JP3568693B2 - 水性接着剤およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、短時間内に高い接着力を発現しうる初期接着性に優れた水性接着剤およびその製造方法、並びに前記水性接着剤を用いた接着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
接着剤や粘着剤には、有機溶媒を媒体とする溶液型接着剤が広く使用されている。しかし、溶液型接着剤は大気汚染や火災の恐れがあるばかりでなく、労働安全衛生上や資源の立場からも問題が多い。従って、他の系への転換、例えば、接着剤や粘着剤の水性エマルジョン化が積極的に進められている。
水性エマルジョン型接着剤や粘着剤では、溶液型接着剤の前記課題が解消されるため広範囲に利用されているが、媒体が水であるため乾燥性が劣り、初期接着力の発現が極めて遅いという致命的な問題がある。このような乾燥性や初期接着性を改善するために、エマルジョン中の固形分濃度を高めたり、有機溶剤を併用したり、熱を加えるような方法が提案されている。しかし、これらの方法は、未だ効果が不十分であったり、特別な設備を必要とするため、いずれも満足できる方法とはいえない。
【0003】
特公昭56−9953号公報には、ゴムラテックスを主成分とする水性接着剤と造膜助剤とを組み合わせた接着剤組成物が開示され、特開昭56−59874号公報には、エマルジョン型水性接着剤と接着促進剤とを組合せて二液型接着剤を構成し、初期接着性を発現する接着剤組成物が開示されている。さらに、特開昭59−33372号公報には、不飽和カルボン酸を含む水性高分子エマルジョンと多価金属塩との組み合わせにより二液型接着剤を構成し、初期接着性を発現する方法が提案されている。
これらの方法は、エマルジョンの凝集特性、例えば、金属塩の水溶液などの添加により塩析が生じたり、有機溶剤や反対荷電のイオンの添加によりエマルジョンが凝集することに着目している。しかし、実際にはエマルジョンの種類等によって状況は著しく異なる。例えば、前記方法に使用されるエマルジョンによっては、全く塩析や凝集が生じない場合があるとともに、塩析や凝集が生じたとしても、被着体に対する接着性が極度に低下し、接着機能を果たせない場合がある。また、乾燥性が低下し、返って初期接着性が大幅に低下する場合もある。さらに、接着促進剤や多価金属塩を用いる方法では、エマルジョンと、接着促進剤や多価金属塩とをそれぞれ別に被着体に塗布する必要があるため、作業性を低下させる。そのため、接着作業効率が低下し、高速接着できない場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、初期接着性の高い水性接着剤およびその製造方法、並びに接着方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、安定性が高いだけでなく、初期接着性が大きく改善され、かつ被着体を高い接着力で効率よく接着できる水性接着剤およびその製造方法、並びに接着方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、初期接着力の発現が極めて速く、接着作業性を向上できるとともに、特別な設備を用いることなく塗布作業性を改善できる水性接着剤およびその製造方法、並びに接着方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、ヒドロキシル基を有する重合体を含む水性エマルジョンに特定の多官能性化合物を添加すると、極めて短時間内に驚くほど大きな初期接着力が発現することを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の水性接着剤は、ヒドロキシル基を有する重合体を含む水性エマルジョン(以下、水性高分子エマルジョンやエマルジョンと称する場合がある)と、水溶性のチタン酸素酸塩、水溶性ポリアゾ化合物および水溶性ポリアルデヒド化合物から選択された少なくとも一種の多官能性化合物と、可塑剤とで構成されている。この水性接着剤において、水性エマルジョンは、ヒドロキシル基を有する水溶性重合体(以下、水溶性高分子と称する場合がある)を乳化剤とし、酢酸ビニル系重合体およびアクリル系重合体から選択された少なくとも1種を重合体粒子として含む水性エマルジョンであってもよい。また、( i )乳化剤としての前記水溶性重合体の使用量が、単量体の総量100重量部に対して0.5〜15重量部程度、( ii )前記水溶性重合体の割合が前記重合体粒子100重量部に対して1〜30重量部程度、( iii )前記重合体粒子が平均粒径0.01〜3μm程度であり、かつ前記重合体粒子全体の50〜95体積%が粒径0.5〜3μm程度、( iv )前記可塑剤の割合が、前記水性エマルジョンの樹脂成分100重量部に対して1〜50重量部程度であってもよい。また、多官能性化合物には、例えば、硫酸チタン、コンゴーレッドおよびグルタルアルデヒドなどが含まれる。多官能性化合物の割合は、例えば、ヒドロキシル基含有重合体100重量部に対して0.001〜50重量部程度である。このような水性接着剤は、接着力測定機(日本たばこ産業(株)製,ASM−1)でクラフト紙を基材として、オープンタイム0.1秒、圧締時間0.1秒の後、剪断速度300mm/分で測定したとき、少くとも0.04kgの最大接着力を示す。
本発明の方法では、ヒドロキシル基を有する水溶性重合体を乳化剤とし、酢酸ビニル系重合体およびアクリル系重合体から選択された少なくとも1種を重合体粒子として含む水性エマルジョンと、水溶性のチタン酸素酸塩、水溶性ポリアゾ化合物および水溶性ポリアルデヒド化合物から選択された少なくとも一種の多官能性化合物と、可塑剤とを混合することにより水性接着剤を製造する。
本発明の方法には、前記水性接着剤を用い、被着体を接着させる方法も含まれる。この方法において、被着体は速度20〜250m/分程度で接着させることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の水性接着剤は、ヒドロキシル基を有する重合体を含む水性高分子エマルジョンと、特定の多官能性化合物とで構成されている。水性高分子エマルジョンにおいて、ヒドロキシル基を有する重合体は、エマルジョンの重合体粒子および高分子乳化剤又は保護コロイドのうち少くともいずれか一方を構成してもよい。好ましい態様では、ヒドロキシル基を有する重合体は、水性高分子エマルジョンの高分子乳化剤又は保護コロイドとして使用される。このような構成の水性接着剤は、分散安定性を損うことなく、水性高分子エマルジョン単独に比べて初期接着性を大きく改善できる。
[水性高分子エマルジョン]
水性接着剤は水性高分子エマルジョンを含むエマルジョン型接着剤を構成しており、前記高分子エマルジョンの樹脂の種類は、接着能を有する限り特に限定されず、慣用の樹脂が使用できる。高分子エマルジョンとしては、例えば、酢酸ビニル系重合体[ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル系共重合体]、アクリル系重合体[例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体−(メタ)アクリル酸共重合体など]、スチレン系重合体[例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体など]、オレフィン系重合体[例えば、ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体など]、塩化ビニル系重合体[例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体など]、塩化ビニリデン系共重合体[例えば、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体など]、ゴム質重合体[例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、マレイン酸−イソプレン共重合体ナトリウム塩など]、ポリウレタンなどを主成分とするエマルジョンが含まれる。これらの高分子エマルジョンは単独で又は二種以上組合せて使用できる。
好ましい高分子エマルジョンには、酢酸ビニル系重合体、アクリル系重合体を含む水性エマルジョンが含まれる。
より詳細には、酢酸ビニル系重合体には、▲1▼酢酸ビニル単独重合体、▲2▼酢酸ビニルと共重合性ビニル単量体との共重合体が含まれる。共重合性ビニル単量体には、例えば、オレフィン(エチレンなど)、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸C1−10アルキルエステル、これらに対応するメタクリル酸エステルなど)、酢酸ビニル以外のビニルエステル(例えば、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル(VeoVa)などのC3−16脂肪酸ビニルエステルなど)、マレイン酸エステル又はフマル酸エステル(例えば、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸2−エチルヘキシルなどのマレイン酸ジC1−10アルキルエステル、およびこれらに対応するフマル酸エステルなど)などが例示できる。これらの共重合性ビニル単量体は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
酢酸ビニル系重合体の具体例としては、酢酸ビニル単独重合体、酢酸ビニルと前記共重合性ビニル単量体から選択された少くとも一種の単量体との共重合体[例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−ビニルエステル共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル(又はフマル酸エステル)共重合体など]などが挙げられる。好ましい酢酸ビニル系重合体エマルジョンはポリビニルアルコールを乳化剤として含む場合が多い。
【0007】
アクリル系重合体には、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体が含まれる。(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステルなど]、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸グリシジルなど]などが挙げられる。これらの単量体は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
共重合性単量体には、例えば、スチレン系単量体(スチレンなど)、ビニルエステル(酢酸ビニルや前記脂肪酸ビニルエステルなど)、マレイン酸ジアルキルエステルやフマル酸ジアルキルエステルなどが含まれる。
アクリル系重合体は、アクリル酸C2−10アルキルエステル単位を含む単独又は共重合体[例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル単独重合体、メタクリル酸メチル(及び/又はスチレン)−アクリル酸C2−10アルキルエステル共重合体など]である場合が多い。
【0008】
エマルジョンの重合体粒子にヒドロキシル基を導入するためには、前記単量体とヒドロキシル基含有単量体を共重合すればよい。ヒドロキシル基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ−C2−10アルキル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのヒドロキシル基含有単量体は単独で又は二種以上組合せて使用できる。好ましいヒドロキシル基含有単量体は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ−C2−6 アルキル(メタ)アクリレートである。
ヒドロキシル基含有単量体の使用量は、例えば、単量体全体の0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%程度である。
【0009】
高分子エマルジョンにおいて、トボルスキ(Tobolsky)の計算式に従って算出される樹脂粒子のガラス転移温度は、例えば、−30℃〜35℃、好ましくは−20℃〜30℃程度である場合が多い。また、樹脂粒子の平均粒径は接着性を損わない限り特に制限されず、例えば、0.001〜5μm、好ましくは0.01〜4μm(例えば、2〜3μm程度)程度である。高分子エマルジョンにおいて、樹脂粒子の粒径範囲0.001〜10μm(好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.1〜5μm、特に0.5〜5μm)程度、平均粒径0.01〜3μm(好ましくは0.05〜3μm、さらに好ましくは0.1〜3μm、特に1〜3μm程度)であり、粒径0.5〜3μmの重合体粒子が全体の50〜95体積%(好ましくは60〜90体積%)を占める場合には、高い初期接着性を発現できる。高分子エマルジョンの固形分濃度は通常30〜60重量%程度である。
なお、高分子エマルジョンは、慣用の方法、例えば、水系での重合性単量体の乳化重合により調製してもよく重合体の乳化分散により調製してもよい。
【0010】
ヒドロキシル基を有する重合体(水溶性高分子)としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体[例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテルなど]、ポリオキシアルキレングリコールなどが挙げられる。これらの水溶性高分子は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
好ましい水溶性高分子には、ポリビニルアルコールが含まれる。ポリビニルアルコールとしては、ケン化度80モル%以上(例えば、82〜98モル%、好ましくは83〜95モル%、さらに好ましくは85〜92モル%程度)、重合度500〜3000程度のポリビニルアルコールが使用できる。
【0011】
ヒドロキシル基を有する水溶性高分子は、乳化重合や乳化の際に乳化剤又は保護コロイドとして用いてもよく、エマルジョンを調製した後で添加してもよい。ヒドロキシル基を有する水溶性高分子の使用量は、例えば、水性高分子エマルジョンの重合体粒子(又は単量体の総量)100重量部に対して1〜30重量部(例えば、3〜27重量部)、好ましくは5〜20重量部、さらに好ましくは7〜15重量部程度である。
なお、ヒドロキシル基を有する水溶性高分子を乳化重合や乳化の際の乳化剤又は保護コロイドとして用いる場合、水溶性高分子の使用量は、例えば、単量体の総量100重量部に対して0.5〜15重量部、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは3〜8重量部程度である。
【0012】
乳化重合や乳化には、前記水溶性高分子とともに又は水溶性高分子と併用することなく、界面活性剤を使用してもよい。界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤や両性界面活性剤を使用してもよいが、アニオン系界面活性剤及び/又はノニオン系界面活性剤を使用する場合が多い。アニオン系界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸酸塩(オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、オイレン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムなどのC8−20脂肪酸塩など)、アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどのC8−20アルキル硫酸塩など)、高級アルコール硫酸エステル塩(ラウリルアルコール硫酸エステル塩、オレイルアルコール硫酸エステル塩、ステアリルアルコール硫酸エステル塩などのC8−20アルコール硫酸エステル塩など)、高級アルキルポリエチレングリコール硫酸エステル塩、α−オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩(スルホコハク酸塩など)などが例示できる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール型(高級アルコール−エチレンオキサイド付加物、アルキルフェノール−エチレンオキサイド付加物、脂肪酸−エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステル−エチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコール−エチレンオキサイド付加物など)、多価アルコール型(グリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタン、ショ糖などの多価アルコールの脂肪酸エステルなど)などが挙げられる。これらの界面活性剤は単独で又は二種以上組合せて使用できる。好ましい界面活性剤には、アニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤から選択された少くとも一種の界面活性剤が含まれる。アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤は併用することにより分散安定性を向上できる場合がある。
【0013】
界面活性剤の使用量は、例えば、水性高分子エマルジョンの重合体粒子(又は単量体の総量)100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2.5重量部程度である。
界面活性剤は、前記高分子エマルジョンに予め含有させてもよく、水性接着剤の調製に際して添加してもよい。
[多官能性化合物]
初期接着性を改善するための多官能性化合物は、水溶性のチタン酸素酸塩,水溶性ポリアゾ化合物および水溶性多価アルデヒド化合物から選択される。これらの水溶性化合物は単独で又は二種以上組合せて使用してもよい。
水溶性のチタン酸素酸塩としては、例えば、硫酸チタン(硫酸第1チタンおよび硫酸第2チタン)、リン酸チタンなどの無機酸塩などが挙げられる。好ましいチタン酸素酸塩は、硫酸チタンである。
【0014】
水溶性ポリアゾ化合物には、複数のアゾ基を有する化合物、例えば、コンゴーレッド、ジアミングリーンB(Diamine Green B,カセラ社),ベンゾブラウンD3G ex.(Benzo Brown D3G ex.,バイエル社),シリアススプラグレイGG(Sirius Supra Gray GG,バイエル社),シリアスイエローGG(Sirius Yellow GG,バイエル社),シリアスレッドF3B(Sirius Red F3B,バイエル社),シリアススプラブラウンG(Sirius Supra Brown G,バイエル社),ジフェニルファーストブルーグリーンBL(Diphenyl Fast Blue Green BL),トリアジン環を含むポリアゾ化合物[クロランチンファーストグリーンBLL(Chlorantine Fast Green BLL,チバ社)など],ダイレクトデープブラックE ex.(Direct Deep Black E ex.),コロンビアブラックFF(Columbia Black FF)などが含まれる。好ましい水溶性ポリアゾ化合物には、コンゴーレッドなどが含まれる。水溶性ポリアゾ化合物は単独で又は二種以上組合せて使用できる。また、水溶性ポリアゾ化合物を添加することにより、水性接着剤に所定の着色を付与してもよい。
【0015】
水溶性多価アルデヒド化合物、例えば、グリオキサール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド(グルタルジアルデヒド)などのC2−10アルキレンジアルデヒドなどが含まれる。好ましい水溶性多価アルデヒド化合物には、グルタルアルデヒドなどが含まれる。
【0016】
多官能性化合物の使用量は、初期接着性を改善できるともに水性接着剤の安定性などを損わない範囲で、水性接着剤の粘度などに応じて選択でき、例えば、固形分換算で、ヒドロキシル基含有重合体100重量部に対して0.001〜50重量部、好ましくは0.01〜25重量部(例えば、0.1〜20重量部)、さらに好ましくは0.1〜15重量部程度である。
前記多官能性化合物は、水溶液の形態で水性高分子エマルジョンに添加するのが好ましく、特に固形分0.01〜50重量%の水溶液として使用するのが好ましい。
【0017】
[その他の成分]
本発明の水性接着剤は、所望により、タッキファイヤー(例えば、ロジン、ロジンエステル、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂およびこれらの水素添加物など)、可塑剤[フタル酸エステル(ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジ2−エチルヘキシルフタレートなど)、長鎖脂肪族多価カルボン酸エステル(ジブチルアペート、ジ2−エチルヘキシルアペート、ジブチルセバテートなど)、リン酸誘導体(トリフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェートなど)、ポリエステルなど]、造膜助剤(エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類やメチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類など)、有機溶剤(アルコール、エステル、ケトン、エーテル、炭化水素類から選択された水溶性又は非水溶性溶媒)、充填剤、着色剤、防腐剤、消泡剤などを含んでいてもよい。
【0018】
なお、これらの成分の使用量は、水性高分子エマルジョンの種類に応じて、造膜性、水性接着剤の初期接着性や安定性などを損わない範囲で選択できる。例えば、水性高分子エマルジョンがポリ酢酸ビニルエマルジョンなどのようにガラス転移温度が高く室温での成膜性が小さいエマルジョンである場合、前記可塑剤の使用量は、水性高分子エマルジョンの樹脂成分100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部程度である。また、造膜助剤の使用量は、水性高分子エマルジョンの樹脂成分100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは5〜30重量部程度であってもよい。
本発明の水性接着剤の固形分濃度は、初期接着性を損わない範囲で選択でき、例えば、固形分濃度15〜75重量%、好ましくは30〜65重量%、さらに好ましくは40〜50重量%程度である。
【0019】
このような水性接着剤は、クラフト紙を基材として、接着力測定機(日本たばこ産業(株)製,ASM−1)を用い、温度20℃、相対湿度65%RH、オープンタイム0.1秒、圧締時間0.1秒の後、剪断速度300mm/分で測定したとき、最大接着力が少くとも0.04kg、好ましくは0.05〜0.5kg(例えば、0.06〜0.3kg)、さらに好ましくは0.07〜0.5kg程度を示す。
【0020】
本発明の水性接着剤は、水性高分子エマルジョンと多官能性化合物とを混合することにより調製することができる。
本発明の水性接着剤は初期接着性が極めて短時間内に発現するとともに接着強度が大きい。そのため、本発明の方法では、前記水性接着剤を用い、被着体を接着させる。特に、本発明の方法では、前記水性接着剤を用い、被着体を高速(例えば、20〜250m/分、好ましくは30〜200m/分、さらに好ましくは50〜200m/分程度)で接着させるのに有用である。被着体の接着は慣用の方法、例えば、少くとも一方の被着体に水性接着剤を塗布し、被着体同士を接触させて接合することにより行うことができる。被着体に対する水性接着剤の塗布量は、水性接着剤の固形分濃度、被着体の種類などに応じて選択でき、例えば、1〜100g/m2 、好ましくは5〜70g/m2 、さらに好ましくは10〜60g/m2 程度の範囲から選択できる。水性接着剤の塗布は、手作業の他、慣用の塗布機(例えば、ロールコーター,グラビアコーターなど)を用いて行うことができ、接着に際しては、必要に応じて加熱し、接着性の発現を促進してもよい。
【0021】
本発明の水性接着剤は、種々の被着体(例えば、紙、木材、プラスチック、金属など)の接着に有用である。特に、極めて短時間内に初期接着力が発現し、しかも初期接着力が極めて高いため、種々の多孔質被着体、例えば、段ボール、板紙、クラフト紙などの種々の紙質材料で構成された被着体を高速で接着させるのに好適である。
【0022】
【発明の効果】
本発明の水性接着剤は、ヒドロキシル基を有する重合体を含む水性高分子エマルジョンと、特定の水溶性多官能性化合物とを組合せているため、極めて短時間内に高い初期接着性が発現する。また、安定性が高いだけでなく、初期接着性が高く、被着体を極めて高い接着力で効率よく接着できる。さらに、初期接着力の発現が極めて速いので、接着作業性を向上できるとともに、特別な設備を用いることなく慣用の装置を用い塗布作業性を改善できる。
【0023】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
水性高分子エマルジョンの調製例
温度計、撹拌機、冷却器、滴下漏斗を備えた4つ口フラスコに、常温で脱イオン水43.06重量部、ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%、重合度1700)1.6重量部を仕込み、80℃2時間撹拌し溶解した。
その後70℃まで冷却し、酢酸ビニル5.34重量部、過硫酸カリウム0.01重量部を添加し、80℃に昇温して後、酢酸ビニル48.06重量部と、脱イオン水3重量部および過硫酸カリウム0.09重量部の水溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃に維持して2時間重合し、室温に冷却することにより、固形分濃度54.8重量%、粘度9000cps(回転粘度計、ローターNo.4,回転数30rpm,温度30℃)、pH4.6のエマルジョンを得た。
【0024】
実施例1
調製例で得られたエマルジョン100重量部、20重量%ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%、重合度1700)21.2重量部、3.5重量%コンゴーレッド水溶液18.5重量部、ジブチルフタレート10.8重量部、調整水9重量部を混合し、水性接着剤を調製した。
【0025】
実施例2
調製例で得られたエマルジョン100重量部、20重量%ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%、重合度1700)14.2重量部、0.0445重量%グルタルアルデヒド水溶液18.4重量部、ジブチルフタレート10.8重量部、調整水7.1重量部、1%硫酸水溶液9重量部を混合し、水性接着剤を調製した。
【0026】
実施例3
調製例で得られたエマルジョン100重量部、15重量%ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%、重合度1700)22.5重量部、0.3重量%硫酸チタン水溶液7.4重量部、ジブチルフタレート6.4重量部、調整水8.4重量部を混合し、水性接着剤を調製した。
【0027】
比較例1
調製例で得られたエマルジョン100重量部、15重量%ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%、重合度1700)25重量部、ジブチルフタレート25重量部を混合し、水性接着剤を調製した。
【0028】
そして、実施例および比較例で得られた水性接着剤の初期接着力を以下の方法で測定した。
接着力測定機(日本たばこ産業(株)製,ASM−1)を用い、基材として坪量84g/m2 のクラフト紙に前記水性接着剤を塗布量40g/m2 で塗布した。温度20℃、相対湿度65%RH、オープンタイム0.1秒、圧締時間0.1秒の後、剪断速度300mm/分の条件で接着力を6回測定し、各測定毎に得られた初期接着力の最大値の平均値を初期接着力とした。
水性接着剤の特性とともに、初期接着力の測定結果を表に示す。
【0029】
【表1】
表より明らかなように、比較例の水性接着剤に比べて実施例の水性接着剤は、高い初期接着力が発現する。
Claims (5)
- ヒドロキシル基を有する水溶性重合体を乳化剤とし、酢酸ビニル系重合体およびアクリル系重合体から選択された少なくとも1種を重合体粒子として含む水性エマルジョンと、水溶性のチタン酸素酸塩、水溶性ポリアゾ化合物および水溶性ポリアルデヒド化合物から選択された少なくとも一種の多官能性化合物と、可塑剤とで構成されており、( i )乳化剤としての前記水溶性重合体の使用量が、単量体の総量100重量部に対して0.5〜15重量部であり、( ii )前記水溶性重合体の割合が前記重合体粒子100重量部に対して1〜30重量部であり、( iii )前記重合体粒子が平均粒径0.01〜3μmであり、かつ前記重合体粒子全体の50〜95体積%が粒径0.5〜3μmであり、( iv )前記可塑剤の割合が、前記水性エマルジョンの樹脂成分100重量部に対して1〜50重量部である水性接着剤を用い、被着体を速度20〜250m/分で接着させる方法。
- 多官能性化合物が、硫酸チタン、コンゴーレッドおよびグルタルアルデヒドから選択された少くとも一種である請求項1記載の接着方法。
- 多官能性化合物の割合が、ヒドロキシル基含有重合体100重量部に対して0.001〜50重量部である請求項1記載の接着方法。
- 接着力測定機(日本たばこ産業(株)製,ASM−1)でクラフト紙を基材として、オープンタイム0.1秒、圧締時間0.1秒の後、剪断速度300mm/分で測定したとき、最大接着力が少くとも0.04kgである請求項1記載の接着方法。
- 被着体が、紙質材料で構成されている請求項1記載の接着方法。
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