JP3576959B2 - 超微粒チタン酸バリウム誘電体セラミックスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超微粒誘電体セラミックスの製造方法に係り、より具体的には、BaTiO3にCu系酸化物及び稀土類金属酸化物を添加し焼結工程を酸素雰囲気に制御することにより、低温にて高密度で超微粒のチタン酸バリウム誘電体セラミックスを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
積層型セラミックコンデンサ(Multi−Layer Ceramics Capacitor)は、小さく軽い電子回路を構成するにおいて必須的な手動部品である。現在に至るまで積層型セラミックコンデンサの製造においてBaTiO3を中心としたチタン酸(titanate)系が主として用いられてきた。しかし、このような材料は一般的に1300℃以上の高い焼結温度で製造されるため、Pd、Ptなどのような高価な貴金属内部電極を必要とする。この高価な電極を用いることによる費用を減らすためにはAg、Ag−Pdなどの安価な電極を用いることが可能な低温焼成用誘電体セラミック組成物が必要とされる。
【0003】
一方、最近各種の電子機器の軽薄短小化及び電子回路の高集積化による部品の小型化の趨勢に従って、積層型セラミックコンデンサもやはり超小型素子として開発する必要性が急激に台頭されてきた。超小型の積層型セラミックコンデンサを製造するためには焼結後、超微粒を維持することが出来る誘電体セラミック組成物の開発が先決されなければならない。即ち、低温焼成が可能ながら焼成後に超微粒の誘電体セラミック組成物が必要とされる。
【0004】
現在に至るまで積層型セラミックコンデンサの主な原料として用いられているBaTiO3系誘電体セラミックスを、低温焼成が可能ながら焼成後に超微粒が維持されるようにするには、Pb系、Cd系、Bi系、B系、Li系などの焼結調剤を添加し焼結温度を低下させることにより粒子成長を抑制させる試しが行われてきた(参照:日本国特開平5−120915号、日本国特開平1−192762号)。しかし、これら焼結調剤は全て有毒性を有し、環境親和的でなく、誘電体素子と反応するだけでなく、水系にて溶媒として用いられる水と反応するなどの問題点を有する。このような問題点を解決するためには環境親和的で科学的に安定した低温焼成用超微粒BaTiO3系誘電体セラミック組成物が必要とされる。
【0005】
環境親和的で、科学的に安定し、安価なCuを焼結調剤として添加する低温焼成用BaTiO3系誘電体セラミック組成物が提案された(参照:日本国特開平8−203702号、韓国特許公報94−3970号)。これはCuの添加による液相焼結により焼結が促進されるためだと理解されている。しかし、前記のようなCuの添加された低温焼成用BaTiO3系誘電体セラミック組成物でさえも、1μm以下の平均粒径は得ることが出来ないという欠点により、実際超小型の積層型セラミックコンデンサの製造には用いられていない。
【0006】
前記の如くの問題点を解決するため、BaTiO3に、焼結温度で液相を形成し緻密化を促進させるCuの1価又は2価酸化物及びCuの1価及び2価の混合酸化物を稀土類元素と同時に添加した低温焼成用超微粒誘電体セラミック組成物が本発明者らにより提案された(韓国特許出願第99−47980号及び韓国特許出願第99−47982号)。しかし、該組成物は焼結密度が低いため、積層型セラミックコンデンサとして用いられる場合、十分な機械的強度及び高誘電率を得ることが困難な問題点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は前記の韓国特許出願第99−47980号及び韓国特許出願第99−47982号の改良に関し、その目的は、BaTiO3に環境親和的で科学的に安定した稀土類元素及びCuの酸化物を同時に添加して焼結工程を改善することにより、低温にて高密度ながら超微粒のBaTiO3系誘電体セラミックスを製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明によると、高純度なBaTiO3粉末とCu系酸化物粉末及びRE2O3粉末とを定量に秤量した後、ボールミリングし、BaTiO3+xCu系酸化物+yRE2O3(ここで、0.00<x≦0.05、0.00<y≦0.05で、REはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびYbで成される群の中から選択された一種以上の稀土類元素である)混合スラリーを得る段階と、前記スラリーを乾燥した後、か焼する段階と、前記BaTiO3+xCu系酸化物+yRE2O3か焼粉末を成形する段階、及び得られた成形体を酸素雰囲気下で焼結する段階とを含む超微粒誘電体セラミックスの製造方法が提供される。
【0009】
以下、本発明による超微粒誘電体セラミックス製造方法を詳細に説明する。
【0010】
本発明の方法に従って超微粒誘電体セラミックスを製造するための出発原料としてはBaTiO3粉末とCu系酸化物粉末及びRE2O3(REはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er及びYbで成される群の中から選択された一種以上の稀土類元素である)粉末を用いるが、純度約99.9%以上の高純度なものを用いることが望ましい。
【0011】
まず、固相反応法によりBaTiO3粉末とCu系酸化物(Cu−Oxide)粉末及びRE2O3粉末とをそれぞれ最終的に得ようとするBaTiO3+xCu系酸化物+yRE2O3誘電体セラミックの組成通り秤量した後、エチルアルコールとジルコニアボールを用いて湿式混合しスラリーを製造する。混合されたスラリーは乾燥した後、焼結温度以下である約900〜1100℃の空気雰囲気下でか焼させる。
【0012】
本発明によるCu系酸化物としては、例えば、Cu2O、Cu3TiO4、CuOなどがある。
【0013】
前記の如く準備されたBaTiO3+xCu系酸化物+yRE2O3か焼粉末を加圧成形に続いて静水圧成形により成形した後、酸素雰囲気下で常温から約360℃/hrの速度で1100℃まで昇温させることにより焼結する。
【0014】
本発明では酸素雰囲気で焼結を行うことにより、高密度で超微粒のBaTiO3系誘電体セラミックスを製造することが出来る。酸素雰囲気下の焼結により焼結体の粒子成長に必要な酸素イオン空孔の濃度は減少する反面、緻密化に必要なBaイオン空孔の濃度が増加することになる。
【0015】
焼結する時、酸素雰囲気を作るための酸素の1分当たりの流量は、焼結反応炉の体積を基準として1.1倍以上、望ましくは3.2倍以上とする。酸素の流量が1.1倍未満となると空気雰囲気での焼結と大きな差が無く、酸素イオン空孔の濃度減少に実質的な寄与を期待し難い。且つ、本発明者らの研究結果によると、酸素の流量が3.2倍で焼結体の組織が超微粒化され、それ以上の流量では大きな変化が無かった。
【0016】
前記本発明の方法により製造されたBaTiO3系誘電体セラミックスは、平均粒径が約120〜90nm、焼結密度が約5.2〜5.9g/cm3の高密度で超微粒の誘電体セラミックスである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明する。
【0018】
<第1実施形態例>
1)まず、純度約99.9%のBaTiO3粉末とCu2O粉末及びLa2O3粉末を下記の表1に記載の組成どおり秤量した後、エチルアルコールとジルコニアボールを用いて約36時間湿式混合した。混合されたスラリーを乾燥した後、約1000℃の空気雰囲気下で約2時間か焼した。
【0019】
前記の如く準備されたBaTiO3+xCu2O+yLa2O3(ここで、x=0.03で、0.00<y≦0.05である)粉末を直径10mmの鋳型にて1トン/cm2の圧力で一軸加圧成形した後、再び3トン/cm2の圧力で静水圧成形した。得られた成形体を直径6cmのアルミナチューブ内で常温から約360℃/hrで1100℃まで昇温させることにより焼結させた。この時の焼結雰囲気は下記の表1に記載されたとおり、窒素、空気又は酸素を各1気圧にし、各ガスの純度は約99.9%以上で、その流量は300〜1500cm3/分範囲内で調節した。
【0020】
焼結した後、最終的な試片の厚さが1mmになるようにSiC研磨紙(#1000)を用いて研磨した。研磨後、銀ペーストを試片の両面に塗り約600℃で約10分間熱処理し電極を形成した。得られた試片の誘電特性はLCR meter(Hewlett Packard社製品、モデル名4263B)を用いて1.0Vrms、1kHzで測定した。
【0021】
その後、試片の両面の電極を全て除去した後、焼結密度を測定し、SiC研磨紙(#2000)とダイヤモンドペースト(9、3、1μm)とで片面を研磨し走査電子顕微鏡(Hitachi社製品、S−4200)で焼結体の平均粒径を測定した。
その結果を表1に示した。
【0022】
【表1】
前記表1の結果にて、Cu2O及びLa2O3添加量が同じ場合、窒素、空気、酸素雰囲気順に、誘電常数は多少小さいが焼結密度が高く平均粒径が小さな誘電体セラミックスを得ることが出来た。又、酸素雰囲気で焼結する場合、900cm3/分以上の流量にて最も高密度で超微粒のBaTiO3系誘電体セラミックスを得ることが出来た。
【0023】
前記の如く、BaTiO3の高密度超微粒化は、酸素雰囲気下での焼結により粒子成長に必要な酸素イオン空孔の濃度は減少し、緻密化に必要なBaイオン空孔の濃度は増加して、900cm3/分以上の流量にて表面交換反応に必要な酸素イオンが十分供給されるのに起因するものと考えられる。即ち、酸素雰囲気焼結により粒子成長に必要な酸素イオン空孔の濃度が減少し、緻密化に必要なBaイオン空孔の濃度が増加することにより、窒素及び空気雰囲気焼結と比べて高密度で超微粒の低温焼成用BaTiO3系誘電体セラミックスを得ることが出来るものと判断される。
【0024】
2)混合粉末の組成を表2のとおりにして、酸素雰囲気下でのガス流量1200cm3/分の条件で焼結すること以外は前記1)の方法を繰り返し、その結果を表2に共に示した。
【0025】
表2に示すとおり、稀土類酸化物を様々に変化させ、ガス流量を900cm3/分以上である1200cm3/分とした場合にも、表1にて得た結果と比べて大きな差は示されないことが分かる。
【0026】
【表2】
<第2実施形態例>
1)まず、純度約99.9%のBaTiO3粉末とCu3TiO4粉末及びLa2O3粉末を下記の表3に記載の組成どおり秤量した後、エチルアルコールとジルコニアボールを用いて約36時間湿式混合した。混合されたスラリーを乾燥した後、約1000℃の空気雰囲気下で約2時間か焼した。
【0027】
前記の如く準備されたBaTiO3+xCu3TiO4+yLa2O3(ここで、x=0.03で、0.00<y≦0.05である)粉末を直径10mmの鋳型で1トン/cm2の圧力で一軸加圧成形した後、再び3トン/cm2の圧力で静水圧成形した。得られた成形体を直径6cmのアルミナチューブ内で常温から約360℃/hrで1100℃まで昇温させることにより焼結させた。この時の焼結雰囲気は、下記の表3に記載されたとおり、窒素、空気又は酸素を各1気圧にし、各ガスの純度は約99.9%以上で、その流量は300〜1500cm3/分範囲内で調節した。
【0028】
ここで、酸素流量、300cm3/分は、直径6cmのチューブで成された焼結反応炉の有効長さ(hot zone)が10cmであることを勘案した時、焼結反応炉の体積を基準として1分当たり1.1倍に該当する(π×32×10=283cm3)。
【0029】
焼結した後、最終的な試片の厚さが1mmになるようにSiC研磨紙(#1000)を用いて研磨した。研磨後、銀ペーストを試片の両面に塗り約600℃で約10分間熱処理し電極を形成した。得られた試片の誘電特性はLCR meter(Hewlett Packard社製品、モデル名4263B)を用いて1.0Vrms、1kHzで測定した。
【0030】
その後、試片の両面の電極を全て除去した後、焼結密度を測定し、SiC研磨紙(#2000)とダイヤモンドペースト(9、3、1μm)とで片面を研磨し走査電子顕微鏡(Hitachi社製品、S−4200)で焼結体の平均粒径を測定した。
その結果を表3に示した。
【0031】
【表3】
前記表3の結果にて、Cu3TiO4及びLa2O3添加量が同じ場合、窒素、空気、酸素雰囲気順に、誘電常数は多少小さいが焼結密度が高く平均粒径が小さな誘電体セラミックスを得ることが出来た。又、酸素雰囲気で焼結する場合、900cm3/分以上の流量にて最も高密度で超微粒のBaTiO3系誘電体セラミックスを得ることが出来た。
【0032】
4)混合粉末の組成を表4のとおりにして、酸素雰囲気下でガス流量1200cm3/分の条件で焼結すること以外は前記第2実施形態例1)の方法を繰り返し、その結果を表4に共に示した。
【0033】
表4に示すとおり、稀土類酸化物を様々に変化させ、ガス流量を900cm3/分以上である1200cm3/分とした場合にも、表3にて得た結果と比べて大きな差は示されないことが分かる。
【0034】
【表4】
<第3実施形態例>
1)まず、純度約99.9%のBaTiO3粉末とCuO粉末及びLa2O3粉末を下記の表5に記載の組成どおり秤量した後、エチルアルコールとジルコニアボールを用いて約36時間湿式混合した。混合されたスラリーを乾燥した後、約1000℃の空気雰囲気下で約2時間か焼した。
【0035】
前記の如く準備されたBaTiO3+xCuO+yLa2O3(ここで、x=0.03で、0.00<y≦0.05である)粉末を直径10mmの鋳型で1トン/cm2の圧力で一軸加圧成形した後、再び3トン/cm2の圧力で静水圧成形した。得られた成形体を直径6cmのアルミナチューブ内で常温から約360℃/hrで1100℃まで昇温させることにより焼結させた。この時の焼結雰囲気は下記の表5に記載されたとおり、窒素、空気又は酸素を各1気圧にし、各ガスの純度は約99.9%以上で、その流量は300〜1500cm3/分範囲内で調節した。
【0036】
ここで、酸素流量300cm3/分は、直径6cmのチューブで成された焼結反応炉の有効長さ(hot zone)が10cmであることを勘案した時、焼結反応炉の体積を基準として1分当たり1.1倍に該当する(π×32×10=283cm3)。
【0037】
焼結した後、最終的な試片の厚さが1mmになるようにSiC研磨紙(#1000)を用いて研磨した。研磨後、銀ペーストを試片の両面に塗り約600℃で約10分間熱処理し電極を形成した。得られた試片の誘電特性はLCR meter(Hewlett Packard社製品、モデル名4263B)を用いて1.0Vrms、1kHzで測定した。
【0038】
その後、試片の両面の電極を全て除去した後、焼結密度を測定し、SiC研磨紙(#2000)とダイヤモンドペースト(9、3、1μm)とで片面を研磨し走査電子顕微鏡(Hitachi社製品、S−4200)で焼結体の平均粒径を測定した。
その結果を表5に示した。
【0039】
【表5】
前記表5の結果にて、CuO及びLa2O3添加量が同じ場合、窒素、空気、酸素雰囲気順に、誘電常数は多少小さいが焼結密度が高く平均粒径が小さな誘電体セラミックスを得ることが出来た。又、酸素雰囲気で焼結する場合、900cm3/分以上の流量にて最も高密度で超微粒のBaTiO3系誘電体セラミックスを得ることが出来た。
【0040】
2)混合粉末の組成を表6のとおりにして、酸素雰囲気下でガス流量1200cm3/分の条件で焼結すること以外は前記実施例3の1)の方法を繰り返し、その結果を表6に共に示した。
【0041】
表6に示すとおり、稀土類酸化物を様々に変化させ、ガス流量を900cm3/分以上である1200cm3/分とした場合にも、表5にて得た結果と比べて大きな差は示されないことが分かる。
【0042】
【表6】
【0043】
【発明の効果】
本発明によると、BaTiO3にCu系酸化物及び稀土類金属酸化物を添加し、焼結工程を酸素雰囲気で制御することにより低温にて高密度で超微粒の誘電体セラミックスを得ることが出来る。
Claims (7)
- 高純度なBaTiO3粉末とCu系酸化物粉末及びRE2O3粉末を定量に秤量した後、ボールミリングし、BaTiO3+xCu系酸化物+yRE2O3(ここで、0.00<x≦0.05、0.00<y≦0.05で、REは、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびYbで成される群の中から選択された一種以上の稀土類元素である)混合スラリーを得る段階と、
前記スラリーを乾燥した後、か焼し、か焼粉末を得る段階と、
前記BaTiO3+xCu系酸化物+yRE2O3か焼粉末を成形する段階、及び
得られた成形体を酸素雰囲気下にて焼結する段階とを含む超微粒誘電体セラミックスの製造方法。 - 前記Cu系酸化物はCu2Oであることを特徴とする請求項1に記載の超微粒誘電体セラミックスの製造方法。
- 前記Cu系酸化物はCu3TiO4であることを特徴とする請求項1に記載の超微粒誘電体セラミックスの製造方法。
- 前記Cu系酸化物はCuOであることを特徴とする請求項1に記載の超微粒誘電体セラミックスの製造方法。
- 前記酸素雰囲気を作るための酸素の1分当たりの流量は、焼結反応炉の体積を基準として1.1倍以上に酸素を供給することを特徴とする請求項1に記載の超微粒誘電体セラミックスの製造方法。
- 前記酸素雰囲気を作るための酸素の1分当たりの流量は、焼結反応炉の体積を基準として3.2倍以上に酸素を供給することを特徴とする請求項5に記載の超微粒誘電体セラミックスの製造方法。
- 前記か焼段階は900〜1100℃で0.5〜2時間行うことを特徴とする請求項1に記載の超微粒誘電体セラミックスの製造方法。
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