JP3574185B2 - 無水クエン酸トリマグネシウムおよびその製法 - Google Patents
無水クエン酸トリマグネシウムおよびその製法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、無水クエン酸トリマグネシウムおよびその製法に関する。さらに詳しくは、水に対する溶解性が大きく、医薬品原料、工業薬品原料、マグネシウム強化剤などに好適に使用することができるとともに、多量の水を吸収し、固結防止剤、脱水剤、吸湿防止剤などに好適に使用することができる無水クエン酸トリマグネシウムおよびその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クエン酸やクエン酸塩を、これらの水溶液中で塩基性マグネシウムと反応させると、クエン酸トリマグネシウムなどのマグネシウム塩が生成する。
【0003】
しかしながら、前記クエン酸トリマグネシウムは、3〜14分子の結晶水を有するため、25℃の水100gに対する溶解度が2g以下であり、きわめて小さいという欠点があった。
【0004】
そこで、従来より、水に対する溶解性が大きく、医薬品原料、工業薬品原料、マグネシウム強化剤などとして好適に使用することができるとともに、多量の水を吸収し、固結防止剤、脱水剤、吸湿防止剤などに好適に使用しうるクエン酸のマグネシウム塩の開発が待ち望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、水に対する溶解性が大きく、医薬品原料、工業薬品原料、マグネシウム強化剤などに好適に使用することができるとともに、多量の水を吸収し、固結防止剤、脱水剤、吸湿防止剤などに好適に使用することができる無水クエン酸トリマグネシウムおよびその製法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、クエン酸および/またはクエン酸塩の水溶液ないし懸濁液に塩基性マグネシウムを添加してクエン酸トリマグネシウムを生成させ、えられた前記クエン酸トリマグネシウムの水溶液を90℃以上に加熱し、析出した結晶を大気圧下または減圧下で160〜190℃で乾燥させてえられ、25℃の水100gに対する溶解度が10g以上である、式:C12H10Mg3 O14で表わされる無水クエン酸トリマグネシウムおよびその製法に関する。
【0007】
【作用および実施例】
本発明の無水クエン酸トリマグネシウムは、前記したように、クエン酸および/またはクエン酸塩の水溶液ないし懸濁液に塩基性マグネシウムを添加してクエン酸トリマグネシウムを生成させ、えられた前記クエン酸トリマグネシウムの水溶液を90℃以上に加熱し、析出した結晶を大気圧下または減圧下で160〜190℃で乾燥させてえられ、25℃の水100gに対する溶解度が10g以上である、式:C12H10Mg3 O14で表わされるものである。
【0008】
本発明に用いられるクエン酸および/またはクエン酸塩は、本発明の無水クエン酸トリマグネシウムの出発原料である。
【0009】
本明細書にいうクエン酸とは、クエン酸、イソクエン酸のみならず、イソクエン酸の脱水物であるラクトンをもいう。
【0010】
前記クエン酸塩とは、クエン酸が1分子内に有する3つのカルボキシル基のうち、少なくとも1つのカルボキシル基が塩となったものをいう。
【0011】
前記塩の代表例としては、たとえばクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムなどのクエン酸アルカリ金属塩;クエン酸カルシウムなどのクエン酸アルカリ土類金属塩;クエン酸アンモニウム塩などがあげられる。前記クエン酸および/またはクエン酸塩は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0012】
本発明において、前記クエン酸および/またはクエン酸塩は、水溶液ないし懸濁液の状態で用いられる。前記クエン酸および/またはクエン酸塩を水に添加する際には、水の使用量は、あまりにも少ないばあいには、前記クエン酸および/またはクエン酸塩の水に対する溶解量が少なくなるので、前記クエン酸および/またはクエン酸塩100部(重量部、以下同様)に対して300部以上、好ましくは450部以上とすることが望ましい。また、かかる水の使用量は、あまりにも多いばあいには、前記塩基性マグネシウムを加えた際に、前記クエン酸トリマグネシウムが速やかに生成しがたくなるため、前記クエン酸および/またはクエン酸塩100部に対して1000部以下、好ましくは600部以下とすることが望ましい。また、前記水溶液ないし懸濁液(以下、懸濁水溶液(I)という)は、前記クエン酸および/またはクエン酸塩の全量が水に溶解した状態であってもよく、前記クエン酸および/またはクエン酸塩が懸濁した状態であってもよく、溶解した状態および懸濁した状態が混在した状態であってもよいが、反応を充分に進行させるためには、前記クエン酸および/またはクエン酸塩の全量が水に溶解した状態であることが好ましい。
【0013】
前記懸濁水溶液(I)を調製する際には、該懸濁水溶液(I)の液温は、水に対する前記クエン酸および/またはクエン酸塩の溶解度を向上させるために、15℃以上、好ましくは25℃以上とすることが望ましい。なお、前記クエン酸塩を用いるばあいには、かかるクエン酸塩から生じる陽イオンが、前記クエン酸および/またはクエン酸塩と塩基性マグネシウムとの反応を妨げるおそれがあるので、前記懸濁水溶液(I)をあらかじめ陽イオン交換樹脂で処理することによってかかる陽イオンを除去しておくことが好ましい。
【0014】
つぎに、前記懸濁水溶液(I)を撹拌しながら該懸濁水溶液(I)に塩基性マグネシウムを加えることにより、クエン酸および/またはクエン酸塩と塩基性マグネシウムとの反応が進行してクエン酸トリマグネシウムが生成し、該クエン酸トリマグネシウムを含有した水溶液ないし懸濁液(以下、懸濁水溶液(II)という)がえられる。
【0015】
前記塩基性マグネシウムの具体例としては、たとえば炭酸マグネシウム、軽質炭酸マグネシウムや重質炭酸マグネシウムなどの塩基性炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、水とのなじみがよいことから、重質炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムを用いることが好ましい。また、前記塩基性マグネシウムの形態については、とくに限定がないが、水に溶解させやすいという観点から、たとえば60メッシュパス以下の粒子径を有する粉末であることが好ましい。
【0016】
前記塩基性マグネシウムの使用量は、前記クエン酸トリマグネシウムの生成量を多くさせるためには、前記クエン酸および/またはクエン酸塩1モルに対して1.5モル以上、好ましくは1.51モル以上、さらに好ましくは1.52モル以上であることが望ましく、また、化学量論量に対して過剰量の前記塩基性マグネシウムを前記懸濁水溶液(II)中に沈殿させないようにするためには、前記クエン酸および/またはクエン酸塩1モルに対して1.6モル以下、好ましくは1.55モル以下、さらに好ましくは1.53モル以下であることが望ましい。前記塩基性マグネシウムは、前記懸濁水溶液(I)に少しずつ添加することが好ましい。前記使用量の範囲内で塩基性マグネシウムを使用したばあいには、前記懸濁水溶液(II)のpHは4.5〜6.0となる。
【0017】
前記クエン酸および/またはクエン酸塩と前記塩基性マグネシウムとの反応が充分に進行すると、前記懸濁水溶液(II)の濁りがなくなり、澄明な水溶液(以下、水溶液(I)という)となる。このとき、前記懸濁水溶液(II)の液温は、反応を速やかに進行させるためには、20℃以上、好ましくは25℃以上とすることが望ましく、また結晶を析出させないようにするために40℃以下、好ましくは30℃以下とすることが望ましい。なお、かかる結晶が析出したばあいには、かかる結晶は、後述するクエン酸トリマグネシウムとは異なるばあいがあるので、濾過によって除去し、該クエン酸トリマグネシウムの結晶と混じり合わないようにすることが好ましい。
【0018】
つぎに、えられた水溶液(I)を、撹拌しながら、90℃〜該水溶液(I)の沸点の範囲内で加熱することにより、クエン酸トリマグネシウムの結晶を析出させる。
【0019】
さらに、前記クエン酸トリマグネシウムの結晶を濾取し、大気圧下または減圧下で乾燥させることにより、本発明の無水クエン酸トリマグネシウムをうることができる。このときの乾燥温度は、あまりにも低いばあいには、本発明の目的とする無水クエン酸トリマグネシウムがえられなくなるので、減圧下では160℃以上、好ましくは165℃以上とすることが好ましく、また大気圧下では180℃以上とすることが好ましい。また前記乾燥温度は、あまりにも高いばあいには、かかる結晶が分解するため、190℃以下、なかんづく185℃以下とすることが好ましい。
【0020】
かくしてえられた本発明の無水クエン酸トリマグネシウムは、式:C12H10Mg3 O14で表わされる白色の非晶質粉末であり、25℃の水100gに対する溶解度が10g以上(この際のpH7〜8)であるとともに水に対する溶解性が大きく、マグネシウム含量16.2重量%を有するものである。
【0021】
つぎに、本発明の無水クエン酸トリマグネシウムおよびその製法を実施例にもとづいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1
クエン酸一水和物22部(重量部、以下同様)を水100部に溶解させ、クエン酸水溶液をえた。かかるクエン酸水溶液の液温を30〜40℃に保ちながら撹拌を続け、重質炭酸マグネシウム15部を少しずつ添加した。重質炭酸マグネシウムを溶解させたあとの水溶液(I)のpHは5.4であった。
【0023】
えられた水溶液(I)を撹拌しながら、結晶を析出させるために100〜該水溶液(I)の沸点で3〜4時間程度加熱した。加熱後の水溶液(I)を観察したところ、充分に結晶が析出し、成長していることが確認された。つぎに、前記水溶液(I)を室温まで放冷した。
【0024】
析出した結晶を濾取し、水100部を用いて洗浄した。かかる結晶を大気圧下、180℃で6時間乾燥させ、白色結晶を22部(収率93%)えた。
【0025】
えられた白色結晶の赤外吸収スペクトルを、ニコレー社製、フーリエ変換赤外分光光度計FT−IR5DXCを用い、分解能4cm−1、積算回数10回の条件で測定した。その結果を図1に示す。
【0026】
前記白色結晶中のマグネシウム含量は、1重量%塩酸酸性水溶液を用い、(株)島津製作所製、原子吸光光度計A4−6400および酸化二チッ素−アセチレン混合ガスフレームを用いて、分析線波長285.2nmにて原子吸光法により測定した結果、16.2重量%であった。
【0027】
さらに、前記白色結晶中の含水量は、測定機器として平沼産業(株)製、平沼水分気化付属装置EV−6および平沼水分自動測定装置AQV−5S、またカールフィッシャー試薬としてリーデルーデ ヘアーエン社製、登録商標ハイドラナール コンポジット5およびメタノールを用いてカールフィッシャー法により測定した結果、0.6重量%であった。
【0028】
また前記白色結晶のX線回折スペクトルを、以下の条件にしたがって測定した。その結果を図2に示す。
【0029】
測定装置 :(株)リガク製、RINT2500V
対陰極 :Cu
フィルター:Ni
電 圧 :50kV
電 流 :300mA
走査範囲 :4〜70゜
走査速度:4゜/min
つぎに、25℃の水100gに対する前記白色結晶の溶解度を調べたところ、24gであった。また、このときにえられた水溶液のpHは7.7であった。
【0030】
実施例2
クエン酸一水和物23部を水100部に溶解させ、クエン酸水溶液をえた。かかるクエン酸水溶液の液温を30〜40℃に保ちながら撹拌を続け、水酸化マグネシウム10部を少しずつ添加した。水酸化マグネシウムを溶解させたあとの水溶液のpHは5.6であった。
【0031】
えられた水溶液(I)の撹拌を続け、結晶を析出させるために100〜該水溶液(I)の沸点で3〜4時間程度加熱した。加熱後の水溶液(I)を観察したところ、充分に結晶が析出し、成長していることが確認された。つぎに、前記水溶液(I)を室温まで放冷した。
【0032】
析出した結晶を濾取し、水100部を用いて洗浄した。かかる結晶を減圧乾燥器中において、160℃で6時間乾燥させ、白色結晶を23部(収率93%)えた。
【0033】
えられた白色結晶の赤外吸収スペクトルを実施例1と同様にして測定したところ、実施例1と同様の結果がえられた。
【0034】
前記白色結晶中のマグネシウム含量を実施例1と同様にして測定した結果、15.7重量%であった。
【0035】
さらに前記白色結晶中の含水量を実施例1と同様にして測定した結果、1.1重量%であった。
【0036】
また、前記白色結晶のX線回折スペクトルを実施例1と同様にして測定したところ、実施例1と同様の結果がえられた。
【0037】
つぎに、25℃の水100gに対する前記白色結晶の溶解度を調べたところ、24gであった。また、このときにえられた水溶液のpHは7.7であった。
【0038】
実施例1または2でえられた白色結晶の25℃の水に対する溶解性とえられた水溶液の外観の経時変化を、濃度の異なる水溶液を調製して、以下の評価基準にしたがって調べた。その結果を表1に示す。
【0039】
A:濁りが認められない。
【0040】
B:濁りが認められる。
【0041】
C:結晶が析出する。
【0042】
【表1】
【0043】
比較例1
実施例1において、180℃で乾燥させる操作を行なわなかったほかは、実施例1と同様にして白色結晶を35部(収率94%)えた。
【0044】
えられた白色結晶の赤外吸収スペクトルを実施例1と同様にして測定した。その結果を図3に示す。
【0045】
前記白色結晶中のマグネシウム含量を実施例1と同様にして測定した結果、10.4重量%であった。
【0046】
さらに、前記白色結晶中の含水量を実施例1と同様にして測定した結果、36重量%であった。
【0047】
また、前記白色結晶のX線回折スペクトルを実施例1と同様にして測定した。その結果を図4に示す。
【0048】
つぎに、25℃の水100gに対する前記白色結晶の溶解度を調べたところ、1.6gであった。また、このときにえられた水溶液のpHは6.6であった。
【0049】
比較例2
実施例2において、160℃で減圧乾燥させる操作を行なわなかったほかは、実施例2と同様にして白色結晶を36部(収率97%)えた。
【0050】
えられた白色結晶の赤外吸収スペクトルを実施例1と同様にして測定したところ、比較例1と同様の結果がえられた。
【0051】
前記白色結晶中のマグネシウム含量を実施例1と同様にして測定した結果、11.5重量%であった。
【0052】
さらに、前記白色結晶中の含水量を実施例1と同様にして測定した結果、28重量%であった。
【0053】
また、前記白色結晶のX線回折スペクトルを実施例1と同様にして測定したところ、比較例1と同様の結果がえられた。
【0054】
つぎに、25℃の水100gに対する前記白色結晶の溶解度を調べたところ、1.8gであった。また、このときにえられた水溶液のpHは6.8であった。
【0055】
実施例1〜2および比較例1〜2の結果から明らかなように、実施例1〜2でえられた無水クエン酸トリマグネシウムは、25℃の水100gに対する溶解度が24gであり、比較例1〜2でえられたクエン酸トリマグネシウムの25℃の水100gに対する溶解度が1.6gおよび1.8gであることと比較して、溶解度が格段に大きいものであることがわかる。
【0056】
また、表1から明らかなように、実施例1〜2でえられた無水クエン酸トリマグネシウムは、25℃の水を用いて40重量%以上の水溶液とすることができ、非常に水に対する溶解性が大きいものであることがわかる。
【0057】
【発明の効果】
本発明の無水クエン酸トリマグネシウムは、水に対する溶解性が大きく、通便剤などの医薬品原料、工業薬品原料、マグネシウム強化剤などに好適に使用することができる。また、かかる無水クエン酸トリマグネシウムは、マグネシウム含量が多く、粉末であることから、たとえば製剤化するばあいには、使用量が少なくても充分なマグネシウムが含有され、また錠剤とするばあいに、かかる錠剤を小さくすることができるとともに、賦型剤などを用いる必要がないので安全性が高い。
【0058】
さらに、本発明の無水クエン酸トリマグネシウムは多量の水を吸収するので、固結防止剤、脱水剤、吸湿防止剤などにも好適に使用することができ、たとえばセメントや食塩などの、水分によって固結しやすい物質に吸湿剤として用いたばあいには、前記固結しやすい物質の固結を効果的に防止することができるというすぐれた効果を奏する。
【0059】
また、本発明の無水クエン酸トリマグネシウムの製法によれば、水に対する溶解性が大きく、純度の高い前記無水クエン酸トリマグネシウムを高収率で容易にうることができるので、経済的であるというすぐれた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1でえられた無水クエン酸トリマグネシウムの赤外吸収スペクトルである。
【図2】実施例1でえられた無水クエン酸トリマグネシウムのX線回折スペクトルである。
【図3】比較例1でえられたクエン酸トリマグネシウムの赤外吸収スペクトルである。
【図4】比較例1でえられたクエン酸トリマグネシウムのX線回折スペクトルである。
Claims (2)
- クエン酸および/またはクエン酸塩の水溶液ないし懸濁液に塩基性マグネシウムを添加してクエン酸トリマグネシウムを生成させ、えられた前記クエン酸トリマグネシウムの水溶液を90℃以上に加熱し、析出した結晶を大気圧下または減圧下で160〜190℃で乾燥させてえられ、25℃の水100gに対する溶解度が10g以上である、式:C12H10Mg3 O14で表わされる無水クエン酸トリマグネシウム。
- クエン酸および/またはクエン酸塩の水溶液ないし懸濁液に塩基性マグネシウムを添加してクエン酸トリマグネシウムを生成させ、えられた前記クエン酸トリマグネシウムの水溶液を90℃以上に加熱し、析出した結晶を大気圧下または減圧下で160〜190℃で乾燥させることを特徴とする、25℃の水100gに対する溶解度が10g以上である、式:C12H10Mg3 O14で表わされる無水クエン酸トリマグネシウムの製法。
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- 1994-09-02 JP JP21010494A patent/JP3574185B2/ja not_active Expired - Lifetime
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