JP3571394B2 - 圧脈波検出装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、生体表面の動脈内を伝播する圧脈波を、動脈上を押圧する圧脈波センサを用いて検出する圧脈波検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体の動脈から発生する圧脈波を検出するための圧脈波センサと、その圧脈波センサを動脈に向かって押圧する押圧装置と、その圧脈波センサが押圧される押圧位置を動脈の幅方向に変更する押圧位置変更装置と、所定の押圧位置更新条件が成立した場合には、前記押圧装置による上記圧脈波センサの押圧を解除させた状態でその圧脈波センサを所定距離移動させた後、その圧脈波センサに所定の押圧力を付与して得られた圧脈波に基づいて最適押圧位置を決定し、圧脈波センサをその最適押圧位置に位置させる最適押圧位置制御手段と、その最適押圧位置制御手段により決定された最適押圧位置において前記圧脈波センサの押圧力を連続的に変化させる過程で得た圧脈波に基づいて最適押圧力を決定し、圧脈波センサをその最適押圧力にて押圧する最適押圧力制御手段とを備え、前記圧脈波センサを最適押圧位置において最適押圧力にて押圧した状態で前記圧脈波を検出する形式の圧脈波検出装置が知られている。たとえば、特開平1−126205公報などに記載された圧脈波検出装置がそれである。
【0003】
そして、上記従来の圧脈波検出装置では、圧脈波センサが最適押圧位置に位置させられた後、最適押圧力を決定するために圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられるとき、予め設定された比較的低い押圧開始圧から押圧開始される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記最適押圧力を決定するために圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられる期間では正確な圧脈波検出ができないために中断させられることから、生体を連続的に監視し得るようにするために、上記圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられる期間が可及的に短縮されることが望まれる。しかしながら、上記従来の圧脈波検出装置では、押圧装置の供給圧が略大気圧付近に予め定められた昇圧開始圧から一律に増加させられることにより、圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられる一方、上記圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられる期間に検出された圧脈波の振幅の最大値を発生させた押圧力が最適押圧力として決定される。このため、昇圧開始圧が最適押圧力よりも充分に低い値から増加させられることになり、圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられる期間が不要に長くなる欠点があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、最適押圧力決定を迅速に実行でき、圧脈波検出の中断期間が短縮される圧脈波検出装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、生体の動脈から発生する圧脈波を検出するための圧脈波センサと、その圧脈波センサを動脈に向かって押圧する押圧装置と、その圧脈波センサが押圧される押圧位置を動脈の幅方向に変更する押圧位置変更装置と、所定の押圧位置更新条件が成立した場合には、前記押圧装置による前記圧脈波センサの押圧を解除させた状態で圧脈波センサを所定距離移動させた後、その圧脈波センサに所定の押圧力を付与して得られた圧脈波に基づいて最適押圧位置を決定し、前記圧脈波センサをその最適押圧位置に位置させる最適押圧位置制御手段と、その最適押圧位置制御手段により決定された最適押圧位置において前記圧脈波センサの押圧力を連続的に変化させる過程で得た圧脈波に基づいて最適押圧力を決定し、圧脈波センサをその最適押圧力にて押圧させる最適押圧力制御手段とを備え、前記圧脈波センサを最適押圧位置において最適押圧力にて押圧した状態で前記圧脈波を検出する形式の圧脈波検出装置であって、(a) 前記最適押圧位置制御手段により最適押圧位置が決定されるに際して、少なくとも2種類の第1押圧力値および第2押圧力値においてそれぞれ発生した第1脈波振幅および第2脈波振幅を算出する脈波振幅算出手段と、(b) その脈波振幅算出手段により算出された第1脈波振幅および第2脈波振幅に基づいて前記最適押圧力制御手段により連続的に変化させられる前記圧脈波センサの押圧開始圧を決定する押圧開始圧決定手段とを、含むことにある。
【0007】
【作用】
このようにすれば、最適押圧位置制御手段により最適押圧位置が決定されるに際して、少なくとも2種類の第1押圧力値および第2押圧力値においてそれぞれ発生した第1脈波振幅および第2脈波振幅が、脈波振幅算出手段により算出されると、その脈波振幅算出手段により算出された第1脈波振幅および第2脈波振幅に基づいて、最適押圧力制御手段により連続的に変化させられる前記圧脈波センサの押圧力の開始圧が、押圧開始圧決定手段により決定される。
【0008】
【発明の効果】
したがって、押圧開始圧は、最適押圧位置決定に際して発生した圧脈波から脈波振幅算出手段により算出された第1脈波振幅および第2脈波振幅に基づいて、最適押圧力を決定するために必要な範囲で最も大きな押圧開始圧が決定されるので、最適押圧力を決定するために圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられる期間が好適に短縮されると同時に、圧脈波検出の中断期間も短縮される。
【0009】
ここで、上記発明の他の態様においては、好適には、(c) 前記最適押圧力制御手段によって前記圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられる過程で発生する圧脈波のうち、前記第1押圧力値または第2押圧力値と同様の押圧力で発生した圧脈波の振幅である第3脈波振幅を算出する第2の脈波振幅算出手段と、(d) その第3脈波振幅と前記第1脈波振幅または第2脈波振幅とを比較することにより、前記最適押圧力制御手段により前記圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられた期間における圧脈波の安定性を判定する脈波安定性判定手段とが、さらに含まれる。このようにすれば、最適押圧力を決定するために圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられる期間における圧脈波の安定性が判定されるので、不安定であると判定されるときには、上記最適押圧力の決定手順が再実行される利点がある。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の連続血圧監視装置の一構成例を示す図であって、たとえば手術中や手術後の患者の容態を監視するために用いられる。図において、10はゴム製袋を布製帯状袋内に有するカフであって、たとえば患者の上腕部12に巻回された状態で装着される。カフ10には、圧力センサ14、切換弁16、および空気ポンプ18が配管20を介してそれぞれ接続されている。切換弁16は、カフ10内への圧力の供給を許容する圧力供給状態、カフ10内を徐々に排圧する徐速排圧状態、およびカフ10内を急速に排圧する急速排圧状態の3つの状態に切り換えられるように構成されている。
【0012】
圧力センサ14は、カフ10内の圧力を検出してその圧力を表す圧力信号SPを静圧弁別回路22および脈波弁別回路24にそれぞれ供給する。静圧弁別回路22はローパスフィルタを備えており、圧力信号SPに含まれる定常的な圧力を表すカフ圧信号SKを弁別してそのカフ圧信号SKをA/D変換器26を介して制御装置28へ供給する。脈波弁別回路24はバンドパスフィルタを備えており、圧力信号SPの振動成分である脈波信号SM1 を弁別してその脈波信号SM1 をA/D変換器30を介して制御装置28へ供給する。この脈波信号SM1 が表すカフ脈波は、患者の心拍に同期して図示しない上腕動脈から発生してカフ10に伝達される圧力振動波であり、上記脈波弁別回路24はカフ脈波検出手段として機能している。
【0013】
上記制御装置28は、CPU29,ROM31,RAM33,および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、CPU29は、ROM31に予め記憶されたプログラムに従ってRAM33の記憶機能を利用しつつ信号処理を実行することにより、I/Oポートから駆動信号を出力して図示しない駆動回路を介して切換弁16および空気ポンプ18を制御する。キャリブレーションのためのカフ10を用いた血圧測定に際しては、たとえばカフ10内の圧力を所定の目標圧力まで急速昇圧させた後に3mmHg/sec程度の速度で徐速降圧させ、その徐速降圧過程で逐次採取される脈波信号SM1 が表す脈波の変化に基づいてオシロメトリック法により最高血圧値および最低血圧値などの血圧値を決定し、その決定した血圧値を表示器32に表示させる。
【0014】
圧脈波検出プローブ34は、図2に詳しく示すように、容器状を成すセンサハウジング36を収容するケース37と、このセンサハウジング36を撓骨動脈56の幅方向に移動させるためにそのセンサハウジング36に螺合され且つケース37の駆動部39内に設けられた図示しないモータによって回転駆動されるねじ軸41とを備えている。上記ケース37には装着バンド40が取りつけられており、上記容器状を成すセンサハウジング36の開口端が人体の体表面38に対向する状態で装着バンド40により手首42に着脱可能に取り付けられるようになっている。上記センサハウジング36の内部には、ダイヤフラム44を介して圧脈波センサ46が相対移動可能かつセンサハウジング36の開口端からの突出し可能に設けられており、これらセンサハウジング36およびダイヤフラム44等によって圧力室48が形成されている。この圧力室48内には、空気ポンプ50から調圧弁52を経て圧力エアが供給されるようになっており、これにより、圧脈波センサ46は圧力室48内の圧力に応じた押圧力PHDP で前記体表面38に押圧される。なお、本実施例では、圧脈波センサ46の押圧力PHDP は圧力室48内の圧力(単位:mmHg)で示される。
【0015】
上記センサハウジング36およびダイヤフラム44は、圧脈波センサ46を撓骨動脈56に向かって押圧する押圧装置62を構成しており、上記ねじ軸41および図示しないモータは、圧脈波センサ46が押圧される押圧位置をその撓骨動脈56の幅方向に変更する押圧位置変更装置64を構成している。
【0016】
上記圧脈波センサ46は、たとえば、単結晶シリコン等から成る半導体チップの押圧面54に多数の半導体感圧素子(図示せず)が撓骨動脈56の幅方向すなわちねじ軸41と平行な方向に0.2mm程度の一定の間隔で配列されて構成されており、手首42の体表面38の撓骨動脈56上に押圧されることにより、撓骨動脈56から発生して体表面38に伝達される圧力振動波すなわち圧脈波を検出し、その圧脈波を表す圧脈波信号SM2 をA/D変換器58を介して制御装置28へ供給する。図3は、圧脈波センサ46により検出された圧脈波SM の一例を示している。
【0017】
制御装置28のCPU29は、ROM31に予め記憶されたプログラムに従ってRAM33の記憶機能を利用しつつ信号処理を実行し、空気ポンプ50および調圧弁52へ図示しない駆動回路を介して駆動信号を出力して圧力室48内の圧力を調節する。連続血圧監視に際しては、圧力室48内の徐速圧力変化過程で逐次得られる圧脈波に基づいて圧脈波センサ46の最適押圧力PHDPOを決定し、調圧弁52を圧脈波センサ46の最適押圧力PHDPOを維持するように制御するとともに、カフ10を用いて測定された最高血圧値BPSYS および最低血圧値BPDIA と、上記最適押圧力PHDPOが維持された状態で圧脈波センサ46にて検出された圧脈波の最高値PMmaxおよび最低値PMminとに基づいて測定された血圧値BPと圧脈波の大きさPM (絶対値)との間の対応関係を求め、この対応関係から、圧脈波センサ46により逐次検出される圧脈波の大きさPM (mmHg)すなわち最高値(上ピーク値)PMmaxおよび最低値(下ピーク値)PMminに基づいて最高血圧値MBPSYS および最低血圧値MBPDIA (監視血圧値)を逐次決定し、表示器32においてその決定した最高血圧値MBPSYS および最低血圧値MBPDIA を1拍毎に数値表示させ、監視血圧値MBPを示す波形を連続的に表示させる。
【0018】
上記対応関係は、たとえば図4に示すものであり、数式1により表される。この数式1において、Aは傾きを示す定数、Bは切片を示す定数である。
【0019】
【数1】
MBP=A・PM +B
【0020】
図5は、上記のように構成された連続血圧監視装置における制御装置28の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図において、血圧測定に際してカフ圧制御手段68により変化させられるカフ10の圧迫圧力が圧力センサ14により検出される。血圧値測定手段70は、カフ10による圧迫圧力を2〜3mmHg/sec程度の速度で徐々に変化させる過程で得られた脈拍同期信号、たとえば脈波振幅或いはコロトコフ音の変化に基づきオシロメトリック法或いはコロトコフ音法に従って生体の血圧値を測定する。関係決定手段72は、圧脈波センサ46により検出される圧脈波の大きさPM と血圧値測定手段70により測定された血圧値BPとの間の対応関係をたとえば図4に示すように予め決定する。監視血圧値決定手段74は、その対応関係から圧脈波センサ46により検出される圧脈波の大きさに基づいて生体の監視血圧値MBPを連続的に決定する。
【0021】
最適押圧位置制御手段76は、押圧面54に配列された圧力検出素子のうちの最大振幅を検出するものが配列位置のうちの端部に位置するものとなった場合などの所定の押圧位置更新条件が成立した場合には、押圧装置62による圧脈波センサ46の押圧を解除させた状態でその圧脈波センサ46を所定距離移動させた後、その圧脈波センサ46に第1押圧力値P1 或いはそれに加えて第2押圧力値P2 を付与して得られた圧脈波に基づいて最適押圧位置を決定し、圧脈波センサ46をその最適押圧位置に位置させる。最適押圧位置とは、たとえば押圧面54に配列された圧力検出素子のうちの最大振幅を検出するものが配列位置のうちの略中央部に位置する状態である。最適押圧力制御手段78は、最適押圧位置制御手段76により決定された最適押圧位置において圧脈波センサ46の押圧力を連続的に変化させ、その変化過程で得た圧脈波に基づいて最適押圧力を決定し、圧脈波センサ46を最適押圧力PHDPOにて押圧させる。最適押圧力PHDPOとは、上記押圧力変化過程で得た脈波振幅の最大値を中心とする所定範囲内の押圧値、および/またはその押圧力変化過程で得た圧脈波信号SM2 の下ピーク値SMminと圧脈波センサ46の押圧力とを示す二次元図表においてその下ピーク値SMminを結ぶ曲線に形成される平坦部の中央を中心とする所定範囲内の押圧値である。
【0022】
脈波振幅算出手段80は、最適押圧位置制御手段76により最適押圧位置が決定されるに際して、少なくとも2種類の第1押圧力値PAPS1および第2押圧力値PAPS2においてそれぞれ発生した第1脈波振幅A1 および第2脈波振幅A2 を算出する。押圧開始圧決定手段82は、脈波振幅算出手段80により算出された第1脈波振幅A1 および第2脈波振幅A2 に基づいて前記最適押圧力制御手段78により連続的に変化させられる圧脈波センサ46の押圧開始圧PHDPAを決定する。
【0023】
第2の脈波振幅算出手段84は、最適押圧力制御手段78によって圧脈波センサ46の押圧力が連続的に変化させられる過程で発生する圧脈波SM のうち、第1押圧力値PAPS1または第2押圧力値PAPS2と同様の押圧力で発生した圧脈波の振幅である第3脈波振幅A3 を算出する。脈波安定性判定手段86は、第3脈波振幅A3 と第1脈波振幅A1 または第2脈波振幅A2 とを比較することにより、最適押圧力制御手段78により圧脈波センサ46の押圧力が連続的に変化させられた期間における圧脈波の安定性を判定する。たとえば、第3脈波振幅A3 と第1脈波振幅A1 または第2脈波振幅A2 との差が予め設定された判断基準値よりも小さい場合には安定であったと判定されるが、大きい場合には不安定であったと判定されることにより、信頼性の高い最適押圧力PHDPOを求めるための作動が再実行される。
【0024】
図6、図7、図8は、上記制御装置28の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、図6はメインルーチンを示し、図7は圧脈波センサ46の最適押圧位置を決定し且つその最適押圧位置に保持するAPS制御ルーチンを示し、図8は、圧脈波センサ46の最適押圧力PHDPOを決定し且つその最適押圧力PHDPOに保持するHDP制御ルーチンを示している。
【0025】
図6のステップS1(以下、ステップを省略する。)では、前回に対応関係が決定されてからの経過時間が十数分乃至数十分程度に予め設定されたキャリブレーション周期を超えたか否かが判断される。通常はそのS1の判断が否定されるので、S2において所定の押圧位置更新条件(APS起動条件)が成立したか否か、たとえば圧脈波センサ46の押圧面54に配列された圧力検出素子のうちの最大振幅を検出するものが配列位置のうちの端部に位置する状態となったか否かが判断される。
【0026】
撓骨動脈56に対する圧脈波センサ46の押圧位置が正常範囲であれば、上記S2の判断が否定されるので、S3において、たとえば図4の対応関係を変化させる程に圧脈波センサ46の押圧条件を変化させる体動が検出されたか否か、或いは監視血圧値MBPが前回のカフ10を用いて測定された血圧値BPに対して大幅に変化したか否かなどに基づいて、血圧監視のための対応関係を更新するための起動条件(HDP起動条件)が成立したか否かが判断される。
【0027】
圧脈波センサ46の押圧条件に変化がなく、図4の対応関係が変化していないと考えられる場合は上記S3の判断が否定されるので、S8において1つの圧脈波が発生したか否かが圧脈波信号SM2 に基づいて判断される。このS8の判断が否定された場合はS1、S2、S3、S8が繰り返し実行させられることにより待機させられる。しかし、1つの圧脈波が発生するとS8の判断が肯定されるので、前記監視血圧値決定手段74に対応するS9においては、最適押圧力PHDPOにて押圧されている圧脈波センサ46からの圧脈波信号SM2 から、その波動の最高値PMmaxおよび最低値PMminが決定され、図4の対応関係からその圧脈波の最高値PMmaxおよび最低値PMminに基づいて最高血圧値MBPSYS および最低血圧値MBPDIA (監視血圧値)が決定されるとともに、その決定されたモニタ血圧値が圧脈波の連続波形と共に表示器32に逐次表示される。
【0028】
以上のステップが繰り返し実行されるうち、前回に対応関係が決定されてからの経過時間が予め設定されたキャリブレーション周期を超えると前記S1の判断が肯定されるので、S6においてカフ10を用いた血圧測定が実行された後、S7において対応関係が更新され、その後前記S8以下が実行される。すなわち、先ず、前記血圧値測定手段70に対応するS6では、切換弁16を圧力供給状態に切り換え且つ空気ポンプ18を作動させてカフ10内の圧力を患者の予想される最高血圧値よりも高い目標圧力(たとえば180mmHg)まで昇圧した後、空気ポンプ18を停止させ且つ切換弁16を徐速排圧状態に切り換えてカフ10内の圧力を2〜3mmHg/sec程度に予め定められた徐速降圧速度で下降させることにより、この徐速降圧過程で逐次得られる脈波信号SM1 が表す脈波の振幅の変化に基づいて、良く知られたオシロメトリック方式の血圧値決定アルゴリズムに従って最高血圧値BPSYS 、平均血圧値BPMEAN、および最低血圧値BPDIA が測定されるとともに、脈波間隔に基づいて脈搏数などが決定される。そして、その測定された血圧値および脈搏数などが表示器32に表示されるとともに、切換弁16が急速排圧状態に切り換えられてカフ10内が急速に排圧される。
【0029】
次に、前記関係決定手段72に対応するS7では、圧脈波センサ46からの圧脈波の大きさ(圧脈波信号SM2 の絶対値)と上記S6において測定されたカフ10による血圧値BPSYS 、BPDIA との間の対応関係が求められる。すなわち、圧脈波センサ46からの圧脈波が1拍読み込まれ且つその圧脈波の最高値PMmaxおよび最低値PMminが決定されるとともに、それら圧脈波の最高値PMmaxおよび最低値PMminとS6にてカフ10により測定された最高血圧値BPSYS および最低血圧値BPDIA とに基づいて、図4に示す圧脈波の大きさと血圧値との間の対応関係が決定されるのである。
【0030】
前記圧脈波センサ46の撓骨動脈56に対する押圧位置がずれた場合には、前記S2の判断が肯定されるので、前記最適押圧位置制御手段76に対応するS4のAPS制御ルーチンにおいて、最適押圧位置が決定されるとともに圧脈波センサ46がその最適押圧位置に位置決めされた後、前記最適押圧力制御手段78に対応するS5のHDP制御ルーチンにおいて、圧脈波センサ46の最適押圧力PHDPOが決定された後、圧脈波センサ46がその最適押圧力PHDPOにて押圧され、その後前記S6以下が実行される。また、連続的に血圧監視が実行される状態で前記S3の判断が肯定された場合には、上記S5のHDP制御ルーチン以下が実行される。以下、上記S4のAPS制御ルーチンおよびS5のHDP制御ルーチンを、図7および図8を用いて説明する。
【0031】
図7のS4−1では、圧脈波センサ46の押圧力PAPS が零とされる。次いで、S4−2では、押圧面54に配列された圧力検出素子によりそれぞれ検出された圧脈波の大きさに基づいて最大振幅の圧脈波を検出する圧力検出素子がその配列方向の中央部へ向かう方向が決定され、その方向へ圧脈波センサ46が予め設定された量だけねじ軸41により移動させられる。次いで、S4−3では、圧脈波センサ46の押圧力PAPS が予め設定された第1押圧力値PAPS1まで増加させられる。
【0032】
そして、圧脈波センサ46の押圧力が第1押圧力値PAPS1まで増加させられた状態で、S4−4において圧脈波が圧脈波センサ46により検出されたか否かが判断される。このS4−4の判断が肯定された場合は、続くS4−5において、圧脈波センサ46が最適位置にあるか否かが、押圧面54に配列された圧力検出素子によりそれぞれ検出された圧脈波に基づいて判断される。たとえば、最大振幅の圧脈波を検出する圧力検出素子がその配列方向の中央部に予め設定された範囲内にあるか否かが判断される。このS4−5の判断が否定された場合は、S4−1以下が繰り返し実行される。
【0033】
しかし、上記S4−5の判断が肯定されると、S4−6において圧脈波センサ46の押圧力が第2押圧力値PAPS2まで増加させられた後、前記脈波振幅算出手段80に対応するS4−7において、上記第1押圧力値PAPS1まで増加させられた状態で圧脈波センサ46により検出された圧脈波の第1脈波振幅A1 と上記第2押圧力値PAPS2まで増加させられた状態で圧脈波センサ46により検出された圧脈波の第2脈波振幅A2 とが算出される。
【0034】
なお、前記S4−4の判断が否定された場合は、押圧力が不充分であると考えられるので、S4−8において圧脈波センサ46の押圧力が第2押圧力値PAPS2まで増加させられた後、S4−9において、前記S4−5と同様に、圧脈波センサ46が最適位置にあるか否かが判断される。このS4−9の判断が否定された場合は前記S4−1以下が繰り返し実行されるが、肯定された場合は、上記S4−7以下が実行される。
【0035】
続く図8のS5−1では、上記第1脈波振幅A1 が第2脈波振幅A2 より小さいか否かが判断される。また、このS5−1の判断が肯定された場合は、S5−2において、第1脈波振幅A1 と第2脈波振幅A2 との比A1 /A2 が予め設定された判断基準値R1 より大きいか否かが判断される。この判断基準値R1 は、第1脈波振幅A1 が第2脈波振幅A2 に近い大きさであるか否かを判断するための値であり、たとえば0.8程度の値が用いられる。
【0036】
そして、上記S5−1およびS5−2の判断結果に応じて、前記押圧開始圧決定手段82に対応するS5−3、S5−4、S5−5の何れかが実行される。たとえば、上記S5−2の判断が否定された場合は、図9に示すように、第1脈波振幅A1 が第2脈波振幅A2 よりも20%以上小さく、最大脈波振幅を示す押圧力値が充分高い値と考えられるので、S5−3において押圧開始圧PHDPAとして前記第1押圧力値PAPS1mmHgが設定された後、S5−9においてその押圧開始圧PHDPAからの連続的な昇圧が開始され、図10に示すように圧脈波センサ46の押圧力が連続的に高められる。また、上記S5−2の判断が肯定された場合は、図11に示すように、第1脈波振幅A1 が第2脈波振幅A2 よりも小さいが第2脈波振幅A2 の20%以内であることから、最大脈波振幅を示す押圧力値が比較的近いと考えられるので、S5−4において、押圧開始圧PHDPAとして前記第1押圧力値PAPS1よりも所定値低い圧、たとえば(PAPS1−10)mmHgが設定された後、S5−9においてその押圧開始圧PHDPAからの連続的な昇圧が開始され、図12に示すように圧脈波センサ46の押圧力が連続的に高められる。
【0037】
さらに、上記S5−1の判断が否定された場合は、図13に示すように、第1脈波振幅A1 が第2脈波振幅A2 以上となる状態であって、最大脈波振幅を示す押圧力値が第1押圧力値PAPS1よりも低いと考えられるので、S5−5において、押圧開始圧PHDPAとして予め設定された最低押圧開始圧PHDPminが設定される。この最低押圧開始圧PHDPminは、最大脈波振幅を発生させる押圧力よりも必ず低い値であり、たとえば18mmHg程度の値である。続くS5−6では、圧脈波センサ46の押圧力が上記最低押圧開始圧PHDPminに設定された押圧開始圧PHDPAまで急速昇圧させられた後、S5−7においてその最低押圧開始圧PHDPminで採取された脈波の脈波振幅AA が前記第1脈波振幅A1 よりも所定割合以下、すなわちAA /A1 がたとえば0.75程度に予め設定された判断基準値R2 以下であるか否かが判断される。このS5−7の判断が肯定された場合は最大振幅を示す押圧力値までは比較的遠いので、S5−8において圧脈波センサ46の押圧力PHDP が最低押圧開始圧PHDPminと第1押圧力値PAPS1との間の値〔PHDPmin+(PAPS1−PHDPmin)/2〕に設定された後、前記S5−9においてその設定値からの連続的な昇圧が開始され、図14に示すように圧脈波センサ46の押圧力が連続的に高められる。また、上記S5−7の判断が否定された場合は最大振幅を示す押圧力値までは比較的近いので、直接S5−9が実行されることにより、押圧開始圧PHDPA(=PHDPmin)からの連続的な昇圧が開始され、図14の破線に示すように圧脈波センサ46の押圧力が連続的に高められる。
【0038】
続くS5−10では圧脈波センサ46の押圧力が連続的に変化させられる過程(HDP期間)の脈波SM が読み込まれた後、S5−11において最適押圧力PHDPOを決定するための最適押圧力決定ルーチンが実行される。たとえば、圧脈波センサ46の押圧力が連続的に変化させられる期間において撓骨動脈56の真上に位置する圧力検出素子により検出される複数の脈波の振幅が中央部が高い分布を示すか否かが判定され、その最大振幅を示す脈波が発生したときの押圧力値が最適押圧力PHDPOとして決定される。
【0039】
次いで、前記第2の脈波振幅算出手段84に対応するS5−12において、最適押圧力PHDPOを求めるために圧脈波センサ46の押圧力が連続的に変化させられる過程で発生する圧脈波SM のうち、第1押圧力値PAPS1と同様の押圧力で発生した圧脈波の振幅である第3脈波振幅A3 が算出された後、前記脈波安定性判定手段86に対応するS5−13において、その第3脈波振幅A3 と第1脈波振幅A1 とを比較することにより、最適押圧力制御手段78により圧脈波センサ46の押圧力が連続的に変化させられた期間における脈波の安定性が判定される。たとえば、第3脈波振幅A3 と第1脈波振幅A1 との差或いは変化割合が予め設定された判断基準値よりも小さい場合には安定であったと判定されるが、大きい場合には不安定であったと判定される。
【0040】
上記HDP期間に発生した脈波が体動などによって不安定であった場合はS5−13の判断が否定されるので、前記S5−9以下が再び実行されることにより、信頼性の高い最適押圧力PHDPOを求めるための作動が再実行される。しかし、HDP期間において脈波が安定的に発生していた場合は上記S5−13の判断が肯定されるので、続くS5−14において最適押圧力PHDPOの決定が完了したか否かが判断される。HDP期間に発生した脈波の数が不充分であるなどにより、このS5−14の判断が否定された場合は、前記S5−10以下が実行されることにより、引き続き発生する脈波の振幅を含めて最適押圧力PHDPOの決定が繰り返し実行される。しかし、最適押圧力PHDPOの決定が完了すると、S5−14の判断が肯定されるので、S5−15において、圧脈波センサ46の押圧力がその最適押圧力PHDPOに保持される。
【0041】
上述のように、本実施例によれば、最適押圧位置制御手段76に対応するS4により最適押圧位置が決定されるに際して、少なくとも2種類の第1押圧力値PAPS1および第2押圧力値PAPS2においてそれぞれ発生した第1脈波振幅A1 および第2脈波振幅A2 が、脈波振幅算出手段80に対応するS4−7により算出されると、押圧開始圧決定手段82に対応するS5−3、S5−4、S5−5により、その第1脈波振幅A1 および第2脈波振幅A2 の大きさの相対関係に基づいて、最適押圧力制御手段78に対応するS5により連続的に変化させられる圧脈波センサ46の押圧力の押圧開始圧PHDPAが決定される。この結果、押圧開始圧PHDPAは、最適押圧力PHDPOを決定するために必要な範囲で最も大きな押圧開始圧が決定されるので、最適押圧力PHDPOを決定するために圧脈波センサ46の押圧力が連続的に変化させられる期間が好適に短縮されると同時に、圧脈波検出の中断期間も短縮される。
【0042】
また、本実施例によれば、第2の脈波振幅算出手段84に対応するS5−12において、最適押圧力制御手段78によって最適押圧力PHDPOを決定するために圧脈波センサ46の押圧力が連続的に変化させられる期間で発生する圧脈波のうち、前記第1押圧力値PAPS1と同様の押圧力で発生した圧脈波の振幅である第3脈波振幅A3 が算出されるとともに、脈波安定性判定手段86に対応するS5−13において、第3脈波振幅A3 と第1脈波振幅A1 とを比較することにより、最適押圧力制御手段78により圧脈波センサ46の押圧力が連続的に変化させられた期間における脈波の安定性が判定されるので、不安定であると判定されるときには、最適押圧力PHDPOの決定手順が再実行され、信頼性の高い最適押圧力PHDPOが得られる利点がある。
【0043】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0044】
たとえば、前述の実施例では、脈波振幅算出手段80により2つの第1脈波振幅A1 および第2脈波振幅A2 が算出されていたが、3つ以上の脈波振幅が算出されてもよい。この場合には、押圧開始圧決定手段82において、3つ以上の脈波振幅の大きさの相対関係に基づいて押圧開始圧PHDPAが決定される。
【0045】
また、前述の実施例において、第2の脈波振幅算出手段84に対応するS5−12では、第1押圧力値PAPS1と同様の押圧力で発生した圧脈波の振幅が第3脈波振幅A3 として求められていたが、第2押圧力値PAPS2と同様の押圧力で発生した圧脈波の振幅が第3脈波振幅A3 として求められても差支えない。この場合には、脈波安定性判定手段86に対応するS5−13において、第3脈波振幅A3 が第2脈波振幅A2 と比較される。
【0046】
また、前述の血圧値測定手段70は、所謂オシロメトリック法に従い、カフ10の圧迫圧力に伴って変化する圧脈波の大きさの変化状態に基づいて血圧値を決定するように構成されていたが、所謂コロトコフ音法に従い、カフ10の圧迫圧力に伴って発生および消滅するコロトコフ音に基づいて血圧値を決定するように構成されてもよい。
【0047】
また、前述の実施例で、カフ10が上腕に装着され且つ圧脈波センサ46が撓骨動脈の圧脈波を検出するために手首に装着されていたが、カフ10が大腿部に巻回され且つ圧脈波センサ46が足背動脈の圧脈波を検出するために足に装着されていてもよいのである。
【0048】
また、前述の実施例の圧脈波センサ46は、その押圧面において複数の圧力検出素子を備えたものであったが、1つの圧力検出素子を備えたものであってもよい。
【0049】
その他、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である連続血圧監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の実施例の脈波検出プローブを一部を切り欠いて説明する拡大図である。
【図3】図1の実施例の圧脈波センサにより検出される圧脈波を例示する図である。
【図4】図1の実施例において用いられる対応関係を例示する図である。
【図5】図1の実施例の制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図6】図1の実施例の制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、メインルーチンを示している。
【図7】図6のAPS制御ルーチンを説明するフローチャートである。
【図8】図6のHDP制御ルーチンを説明するフローチャートである。
【図9】図8のS5−2の判断が否定された場合の第1脈波振幅A1 と第2脈波振幅A2 の相互の大きさを示す図である。
【図10】図9に示す状態における圧脈波センサの押圧力変化開始圧を示すタイムチャートである。
【図11】図8のS5−2の判断が肯定された場合の第1脈波振幅A1 と第2脈波振幅A2 の相互の大きさを示す図である。
【図12】図11に示す状態における圧脈波センサの押圧力変化開始圧を示すタイムチャートである。
【図13】図8のS5−1の判断が否定された場合の第1脈波振幅A1 と第2脈波振幅A2 の相互の大きさを示す図である。
【図14】図13に示す状態における圧脈波センサの押圧力変化開始圧を示すタイムチャートである。
【符合の説明】
10:カフ
42:手首(生体)
46:圧脈波センサ
56:撓骨動脈(動脈)
62:押圧装置
64:押圧位置変更装置
76:最適押圧位置制御手段
78:最適押圧力制御手段
80:脈波振幅算出手段
82:押圧開始圧決定手段
84:第2の脈波振幅算出手段
86:脈波安定性判定手段
Claims (2)
- 生体の動脈から発生する圧脈波を検出するための圧脈波センサと、該圧脈波センサを該動脈に向かって押圧する押圧装置と、該圧脈波センサが押圧される押圧位置を該動脈の幅方向に変更する押圧位置変更装置と、所定の押圧位置更新条件が成立した場合には、前記押圧装置による前記圧脈波センサの押圧を解除させた状態で該圧脈波センサを所定距離移動させた後、該圧脈波センサに所定の押圧力を付与して得られた圧脈波に基づいて最適押圧位置を決定し、前記圧脈波センサを該最適押圧位置に位置させる最適押圧位置制御手段と、該最適押圧位置制御手段により決定された最適押圧位置において前記圧脈波センサの押圧力を連続的に変化させる過程で得た圧脈波に基づいて最適押圧力を決定し、該圧脈波センサを該最適押圧力にて押圧させる最適押圧力制御手段とを備え、前記圧脈波センサを最適押圧位置において最適押圧力にて押圧した状態で前記圧脈波を検出する形式の圧脈波検出装置であって、
前記最適押圧位置制御手段により最適押圧位置が決定されるに際して、少なくとも2種類の第1押圧力値および第2押圧力値においてそれぞれ発生した第1脈波振幅および第2脈波振幅を算出する脈波振幅算出手段と、
該脈波振幅算出手段により算出された第1脈波振幅および第2脈波振幅に基づいて前記最適押圧力制御手段により連続的に変化させられる前記圧脈波センサの押圧開始圧を決定する押圧開始圧決定手段と
を、含むことを特徴とする圧脈波検出装置。 - 前記最適押圧力制御手段によって前記圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられる過程で発生する圧脈波のうち、前記第1押圧力値または第2押圧力値と同様の押圧力で発生した圧脈波の振幅である第3脈波振幅を算出する第2の脈波振幅算出手段と、
該第3脈波振幅と前記第1脈波振幅または第2脈波振幅とを比較することにより、前記最適押圧力制御手段により前記圧脈波センサの押圧力が連続的に変化させられた期間における圧脈波の安定性を判定する脈波安定性判定手段と
を、更に含むものである請求項1の圧脈波検出装置。
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