の脱気特性を考慮して蒸発燃料流入量が算出されるので、燃料タンク等の配置にかかわらず該蒸発燃料流入量の算出精度が高められ、空燃比制御の制御精度が高められる。
【0171】
第29の発明によれば、基本的には第28の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集手段の蒸発燃料放出特性の吸気温依存性を考慮して蒸発燃料流入量が算出されるので、該蒸発燃料流入量の算出精度が一層高められ、空燃比制御の制御精度が大幅に高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1〜請求項14に対応する第1〜第14の発明の構成を示すブロック図である。
【図2】請求項17〜請求項29に対応する第17〜第29の発明の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明にかかる蒸発燃料量推定装置及び制御装置を備えたエンジンのシステム構成図である。
【図4】本発明にかかる蒸発燃料量推定装置及び制御装置を備えたエンジンの変形例を示すシステム構成図である。
【図5】コントロールユニットの構成を機能化して示したブロック図である。
【図6】蒸発燃料放出量の吸気温依存性を考慮した場合における図5と同様の図である。
【図7】コントロールユニットによるエンジン制御のメインルーチンのフローチャートである。
【図8】トラップ量演算サブルーチンのフローチャートである。
【図9】トラップ量演算サブルーチンの変形例のフローチャートである。
【図10】トラップ量推定実行判定サブルーチンのフローチャートである。
【図11】燃料噴射量演算サブルーチンのフローチャートである。
【図12】燃料噴射量演算サブルーチンの変形例のフローチャートである。
【図13】パージ量演算サブルーチンのフローチャートである。
【図14】パージ実行判定サブルーチンのフローチャートである。
【図15】平均フィードバック補正値とトラップ量の関係を示す図である。
【図16】駆動デューティ比、フィードバック補正値、平均フィードバック補正値及びトラップ量推定値の経時変化の一例を示す図である。
【図17】蒸発燃料放出量のパージ空気量及びトラップ量に対する依存特性を示す図である。
【図18】駆動デューティ比、パージガス比率、正味パージガス比率及び実パルス幅の経時変化の一例を示す図である。
【図19】キャニスタパージ開始時における、駆動デューティ比の経時変化の一例を示す図である。
【図20】リニアO2センサを用いた場合の、フィードバック補正値及び平均フィードバック補正値の時間に対する変化特性を示す図である。
【図21】λO2センサを用いた場合の、フィードバック補正値及び平均フィードバック補正値の時間に対する変化特性を示す図である。
【図22】パージ質量流量の吸気温依存性を示す図である。
【符号の説明】
CE,CE’…エンジン
CU…コントロールユニット
4…燃焼室
9…リニアO2センサ
10…吸気系
15…燃料噴射弁
16…アシストエア供給手段(AMI)
25…キャニスタ
28…パージ通路
29…パージ制御弁
【産業上の利用分野】
本発明は、キャニスタの蒸発燃料捕集量を推定する蒸発燃料量推定装置、及び該蒸発燃料量推定装置又は蒸発燃料捕集量検出手段を備えていて蒸発燃料捕集量等に基づいて蒸発燃料パージ量を算出するエンジンの制御装置、さらには上記蒸発燃料パージ量等に基づいて空燃比を制御するエンジンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用の燃料噴射式エンジンにおいては空燃比を目標値(目標空燃比)に合わせるために、基本的にはエアフローセンサによって検出される吸入空気量に対応する基本燃料噴射量(基本パルス幅)で、燃料噴射弁から吸気系又は燃焼室に燃料が噴射されるようになっている。しかしながら、燃料噴射弁の噴射量コントロールの精度には限度があり、また燃料噴射弁から噴射された燃料の一部は吸気通路壁に付着するなどしてすぐには燃焼室に入らない。また、燃料噴射弁の噴射特性は経時的に変化することがある。このため、単に吸入空気量に対応する基本燃料噴射量で燃料を噴射するだけでは、高精度で空燃比を目標空燃比に一致させることはむずかしい。
【0003】
そこで、通常、燃料噴射式エンジンにおいては、所定の運転領域(フィードバック領域)では、リニアO2センサ又はλO2センサで排気ガス中のO2濃度を検出して該O2濃度から空燃比を算出し、この空燃比の目標空燃比に対する偏差(空燃比偏差)に応じて該空燃比偏差をなくす方向に作用するフィードバック補正値を演算し、該フィードバック補正値で上記基本燃料噴射量を補正して空燃比を目標値に追従させるといった空燃比制御、すなわち空燃比のフィードバック制御を行うようにしている。なお、フィードバック補正値を中立値に固定したときには、フィードバック制御は行われずオープンループ制御が行われることになる。
なお、リニアO2センサは空気過剰率λが1より大きいとき領域においてもO2濃度を検出することができるが、λO2センサは基本的には空気過剰率λが1より大きいか否かを検出するだけである。
【0004】
他面、自動車において燃料タンク内の空気を直接大気中に排出すると大気汚染を招くとともに燃料の損失となるので、自動車には通常、燃料タンクから排出された空気に含まれる蒸発燃料を捕集(吸着)するキャニスタが設けられる。そして、かかるキャニスタには、該キャニスタ内に捕集されている蒸発燃料を適宜吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段が設けられる。かかる蒸発燃料パージ手段には、普通、キャニスタと吸気系とを接続するパージ通路と、該パージ通路を適宜開閉するパージ制御弁とが設けられ、パージ制御弁が開かれたときにキャニスタ内の蒸発燃料が吸気系にパージ(キャニスタパージ)されるようになっている。
【0005】
したがって、キャニスタパージが行われるとキャニスタ内の蒸発燃料が吸気系に供給されることになるので、吸入空気量に応じた基本燃料噴射量で燃料噴射を行っているとき(オープンループ制御時)にキャニスタパージを行うと空燃比が目標値から大幅にずれてしまう。そこで、フィードバック領域で空燃比のフィードバック制御を行うようにしたエンジンでは、普通、フィードバック制御時にキャニスタパージを行うようにしている。
【0006】
しかしながら、このように空燃比のフィードバック制御時にキャニスタパージを行う場合、該キャニスタパージによって吸気系に供給される蒸発燃料は空燃比制御側からみれば外乱となり、キャニスタ内に蒸発燃料がトラップされている場合、この外乱はフィードバック補正値を中立値よりもリーン側に変化させることによってフィードバック動作により補償されることになる。そして、この場合、キャニスタパージによって吸気系に供給される蒸発燃料の量(蒸発燃料パージ量)が一定であり、かつエンジンが定常状態にあるときには、キャニスタパージに起因する外乱はほぼ完全に補償されるものの、蒸発燃料パージ量が急変する際、例えばパージ制御弁が閉状態から開状態に変化する際又は開状態から閉状態に変化する際、あるいはパージ制御弁の前後差圧が急変する際、あるいはキャニスタパージ時においてエンジンが過渡状態にあるとき例えば加減速時には、空燃比の検出遅れ(タイムラグ)あるいはフィードバック動作の遅れによりキャニスタパージに起因する外乱が十分には補償されず、空燃比が目標値からずれてしまうといった問題がある。かかる現象が生じるのは、およそ次のような理由による。
【0007】
すなわち、空燃比のフィードバック制御時において、例えばパージ制御弁が閉状態から開状態になったときには、蒸発燃料パージ量に応じて空燃比がリッチ化することになる。そして、かかる空燃比のリッチ化は排気通路に臨設されたリニアO2センサ又はλO2センサによって検出された後、これに基づいてフィードバック補正値がリーン方向に変更されて上記空燃比のリッチ化が是正されることになる。換言すれば、キャニスタパージによって空燃比がリッチ化した場合、このリッチ化がリニアO2センサ又はλO2センサによって実際に検出されるまでは該空燃比のリッチ化は何ら是正されないことになる(タイムラグ)。
逆に、パージバルブが開状態から閉状態になったときには空燃比がリーン化することになるが、この場合もキャニスタパージの停止によって空燃比がリーン化した後、このリーン化がリニアO2センサ又はλO2センサによって実際に検出されるまでは該空燃比のリーン化は何ら是正されないことになる(タイムラグ)。
【0008】
また、キャニスタパージ時においてエンジンが過渡状態にあるとき、例えば加速時においては、パージ制御弁の前後差圧が急低下するので、1回の吸入行程で燃焼室に供給される蒸発燃料の量(蒸発燃料流入量)ないしは該蒸発燃料流入量が全燃料流入量中に占める比率が急低下して空燃比がリーン化し、他方減速時には空燃比がリッチ化する。そして、かかる空燃比のリーン化あるいはリッチ化も、これらがリニアO2センサ又はλO2センサによって実際に検出されるまでは何ら是正されないことになる(タイムラグ)。
【0009】
このため、蒸発燃料パージ量の急変時あるいはキャニスタパージ時においてエンジンが過渡状態にあるときには、一時的に空燃比がリッチ化して燃料が無駄に消費され燃費性能が低下するとともにHC排出量が増加してエミッション性能が低下するなどといった問題が生じたり、逆に空燃比がリーン化して十分なエンジン出力が得られない場合があるなどといった問題が生じたりする。
【0010】
また、蒸発燃料パージ量の急増と急減とが頻繁に繰り返されたとき、あるいはキャニスタパージ時において加速と減速とが頻繁に繰り返されたときには、前記のタイムラグ或いはフィードバック動作遅れにより空燃比の是正が後手後手にまわりハンチングあるいはサイクリングが生じて空燃比のフィードバック制御の安定性が悪くなるといった問題が生じる。
【0011】
なお、蒸発燃料を空燃比フィードバック制御の外乱として処理する場合、蒸発燃料パージ量が非常に多いときには、これに起因する外乱を補償するためにフィードバック補正値がリーン側の限界値にはりついてしまい、その他の外乱に対処することができなくなるおそれもある。
【0012】
これに対して、蒸発燃料パージ量を検出し、本来必要とされる最終的な燃料噴射量すなわちキャニスタパージがない場合に必要とされる最終的な燃料噴射量(以下、これを必要燃料噴射量という)を上記蒸発燃料パージ量分だけ減量補正することにより、キャニスタパージの影響を空燃比のフィードバック制御から排除するといった対応、すなわちキャニスタパージによって吸気系に供給される蒸発燃料を空燃比フィードバック制御の外乱とはならないようにするといった対応が考えられるが、蒸発燃料パージ量を直接的に高精度で検出することができる実用的な手段は現時点では見当たらない。
【0013】
そこで、間接的に蒸発燃料パージ量を推定し、必要燃料噴射量を上記推定値分だけ減量補正するようにしたエンジンが提案されている(例えば、特開平2−245441号公報参照)。そして、このような従来のエンジン、例えば特開平2−245441号公報に開示されているエンジンでは、フィードバック補正値とその中立値との差に基づいて蒸発燃料パージ量を推定するようにしている。なお、この従来のエンジンでは、蒸発燃料パージ量の推定値をエンジン回転数で除算して1回転当たりの蒸発燃料パージ量を算出し、基本燃料噴射量をこの1回転当たりの蒸発燃料パージ量分だけ減量補正するようにしている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に、蒸発燃料パージ量は、エンジンの運転状態の変化に伴って非常に短い周期で変動する。例えば、吸入空気量の変化、吸気圧の変化、エンジン回転数の変化等に伴って非常に短い周期で変動する。他方、例えば特開平2−245441号公報に開示されているような従来のエンジンでは、蒸発燃料パージ量をフィードバック補正値に基づいて推定するようにしているが、前記したとおりフィードバック補正値は、リニアO2センサ又はλO2センサによって検出される空燃比に基づいて演算される関係上どうしてもタイムラグが伴われるので、エンジンの運転状態の変化すなわち実際の蒸発燃料パージ量の変化の周期が短いときには、蒸発燃料パージ量の推定精度が低下し、ひいては空燃比の目標値からのずれを生じさせるといった問題が生じる。
【0015】
かかる従来の問題点と従来の技術とに鑑みれば、蒸発燃料パージ量を高精度で把握することができれば、必要燃料噴射量を該蒸発燃料パージ量で減量補正することにより、空燃比のずれを生じさせることなくキャニスタパージを行うことができるものと考えられる。そこで、本願発明者は、蒸発燃料パージ量、より正確には燃焼室に流入する蒸発燃料の流量(蒸発燃料流入量)を高精度で把握することができる手段を見出だすことにより、上記の各問題点を解決しようと考えた。
【0016】
そして、本願発明者は、キャニスタに捕集されている蒸発燃料の量すなわち蒸発燃料捕集量の経時変化はエンジンの運転状態の経時変化に比べれば非常に緩やかであり、蒸発燃料捕集量は前記のタイムラグ程度の時間内あるいは空燃比制御の1ルーチン実行時間内ではほとんど変化しないといった事実に着目し、かかる蒸発燃料捕集量に基づいて蒸発燃料パージ量を算出することができれば、空燃比検出におけるタイムラグにかかわりなく蒸発燃料パージ量ないしは蒸発燃料流入量を高精度で把握することができ、ひいては必要燃料噴射量をこの蒸発燃料パージ量で減量補正することにより、空燃比のずれを生じさせることなくキャニスタパージを行うことができるであろうと考察した。
【0017】
本発明は、上記考察結果に基づいて、上記従来の各問題点を解決するためになされたものであって、キャニスタの蒸発燃料捕集量を高精度で推定することができる手段を提供することを目的とする。
そして、キャニスタの蒸発燃料捕集量に基づいて、蒸発燃料パージ量あるいは蒸発燃料流入量を高精度で算出することができる手段を提供することを目的とする。
さらには、蒸発燃料パージ量あるいは蒸発燃料流入量に基づいて、空燃比の目標値に対するずれを生じさせることなくキャニスタパージを行うことができる手段を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達するため、図1にその構成を示すように、第1の発明は、空燃比を検出する空燃比検出手段Aと、該空燃比検出手段Aによって検出された空燃比の目標値に対する偏差に基づいてフィードバック補正値を設定するフィードバック補正値設定手段Bと、該フィードバック補正値設定手段Bによって設定されたフィードバック補正値に基づいて空燃比(燃料供給手段の燃料供給量)を制御する空燃比制御手段Cと、蒸発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段Dと、該蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段Eとが設けられているエンジンの蒸発燃料量推定装置であって、フィードバック補正値設定手段Bによって設定されたフィードバック補正値の平均値(平均フィードバック補正値)を演算する平均フィードバック補正値演算手段Fと、該平均フィードバック補正値演算手段Fによって演算された平均フィードバック補正値に基づいて、蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料の量(蒸発燃料捕集量)を推定する蒸発燃料捕集量推定手段Gと、該蒸発燃料捕集量推定手段Gにより推定された蒸発燃料捕集量からエンジンに吸入される蒸発燃料流入量を演算する蒸発燃料流入量演算手段R’と、該蒸発燃料流入量演算手段R’により演算された蒸発燃料流入量を必要燃料供給量から減量する燃料供給量減量手段U’とが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0019】
第2の発明は、第1の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定手段Gが、平均フィードバック補正値演算手段Fによって演算された平均フィードバック補正値が中立値より小さいか否かに応じて前回の蒸発燃料捕集量推定値を増減させて今回の蒸発燃料捕集量を推定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0020】
第3の発明は、第2の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定手段Gが、蒸発燃料捕集量推定値を増減させる補正量を、平均フィードバック補正値が大きいときほど大きく設定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0021】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下では、蒸発燃料捕集量推定手段Gによる蒸発燃料捕集量の推定を禁止する蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0022】
第5の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、蒸発燃料の吸気系へのパージが停止されているときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が存在しない条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0023】
第6の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、充填効率が所定値以上であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0024】
第7の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、吸気圧が所定値以下であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0025】
第8の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、空燃比のフィードバック制御が停止されているときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が存在しない条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0026】
第9の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、蒸発燃料の吸気系へのパージが停止されている状態と、吸入空気量が所定値以上である状態と、吸気圧が所定値以下である状態と、空燃比のフィードバック制御が停止されている状態のうちの少なくとも1つの状態が成立しているときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0027】
第10の発明は、第1〜第9の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置において、平均フィードバック補正値の絶対値が所定の限界値未満となったときに、蒸発燃料捕集量推定手段Gによる蒸発燃料捕集量の推定が完了しているものと判定する推定完了判定手段Iが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0028】
第11の発明は、第10の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、推定完了判定手段Iが、蒸発燃料捕集量の推定が完了していると判定した後において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hによって蒸発燃料捕集量の推定が所定期間以上継続して禁止されたときには、蒸発燃料捕集量の推定が完了しているとの判定を撤回するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0029】
第12の発明は、第1〜第11の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置において、空燃比制御手段Cが、フィードバック補正値が中立値となるように、制御出力特性を学習により補正するといった学習機能を備えていて、蒸発燃料捕集量推定手段Gが、空燃比制御手段Cの学習が終了した後で蒸発燃料捕集量を推定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0030】
第13の発明は、第1〜第9の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置において、空気過剰率λが1より大きい領域においてもO2濃度を検出することができるリニアO2センサが、空燃比検出手段Aとして設けられ、平均フィードバック補正値演算手段Fが、一定時間毎のフィードバック補正値の相加平均値又は重み付けした加重平均値を、上記のフィードバック補正値の平均値として演算するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0031】
第14の発明は、第1〜第9の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置において、空気過剰率λが1より大きいか否かを検出することができるλO2センサが、空燃比検出手段Aとして設けられ、平均フィードバック補正値演算手段Fが、フィードバック補正値の加重平均値を、上記のフィードバック補正値の平均値として演算するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0032】
第15の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、吸気圧が所定値以上であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0033】
第16の発明は、第4の発明にかかる蒸発燃料量推定装置において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段Hが、充填効率が所定値以下であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を提供する。
【0034】
第17の発明は、図2にその構成を示すように、第1〜第14の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置Lと、該蒸発燃料量推定装置Lによって推定された蒸発燃料捕集量に基づいて、吸気系への蒸発燃料のパージ流量 ( 蒸発燃料パージ量 ) を算出する蒸発燃料パージ量算出手段Kとが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0035】
第18の発明は、蒸発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段Dと、該蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段Eと、蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料の量 ( 蒸発燃料捕集量 ) を検出若しくは推定する蒸発燃料捕集量検出手段Jと、該蒸発燃料捕集量検出手段Jによって検出若しくは推定された蒸発燃料捕集量に基づいて、吸気系への蒸発燃料のパージ流量 ( 蒸発燃料パージ量 ) を算出する蒸発燃料パージ量算出手段Kとが設けられ、蒸発燃料パージ量算出手段Kが、蒸発燃料捕集手段Dから吸気系側に放出される蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料放出量 ) を算出する蒸発燃料放出量算出手段Mと、該蒸発燃料放出量算出手段Mによって算出された蒸発燃料放出量に基づいて、燃焼室へ流入する蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料流入量 ) を算出する蒸発燃料流入量算出手段Nとを備え、蒸発燃料放出量推定手段Mが、蒸発燃料パージ手段Eの制御弁の開度と該制御弁の前後の差圧とに基づいてパージ空気量を演算するパージ空気量演算手段Oと、該パージ空気量演算手段Oによって演算されたパージ空気量と、蒸発燃料捕集量とに基づいて蒸発燃料放出量を演算する蒸発燃料放出量演算手段Pとを備えていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0036】
第19の発明は、第18の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、蒸発燃料流入量算出手段Nが、蒸発燃料捕集手段Dから燃焼室に至る蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性を設定する輸送遅れ特性設定手段Qと、蒸発燃料放出量演算手段Pによって演算された蒸発燃料放出量と、エンジン回転数と、輸送遅れ特性設定手段Qによって設定された輸送遅れ特性とに基づいて蒸発燃料流入量を演算する蒸発燃料流入量演算手段Rとを備えていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0037】
第20の発明は、第19の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、蒸発燃料流入量算出手段Nが、蒸発燃料放出量演算手段Pによって演算された蒸発燃料放出量とエンジン回転数とに基づいて蒸発燃料の全燃料中に占める比率(蒸発燃料比率)を演算する蒸発燃料比率演算手段Sを備えていて、蒸発燃料流入量演算手段Rが、蒸発燃料比率演算手段Sによって演算された蒸発燃料比率と、輸送遅れ特性設定手段Qによって設定された輸送遅れ特性とに基づいて、蒸発燃料流入量の全燃料中に占める比率(正味蒸発燃料比率)を演算するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0038】
第21の発明は、第20の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ空気量演算手段Oと、蒸発燃料放出量演算手段Pと、輸送遅れ特性設定手段Qと、蒸発燃料比率演算手段Sと、蒸発燃料流入量演算手段Rとが、夫々、所定のモデル式でもって出力値を演算又は設定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0039】
第22の発明は、第17〜第21の発明のいずれか1つにかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、蒸発燃料の吸気系へのパージを規制するパージ規制手段Tが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0040】
第23の発明は、第22の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ規制手段Tによる蒸発燃料のパージ規制が、蒸発燃料の吸気系へのパージの禁止であることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0041】
第24の発明は、第22の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ規制手段Tが、アイドル時に蒸発燃料の吸気系へのパージを禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0042】
第25の発明は、第22又は第24の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ規制手段Tが、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了するまでは蒸発燃料のパージ速度を小さくするようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0043】
第26の発明は、第22又は第24の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ規制手段Tが、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了するまでは蒸発燃料のパージ量を少なくするようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0044】
第27の発明は、第25の発明にかかる蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、パージ規制手段Tが、蒸発燃料パージ手段Eの制御弁が閉弁状態から開弁状態に移行する際には、蒸発燃料のパージ速度を目標値に達するまで徐々に増加させるようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置を提供する。
【0045】
第28の発明は、蒸発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段Dと、該蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段Eと、蒸発燃料捕集手段Dによって捕集されている蒸発燃料の量 ( 蒸発燃料捕集量 ) を検出若しくは推定する蒸発燃料捕集量検出手段Jと、該蒸発燃料捕集量検出手段Jによって検出若しくは推定された蒸発燃料捕集量に基づいて、吸気系への蒸発燃料のパージ流量 ( 蒸発燃料パージ量 ) を算出する蒸発燃料パージ量算出手段Kとが設けられ、蒸発燃料パージ量算出手段Kが、蒸発燃料捕集手段Dから吸気系側に放出される蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料放出量 ) を算出する蒸発燃料放出量算出手段Mと、該蒸発燃料放出量算出手段Mによって算出された蒸発燃料放出量に基づいて、燃焼室へ流入する蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料流入量 ) を算出する蒸発燃料流入量算出手段Nとを備え、蒸発燃料パージ量算出手段Kが、蒸発燃料放出量に対して蒸発燃料捕集手段の脱気特性を加味して、質量流量で蒸発燃料流入量を算出するようになっていることを特徴とするエンジンの制御装置を提供する。
【0046】
第29の発明は、第28の発明にかかるエンジンの制御装置において、上記脱気特性が、蒸発燃料捕集手段Dにおけるパージ空気量に対する蒸発燃料パージ質量流量の吸気温依存性であることを特徴とするエンジンの制御装置を提供する。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
図3は、本発明にかかる蒸発燃料推定装置及び制御装置を備えたエンジンのシステム構成図である。図3に示すように、燃料噴射式の4気筒ガソリンエンジンCEの各気筒1(1つの気筒のみ図示)においては、吸気弁2が開かれたときに吸気ポート3から燃焼室4に混合気が吸入され、この混合気がピストン5で圧縮された後点火プラグ(図示せず)によって着火・燃焼させられ、排気弁6が開かれたときに燃焼ガス(排気ガス)が排気ポート7を介して排気通路8に排出されるようになっている。排気通路8には、排気ガス中のO2濃度を検出するリニアO2センサ9が臨設されている。そして、リニアO2センサ9で検出されたO2濃度はコントロールユニットCUに入力され、コントロールユニットCUではこのO2濃度に基づいて混合気の空燃比を演算するようになっている。ここで、リニアO2センサ9によって検出されるO2濃度と該O2濃度に基づいて演算される空燃比とは一義的な対応関係にあるので、以下では便宜上、上記空燃比を「リニアO2センサ9によって検出された空燃比」又は「実空燃比」ということにする。
ここで、リニアO2センサ9に代えて、λO2センサを用いてもよい。なお、リニアO2センサ9は、空気過剰率λが1より大きい領域でもO2濃度ひいては空燃比を検出することができるが、λO2センサは基本的には空気過剰率λが1より大きいか否かを検出するだけである。
【0050】
エンジンCEの各気筒1(燃焼室4)に燃料燃焼用の空気を供給するために吸気系10が設けられ、この吸気系10には上流端が大気に開放された共通吸気通路11が設けられている。そして、共通吸気通路11にはアクセルペダル(図示せず)と連動して開閉されるスロットル弁12が介設され、共通吸気通路11の下流端は吸入空気の流れを安定させるサージタンク13に接続されている。さらに、サージタンク13には、各気筒1に夫々個別に空気を供給する独立吸気通路14(1つのみ図示)が接続され、これらの各独立吸気通路14の下流端は夫々対応する気筒1の吸気ポート3に接続されている。
【0051】
吸気ポート3近傍において各独立吸気通路14には、吸気ポート3内ないしは燃焼室4内に燃料を噴射する燃料噴射弁15が、噴射口が下流側に向くようにして臨設されている。ここで、燃料噴射弁15の燃料噴射量(噴射パルス幅)及び噴射タイミングは、後で説明するようにコントロールユニットCUによって制御されるようになっている。
なお、燃料噴射弁15は特許請求の範囲に記載された「燃料供給手段」に相当する。
【0052】
そして、燃料の気化・霧化を促進するために各燃料噴射弁15にアシストエアを供給するアシストエア供給手段16(以下、これをAMI16という)が設けられている。このAMI16には、詳しくは図示していないが、上流端がスロットル弁12より上流側で共通吸気通路11と連通するアシストエア導入通路17が設けられ、このアシストエア導入通路17にはコントロールユニットCUによって開閉されるソレノイド式のアシストエア制御弁18が介設されている。なお、アシストエア制御弁18をバイパスしてアシストエアを通すバイパスアシストエア通路19が設けられ、このバイパスアシストエア通路19には所定の圧力損失(圧力低下)を生じさせ、流量を規制するためのオリフィス20が介設されている。
【0053】
アシストエア導入通路17の下流端はミキシングチャンバ21に接続され、このミキシングチャンバ21にはさらにアシストエア供給通路22が接続されている。そして、アシストエア供給通路22は下流側で4つの分岐アシストエア供給通路23に分岐し、各分岐アシストエア供給通路23は夫々、その下流端で対応する気筒1の燃料噴射弁15に接続され、対応する燃料噴射弁15に個別にアシストエアを供給するようになっている。
【0054】
エンジンCEには、燃料タンク(図示せず)から排出される空気に含まれる蒸発燃料(ガソリンベーパ)を捕集する蒸発燃料捕集手段と、該蒸発燃料捕集手段に捕集されている蒸発燃料を適宜吸気系10にパージする蒸発燃料パージ手段とを備えた蒸発燃料回収手段24が設けられているが、以下この蒸発燃料回収手段24について説明する。
この蒸発燃料回収手段24には、内部に蒸発燃料を捕集(吸着)することができる吸着材(例えば、活性炭)が充填されたキャニスタ25が設けられている。そして、このキャニスタ25には、先端が燃料タンクの上部空間部と連通し燃料タンク内の上部空間部の空気を該キャニスタ25内にリリーフするリリーフ通路26と、先端が大気に開放された大気開放通路27と、先端がミキシングチャンバ21に接続されたパージ通路28とが接続されている。なお、大気開放通路27の先端をスロットル弁12よりも上流側で共通吸気通路11に接続するようにしてもよい。また、キャニスタ25内に吸着材を充填するのではなく、吸着以外の現象(例えば、吸収、反応等)を利用して蒸発燃料を捕集する材料を充填してもよい(ただし、空気によるパージが可能なもの)。
なお、キャニスタ25は特許請求の範囲に記載された「蒸発燃料捕集手段」に相当する。
【0055】
パージ通路28にはこれを任意に開閉することができるデューティソレノイド式のパージ制御弁29が介設され、このパージ制御弁29はコントロールユニットCUによってその開度がデューティ制御されるようになっている。このパージ制御弁29は、コントロールユニットCUから印加される駆動デューティ比に従って開閉制御され、例えば駆動デューティ比が0のときには全閉され、駆動デューティ比が100%のときには全開され、両者間では駆動デューティ比が大きいときほど開弁度合が大きくなるようになっている。
なお、パージ通路28とパージ制御弁29とからなる組立体は特許請求の範囲に記載された「蒸発燃料パージ手段」に相当する。
【0056】
そして、この蒸発燃料回収手段24において、パージ制御弁29が全閉(駆動デューティ比0)されているときには燃料タンク内の空気はリリーフ通路26を通してキャニスタ25内にリリーフされた後、大気開放通路27を通して大気中に排出されるが、この空気に含まれている蒸発燃料はキャニスタ25内の吸着材層を通過する際に吸着材に捕集され、大気中には排出されない。
【0057】
他方、パージ制御弁29が開かれているときには吸気系10の負圧によって、大気中の空気が、まず大気開放通路27を通してキャニスタ25内に吸い込まれて吸着材層を通り抜け、この後パージ通路28とAMI16(ミキシングチャンバ21〜分岐アシストエア供給通路23)とを通して吸気系10にひいては燃焼室4にパージされる。ここで、パージ制御弁29の開弁度合(すなわち、駆動デューティ比)に応じてパージされる空気の流量(以下、これをパージ空気量という)が変化するのはもちろんである。そして、その際キャニスタ25内の吸着材に捕集されている蒸発燃料の一部が吸着材から離脱し、パージされた上記空気(以下、これをパージ空気という)ともに吸気系10にひいては燃焼室4にパージされる。なお、以下ではこのように吸気系10ひいては燃焼室4にパージされる蒸発燃料の流量を「蒸発燃料パージ量」という。
【0058】
しかしながら、キャニスタ25から燃焼室4に至るパージ空気ないしは蒸発燃料の輸送経路はかなりの容量を有しているので、キャニスタ25からパージ通路28に放出された蒸発燃料が燃焼室4に実際に達するまでには、上記輸送経路の容積及び形状(輸送特性)に相応する輸送遅れが伴われる。したがって、ある時刻において、キャニスタ25からパージ通路28に放出される蒸発燃料の流量(以下、これを蒸発燃料放出量という)と、燃焼室4に実際に流入する蒸発燃料の流量(以下、これを蒸発燃料流入量という)とは、定常状態にある特別な場合を除けば通常は一致しない。このため、以下では蒸発燃料パージ量を、蒸発燃料放出量と蒸発燃料流入量とに区別して説明することにする。
なお、キャニスタ25から燃焼室4に至るパージ空気ないしは蒸発燃料の輸送経路の容積が非常に小さい場合は、輸送遅れを無視することができるので蒸発燃料放出量と蒸発燃料流入量とをとくには区別せず、蒸発燃料パージ量という概念を用いてもとくには不具合は生じない。
【0059】
ところで、図3に示すエンジンCEでは、パージ通路28の下流端をミキシングチャンバ21に接続し、キャニスタ25に捕集されている蒸発燃料をAMI16を介して吸気系10にパージするようにしているが、AMIが設けられていないエンジンの場合は、パージ通路28の下流端を各独立吸気通路14に分岐して接続すればよい。
また、図4に示すように、AMIが設けられていないエンジンCE’の場合は、パージ通路28の下流端をサージタンク13に接続し、キャニスタ25に捕集されている蒸発燃料を直接的に吸気系10にパージするようにすれば、何ら不具合は生じない。なお、図4において、図3と共通する部材には同一番号を付している。
【0060】
コントロールユニットCUは、特許請求の範囲に記載された「フィードバック補正値設定手段」、「空燃比制御手段」、「平均フィードバック補正値演算手段」、「蒸発燃料捕集量推定手段」、「蒸発燃料捕集量推定禁止手段」、「推定完了判定手段」、「蒸発燃料パージ量算出手段」、「蒸発燃料放出量算出手段」、「蒸発燃料流入量算出手段」、「パージ空気量演算手段」、「蒸発燃料放出量演算手段」、「輸送遅れ特性設定手段」、「蒸発燃料流入量演算手段」、「蒸発燃料比率演算手段」、「パージ規制手段」、「燃料供給量減量手段」、「蒸発燃料量推定装置」及び「空燃比検出手段(一部)」を含む、マイクロコンピュータで構成された、エンジンCE(エンジンCE’を含む、以下でも同様)の総合的な制御装置であって、リニアO2センサ9(あるいはλO2センサ)によって検出される空燃比(実空燃比)、スロットル開度センサ31によって検出されるスロットル開度、エアフローセンサ32によって検出される吸入空気量、回転数センサ33によって検出されるエンジン回転数、アイドルスイッチ34から出力されるアイドル信号等を制御情報として、エンジンCE(蒸発燃料回収手段24を含む)の各種制御、キャニスタ25に捕集されている蒸発燃料の量(以下、これをトラップ量という)の推定、蒸発燃料放出量の算出(演算)、蒸発燃料流入量の算出(演算)等を行うようになっている。
なお、トラップ量は特許請求の範囲に記載された「蒸発燃料捕集量」に相当する。
【0061】
しかしながら、エンジンCEの一般的な制御はよく知られており、またかかる一般的な制御は本発明の要旨とするところでもないのでその説明を省略し、以下では本発明の要旨に関連する、空燃比制御(燃料噴射量制御)の制御方法と、キャニスタパージ制御の制御方法と、トラップ量の推定方法と、蒸発燃料放出量の算出方法(演算方法)と、蒸発燃料流入量の算出方法(演算方法)とについてのみ説明する。
【0062】
以下、図5を参照しつつコントロールユニットCUの基本的な機能について説明する。
図5に示すように、コントロールユニットCUは機能的にみれば、空燃比制御(燃料噴射量制御)及びキャニスタパージ制御を行うエンジン制御ブロックSLと、トラップ量の推定を行うトラップ量推定ブロックSMと、トラップ量に基づいて蒸発燃料放出量及び蒸発燃料流入量を演算する蒸発燃料パージ量演算ブロックSNとに大別される。
エンジン制御ブロックSLは、基本的には、空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射弁15の噴射パルス幅すなわち燃料噴射量を運転状態に応じてフィードバック制御又はオープンループ制御するとともに(空燃比制御)、キャニスタパージを行うべき運転領域では運転状態に応じてキャニスタパージを行う(キャニスタパージ制御)。
【0063】
この空燃比制御においては、エンジンCEの運転状態が所定のフィードバック領域(例えば、高負荷領域と高回転領域を除いた領域)に入っていれば実空燃比の目標空燃比に対する偏差(以下、これを空燃比偏差という)に基づいてフィードバック制御が行われ、フィードバック領域に入っていなければ空燃比偏差には基づかないオープンループ制御が行われる。ここでの空燃比のフィードバック制御の制御手法はおよそ次のとおりである。
すなわち、吸入空気量とエンジン回転数とに応じて燃料噴射弁15の基本パルス幅すなわち基本燃料噴射量が演算される(ベース演算)。
【0064】
そして、他方では空燃比偏差(例えば、目標空燃比−実空燃比)に基づいて、例えば空燃比偏差に基づいて、フィードバック補正値cfbが演算される(ステップS1)。ここで、フィードバック補正値cfbは、中立値すなわち空燃比をいずれの方向にも補正しない中立的な値が0とされ、cfb>0のときは空燃比(燃料噴射量)をリッチ方向に補正し、cfb<0のときは空燃比(燃料噴射量)をリーン方向に補正する。
【0065】
そして、基本パルス幅とフィードバック補正値cfbとに基づいて、例えば基本パルス幅にcfbを乗算するなどして、基本パルス幅が空燃比偏差が縮小する方向に補正されて要求パルス幅すなわち要求燃料噴射量が演算される(ステップS2)。例えば、実空燃比が目標空燃比よりもリーンなときにはcfb>0となり、これに伴って燃料噴射量が増量補正され空燃比がリッチ方向に補正されて空燃比偏差が縮小される。逆に、実空燃比が目標空燃比よりもリッチなときにはcfb<0となり、これに伴って燃料噴射量が減量補正され空燃比がリーン方向に補正されて空燃比偏差が縮小される。かくして、空燃比偏差に応じて該空燃比偏差をなくすように空燃比(燃料噴射量)がフィードバック制御される。
なお、要求パルス幅すなわち要求燃料噴射量は、特許請求の範囲に記載された「必要燃料供給量」に相当する。
【0066】
他方、空燃比のオープンループ制御が行われる場合は、フィードバック補正値cfbが0に固定される。この場合は、基本パルス幅が空燃比偏差に応じては何ら補正されずにそのまま要求パルス幅となるので、フィードバックのないオープンループ制御となる。
【0067】
さらに、要求パルス幅すなわち要求燃料噴射量から、後で説明する蒸発燃料流入量に対応するパルス幅(以下、これをパージ補正パルス幅という)を減算して燃料噴射弁15の実際の噴射パルス幅(以下、これを実噴射パルス幅という)すなわち実燃料噴射量(実際の燃料噴射量)が演算される。そして、この実噴射パルス幅すなわち実燃料噴射量でもって、所定のタイミングで燃料噴射弁15から燃料が噴射される。かくして、実空燃比が目標空燃比に保持される。
【0068】
キャニスタパージ制御は、キャニスタパージ条件が成立しているとき例えば水温が所定値(80℃)以上のときに、よく知られた普通の手法でエンジンCEの運転状態に応じて行われる、すなわち、パージ制御弁29にエンジンCEの運転状態に応じたデューティ比が印加され、キャニスタパージが行われる。
【0069】
トラップ量推定ブロックSMは、キャニスタパージ時に、エンジン制御ブロックSLのステップS1で演算されたフィードバック補正値cfbを平均化処理することにより平均フィードバック補正値cfbaveを演算し(ステップS3)、さらにこの平均フィードバック補正値cfbaveに基づいて間接的にトラップ量を推定する(ステップS4)。すなわち、平均フィードバック補正値cfbaveを、現在把握しているトラップ量(トラップ量推定値)が真のトラップ量よりも大きいか小さいかを判定する指標として用いることによりトラップ量を把握する。
【0070】
後で説明するように、コントロールユニットCUは、所定の演算式を用いてトラップ量推定値に基づいて蒸発燃料流入量を演算し、さらに要求燃料噴射量から蒸発燃料流入量を減算することによって実燃料噴射量を設定するようにしている。ここで、トラップ量推定値が正確であればすなわち真のトラップ量と一致していれば蒸発燃料流入量が正確に演算されるので、キャニスタパージによって燃焼室4に供給される蒸発燃料はフィードバック制御の外乱とはならずフィードバック補正値cfbにとくには影響を与えない。この場合、ほかに大きな外乱がなければフィードバック補正値cfbは中立値(すなわち0)を中心にして若干変動するだけであり、したがって平均フィードバック補正値cfbaveはほぼ中立値0となる。換言すれば、平均フィードバック補正値cfbaveが0であれば、トラップ量推定値は真のトラップ量に一致していることになる。
【0071】
しかしながら、トラップ量推定値が真のトラップ量よりも大きいとこれに伴って蒸発燃料流入量演算値が真値よりも大きくなり、したがって実燃料噴射量が適正値よりも小さくなるので燃焼室4に実際に供給される燃料が必要とされる燃料量(要求燃料噴射量)よりも少なくなり、実空燃比がリーン化する。この場合、このリーン化を是正するためにフィードバック補正値cfbがリッチ方向に変化して0より大きくなり、これに伴って平均フィードバック補正値cfbaveが0より大きくなる。換言すれば、cfbave>0であれば、トラップ量推定値は真のトラップ量よりも大であるということになる。
【0072】
なお、前記したとおりフィードバック補正値cfbは変動するので、トラップ量推定値が真のトラップ量より大であっても必ずしもcfb>0になるとは限らず、したがってcfb>0であってもトラップ量推定値が真のトラップ量よりも大であるとは限らない。したがって、フィードバック補正値cfbに基づいてトラップ量を推定した場合は、その推定精度は非常に低くなるものと考えられる。かかる事情に鑑み、本実施例では平均フィードバック補正値cfbaveに基づいてトラップ量を推定するようにしている。
【0073】
逆に、トラップ量推定値が真のトラップ量よりも小さいとこれに伴って蒸発燃料流入量演算値が真値よりも小さくなり、したがって実燃料噴射量が適正値よりも大きくなるので、燃焼室4に供給される燃料は必要とされる燃料量よりも多くなり、実空燃比がリッチ化する。この場合、このリッチ化を是正するためにフィードバック補正値cfbがリーン方向に変化して0より小となり、これに伴って平均フィードバック補正値cfbaveが0より小となる。換言すれば、cfbave<0であれば、トラップ量推定値が真のトラップ量よりも小であるということになる。
【0074】
したがって、最初にトラップ量推定値に適当な初期値を設定した上で、cfbave>0であればトラップ量推定値を所定の補正量σだけ減らし、cfbave<0であればトラップ量推定値を補正量σだけ増やすといった操作を繰り返せば、トラップ量推定値はやがて真のトラップ量に収束(到達)し、トラップ量が把握されることになる。かくして、平均フィードバック補正値cfbaveに基づいてトラップ量が推定される。
【0075】
ここで、トラップ量推定値が真のトラップ量にほぼ一致しているか否か、すなわちトラップ量の推定がほぼ完了しているか否かは、平均フィードバック補正値cfbaveの絶対値│cfbave│が所定の限界値ε以下であるか否かで判定するのが好ましい。│cfbave│が非常に小さければ、トラップ量推定値が真のトラップにほぼ一致していると考えられるからである。
【0076】
このトラップ量の推定手法においては、トラップ量ないしは蒸発燃料パージ量と、フィードバック補正値cfbないしは平均フィードバック補正値cfbaveとの間に、前記のような相関性(相関関係)が成立していることを前提としている。したがって、かかる相関性が低い状況下あるいは相関性が存在しない状況下では、トラップ量を高精度で推定することはできない。このため、上記相関性が低い状況下あるいは相関性が存在しない状況下では、トラップ量の推定を禁止するのが好ましい。ここで、上記相関性が低い状況としては、後で説明するように、例えば充填効率や吸気圧が非常に高いとき、充填効率や吸気圧が非常に低いとき等があげられる。また、上記相関性が存在しない状況としては、例えばキャニスタパージが停止されているとき、空燃比のフィードバック制御停止されているとき(オープンループ制御時)等があげられる。
なお、上記相関性が低い状況あるいは相関性がない状況がいくつか重複して存在するときにのみトラップ量の推定を禁止するようにしてもよいのはもちろんである。
【0077】
また、このトラップ量の推定手法においては、蒸発燃料流入量が正確に把握されていれば、すなわちキャニスタパージによる蒸発燃料の供給がフィードバック補正値cfbに対して影響を与えなければ、フィードバック補正値cfbが中立値0を中心にして変動し、したがって平均フィードバック補正値cfbaveは中立値0になるということを前提としている。ところで、一般に、フィードバック補正値cfbが平均的には中立値0となるように、制御出力特性すなわち燃料噴射弁の噴射特性を学習により自動的に補正してゆくといった空燃比学習を行うようにしたエンジンが広く用いられているが、かかる空燃比の学習機能を備えたエンジンでトラップ量を推定する場合は、かかる空燃比学習が終了してからトラップ量の推定を行うのが好ましい。けだし、空燃比学習が終了していれば、キャニスタパージの影響がない場合には、平均フィードバック補正値cfbaveが確実に中立値0になるからである。
【0078】
なお、このようにしてトラップ量の推定が禁止されている期間がある程度以上継続されたときには、トラップ量推定値が真のトラップ量からずれているおそれがあるので、すでにトラップ量の推定が完了していると判定されている場合でも該判定を撤回(リセット)するのが好ましい。
【0079】
上記補正量σが大きいときには、推定開始後においてトラップ量推定値の収束に要する時間、すなわちトラップ量を推定するのに要する時間を短くすることができるものの、トラップ量推定値の精度が低下する。他方、補正量σが小さいときには、トラップ量推定値の収束に要する時間は長くなるものの、トラップ量推定値の精度を高めることができる。したがって、収束に要する時間に対する要求と、トラップ量推定値の精度に対する要求とが両立するように、補正量σを適切な値に設定するのが好ましい。
【0080】
なお、補正量σは一定値とする必要はなく、トラップ量の推定中に変化させてもよい。例えば、トラップ量の推定の進行状況に応じて変化させ、あるいは平均フィードバック補正値cfbaveの値に応じて設定してもよい。例えば、トラップ量の推定開始時には補正量σを大きくして収束を早め、トラップ量推定値がある程度収束した後は補正量σを小さくしてトラップ量推定値の精度を高めるようにしてもよい。また、平均フィードバック補正値cfbaveが大きいときほど補正量σを大きくすれば、トラップ量推定値が真のトラップ量からかけ離れているときには収束を早めることができ、他方トラップ量推定値が真のトラップ量に近いときにはその精度を高めることができる。
【0081】
蒸発燃料パージ量演算ブロックSNは、基本的には、トラップ量推定ブロックSMのステップS4で推定されたトラップ量推定値に基づいて蒸発燃料放出量を演算し、さらにこの蒸発燃料放出量に基づいて蒸発燃料流入量を演算し、この蒸発燃料流入量に相当する燃料噴射弁15のパルス幅すなわちパージ補正パルス幅を演算し、このパージ補正パルス幅をエンジン制御ブロックSLに出力する。つまり、フィードフォワード制御(見込み制御)により、タイムラグを生じさせることなくひいては空燃比のずれを生じさせることなく空燃比制御に対するキャニスタパージの影響を補償することになる。
より詳しくは、まずパージ通路28内におけるパージ制御弁29の前後差圧すなわちパージ制御弁29の直上流側と直下流側との間の圧力差(以下、これをパージ制御弁前後差圧という)が演算される一方(ステップS5)、パージ制御弁29に印加されている駆動デューティ比からパージ制御弁開度(パージSOL開度)が演算され(ステップS6)、続いてパージ制御弁前後差圧とパージ制御弁開度とに基づいてパージ空気量(キャニスタ脱気Air量)が演算される(ステップS7)。
【0082】
ここで、パージ制御弁前後差圧は、吸気充填効率に基づいて演算されるようになっているが、このようにする理由はおよそ次のとおりである。
すなわち、吸気圧はよく知られた手法で充填効率から演算することができ、かつパージ制御弁29の直下流側の圧力は吸気圧とほぼ同一である。他方、パージ制御弁29の直上流側の圧力は実質的に一定値(大気圧)とみなすことができる。そして、パージ制御弁前後差圧はパージ制御弁29の直上流側の圧力と直下流側の圧力の差、すなわち大気圧と吸気圧との差である。したがって、充填効率に所定の演算処理を施すことによりパージ制御弁前後差圧を得ることができることになる。このようにすれば、吸気圧センサを設ける必要がなくなり、吸気系10が簡素化される。
なお、パージ制御弁29の直下流側の圧力を吸気圧センサを用いて検出するようにしてもよいのはもちろんである。また、パージ制御弁前後差圧を直接検出する差圧センサを設けてもよい。
【0083】
パージ空気量は、パージ制御弁前後差圧とパージ制御弁開度とに基づいて、よく知られた手法で演算される。
すなわち、一般に気体の密閉通路に介設された機器の前後差圧ΔPすなわち圧力損失と、該機器を流通する気体の流速uとの間には、流体力学の分野でよく知られていた一定の関数関係が成立する(例えば、ΔP=k・u2)。したがって、前後差圧に基づいて該機器内における気体の流速を演算することができる。そして、この流速に該機器の流通断面積を乗算すれば該流路を流れている気体の体積流量を得ることができる。
したがって、かかる一般原理に鑑みれば、本実施例においては、パージ制御弁開度からパージ制御弁29の流通断面積を容易に求めることができるので、パージ制御弁前後差圧とパージ制御弁開度(駆動デューティ比)とに基づいてパージ空気量(体積流量)を求めることができるわけである。
なお、パージ空気量を直接検出することができる流量検出センサを設け、該流量検出センサでパージ空気量を検出するようにしてもよい。
【0084】
そして、ステップS7で演算されたパージ空気量と、トラップ量推定値とに基づいて蒸発燃料放出量(パージガス質量流量すなわち蒸発燃料の質量流量)が演算される(ステップS8)。次に、エンジン回転数が計測され(ステップS9)、このエンジン回転数とステップS8で演算された蒸発燃料放出量とに基づいてパージガス比率が演算される(ステップS10)。ここで、パージガス比率とは、キャニスタ25からパージ通路28に放出された蒸発燃料が、必要とされる全燃料(要求燃料噴射量)中に占める比率であって、蒸発燃料の燃焼への寄与率をあらわしている。
なお、パージガス比率は特許請求の範囲に記載された「蒸発燃料比率」に相当する。
【0085】
この後、キャニスタ25から燃焼室4に至るパージ空気ないしは蒸発燃料の輸送経路(以下、これを蒸発燃料輸送経路という)の輸送遅れ特性(吸入空気量モデル)を設定し(ステップS11)、続いてステップ10で演算されたパージガス比率とステップS11で設定された吸入空気量モデルとに基づいて正味パージガス比率が演算される(ステップS12)。この正味パージガス比率は、燃焼室4に流入する蒸発燃料が、必要とされる全燃料(要求燃料噴射量)中に占める比率、すなわち蒸発燃料流入量が要求燃料噴射量中に占める比率である。したがって、燃料噴射弁15から噴射すべき燃料量は、要求燃料噴射量に(1−正味パージガス比率)を乗算したものとなる。
なお、正味パージガス比率は特許請求の範囲に記載された「正味蒸発燃料比率」に相当する。
【0086】
そして、ステップS12で演算された正味パージガス比率(蒸発燃料流入量)に相当する燃料噴射弁15のパルス幅すなわちパージ補正パルス幅が演算され(ステップS13)、このパージ補正パルス幅が、前記のエンジン制御ブロックSLに出力される。
【0087】
以下、図7〜図14に示すフローチャートに従って、適宜図3〜図6を参照しつつ、コントロールユニットCUによる各種制御の制御手法ないしは各種演算の演算手法について説明する。
まず、図7に示すフローチャート従って、該制御手法ないしは演算手法の全体フローすなわちメインルーチンを説明する。
このメインルーチンにおいては、まずステップT1で初期化が行われる。具体的には、トラップ量推定値trapと、空燃比学習完了フラグxlrndと、トラップ量推定完了フラグxtraplrnと、トラップ量推定可能フラグxtlexとに夫々初期値として0がセットされる。ここで、空燃比学習完了フラグxlrndは、空燃比学習が完了したときに1がたてられるフラグである。トラップ量推定完了フラグxtraplrnは、トラップ量の推定が完了したときに1がたてられ、トラップ量の推定の禁止が所定時間以上継続されたときに0にリセットされるフラグである。トラップ量推定可能フラグxtlexは、トラップ量推定条件が成立したときに1がたてられ、上記トラップ量推定条件が不成立となったときに0にリセットされるフラグである。
【0088】
次に、ステップT2でエンジン回転数neが演算され、続いてステップT3で充填効率ceが演算される。ここで、充填効率ceは、吸入空気量、エンジン回転数ne、吸気温等に基づいてよく知られた手法で演算される。
【0089】
この後、ステップT4〜ステップT8が順に実行される。ここで、ステップT4〜T8は、夫々、後で説明する各種サブルーチンを用いて実行される。具体的には、ステップT4では、図11又は図12にそのフローチャートが示されているサブルーチンを用いて燃料噴射量の演算が行われる。ステップT5では、図14にそのフローチャートが示されているサブルーチンを用いてパージ実行判定が行われる。ステップT6では、図13にそのフローチャートが示されているサブルーチンを用いてパージ量の演算が行われる。ステップT7では、図10にそのフローチャートが示されているサブルーチンを用いてトラップ量推定の実行判定が行われる。ステップT8では、図8又は図9にそのフローチャートが示されているサブルーチンを用いてトラップ量の演算が行われる。この後、ステップT2に復帰する。
【0090】
以下、各サブルーチンについて具体的に説明する。
まず、図8に示すフローチャートに従って適宜図3〜図6を参照しつつ、メインルーチンのステップT8で実行(起動)されるトラップ量演算サブルーチン、すなわちコントロールユニットCUによるトラップ量の具体的な推定手法を説明する。
【0091】
このサブルーチンにおいては、まずステップ#2で、所定のトラップ量推定条件が成立しているか否か、すなわちエンジンCEの運転状態がトラップ量を高精度で推定することが可能な状態にあるか否かが判定される。ここでは、次の4つの条件がすべて成立しているときにはトラップ量推定条件が成立しているものと判定するようにしている。
(1)キャニスタパージが行われていること
(2)空燃比のフィードバック制御が行われていること
(3)充填効率が所定値未満であること(図10中のステップ#33参照)
(4)空燃比学習が完了していること(図10中のステップ#34参照)
なお、上記(1)〜(4)に加えて、吸気圧が所定値以下の時、トラップ量の推定が禁止できるように、吸気圧、または吸気圧相当を求めることができる充填効率が、上記(3)の所定値(上限値)より低い下限値(第2の所定値)以上であることをトラップ量推定条件としても良い。
【0092】
換言すれば、キャニスタパージが停止されているとき、空燃比のフィードバック制御が停止されているとき、充填効率が所定値以上であるとき、又は空燃比学習が完了していないときには、トラップ量の推定を禁止するようにしている。このようにする理由は、およそ次のとおりである。
すなわち、前記したとおり、キャニスタパージ又はフィードバック制御が停止されているときは、トラップ量とフィードバック補正値ないしは平均フィードバック補正値との間に相関性が存在せず、したがってトラップ量を推定することができないのでトラップ量の推定を禁止するようにしている。
充填効率ないし吸気圧が非常に高いときには、パージ制御弁前後差圧が非常に小さくなるとともに吸気脈動が激しくなりフィードバック補正値が変動し、このためパージ空気量を高精度で演算することができなくなるので、トラップ量の推定を禁止するようにしている。
また、充填効率ないし吸気圧が非常に低いときには、パージ制御弁前後差圧が大きくなりすぎパージ空気量を高精度で演算することができなくなるので、トラップ量の推定を禁止するようにしている。
さらに、空燃比学習が完了した後でトラップ量の推定を行うようにしているのは、前記したとおり、空燃比学習が完了した後はトラップ量の推定精度が非常に高くなるからである(段落0075参照)。
【0093】
かくして、ステップ#2でトラップ量推定条件が成立していると判定された場合は(YES)、ステップ#3でトラップ量推定可能フラグxtlexに1がたてられるとともに、トラップ量推定禁止カウンタctに初期値ct0がセットされる。トラップ量推定禁止カウンタctは、トラップ量推定条件が不成立となってトラップ量の推定が禁止されている期間(時間)をカウントするためのカウンタである。
【0094】
続いて、ステップ#4で、次の式1により平均フィードバック補正値cfbaveが演算されるとともに、平均フィードバック補正値cfbaveの演算回数をカウントするための演算回数カウンタPが1だけインクリメントされる(P=P+1)。すなわち、リニアO2センサ9を用いたこのエンジンでは、一定時間毎のフィードバック補正値の相加平均値が平均フィードバック補正値cfbaveとされている。
【数1】
cfbave=Σ(k=0→n−1)[cfb(i−k)]/n……………………………式1
cfbave:平均フィードバック補正値
cfb(i):今回のフィードバック補正値
cfb(i−k):k回前のフィードバック補正値
n:平均化処理されるcfbのサンプル数
なお、式1において、Σ(k=α→β)[f(k)]は、関数f(k)の、k=αからk=βまでのシグマ演算(Σ)をあらわすものとする。
【0095】
次に、ステップ#5で演算回数カウンタPが所定の設定値P0以上であるか否かが判定され、P<P0であると判定された場合は(NO)、以下の全ステップをスキップし、すなわちトラップ量の推定を行わずにステップ#2に復帰する。このトラップ量演算サブルーチンでは、演算回数カウンタPのカウント値が設定値P0未満の場合は、平均フィードバック補正値cfbaveがまだ十分には安定していないものと考えられるので(フィードバック補正値cfbの変動の影響が残っている)トラップ量の推定を行わないようにしている。
【0096】
他方、ステップ#5でP≧P0であると判定された場合は(YES)、ステップ#6で平均フィードバック補正値cfbaveの絶対値│cfbave│が所定の限界値ε以上であるか否かが判定される。
ここでは│cfbave│<εであればトラップ量の推定が完了しているものと判定し、この場合はトラップ量推定値が真のトラップ量とほぼ一致しているものと考えられるので、この現時点におけるトラップ量推定値trapを変化させずにそのまま保持するようにしている。
例えば、図15に模式的に示すように、真のトラップ量がa2である場合、トラップ量推定値trapがa1〜a3の範囲内に入ったときにトラップ量の推定が完了しているものと判定されることになる。なお、図15においてグラフG1は│cfbave│をあらわしている。また、trap>a2の範囲内ではcfbave>0であり、trap<a2の範囲内ではcfbave<0である。
他方、│cfbave│≧εであれば平均フィードバック補正値cfbaveが0以下であるか又は0より大きいかに応じてトラップ量推定値trapを補正量σだけ増加又は減少させ、トラップ量推定値trapを真のトラップ量に近付けるようにしている。なお、補正量σの設定方法は前に説明したとおりである(段落0077、段落0078参照)。
【0097】
具体的には、ステップ#6で│cfbave│<εであると判定された場合は(NO)、ステップ#10でトラップ量推定完了フラグxtraplrnに1がたてられる。他方、ステップ#6で│cfbave│≧εであると判定された場合は(YES)、ステップ#7でcfbaveが0以下であるか否かが判定される。ここで、cfbave≦0であると判定された場合は(YES)ステップ#8でトラップ量推定値trapが補正量σだけ増やされ(trap=trap+σ)、他方cfbave>0であると判定された場合は(NO)ステップ#9でトラップ量推定値trapが補正量σだけ減らされる(trap=trap−σ)。
【0098】
ところで、前記のステップ#2でトラップ量推定条件が成立していないと判定された場合は(NO)、ステップ#11でトラップ量推定禁止カウンタctが1だけデクリメントされてトラップ量の推定が禁止されている期間(時間)のカウントが開始されるとともに(ct=ct−1)、演算回数カウンタPが0にリセットされる(P=0)。
【0099】
次に、ステップ#12でトラップ量推定禁止カウンタctが0以下であるか否か、すなわちトラップ量の推定が禁止された後所定期間ct0が経過したか否かが判定され、ct≦0であると判定された場合は(YES)、すでにct0を経過しているのでステップ#13でトラップ量推定完了フラグxtraplrnが0にリセットされる。この場合は、前記したとおり、トラップ量推定値trapが真のトラップ量からずれているおそれがあるので、トラップ量推定完了フラグxtraplrnをリセットするようにしている。他方、ステップ#12でct>0であると判定された場合は(NO)、まだct0を経過していないのでステップ#13をスキップする。
【0100】
図16に、かかるトラップ量推定ルーチンが実行された場合において、時刻t1でキャニスタパージが開始されたときの、パージ制御弁29に印加される駆動デューティ比dpg(グラフG2)、フィードバック補正値cfb(グラフG3)、平均フィードバック補正値cfbave(グラフG4)及びトラップ量推定値trap(グラフG5)の経時変化の一例を示す。
図16から明らかなとおり、トラップ量推定値trapは時刻t1から推定が開始され、まもなく一定値に収束している。このようにして、トラップ量が高精度で推定される。
【0101】
この図8に示すトラップ量演算サブルーチンでは、ステップ#4で、前記したとおり、一定時間毎のフィードバック補正値cfbの相加平均が平均フィードバック補正値cfbaveとされているが、このようにせず、次の式2を用いてフィードバック補正値cfbを重み付けした加重平均値すなわちなまし値を求め、この加重平均値を平均フィードバック補正値cfbaveとしてもよい。
【数2】
cfbave=α・cfb(i)+(1−α)・cfb(i−1)…………………………式2
α;重み係数
cfbave:平均フィードバック補正値
cfb(i):今回のフィードバック補正値
cfb(i−1):前回のフィードバック補正値
【0102】
ここで、O2センサとしてλO2センサを用いる場合は、かかる加重平均値を平均フィードバック補正値cfbaveとするのが好ましい。
図9に、このように加重平均をとることにより平均フィードバック補正値cfbaveを演算する場合のトラップ量演算サブルーチンのフローチャートを示す。なお、図9に示すフローチャートは、ステップ#4’を除けば図8に示すフローチャートと同一である。
【0103】
図20に、リニアO2センサを用いたエンジンにおいて、フィードバック補正値cfbの相加平均値を平均フィードバック補正値cfbaveとした場合の(図8中のステップ#4参照)、フィードバック補正値cfb(グラフM1)及び平均フィードバック補正値cfbave(グラフM2)の、時間に対する変化特性を示す。
図20から明らかなとおり、リニアO2センサを用いてフィードバック補正値cfbの相加平均値を平均フィードバック補正値cfbaveとした場合は、精度の高い平均フィードバック補正値cfbaveが得られる。
【0104】
また、図21に、λO2センサを用いた場合において、フィードバック補正値cfbの加重平均値すなわちなまし値を平均フィードバック補正値cfbaveとした場合の(図9中のステップ#4’参照)、フィードバック補正値cfb(グラフM3)及び平均フィードバック補正値cfbave(グラフM4)の時間に対する変化特性を示す。
図21から明らかなとおり、λO2センサを用いてフィードバック補正値cfbの加重平均値を平均フィードバック補正値cfbaveとした場合は、過渡時において応答遅れの少ない平均フィードバック補正値cfbaveが得られる。なお、PID制御では、反転値サンプルの相加平均値(グラフM5)は、応答遅れが大きくなる。
【0105】
ところで、コントロールユニットCUが空燃比の学習機能を備えている場合は、前に説明したとおり、空燃比学習が終了した後でトラップ量の推定を行うのが好ましい。なお、空燃比学習が終了した後でトラップ量の推定を行う場合の利点は前に説明したとおりである(段落0075参照)。
【0106】
以下、図10に示すフローチャートに従って、適宜図3〜図6を参照しつつ、メインルーチンのステップT7で実行(起動)されるトラップ量推定実行判定サブルーチン、すなわち空燃比の学習機能を備えている場合の好ましいトラップ量の推定手法を説明する。
このサブルーチンでは、基本的にはアイドル時において所定の空燃比学習条件が成立しているときに空燃比学習を行う一方、該空燃比学習が終了した後において所定のトラップ量推定条件が成立しているときにトラップ量の推定を行うようにしている。
【0107】
具体的には、図10に示すように、まずステップ#22でアイドル判定フラグxidlが1であるか否かが判定される。アイドル判定フラグxidlは、エンジンCEがアイドル状態にあるときには1がたてられ、非アイドル状態にあるときには0にリセットされるフラグである。ここで、xidl=1であると判定された場合は(YES)、ステップ#23〜ステップ#29の空燃比学習を行うためのアイドル時用ルーチンが実行される。他方、xidl≠1(xidl=0)であると判定された場合は(NO)、ステップ#30で空燃比学習実行カウンタclrnとアイドル継続時間カウンタtidlとが夫々0にリセットされた後、後で説明するステップ#31が実行されることになる。
【0108】
アイドル時用ルーチンが実行される場合は、まずステップ#23とステップ#24とで、順に、空燃比フィードバック制御実行フラグxfbが1であるか否かと、アイドル継続時間カウンタtidlが所定値αを超えているか否かとが判定される。ここで、空燃比フィードバック制御実行フラグxfbは空燃比のフィードバック制御が行われているときには1がたてられ、フィードバック制御が行われていないとき(オープンループ制御時)には0にリセットされるフラグである。また、アイドル継続時間カウンタtidlは、アイドル時におけるアイドル運転開始後の経過時間をカウントするためのカウンタである。
【0109】
このトラップ量推定実行判定サブルーチンでは、アイドル時における空燃比のフィードバック制御時において、アイドル運転継続時間が所定期間α以下の場合は、エンジンCEが安定したアイドル状態に達していないものと考えられるので、空燃比学習を行わないようにしている。
かくして、ステップ#23でxfb≠1(xfb=0)であると判定された場合は(NO)、空燃比学習を行うことができないので、ステップ#24〜ステップ#29は実行されず、前記のステップ#30で空燃比学習実行カウンタclrnとアイドル継続時間カウンタtidlとが夫々0にリセットされた後、ステップ#31が実行される。
【0110】
また、ステップ#23でxfb=1であると判定された場合(YES)、すなわちフィードバック制御時であっても、ステップ#24でtidl≦αであると判定された場合は(NO)、やはり空燃比学習を行うことができないので、ステップ#28で、アイドル継続時間カウンタtidlが1だけインクリメントされた後(tidl=tidl+1)、ステップ#31が実行される。
【0111】
他方、ステップ#24でtidl>αであると判定された場合は(YES)、ステップ#25で空燃比学習実行カウンタclrnが所定値β未満であるか否かが判定される。空燃比学習実行カウンタclrnは、アイドル運転開始後において空燃比学習が実行された回数をカウントするためのカウンタである。ここでは、空燃比学習の実行回数が所定値β以上となったときに空燃比学習が終了しているものと判定するようにしている。
【0112】
かくして、ステップ#25でclrn<βであると判定された場合は(YES)、まだ空燃比学習が終了していないのでステップ#26で空燃比学習が継続され、続いてステップ#27で空燃比学習実行カウンタclrnが1だけインクリメントされ(clrn=clrn+1)、この後ステップ#31が実行される。なお、空燃比学習は、空燃比偏差が0のときにはフィードバック補正値cfbが平均的には中立値0となるように、燃料噴射弁15の噴射特性を変化させるなどといった普通の手法で行われる。
【0113】
他方、ステップ#25でclrn≧βであると判定された場合は(NO)、空燃比学習が終了しているのでステップ#29で空燃比学習完了フラグxlrndに1がたてられ、この後ステップ#31が実行される。
【0114】
かくして、ステップ#31〜ステップ#34では、トラップ推定条件が成立しているか否かが判定される。ここでは、次の4つの条件がすべて成立しているときには、トラップ量推定条件が成立しているものと判定し、これらのうちのいずれか1つでも不成立であればトラップ量推定条件が不成立であると判定するようにしている。
(1)キャニスタパージが行われていること
(2)空燃比のフィードバック制御が行われていること
(3)充填効率(または吸気圧)が所定値未満であること
(4)空燃比学習が完了(終了)していること
これらの4つの条件(1)〜(4)を設ける理由は、図8にフローチャートを示している前記のトラップ量演算サブルーチンのステップ#2の場合と同様である。なお、上記(1)〜(4)に加えて、吸気圧が所定値以下の時、トラップ量の推定が禁止できるように、吸気圧、または吸気圧相当を求めることができる充填効率が、上記(3)の所定値(上限値)より低い下限値(第2の所定値)以上であることをトラップ量推定条件としても良い。
【0115】
具体的には、ステップ#31〜ステップ#34の4つのステップで、順に、パージ実行フラグxpgが1であるか否かすなわちキャニスタパージが行われているか否かと、空燃比フィードバック制御実行フラグxfbが1であるか否かすなわち空燃比のフィードバック制御が行われているか否かと、充填効率ceが所定値γ未満であるか否かと、空燃比学習完了フラグxlrndが1であるか否かすなわち空燃比学習が終了しているか否かとが判定される。
【0116】
ここで、xpg=1であり、xfb=1であり、ce<γであり、かつxlrnd=1であると判定された場合(ステップ#31〜ステップ#34がすべてYES)、すなわちトラップ量推定条件が成立していると判定された場合は、ステップ#35でトラップ量が推定される。なお、トラップ量の具体的な推定方法は、図6にフローチャートを示すトラップ量演算サブルーチンの場合と同様である。
【0117】
他方、xpg=0であるか、xfb=0であるか、ce≧γであるか、又はxlrnd=0であると判定された場合は(ステップ#31〜ステップ#34のいずれか1つがNO)、トラップ量推定条件が成立していないので、ステップ#35をスキップする。
このように、図10にフローチャートを示すこのトラップ量推定手法によれば、空燃比学習が終了した後でトラップ量が推定されるので、トラップ量の推定精度が大幅に高められる。
【0118】
以下、図11に示すフローチャートに従って、適宜図3〜図6を参照しつつ、メインルーチンのステップT4で実行(起動)される燃料噴射量演算サブルーチン、すなわちコントロールユニットCUによるパージガス比率(蒸発燃料放出量)及び正味パージガス比率(蒸発燃料流入量)の演算手法と、空燃比制御(燃料噴射量制御)の制御手法とについて具体的に説明する。
この燃料噴射量演算サブルーチンでは、ステップ#41〜ステップ#47が順に実行される。
ステップ#41では、パージ制御弁前後差圧テーブルtable1を検索することにより、吸気充填効率ceに基づいてパージ制御弁前後差圧dpが演算される。ここでsipol(table1,ce)は、ceを独立変数としdpを従属変数とする所定の関数関係をあらわすtable1において、あるceに対応するdpを意味する。パージ制御弁前後差圧テーブルtable1は、吸気充填効率ceとパージ制御弁前後差圧dpとの間の関数関係をあらわすテーブルである。吸気充填効率ceに基づいてパージ制御弁前後差圧dpを演算することができる所以は前に説明したとおりである(段落0080参照)。
なお、パージ制御弁前後差圧dpを、このようなテーブル検索によるのではなく、ceとdpの関係をあらわす関数f1(ce)を用いて直接的に演算するようにしてもよい(dp=f1(ce))。
【0119】
ステップ#42では、パージ空気量マップmap1を検索することにより、パージ制御弁前後差圧dpとパージ制御弁29に印加される駆動デューティ比dpgとに基づいてパージ空気量qpgが演算される。ここでsmap(map1,dpg,dp)は、dpg及びdpを独立変数としqpgを従属変数とする所定の関数関係をあらわすmap1において、あるdpg及びdpに対応するqpgを意味する。パージ空気量map1は、駆動デューティ比dpg、パージ制御弁前後差圧dp及びパージ空気量qpgの相互間の関数関係をあらわすマップである。駆動デューティ比dpgとパージ制御弁前後差圧dpとに基づいてパージ空気量qpgを演算することができる所以は前に説明したとおりである(段落0081参照)。
なお、パージ空気量qpgを、このようなマップ検索によるのではなく、dpg、dp及びqpgの相互関係をあらわす関数f2(dpg,dp)を用いて直接的に演算するようにしてもよい(qpg=f2(dpg,dp))。
【0120】
ステップ#43では、蒸発燃料放出量マップmap2を検索することにより、パージ空気量qpgとトラップ量trapとに基づいて蒸発燃料放出量gpgが演算される。ここでsmap(map2,qpg,trap)は、qpg及びtrapを独立変数としgpgを従属変数とする所定の関数関係をあらわすmap2において、あるqpg及びtrapに対応するgpgを意味する。パージ空気量map2は、パージ空気量qpg、トラップ量trap及び蒸発燃料放出量gpgの相互間の関数関係をあらわすマップである。
図17に、蒸発燃料放出量gpgの、パージ空気量qpg及びトラップ量trapに対する依存特性の一例を示す。蒸発燃料放出量マップmap3は、例えば図17に示すような関数関係をマップ化したものである。
なお、蒸発燃料放出量gpgを、このようなマップ検索によるのではなく、qpg、trap及びgpgの相互関係をあらわす関数f3(gpg,trap)を用いて直接的に演算するようにしてもよい(gpg=f3(qpg,trap))。
【0121】
ステップ#44では、次の式3によりパージガス比率cpgoが演算される。
【数3】
cpgo=Ys・120/(γ0・Vc)・gpg/ne…………………………式3
cpgo:パージガス比率
Ys:吸入空気量を燃料噴射量に換算するための換算係数
γ0:密度
Vc:シリンダ有効容積
gpg:蒸発燃料放出量
ne:エンジン回転数[r.p.m.]
なお、式3において、120/(γ0・Vc・ne)は、単位時間(秒)当たりの燃焼室4への吸入空気量(質量流量)の逆数であり、したがってこれに換算係数Ysを乗算したYs・120/(γ0・Vc・ne)は単位時間あたりの要求燃料噴射量の逆数である。したがって、パージガス比率cpgoは、蒸発燃料放出量を要求燃料噴射量で除算した値、すなわち蒸発燃料放出量の全燃料流量に対する比率である。
【0122】
ステップ#45では、次の式4により正味パージガス比率cpgが演算される。
【数4】
cpg=λ・cpg+(1−λ)・cpgo………………………………………式4
cpg:正味パージガス比率
λ:一次フィルタ係数(0<λ<1)
cpgo:パージガス比率
式4は蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性をあらわすモデル式である。エンジンCEの吸気系10、AMI16及びパージ通路28の形状に応じて好ましく一次フィルタ係数λを設定することにより、式4を用いて正味パージガス比率cpg(蒸発燃料流入量)を正確に演算することができる。
【0123】
ステップ#46では、次の式5により実パルス幅ta(実燃料噴射量)すなわち燃料噴射弁15から実際に噴射すべき燃料噴射量が演算される。
【数5】
ta=K・ (ce・ctotal−cpg)……………………………………式5
ta:実パルス幅
K:換算係数
ce:吸気充填効率
ctotal:補正係数
式5において、K・ce・ctotalは要求パルス幅(要求燃料噴射量)すなわち燃焼室4で実際に必要とされる燃料量をあらわしている。また、k・cpgはパージによる供給燃料量を噴射パルス幅相当に換算したものである。したがって、式5では燃料噴射弁15から実際に噴射すべき燃料量(実燃料噴射量)に対応する噴射パルス幅すなわち実パルス幅taが演算されることになる。
【0124】
ステップ#47では、ステップ#46で演算された実パルス幅taで燃料噴射弁15から燃料が噴射され、この後ステップ#41に復帰する。このようにして燃焼室4には、キャニスタパージを行っているときでも、運転状態に応じて必要とされる量の燃料が正確に供給され、空燃比制御(燃料噴射量制御)の制御精度が高められ、実空燃比が目標値に保持される。この場合、運転状態に応じて要求燃料噴射量を決定するプロセスすなわち空燃比制御本体はフィードバック制御であるが、要求燃料噴射量から蒸発燃料流入量を差し引いてキャニスタパージによる影響を排除するプロセスはフィードフォワード制御である。したがって、正味パージガス比率ないしは蒸発燃料流入量の演算にはタイムラグが伴われない。このため、キャニスタパージに起因する実空燃比の目標値に対するずれは生じない。
図18に、かかる制御が行われた場合において時刻t2でキャニスタパージが開始されたときの、駆動デューティ比dpg(グラフH1)、パージガス比率cpgo(グラフH2)、正味パージガス比率cpg(グラフH3)及び実パルス幅ta(グラフH4)の時間に対する変化特性の一例を示す。
【0125】
このように、エンジンCEにおいては、トラップ量を推定し、該トラップ量に基づいて蒸発燃料流入量(正味パージガス比率)を正確に演算し、要求燃料噴射量から蒸発燃料流入量を差し引いて実燃料噴射量を設定するようにしているので、キャニスタパージによって吸気系10ないしは燃焼室4に流入する蒸発燃料が空燃比のフィードバック制御の外乱とはならない。このため、トラップ量の推定が完了しているときにはキャニスタパージによっては空燃比の目標値に対するずれは生じない。
しかしながら、トラップ量の推定が完了していないときすなわちトラップ量推定完了フラグxtraplrnが0であるときには、正味パージガス比率ないしは蒸発燃料流入量が正確には把握されない。したがって、トラップ量の推定が完了していないときには、キャニスタパージを規制するのが好ましい。
【0126】
かかるキャニスタパージの具体的な規制方法としては、例えば次のようなものが考えられる。
すなわち、トラップ量の推定が完了するまでは、キャニスタパージを禁止し、あるいはパージ速度(パージ空気量)を小さくするようにしてもよい。なお、キャニスタパージを禁止する場合は、該禁止をアイドル時のみとしてもよい。
また、パージ制御弁29が閉状態から開状態に変化してキャニスタパージが開始される際には、燃焼室4への燃料供給特性の急変を防止するために、パージ制御弁29の駆動デューティ比(パージ空気量)を、運転状態に応じて設定される目標駆動デューティ比まで一挙に増加させるのではなく、徐々に増加させるのが好ましい。
そして、このように駆動デューティ比を目標駆動デューティ比に達するまで徐々に増加させるようにした場合において、トラップ量の推定が完了していないときにはキャニスタパージ開始時における駆動デューティ比の増加速度を小さくするのが好ましい。つまり、トラップ量の推定が完了しているときには駆動デューティ比の増加速度を大きくし、トラップ量の推定が完了していないときには駆動デューティ比の増加速度を小さくすることになる。
【0127】
ところで、燃料噴射量演算サブルーチンにおいては、パージ空気量qpg及びトラップ量trapだけではなく、さらにキャニスタの25の脱気特性をも加味して蒸発燃料放出量gpgを演算するようにしてもよい。ここで、上記脱気特性としては、例えば、パージ空気によってキャニスタ25からパージされる燃料の質量流量(パージ質量流量)の吸気温依存性等を用いるのが好ましい。
なお、図22に、トラップ量を一定とした場合における、パージ質量流量の吸気温依存性の一例を示す。
【0128】
また、図6に、図22に示すようなパージ質量流量の吸気温依存性を考慮した場合における、制御システムの一例を示す。この図6に示す制御システムは、ステップS8でパージガス質量流量を演算する際に、吸気温ないしは吸気温依存性を考慮する点を除けば、前記の図5に示す制御システムと同様である。
さらに、図12に、図22に示すようなパージ質量流量の吸気温依存性を考慮した場合における燃料噴射量演算サブルーチンのフローチャートを示す。この図12に示す燃料噴射量演算サブルーチンは、ステップ#43aと、ステップ#43bで、上記吸気温依存性を考慮して次の式6、式7を用いて蒸発燃料放出量gpgを演算する点を除けば、前記の図11に示す燃料噴射量演算サブルーチンと同様である。
【数6】
gpgφ=smap(map2,qpg、trap)…………………………………………式6
(gpgφ=f3(qpg,trap)
【数7】
gpg=gpgφ・sipol(table2,thaa)………………………………………式7
gpgφ:吸気温補正前蒸発燃料放出量
gpg:吸気温補正後蒸発燃料放出量
thaa:吸気温
このように、吸気温依存性を考慮した場合、燃料タンク等の配置にかかわらず、燃料パージ量を高精度で演算することができる。
【0129】
以下、図13に示すフローチャートに従って、適宜図3〜図6を参照しつつ、メインルーチンのステップT6で実行(起動)されるパージ量演算サブルーチン、すなわちキャニスタパージ開始時に駆動デューティ比を徐々に増加させるようにした場合における、駆動デューティ比の増加速度の制御方法を説明する。
このパージ量演算サブルーチンでは、まずステップ#51で、パージ実行フラグxpgが1であるか否かが判定され、xpg≠1(xpg=0)であれば(NO)、ステップ#52でパージ補正値cmodが0とされる。
【0130】
パージ補正値cmodは、キャニスタパージが開始される際に、エンジンCEの運転状態に応じて設定された目標駆動デューティ比を補正するための0以上1以下の補正値であって、目標駆動デューティ比とパージ補正値cmodの積がパージ制御弁29に実際に印加される駆動デューティ比dpgとなる。そして、パージ補正値cmodは、キャニスタパージ開始前は0とされ、キャニスタパージ開始後は増分SPで徐々に増やされ、したがってパージ空気量が徐々に増やされる。そして、パージ補正値cmodが1に達した後は、1に保持される。なお、パージ補正値cmodが0である場合は目標駆動デューティ比の値にかかわらずキャニスタパージが停止され、パージ補正値cmodが1である場合は目標駆動デューティ比がそのままパージ制御弁29に印加されることになる。
【0131】
他方、ステップ#51で、xpg=1であると判定された場合は(YES)、ステップ#53でパージ補正値cmodが1であるか否かが判定される。ここで、cmod≠1(すなわち、cmod<1)であると判定された場合は(NO)、キャニスタパージ開始後においてパージ補正値cmodを徐々に増加させるべき状態にあるので、ステップ#54〜ステップ#57で、トラップ量の推定が完了しているか否かを考慮して、パージ補正値cmodが徐々に増やされる。
【0132】
具体的には、ステップ#54で、トラップ量推定完了フラグxtraplrnが1であるか否か、すなわちトラップ量の推定が完了しているか否かが判定される。ここで、xtraplrn=1であると判定された場合は(YES)、ステップ#55で増分SPが比較的大きい値KM1とされ、この後ステップ#57が実行される。この場合は、トラップ量の推定が完了しているので、正味パージガス比率ないしは蒸発燃料流入量を正確に演算することができる。したがって、フィードフォワード制御でキャニスタパージの影響を確実に補償することができる。すなわち、ある程度急激にキャニスタパージを開始しても、その影響は十分に補償され、空燃比制御に乱れを生じさせない。そこで、増分SPを大きくして、すなわちパージ補正値cmodの増加速度を大きくして、早期に目標駆動デューティ比でキャニスタパージを行うようにしている。
この場合、実際にパージ制御弁29に印加される駆動デューティ比dpgの時間に対する変化特性は、例えば図19中のグラフL1のようになる。なお、図19中において、グラフL1,L2が時間軸と平行になっている部分は、目標駆動デューティ比をあらわしている。
【0133】
他方、ステップ#54でxtraplrn≠1(xtraplrn=0)であると判定された場合は(NO)、ステップ#56で増分SPが比較的小さい値KM2(KM2<KM1)とされ、この後ステップ#57が実行される。この場合は、トラップ量の推定がまだ完了していないので、正味パージガス比率ないしは蒸発燃料流入量を正確に演算することができない。したがって、フィードフォワード機能が十分にははたらかないので、急激にキャニスタパージを開始すると、その影響が十分に補償されず、空燃比制御に乱れを生じる。そこで、増分SPを小さくして、すなわちパージ補正値cmodの増加速度を小さくするようにしている。
この場合、実際にパージ制御弁29に印加される駆動デューティ比dpgの時間に対する変化特性は、例えば図19中のグラフL2のようになる。
【0134】
ステップ#57では、前回のパージ補正値cmodにSPを加算して今回のパージ補正値cmodが演算される。なお、加算の結果今回のパージ補正値cmodが1を超える場合には1にとどめられる。ここで、addclip(cmod,SP,1)は、cmodにSPを加算するが上限値を1とするといった演算処理をあらわしている。このようにして、パージ補正値cmodが徐々に増やされる。
【0135】
次に、ステップ#58で、次の式8によりパージ制御弁29に実際に印加すべき駆動デューティ比dpgが演算される。
【数8】
dpg=cmod・smap(map3,ne,ce)………………………………………式8
dpg:駆動デューティ比
cmod:パージ補正値
smap(map3,ne,ce):目標駆動デューティ比
ne:エンジン回転数
ce:吸気充填効率
なお、式8において、smap(map3,ne,ce)は、ne及びceを独立変数としdpgを従属変数とする所定の関数関係をあらわすデューティ比map3において、あるne及びceに対応するdpgを意味する。デューティ比map3は、エンジン回転数ne、吸気充填効率ce及び駆動デューティ比dpgの相互間の関数関係をあらわすマップである。
このようにして、キャニスタパージが開始される際には、駆動デューティ比dpgすなわちパージ空気量が徐々に増やされる。
【0136】
ところで、前記のステップ#53でcmod=1であると判定された場合は(YES)、キャニスタパージ開始後においてcmodがすでに1に達していることになるので、ステップ#54〜ステップ#57をスキップして、ステップ#58でパージ補正値cmodを1として駆動デューティ比dpgが演算される。
【0137】
以下、図14に示すフローチャートに従って、適宜図3〜図6を参照しつつ、メインルーチンのステップT5で実行(起動)されるパージ実行判定サブルーチンについて説明する。
このパージ実行判定サブルーチンでは、まずステップ#61でパージ実行可であるか否かが判定され、パージ実行可でなければ(NO)、ステップ#66でパージ実行フラグxpgに0がセットされる。この後、ステップ#61に復帰する。
なお、ここでは水温が80℃以上である場合において、エンジンCEの運転状態がフィードバックゾーン又はエンリッチゾーンにあるときには、パージ実行可とされている。
【0138】
他方、ステップ#61でパージ実行可であると判定された場合は(YES)、ステップ#62でアイドル判定フラグxidlが1であるか否か、すなわちアイドル時であるか否かが判定され、xidl≠1(xidl=0)であれば(NO)、すなわちアイドル時でなければ、ステップ#65でパージ実行フラグxpgに1がセットされる。
【0139】
ステップ#62で、xidl=1であると判定された場合は(YES)、ステップ#63とステップ#64とで、夫々、空燃比学習完了フラグxlrndが1であるか否かと、トラップ量推定完了フラグxtraplrnが1であるか否かとが判定される。ここでは、アイドル時において、xlrnd=1でありかつxtraplrn=1である場合、すなわち空燃比学習が完了しておりかつトラップ量推定が完了している場合にのみ、パージ実行を許可するようにしている(パージ実行フラグxpgに1をセットする)。
【0140】
かくして、ステップ#63とステップ#64とで、xlrnd=1でありかつxtraplrn=1であると判定された場合は、ステップ#65でパージ実行フラグxpgに1がセットされる。他方、xlrndとxtraplrnのうちの少なくとも一方が0であれば、ステップ#66でパージ実行フラグxpgに0がセットされる。
【0141】
このようにして、アイドル時においても、空燃比制御に乱れを生じさせずに、すなわち空燃比の目標値に対するずれを生じさせずにキャニスタパージを行うことができる。
【0142】
前記の実施例では、トラップ量を平均フィードバック補正値に基づいて推定するようにしているが、トラップ量を直接検出するトラップ量検出センサを設け、このトラップ量検出センサによって検出されたトラップ量に基づいて蒸発燃料放出量(パージガス比率)ないしは蒸発燃料流入量(正味パージガス比率)を演算するようにしてもよい。
この場合、トラップ量検出センサとしては、キャニスタ25内の吸着材の静電容量に基づいてトラップ量を検出するもの、あるいはHCセンサ等をもちいることが可能である。
【0143】
【発明の作用・効果】
第1の発明によれば、平均フィードバック補正値に基づいて蒸発燃料捕集量が正確に推定される。したがって、該蒸発燃料捕集量とパージ空気量とに基づいて、好ましくは蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性を考慮することによって、タイムラグのない蒸発燃料パージ量あるいは燃焼室への蒸発燃料流入量を正確に把握することが可能となる。そして、このようにして把握されたタイムラグのない蒸発燃料パージ量ないしは蒸発燃料流入量で燃料噴射量を減量補正することによって、キャニスタパージによって燃焼室に供給される蒸発燃料を、空燃比フィードバック制御の外乱から切り離すことができ、空燃比制御の制御精度を高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれの発生を有効に防止することができる。
また、平均フィードバック補正値に基づいて蒸発燃料捕集量を推定するようにしているので、フィードバック補正値が変動している場合でも蒸発燃料捕集量が正確に推定され、蒸発燃料捕集量の推定精度が大幅に高められる。
【0144】
第2の発明によれば、基本的には第1の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、平均フィードバック補正値が中立値より小さいか否かに応じて前回の蒸発燃料捕集量推定値を増減させ今回の蒸発燃料捕集量を推定するようにしているので、蒸発燃料捕集量の推定が極めて容易となる。
【0145】
第3の発明によれば、基本的には第2の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、平均フィードバック補正値が大きいときほど補正量が大きく設定されるので、蒸発燃料捕集量推定値の収束を速めることができる。
【0146】
第4の発明によれば、基本的には第1〜第3の発明のいずれか1つと同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下、すなわち平均フィードバック補正値に基づいて蒸発燃料捕集量を正確に推定することが困難な状況下では蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が高められる。
【0147】
第5の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性がないパージ停止時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0148】
第6の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い高充填効率時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0149】
第7の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い低吸気圧時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0150】
第8の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性がない空燃比フィードバック制御停止時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0151】
第9の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、相関性の低い条件が重複しているときに蒸発燃料の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量の推定が過度に禁止されるのが防止される。
【0152】
第10の発明によれば、基本的には第1〜第9の発明のいずれか1つと同様の作用・効果が得られる。さらに、平均フィードバック補正値の絶対値が所定の限界値未満となったときに蒸発燃料捕集量の推定が完了しているものと判定されるので、蒸発燃料捕集量の推定完了判定が容易となる。
【0153】
第11の発明によれば、基本的には第10の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量の推定が完了していると判定された後において、蒸発燃料捕集量の推定が所定期間以上継続して禁止されたときには、上記の完了判定が撤回されるので、蒸発燃料捕集量の推定が長時間継続されたことによって蒸発燃料捕集量推定値が真値からずれている場合に、蒸発燃料捕集量の推定が完了していると誤判定するのが防止される。
【0154】
第12の発明によれば、基本的には第1〜第11の発明のいずれか1つと同様の作用・効果が得られる。さらに、空燃比制御における空燃比学習が終了した後で蒸発燃料捕集量が推定される。したがって、蒸発燃料捕集量推定値が真値より大きいときには平均フィードバック補正値が中立値よりも確実に大きくなり、他方蒸発燃料捕集量推定値が真値よりも小さいときには平均フィードバック補正値が中立値よりも確実に小さくなるので、蒸発燃料捕集量の推定精度が大幅に高められる。
【0155】
第13の発明によれば、基本的には第1〜第9の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、空燃比検出手段が空気過剰率λが1より大きい領域でもO2濃度を検出することができるリニアO2センサとされるので、フィードバック補正値の相加平均値又は加重平均値である平均フィードバック補正値の算出精度が高められ、蒸発燃料捕集量の推定精度がさらに高められる。
【0156】
第14の発明によれば、基本的には第1〜第9の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、空燃比検出手段が空気過剰率λO2センサとされ、フィードバック補正値の加重平均値が平均フィードバック補正値とされるので、過渡時においては応答遅れの少ない平均フィードバック補正値が得られ、蒸発燃料捕集量の推定精度が大幅に高められる。
【0157】
第15の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い高吸気圧時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0158】
第16の発明によれば、基本的には第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い低充填効率時には蒸発燃料捕集量の推定が禁止されるので、蒸発燃料捕集量推定値の精度が一層高められる。
【0159】
第17の発明によれば、蒸発燃料量推定装置によって推定された蒸発燃料捕集量に基づいて蒸発燃料パージ量が算出されるので、タイムラグのない正確な蒸発燃料パージ量が得られる。そして、このようにして得られたタイムラグのない蒸発燃料パージ量で燃料噴射量を減量補正することにより、キャニスタパージによって燃焼室に供給される蒸発燃料を、空燃比のフィードバック制御の外乱から切り離すことができ、空燃比制御の制御精度を高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれの発生を有効に防止することができる。
なお、蒸発燃料捕集量を推定する上においては、第1〜第14の発明のいずれか1つと同様の作用・効果が得られる。
【0160】
第18の発明によれば、蒸発燃料捕集量検出手段によって検出された蒸発燃料捕集量に基づいて蒸発燃料パージ量が算出されるので、タイムラグのない正確な蒸発燃料パージ量が得られる。そして、このようにして得られたタイムラグのない蒸発燃料パージ量で燃料噴射量を減量補正することにより、キャニスタパージによって燃焼室に供給される蒸発燃料を、空燃比のフィードバック制御の外乱から切り離すことができ、空燃比制御の制御精度を高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれの発生を有効に防止することができる。
さらに、まず蒸発燃料放出量が算出され、この蒸発燃料放出量に基づいて、好ましくは蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性を考慮するなどして、実際に燃焼室へ流入する蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料流入量 ) が正確に算出される。したがって、燃料噴射量の減量補正を正確に行うことが可能となり、空燃比制御の制御精度を一層高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれを一層有効に防止することができる。
さらに、蒸発燃料パージ手段の制御弁の開度と該制御弁の前後の差圧とに基づいてパージ空気量が演算され、さらにこのパージ空気量と蒸発燃料捕集量とに基づいて蒸発燃料放出量が演算されるので、蒸発燃料放出量の演算精度が大幅に高められる。
【0161】
第19の発明によれば、基本的には第18の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性を考慮して、蒸発燃料放出量に基づいて蒸発燃料流入量が演算されるので、蒸発燃料流入量が正確に求められる。このため、燃料噴射量の減量補正を正確に行うことが可能となり、空燃比制御の制御精度を一層高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれを一層有効に防止することができる。
【0162】
第20の発明によれば、基本的には第19の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料放出量とエンジン回転数とに基づいて蒸発燃料比率が演算され、さらにこの蒸発燃料比率と、蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性とに基づいて蒸発燃料流入量に対応する正味蒸発燃料比率が演算されるので、蒸発燃料流入量(正味蒸発燃料比率)の演算が簡略化される。
【0163】
第21の発明によれば、基本的には第20の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、パージ空気量演算手段と、蒸発燃料放出量演算手段と、輸送遅れ特性設定手段と、蒸発燃料比率演算手段と、蒸発燃料流入量演算手段とが、夫々、所定のモデル式でもって出力値を演算又は設定するようになっている(モデル化されている)ので、パージ空気量、蒸発燃料放出量及び蒸発燃料流入量の演算が極めて容易となる。
【0164】
第22の発明によれば、基本的には第17〜第21の発明のいずれか1つと同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、キャニスタパージが規制されるので、蒸発燃料流入量の算出精度が低いのにもかかわらずキャニスタパージに起因する空燃比制御の乱れを抑制することができる。
【0165】
第23の発明によれば、基本的には第22の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、キャニスタパージが禁止されるのでキャニスタパージによる空燃比制御の乱れを確実に防止することができる。
【0166】
第24の発明によれば、基本的には第22の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、キャニスタパージの禁止がアイドル時のみとされるので、非アイドル時にはキャニスタパージを行うことができ、不必要にキャニスタパージを禁止するのを防止することができる。
【0167】
第25の発明によれば、基本的には第22又は第24の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、キャニスタパージのパージ速度を小さくするようにしているので、キャニスタパージによる空燃比制御の乱れを一層有効に抑制することができる。
【0168】
第26の発明によれば、基本的には第22又は第24の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、キャニスタパージのパージ量を少なくするようにしているので、キャニスタパージによる空燃比制御の乱れを一層有効に抑制することができる。
【0169】
第27の発明によれば、基本的には第25の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料パージ手段の制御弁が閉弁状態から開弁状態に移行する際にはパージ速度が徐々に増加させられ、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、上記増加速度が小さく設定されるので、キャニスタパージ開始時における空燃比制御の乱れを防止することができる。
【0170】
第28の発明によれば、蒸発燃料捕集量検出手段によって検出された蒸発燃料捕集量に基づいて蒸発燃料パージ量が算出されるので、タイムラグのない正確な蒸発燃料パージ量が得られる。そして、このようにして得られたタイムラグのない蒸発燃料パージ量で燃料噴射量を減量補正することにより、キャニスタパージによって燃焼室に供給される蒸発燃料を、空燃比のフィードバック制御の外乱から切り離すことができ、空燃比制御の制御精度を高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれの発生を有効に防止することができる。
さらに、まず蒸発燃料放出量が算出され、この蒸発燃料放出量に基づいて、好ましくは蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性を考慮するなどして、実際に燃焼室へ流入する蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料流入量 ) が正確に算出される。したがって、燃料噴射量の減量補正を正確に行うことが可能となり、空燃比制御の制御精度を一層高めることができ、キャニスタパージに起因する空燃比の目標値に対するずれを一層有効に防止することができる。
さらに、蒸発燃料捕集手段の脱気特性を考慮して蒸発燃料流入量が算出されるので、燃料タンク等の配置にかかわらず該蒸発燃料流入量の算出精度が高められ、空燃比制御の制御精度が高められる。
【0171】
第29の発明によれば、基本的には第28の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、蒸発燃料捕集手段の蒸発燃料放出特性の吸気温依存性を考慮して蒸発燃料流入量が算出されるので、該蒸発燃料流入量の算出精度が一層高められ、空燃比制御の制御精度が大幅に高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1〜請求項14に対応する第1〜第14の発明の構成を示すブロック図である。
【図2】請求項17〜請求項29に対応する第17〜第29の発明の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明にかかる蒸発燃料量推定装置及び制御装置を備えたエンジンのシステム構成図である。
【図4】本発明にかかる蒸発燃料量推定装置及び制御装置を備えたエンジンの変形例を示すシステム構成図である。
【図5】コントロールユニットの構成を機能化して示したブロック図である。
【図6】蒸発燃料放出量の吸気温依存性を考慮した場合における図5と同様の図である。
【図7】コントロールユニットによるエンジン制御のメインルーチンのフローチャートである。
【図8】トラップ量演算サブルーチンのフローチャートである。
【図9】トラップ量演算サブルーチンの変形例のフローチャートである。
【図10】トラップ量推定実行判定サブルーチンのフローチャートである。
【図11】燃料噴射量演算サブルーチンのフローチャートである。
【図12】燃料噴射量演算サブルーチンの変形例のフローチャートである。
【図13】パージ量演算サブルーチンのフローチャートである。
【図14】パージ実行判定サブルーチンのフローチャートである。
【図15】平均フィードバック補正値とトラップ量の関係を示す図である。
【図16】駆動デューティ比、フィードバック補正値、平均フィードバック補正値及びトラップ量推定値の経時変化の一例を示す図である。
【図17】蒸発燃料放出量のパージ空気量及びトラップ量に対する依存特性を示す図である。
【図18】駆動デューティ比、パージガス比率、正味パージガス比率及び実パルス幅の経時変化の一例を示す図である。
【図19】キャニスタパージ開始時における、駆動デューティ比の経時変化の一例を示す図である。
【図20】リニアO2センサを用いた場合の、フィードバック補正値及び平均フィードバック補正値の時間に対する変化特性を示す図である。
【図21】λO2センサを用いた場合の、フィードバック補正値及び平均フィードバック補正値の時間に対する変化特性を示す図である。
【図22】パージ質量流量の吸気温依存性を示す図である。
【符号の説明】
CE,CE’…エンジン
CU…コントロールユニット
4…燃焼室
9…リニアO2センサ
10…吸気系
15…燃料噴射弁
16…アシストエア供給手段(AMI)
25…キャニスタ
28…パージ通路
29…パージ制御弁
Claims (29)
- 空燃比を検出する空燃比検出手段と、
該空燃比検出手段によって検出された空燃比の目標値に対する偏差に基づいてフィードバック補正値を設定するフィードバック補正値設定手段と、
該フィードバック補正値設定手段によって設定されたフィードバック補正値に基づいて空燃比を制御する空燃比制御手段と、
蒸発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段と、
該蒸発燃料捕集手段によって捕集されている蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段とが設けられているエンジンの蒸発燃料量推定装置であって、
フィードバック補正値設定手段によって設定されたフィードバック補正値の平均値(平均フィードバック補正値)を演算する平均フィードバック補正値演算手段と、
該平均フィードバック補正値演算手段によって演算された平均フィードバック補正値に基づいて、蒸発燃料捕集手段によって捕集されている蒸発燃料の量(蒸発燃料捕集量)を推定する蒸発燃料捕集量推定手段と、
該蒸発燃料捕集量推定手段により推定された蒸発燃料捕集量からエンジンに吸入される蒸発燃料流入量を演算する蒸発燃料流入量演算手段と、
該蒸発燃料流入量演算手段により演算された蒸発燃料流入量を必要燃料供給量から減量する燃料供給量減量手段とが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項1に記載された蒸発燃料量推定装置において、
蒸発燃料捕集量推定手段が、平均フィードバック補正値演算手段によって演算された平均フィードバック補正値が中立値より小さいか否かに応じて前回の蒸発燃料捕集量推定値を増減させて今回の蒸発燃料捕集量を推定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項2に記載された蒸発燃料量推定装置において、
蒸発燃料捕集量推定手段が、蒸発燃料捕集量推定値を増減させる補正量を、平均フィードバック補正値が大きいときほど大きく設定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載された蒸発燃料量推定装置において、
蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下では、蒸発燃料捕集量推定手段による蒸発燃料捕集量の推定を禁止する蒸発燃料捕集量推定禁止手段が設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項4に記載された蒸発燃料量推定装置において、
蒸発燃料捕集量推定禁止手段が、蒸発燃料の吸気系へのパージが停止されているときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項4に記載された蒸発燃料量推定装置において、
蒸発燃料捕集量推定禁止手段が、充填効率が所定値以上であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項4に記載された蒸発燃料量推定装置において、
蒸発燃料捕集量推定禁止手段が、吸気圧が所定値以下であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項4に記載された蒸発燃料量推定装置において、
蒸発燃料捕集量推定禁止手段が、空燃比のフィードバック制御が停止されているときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項4に記載された蒸発燃料量推定装置において、
蒸発燃料捕集量推定禁止手段が、蒸発燃料の吸気系へのパージが停止されている状態と、吸入空気量が所定値以上である状態と、吸気圧が所定値以下である状態と、空燃比のフィードバック制御が停止されている状態のうちの少なくとも1つの状態が成立しているときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載された蒸発燃料量推定装置において、
平均フィードバック補正値の絶対値が所定の限界値未満となったときに、蒸発燃料捕集量推定手段による蒸発燃料捕集量の推定が完了しているものと判定する推定完了判定手段が設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項10に記載された蒸発燃料量推定装置において、
推定完了判定手段が、蒸発燃料捕集量の推定が完了していると判定した後において、蒸発燃料捕集量推定禁止手段によって蒸発燃料捕集量の推定が所定期間以上継続して禁止されたときには、蒸発燃料捕集量の推定が完了しているとの判定を撤回するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項1〜請求項11のいずれか1つに記載された蒸発燃料量推定装置において、
空燃比制御手段が、フィードバック補正値が中立値となるように、制御出力特性を学習により補正するといった学習機能を備えていて、
蒸発燃料捕集量推定手段が、空燃比制御手段の学習が終了した後で蒸発燃料捕集量を推定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載された蒸発燃料量推定装置において、
空気過剰率λが1より大きい領域においてもO2濃度を検出することができるリニアO2センサが、空燃比検出手段として設けられ、
平均フィードバック補正値演算手段が、一定時間毎のフィードバック補正値の相加平均値又は重み付けした加重平均値を、上記のフィードバック補正値の平均値として演算するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載された蒸発燃料量推定装置において、
空気過剰率λが1より大きいか否かを検出することができるλO2センサが、空燃比検出手段として設けられ、
平均フィードバック補正値演算手段が、フィードバック補正値の加重平均値を、上記のフィードバック補正値の平均値として演算するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項4に記載された蒸発燃料量推定装置において、
蒸発燃料捕集量推定禁止手段が、吸気圧が所定値以上であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項4に記載された蒸発燃料量推定装置において、
蒸発燃料捕集量推定禁止手段が、充填効率が所定値以下であるときに、蒸発燃料捕集量とフィードバック補正値との相関性が低い条件下であるとして蒸発燃料捕集量の推定を禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置。 - 請求項1〜請求項14のいずれか1つに記載された蒸発燃料量推定装置と、
該蒸発燃料量推定装置によって推定された蒸発燃料捕集量に基づいて、吸気系への蒸発燃料のパージ流量 ( 蒸発燃料パージ量 ) を算出する蒸発燃料パージ量算出手段とが設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置。 - 蒸発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段と、
該蒸発燃料捕集手段によって捕集されている蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段と、
蒸発燃料捕集手段によって捕集されている蒸発燃料の量 ( 蒸発燃料捕集量 ) を検出若しくは推定する蒸発燃料捕集量検出手段と、
該蒸発燃料捕集量検出手段によって検出若しくは推定された蒸発燃料捕集量に基づいて、吸気系への蒸発燃料のパージ流量 ( 蒸発燃料パージ量 ) を算出する蒸発燃料パージ量算出手段とが設けられ、
蒸発燃料パージ量算出手段が、蒸発燃料捕集手段から吸気系側に放出される蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料放出量 ) を算出する蒸発燃料放出量算出手段と、該蒸発燃料放出量算出手段によって算出された蒸発燃料放出量に基づいて、燃焼室へ流入する蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料流入量 ) を算出する蒸発燃料流入量算出手段とを備え、
蒸発燃料放出量算出手段が、蒸発燃料パージ手段の制御弁の開度と該制御弁の前後の差圧とに基づいてパージ空気量を演算するパージ空気量演算手段と、該パージ空気量演算手段によって演算されたパージ空気量と、蒸発燃料捕集量とに基づいて蒸発燃料放出量を演算する蒸発燃料放出量演算手段とを備えていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置。 - 請求項18に記載された蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、
蒸発燃料流入量算出手段が、蒸発燃料捕集手段から燃焼室に至る蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性を設定する輸送遅れ特性設定手段と、
蒸発燃料放出量演算手段によって演算された蒸発燃料放出量と、エンジン回転数と、輸送遅れ特性設定手段によって設定された輸送遅れ特性とに基づいて蒸発燃料流入量を演算する蒸発燃料流入量演算手段とを備えていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置。 - 請求項19に記載された蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、
蒸発燃料流入量算出手段が、蒸発燃料放出量演算手段によって演算された蒸発燃料放出量とエンジン回転数とに基づいて蒸発燃料の全燃料中に占める比率(蒸発燃料比率)を演算する蒸発燃料比率演算手段を備えていて、
蒸発燃料流入量演算手段が、蒸発燃料比率演算手段によって演算された蒸発燃料比率と、輸送遅れ特性設定手段によって設定された輸送遅れ特性とに基づいて、蒸発燃料流入量の全燃料中に占める比率(正味蒸発燃料比率)を演算するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置。 - 請求項20に記載された蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、
パージ空気量演算手段と、蒸発燃料放出量演算手段と、輸送遅れ特性設定手段と、蒸発燃料比率演算手段と、蒸発燃料流入量演算手段とが、夫々、所定のモデル式でもって出力値を演算又は設定するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置。 - 請求項17〜請求項21のいずれか1つに記載された蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、
蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了していないときには、蒸発燃料の吸気系へのパージを規制するパージ規制手段が設けられていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置。 - 請求項22に記載された蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、
パージ規制手段による蒸発燃料のパージ規制が、蒸発燃料の吸気系へのパージの禁止であることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置。 - 請求項22に記載された蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、
パージ規制手段が、アイドル時に蒸発燃料の吸気系へのパージを禁止するようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置。 - 請求項22又は請求項24に記載された蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、
パージ規制手段が、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了するまでは蒸発燃料のパージ速度を小さくするようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置。 - 請求項22又は請求項24に記載された蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、
パージ規制手段が、蒸発燃料捕集量の検出又は推定が完了するまでは蒸発燃料のパージ量を少なくするようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置。 - 請求項25に記載された蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置において、
パージ規制手段が、蒸発燃料パージ手段の制御弁が閉弁状態から開弁状態に移行する際には、蒸発燃料のパージ速度を目標値に達するまで徐々に増加させるようになっていることを特徴とする蒸発燃料量推定装置を備えたエンジンの制御装置。 - 蒸発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段と、
該蒸発燃料捕集手段によって捕集されている蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段と、
蒸発燃料捕集手段によって捕集されている蒸発燃料の量 ( 蒸発燃料捕集量 ) を検出若しくは推定する蒸発燃料捕集量検出手段と、
該蒸発燃料捕集量検出手段によって検出若しくは推定された蒸発燃料捕集量に基づいて、吸気系への蒸発燃料のパージ流量 ( 蒸発燃料パージ量 ) を算出する蒸発燃料パージ量算出手段とが設けられ、
蒸発燃料パージ量算出手段が、蒸発燃料捕集手段から吸気系側に放出される蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料放出量 ) を算出する蒸発燃料放出量算出手段と、該蒸発燃料放出量算出手段によって算出された蒸発燃料放出量に基づいて、燃焼室へ流入する蒸発燃料の流量 ( 蒸発燃料流入量 ) を算出する蒸発燃料流入量算出手段とを備え、
蒸発燃料パージ量算出手段が、蒸発燃料放出量に対して蒸発燃料捕集手段の脱気特性を加味して、質量流量で蒸発燃料流入量を算出するようになっていることを特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項28に記載されたエンジンの制御装置において、
上記脱気特性が、蒸発燃料捕集手段におけるパージ空気量に対する蒸発燃料パージ質量流量の吸気温依存性であることを特徴とするエンジンの制御装置。
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