JP3567055B2 - リチウム二次電池用コバルト酸リチウム系正極活物質 - Google Patents

リチウム二次電池用コバルト酸リチウム系正極活物質 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池用コバルト酸リチウム系正極活物質及びこれを含有する正極を用いるリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、民生用電子機器のポータブル化、コードレス化が急速に進むに従い、ラップトップ型パソコン、携帯電話、ビデオカメラ等の小型電子機器の電源としてリチウム二次電池が実用化されている。このリチウム二次電池について、1980年に水島等によりコバルト酸リチウム二次電池の正極活物質として有用であるとの報告〔“マテリアル リサーチブレイン”vol.115, P.783−789 (1980) 〕がなされて以来、コバルト酸リチウム系正極活物質に関する研究開発が活発に進められており、これまでに多くの提案がなされている。
【0003】
従来、正極活物質の高エネルギー密度化を図る技術としては、例えばコバルト酸リチウムの組成をLiCoO(ただし、1.05≦x≦1.3)とすることによりリチウムリッチにしたもの(特開平3−127454号公報)、逆にLiCoO(但し0<x≦1)とすることによってコバルトリッチにしたもの(特開平3−134969号公報)、Mn、W、Ni、La及びZrなどの金属イオンをドープさせたもの(特開平3−201368号公報、特開平4−328277号公報、特開平4−319259号公報、特開平4−319260号公報等)コバルト酸リチウム中の残留LiCOを10重量%以下とするもの(特開平4−56064号公報)などが提案されている。
【0004】
一方、コバルト酸リチウム系正極活物質の物理的特徴、特に比表面積を要件とする技術としては、LiCoOの比表面積を2m/g以下(特開平4−56064号公報)、リチウム複合酸化物の比表面積を0.01〜3.0m/g(特開平4−249073号公報)、LiCo(0<x≦1.3、1.8≦y≦2.2)のBET法による比表面積が0.5〜10.0m/g(特開平8−103976号公報)等を有するコバルト酸リチウムが提案されている。これは、初期容量を大きくするために正極活物質と電解液との反応面積を一定以上の面積にする必要があること、また、電池反応の進行に伴う容量劣化を避けるために一定以下の面積にする必要があること等の理由によるものであり、これにより、放電サイクルの進行に伴う放電容量の低下を改善するものである。
【0005】
しかしながら、上記コバルト酸リチウム系正極活物質においてもリチウム二次電池の正極材として用いた場合、未だ十分満足するものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、放電容量及び放電保持率に優れ、高エネルギー密度を有するリチウム二次電池用コバルト酸リチウム系正極活物質を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、リチウム二次電池の正極を製造する場合、正極活物質の比表面積以外の他の物性、例えば粒子の表面形状、表面電荷又は製造時の焼成雰囲気、焼成速度及び最高温度等のセラミックス化条件等が微妙に影響を与え、たとえ該正極活物質が同じ比表面積を有していてもリチウム二次電池の初期放電容量及びサイクル特性等の性能に大きく影響を与えることを知見した。そして、本発明者は、特定の平均粒子径を有し、かつBET比表面積(A)と理論比表面積(B)の比、A/Bが1〜3の範囲にあるコバルト酸リチウム粒子をリチウム二次電池用正極活物質として使用した場合、放電容量及び放電保持率に優れ、高エネルギー密度と高い安全性を示すことを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、レーザー法による平均粒子径が1〜30μmのコバルト酸リチウム粒子であって、当該粒子のBET比表面積(A)と当該粒子の理論比表面積(B)の比、(A)/(B)が1〜2.4の範囲であることを特徴とするリチウム二次電池用コバルト酸リチウム系正極活物質及びこれを含有する正極を用いることを特徴とするリチウム二次電池を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において用いるコバルト酸リチウム粒子は、レーザー法による平均粒子径(重量基準)が1〜30μm、好ましくは2〜25μmの範囲のものである。
【0010】
また、当該コバルト酸リチウム粒子は、当該粒子のBET比表面積(A)(重量基準)と当該粒子の理論比表面積(B)(個数基準)の比、(A)/(B)が1〜3の範囲であることが必要であり、好ましくは1〜2.7の範囲である。
該(A)/(B)値は、1に近い程、球に近いことを意味し、逆に数値が大きい程、粒子形状が不規則なもの、表面の形状が凹凸を有するごつごつしたもの又は一次粒子の細かい粒子が集合して形成した凝集体等となるものである。
【0011】
本発明において、該(A)/(B)値が、3を超える該粒子をリチウム二次電池用正極活物質とした場合、充放電による結晶の早期劣化を促進し、容量保持率の劣化を招く。また、過充電や電池内部異常反応による異常発熱の際の安定性の低下につながり好ましくない。
【0012】
前記理論比表面積(B)はレーザー法粒度分布測定法による球相当面積平均粒子径(個数基準)から求められ、具体的には、次式(1);
(B)(m/g)=6/ρ・MA (1)
で求められる。式中、MAは面積平均粒子径(μm)を示し、ρはコバルト酸リチウムの比重を示す。またMAは、次式(2);
MA=Σ(n)/Σ(n) (2)
で求められる。
これは、一つの粉体の集団において、粒子径の小さい順からd、d、…d、…dの粒子径を持つ粒子が、それぞれn、n、…n、…n個あり、また粒子1個あたりの表面積をそれぞれa、a、…a、…aとした場合、MAは
MA=(n+ n+ …… +n+ ……
+ n)/(n+ n+ …… +n
+ …… +n)で求められることによる。
【0013】
また、本発明において、当該コバルト酸リチウム粒子は粒子表面が滑らかで実質的に角のないものが好ましい。実質的に角のないものとは、やや角ばっていてもよい程度も含まれるものである。かかる粒子形状や表面は電子顕微鏡写真(SEM写真)で確認することができる。
【0014】
また、当該コバルト酸リチウム粒子は分散性が良好であることが好ましい。分散性が良好とは、コバルト酸リチウムを主成分として含有する正極材を有機溶媒に分散させて混練ペーストとした際、コバルト酸リチウム粉体が実質的に凝集せず、各粒子が独立した単分散されていることを言う。かかる分散状態はSEM写真で確認することができる。本発明においては、特に粒子表面が滑らかで、角がとれた比較的丸い不定形の単一粒子として分散されていることが好ましい。
【0015】
本発明の上記コバルト酸リチウムを製造する方法は、例えば炭酸リチウムと酸化コバルトを、Li/Coの原子比として1付近、好ましくは0.99〜1.10になる範囲の配合割合で混合する。
次いで、該混合物を600℃〜1100℃、好ましくは700〜1000℃の温度により焼成処理をする。焼成時間は、上記温度域に少なくとも2時間、好ましくは5〜15時間の範囲に設定するのがよい。焼成処理後、焼成物を冷却し、かるく解す程度に粉砕し、上記特定の平均粒子径及び(A)/(B)値を有する粒子を選別することにより、本発明のコバルト酸リチウムを得ることができる。
【0016】
また、本発明に係るリチウム二次電池用正極活物質としてのコバルト酸リチウムは、その優れた電子特性から、これを主成分として含有する正極板を製作した場合、優れた特性を有するリチウム二次電池を得ることができる。
【0017】
本発明におけるリチウム二次電池の構成としては、特に制限されないが、例えば、当該コバルト酸リチウムを主成分として、黒鉛粉末、ポリフッ化ビリニデンなどを混合加工して正極材(リチウム二次用電池正極活物質)とし、これを2−メチルピロリドン等の有機溶媒に分散させて混練ペーストを調製する。該混練ペーストをアルミ箔などの導電性基板に塗布した後、乾燥し、加圧して適宜の形状に切断して正極板を得る。
この正極板を用いて、リチウム二次電池を構成する各部材を積層してリチウム二次電池を作製すればよい。
【0018】
【実施例】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
実施例1〜、比較例1及び2
炭酸リチウム粉末と酸化コバルトをLi/Co原子比が1〜1.05となるように秤量し、乳鉢で十分混合して均一な混合物を調製した。次いで、該混合物をアルミナ坩堝に充填し電気加熱炉に入れて大気雰囲気下に昇温し、700〜1000℃でこの温度に10時間保持して焼成処理した。得られた焼成物を大気中で冷却した後、粉砕し、レーザー法による平均粒子径が1〜30μm及び(A)/(B)値が1〜2.4の範囲の粒子を選別してリチウム二次電池用コバルト酸リチウム系正極活物質を製造した(実施例1〜)。また、特定粒子の選別をすることなく得られたコバルト酸リチウムの粒子を比較例1とし、(A)/(B)値が3.0を超え、その近傍に選別した粒子を比較例2とした。得られたコバルト酸リチウム粉末はMICROTRAC粒度分析計(型式:9320−X100、日機装社製)によるレーザー法測定を行い、個数基準面積平均粒子径により計算された理論比表面積値(B)を得た。なお、コバルト酸リチウムの真比重は5として計算した。次に、BET法による比表面積値(A)をそれぞれ測定し、その比(A)/(B)値を求めた。その結果を表1に示した。また、実施例1〜及び比較例1及び2のそれぞれの表面形状をSEM写真で観察した。この結果を表1に併載した。なお、実施例1及び比較例1で得られたコバルト酸リチウムのSEM写真をそれぞれ図1及び図2に示した。
【0019】
(リチウム二次電池の作製)
上記により製造した各コバルト酸リチウム85重量部、黒鉛粉末10重量部及びポリフッ化ビニリデン5重量部を混合して正極材とし、これを2−メチルピロリドンに分散させて混練ペーストを調製した。該混練ペーストをアルミ箔に塗布したのち乾燥し、2t/cmの圧力によりプレスして2cm角に打ち抜いて正極板を得た。この正極板を用い、セパレーター、負極、正極、集電板、外部端子及び電解液等の各部材を積層してリチウム二次電池を作製した。
【0020】
(電池性能の評価)
作製したリチウム二次電池を作動させ、初期放電容量及び容量保持率を測定して電池性能を評価した。その結果を表1に示した。
(初期放電容量の測定)
初期放電容量は正極に対して1.0mA/cmで4.2Vまで充電した後、27Vまで放電させる充放電を繰り返すことにより測定した。
【0021】
(容量保持率)
容量保持率は前記の充放電を反復した結果から、次式により算出した。
【0022】
容積保持率(%)=(20サイクル目の放電容量)×100/(1サイクル目の放電容量)
【0023】
【表1】
Figure 0003567055
【0024】
【発明の効果】
本発明のリチウム二次電池用コバルト酸リチウム系正極活物質をリチウム二次電池の正極材とすると、優れた放電容量及び放電保持率を示す。このため信頼性の極めて高いリチウム二次電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のコバルト酸リチウムの粒子構造を示すSEM写真である。
【図2】従来のコバルト酸リチウムの粒子構造を示すSEM写真である。

Claims (3)

  1. レーザー法による平均粒子径が1〜30μmのコバルト酸リチウム粒子であって、当該粒子のBET比表面積(A)と当該粒子の理論比表面積(B)の比、(A)/(B)が1〜2.4の範囲であることを特徴とするリチウム二次電池用コバルト酸リチウム系正極活物質。
  2. 前記粒子が、粒子表面が滑らかで実質的に角のないものである請求項1記載のリチウム二次電池用コバルト酸リチウム系正極活物質。
  3. 請求項1又は2記載のコバルト酸リチウム系正極活物質を含有する正極を用いることを特徴とするリチウム二次電池。
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