JP3574871B2 - トリフルオロシクロプロパン誘導体及びそれを含有する液晶組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用な、新規なトリフルオロシクロプロパン誘導体で ある液晶性化合物、その製造中間体、及びその液晶性化合物を含有する液晶組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、各種測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型あるいはFLC(強誘電性液晶)等が知られており、現在主流となっているのはTN型及びSTN型である。また駆動方式においても、従来のスタティック駆動からマルチプレックス駆動が一般的となり、更に単純マトリックス方式、最近ではアクティブマトリックス方式が実用化されている。アクティブマトリックス方式においては、最も高画質の表示が可能であり、視野角が広く、高精細化、カラー化が容易で、動画表示も可能であるため、今後の液晶表示方式の主流になると考えられている。
【0003】
このアクティブマトリックス表示方式に用いられる液晶材料においては、特に(1)比抵抗が高く、電圧保持率が優れること、(2)しきい値電圧(Vth)が低いこと、(3)液晶相の温度範囲が広いこと、(4)表示装置の設定に適した屈折率異方性(Δn)を有すること、などが重要な特性となっている。
【0004】
通常、液晶表示におけるしきい値電圧(Vth)は式(a)
【0005】
【数1】
【0006】
(式中、kは比例定数を、Kは弾性定数を、Δεは誘電率異方性をそれぞれ表わす。)で表わされる。この式からわかるように、しきい値電圧を低くするためには、液晶材料の誘電率異方性を大きくするか、あるいは弾性定数を小さくする必要がある。
【0007】
しかしながら、誘電率異方性の大きい液晶化合物は、極性が大きいものが多く、液晶材料の高い比抵抗値や電圧保持率を得ることを困難にさせる傾向を有する。
【0008】
そのため、しきい値電圧を低くするためには液晶材料の弾性定数を小さくすることが考えられるが、弾性定数の小さい2環性の化合物は、添加により組成物の液晶相の上限温度を大幅に低下させてしまう傾向を有するものがほとんどである。そこで、3環性あるいは4環性の液晶相の上限温度の高い化合物を添加することが考えられる。しかしながら、このような化合物の添加により液晶組成物の液晶相の上限温度は上昇するものの、上限温度の高い化合物は弾性定数の比較的大きいものが多く、添加により組成物のしきい値電圧を大きく上昇させる傾向にあった。
【0009】
このように、弾性定数が小さく、液晶相の上限温度が比較的高いにもかかわらず、組成物のしきい値電圧を低下させる液晶化合物を得ることは困難であった。
また、これとは別に、液晶表示素子においては干渉縞の発生を避けるため、屈折率異方性とセル厚(d)との積(Δn・d)を特定の値に設定する必要があるが、アクティブマトリックス表示方式では通常、いわゆるファーストミニマムの条件(Δn・d=0.5)が用いられることが多い。この表示方式を用いた場合、セルの厚さはある程度以上薄くすることは技術的に困難であるので、屈折率異方性が小さい化合物が必要であり、組成物としての屈折率異方性は、0.08前後に調製する必要がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、弾性定数が小さく、誘電率異方性が小さく、しかも屈折率異方性が小さい新規液晶化合物を提供し、更に、その化合物を含有し、液晶相の温度範囲が広く、しきい値電圧が低く、且つ屈折率異方性の小さい液晶組成物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、一般式(I)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R1は水素原子又は炭素原子数1〜12のアルキル基を表わし、X1及びX2のいずれか一方は水素原子を表わし、他方はフッ素原子を表わし、mは0又は1を表わし、環Aは1,4−シクロヘキシレン基又はフッ素置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表わし、Y1及びY2はそれぞれ独立的に、単結合又は−CH2CH2−を表わし、Z1はフッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシル基、炭素原子数3〜12のアルケニル基又は炭素原子数3〜12のアルケニルオキシ基を表わし、Z2及びZ3はそれぞれ独立的に、フッ素原子又は水素原子を表わし、シクロヘキサン環における2つの置換基はトランス配置である。)で表わされるトリフルオロシクロプロパン誘導体を提供する。
【0014】
本発明の一般式(I)の化合物は、特にR1が水素原子であり、X1がフッ素原子であり、X2が水素原子である上記一般式(I)で表わされる化合物が好ましく、その中でもZ1、Z2及びZ3のうちの少なくとも1つがフッ素原子である化合物がより好ましい。
【0015】
また、より詳細に述べれば、mが1であり、環Aが1,4−シクロヘキシレン基であり、Y1及びY2が共に単結合であり、Z1がフッ素原子、塩素原子又はトリフルオロメトキシ基である化合物が好ましく、その中でもZ1及びZ2が共にフッ素原子であり、Z3が水素原子である化合物が最も好ましい。
【0016】
本発明に係わる一般式(I)で表わされる化合物は、一般式(II)
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R1、X1、X2、Y1、Y2、m、Z1、Z2、Z3及び環Aは一般式(I)におけると同じ意味を表わす。また、R1がアルキル基である場合、シクロヘキサン環とR1がトランス及びシス配置のものが存在するが、トランス配置のものが好ましい。)で表わされる(フルオロ−1−アルケニル)シクロヘキサン誘導体を、クロロジフルオロ酢酸塩と加熱下に反応させることにより容易に得ることができる。この時、例えば、R1がアルキル基である場合、一般式(II)で表わされる化合物のトランス体からは、一般式(I)で表わされる化合物のトランス体が得られ、一般式(II)のシス体からは、一般式(I)のシス体が得られる。
【0019】
ここで中間体として用いた一般式(II)で表わされる化合物は、本発明者らが明らかにした化合物であり、(1−アルケニル)シクロヘキサン誘導体から製造することができる。
【0020】
斯くして製造される一般式(I)で表わされる化合物の代表的なものの例を第1表に掲げる。
【0021】
【表1】
【0022】
(表中、Crは結晶相を、Iは等方性液体相をそれぞれ表わす。)
第1表から、本発明の一般式(I)で表わされる化合物は、融点が比較的高く、ネマチック相を示さないものも存在する。しかしながら、後述の実施例にも示すように、母体液晶に添加した場合、その転移温度を大きく低下させることなく、組成物のしきい値電圧を大きく低下させるので、特にTN型あるいはSTN型といった電界効果型表示セルの材料として適している。しかも、一般式(I)で表わされる化合物は、その分子内にシアノ基やエステル結合などの強い極性基を有さないため、大きい比抵抗と高い電圧保持率を得ることも容易であり、アクティブマトリックス駆動用液晶材料の構成成分として適している。
【0023】
本発明は、このように一般式(I)で表わされる化合物の少なくとも1種をその構成成分として含有する液晶組成物をも提供する。
本発明の組成物において、一般式(I)で表わされる化合物と混合して使用することのできるネマチック液晶化合物の好ましい代表例としては、例えば、4−置換安息香酸4−置換フェニル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸4−置換フェニル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸4’−置換ビフェニリル、4−(4−置換シクロヘキサンカルボニルオキシ)安息香酸4−置換フェニル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4−置換フェニル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4−置換シクロヘキシル、4,4’−置換ビフェニル、1−(4−置換シクロヘキシル)−4−置換ベンゼン、4,4’−置換ビシクロヘキサン、1−[2−(4−置換シクロヘキシル)エチル]−4−置換ベンゼン、1−(4−置換シクロヘキシル)−2−(4−置換シクロヘキシル)エタン、4,4”−置換ターフェニル、4−(4−置換シクロヘキシル)−4’−置換ビフェニル、4−[2−(4−置換シクロヘキシル)エチル]−4’−置換ビフェニル、4−(4−置換フェニル)−4’−置換ビシクロヘキサン、4−[2−(4−置換シクロヘキシル)エチル]−4’−置換ビフェニル、4−[2−(4−置換シクロヘキシル)エチル]シクロヘキシル−4’−置換ベンゼン、4−[2−(4−置換フェニル)エチル]−4’−置換ビシクロヘキサン、1−(4−置換フェニルエチニル)−4−置換ベンゼン、1−(4−置換フェニルエチニル)−4−(4−置換シクロヘキシル)ベンゼン、2−(4−置換フェニル)−5−置換ピリミジン、2−(4’−置換ビフェニリル)−5−置換ピリミジン及び上記各化合物においてベンゼン環に側方置換基を有する化合物等を挙げることができる。
【0024】
このうちアクティブマトリックス駆動用としては4,4’−置換ビフェニル、1−(4−置換シクロヘキシル)−4−置換ベンゼン、4,4’−置換ビシクロヘキサン、1−[2−(4−置換シクロヘキシル)エチル]−4−置換ベンゼン、1−(4−置換シクロヘキシル)−2−(4−置換シクロヘキシル)エタン、4,4”−置換ターフェニル、4−(4−置換シクロヘキシル)−4’−置換ビフェニル、4−[2−(4−置換シクロヘキシル)エチル]−4’−置換ビフェニル、4−(4−置換フェニル)−4’−置換ビシクロヘキサン、4−[2−(4−置換シクロヘキシル)エチル]−4’−置換ビフェニル、4−[2−(4−置換シクロヘキシル)エチル]シクロヘキシル−4’−置換ベンゼン、4−[2−(4−置換フェニル)エチル]−4’−置換ビシクロヘキサン、1−(4−置換フェニルエチニル)−4−置換ベンゼン、1−(4−置換フェニルエチニル)−4−(4−置換シクロヘキシル)ベンゼン及び上記においてベンゼン環がフッ素置換されている化合物が適している。
【0025】
本発明の一般式(I)の化合物の効果は、例えば以下からも明らかである。
ネマチック液晶材料として現在汎用されている母体液晶(A)
【0026】
【化4】
【0027】
(式中、シクロヘキサン環はトランス配置を表わし、「%」は「重量%」を表わす。)は54.5℃以下でネマチック相を示し、その誘電率異方性(Δε)は+6.7、屈折率異方性(Δn)は0.092であり、これを用いて作製したTNセルのしきい値電圧(Vth)は1.60Vであった。
【0028】
この母体液晶(A)80重量%及び第1表中の(No.1)の化合物20重量%からなる液晶組成物(M−1)を調製した。この(M−1)のネマチック相の上限温度(TN−I)は50.0℃とやや低くなり、Δεは+5.8と小さくなり、Δnは0.084と大きく低下した。また、同様にしてVthを測定したところ、Δεが小さくなったにもかかわらず、1.52Vと大きく低下した。これは(No.1)の化合物の弾性定数(K)が比較的小さいためと考えられる。
【0029】
これに対し、母体液晶(A)80重量%及び(No.1)の化合物の類似構造を有する式(R−1)
【0030】
【化5】
【0031】
で表わされる化合物20重量%からなる液晶組成物(MR−1)を調製した。同様にして諸特性を測定したところ、TN−Iは65℃と上昇したものの、Δεは+7.2と大きくなり、Δnも0.094と大きくなった。また同様にして測定したVthは1.67Vとなり、母体液晶(A)より大きく上昇した。
【0032】
次に、ネマチック液晶材料として、特に低粘性及び高速応答性を有するアクティブマトリックス用母体液晶(B)
【0033】
【化6】
【0034】
(式中、シクロヘキサン環はトランス配置を表わし、「%」は「重量%」を表わす。)は、116.7℃以下でネマチック相を示し、誘電率異方性(Δε)は+4.7、屈折率異方性(Δn)は0.09であり、これを用いたTNセルのしきい値電圧(Vth)は2.14Vであった。
【0035】
この母体液晶(B)70重量%及び第1表中の(No.1)の化合物30重量%からなる液晶組成物(M−2)を調製したところ、TN−Iは95℃と低下した。しかしながら、Δεは+3.4と小さくなり、Δnも0.081と非常に小さくなった。同様にして測定したVthは、Δεが小さくなっているにもかかわらず、2.12Vとわずかながら低下した。
【0036】
以上の結果から、一般式(I)で表わされる化合物はネマチック液晶相を示す母体液晶に添加することにより、液晶相の上限温度をあまり低下させることなく、しきい値電圧を低下させ、且つ屈折率異方性を低下させる効果を有することが明らかである。
【0037】
更に、上記の結果から外挿して、本発明に係わる(No.1)の化合物のΔεは+2程度と比較的小さく、Δnも非常に小さいと考えられる。
【0038】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、本発明を更に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
なお、相転移温度の測定は、温度調節ステージを備えた偏光顕微鏡及び示差走査熱量計(DSC)を併用して行った。また、化合物の構造は核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)、質量スペクトル(MS)等により確認した。IRにおける(KBr)は錠剤成形による測定を表わす。NMRにおけるCDCl3は溶媒を表わし、sは1重線、dは2重線、tは3重線、quintetは5重線、mは多重線を表わし、また例えばddは2重の2重線を表わす。また、Jはカップリング定数を表わす。MSにおけるM+は親ピークを表わし、( )内はそのピークの相対強度を表わす。組成物中における「%」はすべて「重量%」を表わす。
(参考例1) 3,4−ジフルオロ−1−[トランス−4−[トランス−4−(1−フルオロエテニル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]ベンゼン(一般式(II)の化合物)の合成
(a) 3,4−ジフルオロ−1−[トランス−4−[トランス−4−(1−フルオロ−2−ヨードエチル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]ベンゼン及び3,4−ジフルオロ−1−[トランス−4−[トランス−4−(2−フルオロ−1−ヨードエチル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]ベンゼンの合成
【0040】
【化7】
【0041】
3,4−ジフルオロ−1−[トランス−4−(トランス−4−エテニルシクロヘキシル)シクロヘキシル]ベンゼン8.82g(29mmol)のジクロロメタン溶液(80ml)に、ヨードコハク酸イミド(NIS)9.8g(43.5mmol)を加えた後、0℃でフッ化水素−ピリジン溶液2.5mlを加えて、3時間攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と亜硫酸水素ナトリウム水溶液(1/1,300ml)に注ぎ、反応生成物をジクロロメタン60mlで3回抽出し、飽和食塩水50mlで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(Kieselgel 60、ヘキサン/酢酸エチル=80/1)を用いて精製して、3,4−ジフルオロ−1−[トランス−4−[トランス−4−(1−フルオロ−2−ヨードエチル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]ベンゼン8.26g(収率64%)及び、3,4−ジフルオロ−1−[トランス−4−[トランス−4−(2−フルオロ−1−ヨードエチル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]ベンゼン1.12g(収率9%)を得た。
3,4−ジフルオロ−1−[トランス−4−[トランス−4−(1−フルオロ−2−ヨードエチル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]ベンゼン
無色板状晶
相転移温度(℃):Cr87 N105 I
IR(KBr):2950,2880,1610,1520,1450,1280,1120,830,780cm−1
1H NMR(CDCl3):δ=0.95〜1.22(m,8H),1.36(quintet,J=12.4Hz,2H),1.60〜2.03(m,9H),2.41(tt,J=12.2and3.5Hz,1H),3.31(ddd,J=21.7,11.1and6.5Hz,1H),3.40(ddd,J=23.6,11.1and3.9Hz,1H),4.15(dtd,J=47.2,6.4and3.9Hz,1H),6.89(ddt,J=6.3,4.3and2.1Hz,1H),6.99(ddd,J=11.9,7.7and2.1Hz,1H),7.05(dt,J=10.4and8.4Hz,1H)
MS: m/z 450(M+,100),140(55),127(62)
元素分析:C20H26F3Iとして
計算値:C,53.34%;H,5.82%
実測値:C,53.11%;H,5.71%
3,4−ジフルオロ−1−[トランス−4−[トランス−4−(2−フルオロ−1−ヨードエチル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]ベンゼン
融点 69℃
IR(KBr):2950,2880,1520,1290,980cm−1
1H NMR(CDCl3):δ=1.05〜1.30(m,9H),1.36(quintet,J=12.2Hz,2H),1.72〜1.94(m,8H),2.41(tt,J=12.4and3.6Hz,1H),4.22〜4.31(m,1H),4.59(ddd,J=47.6,9.6and8.5Hz,1H),4.65(ddd,J=47.1,9.7and5.7Hz,1H),6.89(ddt,J=6.3,4.3and2.1Hz,1H),6.98(ddd,J=11.9,7.7and2.1Hz,1H),7.04(dt,J=10.4and8.4Hz,1H)
MS: m/z 450(M+,21),323(46),127(100)
元素分析:C20H26F3Iとして
計算値:C,53.34%;H,5.82%
実測値:C,53.16%;H,5.71%
(b) 3,4−ジフルオロ−1−[トランス−4−[トランス−4−(1−フルオロエテニル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]ベンゼンの合成
【0042】
【化8】
【0043】
上記(a)で得た3,4 ジフルオロ−1−[トランス−4−[トランス−4−(1−フルオロ−2−ヨードエチル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]ベンゼン7.07g(15.7mmol)のジクロロメタン溶液(30ml)に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)11.75ml(78.5mmol)を加えて、8時間加熱還流させた。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlに注ぎ、反応生成物をジクロロメタン30mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水30mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(Kieselgel 60、ヘキサン/酢酸エチル=80/1)を用いて精製して、3,4−ジフルオロ−1−[トランス−4−[トランス−4−(1−フルオロエテニル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]ベンゼン3.38g(収率67%)を得た。更にエタノールから再結晶させて、精製物2.26g(収率53%)を得た。
無色板状晶
相転移温度(℃):Cr60 N101 I
IR(KBr):2950,2880,1675,1520,1285,1220,870cm−1
1H NMR(CDCl3):δ=1.00〜1.31(m,8H),1.37(q,J=12.2Hz,2H),1.58〜2.11(m,9H),2.41(tt,J=12.1and3.4Hz,1H),4.17(ddd,J=51.6,2.8and0.8Hz,1H),4.44(dd,J=18.6and2.8Hz,1H),6.89(ddt,J=6.3,4.3and2.1Hz,1H),6.98(ddd,J=11.9,7.8and2.1Hz,1H),7.05(dt,J=10.4and8.4Hz,1H)
MS: m/z 322(M+,37),179(33),140(59),127(100),79(41),67(53),55(49),41(49)
元素分析:C20H25F3として
計算値:C,74.51%;H,7.82%
実測値:C,74.2%;H,7.79%
(実施例1) 2−[トランス−4−[トランス−4−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]−1,1,2−トリフルオロシクロプロパンの合成
【0044】
【化9】
【0045】
上記(b)で得た3,4−ジフルオロ−1−[トランス−4−[トランス−4−(1−フルオロエテニル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]ベンゼン2.26g(6.83mmol)のジグライム10ml溶液を加熱還流させ、クロロジフルオロ酢酸ナトリウム2.6g(17mmol)のジグライム13ml溶液を3時間で滴下した。更に1時間加熱還流させた後、室温に戻し、反応液を飽和食塩水100mlに注ぎ、反応生成物を酢酸エチル50mlで3回抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(Kieaselgel 60、ヘキサン/酢酸エチル=80/1)を用いて精製して、2−[トランス−4−[トランス−4−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロヘキシル]シクロヘキシル]−1,1,2−トリフルオロシクロプロパン2.21g(収率87%)を得た。更にエタノール15mlから再結晶させて、精製物1.9g(収率75%)を得た。
無色針状晶
融点 87℃
IR(KBr):2940,2860,1605,1520,1490,1210,1120,1030,830cm−1
1H NMR(CDCl3):δ 0.80〜0.94(m,2H),0.98〜1.22(m,6H),1.30〜1.53(m,6H),1.67(dddd,J=25.1,17.5,10.1and4.5Hz,1H),1.80〜1.95(M,8H),2.41(tt,J=12.1and3.4Hz,1H),6.89(ddt,J=6.3,4.3and2.1Hz,1H),6.99(ddd,J=11.9,7.7and2.1Hz,1H),7.05(dt,J=10.4and8.4Hz,1H)
MS:m/z=372(M+,10),308(49),179(42),140(60),127(100),81(34),67(32),55(39)
元素分析:C21H25F5として
計算値:C,67.73%;H,6.77%
実測値:C,67.44%;H,6.81%
(実施例2) 液晶組成物の調製(1)
【0046】
【化10】
【0047】
(式中、シクロヘキサン環はトランス配置を表わし、「%」は「重量%」を表わす。)からなる母体液晶(A)を調製したところ、54.5℃以下でネマチック(N)相を示した。その物性値及びこれを用いたTNセルのしきい値電圧(Vth)は以下の通りであった。
【0048】
N相の上限温度(TN−I) 54.5℃
誘電率異方性(Δε) +6.7
屈折率異方性(Δn) 0.092
しきい値電圧(Vth) 1.60V
この母体液晶(A)80重量%及び実施例1で得られた(No.1)の化合物20重量%からなる液晶組成物(M−1)を調製した。この(M−1)のN相の上限温度(TN−I)、物性値及び同様にして測定したしきい値電圧(Vth)は以下の通りであった。
【0049】
N相の上限温度(TN−I) 50.0℃
誘電率異方性(Δε) +5.8
屈折率異方性(Δn) 0.084
しきい値電圧(Vth) 1.52V
このように、N相の上限温度は多少低下したものの、誘電率異方性は小さくなり、同時にしきい値電圧も大きく低下していることが明らかである。従って前述の式(a)から、(No.1)の化合物の弾性定数は比較的小さいと考えられる。また、(M−1)の屈折率異方性も約10%近くも小さくなっていることが明らかである。
(比較例1)
母体液晶(A)80重量%及び(No.1)の化合物の類似構造を有する式(R−1)
【0050】
【化11】
【0051】
で表わされる化合物20重量%からなる液晶組成物(MR−1)を調製した。この(MR−1)のN相の上限温度(TN−I)、物性値及び同様にして測定したしきい値電圧(Vth)は以下の通りであった。
【0052】
N相の上限温度(TN−I) 65.0℃
誘電率異方性(Δε) +7.2
屈折率異方性(Δn) 0.094
しきい値電圧(Vth) 1.67V
このように、N相上限温度は上昇したものの、誘電率異方性も大きくなり、しきい値電圧も母体液晶(A)より大きく上昇した。また、屈折率異方性も大きくなっていることが明らかである。
(実施例3) 液晶組成物の調製(2)
ネマチック液晶材料として、特に低粘性及び高速応答性を有するアクティブマトリックス用母体液晶(B)
【0053】
【化12】
【0054】
(式中、シクロヘキサン環はトランス配置を表わし、「%」は「重量%」を表わす。)を調製した。この母体液晶(B)は116.7℃以下でネマチック相を示し、その物性値及びこれを用いたTNセルのしきい値電圧(Vth)は以下の通りであった。
【0055】
N相の上限温度(TN−I) 116.7℃
誘電率異方性(Δε) +4.7
屈折率異方性(Δn) 0.090
しきい値電圧(Vth) 2.14V
この母体液晶(B)70重量%及び(No.1)の化合物30重量%からなる液晶組成物(M−2)を調製した。この(M−2)のN相の上限温度(TN−I)、物性値及び同様にして測定したしきい値電圧(Vth)は以下の通りであった。
【0056】
N相の上限温度(TN−I) 95.0℃
誘電率異方性(Δε) +3.4
屈折率異方性(Δn) 0.081
しきい値電圧(Vth) 2.12V
このように、ネマチック相の上限温度は低下したものの、誘電率異方性は小さくなり、しきい値電圧もわずかながら低下していることが明らかである。また、屈折率異方性も10%も小さくなっていることが明らかである。
【0057】
また、この液晶組成物(M−2)の比抵抗は1013Ωcm以上と大きく、電圧保持率は99%以上と非常に高かった。
(実施例4) 化合物の熱安定性試験
実施例1で得た(No.1)の化合物をアンプルに封入し、100℃の定温器内に24時間放置した。放冷後、内容物をヘキサンに10%溶解し、その比抵抗を測定したところ、加熱試験前のサンプルを用いて同様に測定した比抵抗と全く変化がなかった。また、キャピラリーガスクロマトグラフでその純度を測定したが、不純物は全く生成していなかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明に係わる一般式(I)で表わされる化合物は、実施例に示したように工業的にも容易に製造でき、熱、光、水等に対し、化学的に非常に安定である。また、誘電率異方性及び屈折率異方性が比較的小さく、ネマチック液晶として現在汎用されている母体液晶との相溶性にも優れている。従って、この化合物を添加することによって、組成物の液晶相の上限温度を大きく低下させることなく、しきい値電圧を大きく低下することができる。従って、低電圧駆動が要求される各種液晶表示素子、特にアクティブマトリックス駆動用の液晶材料として非常に有用である。
Claims (6)
- 一般式(I)
- R1が水素原子であり、X1がフッ素原子であり、X2が水素原子である請求項1記載の一般式(I)で表わされる化合物。
- Z1、Z2及びZ3のうちの少なくとも1つがフッ素原子である請求項2記載の一般式(I)で表わされる化合物。
- mが1であり、環Aが1,4−シクロヘキシレン基であり、Y1及びY2が共に単結合であり、Z1がフッ素原子、塩素原子又はトリフルオロメトキシ基である請求項3記載の一般式(I)で表わされる化合物。
- Z1及びZ2が共にフッ素原子であり、Z3が水素原子である請求項4記載の一般式(I)で表わされる化合物。
- 請求項1記載の一般式(I)で表わされる化合物を含有する液晶組成物。
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JPH07223982A JPH07223982A (ja) | 1995-08-22 |
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- 1994-02-15 JP JP01829294A patent/JP3574871B2/ja not_active Expired - Lifetime
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