JP3564795B2 - ピストン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は,シリンダヘッドに吸気ポートと排気ポートとを備えたエンジンにおけるシリンダ内を往復運動するピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特に、ディーゼルエンジンを長時間運転すると、ピストンのトップランド部にカーボンが付着することが顕著であり、ガソリンエンジンでも同様な現象が発生する。ピストンのトップランド部にカーボンが付着するのを防止するため、ピストンの構造を考慮したピストンとして、実開平3−27855号公報に開示されたものがある。該内燃機関のピストンは、トップランド部における燃焼室の中心がオフセットし、ピストンスカート部に対してトップランド部の径を小さくするカットバック量を極力小さくするものであり、燃焼室がピストンの周辺に近寄った部分のカットバック量をその隣接部分より大きくとってトップランド部を偏心させ、ハードカーボンの付着量を少なくすると共に、ライナの局部摩耗を減少してエンジン性能の悪化を防止したものである。
【0003】
また、実開昭63−166650号公報に開示された内燃機関用ピストンは、ピストンのスラスト側と反スラスト側のピストン頭部側面にカーボンが堆積するのを防止するものであり、スラスト側及び反スラスト側の何れか一方又は双方の中央部付近から所定範囲内に頂面から一定長さ切欠いた切欠部をトップリング溝より上部の側面外周部に設けたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジンは、通常運転時には、吸気は温度が低いので吸気ポート側は温度が低くなるが、排気ガスの温度は高いので排気ポート側は高温になる。このため、ピストン頂面の温度は、吸排気ポートの温度に影響されて排気ポートが形成された領域側は吸気ポートが形成されている領域側より高温になり、例えば、ディーゼルエンジンでは温度差が100℃程度になる。
【0005】
従来のエンジンに組み込んだピストンの熱膨張について、図3を参照して説明する。図3はピストンのトップランド部の熱膨張状態の一例を説明する平面図である。図3に示すように、ピストン20において、ピストン20に形成された燃焼室23の中心がピストン中心OP にあり、ピストン20のピストン中心OP とトップランド部中心OT とが一致している場合に、エンジンの運転時に、ピストン20のトップランド部21は昇温して外周方向へ熱膨張し、吸気ポート8側に対応する領域では熱膨張量が小さく、排気ポート7側に対応する領域では熱膨張量が大きくなり、吸気ポート8側と排気ポート7側とで熱膨張量が異なり、ピストン20とシリンダ壁面即ちシリンダライナ壁面との間の隙間即ちクリアランスが異なった状態になる。即ち、排気ポート7側に対応する領域が吸気ポート8側に対応する領域より小さなクリアランスになる。
【0006】
しかしながら、エンジンの長時間運転すると、発生したカーボンがクリアランスが狭い排気ポート側に対応する領域のトップランド部21にカーボンが多く付着することになる。そこで、ピストン20のトップランド部21に付着したカーボンは、シリンダライナ壁面に付着しているオイルをかき上げてしまったり、トップランド部21に付着したカーボンが硬くなってシリンダライナの壁面を傷つけたり、或いはオイル消費量が増大するという問題が発生する。
【0007】
また、前掲実開平3−27855号公報に開示された内燃機関のピストンは、ピストンヘッド部に設けた燃焼室が偏心しており、該燃焼室の位置に対応してトップランド部を偏心させたものであるが、ディーゼルエンジンではピストンヘッド部に形成した燃焼室はピストン中心に形成されたものがあり、このような形式のピストンに対しては上記構成を適用できないものである。
【0008】
また、前掲実開昭63−166650号公報に開示された内燃機関用ピストンは、トップリング溝より上部の側面外周部に切欠部を設けたものであり、その切欠部の切欠き量を極小に形成しなければエンジン性能が低下するというものである。
【0009】
この発明の目的は、上記の課題を解決することであり、ピストンヘッド部のピストン中心に形成したキャビティで燃焼室を構成したピストン或いはシリンダ側に燃焼室が形成されているピストンにおいて、ピストンヘッド部へのカーボンの付着がトップランド部の熱応力による熱膨張に伴って発生することに着眼し、トップランド部の熱膨張時のピストン周囲の側壁面とシリンダライナ壁面との隙間をピストン全周にわたって均一になるように構成してピストンヘッド部へのカーボンの付着を低減したピストンを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は,上記目的を達成するため,次のように構成されている。即ち,この発明は,シリンダヘッドに吸気ポートと排気ポートとを備えたエンジンにおけるシリンダ内を往復運動するピストンにおいて,前記エンジンの非駆動時の常温では,トップリング溝より上部のトップランド部は,前記トップリング溝より下部のピストン側壁面とシリンダ壁面との隙間に対してトップランド側壁面と前記シリンダ壁面との隙間が前記排気ポート側を広く且つ前記吸気ポート側を狭くして前記排気ポート側が前記吸気ポート側より広くなるようにピストン中心から前記吸気ポート側に片寄った位置にオフセットされていることを特徴とするピストンに関する。
【0011】
また,このピストンは,前記トップランド部に形成されたキャビティで構成される燃焼室の中心が前記ピストン中心に位置しているものに適用して有効なものである。また,このピストンについては,前記ピストン中心からの前記トップランド部のオフセット量は,前記エンジンの駆動時の前記トップランド部の前記吸気ポート側領域と前記排気ポート側領域との温度差に応じて設定されるものである。
【0012】
この発明によるピストンは,上記のように,前記エンジンの非駆動時の常温では,トップリング溝より上部のトップランド部は,前記トップリング溝より下部のピストン側壁面とシリンダ壁面との隙間に対してトップランド側壁面と前記シリンダ壁面との隙間が前記排気ポート側を広く且つ前記吸気ポート側を狭くして前記排気ポート側が前記吸気ポート側より広くなるようにピストン中心から吸気ポート側に片寄った位置にオフセットされているので,エンジンの駆動時には吸気ポート側より排気ポート側のピストンヘッド部が高温になり,トップランド部の熱膨張量が吸気ポート側領域よりも排気ポート側領域が大きくなるが,ピストン中心からみれば,ピストン外周面のシリンダ壁面に対するクリアランスはトップランド部全周にわたって均一な大きさになり,カーボンの付着が排気ポート側トップランド部に片寄ることがない。従って,ピストンのトップランド部へのカーボン付着がピストン全周にわたって均一になるので,オイルのかき上げやシリンダライナへの付着カーボンによる傷つけが無くなり,オイル消費量が増大することがなく,エンジン性能を向上させ,エンジン寿命を長くすることができる。
【0013】
このピストンは、ピストンヘッド部に形成されたキャビティで構成される燃焼室の中心がピストン中心に位置するものに適用したり、或いはディーゼルエンジンに適用した場合に極めて有効である。また、前記ピストン中心からの前記トップランド中心のオフセット量は、ディーゼルエンジン駆動時の前記吸気ポート側領域と前記排気ポート側領域との温度差を要件として設定されるが、この場合に、ピストン半径やピストン材質による熱膨張係数を考慮して設定される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下,図1及び図2を参照して,この発明によるピストンの実施例について説明する。図1はこの発明によるピストンの一実施例を組み込んだエンジンを示す側面図,及び図2は図1のピストンの頂面を示す平面図である。
【0015】
図1に示すように、この発明によるピストン1は、特に、駆動時にカーボンが発生するディーゼルエンジンに組み込まれて特に好適なものであるが、ガソリンエンジン等に適用しても同様な効果を期待できるものである。また、図1及び図2に示すピストン1は、トップランド部2に形成したキャビティ16で燃焼室3を構成しているが、本発明によるピストン1はピストンヘッド部に燃焼室を形成していないものにも適用できるものである。
【0016】
図1及び図2では、ピストン1のピストン下部のプロフィール6とトップランド部2のプロフィール5との偏心量は、説明のため誇張して示されている。ディーゼルエンジンは、例えば、シリンダブロック15にガスケット19を介して固定されたシリンダヘッド11に一対の排気ポート7と一対の吸気ポート8とが形成されている。シリンダブロック15に形成された孔部にはシリンダ9を構成するシリンダライナ10が嵌合されている。シリンダライナ10で構成されたシリンダ9には、本発明のピストン1が往復運動を行うように組み込まれている。排気ポート7にはシリンダ9側の燃焼室との開閉を行うため排気バルブ17が配置され、また、吸気ポート8にはシリンダ9側の燃焼室との開閉を行うため吸気バルブ18が配置されている。
【0017】
ピストン1は、ピストンヘッド部とピストンスカート部から成り、ピストンスカート部には、図示していないが、ピストン中心OP を軸心として貫通するピストンピンを挿通するピン孔が形成されたボス部を備えている。即ち、ボス部に設けたピン孔の中心はピストン中心OP に直交している。ピストンヘッド部にはトップリング溝4及びピストンリング溝12が形成され、トップリング溝4にはトップリング13が装着され、ピストンリング溝12にはピストンリング14が装着されている。ピストン1のピストンヘッド部には、キャビティ16が形成され、キャビティ16によってピストン1に燃焼室3が構成されている。
【0018】
この発明によるピストン1は,特に,ピストンヘッド部に形成されたキャビティ16で構成される燃焼室3の中心がピストン中心OP に位置し,エンジンの非駆動時で,常温状態の吸気ポート8側と排気ポート7側とのピストンヘッド部に熱膨張差がない時に,トップリング溝4より上部の外周面であるプロフィール5を有するトップランド部2のトップランド中心OT は,ピストン中心OP から吸気ポート8側に片寄った位置に,言い換えれば,トップリング溝4より下部のピストン1側壁面とシリンダ9壁面との隙間に対して,トップランド側壁面とシリンダ9壁面とのクリアランス即ち隙間が排気ポート7側を広く且つ吸気ポート8側を狭くして排気ポート7側が吸気ポート8側より広くなるようにオフセットされていることを特徴とするものである。また,ピストン1では,ピストンヘッドの下部とピストンスカート部のピストン下部の外周面即ちプロフィール6のピストン下部中心OL は,ピストン中心OP と一致するように構成されている。
【0019】
また、ピストン中心OP からのトップランド中心OT のオフセット量は、ディーゼルエンジンの駆動時のトップランド部2の吸気ポート8側領域と排気ポート7側領域の温度差によって設定されている。一般に、トップランド部2の吸気ポート8側領域と排気ポート7側領域の温度差は、約100℃程度である。本発明のピストン1では、トップランド中心OT のオフセット量は、ピストン半径やピストン材質による熱膨張係数を考慮して上記温度差によって設計して設定されているものである。
【0020】
この発明によるピストン1は,上記のように,トップランド部2のプロフィール5がピストン下部の外周面のプロフィール6よりも吸気ポート8側にオフセットされ,エンジンの非駆動時の常温では,シリンダ9壁面とピストンの排気ポート7側領域の外周面(プロフィール5)とのクリアランス即ち隙間は,吸気ポート8側領域の外周面(プロフィール5)とのクリアランス即ち隙間より大きく即ち広くなっており,言い換えれば,トップリング溝4より下部のピストン1側壁面とシリンダ9壁面との隙間に対して,トップランド側壁面とシリンダ9壁面との隙間が排気ポート7側を広く且つ吸気ポート8側を狭くして排気ポート7側が吸気ポート8側より広くなるようになっており,しかも,シリンダヘッド11に排気ポート7と吸気ポート8とを設け,ピストン1に形成したキャビティ16によって形成した燃焼室3の中心をピストン中心OP に一致するように設けられている。従って,ピストン1は,ディーゼルエンジン駆動によって燃焼室温度が上昇すると,ピストン頂面22では排気ポート7に対応する領域の温度が吸気ポート8に対応する領域の温度に比較して,例えば,100℃程度高くなる。その結果,トップランド部2の排気ポート7側領域の熱膨張量が吸気ポート8側領域の熱膨張量より大きくなるが,ピストン1では予めトップランド部2が吸気ポート8側にオフセットされているので,シリンダ9壁面とピストン外周面(プロフィール5)との間のクリアランス即ち隙間はトップランド部2の全周で均一になり,発生するカーボンに対して同条件になり,ピストン頂面22に偏って付着する現象がない。従って,この発明によるピストン1では,カーボンがピストン頂面22に局部的に付着することがない。
【0021】
【発明の効果】
この発明によるピストンは,上記のように構成されているので,エンジン駆動時にはトップランド部が温度上昇してトップランド部の熱膨張量が吸気ポート側と排気ポート側との領域で異なるが,シリンダライナ壁面即ちシリンダ壁面とピストン外周面とのクリアランスの点からは同一のクリアランス量になり,エンジンの運転時にカーボンが発生しても,該カーボンがピストン頂面に局部的に付着することがなく,トップランド部の全周にわたって均一に付着することになる。従って,本発明のピストンでは,オイルのかき上げやピストン頂面に付着したカーボンによるシリンダライナへの傷つけ等が発生せず,オイル消費量が増大することもなく,エンジン性能を向上させ,耐久性を向上させ,エンジン寿命を長くすることができる。
【0022】
また、このピストンにおいて、前記トップランド部に形成されたキャビティで構成される燃焼室の中心が前記ピストン中心に位置しているものは、ピストンヘッド部の温度差が大きく現れるので、トップランド中心をピストン中心からオフセットさせる効果が有効になる。このピストンは、特に、ディーゼルエンジンの場合にはカーボンの発生が多いので、該ディーゼルエンジンに組み込まれると、上記効果が大きいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるピストンを組み込んだエンジンの一実施例を示す側面図である。
【図2】図1のピストンの頂面を示す平面図である。
【図3】ピストンのトップランド部の熱膨張状態を説明する平面図である。
【符号の説明】
1 ピストン
2 トップランド部
3 燃焼室
4 トップリング溝
5 トップランド部のプロフィール
6 ピストン下部のプロフィール
7 排気ポート
8 吸気ポート
9 シリンダ
11 シリンダヘッド
16 キャビティ
OP ピストン中心
OT トップランド中心
Claims (3)
- シリンダヘッドに吸気ポートと排気ポートとを備えたエンジンにおけるシリンダ内を往復運動するピストンにおいて,
前記エンジンの非駆動時の常温では,トップリング溝より上部のトップランド部は,前記トップリング溝より下部のピストン側壁面とシリンダ壁面との隙間に対してトップランド側壁面と前記シリンダ壁面との隙間が前記排気ポート側を広く且つ前記吸気ポート側を狭くして前記排気ポート側が前記吸気ポート側より広くなるようにピストン中心から前記吸気ポート側に片寄った位置にオフセットされていることを特徴とするピストン。 - 前記トップランド部に形成されたキャビティで構成される燃焼室の中心が前記ピストン中心に位置することを特徴とする請求項1に記載のピストン。
- 前記ピストン中心からの前記トップランド部のオフセット量は,前記エンジンの駆動時の前記トップランド部の前記吸気ポート側領域と前記排気ポート側領域との温度差に応じて設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のピストン。
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JPH08312451A JPH08312451A (ja) | 1996-11-26 |
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JP13742495A Expired - Fee Related JP3564795B2 (ja) | 1995-05-12 | 1995-05-12 | ピストン |
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1995
- 1995-05-12 JP JP13742495A patent/JP3564795B2/ja not_active Expired - Fee Related
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