JP3570819B2 - 合成繊維処理用油剤及びこれを用いた合成繊維処理方法 - Google Patents

合成繊維処理用油剤及びこれを用いた合成繊維処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は合成繊維処理用油剤(以下、単に処理用油剤という)及びこれを用いた合成繊維処理方法に関する。近年、合成繊維の製造加工工程では省力化或は合理化のため、めざましい勢いで高速化が進められている。例えば、ポリエステルやナイロンの製糸速度は4000〜7000m/分に移行しつつある。また加工面でも、編機での編立速度は1200〜1500回/分に高速化され、ウォータージェットルームでの製織速度は1000〜1200rpmに高速化されつつある。このように合成繊維の走向速度が高速化すると、走行糸条の接糸機材に対する接圧が高くなり、該走行糸条に付与した処理用油剤の潤滑性不足に起因して該接糸機材が摩耗するという問題がクローズアップされてきている。接糸機材の摩耗を放置しておくと、糸質の低下につながるため、摩耗した接糸機材を交換しなければならないが、これが作業性及び生産性を著しく低下させる。合成繊維の製造加工工程における近年の高速化に伴い、該合成繊維に付着させる処理剤には、それが高度の潤滑性を発揮して、接糸機材に対する耐摩耗性(以下、単に耐摩耗性という)を充分に発揮するものであることが強く要求される。本発明は、かかる要求に応える処理用油剤及びこれを用いた合成繊維処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成繊維に耐摩耗性を付与する処理用油剤として、1)ラウリルホスフェートカリウム塩に代表されるアルキルリン酸エステル塩を併用する例(特公昭62−34873,特公昭62−47989,特公昭62−47990等)、2)アルケニルコハク酸石鹸、ダイマー酸塩、脂肪酸有機アミン塩等を併用する例(特開昭56−26070、特開昭61−19871、特公昭62−34873)、3)分子中にリン原子、イオウ原子又は窒素原子を有する有機チタン酸エステル化合物、例えばイソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、更には線状縮合有機チタン酸エステル化合物等を併用する例(特開平3−90678、特開平5−140872)が提案されている。ところが、これら従来の処理用油剤にはいずれも、程度の差はあるが、近年の高速化に対して耐摩耗性が不充分という欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が、解決しようとする課題は、従来の処理用油剤では、合成繊維に近年の高速化に対応し得る高度の耐摩耗性を付与できない点である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究した結果、特定構造を有するチタン酸エステル化合物と潤滑剤成分とから成り、これらをそれぞれ所定割合で含有する処理用油剤が正しく好適であることを見出した。
【0005】
すなわち本発明は、下記の式1又は式2で示されるチタン酸エステル化合物と潤滑剤成分とから成り、且つ該チタン酸エステル化合物/該潤滑剤成分=0.1/99.9〜10/90(重量比)の割合で含有することを特徴とする処理用油剤及びこれを用いた合成繊維処理方法に係る。
【0006】
【式1】
Figure 0003570819
【式2】
Figure 0003570819
【0007】
(式1,式2において、
A:水酸基、又はチタン原子と結合した酸素原子を有する有機基であって且つ加水分解により水酸基を形成する有機基
R:炭素数2〜4のアルカンジオキシ基、又は炭素数2若しくは3のアルカン−1−オキシ−1−カルボキシル基
、M:水素、アルカリ金属、アンモニウム、又はアミン
m、n:1〜3の整数であって且つm+n=4を満足するもの)
【0008】
本発明の処理用油剤において、式1で示されるチタン酸エステル化合物には、a)水酸基と、カルボキシレートエチル基とを有するチタン酸エステル化合物、b)チタン原子と結合した酸素原子を有する有機基であって且つ加水分解により水酸基を形成する有機基(以下、単に水酸基形成性有機基という)と、カルボキシレートエチル基とを有するチタン酸エステル化合物が包含される。
【0009】
前記a)のチタン酸エステル化合物としては、モノ(カルボキシレートエチル)トリハイドロジェンチタネート、ジ(カルボキシレートエチル)ジハイドロジェンチタネート、トリ(カルボキシレートエチル)モノハイドロジェンチタネートが挙げられる。
【0010】
また前記b)のチタン酸エステル化合物における水酸基形成性有機基としては、1)メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクトキシ基等のアルコキシ基、2)エタノキシ基、プロパノキシ基、オクタノキシ基、オクタデセノキシ基等のアルカノキシ基又はアルケノキシ基、3)ビニル基、イソプロペニル基等のアルケニル基、4)アセチルプロペニル基、プロピオニルプロペニル基、オクタノイルプロペニル基、メトキシカルボニルプロペニル基、プロポキシカルボニルプロペニル基、ラウロキシカルボニルプロペニル基等の置換アルケニル基等が挙げられるが、これらのなかでも炭素数1〜3のアルコキシ基又はアルカノキシ基が好ましい。
【0011】
本発明の処理用油剤において、式2で示されるチタン酸エステル化合物には、c)炭素数2〜4のアルカンジオキシ基と、カルボキシレートエチル基とを有するチタン酸エステル化合物、d)炭素数2若しくは3のアルカン−1−オキシ−1−カルボキシル基と、カルボキシレートエチル基とを有するチタン酸エステル化合物が包含される。
【0012】
前記c)のチタン酸エステル化合物における炭素数2〜4のアルカンジオキシ基としては、エタンジオキシ基、プロパン−1,2−ジオキシ基、ブタン−1,2−ジオキシ基等のアルカンジオキシ基が挙げられるが、これらのなかでも炭素数2若しくは3のアルカンジオキシ基が好ましい。また前記d)のチタン酸エステル化合物における炭素数2若しくは3のアルカン−1−オキシ−1−カルボキシル基としては、メタン−1−オキシ−1−カルボキシル基、エタン−1−オキシ−1−カルボキシル基等が挙げられる。
【0013】
式1又は式2で示されるチタン酸エステル化合物において、M,Mは、水素、アルカリ金属、アンモニウム又はアミンであるが、これらのなかでも水素、アルカリ金属、アンモニウム、アルカノールアミンが好ましい。
【0014】
本発明は、本発明で用いる潤滑剤成分を特に制限するものではないが、かかる潤滑剤成分としては通常、潤滑油と界面活性剤とから成るものが適用できる。潤滑油としては、1)鉱物油、2)脂肪族モノカルボン酸と脂肪族1価アルコールとのエステル化合物、3)脂肪族モノカルボン酸と脂肪族多価アルコールとの完全エステル化合物、4)脂肪族ポリカルボン酸と脂肪族1価アルコールとの完全エステル化合物等が挙げられる。
【0015】
前記した鉱物油としては、各種の粘度を有する鉱物油が使用できるが、なかでも25℃における粘度が2×10−6〜40×10−6/sのものが好ましい。かかる好ましい鉱物油としては流動パラフィンオイルが有利に使用できる。
【0016】
前記したエステル化合物としては、1)ラウリルオレート、イソオクチルステアレート、ブチルステアレート、イソトリデシルステアレート等の、脂肪族モノカルボン酸と脂肪族1価アルコールとのエステル化合物、2)ネオペンチルグリコールジラウレート、1,6−ヘキサンジオールジオレート、トリメチロールプロパントリペラルゴネート等の、脂肪族モノカルボン酸と脂肪族多価アルコールとの完全エステル化合物、3)ジ2−エチルヘキシルアゼレート、ジオレイルアジペート等の、脂肪族ポリカルボン酸と脂肪族1価アルコールとの完全エステル化合物等が挙げられる。
【0017】
また通常は前記した潤滑油と共に用いる界面活性剤としては、1)いずれもオキシアルキレン基がオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基からなる、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル等の、ポリオキシアルキレン基を有する非イオン性界面活性剤、2)ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート等の多価アルコール部分エステル型の非イオン性界面活性剤、3)アルキルスルホネート塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、4)アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルエチルアンモニウム塩、アルキルイミダゾリニウム塩等のカチオン性界面活性剤、5)アルキルジメチルベタイン、アルキルイミダゾリンのベタイン化合物等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0018】
本発明の処理用油剤は、以上説明したようなチタン酸エステル化合物と潤滑剤成分とから成るものであって、且つチタン酸エステル化合物/潤滑剤成分=0.1/99.9〜10/90(重量比)、好ましくは1/99〜8/92(重量比)の割合で含有するものである。双方の割合が0.1/99.9(重量比)未満であると、本発明の目的とする効果が得られない。逆に双方の割合が10/90(重量比)を超えると、チタン酸エステル化合物が潤滑剤成分に溶解し難くなり、本発明の目的とする効果の発現が低下する。
【0019】
本発明の合成繊維処理方法は、以上説明した処理用油剤を合成繊維に対して0.1〜3重量%付着させる方法である。処理用油剤は、合成繊維の紡糸工程における未配向糸、部分配向糸、延伸された配向糸等に対して付着させることができる。合成繊維に付着させるときの処理用油剤の形態としては、処理用油剤の原液(ニート)、水性エマルジョン、有機溶剤溶液が挙げられるが、水性エマルジョンが好ましい。処理用油剤を付着させる方法には公知の方法が適用できるが、これには例えば、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等が挙げられる。
【0020】
本発明の処理方法を適用する合成繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維等が挙げられるが、なかでもポリアミド繊維又はポリエステル繊維に対して有効であり、とりわけ編物用又はウォータージェットルーム方式の製織用に供されるポリアミド繊維又はポリエステル繊維に対して有効である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係る処理用油剤の実施形態としては、次の1)〜13)が好適例として挙げられる。
1)ジ(カルボキシレートエチル)ジハイドロジェンチタネート3重量部と、鉱物油(25℃における粘度33×10−6/s)/POE(12モル)ひまし油/POE(5モル)オレイルエーテル/POE(8モル)ノニルフェニルエーテル/ラウリルスルホネートナトリウム塩/POE(5モル)ラウリルエーテルホスフェートカリ塩=60/17/10/3/5/5(重量比)から成る潤滑剤成分97重量部とを混合した処理用油剤。
【0022】
2)ジ(ナトリウムカルボキシレートエチル)ジハイドロジェンチタネート7重量部と、鉱物油(25℃における粘度33×10−6/s)/イソトリデシルステアレート/POE(12モル)ひまし油/POE(5モル)オレイルエーテル/POE(8モル)ノニルフェニルエーテル/ラウリルスルホネートナトリウム塩/POE(5モル)ラウリルエーテルホスフェートカリ塩=35/35/12/10/3/3/2(重量比)から成る潤滑剤成分93重量部とを混合した処理用油剤。
【0023】
3)トリ(アンモニウムカルボキシレートエチル)モノハイドロジェンチタネート7重量部と、イソトリデシルステアレート/ペンタエリスリトールテトラオクタノエート/POE(12モル)ひまし油/POE(5モル)オレイルエーテル/POE(8モル)ノニルフェニルエーテル/ラウリルスルホネートナトリウム塩/POE(5モル)ラウリルエーテルホスフェートカリ塩=35/20/15/15/5/5/5(重量比)から成る潤滑剤成分93重量部とを混合した処理用油剤。
【0024】
4)モノ{(モノヒドロキシ−トリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムカルボキシレートエチル}トリハイドロジェンチタネート3重量部と、イソトリデシルステアレート/ジオクチルセバケート/POE(12モル)ひまし油/POE(5モル)オレイルエーテル/POE(8モル)ノニルフェニルエーテル/ラウリルスルホネートナトリウム塩/POE(5モル)ラウリルエーテルホスフェートカリ塩=40/10/15/15/10/5/5(重量比)から成る潤滑剤成分97重量部とを混合した処理用油剤。
【0025】
5)ジ(カルボキシレートエチル)ジメトキシチタネート3重量部と、前記1)と同じ潤滑剤成分97重量部とを混合した処理用油剤。
6)ジ(カルボキシレートエチル)ジエタノキシチタネート3重量部と、前記1)と同じ潤滑剤成分97重量部とを混合した処理用油剤。
7)ジ(カルボキシレートエチル)ジイソプロペニルチタネート3重量部と、前記1)と同じ潤滑剤成分97重量部とを混合した処理用油剤。
8)ジ(カルボキシレートエチル)ジアセチルプロペニルチタネート3重量部と、前記1)と同じ潤滑剤成分97重量部とを混合した処理用油剤。
9)ジ(カルボキシレートエチル)ジメトキシカルボニルプロペニルチタネート3重量部と、前記1)と同じ潤滑剤成分97重量部とを混合した処理用油剤。10)ジ(カルボキシレートエチル)エタンジオキシチタネート3重量部と、前記1)と同じ潤滑剤成分97重量部とを混合した処理用油剤。
11)ジ(カルボキシレートエチル)メタン−1−オキシ−カルボキシルエタンチタネート3重量部と、前記1)と同じ潤滑剤成分97重量部とを混合した処理用油剤。
12)ジ(カルボキシレートエチル)ジメトキシチタネート9重量部と、前記1)と同じ潤滑剤成分91重量部とを混合した処理用油剤。
13)ジ(カルボキシレートエチル)ジメトキシチタネート0.5重量部と、前記1)と同じ潤滑剤成分99.5重量部とを混合した処理用油剤。
【0026】
また本発明に係る合成繊維処理方法の実施形態としては、次の14)、15)が好適例として挙げられる。
14)前記した1)〜13)のいずれかの処理用油剤を10重量%水性エマルジョンとし、これを70デニール/24フィラメントのナイロンフルダル糸に1.0重量%となるようローラー給油法で付着させる方法。
15)前記した1)〜13)のいずれかの処理用油剤を10重量%水性エマルジョンとし、これを50デニール/24フィラメントのポリエステルフルダル糸に1.5重量%となるようガイド給油法で付着させる方法。
【0027】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的に示すために実施例を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、部は重量部を、また%は重量%を意味する。
【0028】
【実施例】
試験区分1
・実施例1〜13及び比較例1〜7
表1に記載した処理用油剤の10%水性エマルジョンを調製した。各水性エマルジョンを70デニール/24フィラメントのナイロンフルダル糸にローラー給油し、風乾して、表1に記載した付着量(純分換算)の給油糸を得た。ここで得た給油糸を用い、乾燥時耐摩耗性及び湿潤時耐摩耗性を下記のように評価し、その結果を表1に示した。
【0029】
乾燥時耐摩耗性の評価
初期張力35g、糸速50m/分、糸条の角度60度で、給油糸を編み針(パイル針K−140S)に30分間擦過させた。30分間の擦過後、編み針の摩耗状態を顕微鏡で観察して、下記の判定基準で評価した。
【0030】
湿潤時耐摩耗性の評価
初期張力35g、糸速12.5m/分で走行させつつ、給油糸を1リットルの5度硬水に1秒間浸漬し、引き続き糸条の角度60度で編み針(パイル針K−140S)と30分間擦過させた。30分間の擦過後、編み針の摩耗状態を顕微鏡で観察し、下記の判定基準で評価した。
【0031】
判定基準
◎:全く摩耗が認められない
○:僅かに摩耗が認められるが、実用上問題がない
△:明らかに摩耗が認められ、実用上問題がある
×:著しい摩耗が認められる
【0032】
【表1】
Figure 0003570819
【0033】
表1において、
T−1〜T−9:表2に示すチタン酸エステル化合物
T−10:前記した式2において、R=エタンジオキシ基である場合のチタン酸エステル化合物
T−11:前記した式2において、R=メタン−1−オキシ−1−カルボキシル基である場合のチタン酸エステル化合物
r−1:テトラステアリルチタネート
r−2:テトライソステアロイルチタネート
r−3:ジオクトキシカルボニルエチルチタネート
r−4:線状縮合チタン酸エステルであって、縮合度が5、アルキル基とアシル基の比率がイソプロピル基/ラウロイル基=20/80(モル%)の混合物
r−5:イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート
L−1〜L−4:表3に示す潤滑剤成分
【0034】
【表2】
Figure 0003570819
【0035】
表2において、
HTEA:モノヒドロキシ−トリ(ヒドロキシエチル)アンモニウム
【0036】
【表3】
Figure 0003570819
【0037】
表3において、鉱物油は25℃における粘度が33×10−6/sのもの
【0038】
試験区分2
・実施例14〜26及び比較例8〜14
表4に記載した処理用油剤の10%水性エマルジョンを調製した。各水性エマルジョンを50デニール/24フィラメントのポリエステルフルダル糸に給油し、風乾して、表4に記載した付着量(純分換算)の給油糸を得た。ここで得た給油糸を用い、乾燥時耐摩耗性及び湿潤時耐摩耗性を試験区分1と同様に評価し、結果を表4に示した。
【0039】
【表4】
Figure 0003570819
【0040】
表4において、
T−1〜T−11,r−1〜r−5,L−1〜L−4:試験区分1の表1と同じ
【0041】
試験区分3
・実施例27,28及び比較例15〜17
ナイロン6セミダル糸を溶融紡糸し、これに表5に記載した処理用油剤の10%水性エマルジョンをローラー給油して、未延伸の給油糸を得た。次いでこの給油糸を3倍に延伸し、70デニール/13フィラメントの延伸糸を得た。ここで得た延伸糸を経糸とし、また市販の70デニール/24フィラメントのナイロン糸を緯糸として用い、ウォータージェットルーム方式の織機(日産自動車製のLW−52)により製織した。この製織において綜絖に対する耐摩耗性及び筬に対する耐摩耗性を下記のように評価し、その結果を表5に示した。尚、上記の延伸糸の処理用油剤の付着量は、いずれも0.7%(純分換算)であった。
【0042】
・綜絖に対する耐摩耗性及び筬に対する耐摩耗性の評価
ウォータージェットルーム方式の織機で14日間製織したときの織機の綜絖及び筬の摩耗状態を観察し、試験区分1と同じ判定基準で評価した。
【0043】
【表5】
Figure 0003570819
【0044】
表5において、
T−1,T−2,r−3〜r−5,L−1,L−2:試験区分1の表1と同じ
【0045】
試験区分4
・実施例29、30及び比較例18〜20
ナイロン6フルダル糸を溶融紡糸し、これに表6に記載した処理用油剤の10%水性エマルジョンをローラー給油して、未延伸の給油糸を得た。次いでこの給油糸を3倍に延伸し、40デニール/10フィラメントの延伸糸を得た。ここで得た延伸糸を用いて、編立したときの編針に対する耐摩耗性を下記のように評価し、結果を表6に示した。尚、上記の延伸糸の処理用油剤の付着量は、いずれも0.7%(純分換算)であった。
【0046】
・編み針に対する耐摩耗性
筒編機(小池機械製作所製CR−B)で、10日間編み立てしたときの編針の摩耗状態を観察し、試験区分1と同じ判定基準で評価した。
【0047】
【表6】
Figure 0003570819
【0048】
表6において、
T−1,T−3,r−3〜r−5,L−1,L−3:試験区分1の表1と同じ
【0049】
【発明の効果】
既に明らかなように、以上説明した本発明には、合成繊維に近年の高速化に対応する高度の耐摩耗性を付与できるという効果がある。

Claims (7)

  1. 下記の式1又は式2で示されるチタン酸エステル化合物と潤滑剤成分とから成り、且つ該チタン酸エステル化合物/該潤滑剤成分=0.1/99.9〜10/90(重量比)の割合で含有することを特徴とする合成繊維処理用油剤。
    【式1】
    Figure 0003570819
    【式2】
    Figure 0003570819
    (式1,式2において、
    A:水酸基、又はチタン原子と結合した酸素原子を有する有機基であって且つ加水分解により水酸基を形成する有機基
    R:炭素数2〜4のアルカンジオキシ基、又は炭素数2若しくは3のアルカン−1−オキシ−1−カルボキシル基
    、M:水素、アルカリ金属、アンモニウム、又はアミン
    m、n:1〜3の整数であって且つm+n=4を満足するもの)
  2. 式1で示されるチタン酸エステル化合物が、式1中のAが水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルカノイル基である場合のチタン酸エステル化合物である請求項1記載の合成繊維処理用油剤。
  3. 式2で示されるチタン酸エステル化合物が、式2中のRが炭素数2若しくは3のアルカンジオキシ基である場合のチタン酸エステル化合物である請求項1記載の合成繊維処理用油剤。
  4. 潤滑剤成分が潤滑油と界面活性剤との混合物である請求項1、2又は3記載の合成繊維処理用油剤。
  5. 請求項1、2、3又は4記載の合成繊維処理用油剤を合成繊維に対して0.1〜3重量%付着させることを特徴とする合成繊維処理方法。
  6. 合成繊維処理用油剤をその水性エマルジョンとして合成繊維に付着させる請求項5記載の合成繊維処理方法。
  7. 合成繊維がポリアミド繊維又はポリエステル繊維である請求項5又は6記載の合成繊維処理方法。
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