JP3577398B2 - 弾性小型防振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘性流体の抵抗力によって振動減衰作用を発揮させるようにした音響機器等に用いられる粘性流体封入式の弾性小型防振装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビデオテ−プレコ−ダ−やコンパクトディスク等の音響機器は、外部からの振動入力によって音飛びや、誤動作等が生じている。その対策として従来から各種の弾性小型防振装置が提案されているが、そのなかでも、優れた防振性能を発揮するものとして、特開昭61−189336 号公報や特開昭61−201946 号公報に記載されている、ゴム袋やゴム・エラストマ−筒体等の弾性収容体に、シリコ−ンオイルのような粘性流体を封入して、機器を支持させる構造の弾性小型防振装置が明らかにされている。 これは封入された粘性流体によって生じる抵抗力が、振動減衰力として働くものである。従って、粘性流体として封入するシリコ−ンオイルに高粘度のものを用いることで振動減衰効果を高められる。
【0003】
さらに特開昭63−308241 号公報には、シリコ−ンオイルによって溶解されない固体粒子を混合した粘性流体を封入したものが記載されており、さらに振動減衰効果が高まることが明らかにされている。混合する固体粒子としては、シリコ−ンオイルとの相性(分離性、分散性)の点で、無機系・有機系と種々検討されており、これら粉末を混合した粘性流体を封入した弾性小型防振装置は、その高い振動減衰効果により、音響機器等に優れた防振効果を与え、振動に対する高い信頼性を確保したことは、周知の事実である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、音響機器等の使用される環境が広範になるにつれ、振動に対する更なる高信頼性が求められるようになっている。つまり、常温(25℃)での高い防振効果を維持しつつ、使用環境温度が低温(−10℃)から高温(60℃)の範囲に至まで、防振効果の変化ができるだけ少ないものとの要求である。
【0005】
前記した従来の弾性小型防振装置で使用される粘性流体の抵抗力(粘度)は、温度で変化してしまい、シリコ−ンオイル(特にジメチルシリコ−ンオイル)の場合は、この種粘性流体の中で温度による粘度変化が特に小さいものであるが、それでも25℃〜80℃の間で40〜50%粘度が変動する。
【0006】
粉体を混合した粘性流体も、基本的にはこのシリコ−ンオイルの粘度変化に影響されるため、使用温度範囲で変化がない固体粉末をできるだけ多く混合する方法がとられている。しかしこの方法は、粘性流体の流動性がなくなり固体状態になる境界以上に粉体量を多く混入すると、シリコ−ンオイルの温度による粘度変化の影響を少なくできるが、収容体内で粘性流体の抵抗力を振動減衰力とさせる構造において、粘性流体に流動性がないと、内部に空間が発生し防振特性を低下させるという現象が生じてしまう。したがって、粉体の充填量には限界があり、粉体を混合する方法でも、粘性流体の温度による粘度変化(つまり、粘性流体の抵抗力の変化)を抑えることが難しい。
【0007】
以上述べたように、シリコ−ンオイルに単純に固体粉末を混合した粘性流体を用いた場合、温度が高くなるにつれ、粘度低下による抵抗力の低下がおこり、それが弾性小型防振装置の防振効果の低下を引き起こしてしまう。したがって、使用環境温度が低温(−10℃)から高温(60℃)の範囲において、その防振効果の変化をできるだけ少ないものにするとの要求に応える、言い換えると、防振効果の温度による変化をその封入される粘性流体で調整することは難しかった。
【0008】
使用環境温度による粘性流体の抵抗力の変化は、より具体的には、それを封入した弾性小型防振装置の共振点での共振倍率の変化と共振周波数の変化に現れる。温度が低温から高温になるにつれ、共振倍率が大きくなり、共振周波数は低周波数側に移行していくことが、経験上知られている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1に、粘性流体の温度による抵抗力の変化を改善し、所定の粘性流体を封入することにより、共振倍率の温度による変化量を小さく調整できる弾性小型防振装置を提供するものである。
【0010】
また、同加速度の振動において、振動の振幅は周波数の二乗に反比例するため、共振倍率の変化が同じであっても、共振周波数の変化が小さければ、防振特性の使用環境温度での変化は極端に小さくなると考えられる。
【0011】
したがって本発明は第2に、粘性流体の温度による抵抗力の変化を改善し、所定の粘性流体を封入することにより、共振周波数の温度による変化量を小さく調整できる弾性小型防振装置を提供するものである。
【0012】
さらに本発明は第3に、粘性流体の温度による抵抗力の変化を改善し、所定の粘性流体を封入することにより、共振倍率の温度による変化と共振周波数の温度による変化量をともに小さく調整できる弾性小型防振装置を提供するものである。 したがって、収容体の構成素材、および構造、さらには加えられる振動の方向等を任意設定しても、使用する粘性流体を選択することによって、その設定した内容に沿って、共振倍率・共振点周波数の温度による変化が少ない弾性小型防振装置を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、このような課題を解決するために、弾性収容体内に粘性流体を封入し、粘性流体の主に粘性等によって生じる抵抗力により振動減衰作用を発揮させるようにした弾性小型防振装置において、粘性流体として、共振倍率の温度による変化量を小さく調整する目的で、シリコ−ンオイル100重量部に対し、ポリメチルシルセスキオキサン粉末を55〜120重量部と未表面処理湿式微粉末シリカを1〜10重量部の複合粉末を添加混合して得られる粘性流体を用いた。
【0014】
また粘性流体として、共振周波数の温度による変化量を小さくする目的で、シリコ−ンオイル100重量部に対し、ポリメチルシルセスキオキサン粉末を55〜120重量部と未表面処理乾式微粉末シリカを1〜10重量部の複合粉末を添加混合して得られる粘性流体を用いた。
【0015】
さらに粘性流体として、共振倍率と共振周波数の温度による変化量を小さく調整する目的で、粘性流体としてシリコ−ンオイル100重量部に対し、ポリメチルシルセスキオキサン粉末を55〜120重量部と未表面処理乾式微粉末シリカを1〜9重量部と未表面処理湿式微粉末シリカを1〜9重量部の複合粉末を添加混合して得られる粘性流体を用いたことを特徴とした弾性小型防振装置である。
【0016】
本発明で使用されるシリコ−ンオイルは、主にジメチルシリコ−ンオイルである。必要に応じて他のシリコ−ン系オイルを添加しても構わないが、その添加によって温度による粘度変化が大きくなることは望ましくない。
【0017】
ジメチルシリコ−ンオイルの粘度としては、特に限定はないが、比較的低粘度であるとポリメチルシルセスキオキサン粉末が分離し、高粘度であると極端に粘性流体の作業性が問題となるため、1000〜100000cst が適切である。
【0018】
また、通常シリコ−ン樹脂パウダ−と呼ばれているポリメチルシルセスキオキサン粉末は、オイル・樹脂等への分散性がよく、凝集し難い材料として広く応用されている。一般的には、メチルトリアルコキシシランまたはその加水分解・縮合物をアンモニアまたはアミン類の水溶液中で加水分解・縮合させて得られる。ポリメチルシルセスキオキサン粉末は、もちろん他の方法によって得られたものであっても構わない。その粉末の粒径に関して、今回の発明の効果において特に限定はないが、粉末製造上の点から0.1〜100μmの範囲が限界であり、特に、混合作業性および分離への配慮から、粒径は5〜50μmが好ましい。
【0019】
粘性流体中のポリメチルシルセスキオキサン粉末の量が多くなるほど振動減衰効果が増すことは、他の固体粉末を混合した場合と同様であるが、シリコ−ンオイル100重量部に対して、ポリメチルシルセスキオキサン粉末の量が120重量部を越えると、粘性流体の流動性がなくなり固体状態となり、前記した通り収容体内に空気が入り、防振効果が低下する。また、55重量部を下回ると粉体混合の効果が極端に小さくなることが実験的に確認された。これは、粉体を球状と考えた時に、その球径以上に粉体間隔があき、振動減衰効果の要因である粉体同士のこすれがあまり起こらないためである。したがって、本発明に適用する粘性流体のシリコ−ンオイル100重量部に対するポリメチルシルセスキオキサン粉末の量は、粉体量が55〜120重量部であり、特に好ましくは、65〜90重量部の範囲のものがよい。
【0020】
本発明の粘性流体は、ポリメチルシルセスキオキサン粉末の単独混合系を、未表面処理湿式微粉末シリカと未表面処理乾式微粉末シリカとの複合混合系にしたことに配合上の特徴があるが、その具体的な説明の前に、粘性流体の振動減衰効果の温度による低下について少し説明をする。
【0021】
物質は一般的に弾性と粘性をもっており、振動のような動的な荷重をかけた場合、それが動的弾性と損失弾性として現れる。ある周波数における動的弾性と損失弾性を合成したものが複素弾性であり、その比が Tanδ(損失正接)になる。この Tanδが大きいほど振動吸収効果が大きい。共振点においても同様で、 Tanδが大きいほど共振倍率が小さいことが一般によく知られている。
【0022】
シリコ−ンオイルとポリメチルシルセスキオキサン粉末からなる粘性流体も、共振点付近の周波数で、小さい動的弾性と大きい損失弾性を有するが、測定温度が高くなるにつれ、動的弾性と損失弾性の両方とも低下することが、測定の結果判明した。その際、損失弾性の低下率の方が動的弾性の低下率より大きいため、この粘性流体の Tanδが温度上昇に伴い低下してしまう現象が確認された。
【0023】
さらに、この粘性流体を収容体内に封入し簡易な弾性小型防振装置として、各温度での防振特性を評価した結果、図3のように、弾性小型防振装置の温度による共振倍率の変化(図3においては、それから導きだされる Tanδの変化)は、粘性流体自体の Tanδの変化と関連しており、共振周波数の変化は、粘性流体の複素弾性の変化と関連していることが判明した。つまり、温度が上昇するにつれ、この粘性流体の Tanδが低下(粘性流体の損失弾性の低下率の方が動的弾性の低下率より大きい)する現象が、共振倍率に大きく影響しており、粘性流体の複素弾性が低下(動的弾性と損失弾性の両方とも低下する)する現象が、共振周波数に大きく影響しているということである。
【0024】
したがって、粘性流体を封入する収納体の材質および形状に多少左右されることは云うまでもないが、大方は、粘性流体とそれを封入した弾性小型防振装置の防振特性は以上のような関係性を有すると考えられる。
【0025】
そこで、シリコ−ンオイルとポリメチルシルセスキオキサン粉末による粘性流体の Tanδの温度による変動を抑える、つまり、共振倍率の温度による変動を小さく調整するため、鋭意検討の結果、未表面処理湿式微粉末シリカの複合添加という本発明の第1の特徴に至ったのである。ここで、未表面処理湿式微粉末シリカとは、湿式法、つまり、ケイ酸ソ−ダと鉱酸及び塩類を水溶液中で反応させて得られるもので、一般的にはホワイトカ−ボンと呼ばれるもので、反応の仕方、つまり、ケイ酸ソ−ダと硫酸等の鉱酸で直接分解する直接法と、ケイ酸ソ−ダを塩化マグネシウム等の塩類と反応させて、まずケイ酸塩類を生成させ、次に硫酸等の鉱酸または炭酸ガスで分解する間接法に分類される。また直接法は、さらに、濾過し易いシリカを析出させる沈殿法と、酸性側で反応し生成するゾル状シリカをゲル化させるゲル法に分かれる。本発明に用いられる未表面処理微粉末湿式シリカは、その製造方法等に限定はないが、表面にシラノ−ル基が存在する湿式シリカである。
【0026】
この未表面処理湿式微粉末シリカは、液体・プラスチック・ゴム等の添加剤として広く用いられている。その一次粒子径としては、ほぼ10〜50nmであるが、凝集して1〜数100μmの二次粒子径を形成する。したがって、未表面処理湿式微粉末シリカといっても、種々の粒径のものが存在するが、粉砕・分球等により1〜10μmに調製されているものが広く一般に応用されている。本発明においても、この粒径範囲において、十分な効果を得ることができるため、あえて粒径の限定は行わない。
【0027】
未表面処理湿式微粉末シリカの添加量は、シリコ−ンオイル100重量部に対して、1重量部未満だと発明の効果つまり、粘性流体の温度による抵抗力の変化を抑えられない。また、10重量部より多くなると、未表面処理湿式微粉末シリカの添加に困難を生じるだけでなく、ポリメチルシルセスキオキサン粉末の量を55重量部に抑えても粘性流体の流動性がなくなりほとんど固体状態になり、前出の不具合、つまり収容体内で抵抗力を振動減衰力とさせる構造において、内部に空間が発生し、防振特性を低下させる現象が起こる。したがって、未表面処理湿式微粉末シリカの添加量は、シリコ−ンオイル100重量部に対して、1〜10重量部、好ましくは、4〜6重量部である。
【0028】
次に、シリコ−ンオイルとポリメチルシルセスキオキサン粉末による粘性流体の複素弾性の温度による変動を抑える、つまり共振周波数の温度による変動を小さく調整するため、鋭意検討の結果、未表面処理乾式微粉末シリカの複合添加という本発明の第2の特徴に至ったのである。この未表面処理乾式微粉末シリカとは、乾式法、一般的には四塩化ケイ素の酸水素焔中での高温加水分解により製造されるSiO2微粉末のことで、表面にシラノ−ル基が存在するものである。したがって、このシラノ−ル基を疎水化した表面処理乾式微粉末シリカは、今回の発明の範囲ではない。この未表面処理乾式微粉末シリカは液体・プラスチック・ゴム等の添加剤として広く用いられているが、その粒径(一次粒子)としては、5〜30nmの範囲のものが殆どである。本発明においても、この粒径範囲においては十分な効果を得ることができるため、あえて粒径の限定は行わない。その添加量は、未表面処理湿式微粉末シリカを使用する場合と同様に、シリコ−ンオイル100重量部にたいして、1重量部未満だと発明の効果つまり、粘性流体の温度による抵抗力の変化を抑えられない。また、10部より多くなると、未表面処理乾式微粉末シリカの添加に困難を生じるだけでなく、ポリメチルシルセスキオキサン粉末の量を55重量部に抑えても粘性流体の流動性がなくなり、ほとんど固体状態になり、前出の不具合、つまり、収容体内で抵抗力を振動減衰力とさせる構造において、内部に空間が発生し、防振特性を低下させる現象が起こる。したがって、未表面処理乾式微粉末シリカの添加量は、シリコ−ンオイル100重量部に対して、1〜10重量部、好ましくは4〜6重量部である。
【0029】
さらに、シリコ−ンオイルとポリメチルシルセスキオキサン粉末による粘性流体の動的弾性と損失弾性の温度による変動を調節し、 Tanδと複素弾性の両方の温度による変動を抑える、つまり、共振倍率と共振周波数の温度による変動を小さく調整するため、鋭意検討の結果、未表面処理乾式微粉末シリカと未表面処理湿式微粉末シリカの両方を複合添加する本発明の第3の特徴に至ったのである。その添加量は、シリコ−ンオイル100重量部に対して、未表面処理乾式微粉末シリカと未表面処理湿式微粉末シリカの合計が10重量部を超えると、ポリメチルシルセスキオキサン粉末の量を55重量部に抑えても、粘性流体の流動性がなくなり殆ど固体状態になり、前出の不具合、つまり収容体内で抵抗力を振動減衰力とさせる構造において、内部に空間が発生し、防振特性を低下させる現象が起こる。また、そのそれぞれが、1重量部未満であると、発明の効果、いわゆる粘性流体の Tanδもしくは複素弾性の温度による変動を抑えることができない。したがって、未表面処理乾式微粉末シリカの添加量は、シリコ−ンオイル100重量部に対して、1〜9重量部、好ましくは2〜3重量部であり、未表面処理湿式微粉末シリカの添加量は、シリコ−ンオイル100重量部にたいして、1〜9重量部、好ましくは、3〜5重量部である。
【0030】
上記の3種の粘性流体の製造法に関しては、未表面処理湿式微粉末シリカ、あるいは未表面処理乾式微粉末シリカの分散性を確保できれば、攪拌機・インクロ−ル・ニ−ダ−等いずれの混合方法でもよく、また、混合の順番、つまり所定量のシリコ−ンオイルとポリメチルシルセスキオキサン粉末を攪拌機等で十分混合した後、未表面処理乾式微粉末シリカ、あるいは未表面処理湿式微粉末シリカを添加混合しても、あるいは全部一緒に攪拌混合してもかまわない。
【0031】
本発明は、上記したような粘性流体を任意の収容体内に封入することに特徴をもつ、共振倍率と共振周波数の単独あるいはその両方の温度による変動を小さく調整する弾性小型防振装置を与えるものである。したがって、その収容体の構成素材、および構造、さらには加えられる振動の方向等を任意設定しても、その設定した内容に沿って、発明の効果、すなわち共振倍率・共振点周波数の温度による変動が少ない弾性小型防振装置を得ることができる。
【0032】
【実施例】
本発明の効果をわかりやすくするため、図1に示すような、スチレン系熱可塑性エラストマ−を用いた収容体を使い、種々の粘性流体を封入後、弾性小型防振装置としたものを作製した。さらに、図2に示すようなマスモデルに3カ所取り付け、上下方向の加振に対する防振特性を評価した。
【0033】
【実施例1】
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に、沈殿法にて作製された未表面処理湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ル E−200 )5部を攪拌機にて、十分分散混合したのち、平均粒径20μm のポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)80部を攪拌混合し、粘性流体を得た。粘性流体1を、図1の熱可塑性エラストマー製の収容体2に封入し、実施例1の弾性小型防振装置とした。
【0034】
【実施例2】
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に、沈殿法にて作製された実施例1とは別の未表面処理湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ル E−150)1部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μm のポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)84部を攪拌混合し、実施例1と同様に収容体に封入し、実施例2の弾性小型防振装置とした。
【0035】
【実施例3】
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 1000cst )100部に、実施例1と同様の未表面処理湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ルE−200)9部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μm のポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)55部を攪拌混合し、実施例1と同様に収容体に封入して、実施例3の弾性小型防振装置とした。
【0036】
【実施例4】
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に、ゲル法にて作製された未表面処理湿式微粉末シリカ(富士シリシア化学社製、サイリシア 350)5部を攪拌機にて、十分分散混合した後、ポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)80部を攪拌混合し、実施例1と同様に収容体に封入して、実施例4の弾性小型防振装置とした。
【0037】
(比較例1)
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に、平均粒径20μm のポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)85部を攪拌混合し、実施例1と同様に収容体に封入して、比較例1の弾性小型防振装置とした。
【0038】
(比較例2)
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に沈殿法にて作製された表面処理した湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ル SS−10)5部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μm のポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)80部を攪拌混合し、実施例1と同様に収容体に封入して、比較例2の弾性小型防振装置とした。
【0039】
(比較例3)
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に実施例1と同様の未表面処理湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ル E−200)0.5部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μm のポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)84.5部を攪拌混合し、実施例1と同様に収容体に封入して、比較例3の弾性小型防振装置とした。
【0040】
(比較例4)
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 1000cst )100部に実施例1と同様の未表面処理湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ル E−200)11部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μm のポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)55部を強引に攪拌混合したが、流動性が全くなく固体状態になり、収容体に封入の際、空間部分を取り除くことが困難であったため、弾性小型防振装置の作製は断念した。
【0041】
次に、実施例1〜4、および比較例1〜3の弾性小型防振装置を図2のマスモデルにそれぞれ取り付け、−10℃、25℃、60℃の環境下での共振倍率を測定した結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
尚、上記温度雰囲気中の共振周波数に関しては、実施例1〜4において、いずれも比較例1(−10℃:21Hz、25℃:16Hz、60℃:11Hz)と同等の値であった。
【0043】
【実施例5】
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に未表面処理乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル 300)5部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)80部を攪拌混合し、粘性流体を得た。実施例1と同様に収容体に封入して、実施例5の弾性小型防振装置とした。
【0044】
【実施例6】
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に実施例5とは別の未表面処理乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル 200)1部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)84部を攪拌混合し、実施例1と同様に収容体に封入して、実施例6の弾性小型防振装置とした。
【0045】
【実施例7】
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 1000cst )100部に実施例5と同様の未表面処理乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル 300)9部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)55部を攪拌混合し、実施例1と同様に収容体に封入して、実施例7の弾性小型防振装置とした。
【0046】
(比較例5)
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に表面処理した乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル R−972)5部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)80部を攪拌混合し、実施例1と同様に収容体に封入して、比較例5の弾性小型防振装置とした。
【0047】
(比較例6)
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に実施例5とは別の未表面処理乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル 200)0.5部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィルR−900)84.5部を攪拌混合し、実施例1と同様に収容体に封入して、比較例6の弾性小型防振装置とした。
【0048】
(比較例7)
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 1000cst )100部に実施例5と同様の未表面処理乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル 300)11部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)55部を強引に攪拌混合したが、流動性が全くなく固体状態になり、収容体に封入の際、空間部分を取り除くことが困難であったため、弾性小型防振装置の作製は断念した。
次に、実施例5〜7、および比較例5、6の弾性小型防振装置を図2のマスモデルにそれぞれ取り付け、−10℃、25℃、60℃の環境下での共振周波数と共振倍率を測定した結果を、比較例1を付け加えて、表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
【実施例8】
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に未表面処理乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル 300)3部と、沈殿法にて作製された未表面処理湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ルE−200)5部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)78部を攪拌混合し、粘性流体を得た。これを、実施例1と同様に収容体に封入して、実施例8の弾性小型防振装置とした。
【0051】
【実施例9】
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に未表面処理乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル 300)1部と、沈殿法にて作製された未表面処理湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ル E−200)5部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)80部を攪拌混合し、粘性流体を得た。これを、実施例1と同様に収容体に封入して、実施例9の弾性小型防振装置とした。
【0052】
【実施例10】
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200−10000cst)100部に未表面処理乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)5部と、沈殿法にて作製された未表面処理湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ル E−200)1部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)80部を攪拌混合し、粘性流体を得た。これを、実施例1と同様に収容体に封入して、実施例10の弾性小型防振装置とした。
【0053】
(比較例8)
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 10000cst)100部に未表面処理乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)0.5部と、沈殿法にて作製された未表面処理湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ル E−200)9部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)55部を攪拌混合し、粘性流体を得た。これを、実施例1と同様に収容体に封入して、比較例8の弾性小型防振装置とした。
【0054】
(比較例9)
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200− 1000cst )100部に未表面処理乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)9部と、沈殿法にて作製された未表面処理湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ル E−200)0.5部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)55部を攪拌混合し、粘性流体を得た。これを、実施例1と同様に収容体に封入して、比較例9の弾性小型防振装置とした。
【0055】
(比較例10)
ジメチルシリコ−ンオイル(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、SH−200−10000cst)100部に未表面処理乾式微粉末シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル 300)2部と、沈殿法にて作製された未表面処理湿式微粉末シリカ(日本シリカ工業社製、ニップシ−ル E−200)9部を攪拌機にて、十分分散混合した後、平均粒径20μmのポリメチルシルセスキオキサン粉末(東レダウコ−ニング・シリコ−ン社製、トレフィル R−900)55部を強引に攪拌混合したが、流動性が全くなく固体状態になり、収容体に封入の際、空間部分を取り除くことが困難であったため、弾性小型防振装置の作製は断念した。
【0056】
次に、実施例8〜10、及び比較例8、9の弾性小型防振装置を図2のマスモデルにそれぞれ取り付け、−10℃、25℃、60℃の環境下での共振周波数と共振倍率を測定した結果を比較例1を付け加えて、表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り、本発明に従う粘性流体を使用した弾性小型防振装置は、その使用環境温度において、共振倍率・共振周波数の温度による変動を小さく調整することができる。
【0059】
したがって、この弾性小型防振装置を音響機器に用いた場合、使用環境温度が変化しても、常温での防振性能と同等の性能を有するという高い信頼性を得ることができる。具体的には、一定加速度の振動によって音飛びが起こる現象において、十分効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】スチレン系熱可塑性エラストマ−を用いた収納体(弾性小型防振装置)
【図2】弾性小型防振装置を取り付けた特性評価用マスモデル
【図3】シリコ−ンオイルとポリメチルシルセスキオキサン粉末の粘性流体 Tanδおよび複素弾性と、それを簡易的に封入した弾性小型防振装置の共振倍率( Tanδ)と共振周波数の関連性を示す(弾性小型防振装置の Tanδの算出は、共振倍率(dB)→共振倍率τに変換し、関係式(τ2−1)×(Tanδ)2=1から求めた)
【符号の説明】
1 粘性流体
2 収容体
Claims (3)
- シリコ−ンオイル100重量部に対し、ポリメチルシルセス キオキサン粉末を55〜120重量部と未表面処理湿式微粉末シリカを1〜10重量部の複合粉末を添加混合した粘性流体を封入したことを特徴とする弾性小型防振装置。
- シリコ−ンオイル100重量部に対し、ポリメチルシルセス キオキサン粉末を55〜120重量部と未表面処理乾式微粉末シリカを1〜10重量部の複合粉末を添加混合した粘性流体を封入したことを特徴とする弾性小型防振装置。
- シリコ−ンオイル100重量部に対し、ポリメチルシルセス キオキサン粉末を55〜120重量部と未表面処理乾式微粉末シリカを1〜9重量部と未表面処理湿式微粉末シリカを1〜9重量部の複合粉末を添加混合した粘性流体を封入したことを特徴とする弾性小型防振装置。
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