JP3088290B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

エンジンの制御装置

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JP3088290B2
JP3088290B2 JP08190530A JP19053096A JP3088290B2 JP 3088290 B2 JP3088290 B2 JP 3088290B2 JP 08190530 A JP08190530 A JP 08190530A JP 19053096 A JP19053096 A JP 19053096A JP 3088290 B2 JP3088290 B2 JP 3088290B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、所定の運転領域
で、空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射量をフィ
ードバック制御する一方、キャニスタに捕集された蒸発
燃料を吸気系にパージするようにしたエンジンの制御装
置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車用の燃料噴射式エンジン
においては、基本的には、空燃比が目標空燃比となるよ
うに、エアフローセンサによって検出される吸入空気量
に対応する基本燃料噴射量で、燃料噴射弁から吸気系又
は燃焼室に燃料が噴射されるようになっている。しかし
ながら、燃料噴射弁の流量コントロールの精度には限界
があり、また燃料噴射弁から噴射された燃料の一部は吸
気通路壁に付着するなどしてすぐには燃焼室に入らな
い。また、燃料噴射弁の噴射特性は経時的に変化するこ
とがある。このため、単に吸入空気量に対応する基本燃
料噴射量で燃料を噴射するだけでは、空燃比を目標空燃
比に正確に一致させることはむずかしい。
【0003】そこで、通常、燃料噴射式エンジンにおい
ては、所定の運転領域(フィードバック領域)では、リ
ニアO2センサ(あるいはλO2センサ)で排気ガス中の
2濃度を検出して該O2濃度から空燃比を求め、この空
燃比の目標空燃比に対する偏差(空燃比偏差)に応じて該
空燃比偏差をなくす方向に作用するフィードバック補正
値を設定し、該フィードバック補正値で基本燃料噴射量
を補正して空燃比を目標空燃比に追従させるといった空
燃比のフィードバック制御を行うようにしている。ここ
で、フィードバック補正値を中立値に固定したときに
は、空燃比のフィードバック制御は行われず、オープン
ループ制御が行われることになる。なお、リニアO2
ンサはO2濃度をリニアに検出することができるが、λ
2センサは基本的には空気過剰率λが1より大きいか
否かを検出するだけである。
【0004】他方、自動車において燃料タンク内の空気
を直接大気中に排出すると大気汚染を招くとともに燃料
の損失となるので、自動車には通常、燃料タンクから排
出された空気に含まれる蒸発燃料を捕集(吸着)するキャ
ニスタと、該キャニスタに捕集された蒸発燃料を適宜吸
気系にパージする蒸発燃料パージ手段とが設けられる。
かかる蒸発燃料パージ手段には、普通、キャニスタと吸
気系とを接続するパージ通路と、該パージ通路を開閉す
るパージ制御弁とが設けられ、該パージ制御弁が開かれ
たときにキャニスタ内の蒸発燃料が吸気系にパージされ
るようになっている。
【0005】したがって、吸気系への蒸発燃料のパージ
が行われるとキャニスタ内の蒸発燃料が吸気系に供給さ
れることになるので、オープンループ制御時にキャニス
タパージを行うと空燃比が目標空燃比からずれてしま
う。そこで、フィードバック領域で空燃比のフィードバ
ック制御を行うようにしたエンジンでは、普通、フィー
ドバック領域でのみ蒸発燃料の吸気系へのパージを行う
ようにしている。
【0006】そして、このように空燃比のフィードバッ
ク制御時に蒸発燃料の吸気系へのパージを行う場合、パ
ージにより吸気系に供給される蒸発燃料を単に外乱とし
て処理することも可能である。この場合、例えば空燃比
が目標空燃比に一致しているときに蒸発燃料のパージが
行われると、これに伴って空燃比がリッチ側に偏るの
で、フィードバック補正値がリーン化側に変化し、該フ
ィードバック補正値によって燃料噴射量が減量補正され
て空燃比が目標空燃比に戻されることになる。
【0007】しかしながら、このように蒸発燃料を単に
外乱として処理すると、外乱が大きくなるのでフィード
バック制御に乱れが生じやすくなる。とくに、パージ開
始直後等の過渡時には空燃比が目標空燃比に復帰するの
にかなりの時間を要し、フィードバック制御に乱れが生
じやすくなる。したがって、空燃比のフィードバック制
御時に蒸発燃料の吸気系へのパージを行う場合は、何ら
かの方法で燃焼室内に放出される(吸入される)蒸発燃
料量を求め、必要燃料噴射量から該蒸発燃料量を差し引
いて実際の燃料噴射量を設定し、該パージを外乱から排
除するのが好ましい。例えば、吸入空気量に対応する基
本噴射量とフィードバック補正値とに基づいて要求燃料
噴射量を求め、該要求燃料噴射量から、吸気系(燃焼室
内)に放出される蒸発燃料量(以下、これを「吸気系へ
の蒸発燃料量」という)を差し引くなどして実際の燃料
噴射量を設定するのが好ましい。
【0008】このように、蒸発燃料の吸気系への放出量
(吸気系への蒸発燃料量)を差し引いて実際の燃料噴射
量を設定する場合、この吸気系への蒸発燃料量を正確に
求める必要があるが、かかる蒸発燃料量を直接的に精度
良く検出することができる実用的なセンサは現時点では
見あたらない。そこで、間接的に吸気系への蒸発燃料量
を推定し、必要燃料噴射量から該蒸発燃料量推定値を差
し引いて実際の燃料噴射量を設定するようにしたエンジ
ンが提案されている(例えば、特開平2−245441
号公報参照)。なお、特開平2−245441号公報に
開示されているエンジンでは、フィードバック補正値と
その中立値との差に基づいて吸気系への蒸発燃料量を推
定するようにしている。より具体的には、蒸発燃料の吸
気系への放出量の推定値をエンジン回転数で除算して1
回転当たりの放出量を算出し、基本燃料噴射量をこの1
回転当たりの放出量分だけ減量補正するようにしてい
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、空燃比
のフィードバック制御時に蒸発燃料の吸気系へのパージ
を行うようにした従来のエンジンにおいて、該パージを
外乱として処理する場合は、アイドル域等の低吸気量域
でパージが開始されると、もともと燃料噴射量が少ない
ので、外乱の影響が非常に大きくなって該外乱に対応で
きなくなりフィードバック制御に大きな乱れが生じて、
燃費性能が低下するといった問題が生じる。これに対し
て、低吸気量域ではパージ流量(蒸発燃料を含んだパー
ジ空気の流量)を少なくするといった対応が考えられる
が、このようにすると低吸気量域でキャニスタに蒸発燃
料が蓄積されるので、キャニスタの容量を大きくする必
要が生じ、エンジンが不必要に大型化するといった問題
が生じる。なお、キャニスタの容量が十分でないと、キ
ャニスタが飽和状態となって蒸発燃料が大気中に排出さ
れることになる。
【0010】また、吸気系への蒸発燃料量を間接的に推
定し、要求燃料噴射量から該蒸発燃料量推定値を差し引
いて実際の燃料噴射量を設定するようにしたエンジンに
おいて、アイドル域等の低吸気量域でパージが開始され
た場合、上記蒸発燃料量の推定が完了していないときに
は差し引くべき蒸発燃料量を正確に推定することができ
ないので、フィードバック制御に乱れが生じて燃費性能
が低下するといった問題が生じる。
【0011】本発明は、上記従来の問題点を解決するた
めになされたものであって、フィードバック領域で、空
燃比が目標空燃比となるように燃料噴射量をフィードバ
ック制御する一方、キャニスタに捕集された蒸発燃料を
吸気系にパージするようにしたエンジンに対して、空燃
比のフィードバック制御に乱れを生じさせることなく、
キャニスタに捕集された蒸発燃料を迅速に吸気系にパー
ジすることができ、もってキャニスタを小型化すること
ができるとともに、エンジンの燃費性能を高めることが
できる手段を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】図1に示すように、上記
の目的を達すべくなされた本発明の第1の態様は、空燃
比を検出する空燃比検出手段Aと、所定の運転領域で
は、上記空燃比検出手段にAよって検出される空燃比が
目標空燃比となるように燃料噴射量をフィードバック制
御する燃料噴射量制御手段Bと、燃料タンクからの蒸発
燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段Cと、上記所定の運転
領域では、上記蒸発燃料捕集手段Cによって捕集された
蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段D
と、目標パージ流量を設定するとともに、該目標パージ
流量に基づいて、上記蒸発燃料パージ手段による吸気系
への蒸発燃料のパージ流量を制御するパージ流量制御手
段Eとが設けられているエンジンの制御装置において、
上記パージ流量制御手段Eは、上記所定の運転領域にお
いて蒸発燃料のパージを実行する際には、目標パージ流
量の変化に伴って、パージ流量を目標パージ流量となる
よう所定の変化率で変化させるとともに、その所定の変
化率を、低吸入空気量域では高吸入空気量域よりも小さ
く設定するようになっていることを特徴とするものであ
る。
【0013】この第1の態様にかかるエンジンの制御装
置においては、燃料噴射量が少ない低吸入空気量域で蒸
発燃料のパージが実行されるときには、パージ流量が比
較的小さい変化率でもって徐々に変化させられるので、
パージ初期には蒸発燃料の吸気系への流入変化がさほど
多くならず、空燃比のフィードバック制御に乱れが生じ
るのが防止される。そして、パージ開始後しばらくする
とパージ流量が目標パージ流量に達するので、キャニス
タに捕集(吸着)されている蒸発燃料は迅速に吸気系に
排出される。また、燃料噴射量が多い高吸入空気量域で
蒸発燃料のパージが開始されるときには、パージ流量が
比較的大きい変化率でもって変化させられるので、キャ
ニスタ内に捕集されている蒸発燃料が迅速に吸気系に排
出される。
【0014】本発明の第2の態様は、上記第1の態様に
かかるエンジンの制御装置において、上記パージ流量制
御手段Eが、上記所定の運転領域において蒸発燃料のパ
ージを開始する際には、該パージ流量を0から目標パー
ジ流量まで所定の変化率で増加させるとともに、その所
定の変化率を、低吸入空気量域では高吸入空気量域より
も小さく設定するようになっていることを特徴とするも
のである。
【0015】この第2の態様にかかるエンジンの制御装
置においては、燃料噴射量が少ない低吸入空気量域で蒸
発燃料のパージが開始されるときには、パージ流量が比
較的小さい増加率でもって徐々に増やされるので、パー
ジ初期には蒸発燃料の吸気系への流入変化がさほど多く
ならず、空燃比のフィードバック制御に乱れが生じるの
が防止される。そして、パージ開始後しばらくするとパ
ージ流量が目標パージ流量に達するので、キャニスタに
捕集(吸着)されている蒸発燃料は迅速に吸気系に排出
される。また、燃料噴射量が多い高吸入空気量域で蒸発
燃料のパージが開始されるときには、パージ流量が比較
的大きい増加率でもって増やされるので、キャニスタ内
に捕集されている蒸発燃料が迅速に吸気系に排出され
る。
【0016】本発明の第3の態様は、空燃比を検出する
空燃比検出手段Aと、所定の運転領域では、上記空燃比
検出手段Aによって検出される空燃比の目標空燃比に対
する偏差に基づいてフィードバック補正値を設定するフ
ィードバック補正値設定手段Fと、燃料タンクからの蒸
発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段Cと、上記所定の運
転領域では、上記蒸発燃料捕集手段Cによって捕集され
た蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パージ手段D
と、該蒸発燃料パージ手段Dによる吸気系への蒸発燃料
のパージ流量を運転状態に応じて制御するパージ流量制
御手段Eと、上記フィードバック補正値設定手段Fによ
って設定されたフィードバック補正値に基づいて燃焼室
内に放出される蒸発燃料量を算出する蒸発燃料量算出手
段Gと、吸入空気量に対応して求められた基本燃料噴射
量と上記フィードバック補正値設定手段Fによって設定
されたフィードバック補正値とに基づいて要求燃料噴射
量を求め、該要求燃料噴射量から上記蒸発燃料量算出手
段Gによって算出された蒸発燃料量を減算して実際の燃
料噴射量を設定することにより、上記空燃比検出手段A
によって検出される空燃比が目標空燃比となるように燃
料噴射量をフィードバック制御する燃料噴射量制御手段
Bとが設けられているエンジンの制御装置において、上
記蒸発燃料量算出手段Gが、上記フィードバック補正値
設定手段Fによって設定されるフィードバック補正値か
ら、上記蒸発燃料量に関する量の推定値を算出するよう
になっていて、上記パージ流量制御手段Eが、上記所定
の運転領域においてアイドル状態で蒸発燃料のパージを
実行する際には該パージ流量を目標パージ流量に徐々に
変化させるとともに、その変化率を、上記蒸発燃料量算
出手段Gが上記推定値の算出を完了していないときに
は、該算出を完了しているときよりも小さく設定するよ
うになっていることを特徴とするものである。
【0017】この第3の態様にかかるエンジンの制御装
置においては、要求燃料噴射量から蒸発燃料量を減算し
て実際の燃料噴射量を設定した上で空燃比のフィードバ
ック制御を行うようにしているので、該フィードバック
制御の安定性ないしは応答性が良くなる。また、燃料噴
射量が少ないアイドル域で蒸発燃料のパージが実行され
る場合において、上記の蒸発燃料量に関する量の推定値
の算出が完了していないときにはパージ流量が比較的小
さい変化率でもって徐々に変化させられるので、上記の
蒸発燃料量に関する量(ひいては蒸発燃料量)が正確に
把握されていない場合でも、パージ初期に空燃比のフィ
ードバック制御に乱れが生じるのが防止される。
【0018】本発明の第4の態様は、上記第3の態様に
かかるエンジンの制御装置において、上記パージ流量制
御手段Eが、上記所定の運転領域において蒸発燃料のパ
ージを開始する際には該パージ流量を目標パージ流量ま
で徐々に増加させるとともに、その増加率を、低吸入空
気量域では高吸入空気量域よりも小さく設定するように
なっていることを特徴とするものである。
【0019】この第4の態様にかかるエンジンの制御装
置においては、基本的には、上記第2の態様にかかるエ
ンジンの制御装置の場合と同様に、空燃比のフィードバ
ック制御の安定性ないしは応答性を確保しつつパージ流
量を多くすることができる。さらに、要求燃料噴射量か
ら蒸発燃料量を減算して実際の燃料噴射量を設定した上
で空燃比のフィードバック制御を行うようにしているの
で、該フィードバック制御の安定性ないしは応答性がさ
らに良くなる。また、燃料噴射量が少ないアイドル域で
蒸発燃料のパージが開始される場合において、上記の蒸
発燃料量に関する量の推定値の算出が完了していないと
きにはパージ流量が比較的小さい増加率でもって徐々に
増やされるので、上記の蒸発燃料量に関する量(ひいて
は蒸発燃料量)が正確に把握されていない場合でもパー
ジ初期に空燃比のフィードバック制御に乱れが生じるの
が防止される。
【0020】本発明の第5の態様は、上記第3又は第4
の態様にかかるエンジンの制御装置において、上記の蒸
発燃料量に関する量が、蒸発燃料捕集量であることを特
徴とするものである。
【0021】この第5の態様にかかるエンジンの制御装
置においては、蒸発燃料量に関する量が蒸発燃料捕集量
でもって把握され、第3又は第4の態様にかかるエンジ
ンの制御装置の場合と同様の作用が生じることになる。
【0022】本発明の第6の態様は、上記第4又は第5
の態様にかかるエンジンの制御装置において、上記パー
ジ流量制御手段Eが、上記所定の運転領域においてオフ
アイドル状態で蒸発燃料のパージを開始する際にも、該
パージ流量を目標パージ流量まで徐々に増加させるよう
になっているとともに、アイドル時において上記蒸発燃
料量算出手段Gが上記推定値の算出を完了しているとき
のパージ量増加率を、オフアイドル時において上記蒸発
燃料量算出手段Gが上記推定値の算出を完了していない
ときのパージ量増加率よりも小さく設定するようになっ
ていることを特徴とするものである。
【0023】この第6の態様にかかるエンジンの制御装
置においては、基本的には上記第4又は第5の態様にか
かるエンジンの制御装置の場合と同様の作用が生じる。
さらに、燃料噴射量が少ないアイドル時に蒸発燃料のパ
ージが開始される場合において、蒸発燃料量に関する量
又は蒸発燃料捕集量の推定値の算出が完了していないと
きにはパージ流量が、蒸発燃料量に関する量又は蒸発燃
料捕集量の推定値の算出が完了しているオフアイドル時
よりも小さい増加率でもって徐々に増やされるので、蒸
発燃料量に関する量又は蒸発燃料捕集量(ひいては蒸発
燃料量)が正確に把握されていない場合でもパージ初期
に空燃比のフィードバック制御に乱れが生じるのが防止
される。
【0024】本発明の第7の態様は、上記第3〜第6の
態様のいずれか1つにかかるエンジンの制御装置におい
て、上記蒸発燃料量算出手段Gが、上記フィードバック
補正値設定手段Fによって設定されるフィードバック補
正値の平均値に基づいて蒸発燃料量の推定値を算出する
一方、該推定値を学習により更新するようになっている
ことを特徴とするものである。
【0025】この第7の態様にかかるエンジンの制御装
置においては、基本的には上記第3〜第6の態様のいず
れか1つにかかるエンジンの制御装置の場合と同様の作
用が生じる。さらに、フィードバック補正値の平均値に
基づいて蒸発燃料量に関する量又は蒸発燃料捕集量を推
定するようにしているので、該推定値の演算が容易とな
る。また、蒸発燃料量に関する量又は蒸発燃料捕集量の
推定値を学習により更新するようにしているので該推定
値の精度が高められる。
【0026】本発明の第8の態様は、上記第1〜第7の
態様のいずれか1つにかかるエンジンの制御装置におい
て、上記蒸発燃料パージ手段Dが、上記パージ流量制御
手段Eから印加されるデューティ比に応じて弁体がオン
・オフされるパージバルブを備えていて、上記パージ流
量制御手段Eが、上記パージバルブに印加すべきデュー
ティ比が所定値未満のときには、上記パージバルブのオ
ン時間を一定にした上で、該デューティ比に応じて上記
パージバルブの動作周期を伸縮させるようになっている
ことを特徴とするものである。
【0027】この第8の態様にかかるエンジンの制御装
置においては、基本的には上記第1〜第7の態様のいず
れか1つにかかるエンジンの制御装置の場合と同様の作
用が生じる。さらに、デューティ比が所定値未満のとき
には、デューティ比に応じてオン時間を増減するのでは
なく、オン時間を一定にした上でデューティ比に応じて
動作周期を伸縮することによってデューティ比に対応す
る開弁度合(バルブ開度)となるようにしているので、
パージバルブの開弁度合を精密に調節することができ
る。また、動作周期が長くなるので、パージバルブの開
閉回数が減る。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て具体的に説明する。図2は、本発明にかかる制御装置
を備えたエンジンのシステム構成図である。図2に示す
ように、燃料噴射式の4気筒ガソリンエンジンCEの各
気筒1(1つの気筒のみ図示)においては、吸気弁2が開
かれたときに吸気ポート3から燃焼室4内に混合気が吸
入され、この混合気がピストン5で圧縮された後点火プ
ラグ(図示せず)によって着火・燃焼させられ、排気弁6
が開かれたときに燃焼ガス(排気ガス)が排気ポート7を
介して排気通路8に排出されるようになっている。排気
通路8には、排気ガス中のO2濃度を検出するリニアO2
センサ9が臨設されている。そして、リニアO2センサ
9で検出されたO2濃度はコントロールユニットCUに
入力され、コントロールユニットCUではこのO2濃度
に基づいて混合気の空燃比を演算するようになってい
る。ここで、リニアO2センサ9によって検出されるO2
濃度と該O2濃度に基づいて演算される空燃比とは一義
的な対応関係にあるので、以下では便宜上、上記空燃比
を「リニアO2センサ9によって検出された空燃比」又は
「実空燃比」ということにする。ここで、リニアO2セン
サ9に代えて、λO2センサを用いてもよい。なお、リ
ニアO2センサ9は、空気過剰率λが1より大きい領域
でもO2濃度ひいては空燃比を検出することができる
が、λO2センサは基本的には空気過剰率λが1より大
きいか否かを検出するだけである。
【0029】エンジンCEの各気筒1(燃焼室4)に燃料
燃焼用の空気を供給するために吸気系10が設けられ、
この吸気系10には上流端が大気に開放された共通吸気
通路11が設けられている。そして、共通吸気通路11
にはアクセルペダル(図示せず)と連動して開閉されるス
ロットル弁12が介設され、共通吸気通路11の下流端
は吸入空気の流れを安定させるサージタンク13に接続
されている。さらに、サージタンク13には、各気筒1
に夫々個別に空気を供給する独立吸気通路14(1つの
み図示)が接続され、これらの各独立吸気通路14の下
流端は夫々対応する気筒1の吸気ポート3に接続されて
いる。
【0030】吸気ポート3近傍において各独立吸気通路
14には、吸気ポート3内ないしは燃焼室4内に燃料を
噴射する燃料噴射弁15が、噴射口が下流側に向くよう
にして臨設されている。ここで、燃料噴射弁15の燃料
噴射量(噴射パルス幅)及び噴射タイミングは、後で説明
するようにコントロールユニットCUによって制御され
るようになっている。
【0031】そして、燃料の気化・霧化を促進するため
に各燃料噴射弁15にアシストエアを供給するアシスト
エア供給手段16(以下、これをAMI16という)が設
けられている。このAMI16には、詳しくは図示して
いないが、上流端がスロットル弁12より上流側で共通
吸気通路11と連通するアシストエア導入通路17が設
けられ、このアシストエア導入通路17にはコントロー
ルユニットCUによって開閉されるソレノイド式のアシ
ストエア制御弁18が介設されている。なお、アシスト
エア制御弁18をバイパスしてアシストエアを通すバイ
パスアシストエア通路19が設けられ、このバイパスア
シストエア通路19には所定の圧力損失を生じさせて流
量を調整するオリフィス20が介設されている。
【0032】アシストエア導入通路17の下流端はミキ
シングチャンバ21に接続され、このミキシングチャン
バ21にはさらにアシストエア供給通路22が接続され
ている。そして、アシストエア供給通路22は下流側で
4つの分岐アシストエア供給通路23に分岐し、各分岐
アシストエア供給通路23は夫々、その下流端で対応す
る気筒1の燃料噴射弁15に接続され、対応する燃料噴
射弁15に個別にアシストエアを供給するようになって
いる。
【0033】エンジンCEには、燃料タンク(図示せず)
から排出される空気に含まれる蒸発燃料(ガソリンベー
パ)を捕集する蒸発燃料捕集手段と、該蒸発燃料捕集手
段に捕集されている蒸発燃料を適宜吸気系10にパージ
する蒸発燃料パージ手段とを備えた蒸発燃料回収手段2
4が設けられているが、以下この蒸発燃料回収手段24
について説明する。この蒸発燃料回収手段24には、蒸
発燃料を捕集(吸着)することができる吸着材(例えば、
活性炭)が充填されたキャニスタ25が設けられてい
る。そして、このキャニスタ25には、先端が燃料タン
クの上部空間部と連通し燃料タンク内の上部空間部の空
気を該キャニスタ25内にリリーフするリリーフ通路2
6と、先端が大気に開放された大気開放通路27と、先
端がミキシングチャンバ21に接続されたパージ通路2
8とが接続されている。なお、大気開放通路27の先端
をスロットル弁12よりも上流側で共通吸気通路11に
接続するようにしてもよい。また、キャニスタ25内に
吸着材を充填するのではなく、吸着以外の現象(例え
ば、吸収、反応等)を利用して蒸発燃料を捕集する材料
を充填してもよい(ただし、空気によるパージが可能な
もの)。なお、キャニスタ25は特許請求の範囲に記載
された「蒸発燃料捕集手段」に相当する。
【0034】パージ通路28には該通路28を任意に開
閉することができるデューティソレノイド式のパージバ
ルブ29が介設され、このパージバルブ29はコントロ
ールユニットCUによってその開弁度合(バルブ開度)
がデューティ比制御されるようになっている。すなわ
ち、パージバルブ29は、コントロールユニットCUか
ら印加される駆動デューティ比に従って開閉制御され、
1駆動周期内において駆動デューティ比に対応する時間
だけ全開され、残りの時間は全閉されるようになってい
る。例えば、1駆動周期を100ms(ミリ秒)とした
場合(すなわち、周波数が10Hz)、印加される駆動
デューティ比が0のときには常時全閉され(開弁度合
0)、駆動デューティ比が100%のときには常時全開
され(開弁度合1すなわち100%)、駆動デューティ
比が30%のときにはまず30msだけ全開され残りの
70msは全閉されることになる(開弁度合0.3すな
わち30%)。以下では、1駆動周期内においてパージ
バルブ29が全開されている時間をオン時間といい、全
閉されている時間をオフ時間という。なお、パージ通路
28とパージバルブ29とからなる組立体は特許請求の
範囲に記載された「蒸発燃料パージ手段」に相当する。
【0035】このように、パージバルブ29は、1駆動
周期内において駆動デューティ比に対応する時間だけ全
開されるので、駆動周期を一定にすればオン時間は駆動
デューティ比に比例して増減することになる。しかしな
がら、オン時間があまり短いと弁体の慣性等に起因して
該オン時間を精密に制御することができなくなる。そこ
で、この実施の形態では、オン時間を10ms以下には
しないようにしている。すなわち、駆動デューティ比が
10%以上であれば、駆動周期を一定値100msとし
た上で(周波数10Hz)、該駆動デューティ比に応じ
て(比例させて)オン時間を増減するようにしている。
他方、駆動デューティ比が10%未満であれば、オン時
間を一定値10msとした上で、駆動周期中におけるオ
ン時間(10ms)の割合すなわち開弁度合が該駆動デ
ューティ比に対応するように駆動周期を伸縮するように
している。
【0036】例えば、図15に示すように、駆動デュー
ティ比が30%であれば、駆動周期を100msとした
上で、オン時間を30msとする。この場合、開弁度合
は0.3となる(30ms/100ms=0.3)。ま
た、駆動デューティ比が3%であれば、オン時間を10
msとした上で、駆動周期を333ms(10ms/
0.03=333ms)とする。この場合、開弁度合は
0.03となる(10ms/333ms=0.03)
【0037】このように、駆動デューティ比が10%未
満のときには、駆動デューティ比に応じてオン時間を増
減するのではなく、オン時間を一定値10msとした上
で駆動デューティ比に応じて動作周期を伸縮することに
よって駆動デューティ比に対応する開弁度合になるよう
にしているので、パージバルブ29の開弁度合を精密に
制御することができ、パージ流量の制御精度を高めるこ
とができる。また、動作周期が長くなるので、パージバ
ルブ29の開閉回数が減り、該パージバルブ29の寿命
が伸び、ひいてはエンジンCEの耐久性が高められる。
【0038】そして、この蒸発燃料回収手段24におい
て、パージバルブ29が常時全閉されているときには
(駆動デューティ比0)、燃料タンク内の空気はリリー
フ通路26を通してキャニスタ25内にリリーフされた
後、大気開放通路27を通して大気中に排出されるが、
この空気に含まれている蒸発燃料はキャニスタ25内の
吸着材層を通過する際に吸着材に捕集され、大気中には
排出されない。
【0039】他方、パージバルブ29が開かれていると
きには吸気系10の負圧によって、大気中の空気が、ま
ず大気開放通路27を通してキャニスタ25内に吸い込
まれて吸着材層を通り抜け、この後パージ通路28とA
MI16(ミキシングチャンバ21〜分岐アシストエア
供給通路23)とを通して吸気系10ひいては燃焼室4
にパージされる。ここで、パージバルブ29の開弁度合
(すなわち、駆動デューティ比)に応じてパージされる空
気の流量(以下、これを「パージ空気量(パージ流
量)」という)が変化するのはもちろんである。そし
て、その際キャニスタ25内の吸着材に捕集されている
蒸発燃料の一部が吸着材から離脱し、パージされた上記
空気(以下、これをパージ空気という)ともに吸気系10
ひいては燃焼室4にパージされる。なお、以下ではこの
ように吸気系10ひいては燃焼室4にパージされる蒸発
燃料の流量を「蒸発燃料パージ量(蒸発燃料量)」とい
う。
【0040】しかしながら、キャニスタ25から燃焼室
4に至るパージ空気ないしは蒸発燃料の輸送経路はかな
りの容量を有しているので、キャニスタ25からパージ
通路28に放出された蒸発燃料が燃焼室4に実際に達す
るまでには、上記輸送経路の容積及び形状(輸送特性)に
相応する輸送遅れが伴われる。したがって、ある時刻に
おいて、キャニスタ25からパージ通路28に放出され
る蒸発燃料の流量(以下、これを蒸発燃料放出量という)
と、燃焼室4に実際に流入する蒸発燃料の流量(以下、
これを蒸発燃料流入量という)とは、定常状態にある特
別な場合を除けば通常は一致しない。このため、以下で
は蒸発燃料パージ量を、蒸発燃料放出量と蒸発燃料流入
量とに区別して説明することにする。なお、キャニスタ
25から燃焼室4に至るパージ空気ないしは蒸発燃料の
輸送経路の容積が非常に小さい場合は、輸送遅れを無視
することができるので蒸発燃料放出量と蒸発燃料流入量
とをとくには区別せず、蒸発燃料パージ量という概念を
用いてもとくには不具合は生じない。
【0041】ところで、図2に示すエンジンCEでは、
パージ通路28の下流端をミキシングチャンバ21に接
続し、キャニスタ25に捕集されている蒸発燃料をAM
I16を介して吸気系10にパージするようにしている
が、AMIが設けられていないエンジンの場合は、パー
ジ通路28の下流端を各独立吸気通路14に分岐して接
続すればよい。図3に示すように、AMIが設けられて
いないエンジンCE'の場合は、パージ通路28の下流
端をサージタンク13に接続し、キャニスタ25に捕集
されている蒸発燃料を直接的に吸気系10にパージする
ようにすれば何ら不具合は生じない。なお、図3におい
て、図2と共通する部材には同一番号を付している。
【0042】コントロールユニットCUは、特許請求の
範囲に記載された「燃料噴射量制御手段」、「パージ流
量制御手段」、「フィードバック補正値設定手段」及び
「蒸発燃料量算出手段」を含む、マイクロコンピュータで
構成された、エンジンCE(エンジンCE'を含む、以下
でも同様)の総合的な制御装置であって、リニアO2セン
サ9(あるいはλO2センサ)によって検出される空燃比
(実空燃比)、スロットル開度センサ31によって検出さ
れるスロットル開度、エアフローセンサ32によって検
出される吸入空気量、回転数センサ33によって検出さ
れるエンジン回転数、アイドルスイッチ34から出力さ
れるアイドル信号等を制御情報として、エンジンCE
(蒸発燃料回収手段24を含む)の各種制御、キャニスタ
25に捕集されている蒸発燃料の量(以下、これをトラ
ップ量という)の推定、蒸発燃料放出量の算出(演算)、
蒸発燃料流入量の算出(演算)等を行うようになってい
る。
【0043】しかしながら、エンジンCEの一般的な制
御はよく知られており、またかかる一般的な制御は本発
明の要旨とするところでもないのでその説明を省略し、
以下では本発明の要旨に関連する、空燃比制御(燃料噴
射量制御)の制御方法と、キャニスタパージ制御の制御
方法と、トラップ量の推定方法と、蒸発燃料放出量の算
出方法(演算方法)と、蒸発燃料流入量の算出方法(演算
方法)とについてのみ説明する。
【0044】以下、図4を参照しつつコントロールユニ
ットCUの基本的な機能について説明する。図4に示す
ように、コントロールユニットCUは機能的にみれば、
空燃比制御(燃料噴射量制御)及びキャニスタパージ制御
を行うエンジン制御ブロックSLと、トラップ量の推定
を行うトラップ量推定ブロックSMと、トラップ量に基
づいて蒸発燃料放出量及び蒸発燃料流入量を演算する蒸
発燃料パージ量演算ブロックSNとに大別される。エン
ジン制御ブロックSLは、基本的には、空燃比が目標空
燃比となるように燃料噴射弁15の噴射パルス幅すなわ
ち燃料噴射量を運転状態に応じてフィードバック制御又
はオープンループ制御するとともに(空燃比制御)、キャ
ニスタパージを行うべき運転領域では運転状態に応じて
キャニスタパージを行う(キャニスタパージ制御)。
【0045】この空燃比制御においては、エンジンCE
の運転状態が所定のフィードバック領域(例えば、高負
荷領域と高回転領域を除いた領域)に入っていれば実空
燃比の目標空燃比に対する偏差(以下、これを空燃比偏
差という)に基づいてフィードバック制御が行われ、フ
ィードバック領域に入っていなければ空燃比偏差には基
づかないオープンループ制御が行われる。ここでの空燃
比のフィードバック制御の制御手法はおよそ次のとおり
である。すなわち、吸入空気量とエンジン回転数とに応
じて燃料噴射弁15の基本パルス幅すなわち基本燃料噴
射量が演算される(ベース演算)。
【0046】そして、他方では空燃比偏差(例えば、目
標空燃比−実空燃比)に基づいて、フィードバック補正
値cfbが演算される(ステップS1)。ここで、フィード
バック補正値cfbは、中立値すなわち空燃比をいずれの
方向にも補正しない中立的な値が0とされ、cfb>0の
ときは空燃比(燃料噴射量)をリッチ方向に補正し、cfb
<0のときは空燃比(燃料噴射量)をリーン方向に補正す
る。
【0047】そして、基本パルス幅とフィードバック補
正値cfbとに基づいて、例えば基本パルス幅にcfbを加算
するなどして、基本パルス幅が空燃比偏差が縮小する方
向に補正されて要求パルス幅すなわち要求燃料噴射量が
演算される(ステップS2)。例えば、実空燃比が目標空
燃比よりもリーンなときにはcfb>0となり、これに伴
って燃料噴射量が増量補正され空燃比がリッチ方向に補
正されて空燃比偏差が縮小される。逆に、実空燃比が目
標空燃比よりもリッチなときにはcfb<0となり、これ
に伴って燃料噴射量が減量補正され空燃比がリーン方向
に補正されて空燃比偏差が縮小される。かくして、空燃
比偏差に応じて該空燃比偏差をなくすように空燃比(燃
料噴射量)がフィードバック制御される。
【0048】他方、空燃比のオープンループ制御が行わ
れる場合は、フィードバック補正値cfbが0に固定され
る。この場合は、基本パルス幅が空燃比偏差に応じては
何ら補正されずにそのまま要求パルス幅となるので、フ
ィードバックのないオープンループ制御となる。
【0049】さらに、要求パルス幅すなわち要求燃料噴
射量から、後で説明する蒸発燃料流入量に対応するパル
ス幅(以下、これをパージ補正パルス幅という)を減算し
て燃料噴射弁15の実際の噴射パルス幅(以下、これを
実噴射パルス幅という)すなわち実燃料噴射量(実際の燃
料噴射量)が演算される。そして、この実噴射パルス幅
すなわち実燃料噴射量でもって、所定のタイミングで燃
料噴射弁15から燃料が噴射される。かくして、実空燃
比が目標空燃比に保持される。
【0050】キャニスタパージ制御は、キャニスタパー
ジ条件が成立しているとき例えば水温が所定値(例え
ば、80℃)以上のときに、よく知られた普通の手法で
エンジンCEの運転状態に応じて行われる、すなわち、
パージバルブ29にエンジンCEの運転状態に応じた駆
動デューティ比が印加され、キャニスタパージが行われ
る。
【0051】トラップ量推定ブロックSMは、キャニス
タパージ時に、エンジン制御ブロックSLのステップS
1で演算されたフィードバック補正値cfbを平均化処理
することにより平均フィードバック補正値cfbaveを演算
し(ステップS3)、さらにこの平均フィードバック補正
値cfbaveに基づいて間接的にトラップ量を推定する(ス
テップS4)。すなわち、平均フィードバック補正値cfb
aveを、現在把握しているトラップ量(トラップ量推定
値)が真のトラップ量よりも大きいか小さいかを判定す
る指標として用いることによりトラップ量を把握する。
【0052】後で説明するように、コントロールユニッ
トCUは、所定の演算式を用いてトラップ量推定値に基
づいて蒸発燃料流入量を演算し、さらに要求燃料噴射量
から蒸発燃料流入量を減算することによって実燃料噴射
量を設定するようにしている。ここで、トラップ量推定
値が正確であればすなわち真のトラップ量と一致してい
れば蒸発燃料流入量が正確に演算されるので、キャニス
タパージによって燃焼室4に供給される蒸発燃料はフィ
ードバック制御の外乱とはならずフィードバック補正値
cfbにとくには影響を与えない。この場合、ほかに大き
な外乱がなければフィードバック補正値cfbは中立値(す
なわち0)を中心にして若干変動するだけであり、した
がって平均フィードバック補正値cfbaveはほぼ中立値0
となる。換言すれば、平均フィードバック補正値cfbave
が0であれば、トラップ量推定値は真のトラップ量に一
致していることになる。
【0053】しかしながら、トラップ量推定値が真のト
ラップ量よりも大きいとこれに伴って蒸発燃料流入量演
算値が真値よりも大きくなり、したがって実燃料噴射量
が適正値よりも小さくなるので燃焼室4に実際に供給さ
れる燃料が必要とされる燃料量(要求燃料噴射量)よりも
少なくなり、実空燃比がリーン化する。この場合、この
リーン化を是正するためにフィードバック補正値cfbが
リッチ方向に変化して0より大きくなり、これに伴って
平均フィードバック補正値cfbaveが0より大きくなる。
換言すれば、cfbave>0であれば、トラップ量推定値は
真のトラップ量よりも大であるということになる。
【0054】なお、前記したとおりフィードバック補正
値cfbは変動するので、トラップ量推定値が真のトラッ
プ量より大であっても必ずしもcfb>0になるとは限ら
ず、したがってcfb>0であってもトラップ量推定値が
真のトラップ量よりも大であるとは限らない。したがっ
て、フィードバック補正値cfbに基づいてトラップ量を
推定した場合は、その推定精度は非常に低くなるものと
考えられる。かかる事情に鑑み、この実施の形態では平
均フィードバック補正値cfbaveに基づいてトラップ量を
推定するようにしている。
【0055】逆に、トラップ量推定値が真のトラップ量
よりも小さいとこれに伴って蒸発燃料流入量演算値が真
値よりも小さくなり、したがって実燃料噴射量が適正値
よりも大きくなるので、燃焼室4に供給される燃料は必
要とされる燃料量よりも多くなり、実空燃比がリッチ化
する。この場合、このリッチ化を是正するためにフィー
ドバック補正値cfbがリーン方向に変化して0より小と
なり、これに伴って平均フィードバック補正値cfbaveが
0より小となる。換言すれば、cfbave<0であれば、ト
ラップ量推定値が真のトラップ量よりも小であるという
ことになる。
【0056】したがって、最初にトラップ量推定値に適
当な初期値を設定した上で、cfbave>0であればトラッ
プ量推定値を所定の補正量σだけ減らし、cfbave<0で
あればトラップ量推定値を補正量σだけ増やすといった
操作を繰り返せば、トラップ量推定値はやがて真のトラ
ップ量に収束(到達)し、トラップ量が把握されることに
なる。かくして、平均フィードバック補正値cfbaveに基
づいてトラップ量が推定される。
【0057】ここで、トラップ量推定値が真のトラップ
量にほぼ一致しているか否か、すなわちトラップ量の推
定がほぼ完了しているか否かは、平均フィードバック補
正値cfbaveの絶対値│cfbave│が所定の限界値ε以下で
あるか否かで判定するのが好ましい。│cfbave│が非常
に小さければ、トラップ量推定値が真のトラップにほぼ
一致していると考えられるからである。
【0058】このトラップ量の推定手法においては、ト
ラップ量ないしは蒸発燃料パージ量と、フィードバック
補正値cfbないしは平均フィードバック補正値cfbaveと
の間に、前記のような相関性(相関関係)が成立している
ことを前提としている。したがって、かかる相関性が低
い状況下あるいは相関性が存在しない状況下では、トラ
ップ量を高精度で推定することはできない。このため、
上記相関性が低い状況下あるいは相関性が存在しない状
況下では、トラップ量の推定を禁止するのが好ましい。
ここで、上記相関性が低い状況としては、後で説明する
ように、例えば充填効率や吸気圧が非常に高いとき、充
填効率や吸気圧が非常に低いとき等があげられる。ま
た、上記相関性が存在しない状況としては、例えばキャ
ニスタパージが停止されているとき、空燃比のフィード
バック制御停止されているとき(オープンループ制御時)
等があげられる。なお、上記相関性が低い状況あるいは
相関性がない状況がいくつか重複して存在するときにの
みトラップ量の推定を禁止するようにしてもよいのはも
ちろんである。
【0059】また、このトラップ量の推定手法において
は、蒸発燃料流入量が正確に把握されていれば、すなわ
ちキャニスタパージによる蒸発燃料の供給がフィードバ
ック補正値cfbに対して影響を与えなければ、フィード
バック補正値cfbが中立値0を中心にして変動し、した
がって平均フィードバック補正値cfbaveは中立値0にな
るということを前提としている。ところで、一般に、フ
ィードバック補正値cfbが平均的には中立値0となるよ
うに、制御出力特性すなわち燃料噴射弁の噴射特性を学
習により自動的に補正してゆくといった空燃比学習を行
うようにしたエンジンが広く用いられているが、かかる
空燃比の学習機能を備えたエンジンでトラップ量を推定
する場合は、かかる空燃比学習が終了してからトラップ
量の推定を行うのが好ましい。けだし、空燃比学習が終
了していれば、キャニスタパージの影響がない場合に
は、平均フィードバック補正値cfbaveが確実に中立値0
になるからである。
【0060】なお、このようにしてトラップ量の推定が
禁止されている期間がある程度以上継続されたときに
は、トラップ量推定値が真のトラップ量からずれている
おそれがあるので、すでにトラップ量の推定が完了して
いると判定されている場合でも該判定を撤回(リセット)
するのが好ましい。
【0061】上記補正量σが大きいときには、推定開始
後においてトラップ量推定値の収束に要する時間、すな
わちトラップ量を推定するのに要する時間を短くするこ
とができるものの、トラップ量推定値の精度が低下す
る。他方、補正量σが小さいときには、トラップ量推定
値の収束に要する時間は長くなるものの、トラップ量推
定値の精度を高めることができる。したがって、収束に
要する時間に対する要求と、トラップ量推定値の精度に
対する要求とが両立するように、補正量σを適切な値に
設定するのが好ましい。
【0062】なお、補正量σは一定値とする必要はな
く、トラップ量の推定中に変化させてもよい。例えば、
トラップ量の推定の進行状況に応じて変化させ、あるい
は平均フィードバック補正値cfbaveの値に応じて設定し
てもよい。例えば、トラップ量の推定開始時には補正量
σを大きくして収束を早め、トラップ量推定値がある程
度収束した後は補正量σを小さくしてトラップ量推定値
の精度を高めるようにしてもよい。また、平均フィード
バック補正値cfbaveが大きいときほど補正量σを大きく
すれば、トラップ量推定値が真のトラップ量からかけ離
れているときには収束を早めることができ、他方トラッ
プ量推定値が真のトラップ量に近いときにはその精度を
高めることができる。
【0063】蒸発燃料パージ量演算ブロックSNは、基
本的には、トラップ量推定ブロックSMのステップS4
で推定されたトラップ量推定値に基づいて蒸発燃料放出
量を演算し、さらにこの蒸発燃料放出量に基づいて蒸発
燃料流入量を演算し、この蒸発燃料流入量に相当する燃
料噴射弁15のパルス幅すなわちパージ補正パルス幅を
演算し、このパージ補正パルス幅をエンジン制御ブロッ
クSLに出力する。つまり、フィードフォワード制御
(見込み制御)により、タイムラグを生じさせることなく
ひいては空燃比のずれを生じさせることなく空燃比制御
に対するキャニスタパージの影響を補償することにな
る。より詳しくは、まずパージ通路28内におけるパー
ジバルブ29の前後差圧すなわちパージバルブ29の直
上流側と直下流側との間の圧力差(以下、これをパージ
バルブ前後差圧という)が演算される一方(ステップS
5)、パージバルブ29に印加されている駆動デューテ
ィ比からパージバルブ開度(パージSOL開度)が演算さ
れ(ステップS6)、次にパージバルブ前後差圧とパージ
バルブ開度とに基づいてパージ空気量(キャニスタ脱気
Air量)が演算される(ステップS7)。
【0064】ここで、パージバルブ前後差圧は、吸気充
填効率に基づいて演算されるようになっているが、この
ようにする理由はおよそ次のとおりである。すなわち、
吸気圧はよく知られた手法で充填効率から演算すること
ができ、かつパージバルブ29の直下流側の圧力は吸気
圧とほぼ同一である。他方、パージバルブ29の直上流
側の圧力は実質的に一定値(大気圧)とみなすことができ
る。そして、パージバルブ前後差圧はパージバルブ29
の直上流側の圧力と直下流側の圧力の差、すなわち大気
圧と吸気圧との差である。したがって、充填効率に所定
の演算処理を施すことによりパージバルブ前後差圧を得
ることができることになる。このようにすれば、吸気圧
センサを設ける必要がなくなり、吸気系10が簡素化さ
れる。なお、パージバルブ29の直下流側の圧力を吸気
圧センサを用いて検出するようにしてもよいのはもちろ
んである。また、パージバルブ前後差圧を直接検出する
差圧センサを設けてもよい。
【0065】パージ空気量は、パージバルブ前後差圧と
パージバルブ開度とに基づいて、よく知られた手法で演
算される。すなわち、一般に気体の密閉通路に介設され
た機器の前後差圧ΔPすなわち圧力損失と、該機器を流
通する気体の流速uとの間には、流体力学の分野でよく
知られていた一定の関数関係が成立する(例えば、ΔP
=k・u2)。したがって、前後差圧に基づいて該機器内に
おける気体の流速を演算することができる。そして、こ
の流速に該機器の流通断面積を乗算すれば該流路を流れ
ている気体の体積流量を得ることができる。したがっ
て、かかる一般原理に鑑みれば、この実施の形態におい
ては、パージバルブ開度からパージバルブ29の流通断
面積を容易に求めることができるので、パージバルブ前
後差圧とパージバルブ開度(駆動デューティ比)とに基づ
いてパージ空気量(体積流量)を求めることができるわけ
である。なお、パージ空気量を直接検出することができ
る流量検出センサを設け、該流量検出センサでパージ空
気量を検出するようにしてもよい。
【0066】そして、ステップS7で演算されたパージ
空気量と、トラップ量推定値とに基づいて蒸発燃料放出
量(パージガス質量流量すなわち蒸発燃料の質量流量)が
演算される(ステップS8)。次に、エンジン回転数が計
測され(ステップS9)、このエンジン回転数とステップ
S8で演算された蒸発燃料放出量とに基づいてパージガ
ス比率が演算される(ステップS10)。ここで、パージ
ガス比率とは、キャニスタ25からパージ通路28に放
出された蒸発燃料が、必要とされる全燃料(要求燃料噴
射量)中に占める比率であって、蒸発燃料の燃焼への寄
与率をあらわしている。
【0067】この後、キャニスタ25から燃焼室4に至
るパージ空気ないしは蒸発燃料の輸送経路(以下、これ
を蒸発燃料輸送経路という)の輸送遅れ特性(吸入空気量
モデル)を設定し(ステップS11)、続いてステップS
10で演算されたパージガス比率とステップS11で設
定された吸入空気量モデルとに基づいて正味パージガス
比率が演算される(ステップS12)。この正味パージガ
ス比率は、燃焼室4に流入する蒸発燃料が、必要とされ
る全燃料(要求燃料噴射量)中に占める比率、すなわち蒸
発燃料流入量が要求燃料噴射量中に占める比率である。
したがって、燃料噴射弁15から噴射すべき燃料量は、
要求燃料噴射量に(1−正味パージガス比率)を乗算した
ものとなる。
【0068】そして、ステップS12で演算された正味
パージガス比率(蒸発燃料流入量)に相当する燃料噴射弁
15のパルス幅すなわちパージ補正パルス幅が演算され
(ステップS13)、このパージ補正パルス幅が、前記の
エンジン制御ブロックSLに出力される。
【0069】以下、図5〜図10に示すフローチャート
に従って、適宜図2〜図4を参照しつつ、コントロール
ユニットCUによる各種制御の制御手法ないしは各種演
算の演算手法について説明する。まず、図5に示すフロ
ーチャート従って、該制御手法ないしは演算手法の全体
フローすなわちメインルーチンを説明する。このメイン
ルーチンにおいては、まずステップT1で初期化が行わ
れる。具体的には、トラップ量推定値trapと、空燃比学
習完了フラグxlrndと、トラップ量推定完了フラグxtrap
lrnと、トラップ量推定可能フラグxtlexとに夫々初期値
として0がセットされる。ここで、空燃比学習完了フラ
グxlrndは、空燃比学習が完了したときに1がたてられ
るフラグである。トラップ量推定完了フラグxtraplrn
は、トラップ量の推定が完了したときに1がたてられ、
トラップ量の推定の禁止が所定時間以上継続されたとき
に0にリセットされるフラグである。トラップ量推定可
能フラグxtlexは、トラップ量推定条件が成立したとき
に1がたてられ、上記トラップ量推定条件が不成立とな
ったときに0にリセットされるフラグである。
【0070】次に、ステップT2でエンジン回転数neが
演算され、続いてステップT3で充填効率ceが演算され
る。ここで、充填効率ceは、吸入空気量、エンジン回転
数ne、吸気温等に基づいてよく知られた手法で演算され
る。
【0071】この後、ステップT4〜ステップT8が順
に実行される。ここで、ステップT4〜T8は、夫々、
後で説明する各種サブルーチンを用いて実行される。具
体的には、ステップT4では、図8にそのフローチャー
トが示されているサブルーチンを用いて燃料噴射量の演
算が行われる。ステップT5では、図10にそのフロー
チャートが示されているサブルーチンを用いてパージ実
行判定が行われる。ステップT6では、図9にそのフロ
ーチャートが示されているサブルーチンを用いてパージ
量の演算が行われる。ステップT7では、図7にそのフ
ローチャートが示されているサブルーチンを用いてトラ
ップ量推定の実行判定が行われる。ステップT8では、
図6にそのフローチャートが示されているサブルーチン
を用いてトラップ量の演算が行われる。この後、ステッ
プT2に復帰する。
【0072】以下、各サブルーチンについて具体的に説
明する。まず、図6に示すフローチャートに従って適宜
図2〜図4を参照しつつ、メインルーチンのステップT
8で実行(起動)されるトラップ量演算サブルーチン、す
なわちコントロールユニットCUによるトラップ量の具
体的な推定手法を説明する。
【0073】このサブルーチンにおいては、まずステッ
プ#2で、所定のトラップ量推定条件が成立しているか
否か、すなわちエンジンCEの運転状態がトラップ量を
高精度で推定することが可能な状態にあるか否かが判定
される。ここでは、次の4つの条件がすべて成立してい
るときにはトラップ量推定条件が成立しているものと判
定するようにしている。 (1)キャニスタパージが行われていること (2)空燃比のフィードバック制御が行われていること (3)充填効率が所定値未満であること(図7中のステッ
プ#33参照) (4)空燃比学習が完了していること(図7中のステップ
#34参照) なお、上記(1)〜(4)に加えて、吸気圧が所定値以
下の時、トラップ量の推定が禁止できるように、吸気
圧、または吸気圧相当を求めることができる充填効率
が、上記(3)の所定値(上限値)より低い下限値(第
2の所定値)以上であることをトラップ量推定条件とし
ても良い。
【0074】換言すれば、キャニスタパージが停止され
ているとき、空燃比のフィードバック制御が停止されて
いるとき、充填効率が所定値以上であるとき、又は空燃
比学習が完了していないときには、トラップ量の推定を
禁止するようにしている。このようにする理由は、およ
そ次のとおりである。すなわち、前記したとおり、キャ
ニスタパージ又はフィードバック制御が停止されている
ときは、トラップ量とフィードバック補正値ないしは平
均フィードバック補正値との間に相関性が存在せず、し
たがってトラップ量を推定することができないのでトラ
ップ量の推定を禁止するようにしている。充填効率ない
し吸気圧が非常に高いときには、パージバルブ前後差圧
が非常に小さくなるとともに吸気脈動が激しくなりフィ
ードバック補正値が変動し、このためパージ空気量を高
精度で演算することができなくなるので、トラップ量の
推定を禁止するようにしている。また、充填効率ないし
吸気圧が非常に低いときには、パージバルブ前後差圧が
大きくなりすぎパージ空気量を高精度で演算することが
できなくなるので、トラップ量の推定を禁止するように
している。さらに、空燃比学習が完了した後でトラップ
量の推定を行うようにしているのは、前記したとおり、
空燃比学習が完了した後はトラップ量の推定精度が非常
に高くなるからである。
【0075】かくして、ステップ#2でトラップ量推定
条件が成立していると判定された場合は(YES)、ステ
ップ#3でトラップ量推定可能フラグxtlexに1がたて
られるとともに、トラップ量推定禁止カウンタctに初期
値ct0がセットされる。トラップ量推定禁止カウンタct
は、トラップ量推定条件が不成立となってトラップ量の
推定が禁止されている期間(時間)をカウントするための
カウンタである。
【0076】続いて、ステップ#4で、次の式1により
平均フィードバック補正値cfbaveが演算されるととも
に、平均フィードバック補正値cfbaveの演算回数をカウ
ントするための演算回数カウンタPが1だけインクリメ
ントされる(P=P+1)。すなわち、リニアO2センサ
9を用いたこのエンジンでは、一定時間毎のフィードバ
ック補正値の相加平均値が平均フィードバック補正値cf
baveとされている。
【数1】 cfbave=Σ(k=0→n−1)[cfb(i−k)]/n……………………………式1 cfbave:平均フィードバック補正値 cfb(i):今回のフィードバック補正値 cfb(i−k):k回前のフィードバック補正値 n:平均化処理されるcfbのサンプル数 なお、式1において、Σ(k=α→β)[f(k)]は、関数f
(k)の、k=αからk=βまでのシグマ演算(Σ)をあらわ
すものとする。次に、ステップ#5で、cfbaveが0以下
であるか否かが判定される。ここで、cfbave≦0である
と判定された場合は(YES)ステップ#6でトラップ量
推定値trapが補正量σだけ増やされ(trap=trap+σ)、
他方cfbave>0であると判定された場合は(NO)ステッ
プ#7でトラップ量推定値trapが補正量σだけ減らされ
る(trap=trap−σ)。
【0077】次に、ステップ#8で演算回数カウンタP
が所定の設定値P0以上であるか否かが判定され、P<
0であると判定された場合は(NO)、以下の全ステッ
プをスキップし、ステップ#2に復帰する。
【0078】他方、ステップ#8でP≧P0であると判
定された場合は(YES)、ステップ#9で平均フィード
バック補正値cfbaveの絶対値│cfbave│が所定の限界値
ε以上であるか否かが判定される。ここでは、│cfbave
│<εであればトラップ量の推定が完了しているものと
判定し、この場合はトラップ量推定値が真のトラップ量
とほぼ一致しているものと考えられるので、トラップ量
推定完了フラグxtraplrnに1をたてるようにしている。
例えば、図11に模式的に示すように、真のトラップ量
がa2である場合、トラップ量推定値trapがa1〜a3の範囲
内に入ったときにトラップ量の推定が完了しているもの
と判定されることになる。なお、図11においてグラフ
1は│cfbave│をあらわしている。また、trap>a2
範囲内ではcfbave>0であり、trap<a2の範囲内ではcf
bave<0である。他方、│cfbave│≧εであれば、トラ
ップ量推定完了フラグxtraplrnには変更を加えないよう
にしている。
【0079】具体的には、ステップ#9で│cfbave│<
εであると判定された場合は(NO)、ステップ#10で
トラップ量推定完了フラグxtraplrnに1がたてられ、こ
の後ステップ#2に復帰する。他方、ステップ#6で│
cfbave│≧εであると判定された場合は(YES)、直ち
にステップ#2に復帰する。
【0080】ところで、前記のステップ#2でトラップ
量推定条件が成立していないと判定された場合は(N
O)、ステップ#11でトラップ量推定禁止カウンタct
が1だけデクリメントされてトラップ量の推定が禁止さ
れている期間(時間)のカウントが開始されるとともに(c
t=ct−1)、演算回数カウンタPが0にリセットされる
(P=0)。
【0081】次に、ステップ#12でトラップ量推定禁
止カウンタctが0以下であるか否か、すなわちトラップ
量の推定が禁止された後所定期間ct0が経過したか否か
が判定され、ct≦0であると判定された場合は(YE
S)、すでにct0を経過しているのでステップ#13でト
ラップ量推定完了フラグxtraplrnが0にリセットされ
る。この場合は、前記したとおり、トラップ量推定値tr
apが真のトラップ量からずれているおそれがあるので、
トラップ量推定完了フラグxtraplrnをリセットするよう
にしている。他方、ステップ#12でct>0であると判
定された場合は(NO)、まだct0を経過していないので
ステップ#13をスキップする。
【0082】図12に、かかるトラップ量推定ルーチン
が実行された場合において、時刻t1でキャニスタパージ
が開始されたときの、パージバルブ29に印加される駆
動デューティ比dpg(グラフG2)、フィードバック補正値
cfb(グラフG3)、平均フィードバック補正値cfbave(グ
ラフG4)及びトラップ量推定値trap(グラフG5)の経時
変化の一例を示す。図12から明らかなとおり、トラッ
プ量推定値trapは時刻t1から推定が開始され、まもなく
一定値に収束している。このようにして、トラップ量が
高精度で推定される。
【0083】なお、この図6に示すトラップ量演算サブ
ルーチンでは、ステップ#4で、前記したとおり、一定
時間毎のフィードバック補正値cfbの相加平均が平均フ
ィードバック補正値cfbaveとされているが、このように
せず、例えば次の式2を用いてフィードバック補正値cf
bを重み付けした加重平均値すなわちなまし値を求め、
この加重平均値を平均フィードバック補正値cfbaveとし
てもよい。
【数2】 cfbave=α・cfb(i)+(1−α)・cfb(i−1)…………………………式2 α;重み係数 cfbave:平均フィードバック補正値 cfb(i):今回のフィードバック補正値 cfb(i−1):前回のフィードバック補正値
【0084】ところで、コントロールユニットCUが空
燃比の学習機能を備えている場合は、前に説明したとお
り、空燃比学習が終了した後でトラップ量の推定を行う
のが好ましい。なお、空燃比学習が終了した後でトラッ
プ量の推定を行う場合の利点は前に説明したとおりであ
る。
【0085】以下、図7に示すフローチャートに従っ
て、適宜図2〜図4を参照しつつ、メインルーチンのス
テップT7で実行(起動)されるトラップ量推定実行判定
サブルーチン、すなわち空燃比の学習機能を備えている
場合の好ましいトラップ量の推定手法を説明する。この
サブルーチンでは、基本的にはアイドル時において所定
の空燃比学習条件が成立しているときに空燃比学習を行
う一方、該空燃比学習が終了した後において所定のトラ
ップ量推定条件が成立しているときにトラップ量の推定
を行うようにしている。
【0086】具体的には、図7に示すように、まずステ
ップ#22でアイドル判定フラグxidlが1であるか否か
が判定される。アイドル判定フラグxidlは、エンジンC
Eがアイドル状態にあるときには1がたてられ、オフア
イドル状態(非アイドル状態)にあるときには0にリセ
ットされるフラグである。ここで、xidl=1であると判
定された場合は(YES)、ステップ#23〜ステップ#
29の空燃比学習を行うためのアイドル時用ルーチンが
実行される。他方、xidl≠1(xidl=0)であると判定さ
れた場合は(NO)、ステップ#30で空燃比学習実行カ
ウンタclrnとアイドル継続時間カウンタtidlとが夫々0
にリセットされた後、後で説明するステップ#31が実
行されることになる。
【0087】アイドル時用ルーチンが実行される場合
は、まずステップ#23とステップ#24とで、順に、
空燃比フィードバック制御実行フラグxfbが1であるか
否かと、アイドル継続時間カウンタtidlが所定値αを超
えているか否かとが判定される。ここで、空燃比フィー
ドバック制御実行フラグxfbは空燃比のフィードバック
制御が行われているときには1がたてられ、フィードバ
ック制御が行われていないとき(オープンループ制御時)
には0にリセットされるフラグである。また、アイドル
継続時間カウンタtidlは、アイドル時におけるアイドル
運転開始後の経過時間をカウントするためのカウンタで
ある。
【0088】このトラップ量推定実行判定サブルーチン
では、アイドル時における空燃比のフィードバック制御
時において、アイドル運転継続時間が所定期間α以下の
場合は、エンジンCEが安定したアイドル状態に達して
いないものと考えられるので、空燃比学習を行わないよ
うにしている。かくして、ステップ#23でxfb≠1(xf
b=0)であると判定された場合は(NO)、空燃比学習を
行うことができないので、ステップ#24〜ステップ#
29は実行されず、前記のステップ#30で空燃比学習
実行カウンタclrnとアイドル継続時間カウンタtidlとが
夫々0にリセットされた後、ステップ#31が実行され
る。
【0089】また、ステップ#23でxfb=1であると
判定された場合(YES)、すなわちフィードバック制御
時であっても、ステップ#24でtidl≦αであると判定
された場合は(NO)、やはり空燃比学習を行うことがで
きないので、ステップ#28で、アイドル継続時間カウ
ンタtidlが1だけインクリメントされた後(tidl=tidl
+1)、ステップ#31が実行される。
【0090】他方、ステップ#24でtidl>αであると
判定された場合は(YES)、ステップ#25で空燃比学
習実行カウンタclrnが所定値β未満であるか否かが判定
される。空燃比学習実行カウンタclrnは、アイドル運転
開始後において空燃比学習が実行された回数をカウント
するためのカウンタである。ここでは、空燃比学習の実
行回数が所定値β以上となったときに空燃比学習が終了
しているものと判定するようにしている。
【0091】かくして、ステップ#25でclrn<βであ
ると判定された場合は(YES)、まだ空燃比学習が終了
していないのでステップ#26で空燃比学習が継続さ
れ、続いてステップ#27で空燃比学習実行カウンタcl
rnが1だけインクリメントされ(clrn=clrn+1)、この
後ステップ#31が実行される。なお、空燃比学習は、
空燃比偏差が0のときにはフィードバック補正値cfbが
平均的には中立値0となるように、燃料噴射弁15の噴
射特性を変化させるなどといった普通の手法で行われ
る。
【0092】他方、ステップ#25でclrn≧βであると
判定された場合は(NO)、空燃比学習が終了しているの
でステップ#29で空燃比学習完了フラグxlrndに1が
たてられ、この後ステップ#31が実行される。
【0093】かくして、ステップ#31〜ステップ#3
4では、トラップ推定条件が成立しているか否かが判定
される。ここでは、次の4つの条件がすべて成立してい
るときには、トラップ量推定条件が成立しているものと
判定し、これらのうちのいずれか1つでも不成立であれ
ばトラップ量推定条件が不成立であると判定するように
している。 (1)キャニスタパージが行われていること (2)空燃比のフィードバック制御が行われていること (3)充填効率(または吸気圧)が所定値未満であること (4)空燃比学習が完了(終了)していること これらの4つの条件(1)〜(4)を設ける理由は、図6に
フローチャートを示している前記トラップ量演算サブル
ーチンのステップ#2の場合と同様である。
【0094】具体的には、ステップ#31〜ステップ#
34の4つのステップで、順に、パージ実行フラグxpg
が1であるか否かすなわちキャニスタパージが行われて
いるか否かと、空燃比フィードバック制御実行フラグxf
bが1であるか否かすなわち空燃比のフィードバック制
御が行われているか否かと、充填効率ceが所定値γ未満
であるか否かと、空燃比学習完了フラグxlrndが1であ
るか否かすなわち空燃比学習が終了しているか否かとが
判定される。
【0095】ここで、xpg=1であり、xfb=1であり、
ce<γであり、かつxlrnd=1であると判定された場合
は(ステップ#31〜ステップ#34がすべてYES)、
ステップ♯35でトラップ量推定条件が成立しているも
のと判定され、この場合は図6にフローチャートを示す
前記のトラップ量演算サブルーチンでトラップ量が推定
されることになる。
【0096】他方、xpg=0であるか、xfb=0である
か、ce≧γであるか、又はxlrnd=0であると判定され
た場合は(ステップ#31〜ステップ#34のいずれか
1つがNO)、トラップ量推定条件が成立していないの
で、ステップ#35をスキップする。このように、図7
にフローチャートを示すこのトラップ量推定手法によれ
ば、空燃比学習が終了した後でトラップ量が推定される
ので、トラップ量の推定精度が大幅に高められる。
【0097】以下、図8に示すフローチャートに従っ
て、適宜図2〜図4を参照しつつ、メインルーチンのス
テップT4で実行(起動)される燃料噴射量演算サブルー
チン、すなわちコントロールユニットCUによるパージ
ガス比率(蒸発燃料放出量)及び正味パージガス比率(蒸
発燃料流入量)の演算手法と、空燃比制御(燃料噴射量制
御)の制御手法とについて具体的に説明する。この燃料
噴射量演算サブルーチンでは、ステップ#41〜ステッ
プ#47が順に実行される。ステップ#41では、パー
ジバルブ前後差圧テーブルtable1を検索することによ
り、吸気充填効率ceに基づいてパージバルブ前後差圧dp
が演算される。ここでsipol(table1,ce)は、ceを独立
変数としdpを従属変数とする所定の関数関係をあらわす
table1において、任意のceに対応するdpを意味する。
パージバルブ前後差圧テーブルtable1は、吸気充填効
率ceとパージバルブ前後差圧dpとの間の関数関係をあら
わすテーブルである。吸気充填効率ceに基づいてパージ
バルブ前後差圧dpを演算することができる所以は前に説
明したとおりである。なお、パージバルブ前後差圧dp
を、このようなテーブル検索によるのではなく、ceとdp
の関係をあらわす関数f1(ce)を用いて直接的に演算する
ようにしてもよい(dp=f1(ce))。
【0098】ステップ#42では、パージ空気量マップ
map1を検索することにより、パージバルブ前後差圧dp
とパージバルブ29に印加される駆動デューティ比dpg
とに基づいてパージ空気量qpgが演算される。ここでsma
p(map1,dpg,dp)は、dpg及びdpを独立変数としqpgを従
属変数とする所定の関数関係をあらわすmap1におい
て、任意のdpg及びdpに対応するqpgを意味する。パージ
空気量map1は、駆動デューティ比dpg、パージバルブ前
後差圧dp及びパージ空気量qpgの相互間の関数関係をあ
らわすマップである。駆動デューティ比dpgとパージバ
ルブ前後差圧dpとに基づいてパージ空気量qpgを演算す
ることができる所以は前に説明したとおりである。な
お、パージ空気量qpgを、このようなマップ検索による
のではなく、dpg、dp及びqpgの相互関係をあらわす関数
f2(dpg,dp)を用いて直接的に演算するようにしてもよい
(qpg=f2(dpg,dp))。
【0099】ステップ#43では、蒸発燃料放出量マッ
プmap2を検索することにより、パージ空気量qpgとトラ
ップ量trapとに基づいて蒸発燃料放出量gpgが演算され
る。ここでsmap(map2,qpg,trap)は、qpg及びtrapを独
立変数としgpgを従属変数とする所定の関数関係をあら
わすmap2において、任意のqpg及びtrapに対応するgpg
を意味する。パージ空気量map2は、パージ空気量qpg、
トラップ量trap及び蒸発燃料放出量gpgの相互間の関数
関係をあらわすマップである。なお、蒸発燃料放出量gp
gを、このようなマップ検索によるのではなく、qpg、tr
ap及びgpgの相互関係をあらわす関数f3(gpg,trap)を用
いて直接的に演算するようにしてもよい(gpg=f3(qpg,t
rap))。
【0100】ステップ#44では、次の式3によりパー
ジガス比率cpgoが演算される。
【数3】 cpgo=Ys・[120/(γ0・Vc)]・(gpg/ne)…………………式3 cpgo:パージガス比率 Ys:吸入空気量を燃料噴射量に換算するための換算係数 γ0:密度 Vc:シリンダ有効容積 gpg:蒸発燃料放出量 ne:エンジン回転数[r.p.m.] なお、式3において、120/(γ0・Vc・ne)は、単位
時間(秒)当たりの燃焼室4への吸入空気量(質量流量)の
逆数であり、したがってこれに換算係数Ysを乗算した
Ys・120/(γ0・Vc・ne)は単位時間あたりの要求
燃料噴射量の逆数である。したがって、パージガス比率
cpgoは、蒸発燃料放出量を要求燃料噴射量で除算した
値、すなわち蒸発燃料放出量の全燃料流量に対する比率
である。
【0101】ステップ#45では、次の式4により正味
パージガス比率cpgが演算される。
【数4】 cpg=λ・cpg+(1−λ)・cpgo………………………………………式4 cpg:正味パージガス比率 λ:一次フィルタ係数(0<λ<1) cpgo:パージガス比率 式4は蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性をあらわすモデ
ル式である。エンジンCEの吸気系10、AMI16及
びパージ通路28の形状に応じて好ましく一次フィルタ
係数λを設定することにより、式4を用いて正味パージ
ガス比率cpg(蒸発燃料流入量)を正確に演算することが
できる。
【0102】ステップ#46では、次の式5により実パ
ルス幅ta(実燃料噴射量)すなわち燃料噴射弁15から実
際に噴射すべき燃料噴射量が演算される。
【数5】 ta=K・ (ce・ctotal−cpg)…………………………………………式5 ta:実パルス幅 K:換算係数 ce:吸気充填効率 ctotal:補正係数 式5において、K・ce・ctotalは要求パルス幅(要求燃
料噴射量)すなわち燃焼室4で実際に必要とされる燃料
量をあらわしている。また、k・cpgはパージによる供給
燃料量を噴射パルス幅相当に換算したものである。した
がって、式5では燃料噴射弁15から実際に噴射すべき
燃料量(実燃料噴射量)に対応する噴射パルス幅すなわち
実パルス幅taが演算されることになる。
【0103】ステップ#47では、ステップ#46で演
算された実パルス幅taで燃料噴射弁15から燃料が噴射
され、この後ステップ#41に復帰する。このようにし
て燃焼室4には、キャニスタパージを行っているときで
も、運転状態に応じて必要とされる量の燃料が正確に供
給され、空燃比制御(燃料噴射量制御)の制御精度が高め
られ、実空燃比が目標値に保持される。この場合、運転
状態に応じて要求燃料噴射量を決定するプロセスすなわ
ち空燃比制御本体はフィードバック制御であるが、要求
燃料噴射量から蒸発燃料流入量を差し引いてキャニスタ
パージによる影響を排除するプロセスはフィードフォワ
ード制御である。したがって、正味パージガス比率ない
しは蒸発燃料流入量の演算にはタイムラグが伴われな
い。このため、キャニスタパージに起因する実空燃比の
目標値に対するずれは生じない。
【0104】このように、エンジンCEにおいては、ト
ラップ量を推定し、該トラップ量に基づいて蒸発燃料流
入量(正味パージガス比率)を正確に演算し、要求燃料噴
射量から蒸発燃料流入量を差し引いて実燃料噴射量を設
定するようにしているので、キャニスタパージによって
吸気系10ないしは燃焼室4に流入する蒸発燃料が空燃
比のフィードバック制御の外乱とはならない。このた
め、トラップ量の推定が完了しているときにはキャニス
タパージによっては空燃比の目標値に対するずれは生じ
ない。
【0105】ところで、前記の「発明が解決しようとす
る課題」の欄で説明したとおり、燃料噴射量の少ないア
イドル域等の低吸入空気量域でキャニスタパージが開始
されると、空燃比のフィードバック制御に乱れが生じや
すくなる。また、トラップ量の推定が完了していないと
きすなわちトラップ量推定完了フラグxtraplrnが0であ
るときにキャニスタパージが開始されると、正味パージ
ガス比率ないしは蒸発燃料流入量が正確には把握されて
いないので、空燃比制御に乱れが生じやすくなる。そこ
で、この実施の形態では、キャニスタパージ開始時に
は、以下のようにキャニスタパージを制御ないしは規制
して、空燃比のフィードバック制御に乱れが生じるのを
防止するようにしている。
【0106】すなわち、図13に示すように、基本的に
は、空燃比のフィードバック制御領域においてキャニス
タパージを開始する際には、該パージ量を目標パージ量
まで徐々に増加させるようにしている。そして、その増
加率を、アイドル域(低吸入空気量域)ではオフアイド
ル域(高吸入空気量域)よりも小さく設定するようにし
ている。さらに、アイドル域及びオフアイドル域のいず
れにおいても、トラップ量の推定が完了していないとき
(学習未完了)には、該推定を完了しているとき(学習
完了)よりも、上記増加率を小さい値に設定している。
かつ、アイドル域においてトラップ量の推定を完了して
いるときのパージ量増加率を、オフアイドル域において
上記推定を完了していないときのパージ量増加率よりも
小さい値に設定している。
【0107】図13において、グラフJ1及びグラフJ2
は、それぞれ、オフアイドル時においてトラップ量の推
定を完了している場合及び完了していない場合の駆動デ
ューティ比(キャニスタパージ量)の経時変化すなわち
キャニスタパージ量の増加率を示している。また、グラ
フJ3及びグラフJ4は、それぞれ、アイドル時において
トラップ量の推定を完了している場合及び完了していな
い場合の駆動デューティ比の経時変化を示している。な
お、d1及びd2は、それぞれ、オフアイドル時及びアイ
ドル時における目標駆動デューティ比(目標キャニスタ
パージ量)を示している。
【0108】このように、キャニスタパージが開始され
るときには、キャニスタパージ量が徐々に増やされるの
で、キャニスタパージ初期に蒸発燃料の吸気系10への
流入量がさほど多くならず、空燃比のフィードバック制
御に乱れが生じるのが防止され、該制御の安定性ないし
は応答性が良くなる。そして、キャニスタパージ開始後
しばらくするとキャニスタパージ量が目標キャニスタパ
ージ量に達するので、キャニスタ25に捕集(吸着)さ
れている蒸発燃料は迅速に吸気系10に排出される。こ
のため、キャニスタを小型化することができる。つま
り、空燃比のフィードバック制御の安定性ないしは応答
性を確保しつつキャニスタパージ量を多くすることがで
き、キャニスタ25を小型化することができるとともに
燃費性能を高めることができる。さらに、トラップ量の
推定が完了していないときには、キャニスタパージ量の
増加率が小さい値とされるので、蒸発燃料のトラップ量
ひいてはキャニスタパージ量が正確に把握されていない
場合でもキャニスタパージ初期に空燃比のフィードバッ
ク制御に乱れが生じるのが防止され制御安定性がさらに
良くなる。
【0109】以下、図9に示すフローチャートに従っ
て、適宜図2〜図4を参照しつつ、メインルーチンのス
テップT6で実行(起動)されるパージ量演算サブルーチ
ン、すなわちキャニスタパージ開始時に駆動デューティ
比(制御デューティ比)を徐々に増加させるようにした
場合における、駆動デューティ比の増加率の制御方法を
説明する。このパージ量演算サブルーチンでは、まずス
テップ#51で、パージ実行フラグxpgが1であるか否
かが判定され、xpg≠1(xpg=0)であれば(NO)、ステ
ップ#52とステップ♯53とで、それぞれ、アイドル
パージ補正値cmodiとオフアイドルパージ補正値cmodnと
に0がセットされ、この後ステップ♯51に復帰する。
【0110】両補正値cmodi、cmodnは、それぞれ、アイ
ドル時又はオフアイドル時においてキャニスタパージが
開始された後、駆動デューティ比を目標駆動デューティ
比に向かって徐々に増加させるための0以上1以下の補
正値であって、目標駆動デューティ比と補正値cmodi、c
modnとの積がパージバルブ29の駆動デューティ比dpg
φとなる。そして、両補正値cmodi、cmodnは、キャニス
タパージ開始前は0とされ、キャニスタパージ開始後は
増分SPで徐々に増やされ、したがってパージ空気量が
徐々に増やされることになる。両補正値cmodi、cmodnが
1に達した後は、これ以上増えず1に保持される。補正
値cmodi、cmodnが0である場合は、目標駆動デューティ
比の値にかかわらずキャニスタパージが停止される。
【0111】他方、ステップ♯51で、xpg=1である
と判定された場合は(YES)、ステップ♯54でアイ
ドル判定フラグxidlが1であるか否か、すなわちアイド
ル時であるか否かが判定される。ここで、xidl≠1(xid
l=0)であると判定された場合(NO)、すなわちオフ
アイドル時には、ステップ♯64〜ステップ♯71のオ
フアイドル時用ルーチンが実行される。この場合、まず
ステップ♯64でアイドルパージ補正値cmodiに0がセ
ットされる。要するに、アイドルパージ補正値cmodiは
用いられないことになる。
【0112】次に、ステップ♯65で、オフアイドルパ
ージ補正値cmodnが1であるか否かが判定される。ここ
で、cmodn≠1(すなわち、cmodn<1)であると判定され
た場合は(NO)、キャニスタパージ開始後においてオフ
アイドルパージ補正値cmodnを徐々に増加させるべき状
態にあるので、ステップ#66〜ステップ#69で、ト
ラップ量の推定が完了しているか否かを考慮して、オフ
アイドルパージ補正値cmodnが徐々に増やされる。
【0113】具体的には、ステップ#66で、トラップ
量推定完了フラグxtraplrnが1であるか否か、すなわち
トラップ量の推定が完了しているか否かが判定される。
ここで、xtraplrn=1であると判定された場合は(YE
S)、ステップ#68で増分SPが比較的大きい値KM
N1とされ、この後ステップ#69が実行される。この
場合は、トラップ量の推定が完了しているので、正味パ
ージガス比率ないしは蒸発燃料流入量を正確に演算する
ことができる。したがって、フィードフォワード制御で
キャニスタパージの影響を確実に補償することができ
る。すなわち、ある程度急激にキャニスタパージを開始
しても、その影響は十分に補償され、空燃比制御に乱れ
を生じさせない。そこで、増分SPを大きくして、すな
わちオフアイドルパージ補正値cmodnの増加率を大きく
して、早期に目標駆動デューティ比でキャニスタパージ
を行うようにしている(図13中のグラフJ1参照)。
【0114】他方、ステップ#66でxtraplrn≠1(xtr
aplrn=0)であると判定された場合は(NO)、ステップ
#67で増分SPが比較的小さい値KMN2(KMN2
<KMN1)とされ、この後ステップ#69が実行され
る。この場合は、トラップ量の推定がまだ完了していな
いので、正味パージガス比率ないしは蒸発燃料流入量を
正確に演算することができない。したがって、フィード
フォワード機能が十分にははたらかないので、急激にキ
ャニスタパージを開始すると、その影響が十分に補償さ
れず、空燃比制御に乱れが生じる。そこで、増分SPを
比較的小さくして、オフアイドルパージ補正値cmodnの
増加率を比較的小さくするようにしている(図13中の
グラフJ2参照)。
【0115】ステップ#69では、前回のオフアイドル
パージ補正値cmodnにSPを加算して今回のオフアイド
ルパージ補正値cmodnが演算される。なお、加算の結果
今回のオフアイドルパージ補正値cmodnが1を超える場
合には1にとどめられる。ここで、addclip(cmodn,S
P,1)は、cmodnにSPを加算するが上限値を1とする
といった演算処理をあらわしている。このようにして、
オフアイドルパージ補正値cmodnが徐々に増やされる。
【0116】次に、ステップ#70で、次の式6により
パージバルブ29の駆動デューティ比dpgφが演算され
る。
【数6】 dpgφ=cmodn・smap(map3,ne,ce)……………………………………式6 dpgφ:駆動デューティ比[%] cmodn:オフアイドルパージ補正値 smap(map3,ne,ce):目標駆動デューティ比[%] ne:エンジン回転数 ce:吸気充填効率 なお、式6において、smap(map3,ne,ce)は、ne及びce
を独立変数としdpgφを従属変数とする所定の関数関係
をあらわすデューティ比map3において、任意のne及びc
eに対応するdpgφを意味する。デューティ比map3は、
エンジン回転数ne、吸気充填効率ce及び駆動デューティ
比dpgφの相互間の関数関係をあらわすマップである。
このようにして、キャニスタパージが開始される際に
は、駆動デューティ比dpgφひいてはパージ空気量が徐
々に増やされる。
【0117】なお、前記のステップ#65でcmodn=1
であると判定された場合は(YES)、キャニスタパージ
開始後においてcmodnがすでに1に達していることにな
るので、ステップ#66〜ステップ#69をスキップし
て、ステップ#70でオアイドルフパージ補正値cmodn
を1として駆動デューティ比dpgφが演算される。
【0118】ステップ♯70が実行された後は、ステッ
プ♯71でパージバルブ29の駆動周波数pfreqが一定
値10Hzに固定される。すなわち、駆動周期は100
msとなる。この場合は、前記したとおり、パージバル
ブ29のオン時間が駆動デューティ比に応じて変化する
ことになる。この後、後で説明するステップ♯63が実
行される。
【0119】ところで、前記のステップ♯54で、xidl
=1であると判定された場合(YES)、すなわちアイ
ドル時には、ステップ♯55〜ステップ♯63のアイド
ル時用のルーチンが実行される。この場合、まずステッ
プ♯55でオフアイドルパージ補正値cmodnに0がセッ
トされる。要するに、オフアイドルパージ補正値cmodn
は用いられない。なお、#52,#53,#55,#6
4のオフアイドルページ補正値cmodnに0がセットされ
ているが、パージの立ち上がりを速くするために0.1
25とわずかに与えておいても良い。次に、ステップ♯
56で、アイドルパージ補正値cmodiが1であるか否か
が判定される。ここで、cmodi≠1(すなわち、cmodi<
1)であると判定された場合は(NO)、キャニスタパー
ジ開始後においてアイドルパージ補正値cmodiを徐々に
増加させるべき状態にあるので、ステップ#57〜ステ
ップ#60で、トラップ量の推定が完了しているか否か
を考慮して、アイドルパージ補正値cmodiが徐々に増や
される。
【0120】具体的には、ステップ#57で、トラップ
量推定完了フラグxtraplrnが1であるか否か、すなわち
トラップ量の推定が完了しているか否かが判定される。
ここで、xtraplrn=1であると判定された場合は(YE
S)、ステップ#58で増分SPが比較的大きい値KM
I1とされ、この後ステップ#60が実行される。な
お、このKMI1は、前記のKMN2よりは小さい値と
される。この場合は、トラップ量の推定が完了している
ので、正味パージガス比率ないしは蒸発燃料流入量を正
確に演算することができる。したがって、フィードフォ
ワード制御でキャニスタパージの影響を確実に補償する
ことができる。すなわち、ある程度急激にキャニスタパ
ージを開始しても、その影響は十分に補償され、空燃比
制御に乱れを生じさせない。そこで、増分SPを比較的
大きくして、すなわちアイドルパージ補正値cmodiの増
加率を比較的大きくして、早期に目標駆動デューティ比
でキャニスタパージを行うようにしている。しかしなが
ら、アイドル時においてはもともと燃料噴射量が少な
く、したがって空燃比のフィードバック制御に乱れが生
じやすいので、このアイドル時においてトラップ量の推
定が完了している場合のKMI1は、オフアイドル時に
おいてトラップ量の推定が完了していない場合のKMN
2よりは小さい値とされている(図13参照)。
【0121】他方、ステップ#57でxtraplrn≠1(xtr
aplrn=0)であると判定された場合は(NO)、ステップ
#59で増分SPが、前記のKMI1と比べれば比較的
小さい値KMI2(KMI2<KMI1<KMN2<K
MN1)とされ、この後ステップ#57が実行される。
この場合は、トラップ量の推定がまだ完了していないの
で、正味パージガス比率ないしは蒸発燃料流入量を正確
に演算することができない。したがって、フィードフォ
ワード機能が十分にははたらかないので、急激にキャニ
スタパージを開始すると、その影響が十分に補償され
ず、空燃比制御に乱れを生じる。そこで、増分SPを小
さくして、すなわちアイドルパージ補正値cmodiの増加
率を小さくするようにしている。
【0122】ステップ#60では、前回のアイドルパー
ジ補正値cmodiにSPを加算して今回のアイドルパージ
補正値cmodiが演算される。なお、加算の結果今回のア
イドルパージ補正値cmodiが1を超える場合には1にと
どめられる。ここで、addclip(cmodi,SP,1)の意味
は、ステップ♯69の場合と同様である。このようにし
て、アイドルパージ補正値cmodiが徐々に増やされる。
【0123】次に、ステップ#61で、次の式7により
パージバルブ29の駆動デューティ比dpgφが演算され
る。
【数7】 dpgφ=cmodi・α………………………………………………………式7 dpgφ:基本駆動デューティ比[%] cmodi:アイドルパージ補正値 α:目標駆動デューティ比[%]
【0124】なお、前記のステップ#56でcmodi=1
であると判定された場合は(YES)、キャニスタパージ
開始後においてcmodiがすでに1に達していることにな
るので、ステップ#57〜ステップ#60をスキップし
て、ステップ#61でアイドルパージ補正値cmodiを1
として駆動デューティ比dpgφが演算される。
【0125】ステップ♯61が実行された後は、ステッ
プ♯62で、次の式8によりパージバルブ29の駆動周
波数pfreqが演算され、この後ステップ♯63が実行さ
れることになる。
【数8】 pfreq=clip(dpgφ/1ms,2Hz,10Hz)…………………式8 pfreq:駆動周波数 dpgφ:駆動デューティ比 なお、式8において、clip(dpgφ/1ms,2Hz,
10Hz)は、基本的にはdpgφの数値をpfreqとする
が、その上限を10Hzとする一方、その下限を2Hz
とすることを意味する。例えば、dpgφが0〜2%の場
合はpfreqは2Hzであり、dpgφが3%の場合はpfreq
は3Hzであり、dpgφが20%の場合はpfreqは10H
zである。
【0126】ステップ♯63では、次の式9によりパー
ジバルブ29のオン時間dpgが演算される。
【数9】 dpg=max(dpgφ×1ms,10ms)…………………………………式9 dpg:オン時間[ms] dpgφ:駆動デューティ比[%] なお、式9において、max(dpgφ×1ms,10ms)
は、dpgφと10msのうちの最大のものをdpgとするこ
とを意味する。
【0127】かくして、駆動デューティ比dpgφが10
%以上であれば、駆動周波数pfreqが一定値10Hzと
され(駆動周期は100ms)、オン時間dpg(ms)
は駆動デューティ比dpgφ(%)と同値になる。他方、
駆動デューティ比dpgφが10%未満であれば、オン時
間は一定値10msとなり、駆動周波数pfreq(Hz)
が駆動デューティ比dpgφ(%)と同値になるが、駆動
周波数pfreqの下限は2Hzである。例えば、駆動デュ
ーティ比dpgφが30%の場合は、駆動周波数pfreqは1
0Hzであり(駆動周期100ms)、オン時間dpgは
30msである。また、駆動デューティ比dpgφが3%
の場合は、駆動周波数pfreqは3Hzであり(駆動周期
333ms)、オン時間は10msである。
【0128】なお、図14に、かかる制御により、駆動
デューティ比dpgφ(グラフJ5)が、時刻θ1から時刻
θ2までの期間は一定値2%に保持され、この後一定の
増加率で増加して時刻θ3で10%に達し、さらに増加
した後再び一定値(10%よりは大きい)に保持された
場合の、駆動周波数pfreqの経時変化(グラフJ6)の一
例を示す。
【0129】以下、図10に示すフローチャートに従っ
て、適宜図2〜図4を参照しつつ、メインルーチンのス
テップT5で実行(起動)されるパージ実行判定サブルー
チンについて説明する。このパージ実行判定サブルーチ
ンでは、まずステップ#81でパージ実行可であるか否
かが判定され、パージ実行可でなければ(NO)、ステッ
プ#85でパージ実行フラグxpgに0がセットされる。
この後、ステップ#81に復帰する。なお、ここでは水
温が80℃以上である場合において、エンジンCEの運
転状態がフィードバックゾーン又はエンリッチゾーンに
あるときには、パージ実行可とされている。
【0130】他方、ステップ#81でパージ実行可であ
ると判定された場合は(YES)、ステップ#82でアイ
ドル判定フラグxidlが1であるか否か、すなわちアイド
ル時であるか否かが判定され、xidl≠1(xidl=0)であ
れば(NO)、すなわちアイドル時でなければ、ステップ
#84でパージ実行フラグxpgに1がセットされる。
【0131】ステップ#82で、xidl=1であると判定
された場合は(YES)、ステップ#83で、空燃比学習
完了フラグxlrndが1であるか否かが判定される。ここ
では、アイドル時において、xlrnd=1である場合、す
なわち空燃比学習が完了している場合にのみ、パージ実
行を許可するようにしている(パージ実行フラグxpgに1
をセットする)。
【0132】かくして、ステップ#83でxlrnd=1で
あると判定された場合は(YES)、ステップ#84で
パージ実行フラグxpgに1がセットされる。他方、xlrnd
が0であれば(NO)、ステップ#85でパージ実行フ
ラグxpgに0がセットされる。
【0133】このようにして、アイドル時においても、
空燃比制御に乱れを生じさせずに、すなわち空燃比の目
標値に対するずれを生じさせずにキャニスタパージを行
うことができる。
【0134】前記の実施例では、トラップ量を平均フィ
ードバック補正値に基づいて推定するようにしている
が、トラップ量を直接検出するトラップ量検出センサを
設け、このトラップ量検出センサによって検出されたト
ラップ量に基づいて蒸発燃料放出量(パージガス比率)な
いしは蒸発燃料流入量(正味パージガス比率)を演算する
ようにしてもよい。この場合、トラップ量検出センサと
しては、キャニスタ25内の吸着材の静電容量に基づい
てトラップ量を検出するもの、あるいはHCセンサ等を
用いることが可能である。
【0135】
【発明の効果】本発明の第1の態様にかかるエンジンの
制御装置においては、低吸入空気量域で蒸発燃料のパー
ジが実行されるときには、パージ流量が比較的小さい変
化率でもって徐々に変化させられ、パージ初期には蒸発
燃料の吸気系への流入変化がさほど多くならないので、
空燃比のフィードバック制御に乱れが生じるのが防止さ
れ、該制御の安定性ないしは応答性が良くなる。そし
て、パージ開始後しばらくするとパージ流量が目標パー
ジ流量に達するので、キャニスタに捕集(吸着)されて
いる蒸発燃料は迅速に吸気系に排出される。また、燃料
噴射量が多い高吸入空気量域で蒸発燃料のパージが実行
されるときには、パージ流量が比較的大きい変化率でも
って変化させられるので、キャニスタ内に捕集されてい
る蒸発燃料が迅速に吸気系に排出される。このため、キ
ャニスタを小型化することができる。
【0136】本発明の第2の態様にかかるエンジンの制
御装置においては、低吸入空気量域で蒸発燃料のパージ
が開始されるときには、パージ流量が比較的小さい増加
率でもって徐々に増やされ、パージ初期には蒸発燃料の
吸気系への流入変化がさほど多くならないので、空燃比
のフィードバック制御に乱れが生じるのが防止され、該
制御の安定性ないしは応答性が良くなる。そして、パー
ジ開始後しばらくするとパージ流量が目標パージ流量に
達するので、キャニスタに捕集(吸着)されている蒸発
燃料は迅速に吸気系に排出される。また、燃料噴射量が
多い高吸入空気量域で蒸発燃料のパージが開始されると
きには、パージ流量が比較的大きい増加率でもって増や
されるので、キャニスタ内に捕集されている蒸発燃料が
迅速に吸気系に排出される。このため、キャニスタを小
型化することができる。つまり、空燃比のフィードバッ
ク制御の安定性ないしは応答性を確保しつつパージ流量
を多くすることができ、キャニスタを小型化することが
できるとともに燃費性能を高めることができる。
【0137】本発明の第3の態様にかかるエンジンの制
御装置においては、要求燃料噴射量から蒸発燃料量を減
算して実際の燃料噴射量を設定した上で空燃比のフィー
ドバック制御を行うようにしているので、該フィードバ
ック制御の安定性ないしは応答性が良くなる。また、燃
料噴射量が少ないアイドル域で蒸発燃料のパージが実行
される場合において、蒸発燃料量に関する量の推定値の
算出が完了していないときにはパージ流量が比較的小さ
い変化率でもって徐々に変化させられるので、蒸発燃料
量に関する量(ひいては蒸発燃料量)が正確に把握され
ていない場合でもパージ初期に空燃比のフィードバック
制御に乱れが生じるのが防止され制御安定性がさらに良
くなる。
【0138】本発明の第4の態様にかかるエンジンの制
御装置においては、基本的には、上記第2の態様にかか
るエンジンの制御装置の場合と同様に、空燃比のフィー
ドバック制御の安定性ないしは応答性を確保しつつパー
ジ流量を多くすることができ、キャニスタを小型化する
ことができるとともに燃費性能を高めることができる。
さらに、要求燃料噴射量から蒸発燃料量を減算して実際
の燃料噴射量を設定した上で空燃比のフィードバック制
御を行うようにしているので、該フィードバック制御の
安定性ないしは応答性がさらに良くなる。また、燃料噴
射量が少ないアイドル域で蒸発燃料のパージが開始され
る場合において、蒸発燃料量に関する量の推定値の算出
が完了していないときにはパージ流量が比較的小さい増
加率でもって徐々に増やされるので、蒸発燃料量に関す
る量(ひいては蒸発燃料量)が正確に把握されていない
場合でもパージ初期に空燃比のフィードバック制御に乱
れが生じるのが防止され制御安定性がさらに良くなる。
【0139】本発明の第5の態様にかかるエンジンの制
御装置においては、蒸発燃料量に関する量が蒸発燃料捕
集量でもって把握され、第3又は第4の態様にかかるエ
ンジンの制御装置の場合と同様の効果が得られることに
なる。
【0140】本発明の第6の態様にかかるエンジンの制
御装置においては、基本的には上記第4又は第5の態様
にかかるエンジンの制御装置の場合と同様の効果が得ら
れる。さらに、燃料噴射量が少ないアイドル時に蒸発燃
料のパージが開始される場合において、蒸発燃料量に関
する量又は蒸発燃料捕集量の推定値の算出が完了してい
ないときにはパージ流量が、蒸発燃料量に関する量又は
蒸発燃料捕集量の推定値の算出が完了しているオフアイ
ドル時よりも小さい増加率でもって徐々に増やされるの
で、蒸発燃料量に関する量又は蒸発燃料捕集量(ひいて
は蒸発燃料量)が正確に把握されていない場合でもパー
ジ初期に空燃比のフィードバック制御に乱れが生じるの
が防止され制御安定性がさらに良くなる。
【0141】本発明の第7の態様にかかるエンジンの制
御装置においては、基本的には上記第3〜第6の態様の
いずれか1つにかかるエンジンの制御装置の場合と同様
の効果が得られる。さらに、フィードバック補正値の平
均値に基づいて蒸発燃料量に関する量又は蒸発燃料捕集
量を推定するようにしているので、該推定値の演算が容
易となり、このため蒸発燃料量に関する量又は蒸発燃料
捕集量ひいては蒸発燃料量を迅速に算出することができ
る。また、蒸発燃料量に関する量又は蒸発燃料捕集量の
推定値を学習により更新するようにしているので該推定
値の精度が高められ、ひいては空燃比制御の精度が高め
られる。
【0142】本発明の第8の態様にかかるエンジンの制
御装置においては、基本的には上記第1〜第7の態様の
いずれか1つにかかるエンジンの制御装置の場合と同様
の効果が得られる。さらに、デューティ比が所定値未満
のときには、デューティ比に応じてオン時間を増減する
のではなく、オン時間を一定にした上でデューティ比に
応じて動作周期を伸縮することによってデューティ比に
対応する開弁度合(バルブ開度)となるようにしている
ので、パージバルブの開弁度合を精密に調節することが
でき、パージ流量の制御精度が高められる。また、動作
周期が長くなるので、パージバルブの開閉回数が減って
その寿命が伸び、制御装置の耐久性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 請求項1〜請求項8に対応する、本発明の第
1〜第8の態様の構成を示すブロック図である。
【図2】 本発明にかかる制御装置を備えたエンジンの
システム構成図である。
【図3】 本発明にかかる制御装置を備えたエンジンの
変形例を示すシステム構成図である。
【図4】 コントロールユニットの構成を機能化して示
したブロック図である。
【図5】 コントロールユニットによるエンジン制御
のメインルーチンのフローチャートである。
【図6】 トラップ量演算サブルーチンのフローチャー
トである。
【図7】 トラップ量推定実行判定サブルーチンを示す
フローチャートである。
【図8】 燃料噴射量演算サブルーチンを示すフローチ
ャートである。
【図9】 パージ量演算サブルーチンを示すフローチャ
ートである。
【図10】 パージ実行判定サブルーチンを示すフロー
チャートである。
【図11】 平均フィードバック補正値と蒸発燃料トラ
ップ量の関係を示す図である。
【図12】 駆動デューティ比、フィードバック補正
値、平均フィードバック補正値及びトラップ量推定値の
経時変化の一例を示す図である。
【図13】 キャニスタパージ開始時における駆動デュ
ーティ比の経時変化を示す図である。
【図14】 駆動デューティ比が変化したときの、パー
ジバルブの駆動周波数の経時変化を示す図である。
【図15】 駆動デューティ比と駆動周波数の関係を示
す図である。
【符号の説明】
CE,CE'…エンジン CU…コントロールユニット 1…気筒 4…燃焼室 9…リニアO2センサ 10…吸気系 15…燃料噴射弁 25…キャニスタ 28…パージ通路 29…パージバルブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−52134(JP,A) 特開 平5−52139(JP,A) 特開 平5−288107(JP,A) 実開 平2−131047(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02D 41/14 310 F02D 41/02 301 F02M 25/08 301

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 空燃比を検出する空燃比検出手段と、 所定の運転領域では、上記空燃比検出手段によって検出
    される空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射量をフ
    ィードバック制御する燃料噴射量制御手段と、 燃料タンクからの蒸発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段
    と、 上記所定の運転領域では、上記蒸発燃料捕集手段によっ
    て捕集された蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パ
    ージ手段と、 目標パージ流量を設定するとともに、該目標パージ流量
    に基づいて、上記蒸発燃料パージ手段による吸気系への
    蒸発燃料のパージ流量を制御するパージ流量制御手段と
    が設けられているエンジンの制御装置において、 上記パージ流量制御手段は、上記所定の運転領域におい
    て蒸発燃料のパージを実行する際には、目標パージ流量
    の変化に伴って、パージ流量を目標パージ流量となるよ
    う所定の変化率で変化させるとともに、その所定の変化
    率を、低吸入空気量域では高吸入空気量域よりも小さく
    設定するようになっていることを特徴とするエンジンの
    制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載されたエンジンの制御装
    置において、 上記パージ流量制御手段が、上記所定の運転領域におい
    て蒸発燃料のパージを開始する際には、該パージ流量を
    0から目標パージ流量まで所定の変化率で増加させると
    ともに、その所定の変化率を、低吸入空気量域では高吸
    入空気量域よりも小さく設定するようになっていること
    を特徴とするエンジンの制御装置。
  3. 【請求項3】 空燃比を検出する空燃比検出手段と、 所定の運転領域では、上記空燃比検出手段によって検出
    される空燃比の目標空燃比に対する偏差に基づいてフィ
    ードバック補正値を設定するフィードバック補正値設定
    手段と、 燃料タンクからの蒸発燃料を捕集する蒸発燃料捕集手段
    と、 上記所定の運転領域では、上記蒸発燃料捕集手段によっ
    て捕集された蒸発燃料を吸気系にパージする蒸発燃料パ
    ージ手段と、 該蒸発燃料パージ手段による吸気系への蒸発燃料のパー
    ジ流量を運転状態に応じて制御するパージ流量制御手段
    と、 上記フィードバック補正値設定手段によって設定された
    フィードバック補正値に基づいて燃焼室内に放出される
    蒸発燃料量を算出する蒸発燃料量算出手段と、 吸入空気量に対応して求められた基本燃料噴射量と上記
    フィードバック補正値設定手段によって設定されたフィ
    ードバック補正値とに基づいて要求燃料噴射量を求め、
    該要求燃料噴射量から上記蒸発燃料量算出手段によって
    算出された蒸発燃料量を減算して実際の燃料噴射量を設
    定することにより、上記空燃比検出手段によって検出さ
    れる空燃比が目標空燃比となるように、燃料噴射量をフ
    ィードバック制御する燃料噴射量制御手段とが設けられ
    ているエンジンの制御装置において、 上記蒸発燃料量算出手段が、上記フィードバック補正値
    設定手段によって設定されるフィードバック補正値か
    ら、上記蒸発燃料量に関する量の推定値を算出するよう
    になっていて、 上記パージ流量制御手段が、上記所定の運転領域におい
    てアイドル状態で蒸発燃料のパージを実行する際には該
    パージ流量を目標パージ流量に徐々に変化させるととも
    に、その変化率を、上記蒸発燃料量算出手段が上記推定
    値の算出を完了していないときには、該算出を完了して
    いるときよりも小さく設定するようになっていることを
    特徴とするエンジンの制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載されたエンジンの制御装
    置において、 上記パージ流量制御手段が、上記所定の運転領域におい
    て蒸発燃料のパージを開始する際には該パージ流量を目
    標パージ流量まで徐々に増加させるとともに、その増加
    率を、低吸入空気量域では高吸入空気量域よりも小さく
    設定するようになっていることを特徴とするエンジンの
    制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項3又は請求項4に記載されたエン
    ジンの制御装置において、 上記の蒸発燃料量に関する量が、蒸発燃料捕集量である
    ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項4又は請求項5に記載されたエン
    ジンの制御装置において、 上記パージ流量制御手段が、上記所定の運転領域におい
    てオフアイドル状態で蒸発燃料のパージを開始する際に
    も、該パージ流量を目標パージ流量まで徐々に増加させ
    るようになっているとともに、アイドル時において上記
    蒸発燃料量算出手段が上記推定値の算出を完了している
    ときのパージ量増加率を、オフアイドル時において上記
    蒸発燃料量算出手段が上記推定値の算出を完了していな
    いときのパージ量増加率よりも小さく設定するようにな
    っていることを特徴とするエンジンの制御装置。
  7. 【請求項7】 請求項3〜請求項6のいずれか1つに記
    載されたエンジンの制御装置において、 上記蒸発燃料量算出手段が、上記フィードバック補正値
    設定手段によって設定されるフィードバック補正値の平
    均値に基づいて蒸発燃料量の推定値を算出する一方、該
    推定値を学習により更新するようになっていることを特
    徴とするエンジンの制御装置。
  8. 【請求項8】 請求項1〜請求項7のいずれか1つに記
    載されたエンジンの制御装置において、 上記蒸発燃料パージ手段が、上記パージ流量制御手段か
    ら印加されるデューティ比に応じて弁体がオン・オフさ
    れるパージバルブを備えていて、 上記パージ流量制御手段が、上記パージバルブに印加す
    べきデューティ比が所定値未満のときには、上記パージ
    バルブのオン時間を一定にした上で、該デューティ比に
    応じて上記パージバルブの動作周期を伸縮させるように
    なっていることを特徴とするエンジンの制御装置。
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