JP3576248B2 - 走査型プローブ顕微鏡 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、高分解能で高精度の測定が可能な走査型プローブ顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、走査型トンネル顕微鏡や原子間力顕微鏡などのように、ナノメートルオーダの高い縦横方向の分解能を有する走査型プローブ顕微鏡(以下、SPMと略称する)が知られている。そして、この高い分解能を実現するために、駆動分解能が高い圧電体を用いた圧電スキャナステージが広く使われている。図5に、XYZ方向に電極を有する円筒型圧電体(以下、チューブスキャナと称する)を用いた従来のSPMの構成例を示す。図5において、1はチューブスキャナで、該チューブスキャナ1上にはステージ2が固定されており、ステージ2の上に試料3が載置されている。試料3にはカンチレバー4が近づけて配設され、試料3とカンチレバー4の間に働く相互作用によってカンチレバー4が変位し、その変位によりカンチレバー変位センサ5の出力が変化するように構成されている。なお、この構成例では、カンチレバー4とカンチレバー変位センサ5とでセンサ系を構成している。そして、カンチレバー変位センサ5の出力はZスキャンドライバ6に入力され、該Zスキャンドライバ6からのZ駆動信号によりチューブスキャナ1の印加電圧が変えられ、該スキャナ1をZ方向に駆動する。すなわち、カンチレバー4の変位が常に一定になるようにステージ2をZ方向に移動するフィードバック制御を行うようになっている。
【0003】
一方、スキャンコントローラ7は、SPM画像を得るためのXYトリガ信号をXYスキャンドライバ8に出力する。XYスキャンドライバ8はX及びY駆動信号を出力し、チューブスキャナ1の印加電圧を変えてXY走査を行わせる。なお、このXY走査は、図6に示されるような一般的にラスタスキャンといわれる走査である。前記XYトリガ信号はサンプリング部9にも入力され、Z駆動信号、つまりZ変位信号をサンプリングするトリガ信号となる。サンプリング部9でサンプリングされたZ変位信号は画像メモリ10に保存され、画像メモリ10の内容がCRT11に表示されてSPM画像が得られる。このSPM画像をもとに試料の3次元形状測定が行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図7に示されるようなベクタスキャン(ラスタスキャン方向と角度θずれるスキャン方向)の正確なSPM画像情報(例えば、画像に表示される山や溝などの大きさ、起伏など)を得るためには、SPM画像の分解能を向上させる必要がある。したがって、従来の構成のSPMにより得られるSPM画像においては、画像メモリの規模により表示分解能が決まることを考慮すれば、分解能を高くするには画像メモリを大規模にしなければならず、一方、画像メモリの容量不足による分解能のまま測定すると、画像メモリに起因するSPM画像の量子化誤差が大きくなるという問題点がある。
【0005】
また、SPM画像を取り込むための方法はラスタースキャンであって、試料画像を1ラインづつ取り込む方法であり、ベクタスキャン方向のSPM画像情報は画素ずれを含むものであることが考えられ、測定誤差につながるという問題点もある。
【0006】
本発明は、従来のSPMにおける上記問題点を解消するためになされたもので、画像メモリの規模を変えずに、高分解能で高精度に測定できるSPMを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記問題点を解決するため、請求項1に係る発明は、試料とセンサ系とを相対的に水平方向に走査するスキャナと、該スキャナを駆動するスキャナ駆動手段と、前記スキャナの走査面に対して鉛直方向へ試料とセンサ系間の距離を変化させる鉛直方向移動手段と、前記センサ系の出力又は前記鉛直方向移動手段の移動量を、スキャナの水平方向の移動量に対応させて、サンプリング値としてサンプリングするサンプリング手段と、該サンプリング手段のサンプリング値を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶されているサンプリング値を表示する表示手段とを有する走査型プローブ顕微鏡において、前記表示手段上において測定点を指示する測定指示手段と、前記スキャナ駆動手段を、前記試料の測定所望部分を含む第1領域を前記スキャナが走査するように制御し、前記第1領域を前記表示手段に表示させ、前記表示手段に表示された前記第1領域より小さい測定所望の第2領域を前記測定指示手段で指示し、指示された第2領域を走査するように制御する制御手段と、前記第1領域と前記第2領域を前記サンプリング手段によりサンプリングするサンプリング値の総量を同等量に設定する設定手段とを備えていることを特徴とするものである。
また請求項3に係る発明は、試料とセンサ系とを相対的に水平方向に走査するスキャナと、該スキャナを駆動するスキャナ駆動手段と、前記スキャナの走査面に対して鉛直方向へ試料とセンサ系間の距離を変化させる鉛直方向移動手段と、前記センサ系の出力又は前記鉛直方向移動手段の移動量を、スキャナの水平方向の移動量に対応させて、サンプリング値としてサンプリングするサンプリング手段と、該サンプリング手段のサンプリング値を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶されているサンプリング値を表示する表示手段とを有する走査型プローブ顕微鏡において、前記表示手段上において測定点を指示する測定指示手段と、前記スキャナ駆動手段を、前記試料の測定所望部分を含む領域を前記スキャナが走査するように制御し、前記領域を前記表示手段に表示させ、前記表示手段に表示された前記領域内の所望の測定点を前記測定指示手段で指示し、指示された測定点間のライン上をベクタスキャン走査するように制御する制御手段と、前記領域と前記ライン上を走査する制御において前記サンプリング手段によりサンプリングされるサンプリング値の総量を同等量に設定する設定手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
このように構成した請求項1又は3に係るSPMにおいては、測定所望部分を含む第1領域と該第1領域より小さい第2領域をサンプリング手段によりサンプリングするサンプリング値の総量を同等量に設定するか、あるいは測定所望部分を含む領域と該領域内の所望の測定点間のライン上を走査する制御においてサンプリング手段によりサンプリングされるサンプリング値の総量を同等量に設定するようにしているので、記憶手段の全領域を用いて測定所望の第2領域あるいは所望測定点間のライン上のみのサンプリング情報を記憶させて表示手段に表示させることができ、記憶手段の規模を増大せずに、試料の所望部分を高分解能で、高精度に測定することが可能となる。また、請求項3に係るSPMにおいては、表示手段上で測定点を指示して指示された測定点間のライン上をスキャナでベクタスキャンすることができるので、ラスタスキャンの場合に生じるライン毎の画素ずれの発生を防止することができる。
【0009】
【実施例】
次に実施例について説明する。図1は、本発明に係るSPMの第1実施例を示す概略構成図で、図5に示した従来例と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。この実施例の図5に示した従来例と異なる点は、測定点指示部12を設けている点である。この測定点指示部12は、従来と同様にしてSPM画像が得られたCRT11a上において、図2に示すように実際に測長したい部分を横切るように、2点A,Bを指示し、そして、CRT11aより、指示した2点A,Bの座標を受け取り、その座標間をベクタスキャンするようにスキャンコントローラ7aに指示するものである。
【0010】
このような構成の測定点指示部12を設けることにより、従来と同様な手法で2点A,B間のみをスキャンすることが可能となり、サンプリング部9でサンプリングされたZ変位信号は画像メモリ10に保存され、画像メモリ10の内容がCRT11aに、例えば図3に示すように表示される。なお図3において、Lは図2に示した全体画像の斜線部分の長さを示している。
【0011】この場合、画像メモリ10はAB間1ライン分のサンプリングのみに使用できるので、図3の横軸AB間の画素数は画像メモリ10の容量内で任意に設定できる。したがって、画像メモリの容量を大きくすることなく、所望測定領域をより高分解能でサンプリングでき、量子化誤差を小さくすることができる。また、所望測定部分をベクタスキャンしているので、ラスタスキャンで問題となる画素ずれによる測定誤差を取り除くことができる。なお、本実施例では、1ラインのみのサンプリングの場合について説明したが、画像メモリ10の容量内での任意の設定により、続けていくつものラインをサンプリングすることもできる。
【0012】
ところで、上記第1実施例においては、スキャンコントローラ7aより出力されるX,Yトリガに基づいてサンプリング部9でサンプリングを行うようにしており、チューブスキャナ1がX,Yトリガに対応して実際に動いているものとして、サンプリング部9へX,Yトリガを与えているものなので、実際にはチューブスキャナ1がX,Yトリガに対応して正確には動かず、サンプリング部9から得られた画像信号には歪み等が入って来るおそれがある。
【0013】
次に述べる第2実施例は、このような問題点を解消するようにした実施例である。図4は、かかる第2実施例を示す概略構成図で、図1に示した第1実施例と同一構成部分には同一符号を付して示し、その説明を省略する。この実施例は、チューブスキャナ1の走査方向の実際の変位を、レーザ干渉測長機13で測長し、該レーザ干渉測長機13からの測長値を受けたパルス発生部14が、サンプリング部9に対してサンプリングパルスを発生するように構成するものである。レーザ干渉測長系は、上記レーザ干渉測長機13と、X干渉系15と、Y干渉系16と、ミラー17,18と、ハーフミラー19と、チューブスキャナ1の側面に設けられたXミラー20及びYミラー21とで構成されている。
【0014】
そして、レーザ干渉測長機13から出射されたレーザ光は、ハーフミラー19で分岐され、その一方はミラー17で直角に曲げられて、X干渉系15を介してXミラー20に到達する。分岐された他方のレーザ光も、同様にミラー18で直角に曲げられて、Y干渉系16を介してYミラー21に到達し、X干渉系15及びY干渉系16の干渉信号により、レーザ干渉測長機13はX,Y方向の変位を測長する。そして、パルス生成部14にX,Yの測長値を出力する。パルス生成部14はX,Yの測長値により、X,Yのサンプリングパルスを生成して、サンプリング部9に出力する。
【0015】
このように構成した場合、パルス生成部14より出力されるX,Yのサンプリングパルスは、実際のX,Y方向の変位を測長した測長値に基づいて生成されたものであり、したがって、第1実施例の場合より、正確なSPM画像が得られ、精度よく測定することができる。なお、パルス生成部14は、スキャンを行うときのサンプリングパルスをサンプリングピッチ(図2における2点A,Bの間を256 点,512 点など所望のサンプリング点数に応じて分割した値)に合わせて出力するが、このサンプリングピッチを設定するためのコントロール部は、パルス生成部14に含まれるものである。
【0016】
なお、上記第2実施例においては、レーザ干渉測長機から出射されたレーザ光を分岐して、X,Y方向の測長を行うようにしたものを示したが、X,Yそれぞれの軸にレーザ干渉測長機を配置する構成としてもよい。また、チューブスキャナはステージ側ではなく、カンチレバーとカンチレバー変位センサからなるセンサ系側に配置する構成としてもよい。
【0017】
次に、第3実施例について説明する。この実施例は、図示は省略するが、第2実施例においてX,Y走査方向の実際の変位をレーザ干渉測長機で測長していたのと同様に、鉛直方向(Z方向)の変位もレーザ干渉測長機で測長するように構成するものである。このように構成することにより、第1及び第2実施例に示したものより正確なSPM画像が得られ、精度よく測定することができる。
【0018】
【発明の効果】
以上、実施例に基づいて説明したように、本発明によれば、画像メモリの規模を大きくすることなく、正確なSPM画像を得ることができ、高分解能で高精度の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るSPMの第1実施例を示す概略構成図である。
【図2】SPM画像において、所望の測長部分を示す図である。
【図3】所望測長部分の測定結果を示す図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す概略構成図である。
【図5】従来のSPMの構成例を示す概略構成図である。
【図6】ラスタスキャンの走査態様を示す図である。
【図7】ベクタスキャンの走査態様を示す図である。
【符号の説明】
1 チューブスキャナ
2 ステージ
3 試料
4 カンチレバー
5 カンチレバー変位センサ
6 Zスキャンドライバ
7,7a スキャンコントローラ
8 XYスキャンドライバ
9 サンプリング部
10 画像メモリ
11,11a CRT
12 測定点指示部
13 レーザ干渉測長機
14 パルス生成部
15 X干渉系
16 Y干渉系
17,18 ミラー
19 ハーフミラー
20 Xミラー
21 Yミラー

Claims (8)

  1. 試料とセンサ系とを相対的に水平方向に走査するスキャナと、
    該スキャナを駆動するスキャナ駆動手段と、
    前記スキャナの走査面に対して鉛直方向へ試料とセンサ系間の距離を変化させる鉛直方向移動手段と、
    前記センサ系の出力又は前記鉛直方向移動手段の移動量を、スキャナの水平方向の移動量に対応させて、サンプリング値としてサンプリングするサンプリング手段と、
    該サンプリング手段のサンプリング値を記憶する記憶手段と、
    該記憶手段に記憶されているサンプリング値を表示する表示手段とを有する走査型プローブ顕微鏡において、
    前記表示手段上において測定点を指示する測定指示手段と、
    前記スキャナ駆動手段を、前記試料の測定所望部分を含む第1領域を前記スキャナが走査するように制御し、前記第1領域を前記表示手段に表示させ、前記表示手段に表示された前記第1領域より小さい測定所望の第2領域を前記測定指示手段で指示し、指示された第2領域を走査するように制御する制御手段と
    前記第1領域と前記第2領域を前記サンプリング手段によりサンプリングするサンプリング値の総量を同等量に設定する設定手段とを備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  2. 前記制御手段により、前記測定所望の第2領域をベクタスキャン走査するように制御することを特徴とする請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡。
  3. 試料とセンサ系とを相対的に水平方向に走査するスキャナと、
    該スキャナを駆動するスキャナ駆動手段と、
    前記スキャナの走査面に対して鉛直方向へ試料とセンサ系間の距離を変化させる鉛直方向移動手段と、
    前記センサ系の出力又は前記鉛直方向移動手段の移動量を、スキャナの水平方向の移動量に対応させて、サンプリング値としてサンプリングするサンプリング手段と、
    該サンプリング手段のサンプリング値を記憶する記憶手段と、
    該記憶手段に記憶されているサンプリング値を表示する表示手段とを有する走査型プローブ顕微鏡において、
    前記表示手段上において測定点を指示する測定指示手段と、
    前記スキャナ駆動手段を、前記試料の測定所望部分を含む領域を前記スキャナが走査するように制御し、前記領域を前記表示手段に表示させ、前記表示手段に表示された前記領域内の所望の測定点を前記測定指示手段で指示し、指示された測定点間のライン上をベクタスキャン走査するように制御する制御手段と、
    前記領域と前記ライン上を走査する制御において前記サンプリング手段によりサンプリングされるサンプリング値の総量を同等量に設定する設定手段とを備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  4. 請求項に記載の走査型プローブ顕微鏡であって、複数のラインをサンプリングすることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  5. 前記スキャナの水平方向の移動量を測長する水平方向レーザ干渉測長機と、
    該レーザ干渉測長機で得られた測長値に基づいて前記サンプリング手段を駆動するサンプリングパルスを生成する手段とを備えていることを特徴とする請求項1,4のいずれか1項に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  6. 前記鉛直方向移動手段の移動量を測長し、該測長値をサンプリング手段へ入力する鉛直方向レーザ干渉測長機を備えていることを特徴とする請求項1,ないし5のいずれか1項に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  7. 前記サンプリング手段によりサンプリングされるサンプリング画素数を設定する設定手段備え、
    前記設定手段は、前記第1領域と前記第2領域において前記サンプリング手段によりサン プリングされるサンプリング画素数の総量を同等量に設定することを特徴とする請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡。
  8. 前記サンプリング手段によりサンプリングされるサンプリング画素数を設定する設定手段を備え、
    前記設定手段は、前記領域と前記ライン上において前記サンプリング手段によりサンプリングされるサンプリング画素数の総量を同等量に設定することを特徴とする請求項3記載の走査型プローブ顕微鏡。
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