JPH09105347A - エンジンの制御装置 - Google Patents

エンジンの制御装置

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JPH09105347A
JPH09105347A JP7290499A JP29049995A JPH09105347A JP H09105347 A JPH09105347 A JP H09105347A JP 7290499 A JP7290499 A JP 7290499A JP 29049995 A JP29049995 A JP 29049995A JP H09105347 A JPH09105347 A JP H09105347A
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JP
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fuel
amount
purge
air
evaporated fuel
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Application number
JP7290499A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Ninomiya
洋 二宮
Koji Endo
孝次 遠藤
Yuji Shitani
有司 志谷
Susumu Inoue
晋 井上
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Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
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Publication date
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  • Supplying Secondary Fuel Or The Like To Fuel, Air Or Fuel-Air Mixtures (AREA)
  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 燃料タンクの蒸発燃料を捕集して吸気系にパ
ージ(放出)する場合は、その蒸発燃料のパージ量が増
えると、燃焼室に供給される燃料量の各気筒毎のバラつ
きが大きくなって、エンジンの安定性にとって好ましく
ない。かかる蒸発燃料のパージに起因する影響を抑制す
ることを課題とする。 【解決手段】 キャニスタ17からの蒸発燃料のパージ
量の全燃料要求量に占める割合が所定値、例えば30%
以上となれば、パージバルブ21の駆動デューティ比を
減少して吸気系10に供給される蒸発燃料のパージ量を
制限するコントロールユニットCUを備えるように構成
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空燃比が目標空燃
比となるように燃料噴射量をフィードバック制御すると
共に、キャニスタに捕集された燃料タンクからの蒸発燃
料を吸気系にパージするように構成されたエンジンの制
御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車用の燃料噴射式エンジン
においては、空燃比が目標空燃比となるように、吸入空
気量に基づいて燃料噴射弁から噴射させる燃料噴射量が
決定される。その場合に、リニアO2センサで検出され
た排気ガス中のO2濃度から空燃比を求め、この空燃比
と目標空燃比との偏差(空燃比偏差)が小さくなるよう
にフィードバック補正値を設定し、この補正値で燃料噴
射量を補正することにより、空燃比を目標空燃比に追従
させるといった空燃比のフィードバック制御が行なわれ
る。
【0003】一方、自動車においては、燃料タンク内の
空気を直接大気中に排出すると大気汚染を招くと共に燃
料の損失にもなるので、燃料タンクから排出される空気
に含まれる蒸発燃料を吸着して捕集するキャニスタと、
該キャニスタに捕集された蒸発燃料を吸気系にパージ
(放出)して供給する蒸発燃料パージ手段とが備えられ
ている。このような蒸発燃料パージ手段では、キャニス
タと吸気系とを接続するパージ通路と、該パージ通路を
開閉するパージ制御弁とが設けられ、このパージ制御弁
が開かれたときにキャニスタ内の蒸発燃料が吸気系にパ
ージされるようになっている。
【0004】したがって、空燃比のフィードバック制御
を行なうエンジンにおいて、空燃比が目標空燃比に一致
しているときに蒸発燃料のパージが行なわれると、これ
に伴って空燃比がリッチ側に偏るので、フィードバック
補正値がリーン側に変化し、このフィードバック補正値
によって燃料噴射量が減量補正されて空燃比が目標空燃
比に戻されることになる。しかしながら、空燃比を検出
するためのリニアO2センサが排気通路に設けられてい
るので、蒸発燃料がパージされる吸気系との間の時間的
間隔が長く、フィードバック制御に応答遅れが生じる。
【0005】これに対処するためには、予め蒸発燃料の
パージ量を検出しておくことが必要となる。そうすれ
ば、吸入空気量に対応して求められた基本燃料噴射量と
フィードバック補正値とに基づいて全燃料要求量を求
め、この全燃料要求量から上記パージ量を予め差し引く
ことにより、実際の燃料噴射量が設定されて、フィード
バック制御が精度よく行なわれることになる。その場合
に、蒸発燃料のパージ量を直接検出できるセンサが現在
のところ実用化されていないので、例えば特開平2−2
45441号公報に開示されているように、フィードバ
ック補正値とその中立点との差に基づいて蒸発燃料のパ
ージ量を学習して推定することが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来よりこ
の種の蒸発燃料のパージ量の推定を行なうエンジンの制
御装置においては、運転状態に応じて予め設定された駆
動デューティ比でパージ制御弁を開閉させるようになっ
ており、その場合にパージ量を予測しておいてフィード
バック制御を精度よく行なおうとするものである。しか
しながら、その場合に次のような問題が生じる。
【0007】すなわち、パージ制御弁によってパージさ
れた蒸発燃料はパージ通路から吸気系のサージタンクに
供給されるが、このときサージタンクの一箇所から供給
されるようになっているので、多気筒エンジンにおいて
は、このパージされた蒸発燃料の各気筒への配分率が一
律とならず、燃焼効率が気筒毎にバラついて、特にアイ
ドル時等はエンジンの出力安定性が損なわれるのであ
る。さらに、パージ制御弁がデューティ制御で開閉を繰
り返すため、蒸発燃料の濃度変動が生じて、一層かかる
問題が大きくなる。
【0008】したがって、蒸発燃料のパージ量を推定は
するが、その量自体は問題とせず、運転状態に対応した
駆動デューティ比でパージ制御弁を開閉させる従来のも
のでは、蒸発燃料のパージ量が増加して上記問題が頻発
することになる。しかし、その場合に、この種の蒸発燃
料のパージ量の推定を行なうものにおいては、蒸発燃料
のパージ量が推定されているので、パージ制御弁の駆動
デューティ比を制御することにより上記パージ量を増減
させることは可能である。
【0009】そこで、本発明は、蒸発燃料のパージ量の
推定を行なうエンジンの制御装置において、蒸発燃料が
パージされた場合の影響を希釈化し、もってエンジン安
定性の維持を図ることのできるエンジンの制御装置の提
供を課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0011】すなわち、本願の請求項1の発明(以下
「第1発明」という。)は、燃料タンクにおける蒸発燃
料を捕集して該蒸発燃料を吸気系にパージすると共に、
その蒸発燃料のパージ量を学習して推定することによ
り、該蒸発燃料を所定量だけ吸気系にパージすることの
できる蒸発燃料パージ手段と、該蒸発燃料パージ手段で
パージされる蒸発燃料のパージ量を全燃料要求量から減
算することにより、燃料噴射弁から噴射させる燃料噴射
量を設定する燃料噴射量設定手段と、該燃料噴射量設定
手段で設定される燃料噴射量を空燃比が目標空燃比とな
るようにフィードバック制御する燃料噴射量制御手段と
が設けられて、上記蒸発燃料パージ手段が、蒸発燃料の
パージ量の全燃料要求量中に占める割合が所定値以上と
なったときに、該蒸発燃料のパージ量を制限することを
特徴とする。
【0012】この第1発明によれば、蒸発燃料を所定量
だけ吸気系にパージすることができ、該蒸発燃料のパー
ジ量の全燃料要求量中に占める割合が所定値以上となっ
たときに、蒸発燃料パージ手段によって該蒸発燃料のパ
ージ量が制限されるので、蒸発燃料の各気筒への配分率
のバラつきが希釈化されて、エンジン安定性が図られる
ことになる。
【0013】そして、本願の請求項2の発明(以下「第
2発明」という。)は、上記第1発明において、蒸発燃
料パージ手段による蒸発燃料のパージ量の制限は、蒸発
燃料のパージ量が増加しないように該蒸発燃料をパージ
することであることを特徴とし、また本願の請求項3の
発明(以下「第3発明」という。)は、同じく上記第1
発明において、蒸発燃料パージ手段による蒸発燃料のパ
ージ量の制限は、蒸発燃料のパージ量が減少するように
該蒸発燃料をパージすることであることを特徴とする。
【0014】これらの第2、第3発明によれば、蒸発燃
料のパージ量が増加しなくなるため、又は蒸発燃料のパ
ージ量が減少するために該蒸発燃料のパージ量が制限さ
れ、蒸発燃料の各気筒への配分率のバラつきが希釈化さ
れて、エンジン安定性が図られることになる。
【0015】一方、本願の請求項4の発明(以下「第4
発明」という。)は、上記第1発明ないし第3発明のい
ずれかにおいて、蒸発燃料パージ手段は、空燃比と目標
空燃比との偏差に応じて燃料噴射量制御手段で設定され
るフィードバック補正値に基づいて蒸発燃料のパージ量
を推定すると共に、このパージ量の推定が完了していな
い場合には、蒸発燃料のパージ量の全燃料要求量中に占
める割合を上記フィードバック補正値を考慮して演算す
ることを特徴とする。
【0016】この第4発明によれば、蒸発燃料のパージ
量の推定が完了していない過渡期には、フィードバック
補正値が考慮されて蒸発燃料のパージ量の全燃料要求量
中に占める割合が演算されるので、蒸発燃料のパージ量
の制限が精度よく行なわれる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。
【0018】図1は本発明にかかる制御装置を備えたエ
ンジンのシステム構成図ある。図1に示すように、燃料
噴射式のV型6気筒ガソリンエンジンCEの各気筒1
(V型配置された2つの気筒のみ図示)においては、吸
気弁2が開かれたときに吸気ポート3から燃焼室4内に
混合気が吸入され、この混合気がピストン5で圧縮され
た後点火プラグ(図示せず)によって着火、燃焼させら
れ、排気弁6が開かれたときに燃焼ガス(排気ガス)が
排気ポート7を介して排気通路8に排出されるようにな
っている。排気通路8には、排気ガス中のO2濃度を検
出するリニアO2センサ9が臨設されている。そして、
リニアO2センサ9で検出されたO2濃度はコントロール
ユニットCUに入力され、コントロールユニットCUで
はこのO2濃度に基づいて混合気の空燃比を演算するよ
うになっている。ここで、リニアO2センサ9によって
検出されるO2濃度と、該O2濃度に基づいて演算される
空燃比とは一義的な対応関係にあるので、以下では便宜
上、上記空燃比を「リニアO2センサ9によって検出さ
れた空燃比」又は「実空燃比」ということにする。
【0019】エンジンCEの各気筒1(燃焼室4)に燃
料燃焼用の空気を供給するために吸気系10が設けら
れ、この吸気系10には上流端が大気に開放された共通
供給通路11が設けられている。そして、共通吸気通路
11にはアクセルペダル(図示せず)と連動して開閉さ
れるスロットル弁12が介設され、共通吸気通路11の
下流端は吸入空気の流れを安定させるサージタンク13
に接続されている。さらに、サージタンク13には、各
気筒1に夫々個別に空気を供給する独立吸気通路14
(2つのみ図示)が接続され、これらの各独立吸気通路
14の下流端は夫々対応する気筒1の吸気ポート3に接
続されている。
【0020】吸気ポート3近傍において各独立吸気通路
14には、吸気ポート3内ないしは燃焼室4内に燃料を
噴射する燃料噴射弁15が、噴射口が下流側に向くよう
にして臨設されている。ここで、燃料噴射弁15の燃料
噴射量(噴射パルス幅)及び噴射タイミングは、後で説
明するようにコントロールユニットCUによって制御さ
れるようになっている。
【0021】エンジンCEには、燃料タンク(図示せ
ず)から排出される空気に含まれる蒸発燃料(ガソリン
ベーパ)を捕集する蒸発燃料捕集手段と、該蒸発燃料捕
集手段に捕集されている蒸発燃料を適宜吸気系10にパ
ージする蒸発燃料パージ手段とを備えた蒸発燃料回収手
段16が設けられている。以下、この蒸発燃料回収手段
16について説明する。
【0022】この蒸発燃料回収手段16には、蒸発燃料
を捕集(吸着)することができる吸着剤(例えば、活性
炭)が充填されたキャニスタ17が設けられている。そ
して、このキャニスタ17には、先端が燃料タンク(図
示せず)の上部空間部と連通し燃料タンク内の上部空間
部の空気を該キャニスタ17内にリリーフするリリーフ
通路18と、先端が大気に開放された大気開放通路19
と、先端がサージタンク13に接続されたパージ通路2
0とが接続されている。
【0023】パージ通路20には該通路20を任意に開
閉することができるデューティソレノイド式のパージバ
ルブ21が介設され、このパージバルブ21はコントロ
ールユニットCUによってその開弁度合(バルブ開度)
がデューティ比制御されるようになっている。すなわ
ち、パージバルブ21は、コントロールユニットCUか
ら印加される駆動デューティ比に従って開閉制御され、
1駆動周期内において駆動デューティ比に対応する時間
だけ全開され、残りの時間は全閉されるようになってい
る。例えば、1駆動周期を100ms(ミリ秒)とした
場合(すなわち、周波数10Hz)、印加される駆動デ
ューティ比が0のときには常時全閉され(開弁度合
0)、駆動デューティ比が100%のときには常時全開
され(開弁度合1すなわち100%)、駆動デューティ
比が30%のときにはまず30msだけ全開され残りの
70msは全閉されることになる(開弁度合0.3すな
わち30%)。以下では、1駆動周期内においてパージ
バルブ21が全開されている時間をオン時間といい、全
閉されている時間をオフ時間という。
【0024】そして、この蒸発燃料回収手段16におい
て、パージバルブ21が常時全閉されているときには
(駆動デューティ比0)、燃料タンク内の空気はリリー
フ通路18を通してキャニスタ17内にリリーフされた
後、大気開放通路19を通して大気中に排出されるが、
この空気に含まれている蒸発燃料はキャニスタ17内の
吸着材層を通過する際に吸着材に捕集され、大気中に排
出されない。
【0025】他方、パージバルブ21が開かれていると
きには吸気系10の負圧によって、大気中の空気が、ま
ず大気開放通路19を通してキャニスタ17内に吸い込
まれて吸着材層を通り抜け、この後パージ通路20を通
して吸気系10のサージタンク13ひいては燃焼室4に
パージされる。ここで、パージバルブ21の開弁度合
(すなわち、駆動デューティ比)に応じてパージされる
空気の流量(以下、これを「パージ空気量」という。)
が変化するのはもちろんである。そして、その際キャニ
スタ17内の吸着材に捕集されている蒸発燃料の一部が
吸着材から離脱し、パージされた上記空気(以下、これ
を「パージ空気」という。)と共に吸気系10のサージ
タンク13ひいては燃焼室4にパージされる。なお、以
下ではこのように吸気系10ひいては燃焼室4にパージ
される蒸発燃料の流量を「蒸発燃料パージ量」という。
【0026】しかしながら、キャニスタ17から燃焼室
4に至るパージ空気ないしは蒸発燃料の輸送経路はかな
りの容量を有しているので、キャニスタ17からパージ
通路20に放出された蒸発燃料が燃焼室4に実際に達す
るまでには、上記輸送経路の容積及び形状(輸送特性)
に相応する輸送遅れが伴う。したがって、ある時刻にお
いて、キャニスタ17からパージ通路20に放出される
蒸発燃料の流量(以下、これを「蒸発燃料放出量」とい
う。)と、燃焼室4に実際に流入する蒸発燃料の流量
(以下、これを「蒸発燃料流入量」という。)とは、定
常状態にある特別な場合を除けば通常は一致しない。こ
のため、以下では蒸発燃料パージ量を、蒸発燃料放出量
と蒸発燃料流入量とに区別して説明することにする。
【0027】コントロールユニットCUはマイクロコン
ピュータで構成され、エンジンCEの総合的な制御装置
であって、リニアO2センサ9によって検出される空燃
比(実空燃比)、エンジン回転数センサ31によって検
出されるエンジン回転数、エアフローセンサ32によっ
て検出される吸入空気量、スロットル開度センサ33に
よって検出されるスロットル開度、アイドルスイッチ3
4から出力されるアイドル信号等を制御情報として、エ
ンジンCE(蒸発燃料回収手段16を含む)の各種制
御、キャニスタ17に捕集されている蒸発燃料の量(以
下、これを「トラップ量」という。)の推定、蒸発燃料
放出量の算出(演算)、蒸発燃料流入量の算出(演算)
等を行うようになっている。以下、このコントロールユ
ニットCUが行なう空燃比制御(燃料噴射量制御)の制
御方法と、キャニスタパージ制御の制御方法と、トラッ
プ量の推定方法と、蒸発燃料放出量の算出方法(演算方
法)と、蒸発燃料流入量の算出方法(演算方法)とにつ
いて説明する。
【0028】まず、図2を参照しつつコントロールユニ
ットCUの基本的な機能について説明する。図2に示す
ように、コントロールユニットCUは機能的にみれば、
空燃比制御(燃料噴射量制御)及びキャニスタパージ制
御を行うエンジン制御ブロックSLと、トラップ量の推
定を行うトラップ量推定ブロックSMと、トラップ量に
基づいて蒸発燃料放出量及び蒸発燃料流入量を演算する
蒸発燃料パージ量演算ブロックSNとに大別される。
【0029】エンジン制御ブロックSLは、基本的に
は、空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射弁15の
噴射パルス幅すなわち燃料噴射量を運転状態に応じてフ
ィードバック制御又はオープンループ制御するとともに
(空燃比制御)、キャニスタパージを行うべき運転領域
では運転状態に応じてキャニスタパージを行う(キャニ
スタパージ制御)。
【0030】この空燃比制御においては、エンジンCE
の運転状態が所定のフィードバック領域(例えば、高負
荷領域と高回転領域を除いた領域)に入っていれば実空
燃比の目標空燃比に対する偏差(以下、これを「空燃比
偏差」という。)に基づいてフィードバック制御が行わ
れ、フィードバック領域に入っていなければ空燃比偏差
には基づかないオープンループ制御が行われる。ここで
の空燃比のフィードバック制御の制御手法はおよそ次の
とおりである。
【0031】すなわち、吸入空気量とエンジン回転数と
に応じて燃料噴射弁15の基本パルス幅すなわち基本燃
料噴射量が演算される(ベース演算)。
【0032】そして、他方では空燃比偏差(例えば、目
標空燃比−実空燃比)に基づいてフィードバック補正値
cfbが演算される(ステップS1)。ここで、フィー
ドバック補正値cfbは、中立値すなわち空燃比をいず
れの方向にも補正しない中立的な値が0とされ、cfb
>0のときは空燃比(燃料噴射量)をリッチ方向に補正
し、cfb<0のときには空燃比(燃料噴射量)をリー
ン方向に補正する。
【0033】そして、基本パルス幅とフィードバック補
正量cfbとに基づいて、例えば基本パルス幅にcfb
を加算するなどして、基本パルス幅が空燃比偏差が縮小
する方向に補正されて要求パルス幅すなわち要求燃料噴
射量が演算される(ステップS2)。例えば、実空燃比
が目標空燃比よりもリーンなときはcfb>0となり、
これに伴って燃料噴射量が増量補正され空燃比がリッチ
方向に補正されて空燃比偏差が縮小される。逆に実空燃
比が目標空燃比よりもリッチなときにはcfb<0とな
り、これに伴って燃料噴射量が減量補正され空燃比がリ
ーン方向に補正されて空燃比偏差が縮小される。かくし
て、空燃比偏差に応じて該空燃比偏差をなくすように空
燃比(燃料噴射量)がフィードバック制御される。
【0034】他方、空燃比のオープンループ制御が行わ
れる場合は、フィードバック補正値cfbが0に固定さ
れる。この場合は、基本パルス幅が空燃比偏差に応じて
は何ら補正されずにそのまま要求パルス幅となるので、
フィードバックのないオープンループ制御となる。
【0035】さらに、要求パルス幅すなわち要求燃料噴
射量から、後で説明する蒸発燃料流入量に対応するパル
ス幅(以下、これを「パージ補正パルス幅」という。)
を減算して燃料噴射弁15の実際の噴射パルス幅(以
下、これを「実噴射パルス幅」という。)すなわち実燃
料噴射量(実際の燃料噴射量)が演算される。そして、
この実噴射パルス幅すなわち実燃料噴射量でもって、所
定のタイミングで燃料噴射弁15から燃料が噴射され
る。かくして、実空燃比が目標空燃比に保持される。
【0036】キャニスタパージ制御は、キャニスタパー
ジ条件が成立しているとき例えば水温が所定値(例えば
80℃)以上のときに、よく知られた普通の手法でエン
ジンCEの運転状態に応じて行われる。すなわち、パー
ジバルブ21にエンジンCEの運転状態に応じた駆動デ
ューティ比が印加され、キャニスタパージが行われる。
【0037】トラップ量推定ブロックSMは、キャニス
タパージ時に、エンジン制御ブロックSLのステップS
1で演算されたフィードバック補正値cfbを平均化処
理することにより平均フィードバック補正値cfbav
eを演算し(ステップS3)、さらにこの平均フィード
バック補正値cfbaveに基づいて間接的にトラップ
量を推定する(ステップS4)。すなわち、平均フィー
ドバック補正値cfbaveを、現在把握しているトラ
ップ量(トラップ量推定値)が真のトラップ量よりも大
きいか小さいかを判定する指標として用いることにより
トラップ量を把握する。
【0038】後で説明するように、コントロールユニッ
トCUは、所定の演算式を用いてトラップ量推定値に基
づいて蒸発燃料流入量を演算し、さらに要求燃料噴射量
から蒸発燃料流入量を減算することによって実燃料噴射
量を設定するようにしている。ここで、トラップ量推定
値が正確であればすなわち真のトラップ量と一致してい
れば蒸発燃料流入量が正確に演算されるので、キャニス
タパージによって燃焼室4に供給される蒸発燃料はフィ
ードバック制御の外乱とはならずフィードバック補正値
cfbに特には影響を与えない。この場合、他に大きな
外乱がなければフィードバック補正値cfbは中立値
(すなわち0)を中心にして若干変動するだけであり、
したがって平均フィードバック補正値cfbaveはほ
ぼ中立値0となる。換言すれば、平均フィードバック補
正値cfbaveが0であれば、トラップ量推定値は真
のトラップ量に一致していることになる。
【0039】しかしながら、トラップ量推定値が真のト
ラップ量よりも大きいとこれに伴って蒸発燃料流入量の
演算値が真値よりも大きくなり、したがって実燃料噴射
量が適正値よりも小さくなるので燃焼室4に実際に供給
される燃料が必要とされる燃料量(要求燃料噴射量)よ
りも少なくなり、実空燃比がリーン化する。この場合、
このリーン化を是正するためにフィードバック補正値c
fbがリッチ方向に変化して0より大きくなり、これに
伴って平均フィードバック補正値cfbaveが0より
大きくなる。換言すれば、cfbave>0であれば、
トラップ量推定値は真のトラップ量よりも大であるとい
うことになる。
【0040】なお、前記したとおりフィードバック補正
値cfbは変動するので、トラップ量推定値が真のトラ
ップ量より大であっても必ずしもcfb>0になるとは
限らず、したがってcfb>0であってもトラップ量推
定値が真のトラップ量よりも大であるとは限らない。し
たがって、フィードバック補正値cfbに基づいてトラ
ップ量を推定した場合は、その推定精度は非常に低くな
るものと考えられる。かかる事情に鑑み、この実施の形
態では平均フィードバック補正値cfbaveに基づい
てトラップ量を推定するようにしている。
【0041】逆に、トラップ量推定値が真のトラップ量
よりも小さいとこれに伴って蒸発燃料流入量の演算値が
真値よりも小さくなり、したがって実燃料噴射量が適正
値よりも大きくなるので、燃焼室4に実際に供給される
燃料が必要とされる燃料量(要求燃料噴射量)よりも多
くなり、実空燃比がリッチ化する。この場合、このリッ
チ化を是正するためにフィードバック補正値cfbがリ
ーン方向に変化して0より小さくなり、これに伴って平
均フィードバック補正値cfbaveが0より小さくな
る。換言すれば、cfbave<0であれば、トラップ
量推定値は真のトラップ量よりも小であるということに
なる。
【0042】したがって、最初にトラップ量推定値に適
当な初期値を設定した上で、cfbave>0であれば
トラップ量推定値を所定の補正量σだけ減らし、cfb
ave<0であればトラップ量推定値を補正量σだけ増
やすといった操作を繰り返せば、トラップ量推定値はや
がて真のトラップ量に収束(到達)し、トラップ量が把
握されることになる。かくして、平均フィードバック補
正値cfbaveに基づいてトラップ量が推定される。
【0043】ここで、トラップ量推定値が真のトラップ
量にほぼ一致しているか否か、すなわちトラップ量の推
定がほぼ完了しているか否かは、平均フィードバック補
正値cfbaveの絶対値|cfbave|が所定の限
界値e以下であるか否かで判定するのが好ましい。|c
fbave|が非常に小さければ、トラップ量推定値が
真のトラップにほぼ一致していると考えられるからであ
る。
【0044】このトラップ量の推定手法においては、ト
ラップ量ないしは蒸発燃料パージ量と、フィードバック
補正値cfbないしは平均フィードバック補正値cfb
aveとの間に、前記のような相関性(相関関係)が成
立していることを前提としている。したがって、かかる
相関性が低い状況下あるいは相関性が存在しない状況下
では、トラップ量を高精度で推定することはできない。
このため、上記相関性が低い状況下あるいは相関性が存
在しない状況下では、トラップ量の推定を禁止するのが
好ましい。ここで、上記相関性が低い状況としては、後
で説明するように、例えば充填効率や吸気圧が非常に高
いとき等があげられる。また、上記相関性が存在しない
状況としては、例えばキャニスタパージが停止されてい
るとき、空燃比のフィードバック制御が停止されている
とき(オープンループ制御時)等があげられる。
【0045】なお、上記相関性が低い状況あるいは相関
性がない状況がいくつか重複して存在するときにのみト
ラップ量の推定を禁止するようにしてもよいのはもちろ
んである。
【0046】また、このトラップ量の推定手法において
は、蒸発燃料流入量が正確に把握されていれば、すなわ
ちキャニスタパージによる蒸発燃料の供給がフィードバ
ック補正値cfbに対して影響を与えなければ、フィー
ドバック補正値cfbが中立値0を中心にして変動し、
したがって平均フィードバック補正値cfbaveは中
立値0になるということを前提としている。ところで、
一般に、フィードバック補正値cfbが平均的に中立値
0となるように、制御出力特性すなわち燃料噴射弁の噴
射特性を学習により自動的に補正していくといった空燃
比学習を行うようにしたエンジンが広く用いられている
が、かかる空燃比の学習機能を備えたエンジンでトラッ
プ量を推定する場合は、かかる空燃比学習が終了してか
らトラップ量の推定を行うのが好ましい。けだし、空燃
比学習が終了していれば、キャニスタパージの影響がな
い場合には、平均フィードバック補正値cfbaveが
確実に中立値0になるからである。
【0047】なお、このようにしてトラップ量の推定が
禁止されている期間がある程度以上継続されたときに
は、トラップ量推定値が真のトラップ量からずれている
おそれがあるので、すでにトラップ量の推定が完了して
いると判定されている場合でも該判定を撤回(リセッ
ト)するのが好ましい。
【0048】上記補正量σが大きいときには、推定開始
後においてトラップ量推定値の収束に要する時間、すな
わちトラップ量を推定するのに要する時間を短くするこ
とができるものの、トラップ量推定値の精度が低下す
る。他方、補正量σが小さいときには、トラップ量推定
値の収束に要する時間は長くなるものの、トラップ量推
定値の精度を高めることができる。したがって、収束に
要する時間に対する要求と、トラップ量推定値の精度に
対する要求とが両立するように、補正量σを適切な値に
設定するのが好ましい。
【0049】なお、補正量σは一定値とする必要はな
く、トラップ量の推定中に変化させてもよい。例えば、
トラップ量の推定の進行状況に応じて変化させ、あるい
は平均フィードバック補正値cfbaveの値に応じて
設定してもよい。例えば、トラップ量の推定開始時には
補正量σを大きくして収束を早め、トラップ量推定値が
ある程度収束した後は補正量σを小さくしてトラップ量
推定値の精度を高めるようにしてもよい。また、平均フ
ィードバック補正値cfbaveが大きいときほど補正
量σを大きくすれば、トラップ量推定値が真のトラップ
量からかけ離れているときには収束を早めることがで
き、他方トラップ量推定値が真のトラップ量に近いとき
にはその精度を高めることができる。
【0050】蒸発燃料パージ量演算ブロックSNは、基
本的には、トラップ量推定ブロックSMのステップS4
で推定されたトラップ量推定値に基づいて蒸発燃料放出
量を演算し、さらにこの蒸発燃料放出量に基づいて蒸発
燃料流入量を演算し、この蒸発燃料流入量に相当する燃
料噴射弁15のパルス幅すなわちパージ補正パルス幅を
演算し、このパージ補正パルス幅をエンジン制御ブロッ
クSLに出力する。つまり、フィードフォワード制御
(見込み制御)により、タイムラグを生じさせることな
くひいては空燃比のずれを生じさせることなく空燃比制
御に対するキャニスタパージの影響を補償することにな
る。
【0051】より詳しくは、まずパージ通路20内にお
けるパージバルブ21の前後差圧すなわちパージバルブ
21の直上流側と直下流側との間の圧力差(以下、これ
を「パージバルブ前後差圧」という。)が演算される一
方(ステップS5)、パージバルブ21に印加されてい
る駆動デューティ比からパージバルブ開度(パージSO
L開度)が演算され(ステップS6)、次にこれらのパ
ージバルブ前後差圧とパージバルブ開度とに基づいてパ
ージ空気量(キャニスタ脱気Air量)が演算される
(ステップS7)。
【0052】ここで、パージバルブ前後差圧は、吸気充
填効率に基づいて演算されるようになっているが、この
ようにする理由はおよそ次のとおりである。
【0053】すなわち、吸気圧はよく知られた手法で充
填効率から演算することができ、かつパージバルブ21
の直下流側の圧力は吸気圧とほぼ同一である。他方、パ
ージバルブ21の直上流側の圧力は実質的に一定値(大
気圧)とみなすことができる。そして、パージバルブ前
後差圧はパージバルブ21の直上流側の圧力と直下流側
の圧力の差、すなわち大気圧と吸気圧との差である。し
たがって、充填効率に所定の演算処理を施すことにより
パージバルブ前後差圧を得ることができることになる。
このようにすれば、吸気圧センサを設ける必要がなくな
り、吸気系10が簡素化される。
【0054】なお、パージバルブ21の直下流側の圧力
を吸気圧センサを用いて検出するようにしてもよいのは
もちろんである。また、パージバルブ前後差圧を直接検
出する差圧センサを設けてもよい。
【0055】パージ空気量は、パージバルブ前後差圧と
パージバルブ開度とに基づいて、よく知られた手法で演
算される。
【0056】すなわち、一般に気体の密閉通路に介設さ
れた機器の前後差圧ΔPすなわち圧力損失と、該機器を
流通する気体の流速uとの間には、流体力学の分野でよ
く知られているように一定の関数関係が成立する(例え
ば、ΔP=k・u2)。したがって、前後差圧に基づい
て該機器内における気体の流速を演算することができ
る。そして、この流速に該機器の流通断面積を乗算すれ
ば該流路を流れている気体の体積流量を得ることができ
る。
【0057】したがって、かかる一般原理に鑑みれば、
この実施の形態においては、パージバルブ開度からパー
ジバルブ21の流通断面積を容易に求めることができる
ので、パージバルブ前後差圧とパージバルブ開度(駆動
デューティ比)とに基づいてパージ空気量(体積流量)
を求めることができるわけである。
【0058】なお、パージ空気量を直接検出することが
できる流量検出センサを設け、該流量検出センサでパー
ジ空気量を検出するようにしてもよい。
【0059】そして、ステップS7で演算されたパージ
空気量と、トラップ量推定値とに基づいて蒸発燃料放出
量(パージガス質量流量すなわち蒸発燃料の質量流量)
が演算される(ステップS8)。次に、エンジン回転数
が計測され(ステップS9)、このエンジン回転数とス
テップS8で演算された蒸発燃料放出量とに基づいてパ
ージガス比率が演算される(ステップS10)。ここ
で、パージガス比率とは、キャニスタ17からパージ通
路20に放出された蒸発燃料が、必要とされる全燃料
(要求燃料噴射量)中に閉める比率であって、蒸発燃料
の燃焼への寄与率をあらわしている。
【0060】この後、キャニスタ17から燃焼室4に至
るパージ空気ないしは蒸発燃料の輸送経路(以下、これ
を「蒸発燃料輸送経路」という。)の輸送遅れ特性(吸
入空気量モデル)を設定し(ステップS11)、続いて
ステップS10で演算されたパージガス比率とステップ
S11で設定された吸入空気量モデルとに基づいて正味
パージガス比率が演算される(ステップS12)。この
正味パージガス比率は、燃焼室4に流入する蒸発燃料
が、必要とされる全燃料(要求燃料噴射量)中に占める
比率、すなわち蒸発燃料流入量が要求燃料噴射量に占め
る比率である。したがって、燃料噴射弁15から噴射す
べき燃料量は、要求燃料噴射量に(1−正味パージガス
比率)を乗算したものとなる。
【0061】そして、ステップS12で演算された正味
パージガス比率(蒸発燃料流入量)に相当する燃料噴射
弁15のパルス幅すなわちパージ補正パルス幅が演算さ
れ(ステップS13)、このパージ補正パルス幅が、前
記のエンジン制御ブロックSLに出力される。
【0062】以下、図3〜図8に示すフローチャートに
従って、コントロールユニットCUによる各種制御の制
御手法ないしは各種演算の演算手法について説明する。
【0063】まず、図3に示すフローチャートに従っ
て、該制御手法ないしは演算手法の全体フローすなわち
メインルーチンを説明する。
【0064】このメインルーチンにおいては、まずステ
ップT1で初期化が行われる。具体的には、トラップ量
推定値trapと、空燃比学習完了フラグxlrnd
と、トラップ量推定完了フラグxtraplrnと、ト
ラップ量推定可能フラグxtlexとに夫々初期値とし
て0がセットされる。ここで、空燃比学習フラグxlr
ndは、空燃比学習が完了したときに1がたてられるフ
ラグである。トラップ量推定完了フラグxtraplr
nは、トラップ量の推定が完了したときに1がたてら
れ、トラップ量の推定の禁止が所定時間以上継続された
ときに0にリセットされるフラグである。トラップ量推
定可能フラグxtlexは、トラップ量推定条件が成立
したときに1がたてられ、上記トラップ量推定条件が不
成立となったときに0にリセットされるフラグである。
【0065】次に、ステップT2でエンジン回転数ne
が演算され、続いてステップT3で充填効率ceが演算
される。ここで、充填効率ceは、吸入空気量、エンジ
ン回転数ne、吸気温等に基づいてよく知られた手法で
演算される。
【0066】この後、ステップT4〜ステップT8が順
に実行される。ここで、ステップT4〜T8は、夫々、
後で説明する各種サブルーチンを用いて実行される。具
体的には、ステップT4では、図6にそのフローチャー
トが示されているサブルーチンを用いて燃料噴射量の演
算が行われる。ステップT5では、図8にそのフローチ
ャートが示されているサブルーチンを用いてパージ実行
判定が行われる。ステップT6では、図7にそのフロー
チャートが示されているサブルーチンを用いてパージ量
の演算が行われる。ステップT7では、図5にそのフロ
ーチャートが示されているサブルーチンを用いてトラッ
プ量推定の実行判定が行われる。ステップT8では、図
4にそのフローチャートが示されているサブルーチンを
用いてトラップ量の演算が行われる。この後、ステップ
T2に復帰する。
【0067】以下、各サブルーチンについて具体的に説
明する。
【0068】まず、図4に示すフローチャートに従っ
て、メインルーチンのステップT8で実行(起動)され
るトラップ量演算サブルーチン、すなわちコントロール
ユニットCUによるトラップ量の具体的な推定手法を説
明する。
【0069】このサブルーチンにおいては、まずステッ
プU1で、所定のトラップ量推定条件が成立しているか
否か、すなわちエンジンCEの運転状態がトラップ量を
高精度で推定することが可能な状態にあるか否かが判定
される。ここでは、次の4つの条件がすべて成立してい
るときにはトラップ量推定条件が成立しているものと判
定するようにしている。 (1)キャニスタパージが行われていること。 (2)空燃比のフィードバック制御が行われているこ
と。 (3)充填効率が所定値未満であること。 (4)空燃比学習が完了していること。
【0070】換言すれば、キャニスタパージが禁止され
ているとき、空燃比のフィードバック制御が停止されて
いるとき、充填効率が所定値以上であるとき、又は空燃
比学習が完了していないときには、トラップ量の推定を
禁止するようにしている。このようにする理由は、およ
そ次のとおりである。
【0071】すなわち、前記したとおり、キャニスタパ
ージ又はフィードバック制御が停止されているときは、
トラップ量とフィードバック補正値ないし平均フィード
バック補正値との間に相関性が存在せず、したがってト
ラップ量を推定することができないのでトラップ量の推
定を禁止するようにしている。
【0072】充填効率ないし吸気圧が非常に高いときに
は、パージバルブ前後差圧が非常に小さくなるとともに
吸気脈動が激しくなりフィードバック補正値が変動し、
このためパージ空気量を高精度で演算することができな
くなるので、トラップ量の推定を禁止するようにしてい
る。
【0073】さらに、空燃比学習が完了した後でトラッ
プ量の推定を行うようにしているのは、前記したとお
り、空燃比学習が完了した後はトラップ量の推定精度が
非常に高くなるからである。
【0074】かくして、ステップU1でトラップ量推定
条件が成立していると判定された場合は、ステップU2
でトラップ量推定可能フラグxtlexに1がたてられ
るとともに、トラップ量推定禁止カウンタctに初期値
ct0がセットされる。トラップ量推定禁止カウンタc
tは、トラップ量推定条件が不成立となってトラップ量
の推定が禁止されている期間(時間)をカウントするた
めのカウンタである。
【0075】続いて、ステップU3で、次の式1により
平均フィードバック補正値cfbaveが演算されると
ともに、平均フィードバック補正値cfbaveの演算
回数をカウントするための演算回数カウンタpが1だけ
インクリメントされる(p=p+1)。すなわち、リニ
ア02センサ9を用いたこのエンジンでは、一定時間毎
のフィードバック補正値の相加平均値が平均フィードバ
ック補正値cfbaveとされている。
【0076】
【数1】 次に、ステップU4で演算回数カウンタpが所定の設定
値p0以上であるか否かが判定され、p<p0であると
判定された場合は、以下の全ステップをスキップし、す
なわちトラップ量の推定を行わずにステップU1に復帰
する。このトラップ量演算サブルーチンでは、演算回数
カウンタpのカウント値が設定値p0未満の場合は、平
均フィードバック補正値cfbaveがまだ十分には安
定していないものと考えられるので(フィードバック補
正値cfbの変動の影響が残っている)トラップ量学習
の完了判定を行わないようにしている。
【0077】他方、ステップU4でp≧p0であると判
定された場合は、ステップU5で平均フィードバック補
正値cfbaveの絶対値|cfbave|が所定の限
界値e以上であるか否かが判定される。
【0078】ここでは|cfbave|<eであればト
ラップ量の推定が完了しているものと判定し、この場合
はトラップ量推定値が真のトラップ量とほぼ一致してい
るものと考えられるので、この現時点におけるトラップ
量推定値trapを変化させずにそのまま保持するよう
にしている。
【0079】例えば、図9に模式的に示すように、真の
トラップ量がa2である場合、トラップ量推定値tra
pがa1〜a3の範囲内に入ったときにトラップ量の推
定が完了しているものと判定されることになる。なお、
図9においてグラフG1は|cfbave|をあらわし
ている。また、trap>a2の範囲内ではcfbav
e>0であり、trap<a2の範囲内ではcfbav
e<0である。
【0080】他方、cfbave≧eであれば平均フィ
ードバック補正値cfbaveが0以下であるか又は0
より大きいかに応じてトラップ量推定値trapを補正
量σだけ増加又は減少させ、トラップ量推定値trap
を真のトラップ量に近付けるようにしている。なお、補
正量σの設定方法は前に説明したとおりである。
【0081】具体的には、ステップU5で|cfbav
e|<eであると判定された場合は、ステップU9でト
ラップ量推定完了フラグxtraplrnに1がたてら
れる。他方、ステップU5で|cfbave|≧εであ
ると判定された場合は、ステップU6でcfbaveが
0以下であるか否かが判定される。ここで、cfbav
e≦0であると判定された場合は、ステップU7でトラ
ップ量推定値trapが補正量σだけ増やされ(tra
p=trap+σ)、他方cfbave>0であると判
定された場合は、ステップU8でトラップ量推定値tr
apが補正量σだけ減らされる(trap=trap−
σ)。
【0082】ところで、前記のステップU1でトラップ
量推定条件が成立していないと判定された場合は、ステ
ップU10でトラップ量推定禁止カウンタctが1だけ
デクリメントされてトラップ量の推定が禁止されている
期間(時間)のカウントが開始されるとともに(ct=
ct−1)、演算回数カウンタpが0にリセットされる
(p=0)。
【0083】次に、ステップU11でトラップ量推定禁
止カウンタctが0以下であるか否か、すなわちトラッ
プ量の推定が禁止された後所定時間ct0が経過したか
否かが判定され、ct≦0であると判定された場合は、
すでにct0を経過しているのでステップU12でトラ
ップ量推定完了フラグxtraplrnが0にリセット
される。この場合は、前記したとおり、トラップ量推定
値trapがトラップ量からずれているおそれがあるの
で、トラップ量推定完了フラグtraplrnをリセッ
トするようにしている。他方、ステップU11でct>
0であると判定された場合は、まだct0を経過してい
ないのでステップU12をスキップする。
【0084】図10に、かかるトラップ量推定ルーチン
が実行された場合において、時刻t1でキャニスタパー
ジが開始されたときの、パージバルブ21に印加される
駆動デューティ比dpg(グラフG2)、フィードバッ
ク補正値cfb(グラフG3)、平均フィードバック補
正値cfbave(グラフG4)及びトラップ量推定値
trap(グラフG5)の経時変化の一例を示す。
【0085】図10から明らかなとおり、トラップ量推
定値trapは時刻t1から推定が開始され、まもなく
一定値に収束している。このようにして、トラップ量が
高精度で推定される。
【0086】なお、この図4に示すトラップ量演算サブ
ルーチンでは、ステップU3で、前記したとおり、一定
時間のフィードバック補正値cfbの相加平均が平均フ
ィードバック補正値cfbaveとされているが、この
ようにせず、例えば次の式2を用いてフィードバック補
正値cfbを重み付けした加重平均値すなわちなまし値
を求めて、この加重平均値を平均フィードバック補正値
cfbaveとしてもよい。
【0087】
【数2】 ところで、コントロールユニットCUが空燃比の学習機
能を備えている場合は、前に説明したとおり、空燃比学
習が終了した後でトラップ量の推定を行うのが好まし
い。なお、空燃比学習が終了した後でトラップ量の推定
を行う場合の利点は前に説明したとおりである。
【0088】以下、図5に示すフローチャートに従っ
て、メインルーチンのステップT7で実行(起動)され
るトラップ量推定実行判定サブルーチン、すなわち空燃
比の学習機能を備えている場合の好ましいトラップ量の
推定手法を説明する。
【0089】このサブルーチンでは、基本的にはアイド
ル時において所定の空燃比学習条件が成立しているとき
に空燃比学習を行う一方、該空燃比学習が終了した後に
おいて所定のトラップ量推定条件が成立しているときに
トラップ量の推定を行うようにしている。
【0090】具体的には、図5に示すように、まずステ
ップU21でアイドル判定フラグxidlが1であるか
否かが判定される。アイドル判定フラグxidlは、エ
ンジンCEがアイドル状態にあるときには1がたてら
れ、オフアイドル状態(非アイドル状態)にあるときに
は0にリセットされるフラグである。ここで、xidl
=1であると判定された場合は、ステップU22〜ステ
ップU28の空燃比学習を行うためのアイドル時用ルー
チンが実行される。他方、xidl≠1(xidl=
0)であると判定された場合は、ステップU29で空燃
比学習実行カウンタclrnとアイドル継続時間カウン
タtidlとが夫々0にリセットされた後、後で説明す
るステップU30が実行されることになる。
【0091】アイドル時用ルーチンが実行される場合
は、まずステップU22とステップU23とで、順に、
空燃比フィードバック制御実行フラグxfbが1である
か否かと、アイドル継続時間カウンタtidlが所定値
αを超えているか否かとが判定される。ここで、空燃比
フィードバック制御実行フラグxfbは空燃比のフィー
ドバック制御が行われているときには1がたてられ、フ
ィードバック制御が行われていないとき(オープンルー
プ制御時)には0にリセットされるフラグである。ま
た、アイドル継続時間カウンタtidlは、アイドル時
におけるアイドル運転開始後の経過時間をカウントする
ためのカウンタである。
【0092】このトラップ量推定実行判定サブルーチン
では、アイドル時における空燃比のフィードバック制御
時において、アイドル運転継続時間が所定期間α以下の
場合は、エンジンCEが安定したアイドル状態に達して
いないものと考えられるので、空燃比学習を行わないよ
うにしている。
【0093】かくして、ステップU22でxfb≠1
(xfb=0)であると判定された場合は、空燃比学習
を行うことができないので、ステップU23〜ステップ
U28は実行されず、前記のステップU29で空燃比実
行カウンタclrnとアイドル継続時間カウンタtid
lとが夫々0にリセットされた後、ステップU30が実
行される。
【0094】また、ステップU22でxfb=1である
と判定された場合、すなわちフィードバック制御時であ
っても、ステップU23でtidl≦αであると判定さ
れた場合は、やはり空燃比学習を行うことができないの
で、ステップU27で、アイドル継続時間カウンタti
dlが1だけインクリメントされた後(tidl=ti
dl+1)、ステップU30が実行される。
【0095】他方、ステップU23でtidl>αであ
ると判定された場合は、ステップU24で空燃比学習実
行カウンタclrnが所定値β未満であるか否かが判定
される。空燃比学習実行カウンタclrnは、アイドル
運転開始後において空燃比学習が実行された回数をカウ
ントするためのカウンタである。ここでは、空燃比学習
の実行回数が4回(β=4)以上となったときに空燃比
学習が終了しているものと判定するようにしている。
【0096】かくして、ステップU24でclrn<β
であると判定された場合は、まだ空燃比学習が終了して
いないのでステップU25で空燃比学習が継続され、続
いてステップU26で空燃比学習実行カウンタclrn
が1だけインクリメントされ(clrn=clrn+
1)、この後ステップU30が実行される。なお、空燃
比学習は、空燃比偏差が0のときにはフィードバック補
正値cfbが平均的には中立値0となるように、燃料噴
射弁15の噴射特性を変化させるなどといった普通の手
法で行われる。
【0097】他方、ステップU24でclrn≧βであ
ると判定された場合は、空燃比学習が終了しているので
ステップU28で空燃比学習完了フラグxlrndに1
がたてられ、この後ステップU30が実行される。
【0098】かくして、ステップU30〜ステップU3
3では、トラップ推定条件が成立しているか否かが判定
される。ここで、次の4つの条件がすべて成立している
ときには、トラップ量推定条件が成立しているものと判
定し、これらのうちのいずれか1つでも不成立であれば
トラップ量推定条件が不成立であると判定するようにし
ている。 (1)キャニスタパージが行われていること。 (2)空燃比のフィードバック制御が行われているこ
と。 (3)充填効率(または吸気圧)が所定値未満であるこ
と。 (4)空燃比学習が完了(終了)していること。
【0099】これらの4つの条件(1)〜(4)を設け
る理由は、図4にフローチャートを示している前記トラ
ップ量演算サブルーチンのステップU1の場合と同様で
ある。
【0100】具体的にはステップU30〜ステップU3
3の4つのステップで、順に、パージ実行フラグxpg
が1であるか否か、すなわちキャニスタパージが行われ
ているか否かと、空燃比フィードバック制御実行フラグ
xfbが1であるか否か、すなわち空燃比のフィードバ
ック制御が行われているか否かと、充填効率ceが所定
値γ未満であるか否かと、空燃比学習完了フラグxlr
ndが1であるか否か、すなわち空燃比学習が終了して
いるか否かと判定される。
【0101】ここで、xpg=1であり、xfb=1で
あり、ce<γであり、かつxlrnd=1であると判
定された場合は(ステップU30〜ステップU33がす
べてYES)、ステップU34でトラップ量推定条件が
成立しているものと判定され、この場合は図4にフロー
チャートを示す前記のトラップ量演算サブルーチンでト
ラップ量が推定されることになる。
【0102】他方、xpg=0であるか、xfb=0で
あるか、ce≧γであるか、又はxlrnd=0である
と判定された場合は(ステップU30〜ステップU33
のいずれか1つがNO)、トラップ量推定条件が成立し
ていないので、ステップU34をスキップする。
【0103】このように図5にフローチャートを示すこ
のトラップ量推定手法によれば、空燃比学習が終了した
後でトラップ量が推定されるので、トラップ量の推定精
度が大幅に高められる。
【0104】以下、図6に示すフローチャートに従っ
て、メインルーチンのステップT4で実行(起動)され
る燃料噴射量演算サブルーチン、すなわちコントロール
ユニットCUによるパージガス比率(蒸発燃料放出量)
及び正味パージガス比率(蒸発燃料流入量)の演算手法
と、空燃比制御(燃料噴射量制御)の制御手法とについ
て具体的に説明する。
【0105】この燃料噴射量演算サブルーチンでは、ス
テップU41〜ステップU47が順に実行される。
【0106】ステップU41では、吸気充填効率ceに
基づいて、パージバルブ前後差圧dpが、これらceと
dpとの相互関係をあらわす関数f1(ce)を用いて
演算される。吸気充填効率ceに基づいてパージバルブ
前後差圧dpを演算することができる所以は前に説明し
たとおりである。
【0107】ステップU42では、パージバルブ前後差
圧dpとパージバルブ21に印加される駆動デューティ
比dpgとに基づいて、パージ空気量qpgが、これら
dpg、dp及びqpgの相互関係をあらわす関数f2
(dpg,dp)を用いて演算される。駆動デューティ
比dpgとパージバルブ前後差圧dpとに基づいてパー
ジ空気量qpgを演算することができる所以は前に説明
したとおりである。
【0108】ステップU43では、パージ空気量qpg
とトラップ量trapとに基づいて、蒸発燃料放出量g
pgが、これらqpg、trap及びgpgの相互関係
をあらわす関数f3(qpg,trap)を用いて演算
ざれる。
【0109】ステップU44では、次の式3によりパー
ジガス比率cpgoが演算される。
【0110】
【数3】 なお、式3において、120/(γ0・Vc・ne)
は、単位時間(秒)当たりの燃焼室4への吸入空気量
(質量流量)の逆数であり、したがってこれに換算係数
Ysを乗算したYs・120/(γ0・Vc・ne)は
単位時間あたりの要求燃料噴射量の逆数である。したが
って、パージガス比率cpgoは、蒸発燃料放出量を要
求燃料噴射量で除算した値、すなわち蒸発燃料放出量の
全燃料流量に対する比率である。
【0111】ステップU45では、次の式4により正味
パージガス比率cpgが演算される。
【0112】
【数4】 式4は蒸発燃料輸送経路の輸送遅れ特性をあらわすモデ
ル式である。エンジンCEの吸気系10及びパージ通路
20の形状に応じて好ましく一次フィルタ係数λを設定
することにより、式4を用いて正味パージガス比率cp
g(蒸発燃料流入量)を正確に演算することができる。
【0113】ステップU46では、次の式5により実パ
ルス幅ta(実燃料噴射量)すなわち燃料噴射弁15か
ら実際に噴射すべき燃料噴射量が演算される。
【0114】
【数5】 式5において、K・ce・ctotalは要求パルス幅
(要求燃料噴射量)すなわち燃焼室4で実際に必要とさ
れる燃料量をあらわしている。また、K・cpgはパー
ジによる供給燃料量を噴射パルス幅相当に換算したもの
である。したがって、式5では燃料噴射弁15から実際
に噴射すべき燃料量(実燃料噴射量)に対応する噴射パ
ルス幅すなわち実パルス幅taが演算されることにな
る。
【0115】ステップU47では、ステップU46で演
算された実パルス幅taで燃料噴射弁15から燃料が噴
射され、この後ステップU41に復帰する。このように
して燃焼室4には、キャニスタパージを行っているとき
でも、運転状態に応じて必要とされる量の燃料が正確に
供給され、空燃比制御(燃料噴射量制御)の制御精度が
高められ、実空燃比が目標値に保持される。この場合、
運転状態に応じて要求燃料噴射量を決定するプロセスす
なわち空燃比制御本体はフィードバック制御であるが、
要求燃料噴射量から蒸発燃料流入量を差し引いてキャニ
スタパージによる影響を排除するプロセスはフィードフ
ォワード制御である。したがって、正味パージガス比率
ないしは蒸発燃料流入量の演算にはタイムラグが伴わな
い。このため、キャニスタパージに起因する実空燃比の
目標値に対するずれは生じない。
【0116】このように、エンジンCEにおいては、ト
ラップ量を推定し、該トラップ量に基づいて蒸発燃料流
入量(正味パージガス比率)を正確に演算し、要求燃料
噴射量から蒸発燃料流入量を差し引いて実燃料噴射量を
設定するようにしているので、キャニスタパージによっ
て吸気系10ないしは燃焼室4に流入する蒸発燃料が空
燃比のフィードバック制御の外乱とはならない。このた
め、トラップ量の推定が完了しているときにはキャニス
タパージによっては空燃比の目標値に対するずれは生じ
ない。
【0117】以下、図7に示すフローチャートに従っ
て、メインルーチンのステップT6で実行(起動)され
るパージ量演算サブルーチン、すなわちパージバルブ2
1の駆動デューティ比の制御方法を説明する。
【0118】このサブルーチンでは、まずステップU5
1で、パージ実行フラグxpgが1であるか否かを判定
し、1でなければステップU52とU53とで、それぞ
れパージ補正係数cpmodと、パージ減量フラグxp
gdとを0にセットしたうえで、ステップU54に進
み、パージバルブ21の駆動デューティ比dpgを次の
式6により演算する。
【0119】
【数6】 すなわち、エンジン回転数neと吸気充填効率ceとか
ら関数f4に基づいて目標デューティ比を求め、これに
パージ補正係数cpmodを乗算するのである。これに
より、パージ実行フラグxpgが1でない場合は、パー
ジ補正係数cpmodが0であるから駆動デューティ比
dpgが0となり、パージは実行されない。
【0120】後述するように、パージ補正係数cpmo
dは、駆動デューティ比dpgを目標デューティ比に向
けて増大させたり又は低減させるために、0以上1以下
の間で、増分(増加勾配)KM1,KM2もしくはKM
4で増加又は減分(減少勾配)KM3で減少する値であ
る(パージ補正係数cpmodが1のときに駆動デュー
ティ比dpgが目標デューティ比となる。)。また、パ
ージ減量フラグxpgdは、パージ補正係数cpmod
がいったん減少されると1がたてられるフラグである。
【0121】以下、上記ステップU51でパージ実行フ
ラグxpgが1である場合、すなわちキャニスタパージ
が実行される場合について説明していくこととする。
【0122】まず、キャニスタパージが実行される場合
は、ステップU55において次の判定式7に従い、正味
パージガス比率cpgを吸気充填効率ceで除算した値
(cpg/ce)が、所定値(図例では30%)にフィ
ードバック補正値cfb分を加算した値(30%+cf
b)より大きいか否かを判定し、YESのときはステッ
プU56に進むが、NOのときには、さらにステップU
57おいて次の判定式8に従い、上記値(cpg/c
e)が、28%にフィードバック補正値cfb分を加算
した値(28%+cfb)より小さいか否かを判定す
る。そしてYESの場合はステップU58に進み、NO
の場合は上記ステップU56に戻る。
【0123】
【数7】
【0124】
【数8】 ここでは、「特許請求の範囲」にいうところの「蒸発燃
料のパージ量の全燃料要求量中に占める割合が所定値以
上」か否かを判定しているのである。前述の式5におい
て、「蒸発燃料のパージ量」は(cpg−ce・cf
b)に相当し、「全燃料要求量」は、ceに相当する。
したがって、「蒸発燃料のパージ量の全燃料要求量中に
占める割合が所定値(30%)以上」か否かの上記判定
式7が、次のようにして導かれる。
【0125】
【数9】 このときcfbが0であれば、判定用所定値は30%そ
のものとなる。つまり、フィードバック補正値cfbが
有意な値をもっており、パージ量の推定が完了していな
い過渡期には、該フィードバック補正値cfbを考慮し
て判定することになる。ステップU57における判定式
8も同様にして導かれる。そして、これらのステップU
55とステップU57とで、ヒステリシスが設けられ、
制御のハンチングが防止されることになる。
【0126】上記ステップU57でYESのときは、ス
テップU58に進んで、上記パージ補正係数cpmod
が1か否かを判定する。そして、NOであればステップ
U59でパージ減量フラグxpgdが1か否かを判定す
る。そして、NOのとき、つまり、パージ補正係数cp
modが1以下で、いまだ該パージ補正係数cpmod
を減少させたことがなく、しかもパージ量の割合が少な
い場合は、ステップU60に進んで、トラップ量の推定
が完了しているかどうかをみて、完了している場合は、
ステップU61でパージ補正係数cpmodの増分(増
加勾配)SPをKM1とし、また完了していない場合
は、ステップU62でパージ補正係数cpmodの増分
SPをKM2とする。その場合に、KM1の方がKM2
より大きく設定されている。
【0127】そして、次にステップU63において、パ
ージ補正係数cpmodをこの増分SPで1にまで増大
させる。これにより、図11に示すように、パージ開始
直後において、トラップ量推定が完了している場合は、
空燃比制御に乱れが生じる虞がないので、比較的速やか
にパージ補正係数cpmodが増大される(鎖線)。一
方、トラップ量推定が完了していない場合は、空燃比制
御の乱れを回避するために、比較的徐々にパージ補正係
数cpmodが増大される。そして、上記ステップU5
4で、このパージ補正係数cpmodからパージバルブ
21の駆動デューティ比dpgが算出される。
【0128】パージ量の割合が所定値を超えているとき
は、ステップU56に進んで、パージ補正係数cpmo
dを減分(減少勾配)KM3で0にまで減少させる。ま
た次のステップU64でパージ減量フラグxpgdに1
をたてる。これにより、図11に示すように、パージ補
正係数cpmodが減分(減少勾配)KM3で減少され
ることになる。この減少は、パージ量の割合が28%を
下回るまで行なわれる(ステップU57)。また、KM
3はKM2より小さく設定されている。
【0129】上記ステップU58でパージ補正係数cp
modが1と判定されたときは、ステップU65に進
み、パージ減量フラグxpgdをリセットして、ステッ
プU54で駆動デューティ比dpgを算出する。この場
合は、パージバルブ21が目標デューティ比dpgで制
御されることになる。
【0130】また、上記ステップU59でパージ減量フ
ラグxpgdが1と判定されたときは、ステップU66
に進み、パージ補正係数cpmodの増分(増加勾配)
SPをKM4とする。その場合に、KM4が上記KM1
〜KM3のいずれよりも小さく設定されている。これに
より、図11に示すように、一度パージ量の割合が所定
値を超えて、パージ補正係数cpmodが減少されたと
きは、慎重にパージ補正係数cpmodが増大されるこ
とになる。
【0131】以下、図8に示すフローチャートに従っ
て、メインルーチンのステップT5で実行(起動)され
るパージ実行判定サブルーチンの好ましい実施の形態に
ついて説明する。
【0132】このパージ実行判定サブルーチンにおいて
は、まずステップU71でパージ実行可能か否かが判定
され、NOのときはステップU76に進んでパージ実行
フラグxpgに0がセットされる。なお、ここでは、水
温が80℃以上である場合において、エンジンCEの運
転状態がフィードバックゾーン又はエンリッチゾーンに
あるときは、パージ実行可能とされている。
【0133】一方、ステップU71でパージ実行可能で
あると判定された場合は、ステップU72でアイドル判
定フラグxidlが1か否か、すなわちアイドル時であ
るか否かが判定され、アイドル時でなければステップU
75でパージ実行フラグxpgに1がセットされる。
【0134】ステップU72でアイドル時であると判定
された場合は、ステップU73とステップU74とで、
それぞれ、空燃比学習が完了しているか、トラップ量の
推定が完了しているかを判定し、いずれも完了している
場合にのみ、パージ実行を許可する。なお、その場合
に、空燃比学習のみが完了している場合はパージ実行を
許可するようにしてもよい。トラップ量の推定が完了し
ていない場合の影響への対応が、上記ステップT6でな
されているからである。
【0135】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、蒸発燃料
を所定量だけ吸気系にパージすることができ、該蒸発燃
料のパージ量の全燃料要求量中に占める割合が所定値以
上となったときに、該蒸発燃料のパージ量を制限するの
で、蒸発燃料の各気筒への配分率がバラつく等のエンジ
ン安定性に対する影響を希釈化することができる。その
場合に、パージ量の割合をフィードバック補正値を考慮
して演算するので、蒸発燃料のパージ量の制限を精度よ
く行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る制御装置を備えたエンジンのシ
ステム構成図である。
【図2】 コントロールユニットの構成を機能化して示
したブロック構成図である。
【図3】 コントロールユニットによるエンジン制御の
メインルーチンのフローチャート図である。
【図4】 ステップT8のサブルーティンのフローチャ
ート図である。
【図5】 ステップT7のサブルーティンのフローチャ
ート図である。
【図6】 ステップT4のサブルーティンのフローチャ
ート図である。
【図7】 ステップT6のサブルーティンのフローチャ
ート図である。
【図8】 ステップT5のサブルーティンのフローチャ
ート図である。
【図9】 平均フィードバック補正値と蒸発燃料トラッ
プ量との関係を示す説明図である。
【図10】 駆動デューティ比、フィードバック補正
値、平均フィードバック補正値及びトラップ量推定値の
経時変化の一例を示す説明図である。
【図11】 本発明による作用を示す説明図である。
【符号の説明】
CE エンジン CU コントロールユニット 1 気筒 9 リニアO2センサ 10 吸気系 15 燃料噴射弁 17 キャニスタ 20 パージ通路 21 パージバルブ
フロントページの続き (72)発明者 井上 晋 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃料タンクにおける蒸発燃料を捕集して
    該蒸発燃料を吸気系にパージすると共に、その蒸発燃料
    のパージ量を学習して推定することにより、該蒸発燃料
    を所定量だけ吸気系にパージすることのできる蒸発燃料
    パージ手段と、該蒸発燃料パージ手段でパージされる蒸
    発燃料のパージ量を全燃料要求量から減算することによ
    り、燃料噴射弁から噴射させる燃料噴射量を設定する燃
    料噴射量設定手段と、該燃料噴射量設定手段で設定され
    る燃料噴射量を空燃比が目標空燃比となるようにフィー
    ドバック制御する燃料噴射量制御手段とが設けられて、
    上記蒸発燃料パージ手段が、蒸発燃料のパージ量の全燃
    料要求量中に占める割合が所定値以上となったときに、
    該蒸発燃料のパージ量を制限することを特徴とするエン
    ジンの制御装置。
  2. 【請求項2】 蒸発燃料パージ手段による蒸発燃料のパ
    ージ量の制限は、蒸発燃料のパージ量が増加しないよう
    に該蒸発燃料をパージすることであることを特徴とする
    請求項1に記載のエンジンの制御装置。
  3. 【請求項3】 蒸発燃料パージ手段による蒸発燃料のパ
    ージ量の制限は、蒸発燃料のパージ量が減少するように
    該蒸発燃料をパージすることであることを特徴とする請
    求項1に記載のエンジンの制御装置。
  4. 【請求項4】 蒸発燃料パージ手段は、空燃比と目標空
    燃比との偏差に応じて燃料噴射量制御手段で設定される
    フィードバック補正値に基づいて蒸発燃料のパージ量を
    推定すると共に、このパージ量の推定が完了していない
    場合には、蒸発燃料のパージ量の全燃料要求量中に占め
    る割合を上記フィードバック補正値を考慮して演算する
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに
    記載のエンジンの制御装置。
JP7290499A 1995-10-11 1995-10-11 エンジンの制御装置 Pending JPH09105347A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6668808B2 (en) 2001-05-22 2003-12-30 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Controller for controlling an evaporated fuel amount to be purged
JP2018066351A (ja) * 2016-10-21 2018-04-26 マツダ株式会社 エンジンの蒸発燃料処理装置

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6668808B2 (en) 2001-05-22 2003-12-30 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Controller for controlling an evaporated fuel amount to be purged
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