JP3577062B2 - 電子放出素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスプレイや露光装置などに応用可能な電子放出素子及びその製造方法に係り、特には平面構造を有する冷陰極型の電子放出素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、平面構造を有する冷陰極型の電子放出素子が提案されている。表面伝導型或いは平面型MIM素子と呼ばれるこの種の素子は、平坦な絶縁性の基板上に一定間隔を隔てて形成された一対の電極と、それら電極間に形成された一対の導電膜と、それら導電膜上に形成された電子放出膜を有している。そのような電子放出素子は、単純な構造を有しているので、例えば多数個の素子を同一基板上に配列して電子源アレイを形成するのに適している。
【0003】
このような電子源アレイの用途として、薄型平面ディスプレイが注目されている。このディスプレイはCRTと同様に蛍光体を電子励起させて発光させるものである。そのような原理に基づく発光はエネルギー効率が高いため、上記の電子源アレイを用いることにより、低消費電力・高輝度・高コントラストの自発光型の薄型平面ディスプレイを実現することができる。
【0004】
平面型MIM素子の一例は、例えば、Bischoffらによって、Int.J.Electronics,73(1992)1009 や Int.J.Electronics,70(1991)491において報告されている。図5は、Bischoffらが報告する素子を概略的に示す斜視図である。図5に示す平面型MIM素子は、絶縁性基板100上に一対の金属電極101a,101bが設けられ、それら電極101a,101b間にマイクロスリットを提供する金属膜102が設けられ、金属膜102のマイクロスリットの位置に堆積膜103が設けられた構造を有している。なお、図中、参照番号105は金属膜102に設けられたマイクロスリットの幅を示しており、その幅105は0.1μmから10μm程度である。
【0005】
このような構造は以下の手順によって形成されている。まず、絶縁性基板100上に一対の平面金属電極101a,101bを形成する。次に、電極101a,101b間に、電極101a,101bに比べて十分に薄く且つ電気的に導通するのに十分な厚さを持つ金属膜102を形成する。次いで、電極101a,101bに通電して金属膜102にジュール熱を発生させる。これにより、金属膜102は部分的に溶断・破壊されて不連続化する。すなわち、金属膜102にマイクロスリットを形成する。なお、導電膜を不連続化した直後において、電極101a,101b間の抵抗は高い。このような導電膜への通電による不連続化処理は「Bフォーミング(Basic forming)」と呼ばれている。
【0006】
このようにして形成された構造に、さらに「Aフォーミング(Adsorption−assisted forming)」と呼ばれる処理を施す。Aフォーミングでは、炭化水素類を含有する真空中で電極101a,101b間に20V以下の電圧を印加する。これにより、電圧印加から数分で電極101a,101b間の抵抗が下がり、電極101a,101b間を流れる電流が増大する。
【0007】
Paginaらは、例えば、Int.J.Electronics,69(1990)25やInt.J.Electronics,69(1990)33において、Aフォーミング後の電極101a,101b間は導電性の膜で全面が覆われており、この導電性の膜は炭素を含む薄膜であることを報告している。
【0008】
また、Bischoffらは、先の文献において、Aフォーミングを施した後の素子に通電することによって、電子放出に加え、発光が観測されることを報告している。Bischoffらは、この発光スペクトルの解析によって、堆積膜103を構成する材料は、4000ケルビンまでの熱電子を含むことができ且つそれ自身が1000ケルビンを超える温度にまで加熱され得るものでなくてはならないと推定している。このことからBischoffらは、Aフォーミング後の電極101a,101b間を覆う導電性の膜,すなわち堆積膜103,はグラファイト化した炭素膜であると論じている。
【0009】
なお、堆積膜103は、1本または複数本の境界によって電気的に分断されており、その境界の幅は走査型トンネル顕微鏡の針先程度以下,すなわち数十ナノメートル以下,である。この境界部分の詳細な構造については、Bischoffらは先の文献において数ナノメートル幅のスリットで構成されているとしており、Paginaらは先の文献において2枚の炭素様膜の端部同士が重なり合っている部分であるとしている。しかしながら、実際のところ、境界部分の詳細な構造は未だ不明である。
【0010】
以上説明した平面型MIM素子の電流−電圧特性は図6に示すような電圧制御負性抵抗特性(VCNR特性)を示す。また、Paginaらは、Phys.Stat.Sol.(a)108(1988)11において、上記の平面型MIM素子に関し、素子に入力する電流(素子電流)に対する放出電流の比,すなわち放出効率,は極めて小さく10−6程度であることを報告している。
【0011】
表面伝導型素子は、平面MIM型素子と類似の構造を有するものであり、例えば、特開平11−297192号公報でその一例が報告されている。表面伝導型素子の製造プロセスでは、先述の平面MIM素子と同様に、フォーミングという工程により薄膜に電気的に不連続部が形成され、活性化とよばれる工程によってその薄膜上に炭素を含む堆積物が堆積される。前述の平面MIM型素子と比較して、例えば特開平11−297192号公報に記載の表面伝導型素子は、図7のようにVCNR特性を示さない単調増加型の電流−電圧特性を有している。また、表面伝導型素子の放出効率は10−3程度であり、平面MIM型に比して高いといった点が特徴的に異なっている。
【0012】
上述した表面伝導型素子を利用した薄型平面ディスプレイでは、表面伝導型素子の電流−電圧特性が図7に示すように非線形性を示すことから、4V乃至5V程度の電圧振幅で3桁程度の十分なダイナミックレンジを得ることができる。例えば、素子の一方の電極に−5Vの電圧を常時印加しておき、他方の電極に印加する電圧を0V乃至+5Vの範囲内で変化させればよい。
【0013】
しかしながら、このような制御を行った場合、非選択時,すなわち、それら電極間の電位差が最小であるとき,にリーク電流を生ずる。このリーク電流は、消費電力やドライバICへの負荷などの観点から可能な限りゼロに近いことが理想である。しかしながら、現状では、リーク電流は必ずしも十分に抑制されている訳ではない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、リーク電流を抑制可能な電子放出素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、基板と、前記基板上に形成され且つ互いに離間した一対の電極と、前記一対の電極上にそれぞれ形成され且つ前記一対の電極間の距離よりも短い間隙を隔てて互いに離間した一対の導電膜と、前記一対の導電膜間に形成され且つ炭素と錫とを含有した電子放出膜とを具備したことを特徴とする電子放出素子を提供する。
【0016】
また、本発明は、基板上に互いに離間した一対の電極を形成する工程と、前記一対の電極上にそれぞれ位置し且つ前記一対の電極間の距離よりも短い間隙を隔てて互いに離間した一対の導電膜をそれぞれ形成する工程と、前記一対の導電膜間に錫と炭素とを含有した電子放出膜を形成する工程とを含み、前記電子放出膜を形成する工程は、錫を有する化合物と炭素を有する化合物との混合物及び/または錫と炭素とを有する化合物を含有した雰囲気中で前記一対の電極間に電圧を印加することにより前記一対の導電膜間に錫と炭素とを含有する材料を堆積させることを含んだことを特徴とする電子放出素子の製造方法を提供する。
【0017】
本発明において、電子放出膜に含まれる錫の濃度は電子放出膜の表面側に比べて基板側でより高くてもよい。このような錫の濃度勾配は、例えば、電子放出膜を形成する際に雰囲気の組成を経時的に変化させることにより形成可能である。なお、電子放出膜中の錫濃度や錫濃度の勾配は、例えば、SIMS(二次イオン質量分析計)やICP(誘電結合プラズマ)分光分析などを利用することにより測定することができる。
【0018】
本発明において、電子放出膜は水素及び窒素の少なくとも一方をさらに含有することができる。電子放出膜を形成する際に使用する雰囲気や電子放出膜の原料が水素及び/または窒素を含んでいる場合、電子放出膜にそれら元素が混入することがある。したがって、電子放出膜中にそれら元素の存在を確認した場合、その電子放出膜の形成方法を推定することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、図面を参照しながらより詳細に説明する。なお、各図において、同様または類似する構成要素等には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る平面型電子放出素子を概略的に示す平面図であり、図1(b)は図1(a)に示す電子放出素子のA−A線に沿った断面図である。また、図1(c)は図1(a),(b)に示す電子放出素子において利用可能な電子放出膜の一例を示す断面図であり、図1(a)のA−A線に沿った断面構造に対応している。
【0021】
図1(a)及び(b)に示す電子放出素子は、基板10と、基板10上に形成された電極11a,11bと、電極11a,11b上にそれぞれ形成された導電膜12a,12bと、導電膜12a,12b上に形成された電子放出膜13とを備えている。
【0022】
基板10には、絶縁性或いは高抵抗の材料を用いることができる。したがって、基板10としては、例えば、石英ガラス、ナトリウムガラス、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、及びリンガラスなどのようなSiOを主成分とする基板並びにAl基板などの絶縁性酸化物基板や、AlN基板などの絶縁性窒化物基板などから適宜選択することができる。基板10の選択には、経済性や生産性などの要因を考慮してもよい。また、基板10は、その表面近傍の絶縁耐力が10V/cm以上であることが好ましい。このため、Naイオンなどのモバイルイオン種は表面近傍から予め除去されていることが望ましい。したがって、ナトリウムガラスなどのモバイルイオン種を含む材料を用いる場合は、その表面に、SiNなどの拡散防止層を形成し、さらにその表面にSiO膜などの表面層を形成しておいてもよい。
【0023】
電極11a,11bには、導電性の金属、半導体、半金属材料から選ばれた材料を用いることができ、好ましくは、導電率が高く、耐酸化性の高い遷移金属が用いられる。電極11a,11bの材料としては、例えば、Ni、Au、Ag、Pt、Irなどが好ましい。電極11a,11bは、通常、数百Å乃至数μm程度の厚さに形成され、一般に、この程度の厚さであれば十分な導電性が得られる。また、電極11a,11bは、均一な厚さに形成されていることが好ましく、膜剥がれ、浮き、めくれが極力存在していないことが好ましい。
【0024】
電極11a,11bを形成するのに利用する成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、メッキ法、コロイド液から導電材料を析出させる方法などから選択して用いることができる。そのような方法で得られる膜の基板10への密着性が乏しい場合は、基板10の表面にナノスケールの凹凸構造を形成しておくこと、或いは、基板10と膜との間に密着層を別途形成しておくことが好ましい。電極11a,11bは、上記の成膜技術とフォトリソグラフィ技術とを組み合わせた方法、上記の成膜技術とリフトオフプロセスとを組み合わせた方法、マスク蒸着法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などから適宜選択して用いることができ、膜の端部でめくれが起こりにくい方法を用いることが好ましい。
【0025】
電極11a,11bの幅Wdと導電膜12a,12bの幅Wfは必要とされる放出電流量や、素子に許容される占有面積から決定される。通常、幅Wfは幅Wdよりも狭く、幅Wdは例えば1mmとすることができる。また、電極11a,11b間の間隔Dgは、例えば数十nm乃至数十μmの範囲内で適宜設定することができる。間隔Dgは、例えば、利用可能なパターニング方法や、素子間での特性ばらつきの許容範囲などの要因に基づいて決定することができる。
【0026】
導電膜12a,12bは、電極11a,11b間に、電極11a,11b間の距離よりも狭いスリットを提供する。加えて、導電膜12a,12bは、電子放出膜13が堆積するための下地層として機能する。
【0027】
導電膜12a,12bには、電極11a,11bと同様に、金属、半金属、半導体から選ばれた材料を用いることができる。導電膜12a,12bは、不連続となる限界程度に薄く、導電性があるのに十分な厚さに形成されていることが好ましい。導電膜12a,12bの材料としては、Ni、Co、Fe、Pd、Au、Pt、Irなどのように触媒として使用される遷移金属を用いることが特に好ましいが、これらに限定されるものではない。導電膜12a,12bは、通常、所定のサイズの連続膜として形成された後に電極11a,11b間に電圧を印加することにより得られる。そのような処理により、連続膜は部分的に溶断・破壊されて不連続化する。なお、上記の連続膜を形成するのに利用する成膜方法としては、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、レーザアブレーション法などの真空蒸着法、めっき液やコロイド溶液から導電材料を析出させる析出法、表面をアルカンチオールなどの有機分子で安定化した金属・半導体超微粒子による自己組織化膜析出法などから選択して用いることができる。
【0028】
電子放出膜13は、導電膜12a,12b上及びこれらの間のスリット内に形成されており、導電膜12a,12bに電気的に接続されている。電子放出膜13の幅Dcは、通常、数nmと極めて狭い。
【0029】
電子放出膜13の一部は電極11a,11b間に電流を流した際に電子を放出する電子放出部13aを構成している。電子放出部13aは、例えば、その周囲に比べて抵抗の高い部分である。そのような高抵抗部は、例えば、図1(c)に示すように電子放出膜13に亀裂を設けることや、電子放出膜13の一部の組成とその周囲の組成とを異ならしめることなどにより形成することができる。なお、図1(c)に示すように電子放出膜13に亀裂を設ける場合、その亀裂は電子放出膜13を完全に分断するものであってもよく、電子放出膜13を不完全に分断するものであってもよい。
【0030】
本実施形態に係る電子放出素子において、電子放出膜13は炭素と錫とを含有している。このような構造を採用すると、電子放出部が炭素を主成分とし且つ錫を含有していない場合と比較して、リーク電流を大幅に抑制することができる。
【0031】
本実施形態において、電子放出膜13について以下の条件でSIMS分析を行った場合に得られる炭素の信号強度に対する錫の信号強度の比は1.6以下であることが好ましい。
・一次イオン:O2+
加速電圧=2kV
入射角度=25°
イオン電流=15nA
ラスタ幅=200μm
・二次イオン:正イオン
電子放出膜13中での錫の含量が高くなると、十分な素子電流が得られなくなり且つ放出効率(或いは「効率」:放出電流/素子電流)が低下することが経験的に分かっている。上記比が1.6以下であれば、素子特性の劣化を生ずることなくリーク電流を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態において、電子放出膜13について先の条件でSIMS分析を行った場合に得られる炭素の信号強度に対する錫の信号強度の比は0.1以上であることが好ましい。通常、上記比が0.1未満である場合、リーク電流を抑制する効果は顕著には現われない。
【0033】
上述した電子放出素子は、例えば、以下の方法により製造することができる。ここでは、まず、電子放出膜13の形成に使用可能な装置について説明し、次いで、電子放出素子の製造プロセスの一例について説明する。
【0034】
図2は、図1(a),(b)に示す電子放出素子の電子放出膜13の形成に使用可能な装置を概略的に示す図である。図2に示す装置は、真空容器21を有しており、ゲートバルブ23が設けられた排気管を介して排気系22に接続されるとともに、流量調節部24が設けられた給気管を介して原料ガス供給系25に接続されている。また、この真空容器21は、参照番号27で示す図1(a),(b)の電子放出素子とアノード30とを収容している。アノード30は配線26を介して電圧印加・測定部31に電気的に接続されており、また、電子放出素子27の−側の電極と+側の電極とは配線28,29を介して電圧印加・測定部31に電気的に接続されている。
【0035】
真空容器21としては、通常の真空装置に用いるメタルチャンバーを用いることができる。真空容器21の到達真空度は、10−7Torr以下であることが好ましく、10−10Torr以下であることがより好ましい。また、排気系22は、オイルフリーであることが好ましく、例えば、磁気浮上ターボ分子ポンプ、ダイアフラムポンプ、スクロールポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプ、ゲッターポンプ、ソープションポンプなどを適宜組み合わせたものを用いることができる。
【0036】
原料ガス供給系25は、原料を収容した容器と、原料の蒸気圧調整用の容器温度調節機構、原料ガスの1次圧調整機構などから構成されている。容器内の原料が気体、液体、固体の何れであっても容器温度と1次圧とを適宜調整することができる。この原料ガス供給系は、同時に複数の原料ガスを供給できるように、複数の供給系が並列に配置されているものであってもよい。
【0037】
次に、図1(a),(b)に示す電子放出素子の製造プロセスの一例について説明する。
まず、電極11a,11b及び導電膜12が形成された基板10(素子27)を、図2に示す装置の真空容器21内に据え付ける。この時点では、導電膜12は導電膜12a,12bへと分断されていない。そして、電極11a,11bにそれぞれ配線28,29を接続し、容器21内を排気する。
【0038】
次に、配線28,29に接続された電極11a,11b間に通電する。これにより、導電膜12は発熱し、それを構成する材料の一部が凝集して、導電膜12には不連続部が形成される。この不連続部は直ぐに拡大し、導電膜12を+側の部分12aと−側の部分12bとに分断する。その結果、電極11a,11b間には電流が殆ど流れなくなる。この時点で通電を終了する。
【0039】
その後、電子放出膜13の材料となるガスを真空容器21内に導入し、流量や排気速度を調節することによって、容器21内のガス圧を一定値に安定化させる。真空容器21内の圧力は、例えばイオンゲージなどを用いて計測することができる。また、真空容器21内の圧力は、4重極質量分析計などを用いて、真空容器21内のガス種の組成をモニターしながら制御することができる。真空容器21内での好ましい圧力は用いる活性化ガスに依存し、通常、10−1Torr程度乃至10−8Torr程度の範囲から選択することができる。
【0040】
通電部30を用いて素子27に通電すると、放出電子、電界、熱などの作用によって原料ガスが分解され、導電膜12a,12b間に錫及び炭素を含む材料が堆積する。なお、通電部30によって印加する電圧の波形は、直流波形、三角波形、矩形波形、パルス波形などから適宜選択することができる。
【0041】
この堆積が進行するのに応じて、素子電流が増大する。素子電流が十分増大した時点で通電を停止することにより堆積を終了する。通電終了の判断基準は、素子に必要とされる電流量や電流−電圧特性などから決定することができる。
堆積終了後、残留した原料ガスを十分に除去することにより、新たな堆積を抑制させ、特性を安定化させる。以上のようにして、電子放出膜13を得ることができる。図1(a),(b)に示す電子放出素子は、例えば、上記の方法により製造可能である。
【0042】
本実施形態において、原料ガス供給系25から真空容器21へと供給する原料は、錫を有する化合物及び/または錫と炭素とを有する化合物を含有している。錫を有する化合物や錫と炭素とを有する化合物としては、例えば、塩化錫[SnCl]や弗化錫[SnF]などのハロゲン化錫、テトラメチル錫[Sn(CH]やテトラエチル錫[Sn(C]などの錫含有鎖状炭化水素、テトラフェニル錫[Sn(C]などの錫含有芳香族炭化水素などを用いることができる。さらに、上述の化合物のうち、炭素を含まないものを使用する場合は、炭化水素などの炭素を含む材料を同時に供給することが好ましい。また、炭素を含む材料を一定時間供給した後に供給を停止し、続けて錫を含む材料を供給してもよい。
【0043】
原料ガス供給系25から真空容器21へと供給する原料は、錫を有する化合物及び/または錫と炭素とを有する化合物に加え、他の化合物をさらに含有することができる。そのような追加の化合物としては、例えば、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンのようなアミン系化合物;アクリルニトリルのようなニトリル系化合物;ニトロメタンのようなニトロ化合物;カルボン酸;エステル;アルデヒド;アルキルボラン、アリールボラン、アルコキシボランのような硼化物;ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アシルのようなハロゲン化物などを挙げることができる。
【0044】
なお、そのような追加の化合物として、アミン系化合物やニトリル系化合物などを使用して形成した電子放出膜13からは、通常、微量の窒素を検出することができる。また、追加の化合物としてニトロ化合物やカルボン酸やエステルやアルデヒドなどを使用して形成した電子放出膜13からは、通常、微量の酸素を検出することができる。追加の化合物として硼化物などを使用して形成した電子放出膜13からは、通常、微量の硼素を検出することができる。さらに、追加の化合物としてハロゲン化物などを使用して形成した電子放出膜13からは、通常、微量のハロゲンを検出することができる。但し、錫を有する化合物と炭素を有する化合物との混合物或いは錫と炭素とを有する化合物が水素、窒素、酸素、硼素、及びハロゲンの少なくとも1種の元素をさらに有している場合、追加の化合物を使用しなくても、通常、電子放出膜13から上記元素を検出することができる。
【0045】
このように、本実施形態では、電子放出膜13は炭素や錫以外の元素をさらに含有することができる。すなわち、電子放出膜13は、その中に含まれる炭素に対し、例えば、2原子%乃至3原子%以下の濃度で窒素や酸素を含有していてもよい。また、電子放出膜13は、その中に含まれる炭素に対し、例えば、1原子%以下の濃度で硼素やハロゲンを含有していてもよい。さらに、電子放出膜13は、その中に含まれる炭素に対し、例えば、数原子%以下の濃度で水素を含有していてもよい。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る電子放出素子は、電子放出膜13の構造が異なること以外は第1の実施形態に係る電子放出素子と同様の構造を有している。
【0047】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る電子放出素子において利用可能な電子放出膜の一例を示す断面図である。本実施形態では、電子放出膜13に炭素と錫とを含有させるのに加え、電子放出膜13に含まれる錫の濃度を、電子放出膜13の表面側に比べ、基板10側においてより高濃度としている。例えば、図3に示すように、電子放出膜13は、錫濃度がより高い基板側領域13bと錫濃度がより低い或いは錫を含有しない表面側領域13cとの積層構造を有している。このような構成によると、リーク電流が抑制され且つ放出効率がより高い電子放出素子を実現可能である。
【0048】
本実施形態において、電子放出膜13の表面側領域13cについてSIMS分析を行った場合(第1の実施形態で説明したのと同様の条件で)に得られる炭素の信号強度に対する錫の信号強度の比は1.6以下であることが好ましい。領域13cにおける錫の含量が低い場合、より高い放出効率を実現することができる。また、電子放出膜13の基板側領域13bについてSIMS分析を行った場合(第1の実施形態で説明したのと同様の条件で)に得られる炭素の信号強度に対する錫の信号強度の比は1.6よりも大きいことが好ましい。領域13bの錫含量を高めると、リーク電流を抑制する効果が大きくなる。しかも、本実施形態では、領域13bの錫含量を高めても、領域13cの錫含量が十分に低ければ、放出効率の低下は殆ど生じない。したがって、表面側領域13cにおける上記信号強度比を1.6以下とし且つ基板側領域13bにおける上記信号強度比を1.6よりも大きくした場合、リーク電流を抑制し且つ放出効率を高める効果が最も顕著となる。
【0049】
本実施形態において、電子放出膜13は、図3に示すように錫濃度がより高い領域13bと錫濃度がより低い領域13cとの間に明確な境界を有している必要はない。例えば、電子放出膜13中の錫濃度は、基板側から表面側に向けて連続的に低下していてもよい。
【0050】
本実施形態に係る電子放出素子では、第1の実施形態に係る電子放出素子とは異なり、電子放出膜13中に錫の濃度勾配を有している。このような濃度勾配は、第1の実施形態で説明した堆積を複数過程に分けて行うことにより実現可能である。例えば、まず、真空容器21内に錫を有する化合物と炭素を有する化合物とを含有する原料ガスを供給して、真空容器21内をそれら化合物を含有する雰囲気とする。この雰囲気中で電極11a,11b間に電圧を印加することにより、炭素と錫とを含有する材料を堆積させる。電極11a,11b間への電圧印加を停止した後、真空容器21内への炭素を有する化合物の供給を継続しつつ、錫を有する化合物の供給を停止することなどにより、真空容器21内の雰囲気を、錫を有する化合物が除去され且つ炭素を有する化合物を含有する雰囲気とする。その後、この雰囲気中で電極11a,11b間に電圧を印加することにより、錫を含有せずに炭素を含有する材料を堆積させる。以上のようにして、錫濃度が表面側に比べ基板10側においてより高い電子放出膜13を得ることができる。
【0051】
なお、最初の堆積過程で真空容器21内に供給する原料ガスは、錫を有する化合物のみを含有していてもよい。また、最後の堆積過程で真空容器21内に供給する原料ガスは、最初の堆積過程で真空容器21内に供給した原料ガスに比べ、炭素を有する化合物に対する錫を有する化合物の割合がより低ければ、錫を有する化合物を含有していてもよい。
【0052】
錫濃度が表面側に比べ基板10側においてより高い電子放出膜13は、以下の方法で成膜することもできる。すなわち、真空容器21内に錫を有する化合物と炭素を有する化合物とを所定の割合で含有する原料ガスを供給して、真空容器21内をそれら化合物を含有する雰囲気とする。この雰囲気中で電極11a,11b間に電圧を印加することにより炭素と錫とを含有する材料を堆積させる間に、原料ガスに含まれる炭素を有する化合物に対する錫を有する化合物の割合を短時間のうちに大きく或いは比較的長い時間をかけて徐々に減少させる。このような方法でも、錫濃度が表面側に比べ基板10側においてより高い電子放出膜13を得ることができる。
【0053】
以上説明した第1及び第2の実施形態に係る電子放出素子は、例えば、ディスプレイに応用可能である。以下、上記電子放出素子を適用したディスプレイの一例について説明する。
【0054】
図4は、第1及び第2の実施形態に係る電子放出素子を用いた平面ディスプレイの一例を概略的に示す部分切開斜視図である。図4に示すディスプレイは、内部に真空な空間を形成した外囲器51と、外囲器51内に収容された電子源基板52とで主に構成されている。
【0055】
外囲器51は、一主面に電子源基板52が取り付けられたリアプレート53と、電子源基板52に対向して配置されたフェースプレート54と、リアプレート53とフェースプレート54との間に介在した枠体55とを有している。リアプレート53と枠体との間及びフェースプレート54と枠体55との間は、例えば、フリットガラスなどによって封止されている。
【0056】
フェースプレート54は、ガラス基板56と、ガラス基板56の電子源基板52との対向面に形成された蛍光膜57と、蛍光膜57上に形成されたメタルバック58とを有している。なお、図中、参照番号59は、メタルバック58に電気的に接続された高圧端子を示している。蛍光膜57は電子源基板52からの電子線照射によって発光する蛍光体を含有しており、メタルバック58は、蛍光体からの発光をガラス基板56側へと反射すること、電子ビームを加速するための電場を形成すること、及び外囲器51内で発生した陰イオンが衝突することにより蛍光膜57がダメージを受けるのを防止することなどを目的として設けられている。メタルバック58は必ずしも設ける必要はなく、その代わりに、蛍光膜57とガラス基板56との間にITO膜のような透明電極を設けてもよい。また、メタルバック58と透明電極とを組み合わせて使用してもよい。
【0057】
リアプレート53、フェースプレート54、及び枠体55は、外囲器51の内側と外側との間の圧力差に対して十分な強度を有している。電子源基板52がそのような圧力差に対して十分な強度を有している場合は、電子源基板52をリアプレートとして使用すること、すなわち、リアプレート53を省略することができる。また、上記の圧力差に対する外囲器51の強度を向上させるために、リアプレート53とフェースプレート54との間にスペーサをさらに介在させてもよい。
【0058】
電子源基板52は、それぞれ第1及び第2の実施形態で説明したのと同様の構造を有する複数個の電子放出素子をマトリクス状に配列した構造を有している。より詳細には、電子源基板52は、基板10と、それぞれ基板10上で縦横に延在し且つ互いに電気的に絶縁された複数本の配線11a,11bと、基板10上で縦横に配列し且つそれぞれ配線11aの1本及び配線11bの一本に電気的に接続された複数個の素子本体15とを有している。なお、素子本体15は、第1及び第2の実施形態で説明した電子放出素子の導電膜12a,12bと電子放出膜13とで構成されている。
【0059】
このディスプレイによる表示は、例えば、メタルバック58を所定の正電位に維持しつつ、素子本体15に印加する電圧を閾値電圧未満の電圧と閾値電圧以上の電圧との間で変化させることにより行う。すなわち、素子本体15に印加する電圧を閾値電圧以上とすると、素子本体15の電子放出膜13から電子が放出される。この電子はメタルバック58が形成する電場によって十分に加速され、蛍光膜57に含まれる蛍光体を励起する。これにより、蛍光膜57中の蛍光体が発光し、その蛍光はフェースプレート54側から表示光として観察される。
【0060】
以上、第1及び第2の実施形態に係る電子放出素子を図4に示す構造を有するディスプレイに適用した例について説明したが、第1及び第2の実施形態に係る電子放出素子は他の構造を有するディスプレイに適用することもできる。また、第1及び第2の実施形態に係る電子放出素子は、露光装置などにも適用することが可能である。
【0061】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0062】
(例1)
第1の実施形態で説明したのと同様の方法により、それぞれ図1(a),(b)に示す構造を有し且つ電子放出膜13を形成するのに利用した原料ガスの組成が互いに異なる複数種の電子放出素子(サンプル[1]乃至[8])を作製した。なお、何れのサンプルにおいても、基板10には石英ガラス基板を使用し、電極11a,11bにはIr膜を用い、導電膜12a,12bにはAu蒸着膜を用いた。導電膜12a,12bの幅Wfは100μmとし、電極11a,11b間の間隔Dgは5μmとした。また、電子放出膜13の成膜時に電極11a,11b間に印加する電圧は10Vとした。以下の表1に、原料ガスの組成、真空容器21内の全圧、電子放出膜13を形成する際に素子に電圧を印加した時間、及び電圧波形を示す。
【0063】
【表1】
Figure 0003577062
【0064】
以上の方法で得られたサンプル[1]乃至[8]のそれぞれについて、電子放出膜13とアノードとを対向させた状態で、素子電流、放出電流、効率を調べた。なお、ここで、電極11a,11b間に印加する素子印加電圧は10Vとし、アノード電圧は5kVとした。また、素子印加電圧を5Vとしたときの素子電流(リーク電流)についても調べた。それら結果を以下の表2に示す。さらに、サンプル[1]乃至[8]のそれぞれについて、電子放出膜13をSIMSで分析して、炭素の信号強度に対する錫の信号強度の比を求めた。その結果も以下の表2に併せて示す。
【0065】
【表2】
Figure 0003577062
【0066】
上記表2に示すように、炭化水素であるベンゼンを用いたサンプル[8]に比べて、錫を有するガスを用いたサンプル[1]乃至[7]では、リーク電流が1/5程度以下に抑制されている。また、電子放出膜13が微量の錫を含有している場合には素子電流や効率を低下させることなくリーク電流を抑制することができたが、錫濃度を高めると素子電流や効率の低下を生じた。
【0067】
(例2)
第1の実施形態で説明したのと同様の方法により、それぞれ図1(a),(b)に示す構造を有し且つ電子放出膜13を形成するのに利用した原料ガスの組成が互いに異なる複数種の電子放出素子(サンプル[9]乃至[12])を作製した。但し、サンプル[9]及び[10]については、電子放出膜13の成膜に、真空容器21内に第1の化合物を含むガスを供給しつつ電極11a,11b間への電圧印加することにより第1の堆積を行い、次いで、電極11a,11b間への電圧印加を停止し、真空容器21内の第1の化合物を含むガスを排気するとともに真空容器21内へ供給するガスを第2の化合物を含むガスへと切り替え、真空容器21内の圧力が安定した後、電極11a,11b間への電圧印加を再開することにより第2の堆積を行うという二段階のプロセスを採用した。
【0068】
なお、何れのサンプルにおいても、基板10には石英ガラス基板を使用し、電極11a,11bにはIr膜を用い、導電膜12a,12bには耐熱性向上のためにIr蒸着膜を用いた。また、導電膜12a,12bの幅Wfは100μmとし、電極11a,11b間の間隔Dgは5μmとした。以下の表3に、原料ガスの組成、真空容器21内の全圧、電子放出膜13を形成する際に素子に電圧を印加した時間、及び電圧波形を示す。
【0069】
【表3】
Figure 0003577062
【0070】
以上の方法で得られたサンプル[9]乃至[12]のそれぞれについて、電子放出膜13とアノードとを対向させた状態で、素子電流、放出電流、効率を調べた。なお、ここで、電極11a,11b間に印加する素子印加電圧は10Vとし、アノード電圧は5kVとした。また、素子印加電圧を5Vとしたときの素子電流についても調べた。それら結果を以下の表4に示す。
【0071】
【表4】
Figure 0003577062
【0072】
なお、上記表3には、サンプル[9]のテトラエチル錫を含んだ雰囲気中での成膜時間として「0.5分」という非常に短い時間が記載されている。これは、テトラエチル錫を含んだ雰囲気中での成膜の際、通電開始から0.5分経過した時点で素子電流が急激に低下したため、その成膜を途中で打ち切ったからである。また、上記表4では、サンプル[9]の効率を括弧で囲っている。これは、サンプル[9]では、素子電流が小さく、ノイズの影響を無視できないため、その効率は参考値として扱われるべきであることを示している。
【0073】
上記表4に示すように、炭化水素であるベンゼンを用いたサンプル[12]に比べて、錫を有するガスを用いたサンプル[9]乃至[11]では、リーク電流が1/5程度以下に抑制されている。なかでもサンプル[10]及び[11]では、サンプル[12]に対して素子電流や効率を殆ど低下させることなくリーク電流を抑制することができた。特に、サンプル[10]ではリーク電流を抑制することができたのに加え、サンプル[12]に比べて素子電流や効率を向上させることができた。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、電子放出膜に錫と炭素とを含有させている。そのため、リーク電流を抑制することができ、したがって、優れた長期安定性を実現することが可能となる。
【0075】
すなわち、本発明によると、リーク電流を抑制可能な電子放出素子及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る平面型電子放出素子を概略的に示す平面図、(b)は(a)に示す電子放出素子のA−A線に沿った断面図、(c)は(a),(b)に示す電子放出素子において利用可能な電子放出膜の一例を示す断面図。
【図2】図1(a),(b)に示す電子放出素子の電子放出膜の形成に使用可能な装置を概略的に示す図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る電子放出素子において利用可能な電子放出膜の一例を示す断面図。
【図4】第1及び第2の実施形態に係る電子放出素子を用いた平面ディスプレイの一例を概略的に示す部分切開斜視図。
【図5】従来の電子放出素子の一例を概略的に示す斜視図。
【図6】図5に示す電子放出素子の電流−電圧特性を示すグラフ。
【図7】従来の電子放出素子の電流−電圧特性を示すグラフ。
【符号の説明】
10…基板; 11a,11b…電極; 12a,12b…導電膜
13…電子放出膜; 15…素子本体; 21…真空容器;
22…排気系; 23…ゲートバルブ; 24…流量調節部;
25…原料ガス供給系; 26…配線; 27…電子放出素子;
28,29…配線; 30…アノード; 31…電圧印加・測定部;
51…外囲器; 52…電子源基板; 53…リアプレート;
54…フェースプレート; 55…枠体; 56…ガラス基板;
57…蛍光膜; 58…メタルバック; 100…絶縁性基板;
101a,101b…金属電極; 102…金属膜; 103…堆積膜;
105…マイクロスリットの幅

Claims (5)

  1. 基板と、前記基板上に形成され且つ互いに離間した一対の電極と、前記一対の電極上にそれぞれ形成され且つ前記一対の電極間の距離よりも短い間隙を隔てて互いに離間した一対の導電膜と、前記一対の導電膜間に形成され且つ炭素と錫とを含有した電子放出膜とを具備したことを特徴とする電子放出素子。
  2. 前記電子放出膜に含まれる錫の濃度は前記電子放出膜の表面側に比べて前記基板側でより高いことを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
  3. 前記電子放出膜は水素及び窒素の少なくとも一方をさらに含有したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子放出素子。
  4. 基板上に互いに離間した一対の電極を形成する工程と、
    前記一対の電極上にそれぞれ位置し且つ前記一対の電極間の距離よりも短い間隙を隔てて互いに離間した一対の導電膜をそれぞれ形成する工程と、
    前記一対の導電膜間に錫と炭素とを含有した電子放出膜を形成する工程とを含み、
    前記電子放出膜を形成する工程は、錫を有する化合物と炭素を有する化合物との混合物及び/または錫と炭素とを有する化合物を含有した雰囲気中で前記一対の電極間に電圧を印加することにより前記一対の導電膜間に錫と炭素とを含有する材料を堆積させることを含んだことを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  5. 前記電子放出膜を形成する工程は、前記雰囲気の組成を経時的に変化させて、前記電子放出膜に含まれる錫の濃度を前記電子放出膜の表面側に比べ前記基板側でより高くすることを含んだことを特徴とする請求項4に記載の電子放出素子の製造方法。
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