JP3569173B2 - 硬質表面洗浄剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属、ガラス、陶磁器、プラスチック等の硬質表面の洗浄に用いられる硬質表面洗浄剤組成物に関し、詳しくは、低温においても良好な洗浄力を有する硬質表面用アルカリ洗浄剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、金属、ガラス、陶磁器、プラスチックス等の硬質表面の洗浄には、アルカリ洗浄剤が幅広く用いられている。アルカリ洗浄剤が使用されている分野では、洗浄性を向上させるために、室温より洗浄温度を上げて洗浄を行うことが多い。例えば、製鉄所等において鋼板(鋼帯)を連続洗浄する場合、一般的には洗浄液温度は70〜80℃である。また、外食産業等において自動食器洗浄機を用いて、ガラス、陶磁器、プラスチックス等を洗浄する場合、洗浄温度は60〜70℃が一般的である。しかし以前より、洗浄コストの観点から、洗浄温度を低下させても、洗浄性が良好な洗浄剤が求められていた。
【0003】
これまで、低温洗浄能力に優れる硬質表面用のアルカリ洗浄剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を含む洗浄剤組成物(特開昭55−141577号、特開昭57−67699号、特開昭61−60892号、特公平4−18000号、特開平6−116768号)等が開示されている。特にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、特開昭55−141577号、特開昭61−60892号公報に、原料のアルコールにまず、エチレンオキシドを反応させてからプロピレンオキシドを反応させたタイプ、その逆に原料のアルコールにまずプロピレンオキシドを反応させてからエチレンオキシドを反応させたタイプが開示されているが、いずれの組成物も、低温で洗浄する能力は、充分とは言えない。
【0004】
また、硬質表面用のアルカリ洗浄剤は一般に濃縮製品として市販されており、洗浄時に水等の水溶性媒体により希釈して使用する。均一透明な濃縮製品を作成する際、高濃度のアルカリ存在下において、溶解しない非イオン界面活性剤を溶解させるために可溶化剤を用いている(特許第1679917号)。可溶化剤を用いることにより非イオン界面活性剤は可溶化されるものの、冬期に屋外貯蔵する際に析出する場合があり、−5℃以下の温度でも析出しない低温安定性の良好な製品が求められていた。
【0005】
本発明の課題は、金属、ガラス、陶磁器、プラスチックス等の硬質表面の洗浄において、低温(50℃以下)で、十分な洗浄性能を有し、更に均一透明な濃縮製品を作成した場合に、−5℃以下の温度でも析出物を生じない低温安定性の良好なアルカリ洗浄剤組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A) 下記一般式(I)〜(III) で表される非イオン界面活性剤の1種以上、及び (B)アルカリ剤を含有する硬質表面洗浄剤組成物を提供する。
【0007】
【化2】
【0008】
〔式中、R1〜R6はそれぞれ炭素数1〜22の直鎖のアルキル基を示し、R1とR2の炭素数の和、R3とR4の炭素数の和、及びR5とR6の炭素数の和はそれぞれ5〜23である。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。x1, x2, x3, x4, x5, x6, x7及びx8はエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、x1, x2, x3, x4, x5及びx8はそれぞれ1以上の数、x1+x2≧4、x3+x4≧4、x5+x6+x7+x8≧4、x6+x7≧1である。y1, y2, y3, y4及びy5はプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、0<y1<x1+x2、0<y2<x3+x4、y3+y5≧0.1 、y3≧0、y4≧0、y5≧0、y3+y4+y5<x5+x6+x7+x8である。また、[ ]で囲まれた部分はランダム付加、( )で囲まれた部分はブロック付加であることを示す。〕
また、本発明は、上記(A) 成分の非イオン界面活性剤及び(B) 成分のアルカリ剤に加えて、更に(C) キレート剤及び/又は(D) 可溶化剤を含有する硬質表面洗浄剤組成物を提供する。
【0009】
本発明の洗浄剤組成物は低温(50℃以下)で、十分な洗浄性能を有するが、本発明の洗浄剤組成物を用いて50℃より高い温度で洗浄した場合においても、先に示した公知の非イオン界面活性剤を含有する洗浄剤より優れた性能を示すことは言うまでもない。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)成分は、前記一般式(I)〜(III) で表されるが、一般式(I)〜(III) において、R1〜R6は炭素数1〜22の直鎖のアルキル基であり、R1とR2の炭素数の和、R3とR4の炭素数の和、R5とR6の炭素数の和は、洗浄性を向上させるために、それぞれ5〜23であり、好ましくは7〜19、更に好ましくは9〜17、特に好ましくは9〜15である。
【0011】
一般式(I)及び(III)で表される非イオン界面活性剤を得る際に用いられるエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加する前の原料の具体例として、日本触媒化学工業(株)製、商品名ソフタノール30、ソフタノール50、ソフタノール70、ソフタノール90、ソフタノールEP5035、ソフタノールEP7025、ソフタノールEP7045、ソフタノールEP9050等が挙げられる。また、一般式(II)で表される非イオン界面活性剤は、2級アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加して得ることができる。
【0012】
また、アルキレンオキサイドを付加する方法は、公知のアルコキシル化方法でよい。このアルコキシル化に用いられる触媒は酸触媒であっても塩基触媒であってもいずれでも良く、また、特開平7−227540号に記載のMgO−ZnO、MgO−SnO、MgO−TiO2 、MgO−SbO等の狭いアルキレンオキサイド付加分布(narrow range)を与える触媒、特開平1−164437号に記載の同様のMg系触媒のような選択的に狭いアルキレンオキサイド付加分布を与える触媒を用いても合成できる。これらの触媒は反応終了後中和されるか、又は吸着処理により除くことが製品の安定性上好ましい。アルカリ触媒に対する中和剤は酢酸、グリコール酸、乳酸、レブリン酸等の低分子量有機酸が好ましい。
【0013】
一般式(I)で表される非イオン界面活性剤において、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示すx1及びx2はそれぞれ1以上の数であり、x1とx2の和は4以上である。x1とx2の和が4以上であると、一般式(I)で表される非イオン界面活性剤と水との相溶性が良くなる。またx1とx2の和が20を越えても洗浄性能は変わらないが、排水処理や発泡等の問題が生じる可能性があるために、x1とx2の和は、好ましくは20以下、さらに好ましくは6〜15である。
【0014】
また、一般式(I)で表される非イオン界面活性剤のプロピレンオキサイドの平均付加モル数y1は0より大きく、エチレンオキサイドの平均付加モル数であるx1とx2の和より小さい数であり、好ましくは0.5〜6、さらに好ましくは1〜5である。y1がx1とx2の和より小さい数であると洗浄性、生分解性等が良くなるため好ましい。
【0015】
一般式(II)で表される非イオン界面活性剤において、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示すx3及びx4はそれぞれ1以上の数であり、x3とx4の和は4以上である。x3とx4の和が4以上であると、一般式(II)で表される非イオン界面活性剤と水との相溶性が良くなる。またx3とx4の和が20を越えても洗浄性能は変わらないが、排水処理や発泡等の問題が生じる可能性があるために、x3とx4の和は、好ましくは20以下、さらに好ましくは6〜15である。
【0016】
また、一般式(II)で表される非イオン界面活性剤のプロピレンオキサイドの平均付加モル数y2は0より大きく、エチレンオキサイドの平均付加モル数であるx3とx4の和より小さい数であり、好ましくは0.5〜6、さらに好ましくは1〜5である。y2がx3とx4の和より小さい数であると洗浄性、生分解性等が良くなるため好ましい。
【0017】
一般式(III) で表される非イオン界面活性剤において、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示すx5及びx8はそれぞれ1以上の数であり、x6とx7の和は1以上、x5とx6とx7とx8の和は4以上である。x5とx6とx7とx8の和が4以上であると、一般式(III) で表される非イオン界面活性剤と水との相溶性が良くなる。またx5とx6とx7とx8の和が20を越えても洗浄性能は変わらないが、排水処理や発泡等の問題が生じる可能性があるために、x5とx6とx7とx8の和は、好ましくは20以下、さらに好ましくは6〜15である。
【0018】
また、一般式(III) で表される非イオン界面活性剤のプロピレンオキサイドの平均付加モル数y3, y4, y5はそれぞれ0以上であり、y3+y5≧0.1である。y3とy4とy5の和はエチレンオキサイドの平均付加モル数であるx5とx6とx7とx8の和より小さい数であり、好ましくは0.5〜6、さらに好ましくは1〜5である。y3とy4とy5の和がx5とx6とx7とx8の和より小さい数であると洗浄性、生分解性等が良くなるため好ましい。
【0019】
非イオン界面活性剤は、上記した一般式(I)〜(III)から選ばれる2種以上のものを組み合わせてもよい。
【0020】
本発明の(B) 成分は、水溶性のアルカリ剤であればいずれのものも使用できる。具体例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム等の珪酸塩、リン酸三ナトリウム等のリン酸塩、炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸二カリウム等の炭酸塩、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩等が挙げられる。二種以上の水溶性アルカリ剤を組み合わせても良い。好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウムであり、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
【0021】
本発明の(C) 成分として、グリセリン酸、テトロン酸、ペントン酸、ヘキソン酸、ヘプトン酸等のアルドン酸類のアルカリ金属塩もしくは低級アミン塩、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、テトラエチレンテトラミン六酢酸等のアミノカルボン酸類のアルカリ金属塩もしくは低級アミン塩、クエン酸、リンゴ酸等のオキシカルボン酸類のアルカリ金属塩もしくは低級アミン塩、アミノトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸等のホスホン酸類のアルカリ金属塩もしくは低級アミン塩やエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられ、好ましくは、グルコン酸、グルコヘプトン酸、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、リンゴ酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸のアルカリ金属塩もしくは低級アミン塩であり、特に好ましくは、グルコン酸ナトリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸ナトリウムである。
【0022】
(C) 成分のキレート剤を含有することによって、一般式(I)〜(III) で表される特定の非イオン界面活性剤の1種以上との組み合わせで、洗浄性能が相乗的に向上する利点がある。
【0023】
本発明の(D) 成分とは、非イオン界面活性剤を高濃度のアルカリ存在下で可溶化させて、透明な溶液とする成分であり、例えば、下記一般式(IV)〜(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
R7−X−(CH2)mCOOM1 (IV)
R8COOM2 (V)
R9SO3M3 (VI)
〔式中、R7, R8及びR9はそれぞれ炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜18の芳香族炭化水素基を示し、Xは基>NH、>N(CH2)nCOOM1 又は>CHCOOM1 を示し、M1, M2及びM3はそれぞれ水素原子、アルカリ金属、炭素数1〜4の脂肪族アミン、アンモニア又はアルカノールアミンを示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示す。〕
一般式(IV)で表される化合物として、例えば、炭素数6〜18のアルケニルコハク酸及びその塩、又は下記式で表される化合物が挙げられる。
【0025】
【化3】
【0026】
一般式(V)で表される化合物として、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、酪酸、吉草酸、イソ酪酸、2−エチルヘキサン酸及びその塩が挙げられる。一般式(VI)で表される化合物として、一般式(V)で表される脂肪酸のカルボキシル基をスルホン酸基に変更したものが挙げられる。
【0027】
一般式(IV)〜(VI)におけるM1,M2及びM3の具体例として、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、他の炭素数2〜10のアルカノールアミン、カリウム、ナトリウム、水素原子等が挙げられる。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物に上記のような可溶化剤を用いた場合、−5℃以下の低温時の安定性に優れ、冬期における低温安定性の課題を解決できる。本発明に係わる非イオン界面活性剤の代わりにポリオキシアルキレン直鎖アルキルエーテルを用いた場合は、上記のような可溶化剤を用いても−5℃以下で析出物が発生し、冬期における低温安定性の課題が解決できない。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物中の(A) 成分の含有量は0.01〜20重量%、(B) 成分の含有量は 0.1〜50重量%が好ましい。また(C)成分を配合する場合には、その含有量は0.01〜20重量%が好ましく、(D)成分を配合する場合には、その含有量は0.01〜40重量%が好ましい。
【0030】
また、本発明の洗浄剤組成物を洗浄にそのまま用いる場合には、(A) 成分の配合量は、0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜3重量%が更に好ましい。0.01重量%以上配合することにより十分な洗浄性能が得られ、5重量%より多く配合しても洗浄性能は飽和して、経済的に不利である。(B) 成分の配合量は、 0.1〜10重量%が好ましく、 0.5〜8重量%が更に好ましい。0.1 重量%以上配合することにより十分な洗浄性能が得られ、10重量%より多く配合しても洗浄性能は飽和して、経済的に不利である。(C) 成分の配合量は、洗浄性及び経済性の観点から0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜2重量%が更に好ましい。(D) 成分の配合量は、低温安定性及び経済性の観点から0.01〜3重量%が好ましく、0.05〜1重量%が更に好ましい。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物には、洗浄性を向上させる目的で、洗浄剤組成物に一般的に使用されている、上記一般式(I)〜(III) で表される界面活性剤以外の非イオン界面活性剤や、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を、COD及びコストの上昇を考慮した上で配合することも可能である。
【0032】
また、硬質表面用の洗浄剤は濃縮製品として市販され、洗浄時に水等の水溶性媒体により希釈し、使用されるのが一般的である。本発明の組成物は必要により、洗浄剤の外観を白色懸濁状態にするスラリー化剤を用いて製造した濃縮洗浄剤組成物の形態とすることもできる。通常、スラリー化剤を用いる場合、(D)成分は使用しない。
【0033】
本発明で用いられるスラリー化剤として一般式(VII) で表される水溶性高分子カルボン酸、あるいはナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジスルホン酸もしくはフタル酸及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアミン塩が挙げられる。
【0034】
【化4】
【0035】
〔式中、R10 〜R15 は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシル基、COOM、OHのいずれかであり、すべて同じでもそれぞれ異なっていても良い。M は水素原子、アルカリ金属、炭素数1〜4のアルキルアミン、炭素数1〜6のアルカノールアミンのいずれかである。一般式(VII) の両末端は特に限定されないが、水素原子、OH、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシル基又はSO3M(M は前記の意味を示す)等が挙げられ、やはり同じでも異なっていても良い。p及びqは、それぞれかっこ内のモノマーのモル数を示し、pは0でも構わない。pが0の場合は、モル数をqで表すモノマーのホモポリマーとなる。pとqの共重合モル比p/qは0/10〜10/1であり、重量平均分子量(Mw)は 1,000〜100,000、好ましくは 3,000〜50,000、より好ましくは5,000〜20,000である。重合形態はブロックでもランダムでもよい。〕
一般式(VII) で表される水溶性高分子カルボン酸の具体例として、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸−マレイン酸共重合体、α−ヒドロキシアクリル酸ホモポリマー、C5オレフィン−マレイン酸共重合体、イソブチレン−マレイン酸共重合体等、及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアミン塩等が挙げられる。好ましくはアクリル酸ホモポリマー、アクリル酸−マレイン酸共重合体である。具体的な製品名として、花王(株)製ポイズ540 、ポイズ530、ポイズ521、ポイズ520 、日本パーオキサイド(株)製ペールプラック250 、ぺールプラック1200、ペールプラック5000、日本ゼオン(株)製クインフロー540 、クインフロー542 、クインフロー543 、クインフロー560 、クインフロー640 、クインフロー750、東亞合成(株)製アロンT−40(M)、(株)クラレ製イソバン06、イソバン04、イソバン600 、(株)日本触媒製アクアリックDL100 等が挙げられ、2種以上の水溶性高分子カルボン酸類を組み合わせても良い。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物を濃縮洗浄剤の形態で提供する場合には、その組成は特に限定されないが、(A) 成分は好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%であり、(B) 成分は好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは15〜45重量%であり、また、(C) 成分を含有させる場合は0.1〜20重量%が好ましく、 0.5〜10重量%がさらに好ましい。(D)成分を含有させる場合は0.05〜40重量%が好ましく、0.1〜10重量%が更に好ましい。(D)成分の代わりにスラリー化剤を含有させる場合は、好ましくは0.05〜40重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。
【0037】
また、本発明の洗浄剤組成物には、洗浄の工程で発生する泡を抑制する消泡剤、例えば、シリコン系、高級アルコール系、高級脂肪酸及びその塩、プルロニック型コポリマー、テトラニック型コポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を配合することもできる。
【0038】
本発明の硬質表面洗浄剤組成物は、金属、ガラス、陶磁器、プラスチックス等を低温で洗浄する際に有効であり、特に製鉄所等における鋼板の連続洗浄、すなわち浸漬洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、電解洗浄等においてその効果を発揮する。
【0039】
【実施例】
例中の%は特記しない限り重量基準である。また、非イオン界面活性剤の平均分子量は以下の方法により測定した。即ち、合成した非イオン界面活性剤の水酸基価を JIS K 0070 に従って中和滴定法で求め、得られた水酸基価から次の式に従って平均分子量を求めた。
【0040】
【数1】
【0041】
合成例1
エチレンオキサイド用とプロピレンオキサイド用の2つの計量槽の付いた5リットルの回転攪拌式オートクレーブ中に平均炭素数が12の2級アルコールにエチレンオキサイドを3モル付加させたエトキシレート化合物(「商品名ソフタノール30、日本触媒化学工業(株)製」)を1012g、水酸化カリウムを3.0 g仕込み、窒素置換を行った後、110 ℃に昇温し、5.33kPa で1時間脱水を行った。次に150 ℃に昇温し、エチレンオキサイドを343kPaの圧力で267 gオートクレーブ中に導入し、圧力が低下して一定になるまで反応させた後、120 ℃に冷却してプロピレンオキサイド352 gをオートクレーブ中に343kPaの圧力で導入し、エチレンオキサイドの場合と同様に圧力が低下し、一定になるまで反応させた。その後、再び150 ℃に昇温し、エチレンオキサイドを668 g導入し、圧力が低下して一定になるまで反応させた。反応終了後、温度を低下させて合成したサンプルを抜き出し、触媒を酢酸で中和して約2.3kg の非イオン界面活性剤(平均分子量:760 )を得た。得られた非イオン界面活性剤は、一般式 (I) において、R1及びR2が炭素数6の直鎖アルキル基、x1が5、x2が5、y1が2である化合物であった。
【0042】
合成例2
合成例1と同じ装置を用いて、ソフタノール30を1012g、水酸化カリウムを3.0 g仕込み、合成例1と同様の手順で脱水、昇温後エチレンオキサイドを267 g仕込み反応を行った。エチレンオキサイドが系内に全て導入された時点ですぐにプロピレンオキサイドを 352g導入し反応を行った。プロピレンオキサイド導入直後、再びエチレンオキサイドに切り替え 668gを導入し、圧力が低下し一定となるまで反応させた。反応終了後、合成例1と同様の操作を行い約2.3kg の非イオン界面活性剤を得た。得られた非イオン界面活性剤は、一般式(III) において、R5及びR6が炭素数6の直鎖アルキル基、x5が3、x6が6、x7が0、x8が1、y3が2、y4が0、y5が0である化合物であった。
【0043】
合成例3
合成例1と同じ装置を用いて、ソフタノール30を1012g、水酸化カリウム3.0gを仕込み、合成例1と同様の手順で脱水、昇温後エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド混合物(モル比=3/2) 753gをオートクレーブ中に導入し、圧力が一定になるまで反応させた後、エチレンオキサイド534 gを反応系中に導入し、圧力が一定になるまで反応させた。反応終了後、合成例1と同様の操作を行い、2.3kg の非イオン界面活性剤を得た。得られた非イオン界面活性剤は、一般式(III) において、R5及びR6が炭素数6の直鎖アルキル基、x5が3、x6が3、x7が0、x8が4、y3が2、y4が0、y5が0である化合物であった。
【0044】
実施例1〜17及び比較例1〜9
表1及び表2に示す組成を有する本発明及び比較の洗浄剤組成物(バランス量は脱イオン水である)を調製し、下記方法により、鋼板の洗浄試験を行い、残存付着油分量を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0045】
<鋼板洗浄試験>
(1) 被洗浄鋼板
被洗浄鋼板はすべて牛脂系圧延油で冷間圧延された鋼板を25mm×50mmの大きさに切断して用いた。
(2) 洗浄試験手順
洗浄試験はすべて以下の手順で行った。即ち、洗浄剤組成物に被洗浄鋼板を1秒浸漬し、その後続けて電流密度10A/dm2 で鋼板電位を負から正にそれぞれ 0.5秒ずつ一度切り替えて電解洗浄し、水でリンスした後、乾燥した。なお、洗浄温度は特に示さない限り40℃で行った。
(3) 残存付着油分量測定方法
洗浄試験後の鋼板表面付着油分量は、すべて鋼板付着油分量測定装置EMIA−111((株)堀場製作所製)を用いて測定した。測定値は5回測定の平均値である。洗浄性の判断基準としては、残存付着油分量が20mg/m2以上は不良、10mg/m2以上20mg/m2未満は良、10mg/m2未満は優とした。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1及び表2から明らかなように、非イオン界面活性剤を含有しない洗浄剤組成物や、本発明に係わる非イオン界面活性剤以外の非イオン界面活性剤を含有する洗浄剤組成物は洗浄性が劣っているのに対し、本発明に係わる非イオン界面活性剤を含有した洗浄剤組成物は残存付着油分量が少なく良好な洗浄性能を示している。
【0049】
実施例18〜22
表3に示すように非イオン界面活性剤の配合量を種々変化させた各種組成を有する洗浄剤組成物(バランス量は脱イオン水である)を調製し、実施例1と同様に鋼板の洗浄試験を行い、残存付着油分量を測定した。結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
表3から明らかなように、非イオン界面活性剤の配合量が0.01%以上で良好な洗浄性を示し、また、5.0 %以上では洗浄性の飽和が見られる。
【0052】
実施例23〜37
表4に示すようにアルカリ剤及びキレート剤の配合量を種々変化させた各種組成を有する洗浄剤組成物(バランス量は脱イオン水である)を調製し、実施例1と同様に鋼板の洗浄試験を行い、残存付着油分量を測定した。結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
表4から明らかなように、アルカリ剤の濃度が 0.1%以上では良好な洗浄性を示した。また、キレート剤濃度が低下すると洗浄性が低下傾向を示した。
【0055】
実施例38〜52
表5に示すような組成を有する濃縮洗浄剤組成物(バランス量は脱イオン水である)を調製し、水により10〜20倍に希釈した後、実施例1と同様に鋼板の洗浄試験を行い、残存付着油分量を測定した。結果を表5に示す。
【0056】
【表5】
【0057】
注)
*1:水溶性高分子カルボン酸1
下記式で表されるMw5000の化合物
【0058】
【化5】
【0059】
*2:水溶性高分子カルボン酸2
下記式で表されるp/q=2/8 ,Mw5000の化合物
【0060】
【化6】
【0061】
表5から明らかなように、濃縮洗浄剤組成物を水により10〜20倍に希釈しても良好な洗浄性能を示すことがわかる。
【0062】
実施例53〜54
表6に示す組成を有する本発明の洗浄剤組成物(バランス量は脱イオン水である)を調製し、実施例1と同様に鋼板の洗浄試験を行い、残存付着油分量を測定した。結果を表6に示す。
【0063】
【表6】
【0064】
表6から明らかなように本発明に係わる非イオン界面活性剤を含有する洗浄剤組成物は良好な洗浄性能を示すことがわかる。
【0065】
実施例55及び比較例10
表7に示す組成を有する本発明及び比較の洗浄剤組成物(バランス量は脱イオン水である)を調製し、−5℃で1ヶ月の静置保存後の製品外観を比較した。結果を表7に示す。
【0066】
【表7】
【0067】
表7から明らかなように本発明に係わる非イオン界面活性剤を含有する洗浄剤組成物は、−5℃における析出物の発生が認められず、低温時の安定性に優れているのに対し、ポリオキシアルキレン直鎖アルキルエーテルを含有する比較の洗浄剤組成物は、析出物の発生が認められた。
【0068】
【発明の効果】
本発明の硬質表面洗浄剤組成物は、低温で優れた脱脂効果を有するとともに、洗浄温度を低下させることができる。更に可溶化剤を配合した均一透明な本発明の濃縮洗浄剤組成物は、−5℃以下の温度においても析出物を生じず、低温安定性に優れている。
Claims (4)
- (A) 下記一般式(I)〜(III) で表される非イオン界面活性剤の1種以上、(B) アルカリ剤、及び (D) 下記一般式 (IV) 〜 (VI) で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の可溶化剤を含有する硬質表面洗浄剤組成物。
R 7 − X − (CH 2 ) m COOM 1 (IV)
R 8 COOM 2 (V)
R 9 SO 3 M 3 (VI)
〔式中、 R 7 , R 8 及び R 9 はそれぞれ炭素数3〜 22 の飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜 18 の芳香族炭化水素基を示し、 X は基> NH 、> N(CH 2 ) n COOM 1 又は> CHCOOM 1 を示し、 M 1 , M 2 及び M 3 はそれぞれ水素原子、アルカリ金属、炭素数1〜4の脂肪族アミン、アンモニア又はアルカノールアミンを示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示す。〕 - さらに、(C) キレート剤を含有する請求項1記載の硬質表面洗浄剤組成物。
- 組成物中の(A) 成分の非イオン界面活性剤の含有量が0.01〜20重量%、(B) 成分のアルカリ剤の含有量が 0.1〜50重量%である請求項1又は2記載の硬質表面洗浄剤組成物。
- 鋼板の洗浄に用いられる請求項1〜3のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
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