JP3578507B2 - 熱転写受像シートを用いた画像形成方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、感熱昇華転写方式を利用して被転写体上に画像を形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、種々の熱転写方式による画像形成方法が公知であるが、これらの中で、熱により昇華又は拡散するいわゆる昇華性染料を色材として用いた感熱昇華転写方式は、ポリエステルフィルム等の支持体上の片面に昇華性染料を結着剤樹脂中に担持させた染料担持層を設けた熱転写シートを使用するものである。この熱転写シートは、耐熱性を有する支持体上に、結着剤樹脂に昇華性染料を混合したインキ又は塗液を印刷又は塗工して乾燥形成したものである。
そして、サーマルヘッド等の加熱手段を有するプリンタにより熱転写シートを背面側から選択的に加熱して、基材シート上に染料で染着可能な染料受容層を設けた熱転写受像シートに画像を形成する。
形成された染料画像は、使用する色材が染料であることから鮮明で且つ透明性に優れているため、中間調の再現性や階調性に優れている。このため、3色又は4色の多数の色ドットを熱転写受像シートに転移させて形成するフルカラー画像の再現に適しており、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同等で、しかもフルカラー写真画像と同等の高品質画像の形成が可能である。
このようなことから、感熱昇華転写方式は、コンピュータ画像やビデオ画像のフルカラーのハードコピーを極めて短時間且つ容易に得られる点で重宝でありよく用いられてきている。
【0003】
しかしながら、従来の方法で得られる染料画像はプリンターの機構上、熱転写受像シートのようなシート状の被熱転写材以外には直接形成することは、非常に困難であった。それゆえ、シート状の被熱転写材以外の、任意の形状の被転写体に、上記の熱転写シートを用いた染料画像の形成方法が試みられてきた。
例えば、特開昭62−66997号公報及び特開昭60−203494号公報では、染料画像が形成された熱転写受像シートの基材シートごと被転写体にラベルの如く貼着する方法が提案されている。しかし、この方法では貼着部周囲に熱転写受像シートの厚みに相当する段差が付き、そこから剥がれやすいという難点があった。
そこで、上記段差の問題については、特開平4−229292号公報にて、染料画像が形成された染料受容層を熱転写受像シートの基材シートから剥離し、その染料受容層を被転写体に接触させて高温に加熱して、染料画像のみを被転写体に転移させた後、染料受容層を被転写体から剥離するという染料画像のみを転写する再転写方法が提案され、この方法によれば段差の問題については解決する。ところが、上記特開平4−229292号公報の方法では、熱転写受像シートの基材シートから染料受容層を一旦剥離して被転写体に圧接するという面倒な工程を必要とする上、このような剥離機能を有す為に基材シート及び染料受容層の双方の材質選定上の制約や、剥離した染料受容層のみを取り扱う必要性から、染料受容層は適度の強度と厚みが必要であるなど、染料の受容性等以外の要求性能を満たすための材質選定上の制約もあった。
さらに、使用される熱転写シートの材料に特に限定がなく、記載された熱転写シートを用いて被転写体に染料画像を再転写すると、再転写時の高温加熱により染料が変色してしまうものがあることが見いだされた。このため、感熱昇華転写方式の優れた特徴であるフルカラー画像の再現性を著しく損ない、原画像の色再現を実質上不可能とするものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、熱転写受像シートから染料受容層を剥離せずに熱転写受像シートごと使用できる簡便な再転写方式による画像形成方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
<発明の概要>
上記目的を達成すべく、本発明に利用される熱転写受像シートは、基材シート上に少なくとも染料受容層が設けられた熱転写受像シートにおいて、基材シートと染料受容層間に親水性物質を含有する染料放出層が設けられていることを特徴とするものである。
また、本発明の画像形成方法は、上記熱転写受像シートの染料受容層に染料画像を形成し、次いで該熱転写受像シートの染料受容層側を被転写体に接触し、加熱することにより前記染料画像を被転写体に移行させ、その後熱転写受像シートを剥がすことを特徴とするものである。
【0006】
<発明の具体的な説明>
以下、図面に従って染料画像の再転写方法である本発明の画像形成方法から詳述する。
先ず、熱転写シートを用いた熱転写受像シートへの染料画像の形成は、従来公知の方法により、サーマルプリンタ、ビデオプリンタ等の公知の熱転写印刷装置を用いて行えばよい。図1は、サーマルヘッド5を用いた熱転写印刷装置により、熱転写シート1からの染料を熱転写受像シート2に移行させ、シート2上に染料画像3を形成しているところを示すものであり、このようにして、図2に示すように染料画像3が形成された中間媒体としての熱転写受像シート2aが得られる。
次いで、熱転写受像シート2aから被転写体に染料画像3を再転写させる。図3では、被転写体として外表面が二次曲面をしたセラミックス製の飲料用カップであるマグカップ4の外表面に熱転写受像シート2aを接触させつつあり、これから加熱して再転写せんとするところを示している。
再転写させるには、染料画像3が転写された熱転写受像シート2aの染料受容層側面を、被転写体の被転写面に接触させる。被転写面への接触は、熱転写受像シートとの間に空隙があると、得られる染料画像の濃度が低下したり、ぼけが発生しやすくなるため、加圧密着する。
要は再転写中に浮いたり、ずれたりしない程度に密接あるいは密着していれば良いのであり、熱転写受像シートの被転写面への加圧力は大きい必要はない。密着を維持する手段として、被転写体の転写面と密着性の少ないゴム等の弾性体を介して力を加え、熱転写受像シートを被転写体に圧接するようにするのが好ましい。また加熱は熱転写受像シート側から、あるいは被転写体側から、あるいは両面から行えば良い。被転写体がマグカップのような円柱状物体でその外表面に再転写する場合は、転写すべき外表面部分に熱転写受像シートをあてがい、熱転写受像シートをゴムシートで覆った上、さらにその外側から円弧状のヒータで周囲を覆って、圧接して加熱すれば良い。
【0007】
再転写の加熱温度、加熱時間は、染料分子が被転写体側へ十分に移行するに足る温度及び時間で且つ、熱転写受像シートが被転写体面に融着したり、あるいは染料が品質を該するほど熱変色したりしない程度を加えるが、被転写体の耐熱性、熱容量等によって変わってくる。例えば、図3、図4にて例示するマグカップのような被転写体に対しては、通常100〜250℃で1〜10分程度の加熱を行う。所要時間加熱後、被転写体を空冷もしくは水冷して温度が室温付近まで冷えてから、熱転写受像シートを被転写体から引き剥がす。以上で、被転写体に染料画像が形成される。
図4は、このようにして得られた、染料画像3が再転写したマグカップ4aと、染料画像が抜けた熱転写受像シート2bを示している。
【0008】
次に、本発明の熱転写受像シートについて詳述する。図5は上記した本発明の画像形成方法で用いうる熱転写受像シートの一例を示す縦断面図であり、同図では、熱転写受像シート2は、基材シート21と染料受容層22との間に染料放出層23を介在させた構成である。
また、本発明の熱転写受像シートは図6に示す様に、基材シート21の背面に裏面層24を設けてもよい。裏面層により、再転写時に熱転写受像シートの背面側からゴム等の弾性体で圧力を加える際に弾性体への密着を防止できる。
熱転写受像シート2に用いられる基材シート21としては、例えば、ポリオレフィン系やポリスチレン系等の合成紙類、アート紙、コート紙、キャストコート紙等の塗工紙、グラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙等の薄葉紙、上質紙等の紙類、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、1,4‐ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、塩化ゴム、アイオノマー等の樹脂等のフィルム類、あるいは不織布類、あるいは例えば、紙類と樹脂フィルム類の積層体、又は紙類に樹脂を塗工した複合体のように、上記合成紙類、紙類、樹脂フィルム類相互の複合体であってもよい。また、樹脂中に白色顔料や充填剤を添加して成膜して白色不透明化させたり発泡させたシートとして、この上に上記した樹脂の層を溶融押出法等により設けたものも使用できる。
なお、基材シートとしては透明又は不透明のものが使用できる。基材シートの厚みは、一般に30〜300μm、好ましくは150〜200μmである。
【0009】
染料受容層22は、熱転写シート1から移行してくる熱移行性染料を受容して染料画像を保持し、次いで、最終的な被転写体にその受容した染料画像を熱により再度移行させる、すなわち放出させる中間媒体としての機能を果たす。
このような、熱移行性染料の受容性と放出性という一見矛盾する特性が要求される染料受容層22であるが、基本的には染料を受容する温度条件及び染料を放出する温度条件、並びに用いる染料、熱転写シートの染料担持層及び染料受容層を形成する樹脂等の材料の選択によって、従来公知の染料受容層22を構成する樹脂でも、相当の目的は達成される。ただし、好ましくは、被転写体への転写時に、被転写体表面と融着を起こしにくいものを使用するのが良い。
上記の染料受容層22としては、従来公知の熱可塑性樹脂が使用でき、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン含有樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィン系モノマーと他のビニルモノマーとの共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリアミド、アイオノマー等の一種又は二種以上の混合物が使用される。
【0010】
また、上記熱可塑性樹脂にさらに次のような有機ケイ素化合物を含有させたり、架橋剤を添加して熱硬化性樹脂としたものは、被転写体と融着を起こしにくく、好ましいものである。
使用する有機ケイ素化合物としては、アミノ基、水酸基、メルカプト基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ビニル基等の官能基を含有するシリコーンオイル等の反応性有機ケイ素化合物をその前駆体として用いる。
そして、当該前駆体としての反応性有機ケイ素化合物と反応しうる官能基を有する反応性熱可塑性樹脂とを反応させることによって得られる、グラフトポリマーとした有機ケイ素化合物が先ず挙げられる。なお、ここで反応性熱可塑性樹脂とは、反応性を有す官能基がありさえすれば、上記した熱可塑性樹脂群の中から選ばれるものでよい。
あるいは、有機ケイ素化合物として上記以外に、ポリイソシアネート、ポリアミン等の多官能反応性化合物を架橋剤として用いて、これらと反応しうる官能基を有する、前記反応性有機ケイ素化合物と前記反応性熱可塑性樹脂とを反応させてグラフトポリマーとした有機ケイ素化合物でもよい。
あるいは、ビニル基を有するシリコーンオイル等の反応性有機ケイ素化合物と、ビニル基やアクリロイル基等を有する一般的なモノマーとを共重合させてグラフトポリマーとした有機ケイ素化合物であってもよい。
このようにして得られる有機ケイ素化合物を染料受容層を構成する樹脂中に添加すると、グラフト化された反応性有機ケイ素化合物から構成される枝ポリマー部分が染料受容層の表面に分配され、一方、反応性熱可塑性樹脂から構成される幹ポリマー部分は染料受容層を形成する樹脂と相溶している結果、染料受容層の表面に優れた撥油性及び印字時の滑り性を付与し、また特に再転写の際の被転写体との融着防止効果を付与することも出来る。
これらの有機ケイ素化合物の添加量は、染料受容層を構成する樹脂100重量部当たり1〜50重量部の範囲で使用するのが好ましい。添加量が少なすぎると撥油性及び滑り性が不十分となり、望ましい耐指紋性、耐可塑剤性及び耐擦過性が得られない。逆に添加量が多すぎると、熱転写シートからの染料の移行性が不十分となり高濃度の転写画像が得られず、染料受容層の皮膜強度も低下し、好ましくない。
【0011】
一方、熱可塑性樹脂を架橋させる架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ基を有するポリエポキシド化合物、ポリアミン化合物、下記式7で示すようなキレート化合物、アルコラート、エステルガム等が挙げられ、特にキレート化合物が好ましい。
式7中、
M :金属原子(チタン、アルミニウム、ジルコニウム)
R1:アルキル基、アリール基又は水素等
m+n=3又は4
X :グリコール、β−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ケトエステル、ケトアルコール
を表わす。
また、次の(1)〜(5)は、金属原子Mへの配位様式を例示したものである。なお、R2〜R9は、アルキル基、アリール基、又は水素等である。
【化1】
架橋剤の使用量は、架橋剤と反応性を有する反応性熱可塑性樹脂の種類、官能基数、架橋剤の分子量、官能基数等によって適宜調整するが、熱可塑性樹脂100重量部当たり0.5〜20重量部程度が好ましい。
架橋剤の使用により、被転写体への熱転写受像シートの融着性を防止する効果がある。
【0012】
染料受容層22を基材シート21上に設けるには、従来公知の方法によって行えば良い。すなわち、前記した熱可塑性樹脂、必要に応じて有機ケイ素化合物や架橋剤、さらにその他任意の添加成分を加えて、これらを適当な溶剤と共に溶解もしくは分散して染料受容層形成用塗液又はインキを調整し、これを公知の塗工方法又は印刷方法によって基材シート上に施して、溶剤成分を乾燥させ、さらに必要に応じて架橋剤を用いる場合には加熱硬化させればよい。
このようにして形成する染料受容層22の厚さは、1〜10μm、好ましくは2〜5μm程度の厚さである。
【0013】
本発明の熱転写受像シートには、図5、図6に示すように、基材シート21と熱転写受像層22との間に染料放出層23が設けられている。この染料放出層23により、熱転写受像シートに転移した染料画像の被転写体への移行が促進される。
染料放出層23は、親水性物質を含有する、染料の拡散性が低い層である。親水性物質の具体例としては、寒天やアルギン酸ソーダ等の海草抽出物、アラビアゴムやトロロアオイ等の植物粘物質、カゼインやゼラチン等の動物性蛋白、プルランやデキストラン等の発酵粘物質、デンプン及びデンプン質、メチルセルロースやカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系物質、ポリビニルピロリドンやポリビニルエーテル、ポリマレイン酸共重合体、極性基含有アクリル系共重合体、ポリビニルアルコール等の合成高分子、ポリリン酸ソーダ等の無機高分子等が挙げられる。
その中で特に好適な物質は、ポリビニルピロリドン系樹脂、及びアルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体樹脂であり、これらの樹脂の特徴としては、高い染料放出効果を有すると共に、多くの基材シートや染料受容層との接着にも優れ、さらに形成された被膜の強度が高く、耐熱性にも優れるために、熱転写受像シートに画像を形成する時や、被転写体に画像を再転写する時に、染料受容層が基材シートから剥がれてしまったり、染料転写フィルムや被転写体と熱転写受像シートが熱融着してしまうのを防止することができる。
また、ポリビニルピロリドン系樹脂やアルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体樹脂は、水溶性であると同時にエチルアルコールやイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、あるいはメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等といった比較的沸点が低く乾燥除去が容易な有機溶剤に対しても溶解性が高い物質であり、有機溶剤に可溶な多くの樹脂との相溶性も高く、このことが有機、無機の多くの物質との接着性が高い所以となっている。
【0014】
上記染料放出層を形成する樹脂中、及び染料受容層を形成する樹脂中には、白色度の向上、強度及び硬度の向上、耐光性等を目的として必要に応じて種々の添加剤を含有させてもよい。
白色度を向上させておけば、熱転写受像シートに形成された染料画像を中間画像の段階でその良否を判断し、最終的な被転写体にまで転写すべきかを判断できる。
添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、クレイ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機充填剤、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂粒子又は微粒子等の充填剤、あるいは蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
添加剤の添加量は、染料放出層を形成する樹脂100重量部当たり10〜300重量部の範囲であり、蛍光増白剤の場合は少量で良い。
また、染料放出層を形成する上記樹脂以外に、その他の樹脂を目的を逸脱しない範囲で基材シート及び染料受容層との密着性を向上する目的等で必要に応じて混合使用してもよい。
【0015】
染料放出層23を基材シート21上に設けるには、従来公知の塗膜形成方法によって行えば良い。すなわち、上記の樹脂、その他任意の添加成分を加えて、これらをメタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン等の適当な溶剤と共に溶解もしくは分散して染料放出層形成用塗液又はインキを調整し、これを公知の塗工方法又は印刷方法、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、グラビアリバースロールコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等によって基材シート上に施して、溶剤成分を乾燥させればよい。
このようにして形成する染料放出層23の厚さは、0.05〜5、好ましくは0.1〜3μm程度の厚さである。厚さが薄すぎると、再転写画像の濃度が低下したり、基材シートとの密着が低下して、染料受容層がはがれてしまう等の問題が生じるおそれがあり、厚すぎると非経済的である。
【0016】
熱転写受像シートの基材シートと染料受像層との間の染料放出層の介在により、再転写工程にて染料受像層中に転写形成された染料画像の被転写体への転写が促進される。このメカニズムの詳細は不明であるが、次のように推定される。
すなわち、染料放出層は親水性物質から成り、且つ染料は水不溶性であることから、第1に染料と染料放出層とは親和性が悪い。従って染料放出層は背面のバリヤー層として働き、再転写時に染料分子の背面方向への拡散移動を抑えることで、被転写体方向への拡散移動を促進する。
第2に、染料放出層は吸湿性が他の層に比べて高い。従って、通常の使用下で染料放出層に平衡吸収されている水分が、再転写工程で染料受容層内に拡散移動して進入する。この時、非水溶性の染料と水との親和性が悪い為に反発力が働き、また、水が染料受容層の樹脂に対して可塑剤的に働き、染料受容層内の染料分子の拡散速度を増大させる。
以上の染料放出層の作用により、被転写体に形成される染料画像の濃度が向上する。
また、染料移行の促進により再転写に要する熱および時間が減ずる結果、染料受容層及び被転写体の染料画像の形成される層の双方で染料分子の横方向への拡散移動量を垂直方向の拡散移動量に対して相対的に減少させることになり、画像のぼけが減少すると考えられる。
また、再転写に要する熱および時間が減少する結果、熱転写受像シートの染料受容層が被転写体に融着しにくくなる。
【0017】
熱転写受像シートに裏面層24を設ける場合、アクリル系樹脂、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアラミド樹脂、等が使用できるが、画像を被転写体へ再転写する際に熱転写受像シートが熱によって劣化してしまうのを防止する為には、裏面層を構成する樹脂のガラス転移温度を160℃以上、特に好ましくは180℃以上にすることが望ましく、酢酸セルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリイミド樹脂等が好適である。また裏面層中には、シリカ、タルク等の無機充填剤、テフロン等のフッ素樹脂、シリコーン、ポリアミド樹脂等の樹脂微粒子、ポリエチレンワックス、カルナバワックス等のワックス類、変性シリコーンオイル等の滑剤等を添加してもよい。
なお、本発明の熱転写受像シートは、一度熱転写シートから染料画像の転移を受け、この染料画像を最終的な被転写体に再度転写する上記本発明の方法において中間媒体として使用されるものである。しかし、中間媒体としてではなく、熱転写受像シート自身を最終的な被転写材として用いるものであってもよい。
【0018】
次に、本発明の再転写による画像形成方法で対象となる被転写体について述べる。
被転写体としては、上記した熱転写受像シートのように染料画像をプリンタにて形成するのと違い、プリンタの機構上の制約を受けない。機構状の制約とは、被転写体の厚さ、大きさ、熱容量、外形形状などである。その結果、任意の形を有する被転写体全てを対象と出来る。
例えば、具体的には図4に示すような、陶器、磁器、ほうろう、金属、プラスチック等で出来た飲料用のマグカップ等のコップが挙げられる。
このような、曲面を有する被転写体にも染料画像を形成できる点が、熱転写受像シートを中間媒体として用いる再転写方法の利点である。
さらに、被転写体の材質としては上記した様な陶器、磁器、さらにガラス等のセラミックス、金属、ほうろう、プラスチック等、材質を選ばない。
また、形状は、上記したカップ状は一例であり、この他、ガラス板、プラスチック板、タイル、金属板等の薄板及び厚板状のもの、円柱状、多角形柱状、湾曲物等であってもよい。
あるいは、熱転写受像シートの様に薄いシート状のものであってもよい。
上記のように被転写体としては、形状、材質の限定は受けないが、ガラス、セラミックス等の材質、あるいはプラスチックでも、熱転写受像シートからの染料画像の受容性を確保ないしは向上させて高濃度の画像を得る目的で、被転写体の表面に染料染着性を有する特定の樹脂の表面層を形成しておくことが良い。
かかる樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂等を主体とする樹脂が好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、あるいは臭素化エポキシ樹脂、スチレン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂を硬化剤として、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メルカプタン系化合物、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等を用いて硬化させたものを用いる。
被転写体の表面に形成する上記樹脂の表面層の厚みは、染料を受容するに足る厚みがあればよく、一般に0.5〜20μm程度である。
なお、かかる樹脂層は被転写体の少なくとも被転写面にあれば良い。
【0019】
次に、被転写体に形成する染料画像として使用する染料について述べる。
かような染料としては、熱により昇華又は拡散して熱転写受像シート等の染料供与体から被転写体に移行する熱移行性の染料であり、耐光性、被転写体への染着性等が有れば特に限定されない。しかし、被転写体が飲料コップのようなものであれば、当然に非水溶性の染料が適しているように、被転写体の用途により適宜選択使用されるものであるが、一般的には分散染料、油溶染料が好ましく用いられる。
また、熱転写受像シートの染料放出層の効果により再転写の温度、時間条件をより緩和にできる為、使用できる染料の選択範囲は従来より広い。
これらの染料としては、例えばジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メロシアニン等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレン、トリシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系、スピロピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンラクタム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系等のものが挙げられる。
具体的には例えば以下のような染料が挙げられる。
C.I.(Color Index )ディスパースイエロー51,3,54,79,60,23,7,141,201,231
C.I.ディスパースブルー24,56,14,301,334,165,19,72,87,287,154,26,354
C.I.ディスパースレッド135,146,59,1,73,60,167
C.I.ディスパースバイオレット4,13,26,36,56,31
C.I.ディスパースオレンヂ149
C.I.ソルベントイエロー56,14,16,29
C.I.ソルベントブルー70,35,63,36,50,49,111,105,97,11
C.I.ソルベントレッド135,81,18,25,19,23,24,143,146,182
C.I.ソルベントバイオレット13、C.I.ソルベントブラック3、C.I.ソルベントグリーン3
【0020】
さらに具体的には、例えば、シアン系染料としてカヤセットブルー714(日本化薬製、ソルベントブルー63)、フォロンブリリアントブルーS−R(サンド製、ディスパースブルー354)、ワクソリンAP−FW(ICI製、ソルベントブルー36)、マゼンタ染料としてMS−REDG(三井東圧製、ディスパースレッド60)、マクロレックスレッドバイオレットR(バイエル製、ディスパースバイオレット26)、イエロー染料としてフォロンブリリアントイエローS−6GL(サンド製、ディスパースイエロー231)、マクロレックスイエロー6G(バイエル製、ディスパースイエロー201)、さらに以下に示す骨格のものが挙げられる。
【化2】
【0021】
又、特開昭59−78895号、同60−28451号、同60−28453号、同60−53564号、同61−148096号、同60−289290号、同60−31565号、同60−30393号、同60−53565号、同60−27594号、同61−262191号、同60−152563号、同61−244595号及び同62−196186号及び国際公開WO92/05032に記載の昇華性イエロー染料、同60−223862号、同60−28452号、同60−31563号、同59−78896号、同60−31564号、同60−30391号、同61−227092号、同61−227091号、同60−30392号、同60−30394号、同60−131293号、同61−227093号、同60−159091号、同61−262190号、米国特許4,698,651号及び特願昭62−220793号、米国特許5,079,365号に記載の昇華性マゼンタ染料、特開昭59−78894号、同59−227490号、同60−151098号、同59−227493号、同61−244594号、同59−227948号、同60−131292号、同60−172591号、同60−151097号、同60−131294号、同60−217266号、同60−31559号、同60−53563号、同61−255897号、同60−239289号、同61−22993号、同61−19396号、同61−268493号、同61−35994号、同61−31467号、同61−148269号、同61−49893号、同61−57651号、同60−239291号、同60−239292号、同61−284489号、同62−191191号公報及び特願昭62−176625号、米国特許5,079,365号等の公報や明細書に記載の昇華性シアン染料も好適に用いられる。なかでも、好ましい染料を一般式として例示すると下記の如くなる。
【0022】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0023】
上記一般式において、R、X及びYは下記の置換基を表わす。
R1及びR2
置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、又は置換又は非置換のアラルキル基。
R3
置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルカルボニルアミノ基、置換又は非置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は非置換のアルキルアミノカルボニル基、置換又は非置換のアルキルアミノスルホニル基、又はハロゲン原子。
R4
置換又は非置換のアルコキシカルボニル基、置換又は非置換のアルキルアミノカルボニル基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、複素環基、又はハロゲン原子。
R5
置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルコキシカルボニル基、置換又は非置換のアルキルアミノカルボニル基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルアミノスルホニル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、又は水素原子。
R6
置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のアミノ基、置換又は非置換のシクロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子。
R7
置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアミノ基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のアルコキシカルボニル基、又はハロゲン原子。
R8
置換又は非置換のアリール基、芳香族複素環基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、又は他の電子吸引基。
R9
CONHR10、SO2NHR10、NHCOR11、NHSO2R11、又はハロゲン原子。
R10
置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換の芳香族複素環基。
R11
置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、置換又は非置換のアミノ基、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換の芳香族複素環基。
R12
置換又は非置換のアルキル基。
R13
アミノ基、又は水酸基。
X
ハロゲン原子。
Y
置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換の芳香族複素環基。
【0024】
使用しうる染料は上記したものでも良いが、特に下記式1〜式6の染料が耐熱性が優れており、再転写による染料画像の画像形成方法に適している。
【化7】
【化8】
なお、式1及び式2はイエロー、式3、式4及び式5はマゼンタ、式6はシアンの色相を示す。これらの染料は単独で用いてもよいが、特にマゼンタ用の染料は混合使用することが好ましい。式4及び式5は耐熱性が優れているが、再転写では濃度が薄くなることがあり、式3を混合使用すると濃度低下を抑え高濃度の再転写画像が得られる。
また、これら式1〜式6の染料を主体に用い、必要に応じさらに上記した染料を色相調整のために併用する使用法もある。
本発明の画像形成方法に使用する熱転写シートとしては、前記した式1〜式6の染料を有する熱転写シートを用いれば、より優れた色再現性等を示す被転写体が得られる点を除けば、従来公知の熱転写シートを用いることができる。
【0025】
例えば、かような熱転写シートは図7に示すように、少なくとも支持体11と染料担持層12とから構成される。
支持体11としては、熱転写時の熱に耐えうる耐熱性と強度を有するものであればよく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、塩化ゴム、アイオノマー等の樹脂等のフィルムが使用できる。またコンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類、不織布等、あるいはこれらのものと前記樹脂との複合体であってもよい。
これらの中でも一般的なのはポリエチレンテレフタレートフィルムである。
支持体11の厚さは、その機械的強度及び熱伝導性等が適切になるように、用途、素材に応じて適宜選択すれば良く、一般には例えば、1.5〜50μm程度、好ましくは2〜10μmである。
【0026】
染料担持層12は、上述のような、加熱により昇華又は拡散して被転写材に移行する熱移行性を有する染料を任意の結着剤樹脂中に溶解あるいは分散することにより担持させた層である。
結着剤樹脂としては、従来公知のものが使用されうる。かような結着剤樹脂として具備すべき特性としては、染料と適度の親和性があり、且つサーマルヘッド等の加熱手段による加熱により結着剤樹脂中の染料が昇華あるいは拡散して被転写材としての熱転写受像シート等に転写する移行性がよく、また染料担持層が露出している場合に加熱されても結着剤樹脂そのものは被転写材に融着したり転移したりしないことである。
このような結着剤樹脂としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸・酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、無水マレイン酸共重合体樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独又は混合物として使用される。
これらのなかでも耐熱性、染料移行性の点から、特にポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール等のポリビニルアセタール系樹脂等を主体とした結着剤樹脂を使用することが好ましい。
【0027】
染料担持層12に含有させる染料としては、前記した各種染料、特に好ましくは式1〜式6に示される染料を用いる。これらの染料は単独で用いてもよいが、必要に応じて混合使用してもよい。
通常、フルカラー画像用の熱転写シートは、イエロー、マゼンタ、シアンの3色の染料を使用し、さらにこれに必要に応じてブラックを加えた4色の染料を使用する。
熱転写シートは、これら複数の色成分を有する染料担持層12を、連続した支持体11上に面順次に形成するのが普通であり、面順次で配列する順番は任意である。あるいは、互いに独立した単色の熱転写シートを複数使うことでも目的は達成される。
染料担持層12に含有させる染料の割合は、昇華(又は溶融)温度、染料移行性等によって適宜調整するが、通常は、染料担持層の全重量に対して5〜75重量%、好ましくは10〜60重量%である。5重量%未満であると熱転写受像シートへの印字濃度や熱感度が低下し、逆に75重量%を越えると熱転写シートの保存性や染料担持層と支持体との密着性が低下する。
染料担持層12を支持体11上に設けるには、従来公知の方法によって行えば良い。すなわち、染料、結着剤樹脂その他任意の添加成分を加えて、これらを適当な溶剤と共に溶解もしくは分散して染料担持層形成用塗液又はインキを調整し、これを公知の塗工方法又は印刷方法によって支持体上に施して、溶剤成分を乾燥させればよい。
このようにして形成する染料担持層12の厚さは、0.2〜5.0μm、好ましくは0.4〜2.0μm程度の厚さである。
【0028】
本発明の画像形成方法に用いられる熱転写シートは、図8に示すように、熱転写シート1の背面に滑性層13が設けられた構成のものでもよい。さらに、染料担持層12と支持体11、滑性層13と支持体11の密着性を改良する意味で、コロナ放電処理やアンカー層の設置等の公知の易接着処理を支持体11に施したものでもよい。なお、これら易接着処理は、一種のみ、あるいは任意の複数の組み合わせで使用される。また、図示はしないが、染料担持層の表面上にさらに粘着防止層を設けた構成もある。
滑性層13は、熱転写時に熱転写シートの背面に接触するサーマルヘッドとの融着を防止し且つ滑りをよくするためのものであり、通常は耐熱性がある例えばウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、あるいはイソシアネートとポリビニルブチラールやポリビニルアセトアセタール等の活性水素含有樹脂との反応物を用い、さらに必要に応じてこれに公知の帯電防止剤、滑剤、充填剤等の添加剤を含有させてなる層を0.5〜5μm、好ましくは1〜2μm程度の厚さで設けたものである。
【0029】
粘着防止層は、熱転写シートと熱転写受像シート等の被転写材との熱転写時の融着を防止するものであり、粘着防止性の無機粉末を付着させたのみでもかなりの程度の効果を発揮するが、さらに例えば、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、フッ素含有樹脂の如き離型性に優れた離型性樹脂からなる層を0.01〜5μm、好ましくは0.05〜2μm程度の厚さで設けたものである。
あるいは、結着剤樹脂に上記の粘着防止性の離型性樹脂を混合又はそれらの微粒子や無機微粒子を混合して染料担持層に含有させても良い。
また、ポリシロキサンセグメント等の離型性セグメントを上述した結着剤樹脂にグラフト重合した離型性結着剤樹脂を用いることもできる。
なお、本発明の画像形成方法で使用しうる熱転写シートの形態は、所要の寸法に断裁した枚葉シートであってもよく、また連続状あるいは巻き取り状であってもよく、さらに幅の狭いリボン状であってもよい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例の記載において「部」とあるのは、重量部を意味する。
実施例1
基材シートとして、コート紙(新王子製紙(株)製、サテン金藤 坪量84.9g/m2 )の心材の両面に、内部に微細空隙を有する合成紙(王子油化合成紙(株)製FPU−60)を、通常のドライラミネーション法により貼り合わせた積層シートを用い、その片面に染料放出層として下記組成の染料放出層形成用塗液を乾燥時塗布量が0.7g/m2 になるようにバーコート法にて塗布、乾燥し、次いで、染料受容層として下記組成の染料受容層形成用塗液を乾燥時塗布量が1.5g/m2 になるように同様に塗布、乾燥して本発明の熱転写受像シートを得た。
染料放出層形成用塗工液
ポリビニルピロリドン樹脂 10部
(ISP社製 PVP K−90)
イソプロピルアルコール 90部
染料受容層形成用塗工液
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 20部
(電気化学工業社製 #1000A)
アミノ変成シリコーン 4部
(信越化学工業社製 KF−393)
エポキシ変成シリコーン 4部
(信越化学工業社製 X−22−343)
トルエン 40部
メチルエチルケトン 40部
【0031】
実施例2
染料放出層形成用塗工液を下記の塗工液にした以外は実施例1と同様にして、熱転写受像シートを得た。
染料放出層形成用塗工液
メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体 10部
(ISP社製 ガントレッツ AN−169)
イソプロピルアルコール 20部
水 70部
【0032】
実施例3
染料放出層形成用塗工液を下記の塗工液にした以外は実施例1と同様にして、熱転写受像シートを得た。
染料放出層形成用塗工液
水溶性アクリル樹脂 10部
(日本純薬社製 ジュリマー SP−65T)
イソプロピルアルコール 20部
水 70部
【0033】
実施例4
染料放出層形成用塗工液を下記の塗工液にした以外は実施例1と同様にして、熱転写受像シートを得た。
染料放出層形成用塗工液
セルロース系水溶性樹脂 10部
(ダイセル化学工業社製 HEC SP−200)
イソプロピルアルコール 10部
水 80部
【0034】
実施例5
染料受容層面の反対面に下記の塗工液を乾燥時塗布量が1.5g/m2 となるように塗布した以外は実施例1と同様にして、熱転写受像シートを得た。
耐熱性裏面層形成用塗工液
酢酸セルロース樹脂 5部
(ダイセル化学工業社製 L−70)
メチルエチルケトン 70部
メチルイソブチルケトン 25部
【0035】
比較例1
染料放出層の代わりに下記の組成のプライマー層を乾燥時塗布量が0.7g/m2 とした以外は実施例1と同様にして、熱転写受像シートを得た。
プライマー層形成用塗工液
ウレタン樹脂 10部
(日本ポリウレタン工業社製 N−5137)
メチルエチルケトン 45部
トルエン 45部
【0036】
比較例2
染料放出層の代わりに下記の組成のプライマー層を乾燥時塗布量が0.7g/m2 とした以外は実施例1と同様にして、熱転写受像シートを得た。
プライマー層形成用塗工液
ポリエステル樹脂 10部
(東洋紡績社製 バイロン 200)
メチルエチルケトン 45部
トルエン 45部
【0037】
<熱転写シート>
熱転写シートA
支持体として、背面に耐熱処理をした厚み6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その片面に染料担持層として下記組成の染料担持層形成用塗液を乾燥時塗布量が1.0g/m2 になるようにグラビアコート法にて塗布、乾燥して熱転写シートAとした。
なお、各色を塗布した熱転写シートは面順次につなぎ合わせた。
染料担持層形成用塗液
(A) イエロー成分
式2の染料 3.2部
下記式(i) の染料 4.8部
ポリビニルアセトアセタール樹脂 3.5部
(積水化学工業(株)製 KS−5)
溶剤 70部
(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)
(B) マゼンタ成分
下記式(ii)の染料 2.6部
式4の染料 3.4部
式5の染料 2.3部
ポリビニルアセトアセタール樹脂 3.5部
(積水化学工業(株)製 KS−5)
溶剤 70部
(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)
(C) シアン成分
下記式(iii) の染料 3.1部
下記式(iv)の染料 1.5部
式6の染料 3.1部
ポリビニルアセトアセタール樹脂 3.5部
(積水化学工業(株)製 KS−5)
溶剤 70部
(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)
【0038】
【化9】
<被転写体>
市販のセラミックス製のマグカップを下記の樹脂組成物の液に浸漬して、150℃10分間加熱硬化させて、外表面に厚さ10μmのエポキシ樹脂層を形成した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 100部
(東都化成(株)製 エピコート YD8125)
ポリアミド系硬化剤 25部
(東都化成(株)製 グッドマイド G700)
【0039】
<マグカップ上への画像形成>
上記熱転写シートおよび上記実施例で得た熱転写受像シートを使用し、ビデオプリンタ((株)日立製作所製 VY−200)により受像シート上に染料画像を転写した。ここで、転写用原画としては16段グレースケールを用いた。
次いで、上記のマグカップに染料画像が転写された熱転写受像シートを圧接し、140℃2分間、及び170℃2分間加熱加圧して、染料画像を再転写した。
【0040】
<転写画像の評価>
以上の様にして被転写体のマグカップに再転写されたグレースケール画像のうちの最暗色部分(16段目)の濃度をマクベス社製反射濃度計RD−918で測定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0041】
実施例6
基材シートとして、コート紙(新王子製紙(株)製、サテン金藤 坪量84.9g/m2 )の心材の両面に中密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンの1:1の混合物を溶融押出し法で表裏共30μmにコーティングした樹脂コート紙を用い、その片面に染料放出層として下記組成の染料放出層形成用塗液を乾燥時塗布量が1.5g/m2 になるようにバーコート法にて塗布、乾燥し、次いで、染料受容層として下記組成の染料受容層形成用塗液を乾燥時塗布量が3g/m2 になるように同様に塗布、乾燥して熱転写受像シートを得た。
染料放出層形成用塗液
極性基含有アクリル系樹脂(帯電防止樹脂) 20部
(日本純薬(株)製 ジュリマー SP−65T)
イソプロピルアルコール 80部
染料受容層形成用塗液
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 50部
(電気化学工業(株)製 #1000GK)
ポリエステル樹脂 50部
(東洋紡績(株)製 バイロン 600)
チタネート系キレート剤 10部
〔(C3H7O)2Ti(C5H7O2)2〕
エポキシ変性シリコーン 5部
(信越化学工業(株) X−22−343)
メチルエチルケトン/トルエン(1:1) 400部
【0042】
実施例7
染料放出層形成用塗工液を下記とした以外は、実施例6と同様にして熱転写受像シートを得た。
染料放出層形成用塗液
極性基含有アクリル系樹脂(帯電防止樹脂) 50部
(綜研化学(株)製 エレコンド PQ−50B)
メタノール 20部
【0043】
実施例8
染料放出層形成用塗工液を下記とした以外は、実施例6と同様にして熱転写受像シートを得た。
染料放出層形成用塗液
極性基含有アクリル系樹脂(帯電防止樹脂) 10.0部
(日本純薬(株)製 ジュリマー SP−65T)
ポリビニルアルコール 3.4部
(日本合成化学(株)製 ゴーセノール C−500)
イソプロピルアルコール 40.0部
水 46.6部
【0044】
実施例9
染料放出層形成用塗工液を下記とした以外は、実施例6と同様にして熱転写受像シートを得た。
染料放出層形成用塗液
ポリビニルアルコール 6.8部
(日本合成化学(株)製 ゴーセノール C−500)
水 93.2部
【0045】
実施例10
染料受容層形成用塗工液を下記とした以外は、実施例6と同様にして熱転写受像シートを得た。
染料受容層形成用塗液
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 50部
(電気化学工業(株)製 #1000GK)
ポリエステル樹脂 50部
(東洋紡績(株)製 バイロン 200)
エポキシ変性シリコーン 5部
(信越化学工業(株)製 X−22−343)
メチルエチルケトン/トルエン(1:1) 400部
【0046】
比較例3
染料放出層を設けなかったこと以外は、実施例6と同様にして熱転写受像シートを得た。
【0047】
比較例4
染料放出層形成用塗工液を下記とした以外は、実施例6と同様にして熱転写受像シートを得た。
染料放出層形成用塗液
ポリエステル樹脂 20部
(東洋紡績(株)製 バイロン 200)
メチルエチルケトン/トルエン(1:1) 80部
【0048】
<熱転写シート>
熱転写シートB
支持体として、背面に耐熱処理をした厚み6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その片面に染料担持層として下記組成の染料担持層形成用塗液を乾燥時塗布量が1.0g/m2 になるようにグラビアコート法にて塗布、乾燥して熱転写シートBとした。
なお、各色を塗布した熱転写シートは面順次につなぎ合わせた。
染料担持層形成用塗液
(A) イエロー成分
式1の染料 3部
ポリビニルアセトアセタール樹脂 4.5部
(積水化学工業(株)製 KS−5)
溶剤 90部
(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)
(B) マゼンタ成分
式3の染料 1部
式4の染料 1部
式5の染料 1部
ポリビニルアセトアセタール樹脂 4.5部
(積水化学工業(株)製 KS−5)
溶剤 90部
(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)
(C) シアン成分
式6の染料 3部
ポリビニルアセトアセタール樹脂 4.5部
(積水化学工業(株)製 KS−5)
溶剤 90部
(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)
熱転写シートC
イエロー成分を下記とした以外は、熱転写シートBと同様にして熱転写シートCを得た。
染料担持層形成用塗液
(A) イエロー成分
式1の染料 1.5部
式2の染料 1.5部
【0049】
<被転写体>
市販のセラミックス製のマグカップを下記の樹脂組成物の液に浸漬して、150℃10分間加熱硬化させて、外表面に厚さ10μmのエポキシ樹脂層を形成した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 100部
(東都化成(株)製 エピコート YD8125)
ポリアミド系硬化剤 25部
(東都化成(株)製 グッドマイド G700)
【0050】
<マグカップ上への画像形成>
上記熱転写シートおよび上記実施例で得た熱転写受像シートを使用し、ビデオプリンタ((株)日立製作所製 VY−200)により受像シート上に染料画像を転写した。ここで、転写用原画としては16段グレースケールを用いた。
次いで、上記のマグカップに染料画像が転写された熱転写受像シートを圧接し、200℃3分間加熱加圧して、染料画像を再転写した。
下表2に上記画像形成試験に用いた熱転写シートおよび熱転写受像シートの組合せを示す。
【表2】
【0051】
<転写画像の評価>
以上の様にして被転写体のマグカップに再転写された染料画像の濃度を目視にて評価した結果を表3に示す。
【表3】
【0052】
【発明の効果】
上述のように、本発明の熱転写受像シートは、その染料放出層の作用により、上記本発明の画像形成方法に使用した場合、被転写体上に得られる染料画像の濃度向上、画像ボケ解消、更には、被転写体への熱転写受像シートの融着解消といった優れた効果を奏する。
また、本発明の画像形成方法によれば、わざわざ熱転写受像シートから染料受容層のみ剥離して被転写体に貼り付ける必要がなく、熱転写受像シートをそのまま貼り付ければ良く簡便に画像形成が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の第1工程図。
(熱転写シートから熱転写受像シートに転写中の工程を示す図)
【図2】本発明の画像形成方法の第1工程の結果を示す図。
(染料画像が転写された熱転写受像シートを示す図)
【図3】本発明の画像形成方法の第2工程図。
(染料画像転写済熱転写受像シートを被転写体に熱転写する直前の図)
【図4】本発明の画像形成方法の第2工程の結果を示す図。
(染料画像が転写された被転写体と使用済み熱転写受像シートを示す図)
【図5】本発明の熱転写受像シートの一例の縦断面図。
【図6】本発明の熱転写受像シートの他の例の縦断面図。
【図7】本発明の画像形成方法で用い得る熱転写シートの一例の縦断面図。
【図8】本発明の画像形成方法で用い得る熱転写シートの他の例の縦断面図。
【符号の説明】
1 熱転写シート
2 熱転写受像シート
2a 染料画像が転写された熱転写受像シート
2b 染料画像を再転写後の熱転写受像シート
3 染料画像
4 マグカップ(被転写体)
4a 染料画像が転写されたマグカップ(被転写体)
11 支持体
12 染料担持層
13 滑性層
21 基材シート
22 染料受容層
23 染料放出層
24 裏面層
Claims (3)
- 熱転写受像シートの染料受容層に染料画像を形成し、
前記熱転写受像シートの前記染料受容層側を被転写体に接触し、加熱することにより前記染料画像を前記被転写体に移行させ、その後、
前記熱転写受像シートを前記被転写体から剥がすことを含んでなり、
ここで、前記熱転写受像シートが基材シートの上に染料受容層が設けられてなり、前記基材シートと前記染料受容層との間に親水性物質を含有してなる染料放出層が設けられてなるものであり、
前記染料放出層が、前記染料画像を前記被転写体に移行させる際に、前記染料受容層に形成された前記染料画像の染料分子を被転写体方向へ拡散するのを促進するものである、画像形成方法。 - 前記親水性物質がポリビニルピロリドン系樹脂またはアルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体樹脂である、請求項1に記載の方法。
- 基材シートの非染料放出層側にガラス転移温度が160℃以上の樹脂を主成分とする裏面層が更に設けられている、請求項1または2に記載の方法。
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