JP3564696B2 - 車両の操舵制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ハンドルの操作トルク等に基づいて駆動手段により転舵輪を転舵する車両の操舵制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
操舵時にハンドルに発生する操舵トルク及び車速等に基づいて操舵制御を行う操舵制御装置として、電動式パワーステアリング装置及びトルク感応式ステアリング装置等が存在する(特開昭62−210167号公報等参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の装置においては、ハンドルの操作トルクに基づいて転舵輪の駆動手段等を駆動制御しているため、駆動手段等に異常が発生した場合には転舵輪の転舵を行うことが困難であった。
【0004】
この発明の課題は、操舵システムの駆動手段等の故障時等においても車両を旋回させることが可能な車両の操舵制御装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の車両の操舵制御装置は、ハンドルの操舵量を検出する操舵量検出手段と、操舵量検出手段により検出された操舵量に基づいてハンドルに操舵反力を付与する操舵反力付与手段と、操舵量検出手段により検出された操舵量に基づいて転舵輪を転舵駆動する転舵駆動手段とを備える車両の操舵制御装置において、ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、操舵反力付与手段の異常状態を検出する異常状態検出手段と、操舵反力付与手段の異常状態が検出された場合に、左右車輪の制動装置に対して、操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクに基づいた制動力差を付与する制動力差付与手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この請求項1記載の車両の操舵制御装置によれば、操舵反力付与手段の異常時に運転者の操舵意志を操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクに基づいて判定し、制動力差付与手段により操舵トルクに基づいた制動力差を左右輪の制動装置に付与する。従って、操舵反力付与手段の異常時においても運転者の操舵意志に基づいて車両を旋回させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図3を参照して、この発明の第1の実施の形態の説明を行う。図1はこの発明の実施の形態にかかる電動式パワーステアリング装置の全体構成を示す概略図である。
【0012】
ハンドル10はステアリングシャフト12の上端部に設けられている。また、ピニオンギヤ14はステアリングシャフト12の下端部に設けられており、このピニオンギヤ14はラックバー16に形成された直線状の歯車と噛合わされている。モータを含んで構成されるアクチュエータ18は、ラックバー16と同軸上に設けられており、モータの回転により図示しないボールナットを回転させ、この回転を図示しないリサーキュレートボール及びボールスクリューによりラックバー16の推進力に変換する。
【0013】
ラックバー16の両端には、それぞれタイロッド20の一端が接続されると共に各タイロッド20の他端にはナックルアーム22を介して転舵輪24が接続されており、ラックバー16の推進により転舵輪24が転舵される。
【0014】
上述のアクチュエータ18には、モータの回転角を検出するための回転角センサ26が設けられており、回転角センサ26により検出されたモータの回転角がパワーステアリングコンピュータ28に入力される。また、ステアリングシャフト12には、ハンドル10の操舵トルクを検出するためのトルクセンサ30及びハンドル10の操舵角を検出する操舵角センサ32が設けられており、このトルクセンサ30により検出された操舵トルク及び操舵角センサ32により検出された操舵角がパワーステアリングコンピュータ28に入力される。更に、パワーステアリングコンピュータ28には、車速センサ34により検出された車速が入力される。
【0015】
一方、パワーステアリングコンピュータ28は、回転角センサ26により検出されたモータの回転角、トルクセンサ30により検出された操舵トルク等に基づいてアクチュエータ18に駆動信号を出力し転舵輪24の転舵をアシストする。また、パワーステアリングコンピュータ28は、ブレーキ制御部36に対して左右の輪に制動力差を付与するための制御信号の出力を行う。
【0016】
この電動式パワーステアリング装置においては、アクチュエータ18に失陥が生じた場合には、左右転舵輪24の制動装置に対して制動力差を付与することにより車両の旋回を行う。即ち、まず電動式パワーステアリング装置のパワーステアリングコンピュータ28は、アクチュエータ18が正常であるか否かの判定を行う(ステップS10)。ここでアクチュエータ18の故障判定は、トルクセンサ30により検出された操舵トルクの値が車速センサ34により検出された車速及び操舵角センサ32により検出されたハンドル10の操舵角により定められる閾値より大きいか否かを判定し、大きい場合にアクチュエータ18の故障と判定する。即ち、操舵トルクの値が車速及び操舵角により定められる閾値より大きい場合には、アクチュエータ18が故障してアシスト力を発生することができなくなった場合、又はアクチュエータ18が故障してロック状態になった場合においてハンドル操作を行おうとして力を込めた場合と考えられるためである。
【0017】
上述のステップS10において、アクチュエータ18が正常でないと判定された場合には、トルクセンサ30により検出された操舵トルクの値に基づいて運転者の操舵意志方向を判断して車両の旋回方向を決定し(即ち制動するブレーキの選択を行い)、更に選択した車輪に付与する制動力をトルクセンサ値にほぼ比例した値として求め、ブレーキ制御部36に対して制御信号を出力し、選択した車輪に対して制動力を付与する(ステップS11)。例えば、運転者の操舵意志方向が右方向であると判断した場合には、右前輪にステップ11で求めた制動力を付与することにより、車両の重心点回りに右方向の回転モーメントを発生させて車両を右方向に旋回させる。即ち、車両進行方向とタイヤの方向に差が発生する(タイヤ滑り角を生じる)。従って、タイヤの滑る方向と進行方向の違いからタイヤに保持点回りの曲げ力が発生する。この曲げ力は、進行方向にタイヤの向きを一致させようと働くため、操舵意志方向に車両進行方向が向くように制動力をかければ、タイヤには操舵意志方向に車両を曲げる力が発生し、この力がハンドルを操舵意志方向にアシストする力として作用する(図3参照)。
【0018】
このステップS11の処理により、選択した車輪に対して制動力を付与すると車両の旋回が開始される。そして車両が目標方向の向いたときには、運転者に操舵意志がなくなることからトルクセンサ30による検出値がゼロになるため、ブレーキ制御部36による制動力の付与を終了させる。
【0019】
一方、上述のステップS10において、アクチュエータ18が正常と判断された場合には通常のアシスト制御を行う(ステップS12)。
【0020】
この実施の形態にかかる電動式パワーステアリング装置においては、アクチュエータ18に失陥が生じた場合、アクチュエータ18が固着した場合等アシスト手段が故障した場合には、運転者の操舵意志をトルクセンサ30により検出された操舵トルクに基づいて判定し、操舵トルクに基づいた制動力差を左右輪の制動装置に付与するため、アシスト手段が故障した場合においても運転者の操舵意志に基づいて車両を旋回させることができる。
【0021】
次に、図4及び図5を参照して、この発明の第2の実施の形態の説明を行う。図4はこの発明の実施の形態にかかるステアバイワイヤ式ステアリング装置の全体構成を示す概略図である。
【0022】
ハンドル40はステアリングシャフト42の上端部に設けられている。また、ステアリングシャフト42の下端部には、ハンドル40に対して操舵反力を付与するための反力モータ44が設けられている。また、ステアリングシャフト42には、ハンドル40の操舵トルクを検出するためのトルクセンサ46及びハンドル40の操舵角を検出する操舵角センサ48が設けられており、このトルクセンサ46により検出された操舵トルク及び操舵角センサ48により検出された操舵角が舵取り制御部50に入力される。更に、舵取り制御部50には、車速センサ52により検出された車速が入力される。
【0023】
転舵モータ54は、ラックバー56と同軸上に設けられており、転舵モータ54の回転力がラックバー56の推進力に変換される。ラックバー56の両端には、それぞれタイロッド58の一端が接続されると共に各タイロッド58の他端にはナックルアーム60を介して転舵輪62が接続されており、ラックバー56の推進により転舵輪62が転舵される。また、転舵輪62の転舵角を検出するために位置センサ64が設けられており、この位置センサ64により検出された検出値が舵取り制御部50に入力される。
【0024】
一方、舵取り制御部50は、操舵角センサ48により検出されたハンドル40の操舵角等に基づいて駆動回路66に対して反力モータ44を制御するための制御信号の出力を行うと共に駆動回路68に対して転舵モータ54を駆動するための制御信号の出力を行う。更に、舵取り制御部50は、ブレーキ制御部70に対して左右の輪に制動力差を付与するための制御信号の出力を行う。
【0025】
このステアバイワイヤ式ステアリング装置においては、転舵アクチュエータ、反力アクチュエータに失陥が生じた場合には、左右転舵輪62の制動装置に対して制動力差を付与することにより車両の旋回を行う。即ち、まずステアバイワイヤ式ステアリング装置の舵取り制御部50は、転舵モータ54を含んで構成される転舵アクチュエータが正常であるか否かの判断を行う(ステップS20)。ここで転舵アクチュエータの故障判定は、操舵角センサ48により検出されたハンドル40の操舵角の値と位置センサ64により検出された転舵輪62の転舵角との差が予め定められる閾値より大きいか否かを判定し、大きい場合に転舵アクチュエータの故障と判定する。
【0026】
また、バイラテラル制御を行っている場合には、操舵反力を計測するためのトルクセンサ46の検出値が、閾値よりも大きい時には、転舵アクチュエータが故障してロック状態になった状態でハンドル40を更に操舵しようとして力を込めた状態であると考えられるため転舵アクチュエータの故障と判断する。
【0027】
ステップS20において、転舵アクチュエータが正常と判断した場合には、反力アクチュエータが正常か否かの判断を行う(ステップS21)。ここで反力アクチュエータの故障判定は、操舵反力を計測するためのトルクセンサ46の検出値が、閾値よりも大きい時には、反力アクチュエータが故障してロック状態になった状態でハンドル40を更に操舵しようとして力を込めた状態であると考えられるため反力アクチュエータの故障と判断する。
上述のステップS20、S21において、転舵アクチュエータ、反力アクチュエータが正常でないと判定された場合において、故障が転舵アクチュエータ、反力アクチュエータのロック状態時である場合には、トルクセンサ46により検出された操舵トルクの値に基づいて運転者の操舵意志方向を判断して車両の旋回方向を決定し(即ち制動するブレーキの選択を行い)、更に選択した車輪に対して付与する制動力をトルクセンサ値にほぼ比例した値として求め、ブレーキ制御部70に対して制御信号を出力して選択した車輪に対して制動力の付与を行う。
【0028】
また、故障が転舵アクチュエータの非ロック状態の故障の場合には、操舵角センサ48により検出されたハンドル40の操舵角の値に基づいて運転者の操舵意志方向を判断して車両の旋回方向を決定し(即ち制動する輪の選択を行い)、更に操舵角センサ48の値の中立点(直進状態位置)からの偏差に比例した制動力を求め、ブレーキ制御部70に対して制御信号を出力して選択された輪に対して求められた制動力を付与する(ステップS22)。
【0029】
一方、上述のステップS20、S21において、アクチュエータが正常と判断された場合には通常の駆動制御を行う(ステップS23)。
【0030】
このステップS22の処理により、選択した車輪に対して制動力を付与すると車両の旋回が開始される。そして車両が目標方向に向いたときには、運転者に操舵意志がなくなることからトルクセンサ46による検出値がゼロになるため、ブレーキ制御部70による制動力の付与を終了させる。
【0031】
この実施の形態にかかるステアバイワイヤ式ステアリング装置においては、転舵アクチュエータ、反力アクチュエータに失陥が生じた場合等駆動手段が故障した場合には、運転者の操舵意志をトルクセンサ46により検出された操舵トルク、操舵角センサ48により検出された操舵量に基づいて判定し、操舵トルク、操舵量に基づいた制動力差を左右輪の制動装置に付与するため、駆動手段が故障した場合においても運転者の操舵意志に基づいて車両を旋回させることができる。
【0032】
なお、上述の実施の形態においては、制動力を転舵輪のうちのいずれか一方の輪に対して付与しているが、図6(a)に示すように非転舵輪のうちのいずれか一方の輪に対して制動力を付与してもよく、更に図6(b)に示すように転舵輪及び非転舵輪のうちのいずれか一方側の輪に対して制動力を付与してもよい。
【0033】
また、油圧式パワーステアリング装置を用いた車両において、左右輪に制動力差を付与することにより車両を旋回させるようにしてもよい。
【0036】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、操舵反力付与手段の異常時に運転者の操舵意志を操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクに基づいて判定し、制動力差付与手段により操舵トルクに基づいた制動力差を左右輪の制動装置に付与する。従って、操舵反力付与手段の異常時においても運転者の操舵意志に基づいて車両を旋回させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態にかかる電動式パワーステアリング装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】第1の実施の形態にかかる電動式パワーステアリング装置の故障判定処理を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施の形態にかかる電動式パワーステアリング装置を搭載した車両の旋回状態を示す図である。
【図4】第2の実施の形態にかかるステアバイワイヤ式ステアリング装置の全体構成を示す概略図である。
【図5】第2の実施の形態にかかるステアバイワイヤ式ステアリング装置の故障判定処理を示すフローチャートである
【図6】実施の形態にかかる車両の旋回状態を示す図である。
【符号の説明】
10…ハンドル、12…ステアリングシャフト、14…ピニオンギヤ、16…ラックバー、18…アクチュエータ、24…転舵輪、26…回転角センサ、28…パワーステアリングコンピュータ、30…トルクセンサ、32…操舵角センサ、34…車速センサ、40…ハンドル、42…ステアリングシャフト、44…反力モータ、46…トルクセンサ、48…操舵角センサ、50…舵取り制御部、54…転舵モータ、62…転舵輪、64…位置センサ。
Claims (1)
- ハンドルの操舵量を検出する操舵量検出手段と、前記操舵量検出手段により検出された操舵量に基づいて前記ハンドルに操舵反力を付与する操舵反力付与手段と、前記操舵量検出手段により検出された操舵量に基づいて転舵輪を転舵駆動する転舵駆動手段とを備える車両の操舵制御装置において、
前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記操舵反力付与手段の異常状態を検出する異常状態検出手段と、前記操舵反力付与手段の異常状態が検出された場合に、左右車輪の制動装置に対して、前記操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクに基づいた制動力差を付与する制動力差付与手段と、
を備えることを特徴とする車両の操舵制御装置。
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