JP3456562B2 - 固体潤滑膜の製造方法およびその装置 - Google Patents

固体潤滑膜の製造方法およびその装置

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JP3456562B2
JP3456562B2 JP10275697A JP10275697A JP3456562B2 JP 3456562 B2 JP3456562 B2 JP 3456562B2 JP 10275697 A JP10275697 A JP 10275697A JP 10275697 A JP10275697 A JP 10275697A JP 3456562 B2 JP3456562 B2 JP 3456562B2
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克己 宮崎
修司 山住
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クリ−ン、真空と
いった特殊環境下で使用される半導体製造装置や宇宙機
器などに適用する転がり軸受の転動体への固体潤滑膜の
製造方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ころがり軸受に適用される玉やコ
ロなどの転動体に二硫化モリブデン膜の固体潤滑剤をス
パッタする固体潤滑膜の製造方法としては、例えば、本
出願人が先に提案した特開平5−9707号公報に開示
されているものがある。図12の(a) は従来例を示すス
パッタ装置の側断面図、(b) はCC’線に沿う平面図で
ある。ここで、転動体が玉の場合を例に取り説明する。
真空チャンバ−1の中の上部に二硫化モリブデンからな
るターゲット2を設け、下方の真空チャンバ−1のベー
ス7には回転テーブル3を設けており、回転テーブル3
は図示しない駆動装置により回転軸31を介して回転さ
せるものである。回転テーブル3上に治具4を固定し、
治具4上のターゲット2に対向する位置に設けた穴4a
に玉6を載置する。ターゲット2と玉6との間にはシャ
ッタ5を設け、スパッタ時間を調節している。詳細には
治具4には玉6の直径よりもわずかに大きい直径の穴4
aを複数個設けて、その穴4aに玉6を入れ、玉6の高
さの半分以上が治具4から露出した状態で真空チャンバ
−1内を真空に引いてスパッタを行う。その後、真空チ
ャンバ−1を大気に開放して、治具4で隠れているため
スパッタ膜が形成されなかった玉6の高さの半分以下の
部分を治具4の外側に露出するように反転させ、一方、
スパッタ膜が形成された玉6の高さの半分以上を穴4a
の底側に向けて載置し、再びスパッタを行う。以上の説
明は、転動体が玉の場合のスパッタ方法であるが、コロ
の場合も同じ方法でスパッタされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記構成の
方法では玉6の半面をタ−ゲット5に対向させてスパッ
タした後、一度大気に開放して、玉6を反転した後に反
転した玉6の残りの半面をスパッタするため、次のよう
な課題があった。 (1) 玉の上面部に対するタ−ゲット粒子の入射角度が
直角に近いことに対し、玉の側面部に対する入射角度が
浅いため、玉の上面部と側面部とでは膜の構造や厚みに
違いが生じる。更に、2回のスパッタによって玉の一部
に膜が二重となる合わせ面ができる。 (2) 玉の反転時の取り扱いや大気との接触によって、
ごみ、酸化、吸湿などで汚染されるため、清浄なスパッ
タ膜が得られない。 (3) 2回のスパッタ処理が必要であるため、玉の反転
に手数がかかり、生産性が悪い。 なお、玉に替えてコロをスパッタする場合も同様な問題
があった。そこで、本発明は膜の構造や厚みが均一で合
わせ面がない、清浄な潤滑膜が得られ、且つ、スパッタ
処理に手数や時間のかからない、高品質で簡便な固体潤
滑膜の製造方法およびその装置を提供することを目的と
する。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するため
に、請求項1の本発明は、真空チャンバ−の中に固体潤
滑剤からなるターゲットとこのターゲットに間隔を置い
て対向する回転テーブルを設け、この回転テーブル上に
治具を設置し、この治具上の前記ターゲットに対向する
位置に複数の転動体を収納し、前記回転テーブルを回転
しながら前記転動体にスパッタを行う固体潤滑膜の製造
方法において、前記治具は、前記回転テ−ブルと対峙し
た位置に配設された転動体収納部を構成する複数の貫通
した穴部を形成してなる第1のプレートと、この第1の
プレートと前記回転テーブルとの間に前記穴部と対向す
るように少なくともその表面の一部が段凹部を形成して
なる第2のプレートと、この第2のプレートを前記真空
チャンバ−に固定する固定バ−とし、前記転動体収納部
と対向する前記固定された第2のプレート上に前記転動
体を収納し、前記第2のプレ−ト上で前記第1のプレ−
トを回転しながら前記段凹部上を前記転動体が通過する
際に前記転動体の姿勢を変化させるようにしたものであ
る。
【0005】請求項2の本発明は,真空チャンバ−の中
に設けた固体潤滑剤からなるターゲットと、このターゲ
ットに間隔を置いて対向して設けた回転テーブルと、こ
の回転テーブル上に設置した治具と、この治具上の前記
ターゲットに対向する位置に収納した複数の転動体とを
備え、前記回転テーブルを回転しながら前記転動体にス
パッタを行う固体潤滑膜の製造装置において、前記治具
は、前記回転テ−ブルと対峙した位置に同軸状態で配設
されると共に前記転動体を収納するような複数の貫通し
た穴部を有する第1のプレートと、前記第1のプレート
と前記回転テーブルとの間に独立して設けられると共に
前記穴部と対向して少なくともその表面の一部に段凹部
を形成した第2のプレートと、前記第2のプレートを前
記真空チャンバ−に固定する固定バ−とを備え、前記固
定された第2のプレ−ト上で前記第1のプレ−トを回転
しながら前記段凹部上で前記穴部に収納された前記転動
体の姿勢を変化させるものである。また、請求項3の本
発明は、請求項2記載の固体潤滑膜の製造装置におい
て、前記段凹部は、一方の端部が前記第2のプレ−トの
表面に垂直な面で形成された段付の壁部と、前記第1の
プレ−トの回転方向に沿う前記壁部の前方側に形成され
た傾斜面とで構成されるものである。また、請求項4の
本発明は、請求項2または請求項3記載の固体潤滑膜の
製造装置において、前記段凹部は、前記第2のプレ−ト
の鉛直方向から見た形状がY字状としたものである。ま
た、請求項5の本発明は、請求項2または請求項3に記
載の固体潤滑膜の製造装置において、前記第1のプレー
トは、前記隣り合う複数の穴部を互いに連通するように
内側と外側のプレートの二つに分離したものである。ま
た、請求項6の本発明は、請求項2または請求項3に記
載の固体潤滑膜の製造装置において、前記第1のプレー
トを前記回転テ−ブルと同軸上に連結された太陽歯車と
し、前記第2のプレートを内歯車とし、前記太陽歯車と
前記内歯車との間に前記転動体を収納する貫通した穴部
を有する遊星歯車を設けたものである。また、請求項7
の本発明は、請求項6に記載の固体潤滑膜の製造装置に
おいて 、前記遊星歯車に設けた穴部の内壁を凹凸状に形
成したものである。
【0006】上記構成により、この固体潤滑膜の製造装
置では、例えば前記転動体がコロの場合に適用すると、
複数コロの端面および円筒面が満遍なく転がり、その結
果、コロの全面にスパッタ膜が形成される。また、スパ
ッタ途中でコロの向きを変更するために真空チャンバ−
を大気開放し、もう一度スパッタを行う処理の必要がな
くなり、スパッタを1回の処理で連続して行うことがで
きる。これにより、膜の構造や厚みが均一で合わせ面が
ない、清浄なスパッタ膜が得られる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図を参照し
ながら説明する。図1の(a) は本発明の第1の実施例を
示すスパッタ装置の側断面図、(b) は(a) のAA’線に
沿う治具の平面図である。なお、従来例と同じ構成要素
には同じ符号を用いている。なお、スパッタの対象とな
る転動体は玉について説明する。真空チャンバ−1の中
の上部に二硫化モリブデンからなるターゲット2を設
け、下方には回転テーブル3を設け、回転テーブル3の
上にターゲット2に対向する半径方向位置に玉6を載せ
る治具4を設置し、ターゲット2と玉6との間にシャッ
タ5を設けるようにした基本的な構成は従来例と同じで
ある。従来例と異なる点は、回転テーブル3の上に設け
た治具4はターゲット2に対向する回転円周上に、ター
ゲット直径に近い幅の外リング41と内リング42から
なるリング溝を設け、その円周方向に複数の仕切り部材
43を設け、リング溝と仕切り部材43により転動体収
納部44を形成し、転動体収納部44に複数の玉6を載
せる際に転動体収納部44を塞がないように空き間44
aを設けるようにしたものである。また、転動体収納部
44内における玉6の転動が可能なように、回転テ−ブ
ル3には玉6に加速度を付与するための正転・逆転およ
び加速・減速の繰り返しを行う回動機構9を設けてあ
る。これにより回転テーブル3に設けた治具4の上で玉
6をランダムに転動させるようにしてある。なお、回動
機構9は回転テ−ブル3の回転方向と回転速度を可変で
きるようなサ−ボモ−タが望ましいが、これに限定され
るものではない。このような構成において、真空チャン
バ−1内を真空に引いてスパッタを行うと、玉6は回転
テ−ブル3の回動機構9により加速度を受けて治具4上
の転動体収納部44内をランダムに転がり、ターゲット
2に対してスパッタされる玉6の面が時間変化と共に順
次変わるため、玉6の全面にスパッタが行われる。した
がって、回転テーブル3の回転方向とは同期することな
く、玉6が治具4上の転動体収納部44内を転がるた
め、清浄で均一なスパッタ膜を得ることができる。ま
た、玉6はスパッタ処理において、真空チャンバ−1を
大気開放して反転させる必要がなくなり、玉6の取り扱
いや大気との接触によって、ごみ、酸化、吸湿などで汚
染される心配が無く、また、大気解放による長時間の真
空引きが必要なく、玉6の反転に手数や時間がかかるこ
となくスパッタ処理を一括で行うことができ、生産性が
向上する。また、転動体収納部44の形状は図1の(b)
に示したものに限定されるものでなく、円形や長方形な
どの形状にしても構わない。図1の(a) のAA’線に沿
う治具の平面図に相当するものとして、図2に治具のそ
の他の形状を示している。回転テ−ブル3上に円形状の
仕切り部材43を設け、仕切り部材43に囲まれた転動
体収納部44内で玉6がランダムに転がるように空き間
44aを有する構成にしてある。また、図3は第1の実
施例のその他の発明を示すスパッタ装置の側断面図であ
る。シャッタ5と玉6との間に玉6および回転テーブル
3を覆うカバー8をベース7に固定するようにしても良
い。カバー8のターゲット2の直下にはターゲット2の
外径とほぼ同じ大きさの径の貫通穴81を設けてある。
こうような構成にすることで、玉6がターゲット2真下
近辺以外にあるときはカバ−8によってスパッタ粒子の
付着が防止されるので、より均一な特性の膜質が得られ
る。
【0008】図4は本発明の第2の実施例を示す装置の
側断面図である。回転テーブル3に第1の実施例と同様
の転動体収納部44を設けた治具4を設置して、転動体
収納部に玉6を入れる構成は同じである。第1の実施例
と異なる点は治具4を設置した回転テーブル3を傾斜し
たまま回転させる構成にしたものである。すなわち、図
示しないタ−ゲットと治具4との間隔を一定に保つよう
にするため、治具4を設置した回転テーブル3の軸31
を軸受32により支持させるとともに、回転テーブル3
を図示しないベ−スの面に対してαの角度だけ傾斜した
まま回転させるようにし、回転テーブル3の軸31とそ
の下方にある回動機構9の軸91とは自在継手92を介
して連結された構成にしたものである。このような構成
において、回転テーブル3を支持する軸31が回動機構
9の軸91に対して傾斜しているので治具4の連続的あ
るいは非連続的な回転にともなって、玉6は重力を受
け、治具4上を転がるので、玉6の全面にスパッタが行
なわれる。したがって、第1の実施例と同様に回転テー
ブル3の回転方向とは同期することなく、玉6が治具4
上の転動体収納部44内をランダムに転がるため、清浄
で均一なスパッタ膜を得ることができる。また、玉のス
パッタ処理を一括で行うことができ、生産性が向上する
効果は同じである。
【0009】図5は本発明の第3の実施例を示す装置の
側断面図を示す。本実施例が上記に述べた第1および第
2の実施例と異なるのは、転動体収納部44に玉6を入
れた複数の治具4は各々の治具4の中心に軸45を設
け、回転テ−ブル3の軸31に歯車伝達機構10を設け
た構成である。治具4を支持する軸45は回転テーブル
3を貫通し、回転テーブル3に設けた軸受33で支持さ
れるとともに、回転テーブル3を貫通した軸45に装着
した歯車103は回転テーブル3の軸31に装着した歯
車104と噛み合わせるようにしたものである。また、
回転テーブル3は軸受34に支持され、治具4の中心に
備えた軸45には回転テーブル3の公転に対して治具4
を自転させるようにした歯車101と歯車102が噛み
合わせるようにしたものである。このような構成におい
て、回転テーブル3の回転によって治具4が回転テーブ
ル3上で自転するので、治具4を連続的あるいは非連続
的に回転させることによって、玉6は治具4上を転がる
ので玉6の全面にスパッタが行なわれる。したがって、
第1および第2の実施例と同様に回転テーブル3の回転
方向とは同期することなく、玉6が治具4上の転動体収
納部44内をランダムに転がるため、清浄で均一なスパ
ッタ膜を得ることができる。また、玉のスパッタ処理を
一括で行うことができ、生産性が向上する効果は同じで
ある。
【0010】これまで第1の実施例ないし第3の実施例
において、スパッタの対象となる転動体は玉について説
明してきた。上記の転がし方式による転動体へのスパッ
タをコロに適用した場合、コロのように円筒面と平らな
端面とからなる異形状を有するものでは、慣性力や重力
だけでは両面の間の回転ができず、さらに、例えば治具
上を複数のコロが転がる際に、タ−ゲットに対向する鉛
直方向に直立したコロなどが周囲の横倒しになったコロ
の転がりを妨害することになる。その結果、円筒面と端
面の両面を満遍なく転がすことができないという課題が
生じることになる。そこで、転動体がコロの場合の発明
を、次の第4ないし第7の実施例において説明する。
【0011】本発明の第4の実施例について説明する。
図6は本発明の第4の実施例を示すスパッタ装置の側断
面図である。また、図7の(a) は図6の治具の分解斜視
図、(b) は(a) の組立斜視図である。また、図8の(a)
,(b) ,(c) は第1のプレ−トと第2のプレ−ト間に
おけるコロの転がり状態を示す概念図である。図6にお
いて、真空チャンバ−1の中の上部に二流化モリブデン
からなるターゲット2を設け下方には回転テーブル3を
設けて、ターゲット2に対向する半径方向位置に治具4
に入れたコロ61を収納し、ターゲット2とコロ61と
の間にシャッタ5およびカバー8を設けた構成は従来と
同じである。第1ないし第3の実施例と異なるのは、治
具構成である。図7の(a) の分解斜視図に示すように、
回転テーブル3の上に設けた治具4は、回転テ−ブルと
対峙した位置に転動体を収納するような複数の貫通した
穴部47を有する第1のプレート46が同軸状態で設け
てあり、第1のプレート46と回転テーブル3との間に
は、複数の穴部47と対向してその表面の一部に段凹部
49を形成した第2のプレート48が独立して設けら
れ、第2のプレート48を図示しない真空チャンバ−1
に固定バ−48aにより固定するようにしてある。ま
た、図7の(b) の組立斜視図に示す治具4は、第2のプ
レート48を下面とし、第1のプレート46を第2のプ
レート48の上に対向させた状態で組み立てたものであ
る。第1のプレート46の穴部47にコロ61で塞がな
い程度の個数分のコロを入れ、第2のプレート48には
コロ61の直径の三分の一程度の深さで段凹部49を設
けている。段凹部49の形状は、図7の(a) に示すよう
に一方の端部が第2のプレ−ト48の表面に垂直な面で
形成された段付の壁部49aと、第1のプレ−ト46の
回転方向に沿う壁部49aの前方側に形成された緩やか
な傾斜面49bとで構成されるものである。このような
構成において、図7の(b) に示すように、コロ61が第
1のプレ−ト46の穴部47と第2のプレ−ト48との
間で構成される転動体収納部44に収納されており、コ
ロ61は、回転テーブル3の回転に伴って第1のプレ−
ト46に設けた穴部47の内壁に押され、第2のプレ−
ト48の上を移動して段凹部49に落ちてコロ61の姿
勢を変化させるようにしてあり、図示しない真空に引か
れた真空チャンバ−内でスパッタされる。次に動作を図
8にしたがって説明する。コロ61が穴部47に複数収
納される場合、図8は図7の(b) のD部を拡大した、第
1のプレ−トと第2のプレ−トの側面から見たコロの動
きを示す概念図である。第1のプレ−ト46の回転方向
に対して前方にあるコロを61a、後方にあるコロを6
1bとする。(a) において、コロ61aが第2のプレ−
ト48に設けた段凹部49の壁部49aに達し、直立し
たコロ61aがコロ61bに押されて壁部49aから落
ちる。さらに(b) では、第1のプレ−ト46が回転方向
に移動すると、壁部49aから落ちたコロ61aは、傾
斜面49bで横倒しになる。(c) に示すように、さらに
第1のプレ−ト46が回転方向に移動すると、傾斜面4
9bにある横倒しのコロ61aは、壁部49aを直立し
たまま落ちる後方のコロ61bから押されるため、横倒
しのまま傾斜面49bを登る。逆に(a) において、コロ
61aが横倒しになったままで壁部49aから落ちる場
合は段凹部49の傾斜面49bに直立した姿勢に変化す
る。したがって、段凹部により、複数のコロのうち第1
のプレ−トの回転方向に対して前方に位置するコロをそ
の円筒面および端面の両面間で回転させることできるの
で、前方のコロの姿勢を容易に変化させることが可能と
なり、その結果、均一に前方のコロの両面をスパッタす
ることができる。
【0012】次に、本発明の第5の実施例を説明する。
図9の(a) は第5の実施例を示すその他の第2のプレ−
トの斜視図、(b) は(a) の段凹部におけるコロの動きを
示す概念図、(C) は(b) の側面図である。前述した第4
の実施例において、図8に示すように複数のコロを収納
した場合であって、段凹部49に複数のコロが落ちる際
に、後方のコロ61bは前方のコロ61aが支えとなっ
て、直立していたコロ61bは直立したまま、横倒しに
なっていたコロ61bは横倒しになったままの状態で壁
部49aを落ちる。本実施例では複数のコロが第2のプ
レ−ト48上で転がる際に、前方と後方のコロの位置を
入れ換えることを目的とするものである。図9の(a) の
第2のプレ−トの組立斜視図に示すように、段凹部49
の形状を中央部から分岐するようなY字状としたもので
ある。このような構成において動作を説明すると、図9
の(a) のE部を拡大した(b)、(c) に示すように、第1
のプレート46の動きに連れ、複数のコロ61がY字状
の傾斜面49bを上がる際、分岐した傾斜面に沿って、
先頭中央に位置するコロ61は左右どちらかの端に追い
やられる。複数のコロが第1のプレ−ト46の回転によ
り、第2のプレ−ト48上で数回段凹部49を通過する
ことで、複数のコロにおける後方のコロは先頭へ、先頭
にあったコロは後方へ互いの位置が入れ換わるようにな
る。したがって、本実施例は、第4の実施例で説明した
第1のプレ−トの回転方向に対して前方に位置するコロ
を段凹部によってその姿勢を変化させる作用に加え、段
凹部をY字形状とすることで、転動体収納部の前方と後
方に入れられたコロの位置を互いに入れ換えることが可
能となり、その結果、複数のコロを満遍なく転がすこと
ができ、コロの全面に効率よくスパッタを施すことがで
きる。
【0013】次に、本発明の第6の実施例を説明する。
図10の(a) は第6の実施例を示すその他の第1のプレ
−トの斜視図、(b) は(a) の転動体収納部におけるコロ
の動きを示す概念図である。第1のプレート46は、図
10の(a) に示すように、隣り合う複数の穴部47を互
いに連通するように内側プレート461と外側プレート
462の二つに分離してあるものである。内側プレート
461と外側プレート462に分離したところは継手4
63で接続している。このような構成において、図10
の(a) のF部を拡大した(b) に示すように第1のプレー
ト46の動きに連れ、複数のコロのうち、第1のプレ−
ト46の回転方向に対して後方に位置するコロは連通溝
464を通り抜け、隣り合う転動体収納部に収納された
複数のコロの先頭に移すことができる。したがって、各
転動体収納部ごとに収納され、第1のプレ−トの回転方
向に対して前方と後方に入れられたコロの位置を互いに
入れ換えることが可能となり、その結果、第4の実施例
における第2のプレ−トの段凹部による作用に相乗して
複数コロを満遍なく転がすことができ、コロの全面に効
率よくスパッタを施すことができる。
【0014】次に、本発明の第7の実施例を説明する。
図11の(a) は本発明の第7の実施例を示す治具の側断
面図、(b) は(a) のBB’線に沿う治具の平面図であ
る。本実施例は、図6の第4の実施例に示した第1のプ
レートを、回転テ−ブル3と同軸上に連結された太陽歯
車112とし、また、第4の実施例に示した第2のプレ
ートを、内歯車111とし、太陽歯車112と内歯車1
11との間に転動体を収納する貫通した穴部113aを
有す0遊星歯車113を設けてある遊星歯車式治具11
を構成したものである。また、遊星歯車113の穴部1
13aの内壁面は円周方向に凹凸形状をしたものであ
る。なお、内歯車111は真空チャンバ1に固定バ−1
11aにより固定されており、内歯車111のうち、遊
星歯車113の穴部113aに対向する面には第4の実
施例で示した段凹部111bを設けている。このような
構成において、動作を説明する。回転テ−ブル3の鉛直
上方に位置した太陽歯車112の自転に伴って遊星歯車
113が公転し、遊星歯車113の穴部113aに収納
したコロ61が穴部113aの内壁面に設けた凹凸面に
引っ掛かって回転し、複数のコロの位置が絶えず入れ換
わるようになる。この結果、複数のコロの位置を互いに
入れ換えることが可能となり、段凹部による複数のコロ
のうち前方に位置するコロの姿勢変化作用に相乗して、
複数コロの円筒面と端面の両面を満遍なく転がすことが
でき、コロの全面に効率よくスパッタを施すことができ
る。以上にスパッタの対象となる転動体はコロについて
説明したが、転動体であれば同様の効果が得られること
が期待できる。なお、スパッタ膜の重なりの有無はコロ
表面の段差の計測、コロ表面をエッチングした時の膜消
失までのエッチング時間の違いなどの方法によって検出
される。また、ここでは、スパッタ装置の例について説
明したが、スパッタ以外の方法のコロへの成膜にも効果
が期待できる。
【0015】
【発明の効果】以上述べたように、大気開放と反転操作
が必要であった従来の転動体に対する固体潤滑膜の製造
方法に対し、本発明によれば、スパッタ途中で真空チャ
ンバ−を大気開放することなく1回の処理で連続したス
パッタができるので、玉やコロの一部にスパッタ膜が二
重となる合わせ面を生じることなく、玉やコロの全面に
均一な膜質が得られ膜の特性が向上するという効果があ
る。また、玉の反転時の取り扱いや大気との接触がない
ため、ごみ、酸化、吸湿などで汚染されることがなく、
玉やコロの全面に清浄な潤滑膜が得られるという効果が
ある。また、スパッタ処理に手数や時間がかからず、ス
パッタ膜の生産性が向上するという効果がある。したが
って、スパッタ処理が簡便となり高信頼性の固体潤滑膜
の製造方法およびその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a) は本発明の第1の実施例を示すスパッタ
装置の側断面図、(b) は(a) のAA’線に沿う治具の平
面図である。
【図2】 治具のその他の実施例を示す平面図である。
【図3】 第1の実施例のその他の発明を示す装置の側
断面面である。
【図4】 本発明の第2の実施例を示す装置の側断面図
である。
【図5】 本発明の第3の実施例を示す装置の側断面図
である。
【図6】 本発明の第4の実施例を示す装置の側断面図
である。
【図7】 (a) は図6の治具の分解斜視図、(b) は(a)
の組立斜視図である。
【図8】 (a) ,(b) ,(C) は第1のプレ−トと第2の
プレ−ト間におけるコロの転がり状態を示す概念図であ
る。
【図9】 (a) は本発明の第5の実施例を示すその他の
第2のプレ−トの斜視図、(b) は(a) の段凹部における
コロの動きを示す概念図、(C) は(b) の側面図である。
【図10】 (a) は本発明の第6の実施例を示すその他
の第1のプレ−トの斜視図、(b) は(a) の転動体収納部
におけるコロの動きを示す概念図である。
【図11】 (a) は本発明の第7の実施例を示す治具の
側断面図、(b) は(a) のBB’線に沿う装置の平面図で
ある。
【図12】 (a) は従来例を示すスパッタ装置の側断面
図、(b) は(a) のCC’線に沿う平面図である。
【符号の説明】
1:真空チャンバ− 2:ターゲット 3:回転テーブル 31:軸 32、33、34:軸受 4: 治具 4a:穴 41:外リング 42:内リング 43:仕切り部材 44:転動体収納部 44a:空き間 45:軸 46:第1のプレ−ト 461:内側プレート 462:外側プレート 463:継手 464:連通溝 47:穴部 48:第2のプレ−ト 48a:固定バ− 49:段凹部 49a:壁部 49b:傾斜面 5 :シャッタ 6:玉(転動体) 61:コロ(転動体) 7:ベース 8 :カバー 81:貫通穴 9:回動機構 91:軸 92:自在継手 10:歯車伝達機構 101、102、103、104:軸受 11:遊星歯車式治具 111:内歯車 111a:固定バ− 111b:段凹部 112:太陽歯車 113:遊星歯車 113a:穴部 114:スライディングパッド
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山住 修司 福岡県北九州市八幡西区黒崎城石2番1 号 株式会社 安川電機内 (72)発明者 板部 忠喜 福岡県北九州市八幡西区黒崎城石2番1 号 株式会社 安川電機内 (56)参考文献 特開 平5−9707(JP,A) 特開 平6−88227(JP,A) 特開 平6−256940(JP,A) 実開 平2−87065(JP,U) 特公 平8−23069(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/00 - 14/58

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空チャンバ−の中に固体潤滑剤からな
    るターゲットとこのターゲットに間隔を置いて対向する
    回転テーブルを設け、この回転テーブル上に治具を設置
    し、この治具上の前記ターゲットに対向する位置に複数
    の転動体を収納し、前記回転テーブルを回転しながら前
    記転動体にスパッタを行う固体潤滑膜の製造方法におい
    て、 前記治具は、前記回転テ−ブルと対峙した位置に配設さ
    れた転動体収納部を構成する複数の貫通した穴部を形成
    してなる第1のプレートと、この第1のプレートと前記
    回転テーブルとの間に前記穴部と対向するように少なく
    ともその表面の一部が段凹部を形成してなる第2のプレ
    ートと、この第2のプレートを前記真空チャンバ−に固
    定する固定バ−とし、前記転動体収納部と対向する前記
    固定された第2のプレート上に前記転動体を収納し、前
    記第2のプレ−ト上で前記第1のプレ−トを回転しなが
    ら前記段凹部上を前記転動体が通過する際に前記転動体
    の姿勢を変化させるようにしたことを特徴とする固体潤
    滑膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 真空チャンバ−の中に設けた固体潤滑剤
    からなるターゲットと、このターゲットに間隔を置いて
    対向して設けた回転テーブルと、この回転テーブル上に
    設置した治具と、この治具上の前記ターゲットに対向す
    る位置に収納した複数の転動体とを備え、前記回転テー
    ブルを回転しながら前記転動体にスパッタを行う固体潤
    滑膜の製造装置において、 前記治具は、前記回転テ−ブルと対峙した位置に同軸状
    態で配設されると共に前記転動体を収納するような複数
    の貫通した穴部を有する第1のプレートと、前記第1の
    プレートと前記回転テーブルとの間に独立して設けられ
    ると共に前記穴部と対向して少なくともその表面の一部
    に段凹部を形成した第2のプレートと、前記第2のプレ
    ートを前記真空チャンバ−に固定する固定バ−とを備
    え、前記固定された第2のプレ−ト上で前記第1のプレ
    −トを回転しながら前記段凹部上で前記穴部に収納され
    た前記転動体の姿勢を変化させるものであることを特徴
    とする固体潤滑膜の製造装置。
  3. 【請求項3】 前記段凹部は、一方の端部が前記第2の
    プレ−トの表面に垂直な面で形成された段付の壁部と、
    前記第1のプレ−トの回転方向に沿う前記壁 部の前方側
    に形成された傾斜面とで構成される請求項2記載の固体
    潤滑膜の製造装置。
  4. 【請求項4】 前記段凹部は、前記第2のプレ−トの鉛
    直方向から見た形状がY字状としてある請求項2または
    請求項3記載の固体潤滑膜の製造装置。
  5. 【請求項5】 前記第1のプレートは、前記隣り合う複
    数の穴部を互いに連通するように内側と外側のプレート
    の二つに分離してある請求項2または請求項3に記載の
    固体潤滑膜の製造装置。
  6. 【請求項6】 前記第1のプレートを前記回転テ−ブル
    と同軸上に連結された太陽歯車とし、前記第2のプレー
    トを内歯車とし、前記太陽歯車と前記内歯車との間に前
    記転動体を収納する貫通した穴部を有する遊星歯車を設
    けてある請求項2または請求項3に記載の固体潤滑膜の
    製造装置。
  7. 【請求項7】 前記遊星歯車に設けた穴部の内壁を凹凸
    状に形成してある請求項6に記載の固体潤滑膜の製造装
    置。
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