JP3566062B2 - 非晶質塩基性複水酸化物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は産業廃水、色素廃液等に含まれる有害なHPO4 2−、CrO4 2−、MnO4 2−、酸性着色物等を吸着・除去するアニオン吸着剤および交換材、インクジェット記録媒体等への利用が期待される非晶質塩基性複水酸化物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸性物質の吸着剤およびアニオン交換体として代表される物質にハイドロタルサイト類化合物がある。
【0003】
これらのハイドロタルサイト類化合物の中で多く実用化されているMg−Al−CO3系化合物は結晶質で固体表面は正電荷を帯びユニークなアニオン交換能を有する。しかし其の細孔物性(比表面積、細孔容積)は特に優れているとは言えない(通常測定値、BET比表面積90〜150m2/g、細孔容積0.4〜0.8ml/g)。また液性はpH9以上のアルカリ性であり、アルカリ性で加水分解を起こす可能性のある化学品の吸着剤としての応用は制限される。
【0004】
固体表面の正電荷および細孔物性の機能を主に利用するハードコピー用のインクジェット記録媒体に於いては、水性アニオン染料を迅速に吸着・固定し、その吸着容量が大きいことがカラー印画紙の品位を高める重要な要素の一つになっており、固体表面の正電荷密度および細孔物性の優れた物質が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題および課題を解決する為の手段】
本発明者らは固体表面が正電荷を帯び、その電荷密度が高く、特定のアニオンとアニオン交換能を有するチャルコアルマイト[Chalcoalumite]類化合物[天然に存在する結晶質のCuAl4(OH)12SO4・3H2O等]に着目した。そして該物質の特性を保持しつつ白色で細孔物性(比表面積、細孔容積)の優れた物質を求め鋭意検討した結果、式(1)で表わされる非晶質塩基性複水酸化物を合成できることを見い出した。
【0006】
本発明の合成非晶質塩基性複水酸化物は優れた細孔物性、例えば比表面積557m2/g、細孔容積2.49ml/gを持ち水性アニオン染料の吸着能が大きく(図3、参照)、又アニオン交換能を有している(図4、参照)。
【0007】
本発明の合成非晶質塩基性複水酸化物は式(1)
Ma x+ Al2x 3+(OH)b(An−)c・mH2O (1)
式中Mx+はAl3+、Fe3+、Zr4+およびTi4+より選ばれた少くとも1種を示し、
XはM金属イオンの価数を示し、
aは0.2<a<2.0を示し、
bは16<b<28を示し、
An−はSO4 2−、HPO4 2−、CO3 2−、HPO3 2−、SO3 2−、SiO3 2−、H2PO4 −、OH−の無機アニオンおよび酢酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、アクリル酸およびベンゼンスルホン酸の有機アニオンより選ばれた1種または2種以上を示し、
Cは0.4≦C<3.0を示し、
mは1〜9を示す
で表わされる合成非晶質塩基性複水酸化物である。
【0008】
本発明の非晶質塩基性複水酸化物は以下の方法で製造することができる。水可溶性のアルミニウム塩と水可溶性の鉄塩(Fe3+)、ジルコニウム塩(Zr4+)、およびチタン塩(Ti4+)から選ばれる少なくとも1種の化合物とをアルカリ化合物で反応pH3.5〜7、温度約10〜50℃で共沈反応させ、次いで共沈物を濾別することなく前記範囲の反応pHおよび温度約60〜170℃で0.5〜24時間水熱反応させるか、あるいは前記の同様な条件下で生成した共沈物を濾別して水で洗浄後、固形物を水に懸濁して、前記範囲の反応pHおよび温度約60〜170℃で0.5〜24時間水熱反応させる方法で製造される。この場合、
使用されるM3+イオン(Al3+、Fe3+)の量は原子比M3+/Al3+で1/12〜1/4、であり、またM4+イオン(Zr4+、Ti4+)の量は原子比M4+/Al3+で0.025〜0.25で好ましくは0.025〜0.125で用いられる。共沈反応はAl3+、Fe3+、Zr4+およびTi4+より選ばれた少なくとも1種の金属イオンとAl3+とを含む水溶液に3価および4価金属イオンの合計に対して0.8〜1.2当量のアルカリ化合物を反応pH3.5〜7、温度約10〜50℃で撹拌下に加えることによって行なわれる。共沈反応の温度は特に制約はないが温度約10〜50℃が経済的であり、好ましくは約20〜40℃で約10分〜約2時間反応させることにより実施される。
【0009】
次に水熱反応は、反応pH3.5〜7、温度約60〜170℃、好ましくは約80〜150℃で約0.5〜24時間反応させることにより実施される。この場合温度が60℃より低いと式(1)で示された組成割合を有する本発明の非晶質塩基性複水酸化物の生成が不充分となり、また170℃を越える温度では水酸化アルミニウム(ベーマイト)が生成するため好ましくない。また反応時間は通常約0.5〜24時間で、好ましくは約3〜12時間である。
【0010】
本発明の非晶質塩基性複水酸化物を製造する場合、共沈反応、水熱反応ともに反応pHは3.5〜7で実施されるが、反応pHが3.5より小さいと基本骨格構造を形成する水酸化アルミニウムが沈殿形成されないため、本発明の複水酸化物が生成しない。一方反応pHが7より大きい場合には擬ベーマイトなどの水酸化アルミニウムの結晶相が生成してくるので好ましくない。
【0011】
Fe3+、Zr4+、Ti4+およびAl3+の各金属イオンの供給原料の例としては、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、臭化第二鉄、過塩素酸第二鉄等の鉄化合物;オキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物;
塩化チタン、硫酸チタン、オキシ塩化チタン、酢酸チタン等のチタン化合物;
塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、酢酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物があげられる。
【0012】
3価および4価の金属イオンを沈殿させるのに用いられるアルカリ化合物の例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、アンモニアガス、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等が例示できる。
【0013】
本発明のSO4 2−をアニオンとして含有する非晶質塩基性複水酸化物はアニオンであるSO4 2の1部をHPO4 2−、CO3 2−、HPO3 2−、CrO4 2−、SO3 2−、SiO3 2−、MnO4 2、H2PO4 −、NO3 −およびOH−の無機アニオンより選ばれた1種と、又飽和および不飽和脂肪族および芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸、オキシカルボン酸およびスルホン酸の有機アニオン、具体的には例えば酢酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、アクリル酸およびベンゼンスルホン酸等より選ばれた1種と置換(イオン交換、配位子交換)できる。
【0014】
置換を目的とする無機アニオンおよび有機アニオンは主に水溶性のナトリウム塩として使用するのが望ましい。
【0015】
又目的とするSO4 2−以外のアニオンを含む塩を水溶液で反応時に添加することにより、アニオンの1部として組み入れることも可能である。
【0016】
従って、本発明の非晶質塩基性複水酸化物はまた最初に式(1)のアニオン(An−)、がSO4 2−である化合物を製造し、次いで該SO4 2−の1部を前記無機アニオンおよび有機アニオンから選ばれる少なくとも1種のアニオンで置換することによって製造することができる。
【0017】
置換反応は目的とするアニオンの塩またはアルカリ金属水酸化物などの水溶液に温度約20〜80℃で式(1)のAn−がSO4 2−である非晶質塩基性複水酸化物を加えて数分〜約1時間撹拌することにより、またはヌッチェ、ドラムフィルター、ベルトフィルターなどの濾布上に上記非晶質塩基性複水酸化物のケーキ層を形成させ、上記のアニオン水溶液をかけて洗浄することによって行なわれる。置換反応に用いられるアニオン溶液は約0.05〜0.5モル/リットルの濃度で、置換すべきSO4 2−の当量から1.5倍当量が使用される。
【0018】
本発明の非晶質塩基性複水酸化物はBET比表面積が30〜600m2/g、全細孔容積(N2ガス吸着法)が0.4〜2.5ml/g、平均細孔径(N2ガス吸着法)が3.0〜10.0nmを有しており、また平均粒子径(レーザー回折散乱法による測定値)が0.5〜20μmであって、細孔物性が優れており、産業廃水、色素廃液などに含まれる有害なHPO4 2−イオンや酸性着色物などの吸着、除去用として、またインクジェット記録用紙の耐光性の改善用などとしての利用が期待されるものである。さらに、液性が中性以下の弱酸性を示すため加水分解、退色等のアルカリ性に対して敏感な化学品の吸着剤として、またpH4〜7の弱酸性領域の緩衝剤としても利用が期待されるものである。
【0019】
【実施例】
以下本発明を実施例および参考例に基づきさらに詳しく説明する。
【0020】
なお、実施例に記載された生成物の水分量[式(1)でm表示]は示差熱分析の熱重量測定法で200℃までの重量減少パーセントより乾燥水分測定法(105℃で3時間乾燥)による重量減少パーセントを差し引いた重量を水分量(m)として算出した。
【0021】
実施例1
試薬特級のオキシ塩化ジルコニウム(ZrCl2O・8H2O)6.45gおよび1.02モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液130mlを脱イオン水に溶解して全量を600mlに調製する。これを1リットルビーカーに入れてホモミキサーで強く撹拌しながら室温下で水酸化マグネシウム(含量99.7%)20.7gを添加する。約30分間撹拌した。懸濁液のpHは5.96(27.8℃)であった。次に容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し110℃で4時間水熱反応させた。懸濁液のpHは4.36(22.3℃)であった。濾別、水洗して固形物を得る。1リットルビーカーに脱イオン水500mlと3.5N−NaOH水溶液19ml(モル比NaOH/Al2O3=0.5)を入れ、ホモミキサーで撹拌しながら前記の固形物を加え室温で15分間懸濁させる。濾別し、水洗してアセトン洗滌後、75℃で15時間乾燥した。乾燥物の収量は24.5gであった。乾燥物は粉砕し100メッシュで篩過した。
【0022】
生成物の細孔物性の測定値を次に示す。
【0023】
BET比表面積値352m2/g、全細孔容積(N2ガス吸着法)1.54ml/g、平均細孔径7.7nm、平均粒子径(レーザー回折散乱法)6.6μm。
【0024】
化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0025】
Zr0.72Al8(OH)24.52(SO4)1.08(CO3)0.1・5.8H2O
実施例2
試薬特級のオキシ塩化ジルコニウム(ZrCl2O・8H2O)9.67gおよび1.02モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液118mlを脱イオン水に溶解して全量を600mlに調製する。これを1リットルビーカーに入れてホモミキサーで強く撹拌しながら、室温下で試薬一級3.5N−NaOH水溶液189mlを注加する。約30分間撹拌した。懸濁液のpHは6.06(26.1℃)であった。次に容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し120℃で4時間水熱反応させた。懸濁液のpHは4.31(21.5℃)であった。
【0026】
濾別、水洗して得られた固形物をアセトン洗篩後、75℃で15時間乾燥した。乾燥物の収量は26.6gであった。乾燥後は粉砕し100メッシュで篩過した。
【0027】
生成物の細孔物性の測定値を次に示す。
【0028】
BET比表面積値320m2/g、全細孔容積(N2ガス吸着法)1.80ml/g、平均細孔径9.8nm、平均粒子径(レーザー回折散乱法)7.8μm。
【0029】
化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0030】
Zr0.92Al8(OH)23.68(SO4)2・7.6H2O
実施例3
試薬特級のオキシ塩化ジルコニウム(ZrCl2O・8H2O)9.67gおよび1.02モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液118mlを脱イオン水に溶解して全量を600mlに調製する。これを1リットルビーカーに入れてホモミキサーで強く撹拌しながら室温下で水酸化マグネシウム(含量99.6%)19.4gを添加する。約30分間撹拌した。懸濁液のpHは5.92(30.1℃)であった。次に容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し120℃で4時間水熱反応させた。懸濁液のpHは4.26(21.9℃)であった。
【0031】
濾別、水洗して固形物を得る。
【0032】
1リットルビーカーに脱イオン水500mlと3.5N−NaOH水溶液17.1ml(モル比NaOH/Al2O3=0.5)を入れ、ホモミキサーで撹拌しながら前記の固形物を加え35℃で15分間懸濁させる。濾別し、水洗してアセトン洗滌後75℃で15時間乾燥した。乾燥物の収量は24gであった。乾燥物は粉砕し100メッシュで篩過した。
【0033】
生成物の細孔物性の測定値を次に示す。
【0034】
BET比表面積値557m2/g、全細孔容積(N2ガス吸着法)2.49ml/g、平均細孔径7.0nm、平均粒子径(レーザー回折散乱法)3.2μm。
【0035】
化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0036】
Zr1.06Al8(OH)25.72(SO4)1.16(CO3)0.1・5.8H2O
実施例4
試薬硫酸チタン溶液(約30%含量)24gおよび1.02モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液118mlを脱イオン水に溶解して全量を600mlに調製する。これを1リットルビーカーに入れてホモミキサーで強く撹拌しながら室温下で水酸化マグネシウム(含量99.6%)21.8gを添加する。約30分間撹拌した。懸濁液のpHは5.42(28.4℃)であった。次に容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し120℃で4時間水熱反応させた。懸濁液のpHは4.25(16.8℃)であった。濾別、水洗して得られた固形物をアセトン洗滌後、75℃で15時間乾燥した。乾燥物の収量は25.6gであった。乾燥後粉砕し100メッシュで篩過した。
【0037】
生成物の細孔物性の測定値を次に示す。
【0038】
BET比表面積値347m2/g、全細孔容積(N2ガス吸着法)1.01ml/g、平均細孔径7.3nm、平均粒子径(レーザー回折散乱法)3.7μm。
【0039】
化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0040】
Ti1.06Al8(OH)23.72(SO4)2.26・7.2H2O
実施例5
試薬特級のオキシ塩化ジルコニウム(ZrCl2O・8H2O)9.67gおよび1.02モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液118mlを脱イオン水に溶解して全量を600mlに調製する。これを1リットルビーカーに入れてホモミキサーで強く撹拌しながら室温下で水酸化マグネシウム(含量99.6%)19.3gを添加する。約30分間撹拌した。懸濁液のpHは6.47(26.4℃)であった。次に容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し120℃で4時間水熱反応させた。懸濁液のpHは4.40(18.7℃)であった。
【0041】
濾別、水洗して固形物を得る。
【0042】
1リットルビーカーに試薬特級のリン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4・12H2O)21.5g(得られた固形物に含まれるSO4 2−と当量のHPO4 2−に相当)を入れ脱イオン水500mlに溶解する。ホモミキサーで撹拌下に前記の固形物を加え、35℃で15分間懸濁させる。固形物を濾別、水洗、アセトン洗滌後、75℃で15時間乾燥した。乾燥物の収量は25.4gであった。乾燥物は粉砕し100メッシュで篩過した。
【0043】
生成物の比表面積値は334m2/g、平均粒子径(レーザー回折散乱法)は2.9μmであった。
【0044】
また化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0045】
Zr0.96Al8(OH)22.92(HPO4)1.82(SO4)0.54(CO3)0.1・6.4H2O
実施例6
実施例5の水熱反応で得られた固形物をリン酸水素二ナトリウムで処理するかわりにクロム酸カリウムを使用した以外は実施例5と同じ条件で行った。
【0046】
1リットルビーカーに試薬一級のクロム酸カリウム(K2CrO4)11.65g(実施例5の水熱反応で得られた固形物中のSO4 2−と当量のCrO4 2−に相当)を入れ脱イオン水500mlに溶解する。ホモミキサーで撹拌下固形物を加え、35℃15分間懸濁させる。固形物を濾別、水洗、アセトン洗滌後、75℃で15時間乾燥した。乾燥物の収量は24.9gであった。乾燥物は粉砕し100メッシュで篩過した。
【0047】
生成物の比表面積値は362m2/g、平均粒子径(レーザー回折散乱法)は4.2μmであった。
【0048】
化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0049】
Zr0.98Al8(OH)24.32(CrO4)0.88(SO4)0.88(CO3)0.04・6.2H2O
実施例7
試薬特級のオキシ塩化ジルコニウム(ZrCl20・8H2O)6.45gおよび1.02モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液130m1を脱イオン水に溶解して全量を600mlに調製する。これを1リットルビーカーに入れてホモミキサーで強く撹拌しながら室温下で水酸化マグネシウム(含量99.6%)20.7gを添加する。約30分間撹拌した。懸濁液のpHは6.24(34℃)であった。次に温度を90℃に上げて6時間維持する。懸濁液のpHは5.03(29.2℃)であった。得られた固形物をヌツチエで減圧濾別、水洗後、室温下でサリチル酸ナトリウム水溶液[サリチル酸ナトリウム21.3g(固形物中のSO4 2−と当量のC6H4(OH)COO−に相当)を脱イオン水800m1に溶解したもの]をかけて洗浄(800ml液の洗滌時間約7分間要した。)し、次いで水洗、アセトン洗滌後75℃で6時間乾燥した。乾燥物の収量は27.4gであった。乾燥物は粉砕し100メッシュで篩過した。
【0050】
生成物の比表面積値は286m2/g、平均粒子径(レーザー回折散乱法)は4.8μmであった。
【0051】
また化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0052】
Zr0.66Al8(OH)24.38(C6H4(OH)COO)1.22(SO4)0.52・2.4H2O
実施例8
試薬特級のオキシ塩化ジルコニウム(ZrCl2O・8H2O)9.67gおよび1.02モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液118mlを脱イオン水に溶解して全量を600mlに調製する。これを1リットルビーカーに入れて、ホモミキサーで強く撹拌しながら、室温下で水酸化マグネシウム(含量99.6%)19.3gを添加する。約30分間撹拌した。懸濁液のpHは5.35(26℃)であった。次に容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し、120℃で4時間水熱反応させた。懸濁液のpHは4.31(22.2℃)であった。得られた固形物をヌツチエで減圧濾別、水洗後、室温下でテレフタル酸ナトリウム水溶液[試薬テレフタル酸12g(固形物中のSO4 2−の1.2倍当量に相当するC6H4(COO−)2)と3N−NaOH水溶液48mlを脱イオン水で全量800m1にしたもの]をかけて洗浄(800mlの洗滌時間は約8分間要した。)し、次いで水洗を行い、アセトン洗滌後75℃で15時間乾燥した。乾燥物の収量は28.4gであった。乾燥物は100メッシュで篩過した。
【0053】
生成物の比表面積値は495m2/g、平均粒子径(レーザー回折散乱法)は6μmであった。
【0054】
また化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0055】
ZrAl8(OH)25〔C6H4(COO)2〕1.16(SO4)0.34・6.2H2O
実施例9
試薬特級のオキシ塩化ジルコニウム(ZrCl2O・8H2O)9.67gおよび1.02モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液118mlを脱イオン水に溶解して全量を600mlに調製する。これを1リットルビーカーに入れてホモミキサーで強く撹拌しながら、室温下で水酸化マグネシウム(含量99.6%)19.3gを添加する。約30分間撹拌した。懸濁液のpHは5.86(29.2℃)であった。次に容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し、120℃で4時間、水熱反応させた。懸濁液のpHは4.27(22.9℃)であった。得られた固形物をヌツチエで減圧濾別、水洗後、室温下で安息香酸ナトリウム水溶液[試薬特級安息香酸14.65g(得られた固形物中のSO4 2−と当量のC6H5COO−に相当)と3N−NaOH水溶液40mlを脱イオン水で全量800mlにしたもの]をかけて洗浄し、次いで水洗を行い、アセトン洗滌後、75℃で7時間乾燥した。乾燥物の収量は29.5gであった。乾燥物は100メッシュで篩過した。
【0056】
生成物の比表面積値は373m2/g、平均粒子径(レーザー回折散乱法)は6.1μmであった。
【0057】
また化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0058】
Zr1.02Al8(OH)25.74(C6H5COO)1.14(SO4)0.60・3.2H2O
実施例10
1.02モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液136mlを脱イオン水に溶解して全量を600m1に調製する。これを1リットルビーカーに入れてホモミキサーで強く撹拌しながら室温下で水酸化マグネシウム(含量99.6%)21.1gを添加する。約30分間撹拌した。懸濁液のpHは6.33(27.6℃)であった。次に容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し、120℃で4時間水熱反応させた。懸濁液のpHは4.18(23.7℃)であった。得られた固形物をヌツチエで減圧濾別、水洗後、室温下でテレフタル酸ナトリウム水溶液[試薬テレフタル酸12g(固形物中のSO4 2−の1.2倍当量のC6H4(COO−)2に相当)と3N−NaOH水溶液48mlを脱イオン水で全量を800mlにしたもの]をかけて洗浄し、次いで水洗を行い、アセトン洗滌後75℃で3日間乾燥した。乾燥物の収量は25.7gであった。乾燥物は100メッシュで篩過した。
【0059】
生成物の比表面積値は438m2/g、平均粒子径(レーザー回折散乱法)は5.8μmであった。
【0060】
また化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0061】
AlAl6(OH)18.84〔C6H4(COO)2〕0.75(SO4)0.33・2.7H2O
実施例11
試薬硫酸チタン溶液(約30%含量)24gおよび1.02モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液118mlを脱イオン水に溶解して全量を600mlに調製する。これを1リットルビーカーに入れてホモミキサーで強く撹拌しながら室温下で水酸化マグネシウム(含量99.6%)21.8gを添加する。約30分間撹拌した。懸濁液のpHは4.45(32.7℃)であった。次に容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し、120℃で4時間水熱反応させた。懸濁液のpHは4.14(19.1℃)であった。得られた固形物をヌツチエで減圧濾別、水洗後、室温下でテレフタル酸ナトリウム水溶液[試薬テレフタル酸12g(固形物中のSO4 2−の1.2倍当量のC6H4(COO−)2に相当)と3N−NaOH水溶液48m1を脱イオン水で全量を800mlにしたもの]をかけて洗浄し、次いで水洗を行い、アセトン洗滌後、75℃で3日間乾燥した。乾燥物の収量は26.7gであった。乾燥物は100メッシュで篩過した。
【0062】
生成物の比表面積値は374m2/g、平均粒子径(レーザー回折散乱法)は1.64μmであった。
【0063】
また化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0064】
Ti1.04Al8(OH)24.28〔C6H4(COO)2〕1.21(SO4)0.73・6H2O
実施例12
試薬一級の塩化第二鉄(FeCl3・6H2O、全量97%)9.75gおよび1.02モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液103ミリリットルを脱イオン水に溶解して全量を600ミリリットルに調製する。これを1リットルビーカーに入れて、ホモミキサーで強く撹拌しながら、室温下で3.4NのNaOH液180ミリリットルで注加し、約30分間撹拌した。懸濁液のpHは5.84(28.2℃)であった。濾別して水で洗滌後、固形物を脱イオン水で700ミリリットルの懸濁液にする。これをオートクレーブ装置に移して130℃で4時間水熱反応させた。冷後懸濁液のpHは3.94(20.8℃)であった。濾別して水で洗滌する。(これを洗滌済ケーキとする)
次に1リットルビーカーに試薬特級リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4・H2O)8.7g(得られた水熱反応生成物中のSO4 2−の0.6当量のH2PO4 −に相当)を入れ脱イオン水500ミリリットルで溶解後、洗滌済ケーキを加えて室温で30分間撹拌する。濾過・水洗してアセトン洗滌後、75℃で20時間乾燥した。乾燥物の収量は23.8gであった。乾燥物は粉砕し100メッシュで篩過した。生成物の比表面積値は331m2/g、平均粒子径(レーザー回折散乱法)1.2μmであった。
【0065】
また化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0066】
Fe1.03Al6(OH)18.13(H2PO4)1.74(SO4)0.61・4.5H2O
参考例1
インクジェット用紙への応用例
インクジェット用紙には耐光性が要求され、印画に使用されている染料(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の中でマゼンタ染料がもっとも耐光性が悪い。しかし、本発明により得られた合成非晶質塩基性複水酸化物を記録媒体に含有させることにより、耐光性が向上する。そこで、以下の塗布液を調整し、バーコーターを用いて原紙(PPC用紙)に塗布して記録用被紙を得た。次に得られた記録用被紙を、カラーインクジェットプリンター(BJC−400J/キャノン製)を用い、マゼンタのベタ印刷を行った。耐光性試験は、サンシャインウェザーメーター(WEL−SUN−HC−B型/スガ試験機製)を用いて、60時間光照射を行い、光照射前後の色差を測色色差計(ZE−2000/日本電色工業製)を用いて測定した。
【0067】
No.1
合成シリカ(ファインシールX−37B/トクヤマ製)90部、実施例10で得られた試料(非晶質塩基性複水酸化物)10部に、接着剤として、ポリビニルアルコール(PVA−117/クラレ製)40部、カチオン性樹脂として、ポリエチレンイミン(エポミンP−1000/日本触媒製)5部、中和剤としてリン酸0.2部を添加混合し、固形分濃度15%の塗布液を調整した。
【0068】
No.2
No.1の合成シリカ、実施例10で得られた試料の部数をそれぞれ50部ずつにした他は、No.1と全く同様にした。
【0069】
No.3
No.1の合成シリカを100部のみにした他は、No.1と全く同様にした。
【0070】
三者間の耐光性の比較については、No.3の変色率を100として以下の表に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
上記表より、実施例10で得られた試料の添加によってマゼンタ染料の変色が抑えられ、更に試料の添加量を増すことにより変色は抑制されることがわかる。
【0073】
【発明の効果】
本発明の合成非晶質塩基性複水酸化物は固体表面が正電荷を帯び、アニオン交換能と大きい細孔物性(比表面積、細孔容積)を有する機能よりアニオン吸着剤および交換材、インクジェット記録媒体等への新たな応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2の塩基性複水酸化物のXRD測定図である。
【図2】実施例8の塩基性複水酸化物のXRD測定図である。
【図3】実施例1、実施例2、実施例4、実施例8、実施例9の各塩基性複水酸化物およびKW−1100(合成ハイドロタルサイト、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O協和化学工業(株)市販品)の直接染料(クロラゾールブラックLF、C35H27N9Na2O7S2)の吸着等温線を示す(30℃、6時間処理)。
【図4】実施例2の塩基性複水酸化物のHPO4 2−の吸着等温線を示す(30℃、1時間処理、試薬Na2HPO4・12H2O)。
Claims (8)
- 式1
Max+Al2x 3+(OH)b(An−)c・mH2O (1)
式中Mx+はAl3+、Fe3+、Zr4+およびTi4+より選ばれた少くとも1種を示し、
XはM金属イオンの価数を示し、
aは0.2<a<2.0を示し、
bは16<b<28を示し、
An−はSO4 2−、HPO4 2−、CO3 2−、HPO3 2−、CrO 4 2− 、SO3 2−、SiO3 2−、H2PO4 −、OH−の無機アニオンおよび酢酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、アクリル酸およびベンゼンスルホン酸の有機アニオンより選ばれた1種または2種以上を示し、
Cは0.4≦C<3.0を示し、
mは1〜9を示す
で表わされる非晶質塩基性複水酸化物。 - BET比表面積が30〜600m2/gである請求項1記載の非晶質塩基性複水酸化物。
- 全細孔容積(N2ガス吸着法)が0.4〜2.5ml/gである請求項1記載の非晶質塩基性複水酸化物。
- 平均細孔径(N2ガス吸着法)が3.0〜10.0nmである請求項1記載の非晶質塩基性複水酸化物。
- 平均粒子径がレーザー回折散乱法による測定値で0.5〜20μmである請求項1記載の非晶質塩基性複水酸化物。
- 水可溶性のアルミニウム塩と水可溶性の鉄塩(Fe3+)、ジルコニウム塩(Zr4+)およびチタン塩(Ti4+)から選ばれる少なくとも1種の化合物とをアルカリ化合物で反応pH3.5〜7、温度10℃〜50℃で共沈反応させ、次いで共沈物を濾別することなく前記範囲の反応pHおよび温度60℃〜170℃で0.5時間〜24時間水熱反応させるか、あるいは前記の同様な条件下で生成した共沈物を濾別して水で洗滌後、固形物を水に懸濁して、前記範囲の反応pHおよび温度60℃〜170℃で0.5時間〜24時間水熱反応させることから成る請求項1記載の式(1)の非晶質塩基性複水酸化物の製造方法。
- Al3+、Fe3+、Zr4+およびTi4+より選ばれた1種の金属イオンとAl3+金属イオンとを含む水溶液であって、該水溶液に含まれるM3+イオンの量が原子比M3+/Al3+で 1/12〜1/4であり、M4+イオンの量が原子比M4+/Al3+で0.025〜0.25である水溶液に、3価および4価金属イオンとの合計に対して0.8〜1.2当量のアルカリ化合物を反応pH3.5〜7、温度10〜50℃で加えて生成した共沈物を温度60℃〜170℃で0.5時間〜24時間水熱反応させることから成る請求項6記載の非晶質塩基性複水酸化物の製造方法。
- 請求項1記載の式(1)のAn−がSO4 2−である非晶質塩基性複水酸化物を製造し、次いで該化合物のSO4 2−の1部をHPO4 2−、CO3 2−、HPO3 2−、CrO 4 2− 、SO3 2−、SiO3 2−、H2PO4−、OH−の無機アニオンおよび酢酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、アクリル酸およびベンゼンスルホン酸の有機アニオンより選ばれた少なくとも1種の陰イオンで置換することから成る請求項1記載の非晶質塩基性複水酸化物の製造方法。
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