JP3575013B1 - 高周波電力供給用同軸ケーブルと、該同軸ケーブルにより構成されるプラズマ表面処理装置およびプラズマ表面処理方法 - Google Patents

高周波電力供給用同軸ケーブルと、該同軸ケーブルにより構成されるプラズマ表面処理装置およびプラズマ表面処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】1mx1m級大面積基板に対しても、真空容器内の一対の電極間にVHF帯(30MHz〜300MHz)のプラズマが再現性良く、均一に生成され、基板に対する均一なプラズマ表面処理が可能となる表面処理装置および表面処理方法を提供すること。
【解決手段】プラズマを利用して真空容器1内の一対の電極2,4の一方に配置される基板13の表面を処理する表面処理装置および方法において、前記一対の電極2,4に高周波電源15の出力を供給するために用いられる高周波電力供給用同軸ケーブル19であって、同軸ケーブルの一方の端部から他方の端部の方向を見た外部導体の外側表面のインピーダンスを無限大とする構造をもつ同軸ケーブル、該同軸ケーブルにより構成されるプラズマ表面処理装置およびプラズマ表面処理方法であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラズマを利用して基板の表面に所定の処理を施す表面処理装置および表面処理方法に関する。本発明は、特に、周波数30MHzないし300MHzの高周波電力により生じさせた放電用ガスのグロー放電によって、プラズマを生成する反応性プラズマによる表面処理装置および表面処理方法に関する。
反応性プラズマを用いて基板の表面に各種処理を施し、各種電子デバイスを製作することは、LSI(大規模集積回路)、LCD(液晶デイスプレー)、アモルファスSi系太陽電池、薄膜多結晶Si系太陽電池、複写機用感光体、および各種情報記録デバイス等の分野において既に実用化されている。また、ダイヤモンド薄膜および立方晶ボロンナイトライド(C−BN)等の超硬質膜製造分野においても実用化が進みつつある。
上記技術分野は、薄膜形成、エッチング、表面改質およびコーテイング等多岐に亘るが、いずれも反応性プラズマの化学的および物理的作用を活用したものである。上記反応性プラズマの生成に関する装置および方法には、大別すると2つの代表的技術がある。
第1の代表的技術は、例えば、特許文献1、2および非特許文献1、2に記載されているもので、プラズマ発生に非接地電極と接地電極から成る2枚の平行平板電極を一対として用いることを特徴とする。第2の代表的技術は、例えば、特許文献3および4に記載されているもので、プラズマ発生にラダー電極と平板電極を一対として用いることを特徴とする。
なお、上記文献記載の技術の特徴は概略次の通りである。特許文献1の技術では、非接地電極は、プラズマが生成される空間に対向した表面の周縁上の任意の二点のうちの最も距離の長い二点間の距離が高周波電力の波長の四分の一よりも長い形状で、かつ、電力供給点は均等な位置に複数設定されることを特徴としている。特許文献2の技術では、非接地電極の電力供給点の位置を、プラズマが生成される空間に接する第1の面と該第1の面の裏側である第2の面との境界の側面に位置することを特徴としている。特許文献3の技術では、非接地電極の形状が梯子型(ラダー型)であることを特徴としている。特許文献4の技術では、電極上のある1つの給電点に供給される電力の電圧と他の少なくとも1つの給電点に供給される前記電力の電圧の位相差を時間的に変化させることにより、一対の電極間の電界分布を平均化し、結果として、プラズマの強さの空間的分布を一様化することを特徴としている。非特許文献1の技術は、非接地電極のプラズマに接する面の裏側の面にH文字状の給電帯を設置し、該H文字状給電帯上に複数の給電点を設置したことを特徴としている。非特許文献2の技術は、非接地電極の給電点の反対側、即ち電力伝播方向に位置する該電極の端部にリアクタンス回路を設置し、電源と該一対の電極を結ぶ給電線および該電極に発生する定在波の腹の位置を制御することを特徴としている。
上記のように、従来技術にはいくつかのタイプがあるが、高密度プラズマの発生方法として注目されているVHF帯(30MHz〜300MHz)を用いた
大面積プラズマ技術の典型的な事例として、特許文献1および4記載のプラズマ表面処理装置および方法を、図8ないし図14を参照して説明する。
(従来例1)
先ず、従来の第1の代表的技術として特許文献1記載の装置および方法について図8および図9を参照して説明する。図8は従来の第1の代表的技術に係わるプラズマ表面処理装置の構成図、図9は従来の第1の代表的技術に係わる電極と電力供給用同軸ケーブルとの接続部の構造を示す説明図である。図8に示すように、従来の第1の代表例は、真空容器101と、基板113が設置される接地電極104と、接地電極104に対面配置される非接地電極102と、これら電極に高周波電力を供給する給電系、放電ガス供給系、および排気系とを具備している。
該接地電極104は基板ヒータ103を内臓し、基板113の温度を所定の値に設定する。該非接地電極104は、具体的には矩形状の板材(面積500mmx500mm程度ないし1,000mmx1,000mm程度)で、材質はステンレス鋼である。
他方、該非接地電極102は、絶縁物106を介して真空容器101の上部に取り付けられている。非接地電極102の内部は空洞で、プラズマが生成される空間192に接する面102aには、直径0.5mm程度の多数のガス噴出し孔102bが孔間隔10ないし15mmで配置されている。
前記非接地電極102の上面には、放電用ガスの開口部102cが配置されている。この開口部102cには、接続部材194(材料はセラミックス)を介して放電用ガス導入管109が接続され、図示しない材料ガス供給源よりバルブ193を介して例えばシランガス(SiH4)が供給される。前記真空容器101内のガスは排気管111を通して真空ポンプ112より排出される。基板113は、ゲートバルブ195を開にして接地電極104上に設置され、基板ヒータ103および基板ヒータ電源191により所定の温度に加熱される。
該非接地電極102の電力供給点114a、114bには、所定の高周波電力を発生させる高周波電源115の出力が、該出力を複数個に分配する電力分配器190と、第1および第2の整合器117a、117bと、第1、第2、第3および第4の同軸ケーブル116a、116b、116c、116dを介して供給される。該電極102と電力供給用同軸ケーブルの接続部の構造を図9に示す。図9において、電力供給点114bには、同軸ケーブル116dの芯線123が接続され、かつ、その近傍が絶縁環121で絶縁されている。そして、該同軸ケーブル116dの外部導体の端部は、接地導体196を介して真空容器101に接続されている。なお、図9の符番102,106は、それぞれ、非接地電極および絶縁物である。
プラズマを発生させる場合は高周波電源115の出力を所定の値に設定し、図示しない高周波電源に付属した進行波・反射波の検出器(モニター)を見ながら、第1および第2の整合器117a、117bを順次調整し、反射波がほぼ1〜10%程度の状態を設定する。その結果、高周波電源の出力は、整合器117a,117bから下流側へそのほぼ90〜99%程度が供給される。
次に、図8および図9の装置を用いて、例えばアモルファスSi(a−Si)膜を製膜する場合について説明する。ゲートバルブ195を開にし、基板113を接地電極104に設置し、ゲートバルブ195を閉に戻す。真空ポンプ112を駆動して真空容器101内の圧力を1E−7Torr(1.33E−5Pa)程度まで排気する。基板113の温度を基板ヒータ103および基板ヒータ電源191を用いて所定の温度に設定する。放電用ガス導入管109を通して、例えばシランガスを所定量供給し、真空容器101内を0.05ないし0.5Torr(6.65ないし66.5Pa)に保ち、前記電力供給系を用いて一対の電極102,104に電力を供給する。これにより、非接地電極102と接地電極104の間にグロー放電プラズマが生成される。シランガスがプラズマ化されると、その中に存在するSiH3、SiH2、SiH等のラデイカルが拡散現象により拡散し、基板113の表面に吸着・堆積する。その結果、アモルファスSi膜が形成される。
なお、製膜条件として放電用ガスの混合比、例えば、SiH4とH2の流量比、圧力、基板温度およびプラズマ発生電力を適正化することで、a−Siのみならず、微結晶Siおよび多結晶Si膜を製造できることは公知である。
また、放電用ガスとして、エッチング作用のあるガス、例えばSF6、SiCl4、CF4およびNF3等エッチングガスを用いれば、基板表面のエッチング処理が行なえることは公知である。
(従来例2)
次に、従来の第2の代表的技術として、特許文献4記載の従来技術を、図10ないし図14を参照して説明する。図10は従来の第2の技術に係わる表面処理装置の概念図、図11は図10図示の装置に係わる給電系のブロック構成図、図12は図10図示の装置に係わる電極と電力供給用同軸ケーブルとの接続部の構造を示す説明図、図13は従来の第2の代表的技術に係わる電圧波の説明図、図14は従来の第2の代表的技術に係わる電圧の合成波の説明図である。図10および図11に示すように、従来の第2の代表的技術のプラズマ表面処理装置は、真空容器201と、基板213が設置される接地電極204と、接地電極204に対面配置されるラダー型構造の非接地電極202(ラダー電極と呼ぶ)と、これら電極間に高周波電力を供給する給電系、放電ガス供給系、および排気系とを備えている。
真空容器201には該真空容器201内の反応ガス等のガスを排気する排気管211を介して真空ポンプ212が接続されている。そして、アースシールド208が配置されている。該アースシールド208は前記排気管211と組み合わせて使用されることにより、反応ガス導入管209a、209bより導入される反応ガスおよびその他生成物を排気管211を介して排出する。真空ポンプ212を稼動すると、圧力1E−6Torr(1.33E−4Pa)程度に真空排気される。反応ガス導入管209a、209bより反応ガスとして例えばシランガスが供給されると、図示しない多数のガス噴出孔からラダー電極202と接地電極204の間にシランガスが一様に流れ出すようになっている。
基板213は接地電極204に保持され、図示しない内臓ヒータ203により所定の温度に加熱される。基板には、サイズ460mmx460mm、厚さ1mm程度のガラスが用いられる。ラダー電極202は、サイズ例えば外寸法520mmx520mm程度で、直径6mm程度の丸棒部材を等ピッチ間隔に梯子状に組み立て製作されている。該電極202への給電には図11および図12に示すように、4つの給電点214aないし214dで、同軸ケーブル216a,216b,216c、216dと接続される。
給電系は、図10および図11に示すように、高周波発信器232、信号分配器233、フエーズシフター(位相シフター)234、一対の電力増幅器236a,236b、一対の整合器217a、217b、一対の電力分配器240a、240bおよびコンピユータ235などより構成される。信号分配器233の2つの出力の一方の電圧の位相は、コンピユータ235で駆動制御されるフエーズシフター234により、±180度の範囲で時間的に変化する。該位相変化のある信号は第2の電力増幅器236bで電力増幅され、第2の整合器217bおよび第2の電力分配器240bを介して、給電点214c、214dに供給される。他方の出力は、第1の電力増幅器236a、第1の整合器217aおよび第1の電力分配器240aを介して、給電点214a、214bに供給される。
該ラダー電極202と電力供給用同軸ケーブルの接続部の構造を図12に示す。図12において、給電点214aには、前記アースシールド208を貫通して設置されている同軸ケーブル216aの芯線(内部導体)223が接続されている。該芯線223の周りは放電防止用絶縁環237で囲まれている。なお、該同軸ケーブルの外部導体はアースシールド208に取り付けリング239で接続され、その端部はカップリング241で整形されている。
プラズマを発生させる場合は、電力増幅器236a,236bに付属した図示しない進行波・反射波の検出器(モニター)を見ながら、第1および第2の整合器217a,217bを順次調整し、反射波がほぼ1〜10%程度の状態を設定する。その結果、電力増幅器236a,236bの出力は、それぞれ整合器217a,217bから下流側へそのほぼ90〜99%程度が供給される。
次に、図10および図11に図示の装置を用いて例えば微結晶Si膜を製造する場合について説明する。図示しないゲートバルブより、基板213例えばサイズ460mmx460mmのガラスを接地電極204の上に設置して、ゲートバルブを閉める。続いて、前記従来例1と同様に、真空ポンプ212を駆動させ、所定の真空度まで真空引きする。基板213の温度を200℃に設定し、シランガスを500sccm、水素ガスを3、500sccm供給しつつ、圧力を0.15Torr(20Pa)に設定する。
そして、高周波発振器232の周波数を例えば60MHzに設定する。フェーズシフター234により、信号分配器233の一方の出力信号(正弦波)の位相を時間的に三角波状に変調させる。この場合、ラダー電極202と接地電極204間の電界は、給電点214a、214bおよび214c、214dに供給される電力の電圧の位相差が時間的に変化するので、それに対応して変化する。その様子を図13に電圧の波として示している。
図13において、ラダー電極202の長さ方向の位置をx、右方向(xの正方向)へ伝播する電圧波をW1(x,t)、左方向(xの負方向)へ伝播する電圧波をW2(x,t)とすると、次のように表現される。
W1(x,t)=V0・sin(ωt+2π/λ).....(1)
W2(x,t)=V0・sin{ωt−2π(x−L0)/λ+Δθ}...(2)
ただし、V0は電圧の振幅、ωは電圧の角周波数、λは電圧の波長、tは時間、L0はラダー電極202の伝播方向の長さ、Δθは 位相差である。電圧の合成波W(x、t)は次式のようになる。
W(x、t)=W1(x、t)+W2(x、t)=2・V0cos{2π(x−L0/2)/λ−Δθ/2}・sin{ωt+(2πL0/λ+Δθ/2}....(3)
上記(3)式で表せる合成波W(x、t)を概念的に図14に示す。Δθ=0の場合、生成されるプラズマの強さはラダー電極の中央部(x=L0/2)が強く、両端では弱いことを示している。プラズマの強い部分は、Δθ>0の場合、ラダー電極の右端部であり、Δθ<0の場合、左端部であることを示している。即ち、前記フェーズシフター234を用いて、前記式(3)のΔθを−180度〜+180度の間で時間的に三角波状に変化させることにより、時間平均的に均一な強さのプラズマが生成される。その結果、プラズマの強さの不均一性が時間的に平均化されることにより、一様な膜厚分布の微結晶Si膜が得られる。
特開平8−325759(第3−9頁、第1−4図) 特開平2002−12977(第5−13頁、第1−6図) 特開平4−236781(第2−4頁、第1−4図) 特開2001−257098(第3−8頁、第1−3図)
L.Sansonnens, A.Pletzer, D.Magni, A.A.Howling,Ch.Hollenstein and J.P.M.Schmitt,:A voltage uniformity study in large-area reactors for RF plasma deposition , Plasma Source Sci. Technol.6(1997),p.170-178. J.Kuske, U.Stephan, O.Steinke and S.Rohleck: Power feeding in large area PECVD of amorphous silicon, Mat. Res. Soc. Symp.Proc. Vol. 377(1995),p.27-32.
上記のプラズマ表面処理技術、即ちプラズマ表面処理装置とプラズマ表面処理方法は、LCD,LSI,電子複写機および太陽電池等の産業分野のいずれにおいても、生産性向上に伴う製品コストの低減および大面積壁掛けTVなど性能(仕様)の改善等に関する大面積・均一化および高速処理化のニーズが年々強まっている。
最近では、上記ニーズに対応するため、産業界のみならず、学会でも特に、プラズマCVD(化学蒸着)技術およびプラズマエッチング技術ともに、高密度プラズマで、かつ低電子温度との特徴のあるVHF帯(30MHzないし300MHz)の電源を用いたプラズマCVDの大面積化・高速製膜化およびプラズマエッチングの大面積化・高速化に関する先端的研究開発が盛んになっている。しかしながら、従来技術では、以下に述べるような課題が依然として存在している。
(1)第1の課題は、プラズマ表面処理の大面積化(生産性向上および性能向上)である。プラズマ表面処理の装置および方法としては、前述のいくつかのタイプの技術が用いられている。従来のVHFプラズマ技術により、例えばa−Si膜を製造する場合、再現性の確保を前提条件にすると、基板面積が50cmx50cm程度に関しては、±10%〜15%程度の膜厚分布、100cmx100cm程度に関しては、±15〜20%程度の膜厚分布になっている。
一般に、LCD分野では、膜厚分布は再現性を確保して、±5%程度、太陽電池分野では、膜厚分布は再現性を確保して、±10%程度が実用化の一つの指標となっている。したがって、電源周波数がVHF領域(30MHz〜300MHz)でのプラズマ応用として期待されている1mx1m級大面積基板を対象にした製品製造には、従来技術は実用できないという問題がある。
(2)第2の課題は、表面処理の高速化(生産性向上)である。製品の品質の確保を前提にして、プラズマ表面処理技術の高速化を図るには、プラズマ発生の電源周波数を、30MHz〜300MHzのVHF帯域まで高くすることが効果的であるいう考え方が一般的になっている。しかしながら、上記電源周波数をVHF帯域まで増加させると、膜厚分布が著しく悪くなるという問題が発生する。
その理由としては次のことが考えられる。特許文献1,2、4および非特許文献1、2に指摘されているように、電源高周波数がVHF帯域になると、その電波の波長と電力供給系の伝播路および電極上での伝播路の長さが略等しくなり、波の干渉現象(波の進行波と反射波が干渉する)が発生することから、プラズマ密度の空間的な均一性が確保できなくなると考えられる。また、別の理由として、VHF特有の現象である表皮効果による電力伝播路でのインピーダンスの増大およびその不均一性に起因するものと考えられる。
本発明者は、最近、上記従来のVHFプラズマによる大面積化・均一化・高速処理化の困難性に関する本質的な原因として、上記文献での指摘事項に加えて、次に示す電力供給系の構造上の問題が関係しているということを発見した。
具体的には、従来技術での図9及び図12において、給電系の出力回路の構成部材の同軸ケーブルと電極との接続部は、互いに異なる構造の線路が接続された形になっている。即ち、同軸ケーブルは、内部導体(芯線)と外部導体の内面を往路・帰路とする伝送方式であるが、負荷である電極の構造は、同軸ケーブルと異なり、2本の平行線路に相当する構造である。その結果、その接続点では漏洩電流が発生する。この現象は電源周波数がVHF帯域になることにより、問題化されるものである。その様子を図6に示す。図6において、同軸ケーブル内部では、芯線と外部導体の内面を、振幅が等しく、位相が180度異なる電流Iが流れているが、該同軸ケーブルの端部からは前記Iと異なる電流I1,I2およびI3が流出している。該同軸ケーブルの内部と端部での電流が異なるのは、I3で表している電流で、これが問題の現象である。ここではI3を漏洩電流と呼ぶ。なお、図6では、同軸ケーブルの端部と一対の電極との接合部での高周波電力の電流のある瞬間を概念的に示しているが、交流現象なので、当然、図示されている電流の方向は時間的に変化する。
図6に示した漏洩電流の所在と概念を伝送回路の理論で具体的に考えると、次に示すようになる。図6において、同軸ケーブルの芯線と外部導体の内側に流れる電流をI、一対の電極の電力供給箇所と該同軸ケーブルとの接続線を流れる電流をI1,I2、該同軸ケーブルの外部導体の外側を流れる電流(ここでは、漏洩電流と呼ぶ)を、I3で表す。該同軸ケーブルの端部より見た一対の電極のインピーダンスは不平衡インピーダンスと平衡インピーダンスに分離できるものと考え、それぞれをZaおよびZbで表す。さらに、図6の同軸ケーブルと電極の接続部を、不平衡伝送系モデル(両線の電位が等しく、アースを帰路とする伝送路)と平衡伝送系モデル(往路・帰路の電流の振幅が等しく、位相が180°異なる伝送路)に分解できると考え、それぞれのモデルを、図7(a)、(b)のように表す。そして、図7(a),(b)の各部の電圧、電流を、それぞれ、図7(a),(b)に図示した記号で表す。
伝送回路の理論によれば、上記図6および図7において、接続線を流れる電流I1,I2,および漏洩電流I3は次式で表される。
I1=Ia/2―Ib .....(4)
I2=Ia/2+Ib .....(5)
I2+I3=−I .........(6)
I3=−Ia .........(7)
不平衡伝送系のインピーダンスについては、次の関係がある。
Va/Ia=Z3+Za ....(8)
ただし、Z3は図7(a)において、同軸ケーブルの外部導体の端部外側より、右方を見たインピーダンスである。また、平衡伝送系のインピーダンスについては、次の関係がある。
Vb/Ib=Zb .......(9)
また、不平衡伝送系と平衡伝送系の電圧および電流の比に関して、次の関係がある。
Va/Vb=−1/2 ....(10)
Ia/Ib=―Zb/{2(Za+Z3)} ....(11)
上記(11)式の右辺において、一般に、不平衡インピーダンスZaは、無限大の値でないので、インピーダンスZ3が無限大の値でない限り、電流Iaは零にならない。即ち、漏洩電流I3が発生する。
従来のいくつかのタイプのプラズマ表面処理装置では、いずれも上記インピーダンスZ3が無限大の値になるように製作されていない。したがって、従来技術では漏洩電流I3が発生するという問題を抱えている。即ち、図9および図12に示される同軸ケーブルと一対の電極の電力供給箇所との接続部において、アース即ち真空容器内部の構造物が介在した漏洩電流の発生という現象が存在している。
この漏洩電流は、電力供給箇所近傍での不均一電界の原因であり、異常放電を起こす。この異常放電は、均一プラズマ生成の阻害要因であることから、極めて重大な問題である。
さらに、上記漏洩電流はアース即ち真空容器内部の構造物が介在した現象であるので、その構造物の個々の特徴に強い影響を受ける。したがって、従来技術でのプラズマ発生のための調整作業は、同軸ケーブルの接地の取り方の最適条件選定および再現性の評価などのために、多大の労力と時間を必要する。そして、生産装置などでは、装置のメンテナンス毎に、装置のアース条件が変化することから、再現性のある製品製造を行うことが困難となる場合がある。
以上詳説したように、従来技術では、量産性向上や低コスト化に必要な大面積基板、例えばサイズ1mx1m級大面積基板を対象にしたVHFプラズマCVDおよびプラズマエッチング等の応用は、依然として困難で、不可能視されている。このような状況のもと、応用物理学会および電気学会等関連学会において研究が活発化しているが、1mx1m級大面積基板を対象にしたVHFプラズマ利用の表面処理方法およびその装置の成功例は発表されていない。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、従来技術では困難視されている、例えば1mx1m級の大面積基板に対してもVHF帯域(30MHz〜300MHz)の周波数を用いて、高速かつ均一性に優れたプラズマ表面処理装置およびプラズマ表面処理方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する為に、本願の請求項記載の発明は、排気系を備えた真空容器と、この真空容器内に放電用ガスを供給する放電用ガス供給系と、基板がセットされる第1の電極と前記第1の電極に対向設置される第2の電極からなる一対の電極と、前記一対の電極に高周波電源出力の高周波電力を供給する電力供給系とを具備し、生成したプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置に用いられる高周波電力供給用同軸ケーブルであって、前記同軸ケーブルの一方の端部の芯線と外部導体を入力部とし、該同軸ケーブルの他方の端部に、両端開放の管型導電体と一方の端面を開放の円筒型導電体を被せ、該管型導電体の外面と該円筒型導電体の内面が密着し、該円筒型導電体の他方の端面は該同軸ケーブルの外部導体と密着し、かつ、該管型導電体の一方の端面と該円筒型導電体の閉じた方の端面との距離が、波長短縮率を考慮した前記高周波電源出力の波長λの四分の一すなわちλ/4で、かつ、該管型導電体と該同軸ケーブルの外部導体間に絶縁環を設置し、かつ、該管型導電体の一方の端面と該同軸ケーブルの端面を同一平面上に設置させ、かつ、該同軸ケーブルの他方の端部の芯線と外部導体を出力部とするという構成を有することを特徴とする。
同様に上記目的を達成する為に、本願の請求項記載の発明は、排気系を備えた真空容器と、この真空容器内に放電用ガスを供給する放電用ガス供給系と、基板がセットされる第1の電極と前記第1の電極に対向設置される第2の電極からなる一対の電極と、前記一対の電極に高周波電源出力の高周波電力を供給する高周波電力供給用同軸ケーブルにより構成の電力供給系とを具備し、生成したプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、前記高周波電力供給用同軸ケーブルが請求項に記載の高周波電力供給用同軸ケーブルにより構成されていることを特徴とする。
同様に上記目的を達成する為に、本願の請求項記載の発明は、排気系を備えた真空容器と、この真空容器内に放電用ガスを供給する放電用ガス供給系と、基板がセットされる第1の電極と前記第1の電極に対向設置される第2の電極からなる一対の電極と、前記一対の電極に高周波電源出力の高周波電力を供給する高周波電力供給用同軸ケーブルにより構成の電力供給系とを具備し、生成したプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、前記高周波電力供給用同軸ケーブルを請求項に記載の高周波電力供給用同軸ケーブルによって構成し、プラズマ表面処理を行うことを特徴とする。
請求項の高周波電力供給用同軸ケーブルによれば、排気系を備えた真空容器と、この真空容器内に放電用ガスを供給する放電用ガス供給系と、基板がセットされる第1の電極と前記第1の電極に対向設置される第2の電極からなる一対の電極と、前記一対の電極に高周波電源出力の高周波電力を供給する高周波電力供給用同軸ケーブルにより構成の電力供給系とを具備し、生成したプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、前記同軸ケーブルの一方の端部の芯線と外部導体を入力部とし、該同軸ケーブルの他方の端部に、両端開放の管型導電体と一方の端面を開放の円筒型導電体を被せ、該管型導電体の外面と該円筒型導電体の内面が密着し、該円筒型導電体の他方の端面は該同軸ケーブルの外部導体と密着し、かつ、該管型導電体の一方の端面と該円筒型導電体の閉じた方の端面との距離が、短縮率を考慮した前記高周波電源出力の波長λの四分の一すなわちλ/4で、かつ、該管型導電体と該同軸ケーブルの外部導体間に絶縁環を設置し、かつ、該管型導電体の一方の端面と該同軸ケーブルの端面を同一平面上に設置させ、かつ、該同軸ケーブルの他方の端部の芯線と外部導体を出力部とするという構成であるので、前記一対の電極への電力供給部での漏洩電流を抑制でき、該一対の電極間のプラズマの均一性を改善できるので、従来困難視されていたVHF帯域(30MHz〜300MHz)の電源を用いる高密度プラズマの空間分布の均一化が可能となり、基板に対する均一な表面処理、即ち製膜速度およびエッチング速度の向上と均一性向上が再現性良く可能である。この効果は、LSI,LCD、複写機用感光体の産業のみならず、太陽電池業界での生産性向上に関する貢献度において著しく大きい。
請求項のプラズマ表面処理装置によれば、排気系を備えた真空容器と、この真空容器内に放電用ガスを供給する放電用ガス供給系と、基板がセットされる第1の電極と前記第1の電極に対向設置される第2の電極からなる一対の電極と、前記一対の電極に高周波電源出力の高周波電力を供給する高周波電力供給用同軸ケーブルにより構成の電力供給系とを具備し、生成したプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、前記高周波電力供給用同軸ケーブルが請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高周波電力供給用同軸ケーブルにより構成されるので、前記一対の電極への電力供給部での漏洩電流を抑制でき、該一対の電極間のプラズマの均一性が改善できるので、従来困難視されていたVHF帯域(30MHz〜300MHz)の電源を用いる高密度プラズマの空間分布の均一化が可能となり、基板に対する均一な表面処理、即ち製膜速度およびエッチング速度の向上と均一性向上が再現性良く可能である。この効果は、LSI,LCD、複写機用感光体の産業のみならず、太陽電池業界での生産性向上に関する貢献度において著しく大きい。
請求項のプラズマ表面処理方法によれば、排気系を備えた真空容器と、この真空容器内に放電用ガスを供給する放電用ガス供給系と、基板がセットされる第1の電極と前記第1の電極に対向設置される第2の電極からなる一対の電極と、前記一対の電極に高周波電源出力の高周波電力を供給する高周波電力供給用同軸ケーブルにより構成の電力供給系とを具備し、生成したプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、前記高周波電力供給用同軸ケーブルを請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高周波電力供給用同軸ケーブルによって構成し、プラズマ表面処理を行うので、前記一対の電極への電力供給部での漏洩電流を抑制でき、該一対の電極間のプラズマの均一性を改善できるので、従来困難視されていたVHF帯域(30MHz〜300MHz)の電源を用いる高密度プラズマの空間分布の均一化が可能となり、基板に対する均一な表面処理、即ち製膜速度およびエッチング速度の向上と均一性向上が再現性良く可能である。この効果は、LSI,LCD、複写機用感光体の産業のみならず、太陽電池業界での生産性向上に関する貢献度において著しく大きい。
本発明者は、従来技術に依然として存在するいくつかの問題の中で、一対の電極と高周波電源の出力を供給するための同軸ケーブルとの接続部に発生する漏洩電流に関する問題に着目し、鋭意、種々検討した結果、その解決方法および解決手段を創出することに成功した。そのアイデイアは、前記(11)式の関係を活用したもので、同軸ケーブルの一方の端部より他方の端部の方向を見た外部導体の外部表面のインピーダンス(前記のZ3)を無限大にする手段を講じることにより、問題となる漏洩電流を抜本的に抑制可能とするものである。
本発明の基本概念は、前記図6および図7にける不平衡系モデルでの電流Iaと平衡系モデルの電流Ibの比を無限小に、少なくとも百分の一以下に、即ちIa/Ib<1/100に抑制するために、前記(11)式の関係より、同軸ケーブルの該一対の電極側の端部の外部導体外表面での該同軸ケーブルの他方の端部の方向を見たインピーダンスZ3が、前記一対の電極間の平衡インピーダンスZbより、無限に大きい値、少なくとも略100倍以上大きい値とすることを特徴とする。なお、略100倍という数値の根拠は、不平衡系モデルでの電流Iaを平衡系モデルでの電流Ibの1%以下に抑制できれば、一対の電極間のプラズマ現象がIaの影響を1%以下に抑えて、電流Ib依存で制御できると考えられるからである。上記基本概念を実現するための手段および方法の具体例として、以下に2つの実施例を示す。
本発明の一実施例に係わる高周波電力供給用同軸ケーブル、該同軸ケーブルにより構成されたプラズマ表面処理装置およびプラズマ表面処理方法について、以下、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、プラズマ表面処理装置およびプラズマ表面処理方法の一例として、太陽電池を製作する際に必要なa―Si薄膜を製作する装置および方法が記載されているが、本願の発明対象が下記の具体例の装置および方法に限定されるものではない。
実施例1の高周波電力供給用同軸ケーブル、該同軸ケーブルにより構成されたプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、以下、図1〜図4を参照して説明する。図1は実施例1に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図、図2は図1のプラズマ表面処理装置のブロック構成図、図3は実施例1に係わる高周波電力供給用同軸ケーブルの第1の具体例の構成を示す説明図、および図4は図1のプラズマ表面処理装置での高周波電力供給用同軸ケーブルの第1の具体例と一対の電極との接続部を示す説明図である。
先ず、装置の構成を説明する。図1および図2において、符番1は真空容器である。この真空容器1には、後述の放電ガスをプラズマ化する一対の電極、即ち第1の非接地電極2と図示しない基板ヒータ3を内臓した第2の非接地電極4が配置されている。該第2の非接地電極4は絶縁物支持材5a、5bで真空容器1に固着されている。前記第1の非接地電極2は、図示しない絶縁物6を介して真空容器1に固着されている。該第1の非接地電極2には直径2mm〜10mm程度の多数の小孔7が開口率40%〜60%で配置されている。該小孔は、後述の放電ガスを一対の電極2,4間に一様に流出さために設置されている。また、高密度プラズマの生成に効果のあるホローカソード放電を発生させる手段としても期待される。前記第1の非接地電極2の周りにはアースシールド8が配置されている。該アースシールド8は、不必要な部分での放電を抑制し、かつ放電ガス供給管9a、9bより供給されるSiH4等放電ガスを、整流孔10および前記非接地電極2に配置されている多数の小孔7を介して、前記一対の電極2と4の間に均一に供給する機能を有している。また、前記アースシールド8は、排気管11および図示しない真空ポンプ12と組み合わせて使用されることのより、プラズマ生成空間でプラズマ化された使用済みの放電ガスを排出する機能を有している。
真空容器1内の圧力は、図示しない圧力計によりモニターされ、図示しない圧力調整弁により自動的に所定の値に調整、設定される。なお、本実施例の場合は、放電ガスが流量500sccm〜1、500sccm程度の場合、圧力0.01Torr〜10Torr(1.33Pa〜1,330Pa)程度に調整できる。真空容器1の真空到達圧力は2〜3E−7Torr(2.66〜3.99E−5Pa)程度である。
符番13は基板で、図示しないゲートバルブ39の開閉操作により、第2の非接地電極4に設置される。そして、図示しない基板ヒータ3により所定の温度に加熱される。
図1および図2において、符番15は高周波電源で、周波数30MHz〜300MHz(VHF帯域)の電力を発生する。その電力は第1の同軸ケーブル16a、整合器17、第2の同軸ケーブル16b、電流導入端子18、高周波電力供給用同軸ケーブル19および図示しない絶縁環21a、21bでそれぞれ絶縁されている第1のおよび第2の給電線23,29を介して、一対の電極2,4の給電点14a、14bに供給される。
上記インピーダンスZ3が無限大であるとの機能をもつ同軸ケーブルの具体的構造の一例として、高周波電力供給用同軸ケーブルの第1の具体例32を図3に示す。図3の装置は、芯線23a、外部導体24および誘電体25から構成の同軸ケーブル16cの一方の端部の芯線60と外部導体61を入力部とし、該同軸ケーブルの他方の端部、すなわち前記一対の電極2,4に接続される側の端部に円筒型導電体26を被せた構造を有し、かつ、他方の端部の芯線23aと外部導体24を出力部とする。該円筒型導電体26は、形状が円筒で、一方の端面を開放し、他方の端面27を外部導体24に密着・接続したものである。その長さは前記高周波電源15の出力電力の波長短縮率を考慮した波長λの四分の1、即ちλ/4である。その値は、例えば、誘電体がアルミナの同軸ケーブルを用い(波長短縮率:0.34)、電源周波数:60MHzの場合は、その電波の真空伝播中の波長は5mであるので、0.34x5m/4=0.425mである。なお、波長短縮率を考慮した波長λとは、同軸ケーブル内部を伝播する際の電波の波長で、波長短縮率即ち例えば、同軸ケーブルの誘電体がポリエチレンの場合、0.67あるいは、アルミナの場合、0.34と、真空中を伝播する場合の前記高周波電源出力周波数に対応の電波の波長の積を意味している。該円筒型導電体26と前記外部導体24との間隔は2mm〜60mm程度である。なお、この間隔の値は、該円筒型導電体26の内面全体について一定となるのが望ましい。該円筒型導電体26と上記外部導体24の間には、絶縁環28a、28bが配置され、その間隔が一定に保持されている。前記外部導体24の端部には、図3図示のように第2の給電線29が接続され、芯線23aに接続された第1の給電線23と組み合わせて上記給電点14a、14bへの電力供給に用いられる。該円筒型導電体の開放された端面と該同軸ケーブルの端面は同一平面上になるように設定する。
図3において、前記外部導体24の端面の地点30aから前記円筒型導電体26の一方の端面の地点30bを経由して、他方の端面の地点31の方向へ漏洩電流が流れようとした場合、地点30aから地点30bの長さが波長短縮率を考慮した波長λの四分の一即ちλ/4であるので、地点30aと地点31間のインピーダンスは無限大である。なお、波長短縮率を考慮した波長λとは、同軸ケーブル内部を伝播する際の電波の波長で、波長短縮率即ち例えば、同軸ケーブルの誘電体がポリエチレンの場合、0.67あるいは、アルミナの場合、0.34と、真空中を伝播する場合の前記高周波電源出力周波数に対応の電波の波長の積を意味している。その結果、前記(11)式の関係より、Z3が無限大の場合、漏洩電流I3(即ちIa)は零となる。すなわち、前記外部導体24の端面からの漏洩電流は発生しないということを示している。
図3に示した高周波電力供給用同軸ケーブルの第1の具体例32を、図1および図2に示した実施例1に係わる表面処理装置の一構成として用いる場合について説明する。図4に、図1および図2に示した一対の電極2,4と前記高周波電力供給用同軸ケーブルの第1の具体例32を接続する配線状況を示している。プラズ生成空間に接する非接地電極2の内面(ここでは該電極の対向電極側の面を内面と呼ぶ)の小孔7部分に位置した給電点14aに、前記高周波電力供給用同軸ケーブルの第1の具体例32の同軸ケーブルの芯線23を接続する。また、前記接地電極4の内面の給電点14bに、前記高周波電力供給用同軸ケーブルの第1の具体例32のリード線29を接続する。なお、前記芯線23およびリード線29には図示しない例えば材料がアルミナの絶縁環21a,21bが配置され、異常放電を抑制している。
次に、上記構成、即ち図1〜図4のプラズマ表面処理装置を用いて、a−Si太陽電池用のa−Siを製膜する方法を説明する。図1〜図4において、予め、基板13を第2の非接地電極4の上に設置し、真空ポンプ12を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管9a,9bからSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、一対の電極2、4に高周波電力を、例えば周波数60MHzの電力を供給する。なお、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
即ち、高周波電源15の出力を例えば周波数60MHzで、出力500Wを第1の同軸ケーブル16a、整合器17、第2の同軸ケーブル16b、電流導入端子18、高周波電力供給用同軸ケーブル19の第1の具体例32、および絶縁環21a,21bでそれぞれ絶縁されている第1および第2の給電線23,29を介して、給電点14a、14bに供給する。この場合、上記整合器17を調整することにより、整合器17の上流側には上記供給電力の反射波が戻らないようにできる。その結果、SiH4ガスのプラズマが生成される。
ここで、給電点14a,14bに供給される電力は、高周波電力供給用同軸ケーブル19の第1の具体例32の漏洩電流防止の機能により、漏洩電流の発生を抑制して、第1および第2の給電線23,29から一対の電極2,4に供給できる。したがって、前記給電点14a,14b近傍には局部放電など異常放電は発生しない。なお、前記第1および第2の給電線23,29回りの絶縁環21a,21bの絶縁効果も、両者間での異常放電を抑制している。また、従来技術では、漏洩電流の発生の仕方が一対の電極2,4周辺のアース構造および配線状況に関係しているので、再現性の良いプラズマ生成は困難であるが、本実施例では漏洩電流が発生しないので、再現性の良いプラズマを生成できる。
上記工程において、SiH4ガスがプラズマ化されると、そのプラズマ中に存在するSiH3,SiH2,SiH等のラジカルが拡散現象により拡散し、基板13表面に吸着されることにより、a−Si膜が堆積する。なお、微結晶Siあるいは薄膜多結晶Si等は、製膜条件の中のSiH4,H2の流量比、圧力および電力を適正化することで製膜できることは公知の技術である。
上記の手順で製膜する場合の具体的条件を以下に説明する。サイズ1200mmx300mm(厚み4mm)程度のガラス基板13に製膜速度1nm/s、膜厚分布±10%のa−Siを製膜することを実施する。
製膜条件は次の通りである。
(製膜条件)
・放電ガス:SiH4
・流量:500sccm
・圧力:0.5Torr(66.5Pa)
・電源周波数:60MHz
・電力:500W
・基板13の温度:180℃
上記製膜条件でプラズマを生成すると、上記高周波電力供給用同軸ケーブルにより電力供給系と一対の電極2,4との接続部での漏洩電流の発生が抑制されるので、生成されるプラズマの密度の空間的分布は、従来に比べて、再現性良く均一になる。その結果、製膜されるa−Siの膜厚分布は従来に比べて、再現性良く均一になる。数値的にはa−Si膜厚分布が±10以内で製膜が可能となる。
なお、本実施例では、一対の電極2,4にそれぞれ、給電点を1点(一対)としているので、基板サイズは上記1200mmx300mm程度に制約されるが、給電点数を増加すればサイズの幅は拡大可能であることは当然のことである。
また、a−Si太陽電池、薄膜トランジスタおよび感光ドラム等の製造では、膜厚分布として±10%以内であれば性能上問題はない。上記実施例によれば、60MHzの電源周波数を用いても、従来の装置および方法に比べ著しく良好な膜厚分布を得ることが可能である。このことは、a−Si太陽電池、薄膜トランジスタおよび感光ドラム等の製造分野での生産性向上および低コスト化に係わる工業的価値が著しく大きいことを意味している。
本発明の実施例2の高周波電力供給用同軸ケーブル、該同軸ケーブルにより構成されたプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、図1、図2、図4および図5を参照しながら説明する。図5は、実施例2に係わる高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の具体例40の構成を示す説明図である。
先ず、装置の構成について説明する。ただし、図1〜図4と同部材は同符番を付して説明を省略する。実施例2の装置の構成は、実施例1の構成、即ち図1、図2および図4において、高周波電力供給用同軸ケーブル19として用いられた高周波電力供給用同軸ケーブルの第1の具体例32に代えて、図5に示す高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の具体例40を用いるもので、その他の装置構成要素はすべて同様である。それ故、高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の具体例40以外の装置の構成要素については図1、図2、および図4を参照することにし、ここでは説明を省略する。
図5において、芯線23a、外部導体24および誘電体25から構成の同軸ケーブル16cの一方の端部の芯線60と外部導体61を入力部とし、該同軸ケーブルの他方の端部、すなわち前記一対の電極2,4に接続される側の端部に、両端解放の管型導電体26aと円筒型導電体26bを被せた構造を有し、かつ、該端部の芯線23aと外部導体24を出力部とする。該管型導電体26aと円筒型導電体26bは、図5に示すように、内筒と外筒の関係にあり、該管型導電体26aの外面と円筒型導電体26bの内面が電気的に短絡状態になっている。上記内筒と外筒の関係にある重ねあった部分の距離は後述の取り付けボルト42a,42bおよび41a、41bを用いて調整される。該管型導電体26aの一方の端面31と該円筒型導電体26bの端面27の距離は、前記高周波電源15の出力電力の波長短縮率を考慮した波長λの四分の1(即ちλ/4)である。その値は、例えば、誘電体がアルミナの同軸ケーブルを用い(波長短縮率:0.34)、電源周波数:60MHzの場合は、その電波の真空伝播中の波長は5mであるので、0.34x5m/4=0.425mである。前記管型導電体26aの内面と前記外部導体24との間隔は2mm〜60mm程度である。なお、この間隔の値は、該円筒型導電体26の内面全体について一定となるのが望ましい。該管型導電体26aと上記外部導体24の間には、絶縁環28a、28bが配置され、その間隔が一定に保持されている。該円筒型導電体の開放された端面と該同軸ケーブルの端面は同一平面上になるように設定する。前記外部導体24の端部には、図5図示のように第2の給電線29が接続され、芯線23aに接続された第1の給電線23と組み合わせて上記給電点14a、14bへの電力供給に用いられる。
図5において、前記外部導体24の端面の地点30aから前記円筒型導電体26bの端面の地点30bを経由して、該管型導電体26aの端面の地点31の方向へ漏洩電流が流れようとした場合、地点30aから地点30bの長さが波長短縮率を考慮した波長λの四分の一、即ちλ/4であるので、地点30aと地点31間のインピーダンスは無限大である。即ち、前記(11)式のZ3が無限大である。その結果、前記(11)式の関係より、漏洩電流I3、即ちIaは零である。これは、漏洩電流が発生しないことを意味している。
次に、図5に示した高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の具体例40を、図1および図2に示した表面処理装置の一構成として用いる場合について説明する。図4に、図1および図2に示した一対の電極2,4と前記高周波電力供給用同軸ケーブルの第1の実施例32を接続する配線状況を示したが、それと同様に高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の具体例40を用いる。プラズ生成空間に接する第1の非接地電極2の内面(ここでは該電極の対向電極側の面を内面と呼ぶ)の小孔7部分に位置した給電点14aに、前記高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の実施例40の同軸ケーブルの芯線23を接続する。また、前記第2の非接地電極4の内面の給電点14bに、前記高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の実施例40のリード線29を接続する。なお、前記芯線23およびリード線29には図示しない例えば材料がアルミナの絶縁環21a,21bが配置され、異常放電を抑制している。
上記構成の表面処理装置を用いて、a−Si太陽電池用のa−Siを製膜する方法を説明する。図1、図2、図4および図5において、予め、基板13を第2の非接地電極4の上に設置し、真空ポンプ12を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管9a,9bからSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、一対の電極2,4に高周波電力を、例えば周波数70MHzの電力を供給する。なお、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
即ち、高周波電源15の出力を例えば周波数70MHzで、出力500Wを第1の同軸ケーブル16a、整合器17、第2の同軸ケーブル16b、電流導入端子18、高周波電力供給用同軸ケーブル19の第2の具体例40および絶縁環21a,21bでそれぞれ絶縁されている第1および第2の給電線23,29を介して、給電点14a、14bに供給する。この場合、上記整合器17を調整することにより、整合器17の上流側には上記供給電力の反射波が戻らないようにできる。仮に、上記高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の具体例40の長さの調整が周波数70MHzに整合していないことが原因で、該同軸ケーブル19と一対の電極2,4の間で電流の漏洩が発生している場合、一旦、プラズマの生成を中断し、上記高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の具体例40の長さを調整することにより、再度プラズマを生成し、上記電力の反射が抑制されることを確認することができる。
なお、高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の具体例40には、高周波電源15の周波数が若干変更された場合、その周波数に対応して、該同軸ケーブルの第2の具体例40の長さを調整することにより対応できるというメリットがある。
ここで、給電点14a,14bに供給される電力は、上記高周波電力供給用同軸ケーブル19の第2の具体例40の長さ調整による漏洩電流抑制の効果を最大限に活用することにより電力の損失を最小限にして、第1および第2の給電線23,29から一対の電極2,4に供給できる。したがって、前記給電点14a,14b近傍には局部放電など異常放電は発生しない。なお、前記第1および第2の給電線23,29回りの絶縁環21a,21bの絶縁効果も加わり、両者間での異常放電を抑制している。
SiH4ガスがプラズマ化されると、そのプラズマ中に存在するSiH3,SiH2,SiH等のラジカルが拡散現象により拡散し、基板13表面に吸着されることにより、a−Si膜が堆積する。なお、微結晶Siあるいは薄膜多結晶Si等は、製膜条件の中のSiH4,H2の流量比、圧力および電力を適正化することで製膜できることは公知の技術である。
上記の手順で製膜する場合の具体的条件を以下に説明する。サイズ1200mmx300mm(厚み4mm)程度のガラス基板13に製膜速度1nm/s、膜厚分布±10%のa−Siを製膜することを実施する。
製膜条件は次の通りである。
(製膜条件)
・放電ガス:SiH4
・流量:500sccm
・圧力:0.5Torr(66.5Pa)
・電源周波数:70MHz
・電力:500W
・基板13の温度:180℃
上記製膜条件でプラズマを生成すると、実施例1と同様に、上記高周波電力供給用同軸ケーブルにより電力供給系と一対の電極との接続部での漏洩電流の発生が抑制されるので、生成されるプラズマの密度の空間的分布は、従来に比べて再現性良く均一になる。その結果、製膜されるa−Siの膜厚分布は従来に比べて、再現性良く均一になる。数値的にはa−Si膜厚分布が±10以内で製膜が可能となる。
ただし、本実施例2では、実施例1の場合とは装置構成部材の高周波電力供給用同軸ケーブルの機能が異なり、対応波長に若干の調整機能があるので、高周波電源15の周波数が若干変更された場合でも、別途新たに高周波電力供給用同軸ケーブルを設置することなく、その長さの調整で対応できるというメリットがある。
なお、本実施例2では、一対の電極2,4にそれぞれ、給電点を1点(一対)としているので、基板サイズは上記1200mmx300mm程度に制約されるが、給電点数を増加すればサイズの幅は拡大可能であることは当然のことである。
また、a−Si太陽電池、薄膜トランジスタおよび感光ドラム等の製造では、膜厚分布として±10%以内であれば性能上問題はない。上記実施例によれば、70MHzの電源周波数を用いても、従来の装置および方法に比べ著しく良好な膜厚分布を得ることが可能である。このことは、a−Si太陽電池、薄膜トランジスタおよび感光ドラム等の製造分野での生産性向上および低コスト化に係わる工業的価値が著しく大きいことを意味している。
実施例1に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図。 実施例1に係わる図1のプラズマ表面処理装置のブロック図。 実施例1に係わる高周波電力供給用同軸ケーブル19の第1の具体例の構成を示す説明図。 実施例1に係わる図1のプラズマ表面処理装置での高周波電力供給用同軸ケーブルの第1の具体例と一対の電極との接続部を示す説明図。 実施例2に係わる高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の具体例の構成を示す説明図。 従来技術の問題である漏洩電流の所在と概念を示す説明図。 図6図示の漏洩電流を伝送回路理論のモデルとして示す説明図。 従来の第1の代表的技術に係わるプラズマ表面処理装置の構成図。 図8図示の装置に係わる電極と電力供給用同軸ケーブルとの接続部の構造を示す説明図。 従来の第2の代表的技術に係わるプラズマ表面処理装置の概念図。 図10図示の装置に係わる給電系のブロック構成図。 図10図示の装置に係わる電極と電力供給用同軸ケーブルとの接続部の構造を示す説明図。 従来の第2の代表的技術に係わる電圧波を示す説明図。 従来の第2の代表的技術に係わる電圧の合成波を示す説明図。
符号の説明
1...真空容器,
2...第1の非接地電極,
4...第2の非接地電極,
5a,5b...絶縁物支持材,
7...小孔,
8...アースシールド,
9a,9b...放電ガス供給管,
10...整流孔,
11...排気管,
13...基板,
14a,14b...給電点,
15...高周波電源、
16a,16b...第1および第2の同軸ケーブル、
17...整合器、
18...電流導入端子、
19...高周波電力供給用同軸ケーブル、
23...第1の給電線、
23a...芯線、
24...外部導体、
25...誘電体、
26...円筒型導電体、
26a...管型導電体,
26b...円筒型導電体,
27...端面,
28a、28b...絶縁環,
29...第2の給電線、
32...高周波電力供給用同軸ケーブルの第1の具体例、
40...高周波電力供給用同軸ケーブルの第2の具体例、
41a、41b42a,42b...取り付けボルト。

Claims (3)

  1. 排気系を備えた真空容器と、この真空容器内に放電用ガスを供給する放電用ガス供給系と、基板がセットされる第1の電極と前記第1の電極に対向設置される第2の電極からなる一対の電極と、前記一対の電極に高周波電源出力の高周波電力を供給する電力供給系とを具備し、生成したプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置に用いられる高周波電力供給用同軸ケーブルであって、前記同軸ケーブルの一方の端部の芯線と外部導体を入力部とし、該同軸ケーブルの他方の端部に、両端開放の管型導電体と一方の端面を開放の円筒型導電体を被せ、該管型導電体の外面と該円筒型導電体の内面が密着し、該円筒型導電体の他方の端面は該同軸ケーブルの外部導体と密着し、かつ、該管型導電体の一方の端面と該円筒型導電体の閉じた方の端面との距離が、波長短縮率を考慮した前記高周波電源出力の波長λの四分の一すなわちλ/4で、かつ、該管型導電体と該同軸ケーブルの外部導体間に絶縁環を設置し、かつ、該管型導電体の一方の端面と該同軸ケーブルの端面を同一平面上に設置させ、かつ、該同軸ケーブルの他方の端部の芯線と外部導体を出力部とするという構成を有することを特徴とする高周波電力供給用同軸ケーブル。
  2. 排気系を備えた真空容器と、この真空容器内に放電用ガスを供給する放電用ガス供給系と、基板がセットされる第1の電極と前記第1の電極に対向設置される第2の電極からなる一対の電極と、前記一対の電極に高周波電源出力の高周波電力を供給する高周波電力供給用同軸ケーブルにより構成の電力供給系とを具備し、生成したプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、前記高周波電力供給用同軸ケーブルが請求項に記載の高周波電力供給用同軸ケーブルにより構成されていることを特徴とするプラズマ表面処理装置。
  3. 排気系を備えた真空容器と、この真空容器内に放電用ガスを供給する放電用ガス供給系と、基板がセットされる第1の電極と前記第1の電極に対向設置される第2の電極からなる一対の電極と、前記一対の電極に高周波電源出力の高周波電力を供給する高周波電力供給用同軸ケーブルにより構成の電力供給系とを具備し、生成したプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、前記高周波電力供給用同軸ケーブルを請求項に記載の高周波電力供給用同軸ケーブルによって構成し、プラズマ表面処理を行うことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
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