JP3563430B2 - サーマルプリンタヘッドの熱処理装置およびサーマルプリンタヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は薄膜からなる発熱抵抗体によって形成されるサ−マルプリンタヘッドの熱処理装置およびサーマルプリンタヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、サ−マルプリンタヘッドは基板に発熱抵抗体を設け、この発熱抵抗体の所定方向両端部にリ−ド線が接続されてなる。このようなサ−マルプリンタヘッドは、発熱抵抗体の材料としてTa−SiO2 、Nb−SiO2 、Zr−SiO2 、Cr−SiO2 などの金属とSiO2 を組み合わせたものをタ−ゲット材とし、スパッタリング法により膜厚200〜5000オングストロ−ムの上記発熱抵抗体が形成される。
【0003】
上記発熱抵抗体は、スパッタリングしたままの状態ではサ−マルプリンタヘッドとしての使用時に発熱温度で抵抗値が低下して流れる電流が増加し、その電流によりさらに発熱量が増えるため、さらに電流が過大に流れる。その結果、最終的には発熱抵抗体がそれ自体の発熱により破壊されるに至ることがある。
【0004】
このような現象は発熱抵抗体の結晶構造の微細粒子の組織が使用による経時変化を起こし、その発熱抵抗体の抵抗値が低下するためであると考えられている。そのため、上記発熱抵抗体を上述した方法で形成したならば、その発熱抵抗体の結晶化状態をより安定化させるために、通電エ−ジングまたは加熱炉内でのアニ−リングまたはレ−ザ光照射によるレ−ザアニ−ルなどの熱処理を行うようにしている。それによって、発熱抵抗体は発熱により抵抗値が低下するのをなくすことができる。
【0005】
ところで、加熱炉においてアニ−リングした場合、発熱抵抗体の抵抗値は、アニ−ル温度と処理時間により制御される。しかしながら、このようなアニ−リングだけでは、基板上に設けられた多数の発熱抵抗体間に抵抗値のばらつきが生じる。
【0006】
そこで、抵抗値の大きな発熱抵抗体だけをレ−ザ光でアニ−ル処理し、各発熱抵抗体間の抵抗値のばらつきを小さくするということが行われる。その場合、レ−ザ光を照射する前と後における上記発熱抵抗体の抵抗値を測定する必要がある。しかしながら、レ−ザ光の照射後における発熱抵抗体の抵抗値は、その発熱抵抗体の温度が室温に低下するまで安定せず、安定するまでに数秒の時間が掛かる。たとえば、1つの発熱抵抗体に数百パルスのレ−ザ光を照射してその抵抗値を調整する場合、その調整に数百秒の処理時間が必要となるから、その処理に多くの手間が掛かり、実用的でないということがある。
【0007】
一方、サ−マルプリンタヘッドの動作時、従来の発熱抵抗体は温度上昇がその所定方向において一様であった。そのため、発熱抵抗体からの熱は、その所定方向両端部に接続されたリ−ド線に伝導し易いため、サ−マルプリンタヘッドの動作が長時間にわたるような場合、上記リ−ド線の蓄熱量が増大し、その熱で発熱抵抗体の、上記リ−ド線が接続された所定方向両端部が早期に劣化し易いということがあった。発熱抵抗体の両端部が劣化すると、印字品質の低下を招いたり、印字速度を向上させることができないなどのことが生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来は発熱抵抗体の抵抗値をレ−ザ光の照射によるアニ−リングで調整する場合、その調整に時間が掛かり過ぎるということがあった。
また、発熱抵抗体の所定方向における抵抗値が一定であると、リ−ド線が接続された所定方向両端部の温度が他の部分に比べて上昇し易いため、その部分が早期に劣化し易いということがあった。
【0009】
この発明の第1の目的は、レ−ザ光による発熱抵抗体の抵抗値の調整を迅速に行えるようにしたサ−マルプリンタヘッドの熱処理装置およびサーマルプリンタヘッドの製造方法を提供することにある。
【0010】
この発明の第2の目的は、発熱抵抗体のリ−ド線が接続された両端部分が発熱しずらいようにしたサ−マルプリンタヘッドの熱処理装置およびサーマルプリンタヘッドの製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された発明は、基板に発熱抵抗体を有するとともにこの発熱抵抗体の所定方向両端部にリード線が接続されたサーマルヘッドプリンタの、上記発熱抵抗体にレーザ光を照射してその電気抵抗値を設定するサーマルプリンタヘッドの熱処理装置において、
上記レーザ光を出力するレーザ発振器と、上記レーザ光の照射によって変化する上記発熱抵抗体の抵抗値を測定する抵抗値測定手段と、上記レーザ光の照射によって変化する上記発熱抵抗体の温度を測定する温度測定手段と、上記抵抗値測定手段と上記温度測定手段からの測定値によって上記発熱抵抗体が所定の温度となったときの抵抗値を算出し、その算出値が所定値となるよう上記レーザ光の照射を制御する制御手段とを具備したことを特徴とするサーマルプリンタヘッドの熱処理装置である。
【0012】
請求項2に記載された発明は、基板に発熱抵抗体を設ける工程と、この発熱抵抗体の所定方向両端部にリ−ド線を接続する工程と、上記発熱抵抗体にレ−ザ光を照射して熱処理を加えてその電気抵抗値を設定する工程とを具備するサーマルプリンタヘッドの製造方法において、
上記発熱抵抗体にレ−ザ光を照射する工程と、レ−ザ光が照射される上記発熱抵抗体の抵抗値と温度を測定する工程と、測定された上記発熱抵抗体の抵抗値と温度とによってこの発熱抵抗体が所定の温度になったときの抵抗値を算出し、その算出値に応じて上記レ−ザ光の照射を制御する工程とを具備したことを特徴とするサ−マルプリンタヘッドの製造方法である。
【0016】
【作用】
請求項1と請求項2に記載された発明によれば、レ−ザ光によって照射された発熱抵抗体の温度が所定温度に低下する前に、低下後の抵抗値が算出され、それに基づいてレ−ザ光の照射が制御されるから、上記発熱抵抗体の温度低下を待たずにその抵抗値を調整することができる。
【0018】
【実施例】
以下、この発明の一実施例を図面を参照して説明する。
図1はこの発明の熱処理装置を示し、この熱処理装置はLDYAGレ−ザ(レ−ザダイオ−ド励起によるYAGレ−ザ)やGPYAGレ−ザ(ジャイアントパルスYAGレ−ザ)などのレ−ザ発振器1を備えている。このレ−ザ発振器1から出力されたパルス状のレ−ザ光Lはミラ−2で反射して光ファイバ3の一端に設けられた入射光学系4に入射する。
【0019】
なお、上記光ファイバ3には、図示しないがレ−ザ光Lとともに、He−Neレ−ザなどから出力された目視可能なガイド光が光軸を同じにして入射するようになっている。
【0020】
上記光ファイバ3の出射端には出射光学系5が設けられ、この出射光学系5から出射したレ−ザ光Lは対物光学系8によって集束されてサ−マルプリンタヘッド9を照射する。このサ−マルプリンタヘッド9はYテ−ブル11上に載置されている。このYテ−ブル11はXテ−ブル12上にY方向に沿って移動自在に設けられ、Y駆動源13によってY方向に駆動されるようになっている。上記Xテ−ブル12はX方向に沿って移動自在に設けられ、X駆動源14によってX方向に駆動されるようになっている。
【0021】
上記サ−マルプリンタヘッド9は、図2に示すようにアルミナなどの絶縁性の基板9a上に帯状の多数の発熱抵抗体9bが上記基板9aの長手方向に沿って所定の間隔で形成されていて、その発熱抵抗体9bの長手方向両端部にはそれぞれアルミニウム製のリ−ド線9cが接続されてなる。
【0022】
上記レ−ザ光Lによる発熱抵抗体9bの照射部近傍は、図1に示すようにCCDカメラ15によって撮像される。このCCDカメラ15からの撮像信号は第1のCRT16に表示されるとともに、第2のCRT18と設定用キ−ボ−ド19とを有するコントロ−ラ17に入力される。上記CCDカメラ15からの撮像信号は上記コントロ−ラ17に入力され、それによって上記レ−ザ光Lによるサ−マルプリンタヘッド9の照射位置が制御されるようになっている。
【0023】
上記発熱抵抗体9bの上記レ−ザ光Lによって照射される部位の近傍には、その照射部位の温度を非接触で検出する放射式の温度センサ21が設けられている。この温度センサ21からの検出信号は放射温度計22に入力され、さらにこの放射温度計22から上記コントロ−ラ17へ入力されるようになっている。
【0024】
上記サ−マルプリンタヘッド9の発熱抵抗体9bの抵抗値は固定プロ−バ23と可動プロ−バ24とによって測定される。つまり、固定プロ−バ23は各発熱抵抗体9bの一端側のリ−ド線9cに連通して設けられている。各発熱抵抗体9bの一方のリ−ド線9cは図示しないコモンリ−ド線によってそれぞれ連通している。
【0025】
上記可動プロ−バ24はZ駆動源25によってZ方向に駆動される載置体26上に載置されていて、上記Yテ−ブル11のY方向の移動に応じて各発熱抵抗体9bの他端側のリ−ド線9cに順次接触するようになっている。
【0026】
上記固定プロ−バ23と可動プロ−バ24とは測定器27に接続されている。この測定器27は上記固定プロ−バ23と可動プロ−バ24とが接触したリ−ド線9c間の発熱抵抗体9bの抵抗値を検出し、その検出信号を上記コントロ−ラ17に入力するようになっている。
【0027】
上記コントロ−ラ17には駆動部28が接続されている。この駆動部28は上記コントロ−ラ17からの信号に応じて上記Y駆動源13、X駆動源14およびZ駆動源25を駆動する駆動信号を出力するようになっている。さらに、上記レ−ザ発振器1は、上記コントロ−ラ17からの制御信号によってレ−ザ光Lの出力や発停が設定されるようになっている。
【0028】
上記構成の熱処理装置は、上記コントロ−ラ17の設定用キ−ボ−ド19の操作によってサ−マルプリンタヘッド9の発熱抵抗体9bを2つの方法でアニ−リングすることができる。
【0029】
まず、第1の方法は、サ−マルプリンタヘッド9を加熱炉などでアニ−リングした後で、各発熱抵抗体9bの抵抗値のばらつきを、レ−ザ光Lの照射によるアニ−リングして小さくする場合で、そのような場合のアニ−リングを図3と図4を参照して説明する。
【0030】
まず、レ−ザ光Lを照射した後で、上記発熱抵抗体9bが室温になったときの抵抗値Ra(この抵抗値を飽和抵抗値とする)を設定する。これをを図4にS1 で示す。
【0031】
つまり、アニ−リング後の室温における飽和抵抗値Raは、
Ra=R/f (T) …(1)式
で表すことができる。ただし、Rはアニ−リング時、つまりレ−ザ光Lを照射してから発熱抵抗体9bが室温(所定温度)に戻るまでの任意の時間における発熱抵抗体9bの抵抗値、fは温度に関する関数、Tはレ−ザ光Lを照射してから発熱抵抗体9bが室温に戻るまでの任意の時間における発熱抵抗体9bの温度である。
【0032】
上記Ra、R、Tは、図3に示すような関係にあることが実験によって確認されている。つまり、同図において、曲線Aは発熱抵抗体9bの抵抗値の変化を示し、曲線Bは温度の変化を示す。時間0おいて、レ−ザ発振器1からパルスレ−ザ光Lを発振させて発熱抵抗体9bを照射すると、発熱抵抗体9bの温度は数秒後にピ−クとなり、所定時間経過後に室温まで低下する。
【0033】
発熱抵抗体9bの抵抗値Rは図3に曲線Aで示すようにレ−ザ光Lを照射する前の初期値Rsが最も高く、照射後に急激に低下し、その後徐々に上昇して室温に戻る所定時間後には飽和抵抗値Raで安定する。
【0034】
したがって、発熱抵抗体9bのレ−ザ光Lを照射してから時間tsec 後における上記発熱抵抗体9bの温度Tt と抵抗値Rt とを測定すれば、その時点で上記(1)式によってそのときのレ−ザ光Lの照射条件に応じた飽和抵抗値Ra、つまり発熱抵抗体9bが室温に戻ったときの抵抗値を求めることができる。
【0035】
図4に示すS1 で飽和抵抗値Raを設定したならば、図4にS2 で示すようにレ−ザ光Lの照射条件、たとえばパルス幅やピ−ク値を設定する。S3 では上記コントロ−ラ17からの駆動信号によってレ−ザ発振器1が作動され、パルスレ−ザ光Lが発振される。そのレ−ザ光Lはサ−マルプリンタヘッド9の発熱抵抗体9bを照射する。照射してから図3に示す所定時間tが経過した時点で、温度センサ21と一対のプロ−バ23、24とによって上記発熱抵抗体9bの温度Tt と抵抗値Rt とが測定される。これを図4にS4 、S5 で示す。
【0036】
S4 、S5 で測定された上記温度センサ21と一対のプロ−バ23、24とからの測定値は、コントロ−ラ17に入力される。それによって、S6 ではコントロ−ラ17が上記(1)式に基づく演算を行い、その測定値にもとづく飽和抵抗値Ra´を算出する。S7 ではその算出した飽和抵抗値Ra´と、予め設定した飽和抵抗値Raとが比較される。
【0037】
RaとRa´とが等しければ、その発熱抵抗体9bのアニ−リングは終了し、S8 で示すようにY駆動源13によってYテ−ブル11がX方向に所定寸法駆動されることで、つぎの発熱抵抗体9bのアニ−リングが行われる。
【0038】
一方、RaとRa´とが等しくない場合には、S9 で示すようにレ−ザ光Lの照射条件が補正されたのち、レ−ザ光Lの照射が繰り返されることになる。それによって、発熱抵抗体9bの抵抗値を、予め設定された飽和抵抗値Raに設定することができる。
【0039】
すなわち、このようなアニ−リングによれば、レ−ザ光Lによって照射された発熱抵抗体9bが所定温度である、室温に戻る前に上記発熱抵抗体9の飽和抵抗値Ra´を求め、その飽和抵抗値Ra´が予め設定された飽和抵抗値Raになるよう制御できるため、その抵抗値の調整を短時間で行うことができる。
【0040】
この場合のレ−ザ発振器1としては1パルス当たりのエネルギが大きいGPYAGレ−ザを用いることが好ましい。
発熱抵抗体9bの抵抗値は温度依存性をもっており、レ−ザ光Lからの入熱量が多い程、低くなる特性がある。そのため、算出された飽和抵抗値Ra´が設定された飽和抵抗値Raよりも高い場合にはレ−ザ光Lの照射が繰り返せされるが、低い場合にはレ−ザ光Lの照射が直に停止されることになる。
【0041】
なお、RaとRa´とが等しくない場合には、S8 でレ−ザ光Lの照射条件を補正したが、照射条件を補正しないでレ−ザ光Lの照射を繰り返すだけであってもよく、要は発熱抵抗体9bが室温に戻る前の、その温度と抵抗値とから求められる飽和抵抗値Ra´が、設定された飽和抵抗値Raと等しくなるまで、レ−ザ光Lの照射を繰り返すだけでもよい。
【0042】
つぎに、第2の方法は、発熱抵抗体9bの、リ−ド線9cが接続された所定方向における抵抗値に勾配を持たせるようにする場合で、その場合にはレ−ザ発振器1としては出力パワ−の低い、LDYAGレ−ザが好適し、そのレ−ザ光Lのスポットは発熱抵抗体9bの幅寸法に対して十分に小さく設定される。
【0043】
コントロ−ラ17に発熱抵抗体9bの中央部と両端部との抵抗値を設定する。その設定による中央部と両端部との抵抗値の差、つまり勾配に応じてYテ−ブル11のY方向に沿う駆動速度が設定される。
【0044】
たとえば、発熱抵抗体9bの中央部と両端部との抵抗値の差が比較的小さい、所定の範囲内である場合には、上記Yテ−ブル11のY方向の駆動速度が一定に設定され、またレ−ザ光Lのスポットが発熱抵抗体9bの所定方向一端から他端に到達したならば、Yテ−ブル11をX方向に所定寸法駆動してから、上記レ−ザ光Lを発熱抵抗体9bの所定方向に沿うY方向に走査させるということを繰り返えす。この走査方式を図5(a)に示す。
【0045】
つまり、レ−ザ光LをY方向に沿って往復走査させると、レ−ザ光Lが発熱抵抗体9bの端部に到達したときに、上記Yテ−ブル11のY方向に沿う駆動方向が逆方向に切り換えられる。Yテ−ブル11のY方向の駆動が切替えられる際、レ−ザ光の走査速度が低下する。それによって、レ−ザ光Lは、上記発熱抵抗体9bの両端部での走査速度が中央部分での走査速度に比べて遅くなる。
【0046】
発熱抵抗体9bへの入熱量は、レ−ザ光Lの走査速度に逆比例する。つまり、発熱抵抗体9の両端部の入熱量が中央部の入熱量よりも多くなる。この入熱分布を図5(b)に示す。
【0047】
発熱抵抗体9bの抵抗値は、上述したように温度依存性をもっており、レ−ザ光Lからの入熱量が多い程、低くなる特性がある。したがって、レ−ザ光Lを発熱抵抗体9bの所定方向に沿って往復走査させてアニ−リングを行えば、その所定方向両端部の抵抗値が、中央部分の抵抗値よりも低くなるから、その所定方向に沿う抵抗値に勾配を持たせることができる。この抵抗値分布を図5(c)に示す。
【0048】
上記発熱抵抗体9bの所定方向の抵抗値は、固定プロ−バ23と可動プロ−バ24とによって測定できるものの、その所定方向に沿う抵抗値の勾配を測定することは難しい。
【0049】
しかしながら、上記発熱抵抗体9bをアニ−リングすることで、その所定方向に沿う抵抗値は低下するから、上記各プロ−バ23、24が検出する抵抗値が所定の値に低下した時点で、上記コントロ−ラ17からレ−ザ発振器1に制御信号を出力してレ−ザ光Lの発振を停止すれば、上記発熱抵抗体9bを両端部と中央部とで抵抗値に差を有する状態にアニ−リングすることができる。
【0050】
このように、1つの発熱抵抗体9bのアニリ−ングが終了すると、Z駆動源25が作動して可動プロ−バ24が上昇し、その先端がリ−ド線9cから離れ、ついでYテ−ブル11がX方向に所定寸法駆動されたのち、上記可動プロ−バ24が下降してその先端がつぎの発熱抵抗体9bに接続されたリ−ド線9cに接触する。その状態で、その発熱抵抗体9bにレ−ザ光Lが走査されてアニ−リングが繰り返される。
【0051】
このような熱処理が行われたサ−マルプリンタヘッド9によれば、動作時に通電されると、その発熱抵抗体9bは抵抗値の高い長さ方向中央部分が、抵抗値の低い両端部分に比べて発熱量が大きくなる。つまり、発熱抵抗体9bはリ−ド線9cが接続された長さ方向両端部分の温度上昇が抑制されることになるから、その両端部分の早期劣化が防止される。それによって、サ−マルプリンタヘッド9は、長期にわたり高品質の印字性能と印字速度の高速化とを維持することができる。
【0052】
一方、上記発熱抵抗体9bの所定方向に沿う温度勾配が大きな場合には、コントロ−ラ17に発熱抵抗体9bの中央部と両端部との抵抗値を設定すると、図6(a)に示すレ−ザ光Lの走査方式において、Yテ−ブル11のY方向に沿う駆動は、発熱抵抗体9bの所定方向両端部で減速され、中央部で加速されるよう設定される。この速度設定を図6(b)に示す。
【0053】
つまり、レ−ザ光Lを一定速度で往復走査させた場合よりも、上記発熱抵抗体9bの所定方向中央部分と両端部分とにおける入熱量の差をさらに大きくすることができる。このときの入熱分布を図6(c)に示す。
【0054】
発熱抵抗体9bの所定方向中央部分と両端部分とにおける入熱量の差を大きくしてアニ−リングすれば、その抵抗値の分布も図6(d)に示すように大きくすることができる。つまり、発熱抵抗体9bを大きな温度勾配でアニ−リングできる。
【0055】
レ−ザ光Lを発熱抵抗体9bの所定方向に沿って走査させるのに、サ−マルプリンタヘッド9をYテ−ブル11によって駆動したが、光ファイバ3の出射端側に接続された出射光学系5と対物光学系8とをX、Y方向に駆動することで、レ−ザ光Lを走査させるようにしてもよい。
【0056】
【発明の効果】
以上述べたように請求項1と請求項2に記載された発明によれば、発熱抵抗体をレ−ザ光で照射してアニ−リングする場合、上記発熱抵抗体が所定温度に戻る前に、その所定温度における抵抗値を算出し、その算出値によって発熱抵抗体が所定温度に低下したときの抵抗値が所定値となるよう調整することができる。
【0057】
したがって、発熱抵抗体が所定温度に戻ってからその抵抗値を測定するということをせずにアニ−リングを行えるから、生産性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の熱処理装置の全体構成を示す斜視図。
【図2】同じくサ−マルプリンタヘッドの一部分の拡大平面図。
【図3】同じく発熱抵抗体の温度と抵抗値の変化を示すグラフ。
【図4】同じく発熱抵抗体を所定の抵抗値にアニ−リングする際のフロ−チャ−ト。
【図5】同じく発熱抵抗体に抵抗の勾配をもつアニ−リングを行う際のレ−ザ光の走査方式と、入熱分布および抵抗値の分布の関係を示す説明図。
【図6】同じく図5の場合よりも発熱抵抗体に大きな抵抗の勾配をもつアニ−リングを行う際のレ−ザ光の走査方式、速度分布、入熱分布および抵抗値の分布の関係を示す説明図。
【符号の説明】
1…レ−ザ発振器、9…サ−マルプリンタヘッド、9a…基板、9b…発熱抵抗体、9c…リ−ド線、17…コントロ−ラ(制御手段)、21…温度センサ(温度測定手段)、22…放射温度計(温度測定手段)、23…固定プロ−バ(抵抗値測定手段)、24…可動プロ−バ(抵抗値測定手段)、27…測定器(抵抗値測定手段)。
Claims (2)
- 基板に発熱抵抗体を有するとともにこの発熱抵抗体の所定方向両端部にリード線が接続されたサーマルヘッドプリンタの、上記発熱抵抗体にレーザ光を照射してその電気抵抗値を設定するサーマルプリンタヘッドの熱処理装置において、
上記レーザ光を出力するレーザ発振器と、上記レーザ光の照射によって変化する上記発熱抵抗体の抵抗値を測定する抵抗値測定手段と、上記レーザ光の照射によって変化する上記発熱抵抗体の温度を測定する温度測定手段と、上記抵抗値測定手段と上記温度測定手段からの測定値によって上記発熱抵抗体が所定の温度となったときの抵抗値を算出し、その算出値が所定値となるよう上記レーザ光の照射を制御する制御手段とを具備したことを特徴とするサーマルプリンタヘッドの熱処理装置。 - 基板に発熱抵抗体を設ける工程と、この発熱抵抗体の所定方向両端部にリード線を接続する工程と、上記発熱抵抗体にレーザ光を照射して熱処理を加えてその電気抵抗値を設定する工程とを具備するサーマルプリンタヘッドの製造方法において、
上記発熱抵抗体にレーザ光を照射する工程と、レーザ光が照射される上記発熱抵抗体の抵抗値と温度を測定する工程と、測定された上記発熱抵抗体の抵抗値と温度とによってこの発熱抵抗体が所定の温度になったときの抵抗値を算出し、その算出値に応じて上記レーザ光の照射を制御する工程とを具備したことを特徴とするサーマルプリンタヘッドの製造方法。
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