JP3566082B2 - エアバッグ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、折り畳んだエアバッグの開口部周縁が固定されるリテーナの内部にインフレータを収納し、車両の衝突時に前記インフレータが発生するガスで膨張するエアバッグを展開して乗員を拘束するエアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のエアバッグ装置は、インフレータが発生するガスで膨張するエアバッグにベントホールを設け、前記ガスの一部をベントホールから排出してエアバッグの内圧を制御している。かかるエアバッグ装置において、ベントホールを薄膜で閉鎖しておくことにより展開の初期にエアバッグを速やかに膨張させるとともに、展開が完了してエアバッグの内圧が高まると前記薄膜が破断し、ベントホールからガスを排出して乗員を柔らかく拘束するものが提案されている(実公平5−6206号公報参照)。
【0003】
またエアバッグ装置に2個のインフレータを設けておき、エアバッグ装置の近傍に乗員が存在しない場合には2個のインフレータを両方とも点火し、エアバッグ装置の近傍に乗員が存在する場合には1個のインフレータだけを点火することにより、エアバッグの展開速度および内圧を乗員の位置に応じて制御するものが提案されている(特開平9−301115号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記実公平5−6206号公報に記載されたものは、薄膜が破断する圧力にバラツキが発生し易いため、エアバッグの内圧が所定値に達したときにベントホールを的確に開放するのが難しいだけでなく、一旦開放したベントホールを再び閉じることができないので内圧の精密な制御が難しいという問題があった。また上記特開平9−301115号公報に記載されたものは、2個のインフレータを必要とするために部品点数が増加してコストアップの要因になるだけでなく、エアバッグの展開特性を2段階にしか制御できないためにきめ細かい制御が難しいという問題があった。
【0005】
そこでエアバッグおよびインフレータを支持するリテーナにベントホールを形成し、アクチュエータで作動する制御弁で前記ベントホールの開度を制御すれば、エアバッグの内圧を時間の経過に応じて任意に制御することができる。この場合、エアバッグ装置の大型化およびコストの上昇を回避するために、ベントホールの開閉機構を可及的に簡素化することが望まれる。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、簡単な構造でエアバッグ装置のベントホールを的確に開閉できるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、折り畳んだエアバッグの開口部周縁が固定されるリテーナの内部にインフレータを収納し、車両の衝突時に前記インフレータが発生するガスで膨張するエアバッグを展開して乗員を拘束するエアバッグ装置において、前記リテーナに形成したベントホールを開閉する圧電素子よりなるアクチュエータと、乗員状態を検出する乗員状態検出手段と、その乗員状態検出手段が検出した乗員の体重が大きい場合は小さい場合よりも各ベントホールの開度を小さくし、かつエアバッグの展開完了後の第1の期間で各ベントホールの開度を一定の小開度に保持し、前記第1の期間に続く第2の期間で各ベントホールの開度を増加させ、前記第2の期間に続く第3の期間で各ベントホールの開度を一定の大開度に保持し、前記第3の期間に続く第4の期間で各ベントホールの開度を減少させ、前記第4の期間に続く第5の期間で各ベントホールの開度を一定の小開度に保持するように、前記圧電素子に対する通電を制御してベントホールの開度を変化させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また請求項2に記載された発明は、折り畳んだエアバッグの開口部周縁が固定されるリテーナの内部にインフレータを収納し、車両の衝突時に前記インフレータが発生するガスで膨張するエアバッグを展開して乗員を拘束するエアバッグ装置において、前記リテーナに形成したベントホールを開閉する圧電素子よりなるアクチュエータと、車速を検出する車速検出手段と、その車速検出手段が検出した衝突時の車速が大きい場合はエアバッグの展開完了後に各ベントホールの開度を増加させてから減少させ、また前記車速が小さい場合はエアバッグの展開完了後に前記車速が大きい場合よりも遅い時期に各ベントホールの開度を増加させるとともに、その増加させた開度を前記車速が大きい場合の最大開度よりも大きい開度に保持するように、前記圧電素子に対する通電を制御してベントホールの開度を変化させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1,2の各構成によれば、アクチュエータでベントホールの開度を変化させることにより、車両の衝突時にインフレータが発生するガスがベントホールから排出される量を任意に制御することが可能となり、エアバッグの展開速度、エアバッグの拘束力の大きさ、エアバッグの収縮速度等を衝突の状態や乗員の状態に応じて任意に設定することができる。特に、圧電素子よりなるアクチュエータは、モータやソレノイドに比べて構造が簡単で故障が少なく、アクチュエータの部品点数の削減およびコストの削減を可能にしながら確実な作動を保証することができる。
【0010】
また特に請求項1の上記構成によれば、乗員状態検出手段からの信号に基づいて圧電素子に対する通電を制御して、乗員状態検出手段が検出した乗員の体重が大きい場合は小さい場合よりも各ベントホールの開度を小さくするので、乗員の体重が大きい場合にエアバッグを膨張状態に維持できなくなるのを防止することができる。しかもエアバッグの展開完了後の第1の期間で各ベントホールの開度を一定の小開度に保持するので、衝突の慣性で前進する乗員がエアバッグを押し始める初期の拘束力を高めることができる。また前記第1の期間に続く第2の期間で各ベントホールの開度を増加させ、前記第2の期間に続く第3の期間で各ベントホールの開度を一定の大開度に保持するので、乗員がエアバッグから受ける拘束荷重の最大値を低減して乗員を柔らかく拘束することができる。更に、前記第3の期間に続く第4の期間で各ベントホールの開度を減少させ、前記第4の期間に続く第5の期間で各ベントホールの開度を一定の小開度に保持するので、エアバッグからガスが排出され難くして早期に収縮するのを防止することで、乗員の二次衝突の衝撃を充分に緩和することができる。
【0011】
また特に請求項2の上記構成によれば、車速検出手段からの信号に基づいて圧電素子に対する通電を制御して、衝突時の車速が大きい場合はエアバッグの展開完了後に各ベントホールの開度を増加させてから減少させるのに対し、衝突時の車速が小さい場合はエアバッグの展開完了後に前記車速が大きい場合よりも遅い時期に各ベントホールの開度を増加させるとともに、その増加させた開度を前記車速が大きい場合の最大開度よりも大きい開度に保持するので、衝突時の車速が小さいために乗員がエアバッグに遅い時期に接触するのに合わせて各ベントホールを遅く開放し、かつ乗員がエアバッグから受ける拘束荷重の最大値を低減して乗員を一層柔らかく拘束することができる。
【0012】
また請求項に記載された発明は、請求項1又は2の構成に加えて、前記アクチュエータは前記ベントホールを覆うように配置されて一端が前記リテーナに固定された板状の圧電素子であることを特徴とする。記構成によれば、極めて簡単な構造を持つ板状の圧電素子にベントホールを開閉する弁体の機能と、その弁体を駆動するアクチュエータの機能とを併せ持たせることでき、アクチュエータの小型化およびコストの削減が可能となる
また請求項に記載された発明は、請求項の構成に加えて、前記圧電素子に金属板よりなるプロテクタを積層したことを特徴とする。記構成によれば、脆弱な圧電素子に金属板よりなるプロテクタを積層して耐久性を高めることができる。
【0013】
また請求項に記載された発明は、請求項1又は2の構成に加えて、前記リテーナに複数のベントホールを形成するとともに、前記ベントホールにそれぞれ対応する複数の開口を備えた弁板を前記リテーナに摺動自在に支持し、圧電素子を積層してなる前記アクチュエータで前記弁板を摺動させて前記ベントホールを開閉することを特徴とする。記構成によれば、リテーナに形成した複数のベントホールと弁板に形成した複数の開口とを組み合わせることにより、弁板を僅かなストローク移動させるだけでベントホールの開度を全閉状態から全開状態まで変化させることが可能となり、アクチュエータの小型化と応答性の向上とが同時に達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。 図1〜図21は本発明の一実施例を示すもので、図1は自動車の車室前部の斜視図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図3の4−4線拡大断面図、図5は運転席用エアバッグ装置の分解斜視図、図6は図1の6−6線拡大断面図、図7は図6の7−7線断面図、図8は図7の8−8線矢視図、図9は助手席用エアバッグ装置の分解斜視図、図10は助手席用エアバッグ装置の変形例を示す、前記図7に対応する図、図11は図10の11−11線矢視図、図12は図10の12−12線断面図、図13は図1の13−13線拡大断面図、図14は図13の14方向矢視図、図15は図14の15−15線断面図、図16は図14の16−16線断面図、図17は図14の17−17線断面図、図18はベントホールの開度の制御系を示すブロック図、図19はベントホールの開度パターンの一例を示す図、図20は乗員の状態によるベントホールの開度パターンの変化を示す図、図21は車速によるベントホールの開度パターンの変化を示す図である。
【0015】
図1に示すように、運転席シート1の前方に配置されたステアリングホイール2の中央部に運転席用エアバッグ装置Rdが設けられ、助手席シート3の前方に配置されたダッシュボード4の上部に助手席用エアバッグ装置Rpが設けられ、運転席シート1および助手席シートのシートバック5,5の内部にそれぞれ側突用エアバッグ装置Rs,Rsが設けられる。
【0016】
次に、図2〜図5に基づいて運転席用エアバッグ装置Rdの構造を説明する。
【0017】
ステアリングホイール2は、ステアリングシャフト11の後端に相対回転不能に嵌合してナット12で固定されたステアリングボス13と、このステアリングボス13を囲繞するように配置された環状のホイールリム14と、前記ステアリングボス13に固定されたフロントカバー15と、このフロントカバー15に結合されたリヤカバー16と、前記フロントカバー15をホイールリム14に接続する複数本のスポーク17…とを備えており、フロントカバー15およびリヤカバー16により区画される空間にエアバッグモジュール18が収納される。
【0018】
エアバッグモジュール18は、それをリヤカバー16の内面に支持するためのリテーナ19と、高圧ガスを発生するインフレータ20と、インフレータ20が発生した高圧ガスにより膨張するエアバッグ21とから構成される。リテーナ19の外周に一体に形成された取付フランジ191 がリヤカバー16の内周に一体に形成された取付フランジ161 に複数本のリベット22…で固定され、更にエアバッグ21の開口部周縁とリング状のホルダー23とが重ね合わされてリテーナ19に複数本のボルト24…で共締めされる。粒状のガス発生剤25…が充填されたインフレータ20はエアバッグ21の内部に収納され、複数本のボルト26でリテーナ19に固定される。インフレータ20の内部には着火剤27が配置されており、インフレータ20の内部に延びる点火器28の先端が前記着火剤27に臨んでいる。
【0019】
エアバッグ21の内部に臨むリテーナ19に4個のベントホール29…が直列に形成される。ベントホール29…の開度を制御する制御弁30は、短冊状に形成された圧電素子31を金属板よりなる同形のプロテクタ32に接着したもので、その一側面が前記ベントホール29…を覆うように、その一端部がボルト33,33でリテーナ19に固定される。脆くて破損し易い圧電素子31はプロテクタ32に接着されることで補強される。前記圧電素子31は本発明のアクチュエータを構成する。
【0020】
図18に示すように、本発明の制御手段を構成するエアバッグ展開制御装置34には、車両の衝突時の加速度を検出する加速度検出手段35aと、乗員の体重、体格、着座姿勢等の乗員状態を検出する乗員状態検出手段35bと、車速を検出する車速検出手段35cとが接続される。乗員状態検出手段35bは、シートクッションに設けられて乗員の体重を検出することにより大人および子供を識別するもの、あるいは赤外線で乗員の座高を検出することにより大人および子供を識別するものから構成される。
【0021】
エアバッグ展開制御装置34は、車両の衝突時に所定値以上の加速度が検出されると点火器28に通電してインフレータ20を点火し、インフレータ20が発生するガスで膨張するエアバッグ21はリヤカバー16にH形に形成された薄肉のティアライン162 を破断して車室内に展開する。このとき、エアバッグ展開制御装置34は乗員状態検出手段35bあるいは車速検出手段35cからの信号に基づいて制御弁30の圧電素子31に対する通電を制御し、ベントホール29…の開度を変化させる。即ち、圧電素子31への非通電時には、図4(A)に示すように制御弁30は直線状に延びてベントホール29…を閉塞し、圧電素子31に通電すると、図4(B)に示すように通電量に応じて制御弁30が湾曲してベントホール29…を開放する。このように、ベントホール29…を覆う板状の圧電素子31に通電して湾曲させるだけの極めて簡単な構造により、ベントホール29…の開度を精密にかつ無段階に制御することができる。
【0022】
このとき、ベントホール29…の複数の開度パターン、つまり時間の経過に対するベントホール29…の開度変化が予めマップとして記憶されており、エアバッグ展開制御装置34は前記複数の開度パターンのうちから所定の開度パターンを選択して制御弁30を制御する。この制御弁30の開度制御の具体的内容は後から詳述する。
【0023】
次に、図6〜図9に基づいて助手席用エアバッグ装置Rpの構造を説明する。
【0024】
ダッシュボード4の上面に形成された開口41 に固定されたリッド41から下方に延びる支持部411 …に、エアバッグモジュール42のリテーナ43が固定される。リテーナ43は複数本のボルト44…で固定されたアッパーリテーナ45およびロアリテーナ46から構成されており、アッパーリテーナ44が複数本のボルト47…で前記リッド41の支持部411 …に固定される。アッパーリテーナ45およびロアリテーナ46の結合部にエアバッグ48の開口部周縁が挟まれて前記ボルト47…で共締めされる。リッド41には、エアバッグ48が膨張する際に破断する薄肉のティアライン412 が形成される。ロアリテーナ46の底部に一対の取付ブラケット49,49を介して円筒状のインフレータ50が支持される。またロアリテーナ46の底部に形成された4個のベントホール29…を開閉すべく、前記運転席用エアバッグ装置Rdのものと同じ構造の制御弁30が装着される。
【0025】
加速度検出手段35a、乗員状態検出手段35bおよび車速検出手段35cからの信号が入力されるエアバッグ展開制御装置34により、インフレータ50および制御弁30に対する通電が制御される。即ち、車両の衝突時に加速度検出手段35aが所定値以上の加速度を検出すると、エアバッグ展開制御装置34からの指令でインフレータ50が点火して高圧ガスが発生し、その圧力で膨張するエアバッグ48はリッド41のティアライン412 を破断して車室内に展開する。このとき、乗員状態検出手段35bおよび車速検出手段35cからの信号によって制御弁30の開度が制御される。
【0026】
図10〜図12は助手席用エアバッグ装置Rpの変形例を示すものであり、その制御弁30の構造が図6〜図9で説明したものと異なっている。
【0027】
本変形例の制御弁30は、リテーナ43の底面に設けた一対のガイドレール431 ,431 に摺動自在に支持された弁板52と、この弁板52をガイドレール431 ,431 に沿って往復駆動すべく多数の圧電素子を積層してなるアクチュエータ53とを備える。弁板52には一直線上に配置された4個のベントホール29…と同形かつ同数の開口521 …が形成されており、アクチュエータ53で駆動された弁板52の開口521 …がベントホール29…に重なると、該ベントホール29…が開放される。
【0028】
このように、一直線上に配置された複数のベントホール29…の開度を複数の開口521 …を有する弁板52をリニアソレノイド53で往復動させて制御するので、弁板52を1個のベントホール29の長さに相当する僅かな距離を移動させるだけで、ベントホール29…の開度を全閉状態から全開状態まで変化させることが可能となって応答性が高められる。
【0029】
次に、図13〜図17に基づいて側突用エアバッグ装置Rsの構造を説明する。
【0030】
シートバック5の右側縁に沿って上下方向に延びるパイプフレーム61に車体前方に延びる金属製の取付ブラケット62が溶接により固定されており、この取付ブラケット62の右側面にエアバッグモジュール63がボルト64,64で固定される。粗毛布よりなる保形材65がエアバッグモジュール63の前面からシートバック5の厚さ方向中間部を車体左側に延び、車体左側のパイプフレーム(図示せず)に接続される。パイプフレーム61の内周にはメッシュ状のスプリング66が張られており、このスプリング66の前面と、保形材16の後面と、取付ブラケット62の後面とに囲まれた部分にスポンジよりなるパッド67が装着される。また保形材65の前面には同じくスポンジよりなるパッド68が装着される。
【0031】
シートバック5の前面中央部は第1被覆材69により覆われるとともに、その第1被覆材69の左右両側部および上部は第2被覆材70により覆われ、また第2被覆材70に連なるシートバック5の左右両側面および上面は第3被覆材71により覆われ、更にシートバック5の後面は第4被覆材72により覆われる。第1被覆材69と第2被覆材70とは縫製部73において縫製され、また第2被覆材70と第3被覆材71とは縫製部74において縫製される。
【0032】
エアバッグモジュール63は、合成樹脂で一体に形成されたリテーナ75と、その内部に支持されたホルダー77とを備えており、これらリテーナ75およびホルダー77は前記ボルト64,64で取付ブラケット62に共締めされる。リテーナ75は車体右側に向けて開口するトレー状の本体部751 と、この本体部751 の後縁にヒンジ部752 を介して接続された蓋部753 とを備えており、本体部751 の上縁、前縁および下縁に設けた5個の係止爪754 …を蓋部753 の上縁、前縁および下縁に設けた5個の係止孔755 …に係止することにより、本体部751 の開口を覆うように蓋部753 が固定される。 折り畳んだエアバッグ78がプロテクトカバー79により包装される。エアバッグ78の開口部周縁とプロテクトカバー79の両端とがリテーナ75およびホルダー77に挟まれて固定され、これによりホルダー77に固定されたインフレータ80がエアバッグ78の内部に収納される。尚、エアバッグ78の膨張時にプロテクトカバー79は容易に破断するため、その膨張を妨げることはない。
【0033】
ホルダー77に形成された開口771 と、リテーナ75の本体部751 に形成された4個のベントホール29…と、取付ブラケット62に形成された開口621 と、パッド68に形成されたガス通路681 と、シートバック5の後面側に形成された空間81とを介して、エアバッグ78の内部がシートバック5の外部に連通する。また前記4個のベントホール29…を開度を制御すべく、前記運転席用エアバッグ装置Rdおよび前記助手席用エアバッグ装置Rpのものと同じ構造の制御弁30がリテーナ75の内部に装着される。
【0034】
加速度検出手段35a、乗員状態検出手段35bおよび車速検出手段35cからの信号が入力されるエアバッグ展開制御装置34により、インフレータ80および制御弁30に対する通電が制御される。而して、車両の衝突時にインフレータ80がガスを発生すると、リテーナ75の内部でエアバッグ78が膨張する。エアバッグ78が膨張する圧力がリテーナ75の蓋部753 に作用すると、係止爪754 …が係止孔755 …から外れて蓋部753 がヒンジ部752 回りに回転し、本体部751 が開放される。蓋部753 が開く圧力がシートバック5の第3被覆材71に伝達されると、縫製部74が破断して第2被覆材70と第3被覆材71とが分離し、その隙間を通過したエアバッグ78がフロントドアの内面に沿うように前方に展開する。
【0035】
次に、運転席用エアバッグ装置Rd、助手席用エアバッグ装置Rpおよび側突用エアバッグ装置Rs,Rsのベントホール29…の開閉制御の内容を、図18〜図21を参照して具体的に説明する。
【0036】
図19(A)の横軸はエアバッグ21,48,78が展開を完了してからの時間を示し、縦軸は乗員がエアバッグ21,48,78から受ける荷重の大きさを示している。また図19(B)の横軸は同じくエアバッグ21,48,78が展開を完了してからの時間を示し、縦軸はベントホール29…の開度(全開状態を100%としたもの)を示している。ここで破線はエアバッグ21,48,78に一定面積のベントホールを設けた従来のものに対応し、実線はリテーナ19に形成したベントホール29…の開度を制御弁30で制御する本実施例に対応する。
【0037】
同図から明らかなように、本実施例では、時刻t0 〜t1 の領域aでベントホール29…の開度を小さく抑えてエアバッグ21,48,78からガスが排出され難くすることにより、衝突の慣性で前進する乗員がエアバッグ21,48,78を押し始める初期の拘束荷重を高めている。続く時刻t1 〜t2 の領域bでベントホール29…の開度を増加させ、時刻t2 〜t3 の領域cでベントホール29…の開度を大きな値に保持することにより、乗員がエアバッグ21,48,78から受ける拘束荷重の最大値を低減して乗員を柔らかく拘束している。続く時刻t3 〜t4 の領域dでベントホール29…の開度を減少させ、時刻t4 〜の領域eでベントホール29…の開度を小さく抑えてエアバッグ21,48,78からガスが排出され難くすることにより、エアバッグ21,48,78が早期に収縮するのを防止して乗員がステアリングホイール、ダッシュボード、センターピラー等に二次衝突する衝撃を充分に緩和している。
【0038】
このように、ベントホール29…の開度を予め設定した開度パターンに応じて制御するので、乗員がエアバッグ21,48,78から受ける荷重の特性を任意に制御して理想の特性に近づけることができる。
【0039】
上記ベントホール29…の開度パターンは、乗員状態検出手段35bの検出結果に応じて変更される。即ち、図20に示すように、乗員が体重の小さい子供である場合には前記領域cにおけるベントホール29…の全開開度が100%に設定されるが、乗員が体重の大きい大人である場合にはその体重が増加するのに応じて全開開度が100%から例えば70%まで漸減される。その理由は、乗員の体重が大きい場合にベントホール29…の全開開度が大き過ぎると、乗員がエアバッグ21,48,78を圧縮する荷重でベントホール29…から排出されるガス量が多くなり過ぎ、エアバッグ21,48,78を膨張状態に維持できなくなる可能性があるためである。
【0040】
上記ベントホール29…の開度パターンは、車速検出手段35cの検出結果に応じて変更される。即ち、図21に示すように、衝突時の車速が小さい場合には必要な拘束力も小さくなるため、ベントホール29…の全開開度が大きく設定され、かつその全開開度を最後まで維持される。これにより、乗員がエアバッグ21,48,78から受ける拘束荷重の最大値を低減して乗員を一層柔らかく拘束することができる。
【0041】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0042】
【発明の効果】
以上のように請求項1,2の各発明によれば、アクチュエータでベントホールの開度を変化させることにより、車両の衝突時にインフレータが発生するガスがベントホールから排出される量を任意に制御することが可能となり、エアバッグの展開速度、エアバッグの拘束力の大きさ、エアバッグの収縮速度等を衝突の状態や乗員の状態に応じて任意に設定することができる。特に、圧電素子よりなるアクチュエータはモータやソレノイドに比べて構造が簡単で故障が少なく、アクチュエータの部品点数の削減およびコストの削減を可能にしながら確実な作動を保証することができる。
【0043】
また特に請求項1の発明によれば、乗員状態検出手段からの信号に基づいて圧電素子に対する通電を制御して、乗員状態検出手段が検出した乗員の体重が大きい場合は小さい場合よりも各ベントホールの開度を小さくするので、乗員の体重が大きい場合にエアバッグを膨張状態に維持できなくなるのを防止することができる。しかもエアバッグの展開完了後の第1の期間で各ベントホールの開度を一定の小開度に保持するので、衝突の慣性で前進する乗員がエアバッグを押し始める初期の拘束力を高めることができる。また前記第1の期間に続く第2の期間で各ベントホールの開度を増加させ、前記第2の期間に続く第3の期間で各ベントホールの開度を一定の大開度に保持するので、乗員がエアバッグから受ける拘束荷重の最大値を低減して乗員を柔らかく拘束することができる。更に、前記第3の期間に続く第4の期間で各ベントホールの開度を減少させ、前記第4の期間に続く第5の期間で各ベントホールの開度を一定の小開度に保持するので、エアバッグからガスが排出され難くして早期に収縮するのを防止することで、乗員の二次衝突の衝撃を充分に緩和することができる。
【0044】
また特に請求項2の発明によれば、車速検出手段からの信号に基づいて圧電素子に対する通電を制御して、衝突時の車速が大きい場合はエアバッグの展開完了後に各ベントホールの開度を増加させてから減少させるのに対し、衝突時の車速が小さい場合はエアバッグの展開完了後に前記車速が大きい場合よりも遅い時期に各ベントホールの開度を増加させるとともに、その増加させた開度を前記車速が大きい場合の最大開度よりも大きい開度に保持するので、衝突時の車速が小さいために乗員がエアバッグに遅い時期に接触するのに合わせて各ベントホールを遅く開放し、かつ乗員がエアバッグから受ける拘束荷重の最大値を低減して乗員を一層柔らかく拘束することができる。
【0045】
また特に請求項3の発明によれば、極めて簡単な構造を持つ板状の圧電素子にベントホールを開閉する弁体の機能と、その弁体を駆動するアクチュエータの機能とを併せ持たせることでき、アクチュエータの小型化およびコストの削減が可能となる
また特に請求項4の発明によれば、脆弱な圧電素子に金属板よりなるプロテクタを積層して耐久性を高めることができる。
【0046】
また特に請求項5の発明によれば、リテーナに形成した複数のベントホールと弁板に形成した複数の開口とを組み合わせることにより、弁板を僅かなストローク移動させるだけでベントホールの開度を全閉状態から全開状態まで変化させることが可能となり、アクチュエータの小型化と応答性の向上とが同時に達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車の車室前部の斜視図
【図2】図1の2−2線拡大断面図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】図3の4−4線拡大断面図
【図5】運転席用エアバッグ装置の分解斜視図
【図6】図1の6−6線拡大断面図
【図7】図6の7−7線断面図
【図8】図7の8−8線矢視図
【図9】助手席用エアバッグ装置の分解斜視図
【図10】助手席用エアバッグ装置の変形例を示す、前記図7に対応する図
【図11】図10の11−11線矢視図
【図12】図10の12−12線断面図
【図13】図1の13−13線拡大断面図
【図14】図13の14方向矢視図
【図15】図14の15−15線断面図
【図16】図14の16−16線断面図
【図17】図14の17−17線断面図
【図18】ベントホールの開度の制御系を示すブロック図
【図19】ベントホールの開度パターンの一例を示す図
【図20】乗員の状態によるベントホールの開度パターンの変化を示す図
【図21】車速によるベントホールの開度パターンの変化を示す図
【符号の説明】
19 リテーナ
20 インフレータ
21 エアバッグ
29 ベントホール
31 圧電素子(アクチュエータ)
32 プロテクタ
34 エアバッグ展開制御装置(制御手段)
35b 乗員状態検出手段
35c 車速検出手段
43 リテーナ
48 エアバッグ
50 インフレータ
52 弁板
521 開口
53 アクチュエータ
75 リテーナ
78 エアバッグ
80 インフレータ

Claims (5)

  1. 折り畳んだエアバッグ(21,48,78)の開口部周縁が固定されるリテーナ(19,43,75)の内部にインフレータ(20,50,80)を収納し、車両の衝突時に前記インフレータ(20,50,80)が発生するガスで膨張するエアバッグ(21,48,78)を展開して乗員を拘束するエアバッグ装置において、
    前記リテーナ(19,43,78)に形成したベントホール(29)を開閉する圧電素子(31,53)よりなるアクチュエータと、
    乗員状態を検出する乗員状態検出手段(35b)と、
    その乗員状態検出手段(35b)が検出した乗員の体重が大きい場合は小さい場合よりも各ベントホール(29)の開度を小さくし、かつエアバッグ(21,48,78)の展開完了後の第1の期間で各ベントホール(29)の開度を一定の小開度に保持し、前記第1の期間に続く第2の期間で各ベントホール(29)の開度を増加させ、前記第2の期間に続く第3の期間で各ベントホール(29)の開度を一定の大開度に保持し、前記第3の期間に続く第4の期間で各ベントホール(29)の開度を減少させ、前記第4の期間に続く第5の期間で各ベントホール(29)の開度を一定の小開度に保持するように、前記圧電素子(31,53)に対する通電を制御してベントホール(29)の開度を変化させる制御手段(34)とを備えたことを特徴とする、エアバッグ装置。
  2. 折り畳んだエアバッグ(21,48,78)の開口部周縁が固定されるリテーナ(19,43,75)の内部にインフレータ(20,50,80)を収納し、車両の衝突時に前記インフレータ(20,50,80)が発生するガスで膨張するエアバッグ(21,48,78)を展開して乗員を拘束するエアバッグ装置において、
    前記リテーナ(19,43,78)に形成したベントホール(29)を開閉する圧電素子(31,53)よりなるアクチュエータと、
    車速を検出する車速検出手段(35c)と、
    その車速検出手段(35c)が検出した衝突時の車速が大きい場合はエアバッグ(21,48,78)の展開完了後に各ベントホール(29)の開度を増加させてから減少させ、また前記車速が小さい場合はエアバッグ(21,48,78)の展開完了後に前記車速が大きい場合よりも遅い時期に各ベントホール(29)の開度を増加させるとともに、その増加させた開度を前記車速が大きい場合の最大開度よりも大きい開度に保持するように、前記圧電素子(31,53)に対する通電を制御してベントホール(29)の開度を変化させる制御手段(34)とを備えたことを特徴とする、エアバッグ装置。
  3. 前記アクチュエータ(31)は前記ベントホール(29)を覆うように配置されて一端が前記リテーナ(19,43,75)に固定された板状の圧電素子であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
  4. 前記圧電素子に金属板よりなるプロテクタ(32)を積層したことを特徴とする、請求項3に記載のエアバッグ装置。
  5. 前記リテーナ(43)に複数のベントホール(29)を形成するとともに、前記ベントホール(29)にそれぞれ対応する複数の開口(521 )を備えた弁板(52)を前記リテーナ(43)に摺動自在に支持し、圧電素子を積層してなる前記アクチュエータ(53)で前記弁板(52)を摺動させて前記ベントホール(29)を開閉することを特徴とする、請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
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