JP3578067B2 - 自動ワインダ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、給糸ボビンから巻取パッケージに巻き返される紡績糸の毛羽を伏せる毛羽伏せ装置を有する自動ワインダに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、リング紡績での紡績糸の生産は、原綿や羊毛などの繊維を撚って紡績糸を形成して、給糸ボビンに巻き取る。紡績糸を巻いた給糸ボビンは、自動ワインダに搬送され、自動ワインダにおいて、紡績糸の欠陥を検出しつつ、多数本の給糸ボビンを糸継してコーンやチーズ状のパッケージに巻き返される。自動ワインダでは、給糸ボビンの紡績糸を解舒して、テンサーにより張力を付与しつつ、紡績糸を多数の糸ガイドで案内しながらパッケージに巻き返している。この巻き返しにおいて、紡績糸がテンサーや糸ガイドを通過する度に摩擦を受け、巻き返し前の紡績糸に存在する毛羽が巻き返し後に増加するという傾向にある。また、紡績糸の毛羽は、糸の風合に関係し、毛羽がない方が良いというものではないが、毛羽が多すぎると、後工程で糸をガイドに通す時に引っ掛りが生じる等という問題が起こる。
【0003】
そのため、自動ワインダでは、紡績糸の毛羽の発生を抑制する毛羽伏せ装置を備えることが行われている。紡績糸の毛羽を良好に抑制することができる従来の毛羽伏せ装置として、紡績糸が通過する糸通路内へのエア噴射により旋回流を起こすノズル手段で構成したものが知られている。この毛羽伏せ装置において、撚り止めガイドは、ノズル手段から紡績糸の上下流側に夫々配置されている。この毛羽伏せ装置では、旋回流により、紡績糸をバルーニングして解撚、追撚することで、毛羽を紡績糸を構成する繊維に撚り込むことにより、毛羽伏せ処理を行うものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の毛羽伏せ装置では、毛羽伏せ効果が安定して得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、紡績糸の毛羽伏せ機能を安定して発揮することのできる毛羽伏せ装置を有する自動ワインダを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の自動ワインダは、給糸ボビンから解舒される紡績糸を通過させる糸通路を有し、該糸通路内への気体噴射による旋回流によって前記紡績糸に撚を施すノズル手段を備えた毛羽伏せ装置を有する自動ワインダであって、前記給糸ボビンの上部に位置し、この給糸ボビンから引き出される前記紡績糸の糸通路を規制し、前記給糸ボビンの解舒に応じてその規制位置が下降する解舒補助装置と、この解舒補助装置の下流側かつ前記ノズル手段の上流側に位置し、前記ノズル手段へ給糸される紡績糸に付加テンションを付与するテンション付与装置と、が設けられているものである。
解舒補助装置によって、給糸ボビンから解舒される紡績糸の解舒張力の上昇を抑制し、更にテンション付与装置によって紡績糸の付加テンションを調整することによって、ノズル手段に給糸される紡績糸のテンションを確実に低く、且つ一定とすることができる。この結果、ノズル手段に給糸される紡績糸が規則正しいバルーニングを形成する。このため、糸に常に均等な遠心力が作用するため、毛羽伏せ効果が安定する。
【0008】
請求項2に記載の自動ワインダは、請求項1において、前記テンション付与装置を駆動して該テンション付与装置による付加テンション値を調節する駆動装置と、付加テンションが付与された前記紡績糸のテンション値が略一定となるように前記駆動装置を制御する制御部と、を更に備えるものである。
テンション付与装置によって、付加テンション値を調整することによって、ノズル手段に給糸される紡績糸のテンションを略一定とできる。
【0009】
請求項3に記載の自動ワインダは、請求項1において、前記テンション付与装置がゲート式であるものである。
ノズル手段の上流側に位置するテンション付与装置が、ゲート式であるため、各ゲートを開閉することによって、紡績糸に適切なテンションを付与することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の毛羽伏せ装置を有する自動ワインダについて、図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態例に限定されるものではない。
【0012】
本発明に係る毛羽伏せ装置1を有する自動ワインダXを図5に示す。この自動ワインダXは、多数錘の巻取ユニット65を並設して構成される。ここで、自動ワインダXの各巻取ユニット65は、支持プレート52、張力付与装置53、毛羽伏せ装置1及びヤーントラップ54からなるテンサーボックスTを備えている。これら各巻取ユニット65は、所定位置に供給される給糸ボビンB(リング精紡機で製造された精紡ボビン)から解舒する紡績糸Yを、バルーン規制部材、テンサーボックスT、及び紡績糸Yの欠陥を検出するスラブキャッチャ67等を経て、綾振ドラム68にて回転されるパッケージPに巻き返す。また、各巻取ユニット65には、パッケージ側の糸端を糸継装置69へ案内する上糸吸引部材70と、給糸ボビンB側の糸端を糸継装置69へ案内する下糸吸引部材71とが設けられている。
【0013】
本実施形態例に係る自動ワインダXの毛羽伏せ装置1は、図1に示すように、紡績糸Yの解撚を施すノズル手段2と、給糸ボビンBの上部に位置し、給糸ボビンBから解舒される紡績糸Yの解舒張力の変動幅を抑え、給糸ボビンBの解舒に伴う糸巻量の減少による解舒張力の上昇を抑える解舒補助装置20等からなる第1制御手段と、この第1制御手段の下流側に位置し、ノズル手段2へ給糸される紡績糸Yに付加テンションを付与するゲート式のテンション付与装置53(以下、ゲート式テンサーという。)と、このゲート式テンサー53を駆動し、ゲート式テンサー53による付加テンションを調整するとともに、ノズル手段2の下流側に位置するテンションセンサ11によるテンション検出値に基づいて作動する駆動装置13等からなる第2制御手段とで構成されている。
【0014】
つぎに毛羽伏せ装置1の具体的な構成を説明する。図1及び図2に示す毛羽伏せ装置1は、巻取ユニット65の糸走行路d中に設けられている。なお、紡績糸Yは、羊毛(ウール)や綿などの繊維を撚って形成されたものである。そして、毛羽伏せ装置1は、巻取ユニット65のテンサーボックスTに配置されている。この毛羽伏せ装置1は、ノズル手段2と、ノズル手段2から紡績糸Yの走行方向の下流側及び上流側に配置される撚り止め手段3,4とを備え、張力付与装置として巻取ユニット65に備えられたゲート式テンサー53を上流側の撚り止め手段4として兼用したものである。詳しくは、ゲート式テンサー53を構成する複数の櫛刃の一つを上流側の撚り止め手段4としている。
【0015】
ノズル手段2は、図3及び図4にも示す如く、セラミックス製のノズル本体5と、ノズル本体5を嵌め込んだホルダー6とからなる。ノズル本体5には、紡績糸Yを通過させる糸通路7と、糸通路7内に圧縮エア等を噴射する複数の気体噴射穴8等が形成されている。糸通路7は、ノズル本体5の糸走行方向に貫通する円柱状に形成されている。この糸通路7内には、該糸通路7の軸心Sから平行に偏心した位置に糸導入用スリット9が開口しており、糸導入用スリット9に連続して糸導入口10が形成されている。糸導入口10は、スリット9から扇状に広がって、スリット9とともにノズル本体5の軸方向に貫通している。
【0016】
各気体噴射穴8は、糸通路7内に開口しており、該糸通路7の軸方向(糸走行方向)の中程に形成されている。これら各気体噴射穴8は、糸通路7内周回りに形成され、接線方向に糸通路7内に開口している。このノズル手段2は、各気体噴射穴8から糸通路7内に圧縮エアを噴射することで、糸通路7の内周に沿った旋回流を起こして、紡績糸Yを旋回させバルーニングさせる。ノズル手段2の旋回流は、ノズル手段2の上流側(給糸ボビンB側)で紡績糸Yに解撚を施し、連続してノズル手段の下流側(パッケージP側)で紡績糸Yに追撚を施す方向に形成されている。なお、ノズル手段2の旋回流の方向は、各気体噴射穴8が糸通路7内に開口する方向で決定され、紡績糸Yの撚り方向が逆になれば、図3に示す気体噴射穴8の開口方向も逆になる。
【0017】
下流側の撚り止め手段3は、ノズル手段2の旋回流により紡績糸Yに施される撚りの伝播を止めるもので、ノズル手段2から紡績糸Yの下流側(パッケージP側)に配置されている。この撚り止め手段3は、図4にも示す如く、撚り止めガイド15と、押えガイド16とでなる。撚り止めガイド15は、ノズル手段2の気体噴射穴8から距離aをもって糸通路7の下流側(パッケージP側)に位置して、ノズル手段2のホルダー6の側面に固定されている〔図2参照〕。この撚り止めガイド15は、糸通路7の軸心Sから糸導入口10上に向かって開放されたV字状のガイド溝17を有している。ガイド溝17の底は、糸通路7の軸心S上の近傍に位置している〔図4参照〕。押えガイド16は、撚り止めガイド15から更に紡績糸Yの糸走行方向の下流側(パッケージP側)に位置して、該撚り止めガイド15に並設されている。この押えガイド16は、レバー18によりシャフト19に支持され、該シャフト19を中心として旋回自在にされている。これで、押えガイド16は、紡績糸Yを撚り止めガイド15のガイド溝17内に導入可能な退避位置と、紡績糸Yを撚り止めガイド15で屈曲させた状態でガイド溝17内に保持する作動位置にされる。
【0018】
第2制御手段を構成するゲート式テンサー53は、上流側の撚り止め手段4を兼ねるもので、ノズル手段2の旋回流により紡績糸Yに施される撚りの伝播を止め、ノズル手段2から紡績糸Yの糸走行方向の上流側(給糸ボビンB側)に配置されている。
【0019】
この撚り止め手段4を兼ねるゲート式テンサー53は、紡績糸Yとの接触によりテンションを付与するもので、固定櫛刃56、及び可動櫛刃57のそれぞれを複数備えて構成される。各櫛刃56,57は、糸走行路dの上下で間隔をもって糸走行経路dを挟んで交互に設けられ、可動櫛刃57を固定櫛刃56の各間に挿入可能に配置されている。また、上記複数の櫛刃56,57の1つ(本実施形態ではq点の櫛刃56)が撚り止め手段4となっている。固定櫛刃56は、プレート58によりテンサーボックスTに固定されている。可動櫛刃57は、アーム59によりシャフト19に支持され、該シャフト19を中心として旋回自在にされている〔図1参照〕。そして、可動櫛刃57は、後述するテンション制御手段の一部となるコントローラ12に駆動装置13、詳しくはソレノイド13を介して接続されている。そして、コントローラ12は、ノズル手段2の下流側に設けられているテンションセンサ11に接続され、このテンションセンサ11によって測定された紡績糸のテンション値に応じて、ソレノイド13を駆動させて、可動櫛刃57を固定櫛刃56側に付勢し各櫛刃56,57の先端の円弧状のガイド部60と、紡績糸Yとの押付力を調整して紡績糸Yのテンションを調整している。
【0020】
また、ゲート式テンサー53の複数の櫛刃56,57は、ノズル手段2から撚り止め手段4までの間の紡績糸Yに接して、ノズル手段2の旋回流により生じる紡績糸Yのバルーニングに、適切なテンションを付与する。このテンション付与は、ノズル手段2の下流側に位置するテンションセンサ11によって測定されるテンション値に応じて、駆動する駆動装置13、例えば、ソレノイド等によって、可動櫛刃57を、固定櫛刃56側に付勢し、適切なテンションを与え、バルーンの径方向の広がりを抑えるようになっている。また、テンションセンサ11のテンション値によっては、逆に可動櫛刃57を、固定櫛刃56から離れる方向に駆動し、紡績糸Yに作用しているテンションを緩和し、バルーンを径方向に広げるようになっている。すなわち、上記複数の櫛刃56,57は、紡績糸Yのバルーンの径を調整する手段ともなっている。
【0021】
このゲート式テンサー53の上流側、すなわち、給糸ボビンB側には、図1に示すように、給糸ボビンBの上部に位置し、給糸ボビンBから引き出される紡績糸Yの糸通路を規制し、給糸ボビンの解舒に応じてその規制位置が下降するバルーン規制部材を有する第1制御手段を構成する解舒補助装置20が設けられている。
【0022】
この第1制御手段を構成する解舒補助装置20は、自動ワインダXに固定され、上部に紡績糸Yの出口となる開口36を有した円柱体23〔図7参照〕と、この円柱体23の外方に該円柱体23に被さるように配置され、給糸ボビンBの糸量に応じて昇降する筒体21と、この筒体21の追随機構としてのセンサ25、シリンダ26、図示していないが、センサ25からの信号を受けてシリンダ26を作動させるコントローラとを主要部品としてなっている。
【0023】
筒体21は、側面に昇降ブロック28が取り付けられた第1の腕40を有している。昇降ブロック28は固定ブロック27から垂下されたロッド29に上下摺動自在に挿入されていると共に、固定ブロック27に立設されたシリンダ26のピストンロッド30に連結され、シリンダ26のロッド30の伸縮に応じて筒体21が昇降自在となっている。この筒体21は給糸ボビンBのチェス部24からの距離が略一定になるように順次下降し、給糸ボビンBの芯管41に被さっていく。そして、チェス部24から解舒される紡績糸Yのバルーンを解舒位置の給糸ボビン外径より大きくなるように、筒体21の末端部22は、末広がり状に開口して紡績糸Yのバルーンの広がりを規制し、その広がりを適切に保つことにより解舒角度を大きくし、スラッフィングと毛羽の発生を抑える役目を果たす。
【0024】
また、筒体21の内方には、自動ワインダXの本体フレームに固定され、貫通孔231を有する円柱体23が設けられている。この貫通孔231は、円柱体23の上端には、紡績糸Yの出口となる開口36を形成している。また、円柱体23の下端で下方に向かいテーパー状に広げられ、ノード232〔図7参照〕となっている。また、一般に、給糸ボビンBの芯管41と糸層はわずかな円錐形をしており、糸層はその上側で最小外径となり、芯管41の外径は筒体21の最下限位置で頂部より大きい直径を有する。
【0025】
また、筒体21には、スリット32d付きの腕32が取り付けられており、腕32の下側に磁石32bが張りつけられている。スリット32dはストッパー軸33に案内されており、ストッパー軸33下端のプレート34bに磁石32b及び腕32が当たると、筒体21の下降が停止する。すなわち、三分玉となった時点では、筒体21が下げ止まるようになっている。また、円柱体23は、芯管41の直上に固定されていて、給糸ボビンBの糸量が多いときに、チェス部24から解舒される紡績糸Yのバルーンを広げる役目を果たす。また、給糸ボビンBの糸量が減少したときは、筒体21で形成される紡績糸Yの形態を安定させる役目を果たす。このように、筒体21等からなる解舒補助装置20は、筒体21を上下移動させることで、紡績糸Yのテンションを調整することができるテンション制御手段の第1制御手段となる。
【0026】
つぎに、追随機構としてのセンサ25、シリンダ26、コントローラを説明する。筒体21の第2の腕43に取り付けられたセンサ25が給糸ボビンBのチェス部24を検出し、センサ25の入力を受けるコントローラが切換弁31を作動させ、シリンダ26のピストンロッド30が徐々に伸長し、筒体21とチェス部24との距離を略一定に保てるようになっている。センサ25には拡散反射式センサが用いられる。図示のように、チェス部24の解舒が進むと、センサ25からチェス部24までの距離が大きくなり、やがてセンサ25はOFF信号を発する。このOFF信号を受けたコントローラが切換弁31を介してシリンダ26のピストンロッド30を伸長させる。すると、センサ25からチェス部24までの距離が短くなり、やがてセンサ25はON信号を発する。このON信号を受けたコントローラが切換弁31を介してシリンダ26のピストンロッド30を停止させる。この繰り返しにより、筒体21は解舒と共に順次下降する。なお、チェス部24を監視するセンサ25は水平方向に限らず、チェス部24の真上から水平に至る任意の角度に取り付けることができる。
【0027】
つぎに、毛羽伏せ装置1を有する自動ワインダXの作動をその巻き返しとの関係において説明する。なお、図5においては、紡績糸Yが巻き返されている状態、即ち、給糸ボビンBとパッケージPとの間で紡績糸Yがつながっている状態を示しているが、ここでは、紡績糸Yのつながっていない状態、即ち、紡績糸Yの巻き返し開始前から説明する。
【0028】
図5において、紡績糸Yの巻き返し前では、各巻取ユニット65の綾振ドラム68を停止している。そして、撚り止め手段3の押えガイド16を旋回させることで、撚り止めガイド15から退避する位置にする。また、ゲート式テンサー53の可動櫛刃57を旋回させることで、固定櫛刃56の各間から退避させる。この状態で、給糸ボビンBから紡績糸Yを解舒し、各固定櫛刃56のガイド部60内、及びノズル手段2の糸通路7内に導入した後、綾振ドラム68上の巻取管Bfにつなげる。
【0029】
紡績糸Yを巻取管Bfにつなげた後、押えガイド16を旋回させることで、紡績糸Yを撚り止めガイド15のV字溝17内に押し込む。また、可動櫛刃57を固定櫛刃56に向けて旋回させることで、紡績糸Yを可動櫛刃57と固定櫛刃56とでジグザグ状に挟む。この状態で、ノズル手段2の各気体噴射穴8から圧縮エアを糸通路7内に噴射させ、糸通路7内に旋回流を起こさせる〔図6参照〕。
【0030】
続いて、綾振ドラム68を駆動して、給糸ボビンBから紡績糸Yを解舒して走行させることで、紡績糸Yの巻き返しを開始する。
【0031】
ここで、給糸ボビンBからの紡績糸Yの解舒方法を、前述した第1制御手段を構成する解舒補助装置20による糸解舒方法を説明する。図7(a)〜(c)は筒体21がどのようにバルーンを規制しているかを示す図である。同図(a)は、空ボビン排出に続く新しい給糸ボビンBの供給後に筒体21の末端部22が芯管41に被さった作動状態まで下降した状態を示す。同図(b)は五分玉の状態を示し、筒体21が下降した状態となっている。特に筒体21はチェス部24の解舒に追随するように順次下降し、チェス部24から解舒される糸のバルーンを解舒位置における給糸ボビンB外径より大きくし、給糸ボビンB上に残る糸と解舒される糸同士の擦れ合いが少なくなる結果、スラッフィングと毛羽の発生が抑えられる。同図(c)は三分玉の状態を示す。特に、三分玉近くでは解舒張力が急激に増大する傾向にあるが、筒体21とノード232を有する円柱体23とにより、安定したバルーンが形成され、解舒張力の急激な増大が抑制されている。また、この三分玉以降ではチェス部24の形状が徐々に崩れ始める時点であり、これ以上筒体21を下げても、スラッフィングと毛羽の抑制効果に差が生じなくなる。
【0032】
図5及び図6に戻り、走行される紡績糸Yは、撚り止めガイド15のV字溝17、及びゲート式テンサー53を撚り止め点p,q(節)としてバルーニングを開始する。この紡績糸Yのバルーニングは、糸通路7内に噴射される旋回流により、ノズル手段2の糸走行方向の上流側で紡績糸Yに解撚を施し、連続してノズル手段2の糸方向方向の下流側で紡績糸Yに追撚を施すようされる。
【0033】
バルーニングが開始されると、走行する紡績糸Yは、第2制御手段であり、撚り止め手段4を兼ねるゲート式テンサー53の各櫛刃56,57との接触により、テンションが付加される。この時、ソレノイド13が駆動されて、予め高めのテンションが紡績糸7に加わるように可動櫛刃56が固定櫛刃57側に付勢されてバルーンの広がりが規制される。これにより、紡績糸Yのバルーンは、ゲート式テンサー53の各櫛刃56,57内の複数点で、紡績糸Yの下流側(ノズル手段2側)に向かって潰される(絞られる)状態となり、該各櫛刃56,57内に撚り止め点qが形成される。また、紡績糸Yのバルーンを複数点で潰すことにより、撚り止め点p,qとの間で、2つのバルーンB1,B2若しくはそれ以上が形成される。このため、紡績糸Yの平均繊維長が長く、長い毛羽が存在する紡績糸Yであっても、毛羽伏せ処理を効果的に実施することが可能となる。
【0034】
走行される紡績糸Yは、バルーニングに伴って、仮撚りが施される。仮撚りは、ノズル手段2より紡績糸Yの上流側(テンサー53側)で解撚を形成し、ノズル手段2より紡績糸Yの下流側(撚り止めガイド15側)で追撚を形成する。この仮撚りは、撚り止めガイド15及びテンサー53の撚り止め点p,qにより伝播が止められ、各撚り止め点p,qの間に限定される。そして、形成されるバルーンは、テンションが略一定に作用しているため、常に略一定の大きさに形成される。解撚区間においては、紡績糸Yの平均繊維長より距離bが長いため、長い毛羽を繊維に撚り込ませるために充分な解撚が施される。また、解撚区間においては、紡績糸YのバールンB2を絞る効果により、毛羽に作用する遠心力を小さくして、毛羽の先端が撚り込むべき方向に対して反対側に広がらないよう抑制される。また、追撚区間においては、距離aを距離bより短くすることにより、毛羽に作用する遠心力を小さくして、毛羽の先端が撚り込むべき方向に対して反対側に広がらないよう抑制される。これにより、紡績糸Yは、毛羽伏せ処理を施すのに充分な解撚が施され、続く追撚により長い毛羽が糸を構成する繊維に撚り込まれ、毛羽伏せ処理が行われることになる。
【0035】
つぎに、本実施形態例に係る毛羽伏せ装置1を有する自動ワインダXによる具体的な効果を図8により説明する。図8(a)は本実施形態に係るテンション制御手段の第1制御手段、第2制御手段を用いた場合、図8(b)は第1制御手段のみ、即ち、解舒補助装置20のみを用いた場合、図8(c)は、いずれのテンション制御手段を使用しなかった場合を示す。同図(a)では、第2制御手段で、付加テンションを図に示すように、給糸ボビンBの糸量に応じて調整し、且つ、第1制御手段によって、給糸ボビンBから解舒される糸のバルーンの大きさを規制することによって、解舒張力が巻始め時から常に一定となっている。また、同図(b)では、巻始め時の解舒張力が低く、巻終わり時の解舒張力が高くなっている。また、同図(c)では、テンション切れや、スラッフィングが頻発している。
【0036】
そして、走行する紡績糸Yは、毛羽伏せ装置1により毛羽伏せ処理が行われた後、巻取管BfにパッケージPとして巻き返される。なお、本実施形態に係る毛羽伏せ装置1を有する自動ワインダXでは、図8(a)に示すように、解舒張力が巻始めから巻終りまで、常に一定であったため、安定して毛羽伏せ効果が得られ、毛羽立ちの少ない紡績糸が巻かれたパッケージPとなった。
【0037】
また、各巻取ユニット65は、紡績糸Yの巻き返し中に、紡績糸Yの欠陥を発見等すると、紡績糸Yを切断し、欠陥を除去し糸継を行う。このときは、毛羽伏せ装置1における気体噴射を停止して、給糸ボビンB側の糸端をサクションノズル54で吸引・捕捉する。そして、下糸吸引部材71をバルーンブレーカ66の近傍まで旋回させ、サクションノズル54で捕捉されている糸端を吸引して糸継装置69へ案内する。このとき、ゲート式テンサー53の可動櫛刃57及びノズル手段2の押えガイド16等は退避位置にあり、給糸ボビンB側の糸端はテンサー53、ノズル手段2及び下流側の撚り止め手段3に通される。同時に、上糸吸引部材70にてパッケージP側の糸端を吸引して、糸継装置69に案内することで、糸継装置69により糸継ぎを実行する。糸継ぎが終わると、テンサーボックスTのテンサー53、毛羽伏せ装置1等を作動位置〔図6参照〕にして、紡績糸Yの毛羽伏せ処理を付加した巻き返しが開始される。
【0038】
なお、本発明の自動ワインダXでは、第2制御手段のノズル手段2に給糸される紡績糸Yに付加テンションを付与するテンション付与装置にゲート式テンサー53を用いた場合を例示したが、このテンション付与装置には、ディスク式テンサーを用いてもよい。
【0039】
また、本実施形態例におけるテンション制御手段の第1制御手段は、給糸ボビン上の解舒補助装置20に設けられたセンサ25と給糸ボビンBのチェス部24との距離によって筒体21の上下移動によって、解舒テンションの増大を抑えるものであったが、例えば、時間の経過によって、筒体21を上下移動させるようにしてもよい。
【0040】
また、第2制御手段は、ノズル手段2の下流側のテンションセンサ11によって測定されたテンションによって、駆動されて紡績糸Yへのテンションを制御したが、第1制御手段同様に、給糸ボビンに巻かれた糸量の減少に伴って、ゲート式テンサー53によるテンション付与装置を制御するようにしてもよい。
【0041】
また、上流側の撚り止め手段4は、種々の手段が採用できる。例えば、下流側の撚り止め手段3と同じものであったり、1枚の撚り止めガイドで紡績糸Yを撚り止めする手段、2枚のプレートを突き合わせて紡績糸Yを挟持して撚り止めする手段であったり、2枚のプレートの間に1枚のプレートを挿入して、紡績糸Yのバルーンを複数点で絞りつつ撚り止めする手段であってもよい。
【0042】
そして、本発明の自動ワインダは、給糸ボビンBの解舒時、或いはテンサー53での張力付与時に発生する毛羽を効果的に伏せることができ、毛羽の発生を抑制した紡績糸Yの巻き返しが可能となる。本発明における、自動ワインダは、給糸ボビンの糸をパッケージに巻き返すものであり、例えば、複数の給糸ボビンの糸を1個のパッケージに巻き返すものであってもよい。給糸ボビンは、紡績糸を巻いたものであり、精紡ボビンの他、パッケージであってもよい。
【0043】
また、毛羽伏せ装置1の出口側近傍にサクションノズル54を配置しておけば、毛羽伏せ装置1から出る毛羽を飛散させずに回収することもできる。さらに、毛羽伏せ装置1の下流に紡績糸Yのワックスを付与するワキシング装置を付設することもできる。さらに、繊維を撚った紡績糸Yに撚りを施す旋回流を起こさせる気体としては、圧縮エアの他に、蒸気又は水滴を含む加湿エアを用いることができる。蒸気を用いると、糸通路17を通過する紡績糸Y及び糸通路7の内周を加熱することができ、糸通路7内周との接触でアイロン掛けと同様な状態となって、毛羽の少ない形態を維持するヒートセットができる。また、加湿エアや蒸気に晒すことにより、紡績糸Yの毛羽を柔らかくできる。これによって、糸通路7で撚りが施される紡績糸Yは、解撚と追撚による仮撚にて柔らかくされた毛羽を効果的に繊維に絡ませて巻き込むことができる。また、旋回流を起こさせる気体としては、乾燥加熱エアを用いることもできる。
【0044】
なお、本発明に係る自動ワインダXは、前記の実施形態例に限定されるものでなく、例えば、図9に示すように、ノズル手段2とゲート式テンサー53とが上下逆に配置した場合であっても、給糸ボビンBの糸量減少に伴う給糸ボビンBからの解舒張力の上昇を抑えることができる解舒補助装置だけを用いることで、ノズル手段2に給糸される紡績糸Yのテンションを略一定に近づけることができ、紡績糸Yの毛羽伏せ効果を安定させることができる。なお、ゲート式テンサー53は、前述の実施形態例とは異なる働きをし、この場合は、紡績糸Yの巻取力を調整する働きを行うことになる。また、図示していないが、ワックス付与装置は、このゲート式テンサー53とサクションノズル54の間に設けることができる。この実施形態の場合、ゲート式テンサー53による付加テンションがノズル手段2に供給される紡績糸Yに付加されないため、ノズル手段2に供給される紡績糸Yのテンションを低くすることができる。
【0045】
また、テンション制御手段としては、以上に説明したものの他、綾振りドラムの回転速度を制御することで、巻取速度を制御し、これにより、紡績糸Yのテンションを略一定とするものであってもよい。
【0046】
【発明の効果】
本発明の自動ワインダでは、解舒補助装置によって、給糸ボビンから解舒される紡績糸の解舒張力の上昇を抑制し、更にテンション付与装置によって紡績糸の付加テンションを調整することによって、テンション値を適切な値で略一定とすることで、高い毛羽伏せ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動ワインダの要部の模式図である。
【図2】本発明に係る自動ワインダの巻取機のテンサーボックスを示す斜視図である。
【図3】本発明に係る自動ワインダの毛羽伏せ装置のノズル手段の断面図である。
【図4】本発明に係る自動ワインダの毛羽伏せ装置の上面図である。
【図5】本発明に係る自動ワインダの概略全体構成図である。
【図6】押えガイド及びゲート式テンサーの可動櫛刃が作動位置となった毛羽伏せ装置の側面断面図である。
【図7】給糸ボビンからの紡績糸の解舒状態を説明するための図である。
【図8】解舒張力の変動図である。
【図9】本発明に係る自動ワインダの他の実施形態例を示す図である。
【符号の説明】
1 毛羽伏せ装置
2 ノズル手段
3 撚り止め手段
4 撚り止め手段
7 糸通路
53 ゲート式テンサー
56 固定櫛刃
57 可動櫛刃
X 自動ワインダ(巻取機)
Y 紡績糸
d 糸走行路
Claims (3)
- 給糸ボビンから解舒される紡績糸を通過させる糸通路を有し、該糸通路内への気体噴射による旋回流によって前記紡績糸に撚を施すノズル手段を備えた毛羽伏せ装置を有する自動ワインダであって、
前記給糸ボビンの上部に位置し、この給糸ボビンから引き出される前記紡績糸の糸通路を規制し、前記給糸ボビンの解舒に応じてその規制位置が下降する解舒補助装置と、
この解舒補助装置の下流側かつ前記ノズル手段の上流側に位置し、前記ノズル手段へ給糸される紡績糸に付加テンションを付与するテンション付与装置と、が設けられている自動ワインダ。 - 前記テンション付与装置を駆動して該テンション付与装置による付加テンション値を調節する駆動装置と、付加テンションが付与された前記紡績糸のテンション値が略一定となるように前記駆動装置を制御する制御部と、を更に備える請求項1に記載の自動ワインダ。
- 前記テンション付与装置がゲート式である請求項1に記載の自動ワインダ。
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