JP3574393B2 - 繊維径測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成繊維の繊維径を測定する技術に関し、特に、ポリエステル等の合成繊維の繊維径を紡出中に測定する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル繊維等の合成繊維の製造工程においては、製造される際の繊維径が重要な管理項目である。繊維径が所定の値より小さくなると、製造工程において糸切れが発生して、その処理のために製造工程の稼働率が低下する。一方、繊維径が所定の値より大きくなると、製造された繊維を用いて織られた布帛にすじが発生する等の品質上の問題が発生する。このような重要な管理項目の1つである合成繊維の繊維径を測定する方法として、特開平11−248427号公報に開示されるグラスウールの平均繊維径測定方法がある。
【0003】
この公報に開示された測定方法は、繊維径が予め明らかなグラスウールに対して、そのグラスウールに透明体を密着させてレーザー光を照射した際の正反射光光強度Xおよび散乱光光強度Yを測定して、変換係数Kと定数Aとを含む変換式を準備する準備ステップと、測定対象のグラスウールに対して、グラスウールに透明体を密着させてレーザー光を照射して正反射光光強度Xおよび散乱光光強度Yを測定する測定ステップと、準備ステップにて準備した変換式により平均繊維径dを算出する算出ステップとを含み、変換式は、X/Y=K×d+Aで表わされる測定方法である。
【0004】
この公報に開示された測定方法によると、グラスウール上に透明なガラス板を強く圧着すると、ガラス板の表面にその圧着面が構成されたものとみなすことができる。そこにレーザー光を照射すると正反射光と散乱光を生じる。グラスウールの平均繊維径が大きいほど、圧着面は平面状態に近似するため、レーザー光の照射による正反射光が大きく、散乱光が少ない。一方、グラスウールの平均繊維径が小さいほど、同一のレーザー照射領域内に光散乱体が多く存在することになり、より粗面状態になることになり、レーザー光の照射による散乱光が生じやすい。すなわち、平均繊維径と正反射光および散乱光との間の関連性を用いて、グラスウールの平均繊維径を算出することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の公報に開示された測定方法では、静止状態にある繊維の繊維径を測定することができても、紡出中のポリエステル繊維をオンラインで測定することができない。オンラインで繊維径を測定することができないため、オンラインで収集された繊維径のデータを分析して、製造工程において発生する糸切れおよび布帛に織られてからの品質上の異常等を未然に防ぐことができない。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、紡出中の合成繊維の繊維径をオンラインで正確に測定することができる繊維径測定装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る繊維径測定装置は、紡出中の合成繊維の繊維径を測定する繊維径測定装置であって、合成繊維は、静止状態において所定の測定ポイントに設置され、紡出時に測定ポイントからのずれを生じ、繊維径測定装置は、合成繊維に対して、測定ポイントに集光された測定光を照射するための照射手段と、照射手段により照射された合成繊維の散乱光を受光して、受光した散乱光の光強度を検知するための検知手段と、検知手段に接続され、検知手段が受光した散乱光の光強度がしきい値以上である場合に、散乱光の光強度に基づいて、合成繊維の繊維径を算出するための算出手段とを含む。
【0008】
第1の発明によると、照射手段は、紡出中の合成繊維に対して、測定ポイントに集光された測定光を照射する。検知手段は、照射手段により照射された合成繊維の散乱光を受光して、受光した散乱光の光強度を検知する。算出手段は、検知手段が受光した散乱光の光強度がしきい値以上である場合に、散乱光の光強度に基づいて、合成繊維の繊維径を算出する。これにより、測定ポイントから合成繊維がずれて受光した散乱光の光強度がしきい値以上であると、その散乱光の光強度に基づいて合成繊維の繊維径を算出し、測定ポイントから合成繊維が大きくずれた際のしきい値未満の散乱光の光強度に基づく繊維径の算出を行なわない。その結果、紡出中の合成繊維の繊維径をオンラインで正確に測定することができる繊維径測定装置を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係る繊維径測定装置は、第1の発明の構成に加えて、しきい値は、紡出時における測定ポイントからのずれ量の関数により表わされる値である。
【0010】
第2の発明によると、しきい値をずれ量の関数で表わすため、測定範囲において許容されるずれ量に基づいて、関数によりしきい値を算出することができ、しきい値を実測する必要がなくなる。
【0011】
第3の発明に係る繊維径測定装置は、第2の発明の構成に加えて、照射手段は、半導体レーザ光を発生するためのレーザ光発生手段と、レーザ光発生手段からのレーザ光を幅Aに拡散させる拡散レンズと、拡散レンズにより拡散されたレーザ光を幅Bに集光させる集光レンズとを含み、集光レンズと測定ポイントとの距離をL、ずれ量をΔXおよび集光レンズにより集光された光の測定ポイントにおける光強度をIとして、しきい値は、[[(B×L)/A}/ΔX]×I(ただし、ΔX≠0)により表わされるものである。
【0012】
第3の発明によると、レーザ光発生手段が発生した半導体レーザ光は、拡散レンズにより幅Aに拡散されて、拡散レンズにより拡散されたレーザ光は集光レンズにより幅Bに集光される。集光レンズと測定ポイントとの距離をL、ずれ量をΔXおよび集光レンズにより集光された光の測定ポイントにおける光強度をIとして、しきい値は、[[(B×L)/A}/ΔX]×I(ただし、ΔX≠0)により表わされる。これにより、しきい値を上述の関数で表わすため、測定範囲において許容されるずれ量ΔXに基づいて、関数によりしきい値を算出することができ、しきい値を実測する必要がなくなる。
【0013】
第4の発明に係る繊維径測定装置は、第1の発明の構成に加えて、算出手段は、検知手段が受光した散乱光の光強度と合成繊維の繊維径との間に成立する正の相関関係を用いて、合成繊維の繊維径を算出するための手段を含む。
【0014】
第4の発明によると、算出手段は、検知手段が受光した散乱光の光強度と合成繊維の繊維径との間に成立する正の相関関係を用いて、合成繊維の繊維径を算出する。これにより、紡出中の合成繊維の繊維径をオンラインで正確に測定することができる繊維径測定装置を提供することができる。
【0015】
第5の発明に係る繊維径測定装置は、第1の発明の構成に加えて、検知手段と算出手段とに接続され、検知手段が受光した散乱光の光強度がしきい値を上回ると、受光した散乱光の光強度に基づいて、しきい値を逐次更新するための更新手段をさらに含む。
【0016】
第5の発明によると、更新手段は、検知手段が受光した散乱光の光強度がしきい値を上回ると、受光した散乱光の光強度に基づいて、しきい値を逐次更新する。これにより、測定ポイントにより近い場合の光強度の測定値に基づいて繊維径が算出される。これにより、紡出中の合成繊維の繊維径をオンラインでさらに正確に測定することができる繊維径測定装置を提供することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0018】
本実施の形態に係る繊維径測定装置は、予め定められた測定ポイントに集光されたレーザ光を発生する照射部と、照射部によりレーザ光が照射された合成繊維からの散乱光を受光するセンサ部と、センサ部が受光した散乱光の光強度に基づいて繊維径を算出する測定部とを含む。
【0019】
本実施の形態で測定対象とした合成繊維は、たとえば、ポリエステル繊維である。ポリエステル繊維の原料は透明であり、レーザ光を照射しても散乱光を発生しない。しかしながら、通常ポリエステル繊維を製造する際には、繊維に光沢を発生させるために、酸化チタンの金属粉末が添加されて紡出される。この酸化チタンがレーザ光に対する散乱体となる。このとき、散乱光の光強度は、酸化チタンが均一に添加されているため、体積に比例する。後述するように合成繊維に照射されるシート状のレーザ光の厚みは一定であるため、体積は断面積に比例し、結果的に散乱光の光強度から繊維径を算出することができる。
【0020】
図1を参照して、測定部100は、CPU(Central Processing Unit)102と、メモリ104と、固定ディスク106と、キーボード108と、表示モニタ110と、入出力インターフェイス112とを含む。
【0021】
センサ部120は、測定対象の合成繊維を中心として照射部の反対側に設置され、合成繊維からの散乱光を検知する第1の受光センサ140と、照射部と同じ側に設置され、合成繊維からの散乱光を検知する第2の受光センサ142と、第1の受光センサ140および第2の受光センサ142の出力にそれぞれ接続され、受光センサからの出力信号を増幅する第1のアンプ130および第2のアンプ132とを含む。第1のアンプ130は、第1の受光センサ140に、第2のアンプ132は、第2の受光センサ142に、内蔵される構成であってもよい。また、受光センサおよびアンプは1組であってもよい。
【0022】
測定部100の入出力インターフェイス112とセンサ部120との間には、第1の受光センサ140、第2の受光センサ142にて検知されて第1のアンプ130、第2のアンプ132にて増幅された受光した光強度を表わすアナログ信号を、デジタル信号に変換する、12ビットのA/D(Analog/Digital)変換器114が接続される。本実施の形態においては、測定対象物である合成繊維の紡出中の横揺れ振動周波数が数Hzであることから、合成繊維からの散乱光の光強度を測定するサンプリング周波数を約10kHzに設定した。
【0023】
CPU102は、固定ディスク106に記憶されたプログラムを実行して、測定部100の全体を制御して、入出力インターフェイス112を介してセンサ部120から受信した光強度に基づいて繊維径を算出する。メモリ104には、センサ部120から受信した光強度、CPU102が実行するプログラムの中間結果であるしきい値等が記憶される。固定ディスク106には、CPU102が実行するプログラム、繊維径と光強度との相関関係に基づいて算出された光強度から繊維径への換算式等が記憶される。この繊維径測定装置のオペレータにより、キーボード108から、初期設定要求が入力されたり、オンライン計測要求が入力されたりする。表示モニタ110には、キーボード108からオペレータが入力した要求コマンドの確認画面、オンライン計測状況等が表示される。入出力インターフェイス112は、測定部100とA/D変換器114とを接続してデータ通信する。なお、測定部100は、実際にはパーソナルコンピュータ等により実現される。
【0024】
図2を参照して、本実施の形態に係る繊維径測定装置の照射部は、紡出中の合成繊維900に照射するレーザ光を発生するレーザ光発生器200と、レーザ光発生器200にて発生されたレーザ光を拡散する対物レンズ300と、対物レンズ300にて拡散されたレーザ光を測定ポイント800に集光する円筒レンズ400とを含む。対物レンズ300および円筒レンズ400により、厚みが一定の扇型のシート状のレーザ光が測定ポイント800に照射される。なお、合成繊維900は、静止状態において所定の測定ポイント800に設置されるが、紡出中には、数Hzの横揺れ振動周波数で測定ポイント800からのずれを生じる。
【0025】
図3を参照して、本実施の形態に係る繊維径測定装置の照射部について、さらに詳しく説明する。図3に示すように、第1の受光センサ140は、測定ポイント800から距離Rの位置に設置され、第2の受光センサ142は、測定ポイント800を中心として、第1の受光センサ140とは点対称である位置に設置される。なお、第1の受光センサ140および第2の受光センサ142は、円筒レンズ300の中心線から約30度傾けて設置されている。
【0026】
以下の説明では、円筒レンズ300に入射されるレーザ光の幅は2A、測定ポイント800におけるレーザ光の幅は2B、円筒レンズ300から測定ポイントまでの距離をLおよび測定ポイント800からずれ量ΔXだけずれた位置をポイント802とする。
【0027】
測定ポイント800におけるレーザ光の集束点光強度をIcとすると、ポイント802におけるレーザ光の光強度をI(ΔX)は、近似的に、I(ΔX)=[[(B×L)/A}/ΔX]×Ic(ただし、ΔX≠0)により表わされる。これにより、照射部の設計データから、円筒レンズ300に入射されるレーザ光の幅2A、測定ポイント800におけるレーザ光の幅2B、距離Lを算出して、繊維径を測定できる許容範囲としてずれ量ΔXを設定することにより、許容範囲にある場合の光強度のしきい値を算出できる。
【0028】
本実施例においては、紡出される合成繊維の直径を約15μmと想定して、焦点距離30mmの円筒レンズ300を用いた。この円筒レンズ300に入射するレーザ光の幅Aを15mm、測定ポイント800におけるレーザ光の幅Bを200μm、距離Lを50mmとした。実際に、正確に繊維径を算出できる許容範囲であるずれ量ΔXを1mmに設定して、無次元化されたしきい値I(ΔX)/Icは、[[(200×10−3×50)/15}/1]=0.67となる。すなわち、オンライン測定においては、光強度比率If/IcおよびIb/Icが0.67より大きい場合に、受光センサが検知した光強度に基づいて繊維径を算出することにより、精度高く繊維径を測定できる。なお、光強度Ifとは、第1の受光センサ140が受光した光強度であり、光強度Ibとは、第2の受光センサ142が受光した光強度である。
【0029】
図4を参照して、この計算により算出したしきい値を、予備実験において実際に測定した光強度に基づいて算出する方法について説明する。図4は、数種のずれ量ΔXに対して、光強度比率I/Ic(If/Icは第1の受光センサ140、Ib/Icは第2の受光センサ142に対応する)を実際に測定したものである。この図からわかるように、たとえば、ずれ量ΔXが±1mmを超えると、光強度比率0.5(ΔXが−1mmにおけるIf/Icの測定値)程度になり、測定できる光強度が大きく落ち込む。このことは、測定対象の合成繊維が測定ポイント800からずれてしまい、所定のレーザ光が照射されても、十分に散乱光を反射せずに、正確に繊維径を算出することができないことを示す。このように光強度比率が落ち込んだ光強度に基づいて繊維径を算出しても正確な繊維径を算出することができない。
【0030】
計算によりしきい値を算出する代わりに、上述のように予備実験としてずれ量に対する光強度比率を実際に測定して、ずれ量と光強度比率との関係を図4のように作成して、測定できる光強度が大きく落ち込まない範囲を表わす光強度比率0.7をしきい値として算出することができる。このとき、算出されたしきい値は、固定ディスク106の予備実験データ結果テーブルに記憶される。
【0031】
以下の説明では、計算により算出されたしきい値または図4に基づいて算出されたしきい値は初期値であって、しきい値は、オンライン測定中に逐次更新されるものとして説明する。
【0032】
固定ディスク106に記憶される、散乱光の光強度から繊維径を算出するための換算式について説明する。前述の説明のように、ポリエステル繊維は、原料に均一に添加された酸化チタンの金属粉末等により、レーザ光が照射されると散乱光を発生する。この散乱光の光強度は体積に比例して、シート状のレーザ光の厚みは一定であるため、体積は断面積に比例し、結果的に散乱光の光強度から繊維径を算出することができる。図5に、繊維の断面積および繊維径が明らかであるポリエステル繊維を測定ポイント800の位置に静止させて、レーザ光を照射して散乱光を実際に測定した結果を示す。繊維の断面積および繊維径と受光した光強度との間には、正の相関関係がある。この正の相関関係に基づいて換算式が算出され、算出された換算式は、固定ディスク106に記憶される。
【0033】
図6を参照して、本実施の形態に係る繊維径測定装置で実行されるプログラムは、初期設定処理に関し、以下のような制御構造を有する。
【0034】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、CPU102は、キーボード108から、測定ポイント800における集束点光強度Icの測定要求の入力を検出したか否かを判断する。集束点光強度Icの測定要求の入力を検知すると(S100にてYES)、処理はS102へ移される。一方、集束点光強度Icの測定要求の入力を検知しないと(S100にてNO)、集束点光強度Icの測定要求の入力を検知するまで待つ。
【0035】
S102にて、CPU102は、第1の受光センサ140による光強度Ifおよび第2の受光センサ142による光強度Ibのいずれかが光強度の最大値を計測したか否かを判断する。なお、前述の説明のように、光強度Ifは、受光センサ140および第1のアンプ130を介して測定部100に入力され、光強度Ibは第2の受光センサ142および第2のアンプ132を介して測定部100に入力される。光強度Ifおよび光強度Ibのいずれかが光強度の最大値を計測すると(S102にてYES)、処理はS104へ移される。一方、IfおよびIbのいずれかが光強度の最大値を計測するまでは(S102にてNO)、処理はS102へ戻され、いずれかが光強度の最大値を計測するまで待つ。なお、このS102における判断は、予め定められた一定時間の間に検知された最大値に基づいて判断される。
【0036】
S104にて、CPU102は、オペレータが受光センサの位置を調整した結果、「第1の受光センサ140による光強度If=第2の受光センサ142による光強度Ib」となるように、光強度が計測されたか否かを判断する。「If=Ib」となる光強度を計測すると(S104にてYES)、処理はS106へ移される。一方、「If=Ib」となるように光強度が計測されないと(S104にてNO)、処理はS104に戻され、オペレータが受光センサの位置を調整して、「If=Ib」となるまで、光強度が計測される。
【0037】
S106にて、CPU102は、第1の受光センサ140および第2の受光センサ142の位置を決定して、メモリ104にその位置を表わす情報を記憶する。メモリ104に記憶された受光センサの位置を表わす情報は、次回の初期設定処理の際に読み出されて、表示モニタ110に表示され、その表示に基づいてオペレータが受光センサの位置を調整するようにしてもよい。
【0038】
S108にて、CPU102は、静止状態における合成繊維の集束点光度Icを算出する。このとき、集束点光度Icは、IfおよびIbと等しくなる。
【0039】
S110にて、CPU102は、無次元化光強度(I/Ic)に対するしきい値Ithの初期値を演算するか否かを判断する。しきい値Ithの初期値を演算する場合には(S110にてYES)、処理はS112へ移される。一方、しきい値Ithの初期値を演算しない場合には(S110にてNO)、処理はS114へ移される。
【0040】
S112にて、CPU102は、予め固定ディスク106に記憶されたデータに基づいて、[{(B×L)/A}/ΔX]からしきい値Ithの初期値を算出する。算出されたIthの初期値は、固定ディスク106の所定の位置に記憶される。
【0041】
S114にて、CPU102は、しきい値Ithの初期値を演算により求めない場合、固定ディスク106の予備実験結果テーブルからしきい値Ithの初期値を読出す。
【0042】
図7を参照して、本実施の形態に係る繊維径測定装置で実行されるプログラムは、オンライン計測処理に関し、以下のような制御構造を有する。
【0043】
S200にて、CPU102は、無次元化しきい値Ithを、前述のS112またはS114にて算出したIth初期値に設定する。また、変数Nを初期化(N=0)する。
【0044】
S202にて、CPU102は、第1の受光センサ140および第2の受光センサ142からの出力をバッファに格納する。
【0045】
S204にて、CPU102は、バッファがフル状態であるか否かを判断する。バッファがフル状態になると(S204にてYES)、処理はS206へ移される。一方、バッファがフル状態になるまでは(S204にてNO)、処理はS202へ戻され、受光センサからの出力をバッファに格納する。
【0046】
S206にて、CPU102は、S202にて格納したバッファからデータを読出す。S208にて、CPU102は、バッファが空状態であるか否かを判断する。バッファが空状態とは、バッファからCPU102がデータを読出すことによりバッファが空き状態になったことを示す。バッファが空き状態である場合には(S208にてYES)、処理はS202へ戻され次のデータをバッファに格納していく。一方、バッファが空き状態でない場合には(S208にてNO)、処理はS210へ移される。
【0047】
S210にて、CPU102は、バッファから読出した第1の受光センサ140が測定した光強度Ifを集束点光強度Icで除算した光強度比率If/Icが、しきい値Ithよりも大きいか否かを判断する。光強度比率If/Icがしきい値Ithよりも大きい場合には(S210にてYES)、処理はS212へ移される。一方、光強度比率If/Icがしきい値Ith以下である場合には(S210にてNO)、処理はS206へ戻され、バッファから次のデータを読出す。
【0048】
S212にて、CPU102は、第1の受光センサ140が測定した光強度Ifと第2の受光センサ142が測定した光強度Ibとが等しいか否かを判断する。「If=Ib」である場合には(S212にてYES)、処理はS214へ移される。一方、「If=Ib」でない場合には(S212にてNO)、処理はS206へ戻され、バッファから次のデータを読出す。
【0049】
S214にて、CPU102は、変数Nについて、N=N+1の演算を行なう。S216にて、CPU102は、変数Nが、予め定められた定数Mより大きいか否かを判断する。変数Nが定数Mより大きい場合には(S216にてYES)、処理はS222へ移される。一方、変数Nが定数M以下である場合には(S216にてNO)、処理はS218へ移される。なお、定数Mは、たとえば「10」に設定され、メモリ104に記憶されている。
【0050】
S218にて、CPU102は、If(N)をメモリ104に格納する。S220にて、CPU102は、光強度から繊維径への換算式に基づいて、If(N)から繊維径を算出する。算出された繊維径は、表示モニタ110などに表示される。光強度から繊維径への換算式は、固定ディスク106に記憶され、メモリ104に読み出されている。
【0051】
S222にて、CPU102は、変数Nが定数Mより大きい場合には、M個のIf(N)(N=1〜M)の平均値を算出する。
【0052】
S224にて、CPU102は、S222にて算出した平均値に基づいて、新たなしきい値Ithを算出する。このとき算出されるしきい値Ithは、S222にて算出した平均値そのものであったり、平均値の95%であったりする。この処理により、しきい値Ithが逐次更新されることになる。ただし、しきい値Ithを頻繁に更新すると、しきい値が限りなく「1」に近づき、If/Ic>Ithを満足する(S210にてYES)場合が少なくなり、繊維径の測定に時間がかかり過ぎることがある。このため、しきい値Ithの上限を設けるようにしてもよい。
【0053】
S226にて、CPU102は、変数Nを初期化(N=0)する。その後処理はS228へ移される。
【0054】
S228にて、CPU102は、キーボード108からオンライン計測処理の終了が入力されたことを検知したか否かを判断する。終了入力を検知すると(S228にてYES)、このオンライン計測処理を終了する。一方、終了入力を検知しないと(S228にてNO)、処理はS206へ戻され、バッファから次のデータを読出し、繊維径算出処理を行なう。
【0055】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、繊維径測定装置の動作について説明する。
[初期設定動作]
繊維径測定装置の測定部100のキーボード108からオペレータが集束点光強度Icの測定要求を入力すると、測定部100がその測定要求入力を検知し(S100にてYES)、第1の受光センサ140および第2の受光センサ142から入力された光強度Ifおよび光強度Ibのいずれかが光強度の最大値を計測したか否かを判断する。光強度Ifおよび光強度Ibのいずれかが光強度の最大値を計測すると(S102にてYES)、オペレータが受光センサの位置を調整する。受光センサの位置の調整の結果、光強度If=光強度Ibとなるような光強度が計測されると(S102にてYES)、第1の受光センサ140および第2の受光センサ142の位置を決定して、決定された受光センサの位置がメモリ104に記憶される(S106)。
【0056】
静止状態における合成繊維の集束点光強度Icが算出され(S108)、無次元化光強度(I/Ic)に対するしきい値Ithの初期値を演算する場合には(S110にてYES)、所定の関数に基づいてしきい値Ithの初期値が算出される(S112)。一方、しきい値Ithの初期値を演算により求めない場合には(S110にてNO)、固定ディスク106に記憶された予備実験データ結果テーブルからしきい値Ithの初期値を読出す(S114)。
【0057】
このようにして、オペレータが集束点光強度Icの測定要求を入力すると、測定ポイント800に静止された合成繊維からの散乱光の光強度が第1のセンサ140および第2のセンサ142が最大の光強度を計測するように受光センサの位置が決定される。さらに、静止状態における繊維の集束点光強度Icが算出され、しきい値Ithの初期値が算出される。このようにして初期設定動作が終了しオンライン計測動作が実行できるようになる。
[オンライン計測動作]
オペレータが初期設定動作の後、オンライン計測動作を指示すると、初期設定動作により算出されたしきい値Ithが、しきい値Ithの初期値に設定され、変数Nが初期化(N=0)される(S200)。第1の受光センサ140および第2の受光センサ142からの出力が入出力インターフェイス112を介してメモリ104のバッファに格納される(S202)。バッファがフル状態になると(S204にてYES)、バッファが空状態になるまで(S208にてNO)バッファからデータが読出される(S206)。
【0058】
第1の受光センサ140により測定された光強度Ifを初期設定動作で算出した集束点光強度Icで除算した光強度比率が、無次元化されたしきい値Ithよりも大きいか否かが判断される(S210)。光強度比率If/Icがしきい値Ithよりも大きく(S210にてYES)、かつ、第1の受光センサ140による光強度の測定値Ifと第2の受光センサ142による光強度の測定値Ibとが等しい場合には(S212にてYES)、変数NについてN=N+1の演算が行なわれる(S214)。
【0059】
変数Nが予め定められた定数M以下である場合には(S216にてNO)、測定されたIf(N)がメモリ104に格納される(S218)。測定された光強度If(N)から、光強度から繊維径への換算式に基づいて、繊維径が算出される(S220)。このような繊維径を算出する処理が、終了入力を検知するまで(S228にてNO)、繰返し行なわれる。
【0060】
一方、変数Nが予め定められた定数Mを超えた場合には(S216にてYES)、M個のIf(N)(N=1〜M)の平均値が算出される(S222)。算出された平均値に基づいて、新たなしきい値Ithが算出され(S224)、しきい値Ithは、算出された新たなしきい値Ithに更新される。変数Nが初期化(N=0)(S226)され、終了入力が検知されるまでは(S228にてNO)、受光センサが検知した光強度に基づく光強度比率が、更新されたしきい値Ithよりも大きい場合に(S210にてYES)、検知された光強度に基づいて、新たに繊維径が算出される(S220)。
【0061】
以上のようにして、本実施の形態に係る繊維径測定装置は、測定ポイントに対して、シート状のレーザ光を照射し、照射されたレーザ光により散乱した散乱光を受光センサにより測定し、受光センサが測定した光強度が、予め定められたしきい値以上またはしきい値よりも大きい場合には、受光センサが検知した光強度に基づいて繊維径を算出することができる。また、光強度のしきい値は、オンライン計測処理において逐次更新され、精度高く繊維径を測定することができる。その結果、紡出中の合成繊維の繊維径をオンラインで正確に測定することができる繊維径測定装置を提供することができる。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る繊維径測定装置の繊維径算出部の制御ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る繊維径測定装置のレーザ光照射部の構成図である。
【図3】図2の繊維径測定ポイント付近の詳細を示す図である。
【図4】ずれ量と光強度との関係を示す図である。
【図5】光強度と繊維径との関係を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る初期設定処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態に係るオンライン計測処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
100 測定部、102 CPU、104 メモリ、106 固定ディスク、108 キーボード、110 表示モニタ、112 入出力インターフェイス、114 A/D変換器、120 センサ部、130、132 アンプ、140、142 受光センサ。
Claims (5)
- 紡出中の合成繊維の繊維径を測定する繊維径測定装置であって、前記合成繊維は、静止状態において所定の測定ポイントに設置され、紡出時に前記測定ポイントからのずれを生じ、前記繊維径測定装置は、
前記合成繊維に対して、前記測定ポイントに集光された測定光を照射するための照射手段と、
前記照射手段により照射された前記合成繊維の散乱光を受光して、受光した前記散乱光の光強度を検知するための検知手段と、
前記検知手段に接続され、前記検知手段が受光した前記散乱光の光強度がしきい値以上である場合に、前記散乱光の光強度に基づいて、前記合成繊維の繊維径を算出するための算出手段とを含む、繊維径測定装置。 - 前記しきい値は、紡出時における前記測定ポイントからのずれ量の関数により表わされる値である、請求項1に記載の繊維径測定装置。
- 前記照射手段は、半導体レーザ光を発生するためのレーザ光発生手段と、前記レーザ光発生手段からのレーザ光を幅Aに拡散させる拡散レンズと、前記拡散レンズにより拡散されたレーザ光を幅Bに集光させる集光レンズとを含み、前記集光レンズと前記測定ポイントとの距離をL、前記ずれ量をΔXおよび前記集光レンズにより集光された光の前記測定ポイントにおける光強度をIとして、前記しきい値は、[[(B×L)/A}/ΔX]×I(ただし、ΔX≠0)により表わされる、請求項2に記載の繊維径測定装置。
- 前記算出手段は、前記検知手段が受光した散乱光の光強度と前記合成繊維の繊維径との間に成立する正の相関関係を用いて、前記合成繊維の繊維径を算出するための手段を含む、請求項1に記載の繊維径測定装置。
- 前記繊維径測定装置は、前記検知手段と前記算出手段とに接続され、前記検知手段が受光した散乱光の光強度が前記しきい値を上回ると、受光した散乱光の光強度に基づいて、前記しきい値を逐次更新するための更新手段をさらに含む、請求項1に記載の繊維径測定装置。
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