JP3579074B2 - 薄膜蒸着装置および薄膜蒸着方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、被蒸着物の外周面に蒸着薄膜を形成する薄膜蒸着装置および薄膜蒸着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、被蒸着物の外周面に均一な蒸着薄膜を形成する薄膜蒸着装置としては実開平4−44358号公報記載の自公転治具付蒸着装置が知られる。
この蒸着装置は、真空容器と、真空容器内に配置された蒸着源と、蒸着源の蒸着法線を公転中心にして公転可能に配置された公転リング部材と、該公転中心から放射状に整列した自転軸に沿って被蒸着物を保持するとともに公転平面に対する自転軸の傾斜角が調整可能な状態で自転軸端において係止されている自転シャフトを設け、環状傾斜案内面を外周に形成した静止案内リングを前記公転リング部材の内側に配置するとともに、該環状傾斜案内面に対して回転可能に当接する自転フランジを前記自転シャフトに固着して構成されている。
【0003】
前記従来の蒸着装置にあっては、複数の被蒸着物を自転シャフトに挿通して等間隔に保持固定し、モーターより回転力を伝達されたピニオンを介して公転リング部材を公転させると、公転リング部材に係止されている自転シャフトは公転リングと共に移動し、静止案内リングの環状傾斜案内面に当接している自転フランジが回転する。これにより、自転シャフトは自転を行い、自転シャフトと共に回転する被蒸着物の外周の蒸着面に薄膜が蒸着される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の蒸着装置によると、被蒸着物を自転シャフトに挿通して保持する必要があるため、被蒸着物は中央に穴の開いたリング状の構造でなければならず、穴の開いていない形状の被蒸着物あるいは穴を開けることができない被蒸着物は保持不可能であり、加工ができないという問題点があった。
また、自転シャフトの軸方向に被蒸着物を多数個保持して加工する場合、その各被蒸着物は蒸着源に対して均等な距離に保持されないため、自転シャフトの軸方向に保持された各被蒸着物には原理上、同じ膜厚の蒸着薄膜を形成することができない問題点があった。
さらに、放射線状に配設された自転シャフトに保持された被蒸着物の隙間より蒸着物質が飛散して蒸着装置内に積層し易く、積層した蒸着物質は真空槽内でゴミ・ホコリとなり、それが蒸着面に付着し蒸着薄膜の品質を低下させる恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、被蒸着物の形状に制限が無く、多数個に対して同時に蒸着しても各被蒸着物の蒸着面となる外周面に均一な蒸着薄膜を形成することができ、高品質な薄膜形成を可能とした薄膜蒸着装置および薄膜蒸着方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、本発明の薄膜蒸着装置は、真空蒸着槽内で、天井側の被蒸着物に下方側の蒸着源から蒸着物質を蒸着させて薄膜を形成する薄膜蒸着装置において、
被蒸着物の外周面が露出する状態で非蒸着面の全面を覆って、該被蒸着物の回転軸と同一軸線上で対向配置した押さえ部材と受け部材で押圧し保持するとともに、この状態で被蒸着物の外周面回りに被蒸着物を回転させるよう従動側回転部材を設けて一組としたワーク保持機構と、
前記組として保持された被蒸着物の外周面を前記蒸着源に向けた状態で搭載する複数のワーク保持機構の搭載部を設けた球状部を天井側に有し、前記蒸着源の周囲を回転自在な球状ドームと、
前記ドームを回転させる回転手段と、
前記回転手段によるドームの回転により前記組として保持されている被蒸着物の外周面が蒸着源側に順次向くように前記ワーク保持機構の従動側回転部材を回転させて被蒸着物を回転させる前記真空蒸着槽内に設けた固定部材と、
を具備して構成した。
また、上記の薄膜蒸着装置では、前記一組としたワーク保持機構は、被蒸着物の外周面が露出する状態で非蒸着面の全面を覆って、該被蒸着物の回転軸と同一軸線上で対向配置した押さえ部材と受け部材で保持した状態にて、被蒸着物を平行に複数保持することとして構成した。
また、本発明の薄膜蒸着方法は、被蒸着物となるワークの外周面が露出する状態で非蒸着面の全面を覆って、該ワークの回転軸と同一軸線上で対向配置した押さえ部材と受け部材で保持するとともに、ワークと押さえ部材と受け部材とが前記同一軸線でワークの外周面回りに回転するように設けた従動側回転部材で一組のワーク保持手段を構成し、
このワーク保持手段で保持したワークの外周面が真空蒸着槽内の蒸着源側に向くように、真空蒸着槽内で蒸着源に対向して配置されるドームの天井側の搭載部に前記一組としたワーク保持手段を位置決めして搭載し、
その後、前記蒸着源に対してドームの回転手段によりドームを回転させ、前記蒸着源に対してドームの天井側に搭載されたワーク保持手段をドーム回転方向に移動させるとともに、ドームの回転によりワーク保持手段の従動側回転部材を回転させてワークの外周面が蒸着源側に順次に向くようにワークを回転させ、
これによりワークの外周面の全周に蒸着物質を成膜するように構成した。
【0007】
【作用】
上記構成の薄膜蒸着装置によれば、球状ドームが蒸着源の周囲を回転する際、非蒸着面の全面を覆って、被蒸着物の外周面が前記蒸着源側に向くように、この被蒸着物を押圧し保持したワーク保持機構が球状ドームと共に球状ドームの回転方向に移動し、ワーク保持機構に保持した被蒸着物は、その外周面を蒸着源に向けた状態で回転され、多面体の外周面への蒸着も可能になる。また、球状ドームの球状部にワーク保持機構を取り付けるとともに、この球状ドームを回転することで、球状ドームに搭載した複数のワーク保持機構に回転自在に押圧挟持した被蒸着物の外周面と蒸着源との距離が一様になり、被蒸着物の外周面に均一な薄膜を形成することができる。
また、上記構成の薄膜蒸着装置によれば、ワーク保持機構が被蒸着物を平行に複数保持すると、効率の良い蒸着を行うことができる。
また、上記構成の薄膜蒸着方法によれば、被蒸着物となるワークの外周面が蒸着源側に向いた状態でこの蒸着源に対して回転移動し、そしてワークの外周面が前記蒸着源側に順次に向くようにワークが回転するので、多面体の外周面への蒸着も可能になり、またワークの外周面に均一に薄膜を形成することができる。
【0008】
【実施例1】
図1は本発明に係る薄膜蒸着装置の実施例1を概略的に示す構成図、図2は本実施例の薄膜蒸着装置の被蒸着物(ワークとなる)を保持するワーク保持手段としてのワーク保持機構を示す断面図であり、図3は被蒸着物を示す斜視図である。
図1において、1は薄膜蒸着装置Sの真空蒸着槽であって、その内部に蒸着源2、天井側が球状となったドームである球状ドーム3等が設けられている。
【0009】
球状ドーム3は、球状部(天井側)3aと側壁部3bとから構成されており、球状部3aの表面のどの位置においても蒸着源2からの距離が等しいように製作、配置されている。すなわち、蒸着源2は球状ドーム3の球状部3aの球芯に配置されている。
【0010】
側壁部3bは円筒状に形成されており、その下端部分はリング状の支持部材4によって回転自在かつ上下動自在に保持されている。支持部材4は、モータ5による調節機構によって上下動自在に設けられている。また、側壁部3bの外周には歯車6が周設されており、この歯車6にはモータ7の回転軸に固着した駆動歯車8が噛み合わされている。
【0011】
球状部3aは、側壁部3bの上端部に設けられている。球状部3aの球面部には複数個(図1では2個示してある)の開口部9が設けられ、この開口部9にワーク保持機構Hが着脱自在に装着されている。なお、側壁部3bは円筒状に構成した場合を挙げたが、複数本に支柱にて球状部3aを支持し、この支柱間で形成される空間をカバーで囲んで構成してもよい。
【0012】
ワーク保持機構Hは、図2に示すように、箱体10と、被蒸着物25を押圧挟持する押さえ部材11および受け部材12と、受け部材12の押圧部材13と、従動歯車14等から構成されている。
【0013】
箱体10は、一側面(図においては下側面)に開口部15を設けた断面凹状に形成されている。また、箱体10には、前記開口部9と係合する段差部10aが開口部15側の外側面に複数箇所設けられており、この段差部10aと前記球状部3aの開口部9とを係合することにより、ワーク保持機構Hが自重および箱体10の上記係合により、その位置で球状ドーム3の球状部3aに位置決めされるようになっている。
【0014】
押さえ部材11と受け部材12は、被蒸着物25を挟持する押圧挟持部11a、12aと軸部11b、12bが一体に形成されてなり、押さえ部材11の軸部11aを箱体10の内側面に設けたベアリング16で回転自在に支持し、受け部材12の軸部12aを前記押圧部材13で保持した状態で箱体10の内部において回転自在に対向配置されている。
【0015】
押圧部材13は、受け部材12の軸部12bを相対回転しないように収容する凹部13aを形成した保持部13bと軸部13cが一体に形成されてなり、凹部13a内には、押さえ部材11と受け部材12間で被蒸着物25を挟持する押圧力を付与するバネ材17が配置されている。軸部13cは保持部13bより細径に形成され、箱体10の内側面に設けたベアリング18により回転自在に支持されており、前記押さえ部材11、受け部材12及び押圧部材13の回転軸19は球状ドーム3の球状部3aの接線と一致するように設定されている。軸部13cの端部は箱体10の外部に延設され、この軸部13cの端面に従動歯車14がその回転中心部において固着されている。
【0016】
従動歯車14は、押圧部材13を介して受け部材12に回転を与えるもので、球状ドーム3の球状部3aの上方に設けた固定歯車20に噛み合いとその解除がなされるようになっている。すなわち、前記支持部材4のモータ5によって球状ドーム3が上昇された際に従動歯車14と固定歯車20が噛み合い、球状ドーム3が下降された際に噛み合いが解除されるようになっている。
【0017】
固定歯車20は、リング状に形成されており、複数本の支柱21により吊り下げられ、かつ各支柱21を連結部材22で連結した状態で、真空蒸着槽1の上部下面に取り付けられている。
【0018】
次に、本実施例の薄膜蒸着装置Sの作用を説明する。
まず、押さえ部材11の押圧挟持部11aと受け部材12の押圧挟持部12a間で、被蒸着物25の蒸着面25aが箱体10の開口部15方向に向くようにして被蒸着物25を挟み、バネ材17の押圧力で押さえ部材11、被蒸着物25および受け部材12が相対回転しないように保持する。
【0019】
次に、球状ドーム3を下げた状態で、被蒸着物25を押圧挟持した複数のワーク保持機構Hを球状ドーム3の球状部3aに形成した開口部9にそれぞれ係合して位置決めした後、モータ5によって球状ドーム3を上昇してワーク保持機構Hの従動歯車14と固定歯車20を噛み合わせる。
【0020】
その後、モータ7を駆動して駆動歯車8を回転させ、駆動歯車8の回転動力を駆動歯車8と噛み合っている歯車6を介して球状ドーム3に伝達し、球状ドーム3を蒸着源の周囲で、即ち蒸着源の上下方向の法線を中心軸線としこの中心軸線回りで回転する。この球状ドーム3の回転により、ワーク保持機構Hは球状ドーム3に固定された状態で球状ドーム3と一緒にその回転方向に移動するとともに、ワーク保持機構Hの従動歯車14は、固定歯車20に案内されて回転軸19を中心に回転する。その結果、押さえ部材11と受け部材12に押圧挟持された被蒸着物25は、その蒸着面(外周面)25aを蒸着源2に向けた状態で従動歯車14によって回転(自転)しながら、即ち、被蒸着物25の蒸着面(外周面)25aが蒸着源側に順次に向くように回転しながら、モータ7によって蒸着源2に対して公転する。
【0021】
本実施例の薄膜蒸着装置Sによれば、球状ドーム3の球芯に蒸着源2が配置されているため、球状ドーム3にワーク保持機構Hを介して取り付けた複数の被蒸着物25の蒸着面25aが蒸着源2に対して同じ距離となり、均一な薄膜を形成することができるとともに、被蒸着物25が回転するため、多面体の同時成膜が可能となる。
【0022】
【実施例2】
図4は本発明の実施例2の薄膜蒸着装置におけるワーク保持機構を示す断面図、図5は従動歯車を省略したワーク保持機構の右側面図である。なお、図中において前記実施例1と同一部材、同一形状、同一構成については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0023】
本実施例のワーク保持機構Hの被蒸着物25を回転させる従動歯車14は、その回転中心を同じくしたプーリ30が一体に形成され、箱体10の側面に回転自在に取り付けられている。一方、押圧部材13の軸部13c端面には、2段プーリ31が一体的に固着されており、2段プーリ31の小径プーリと従動歯車14のプーリ30との間に伝達ベルト32を張設し、従動歯車14の回転を押圧部材13に伝達し得るように構成されている。
【0024】
また、ワーク保持機構Hは、被蒸着物25を平行に多数個(図においては3個)保持できるように押さえ部材11、受け部材12、2段プーリ31を固着した押圧部材13を挟むように、その両側に押さえ部材11、受け部材12、押圧部材13が設けられ、これらの押圧部材13の軸部13cの端面にプーリ33が一体的に固着されている(図5参照)。プーリ33、33は2段プーリから等間隔に配設され、プーリ33、33間には、2段プーリ31における大径プーリの外周面と当接するように伝達ベルト34が張設されており、従動歯車14の回転を各押圧部材13へ同時に伝達し得るように構成されている。その他のワーク保持機構Hおよび薄膜蒸着装置Sの構成は実施例1と同様である。
【0025】
本実施例によれば、伝達ベルト32、34を用いることによりスムーズな被蒸着物25の回転が可能となり、また容易に複数の被蒸着物25を保持する機構が構成でき、効率の良い蒸着を行うことができる。
【0026】
【発明の効果】
以上のように、本発明の薄膜蒸着装置および薄膜蒸着方法によれば、被蒸着物の形状に関わらず蒸着面となる外周面に均一な蒸着膜を形成できる。また、多数固の被蒸着物を蒸着しても全て同じ膜厚の蒸着膜を形成できる。さらに、真空蒸着槽内のドーム以外あるいは球状ドーム以外の余分な部分まで蒸着膜を積層させること無く、ホコリによる悪影響が少なくなり、高品質な蒸着薄膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1を概略的に示す構成図である。
【図2】本発明の実施例1におけるワーク保持機構を示す断面図である。
【図3】被蒸着物を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例2におけるワーク保持機構を示す断面図である。
【図5】図4のワーク保持機構を従動歯車を省略して示す右側面図である。
【符号の説明】
1 真空蒸着槽
2 蒸着源
3 球状ドーム(ドーム)
3a 球状部
6 歯車
7 モータ
8 駆動歯車
9 開口部
11 押さえ部材
12 受け部材
13 押圧部材
14 歯車
20 固定歯車
25 被蒸着物(ワーク)
25a 蒸着面(外周面)
H ワーク保持機構(ワーク保持手段)
S 薄膜蒸着装置
Claims (3)
- 真空蒸着槽内で、天井側の被蒸着物に下方側の蒸着源から蒸着物質を蒸着させて薄膜を形成する薄膜蒸着装置において、
被蒸着物の外周面が露出する状態で非蒸着面の全面を覆って、該被蒸着物の回転軸と同一軸線上で対向配置した押さえ部材と受け部材で押圧し保持するとともに、この状態で被蒸着物の外周面回りに被蒸着物を回転させるよう従動側回転部材を設けて一組としたワーク保持機構と、
前記組として保持された被蒸着物の外周面を前記蒸着源に向けた状態で搭載する複数のワーク保持機構の搭載部を設けた球状部を天井側に有し、前記蒸着源の周囲を回転自在な球状ドームと、
前記ドームを回転させる回転手段と、
前記回転手段によるドームの回転により前記組として保持されている被蒸着物の外周面が蒸着源側に順次向くように前記ワーク保持機構の従動側回転部材を回転させて被蒸着物を回転させる前記真空蒸着槽内に設けた固定部材と、
を具備して構成したことを特徴とする薄膜蒸着装置。 - 前記一組としたワーク保持機構は、被蒸着物の外周面が露出する状態で非蒸着面の全面を覆って、該被蒸着物の回転軸と同一軸線上で対向配置した押さえ部材と受け部材で保持した状態にて、被蒸着物を平行に複数保持することを特徴とする請求項1記載の薄膜蒸着装置。
- 被蒸着物となるワークの外周面が露出する状態で非蒸着面の全面を覆って、該ワークの回転軸と同一軸線上で対向配置した押さえ部材と受け部材で保持するとともに、ワークと押さえ部材と受け部材とが前記同一軸線でワークの外周面回りに回転するように設けた従動側回転部材で一組のワーク保持手段を構成し、
このワーク保持手段で保持したワークの外周面が真空蒸着槽内の蒸着源側に向くように、真空蒸着槽内で蒸着源に対向して配置されるドームの天井側の搭載部に前記一組としたワーク保持手段を位置決めして搭載し、
その後、前記蒸着源に対してドームの回転手段によりドームを回転させ、前記蒸着源に対してドームの天井側に搭載されたワーク保持手段をドーム回転方向に移動させるとともに、ドームの回転によりワーク保持手段の従動側回転部材を回転させてワークの外周面が蒸着源側に順次に向くようにワークを回転させ、
これによりワークの外周面の全周に蒸着物質を成膜することを特徴とする薄膜蒸着方法。
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