JP3567629B2 - 内歯を有する環状体の成形方法およびその装置 - Google Patents

内歯を有する環状体の成形方法およびその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸部材とスプライン嵌合する部品の内スプライン歯、あるいは遊星歯車機構のリングギヤ等の内歯を有する環状体の成形方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、軸部材とスプライン嵌合する部品の内スプライン歯は、ブローチ等を用いた切削加工によって形成される。また、例えば特開昭62−144836号公報に開示されているように、環状素材の内側に転造型ローラを設け、外側にバックアップローラを設け、両ローラ間で押圧がなされることにより、転造塑性加工を行なうことも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ブローチ等を用いた切削加工は、小型のスプライン歯の形成に適しておらず、それに加えて加工後のスプライン歯の強度が低いという欠点がある。また、転造型ローラを用いる場合でも、内歯のモジュールが小さいと、転造型に対する材料の充填が十分でなく、正確な歯形形状を得ることが困難であった。
【0004】
一方、鍛造型を用いて冷間加工を行なうことも考えられるが、その場合、素材にはボンデ処理、金型にはTiCN処理等の高価な処理が必要で、かつ型寿命が短いという問題があって、実用化されていない。
【0005】
上述の事情に鑑み、本発明は、内歯のモジュールが小さい場合でも、歯型に対して材料の充填を十分に行なうことができ、これによって正確な歯形形状を成形することが可能な内歯を有する環状体の成形方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載した本発明による方法は、環状素材の内周面に歯形を成形する方法であって、
成形すべき内歯歯形の最大内径よりも小径の内径を有する環状素材を準備し、
上記成形すべき内歯歯形に対応する歯形を外周面に形成した歯付き部を有する芯金の上記歯付き部を上記環状素材内に同軸的に圧入するとともに、この環状素材の外周面をローラで加圧することを特徴とするものである。
【0007】
その場合、請求項2に記載したように、上記芯金と上記ローラとを同期的に環状素材の軸線方向に移動させて、上記芯金の歯付き部を環状素材内に圧入してもよいし、あるいは、請求項3に記載したように、環状素材およびローラを環状素材の軸線方向に関し定位置に保持した状態で上記芯金の歯付き部を環状素材内に圧入するようにしてもよい。
【0008】
請求項4に記載した方法は、請求項1ないし3のいずれか1項記載の方法において、上記芯金に、この芯金の歯付き部の最大外径よりも小径の円筒部をこの芯金の圧入方向に関して上記歯付き部の前方位置に設け、上記円筒部を、この円筒部の外径よりも大径の内径を有する環状の初期素材内に挿入し、この初期素材の外周面をローラで加圧して、成形すべき内歯歯形の最大内径よりも小径の内径を有する環状素材を作成することを特徴とするものである。
【0009】
上記環状の初期素材の内径は、請求項5に記載したように、芯金の歯付き部の最大外径よりも大径であることが好ましい。
【0010】
請求項6に記載した本発明による装置は、環状素材の内周面に歯形を成形する装置であって、
成形すべき内歯歯形の最大内径よりも小径の内径を有する環状素材を保持して、この環状素材をその軸線の周りで回動させる保持部材と、
成形すべき内歯歯形に対応する歯形を外周面に形成した歯付き部を有する芯金と、
この芯金をその軸線方向に押圧して芯金の歯付き部を上記環状素材内に同軸的に圧入する押圧手段と、
芯金の環状素材への圧入に伴って環状素材の外周面を加圧するローラと、
を備えてなることを特徴とするものである。
【0011】
請求項7に記載した装置は、請求項6に記載した装置において、上記芯金に、この芯金の歯付き部の最大外径よりも小径の円筒部を芯金の圧入方向に関して歯付き部の前方位置に設けたことを特徴とするものである。
【0012】
さらに上記芯金に、請求項8に記載したように、上記保持部材に係合する係合部が芯金の圧入方向に関して上記円筒部の前方位置に設けることが好ましい。
【0013】
その場合、請求項9に記載したように、上記芯金の係合部がこの芯金の軸線方向に延びるスプライン溝を備え、上記保持部材に、芯金の係合部とスプライン嵌合するスプライン溝が設けられた構成とすることができる。
【0014】
【発明の効果】
請求項1に記載した方法の発明および請求項6に記載した装置の発明によれば、環状素材に対する芯金の歯付き部の圧入と、ローラによる加圧とを併用しているから、内歯のモジュールが小さい場合でも、歯型に対して材料の充填を十分に行なうことができ、これによって正確な歯形形状を成形することが可能になる。
【0015】
また、請求項4に記載した方法の発明および請求項7に記載した装置の発明によれば、環状の初期素材から中間成形体である環状素材を成形する工程と、この環状素材から内歯を有する環状体の成形する工程とを共通の芯金を用いて連続的に行なうことができる。
【0016】
さらに、請求項8に記載した発明ように、上記芯金に、上記保持部材に係合する係合部をこの芯金の圧入方向に関して上記円筒部の前方位置に設けることにより、環状の初期素材から中間成形体である環状素材を成形する工程と、この環状素材から内歯を有する環状体の成形する工程との双方の工程において、ローラによる押圧にも拘らず芯金を初期素材および環状素材に対して正確な同軸関係に支持することができ、歯形成形を高精度をもって実現できる。
【0017】
そして、請求項9に記載した発明のように、上記保持部材が芯金の係合部をスプライン嵌合により支持する構成を有することにより、芯金を保持部材とともに回転させながら芯金を軸線方向に移動させることが容易になる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明による内歯を有する環状体の成形装置の一実施の形態を示す概略的正面図、図2(a)は図1に示す装置を用いて内歯を成形された環状体の断面図、図2(b)はその左側面図である。
【0020】
図1において、装置フレーム1の一方の壁部1aには、この壁部1aに対して垂直な軸線Lの周りで回転可能な回転部材2と、この回転部材2を回転駆動するモータ3とが取り付けられており、上記回転部材2には、円筒状のワーク保持部材4が同軸的に固定されている。
【0021】
また、装置フレーム1の上記一方の壁部1aに対向する他方の壁部1bには、上記軸線Lと同軸的にオイルシリンダ5(押圧手段)が設けられ、このオイルシリンダ5のピストンロッド6が壁部1bを貫通し、かつピストンロッド6の先端に同軸的に固定された芯金(マンドレル)7がワーク保持部材4に向かって延設されている。
【0022】
図1に示す装置を用いて内歯を成形された環状体8は、図2に示すように、一端側に開口するコップ状の大径部9と、スプラインとしての内歯11を内周面に備えた小径部10とによって2段に構成されており、内歯11の最大内径がD、最小内径がDである。
【0023】
上記芯金7には、図2の環状体8の小径部10の内歯11の歯形に対応する歯形を外周面に形成してワークに内歯11を成形するための歯付き部12と、この歯付き部12の前方側(図1の左側)に設けられた、歯形を有しない円筒部13と、この円筒部13の前方側において芯金7の先端部に形成されて上記ワーク保持部材4と係合する係合部14とを備えている。上記円筒部13の外径は、歯付き部12の最大外径(環状体8の内歯11の最大内径Dにほぼ等しい)よりも小径で、かつ内歯10の最小内径Dにほぼ等しくなっており、上記係合部14は、歯付き部12と同一断面寸法および歯の位相を有するスプラインを外周面に備えている。
【0024】
一方、上記ワーク保持部材4は、図3(a)に示すように、ワークWの大径部19(環状体8の大径部9とほぼ同じ)が嵌着される円筒状外周面4aと、軸線Lに垂直に段設されてワークWの大径部19の端面19aを当接させる壁面4bと、芯金7が挿入される軸孔4cとを備えており、軸孔4cの内周面には、芯金7の係合部14および歯付き部12との双方にスプライン嵌合し得るスプライン15が形成されている。
【0025】
また、図1には省略されているが、装置1は、後述するように、図3(a)〜(c)に示す第1工程において、ワークWの小径部20を芯金7の円筒部13に向かって押圧してワークWの小径部20の内外径を縮小する複数のローラ16およびその駆動手段と、図6(a)〜(c)に示す第2工程において、ワークWの小径部20を芯金7の歯付き部12に向かって押圧しながら芯金7と同期して軸線L方向に移動して、ワークWの小径部20の内周面に内歯11を成形するための複数のローラ17およびその駆動手段とを備えている。
【0026】
次に、図1に示す装置を用いてワークWに内歯を成形する方法について、図3〜図7を参照して説明する。なお、図4は図3(b)のIV−IV線に沿った断面図、図5は図3(c)のV−V線に沿った断面図、図7は図6(b)の VII−VII 線に沿った断面図である。
【0027】
図3(a)〜(c)に示す第1工程においては、先ず図3(a)に示すように、一端側に開口するコップ状の大径部19と比較的肉厚の小径部20とによって2段に構成された環状の初期素材であるワークWを、その大径部19の端面19aがワーク保持部材4の垂直な壁面4bに当接する態様で、ワーク保持部材4の円筒状外周面4aに嵌着する。この場合、ワークWの小径部20の内径は、芯金7の先端の係合部14の挿通が可能なように、係合部14の最大外径(芯金7の歯付き部12の最大外径Dにほぼ等しい)よりも若干大径のDに形成されている(図4参照)。
【0028】
次に、図3(b)に示すように、芯金7の係合部14をワーク保持部材4の軸孔4c内に挿入し、係合部14をワーク保持部材4側のスプライン15とスプライン嵌合させるとともに、芯金7の円筒部13をワークWの小径部20内に位置させ、図4に示すように、複数のローラ16をワークWの小径部20の外周面に当接させる。
【0029】
次いで、モータ3によりワーク保持部材4を回転させ、これによって、ワークWおよび芯金7を軸線Lの周りで回転させながら、ローラ16を軸線Lに向かって移動させて、ワークWの小径部20を芯金7の円筒部13に押圧し、図3(c)および図5に示すように、ワークWの小径部20の内径を円筒部13の外径、すなわちDにほぼ等しくなるまで縮小して、ワークWを中間成形体である環状素材に成形し、第1工程を終了する。
【0030】
なお、上述の工程では、ワークWの小径部20の内径を、図2に示す環状体8の内歯11の最小内径Dまで縮小しているが、ワークWの小径部20の内径は、円筒部13の外径の設定によって、芯金7の歯付き部12の最大外径Dよりも小径の範囲内で自由に選択できる。
【0031】
次の図6(a)〜(c)に示す第2工程においては、第1工程で使用したローラ16をローラ17に交換し、モータ3によりワーク保持部材4および芯金7を軸線の周りで回転させながらオイルシリンダ5を作動させて、図6(a)に示すように、芯金7の歯付き部12のワークWの小径部20内への圧入を開始すると同時に、図6(b)および図7に示すように、ワークWの小径部20の外周面をローラ17で押圧しつつ、ローラ17を芯金7の圧入に同期させてワークWの大径部19側に向かって図6(c)に示す位置まで軸線L方向に移動させる。そして、芯金7はさらに図の左方へ移動させて、その歯付き部12の先端がワーク保持部材4の軸孔4c内に係入するようにする。
【0032】
このような芯金7の圧入とローラ17による押圧によって、ワークWの小径部20の内周面には、芯金7の歯付き部12の外歯に対応する内歯が成形され、図2に示す環状体8が得られる。なお、このワークWに対する内歯成形工程においては、ローラ17の最下点と芯金7の歯付き部12の端部との位置関係および芯金7の圧入速度等が適切に選択される。また、図7に示すローラ17,17に加えて、ワークWの不必要な変形を防止するための補助ローラを適宜設けてもよい。さらに、ローラ17を軸線L方向に移動させず、軸線L方向に幅の広いローラを軸線L方向の定位置に保持した状態で、芯金7のみ移動させてもよい。
【0033】
以上の説明から明らかなように、本実施の形態によれば、環状の初期素材から中間成形体である環状素材を成形する第1工程と、この環状素材から内歯11を有する環状体8の成形する第2工程とを共通の芯金7を用いて連続的に行なうことができる。
【0034】
また、第2工程においては、ワークWの小径部20に対する芯金7の歯付き部12の圧入と、ローラ17による加圧とを併用しているから、内歯11のモジュールが小さい場合でも、歯型に対して材料の充填を十分に行なうことができ、これによって正確な歯形形状を成形することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による内歯を有する環状体の成形装置の一実施の形態を示す概略的正面図
【図2】図1に示す装置を用いて内歯を成形された環状体の断面図および左側面図図
【図3】本発明による内歯を有する環状体の成形方法の第1工程の説明図
【図4】図3(b)のIV−IV線に沿った断面図
【図5】図3(c)のV−V線に沿った断面図
【図6】本発明による内歯を有する環状体の成形方法の第2工程の説明図
【図7】図6(b)の VII−VII 線に沿った断面図
【符号の説明】
1 装置フレーム
2 回転部材
3 モータ
4 ワーク保持部材
5 オイルシリンダ(押圧手段)
6 ピストンロッド
7 芯金
8 環状体
9 環状体の大径部
10 環状体の小径部
11 内歯
12 芯金の歯付き部
13 芯金の円筒部
14 芯金の係合部
15 スプライン

Claims (9)

  1. 環状素材の内周面に歯形を成形する方法であって、
    成形すべき内歯歯形の最大内径よりも小径の内径を有する環状素材を準備し、
    前記成形すべき内歯歯形に対応する歯形を外周面に形成した歯付き部を有する芯金の前記歯付き部を前記環状素材内に同軸的に圧入するとともに、該環状素材の外周面をローラで加圧することを特徴とする内歯を有する環状体の成形方法。
  2. 前記芯金と前記ローラとを同期的に前記環状素材の軸線方向に移動させて、前記芯金の歯付き部を前記環状素材内に圧入することを特徴とする請求項1記載の内歯を有する環状体の成形方法。
  3. 前記環状素材および前記ローラを前記環状素材の軸線方向に関し定位置に保持した状態で前記芯金の歯付き部を前記環状素材内に圧入することを特徴とする請求項1記載の内歯を有する環状体の成形方法。
  4. 前記芯金に、該芯金の歯付き部の最大外径よりも小径の円筒部を該芯金の圧入方向に関して前記歯付き部の前方位置に設け、前記円筒部を、該円筒部の外径より大径の内径を有する環状の初期素材内に挿入し、該初期素材の外周面をローラで加圧して、成形すべき内歯歯形の最大内径よりも小径の内径を有する前記環状素材を作成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の内歯を有する環状体の成形方法。
  5. 前記環状の初期素材が前記芯金の歯付き部の最大外径より大径の内径を有することを特徴とする請求項4記載の内歯を有する環状体の成形方法。
  6. 環状素材の内周面に歯形を成形する装置であって、
    成形すべき内歯歯形の最大内径よりも小径の内径を有する環状素材を保持して、該環状素材をその軸線の周りで回動させる保持部材と、
    成形すべき内歯歯形に対応する歯形を外周面に形成した歯付き部を有する芯金と、
    該芯金をその軸線方向に押圧して該芯金の歯付き部を前記環状素材内に同軸的に圧入する押圧手段と、
    前記芯金の歯付き部の前記環状素材内への圧入に伴って該環状素材の外周面を加圧するローラと、
    を備えてなることを特徴とする内歯を有する環状体の成形装置。
  7. 前記芯金に、該芯金の歯付き部の最大外径よりも小径の円筒部が該芯金の圧入方向に関して前記歯付き部の前方位置に設けられてなることを特徴とする請求項6記載の内歯を有する環状体の成形装置。
  8. 前記芯金に、前記保持部材に係合する係合部が、該芯金の圧入方向に関して前記円筒部の前方位置に設けられてなることを特徴とする請求項7記載の内歯を有する環状体の成形装置。
  9. 前記芯金の係合部が該芯金の軸線方向に延びるスプライン溝を備え、前記保持部材に、前記芯金の係合部とスプライン嵌合するスプライン溝が設けられてなることを特徴とする請求項8記載の内歯を有する環状体の成形装置。
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