JP3562880B2 - 空調制御システム及び空調システムの制御方法 - Google Patents

空調制御システム及び空調システムの制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、建家内の空調制御装置に関し、特に地下鉄駅構内などほぼ密閉された空間内で人口密度の移動、列車本数密度の変化などにより、時間的、空間的空調負荷、電力負荷の変動が大きな建家内の空調制御システムに関し、また地下鉄駅構内等の全体の空調を適正に行うのに有効な空調システムの制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地下鉄駅構内等の空調制御システムに関しては、プラットホーム、コンコ−ス等に測温抵抗体や熱電対等の温度センサを複数点設置し、それらセンサの温度出力を平均処理した値、或いは、最高温度の値をPID制御器に取り込み、空調機の容量制御を行なっていた。一方、温度センサとしては、ビル、地中ケ−ブル等の異常検知、火災検知を目的に光ファイバケ−ブルを用いたラマン散乱による遠隔温度分布計測法が特開平4−351973に開示されている。また、歪センサとして、同じく地中ケ−ブル等の異常検知等を目的として、光ファイバケ−ブルを用いたブリルアン散乱、もしくはラマン散乱による遠隔歪分布計測法が特開平4−248426に開示されており、光ファイバケーブルセンサによると約1mセンシングピッチで温度や歪みを計測することができる。
【0003】
また空調システムの制御方法に関しては、地下鉄駅構内の熱環境に対し、近年、列車発熱量の増加、乗降客数や設備機器数の増大に伴い、全体の熱供給量が増え、温度管理が厳しくなっている。このため、空調に要する電力消費量が増大し、省エネルギーの観点から問題である。特に夏期のラッシュ時に電力消費が集中し、年間を通じての不均一が問題となっており、設備費、契約電気量の増大を招いている。ところが従来の地下鉄駅構内の冷房空調は、個々の空調ユニットごとに温度制御が行われ、冷媒供給源となる冷凍機の能力はそれぞれの空調ユニットの最大熱負荷をまかなえるものとなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の地下鉄駅構内のホ−ム等の空調制御システムでは、ホ−ム等の各位置の必要空調負荷を考慮せず、ホ−ム全体を一括して空調していたため、空調システム能力を冗長なものとしなければならず空調システムの大型化や多量のエネルギー浪費が避けられないないというような問題があった。
【0005】
本発明の第1の目的は、このような問題を解決するため、前記光ファイバ式のセンサを利用し、ホ−ム等の各位置の温度や人口密度の分布に応じて局所的な温度制御、空調制御を行なうことにより、空調システム動力の削減を図ると共に、電力消費ピ−ク時の空調負荷配分を適正化し、電源設備の小容量化を図ることのできる空調制御システムを提供することにある。
【0006】
また上記のように従来の空調システムの制御方法では、設備的には大容量化しやすく、年間を通してみれば、過剰な設備となりうるという問題があった。このため、例えば機械学会論文集(B編)55巻509号pp.101−106に見られるように、列車の運行を考慮した温度と風量の非定常解析による空調負荷の予測等が行われてきた。また、駅構内の各々の位置でみれば、例えば人の密集度が低く必ずしも十分に冷却しなくても良い場所においても設定通りに空調される反面、人の密集する場所の空調が十分でない場合も生じ、冷却能力が全体として適正になるように配分されない問題があった。これは、当然のことながら個々の空調ユニットがそれぞれに付随する温度検出器の信号によってのみ制御されることに起因する。
【0007】
本発明の第2の目的は、上記の問題点を緩和するために、地下鉄駅構内全体として、適正な空調システムの制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明による空調制御システムは、熱交換器中を流れる水或は、フッ化物などの冷媒により温度調整された空気を吹き出す空調ユニットを、地下鉄駅構内等の各部に複数配置して空調を行うようにした空調システムにおいて、構内のホ−ム等の全長に渡って配設され、構内各部温度及び各部歪を測定する光ファイバ形計測装置、該光ファイバ形計測装置からの光に基づき構内の温度分布を求める温度分布演算回路、及び、歪み測定量から人口密度分布を求める人口密度分布演算回路を設け、更に、これら演算回路の2系統の出力信号より構内各部の必要空調負荷の負荷増減量を求める負荷増減演算回路、前記温度分布演算回路からの出力を入力し前記負荷増減演算回路からの出力に応じて補正する空調ユニット制御回路を設け、該空調ユニット制御回路により構内各部に設けられた空調ユニットに於ける風量、或いは、冷媒流量もしくは双方を各空調ユニット毎に制御するようにしたものであり、また、冷凍機の部分負荷運転を制御する演算制御装置を設けたものである。
【0009】
また、本発明による空調制御システムは、熱交換器中を流れる冷水により温度調整された空気を吹き出す空調ユニットを、地下鉄駅構内等の各部に複数配置して空調を行うようにした空調システムにおいて、構内のホ−ム等の全長に渡って配設され、構内各部温度及び各部歪みを測定する光ファイバ形計測装置、構内の温度分布を求める演算回路、及び、歪み測定量から人口密度分布、人口移動状態を求める演算回路を設け、これら演算回路の2系統の出力より構内各部の必要空調負荷の増減量を演算し、更に、各空調ユニットの冷風の吸い込み、吹き出し温度の差、及び、風量を計測する冷風等計測装置を各空調ユニット毎に設け、該冷風計測装置からの出力に基づき顕熱熱交換量を演算し、前記温度分布を入力とする温度制御器の空調ユニット制御出力を該必要空調負荷の増減量と該顕熱熱交換量との比を補正係数として補正し、構内各部に設けられた空調ユニットに於ける風量、或いは、冷水流量もしくは双方を各空調ユニット毎に制御するようにしたものであり、また、冷凍機の部分負荷運転を制御する演算制御装置を設けたものである。
【0010】
また、本発明の構内空調制御システムは、人口密度が大きく、従って、空調負荷が大きく、また、相対湿度が高く人の不快感が高い場所に於いては、設定温度値を低くして冷却速度を早めると共に、逆に人口密度の低い場所に対しては、設定温度を高く設定する演算回路を演算制御装置に設けたものである。
【0011】
また、本発明の構内空調制御システムは、列車進入側プラットホ−ム端部の温度出力値から列車進入に伴う温度上昇値を演算し、光ファイバセンサの各部温度出力値から、該温度上昇値を列車の進行に伴う位相遅れを設けて減算する演算回路を演算制御装置に設けたものである。
【0012】
また、本発明の構内空調制御システムは、光ファイバセンサをプラットホ−ム床面、或いは、床面内にプラットホ−ム基構造との間に空隙を設けて敷設したものである。
【0013】
また本発明による空調システムの制御方法は、冷媒を用いて空気を冷却するための熱交換器と、該熱交換器により冷却された空気を供給する給気ファンと、冷却領域の温度を検出するための検出器と、検出された温度に基づき冷媒の流量を制御する信号を発する制御器と、信号に基づいて流量を制御する装置を備える空調機ユニットに関して、空調機ユニットが複数の冷却領域に対応して複数存在し、それぞれの空調機ユニットが同一の冷媒供給源より冷媒を供給される空調システムにおいて、検出温度と冷媒流量より空調領域での熱負荷を予測し、さらに冷凍機の最大冷却量から熱負荷の合計を除いた熱量を算出し、該熱量を各空調領域での温度が設定温度に達するのに必要な時間がほぼ均一となるように、各空調機ユニットに配分することを特徴とする。
【0014】
また、本発明による空調システムの制御方法は、前記熱量の配分を、各時刻での温度勾配から求めた熱量Qtr,iとあらかじめ設定した冷却熱量[ Qset,i]initの差により重み付けを行って決定することを特徴とする。
【0015】
すなわち本発明による空調システムの制御方法は、従来は個々の空調ユニットの温度制御には各ユニットに付随した温度検出器からの検出温度のみを用いていたのに対し、他の空調ユニットに付随した温度検出器からの検出温度の情報も考慮して、全体として適正となるように制御し、初期の目的を達成するようにしたものである。
【0016】
【作用】
本発明による構内空調制御システムは、約1mのセンシングピッチで駅構内等の各部の温度分布と人口密度分布を同時に計測するため、構内各部の人口密度の増減に対応した必要空調負荷の増減量を演算することができる。また、プラットホ−ム列車進入端の温度変動から列車運航に伴う列車風による輸送熱に基づく温度変動成分を、各部温度変動成分より除去することができるため、空調ユニットの制御において余分な列車風による輸送熱量の除去を空調ユニットに指示することを避ける事ができ、空調負荷を減少させる。更に、PID制御温度調節器の制御出力を、各部の熱容量負荷の変動で緩和した人口密度の変動に伴う負荷変動のみで補正するため、全空調熱負荷に対し空調機動力が過大とならないよう補正を行うことができ、構内各部の温度を人口密度、従って、均等な快適性で制御する様に働く。また、構内各部の人口密度に応じて各部温度設定値を変えることにより、空調機動力の削減を図ると共に、電力消費ピ−ク時の空調負荷配分を適正化し、電源設備の小容量化を可能とする。
【0017】
また、本発明による空調システムの制御方法を用いると、各空調ユニットごとに冷却量の重み付けを行うことができる。したがって、冷媒供給源である冷凍機の能力によって定まる全除去可能熱量が一定であるとき、冷却能力を各空調ユニットに適正に配分することにより、地下鉄駅構内全体を適正に温度管理することが可能となる。
【0018】
【実施例】
以下、図を参照しながら、本発明による空調制御システムの一実施例について説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施例の地下鉄駅構内プラットホ−ム部の斜視横断面である。プラットホ−ム1の上面に設けられた溝2に光ファイバ5が取り付けられたプレ−ト7が防振部材6を介して被せられている。なお光ファイバ5は前記のようにプラットホームの表面ではなく、プラットホーム1の基構造の中にそれと間隙をもって設けてもよい。一方、ホ−ム天井部には空調ユニット3が設置されており、また、空調ユニット3に冷媒を供給する冷媒配管4が設けられている。ここで、光ファイバ5はホ−ム1の全長にわたって敷設されており、また、空調ユニット3はホ−ム天井部に数箇所設けられている。
【0020】
図2は本発明の一実施例の計測、制御装置の構成を示す図である。該制御装置は、光ファイバ5にレーザを入射するパルスレ−ザ発生装置8A、ラマン、もしくはブリルアン散乱を分離検出するラマン、もしくはブリルアン光検出回路8B、散乱光位相ずれ検出散乱位置演算回路8C、温度、歪み分離演算回路8Dを有し、該演算回路8Dから温度分布出力19及び歪分布出力18が出力される。温度分布出力19は、熱容量熱負荷演算回路11に入力され、測定温度と設定温度との差、測定点位置における熱容量、及び、設定温度に到達させるまでの時間設定値とから熱容量に起因する熱負荷絶対値、及び、測定温度の時間的変化量と熱容量とから算出した熱量と熱負荷絶対値との差で表される各時刻における熱負荷の変動量を演算した後、必要熱容量熱負荷絶対値、及び変動量22を空調負荷演算回路12に出力する。
【0021】
また、温度分布出力19は同時にPID制御温度調節器13に入力され、制御出力信号23を空調容量制御回路14に出力する。一方、歪み分布出力18は、荷重演算回路9により歪−荷重変換がなされ、その荷重出力20は人体発熱量演算回路10に入力され、該回路で人体発熱量の絶対値、及び、その時間的変動値に変換され、人体発熱負荷の絶対値、及び、変動値が求められ、その出力21を空調負荷演算回路12に入力する。空調負荷演算回路12では、前記出力21、22に基づき必要熱容量熱負荷変動量と人体発熱負荷変動量との和と必要熱容量熱負荷絶対値と人体発熱負荷絶対値との和の比によって得られる補正係数を演算し、該補正係数24を空調容量制御回路14に出力し、該回路において前記制御出力信号23に補正係数24を乗じる演算がなされ空調容量制御信号25が出力される。該空調容量制御信号25は各空調ユニットの電動弁15に入力され、冷媒配管4中の冷水流量を制御する。制御回路14からの制御信号は図示例のように冷媒流量を制御する弁15に入力される他にファン16の駆動回路に入力されその回転を調節して風量を制御したり、冷媒流量及び風量の双方を制御することができる。
【0022】
なお上記実施例において、冷媒を供給する冷凍機は1基或は、複数基で構成されており、空調負荷に応じて部分負荷運転、或は台数制御運転をすることができる。
【0023】
本実施例によれば、光ファイバによる検知結果により、各空調エリアの温度に応じて各空調ユニットの冷媒流量や風量が制御され、各空調ユニットを適正なサイズとし空調システムの大型化が避けられ、また省エネ化が図られる。
【0024】
図3は本発明の他の実施例の計測、制御装置の一部の構成図である。人体発熱量演算回路10で演算された各プラットホ−ムの人体発熱量絶対値28a〜28dを温度設定値演算回路26に入力し、該回路において予め設けた関数を用い人体発熱量絶対値に応じて温度設定値を演算し該温度設定値出力27a〜27dを熱容量熱負荷演算回路11、及び、PID制御温度調節器13a(〜13d)に出力する。温度設定値演算回路26を計測、制御装置に設けた以外の構成は図2に示す本発明の一実施例の構成と同一である。本実施例によれば、前記実施例のように空調システムの大型化を避け省エネ化が図れるとともに、人口密度の大きい場所の設定値を低くし、逆に人口密度の小さい場所の設定値を高くし各プラットホームの空調を効果的に行うことができる。
【0025】
図4は本発明のさらに他の実施例の計測、制御装置の一部の構成図である。空調ユニット3内の熱交換器17の空調風流入部に温度センサ31が、流出部に温度センサ30及び流速センサ32が設けられている。それぞれのセンサ30〜32の出力は熱量演算回路29に入力され、熱交換器17での顕熱熱交換量が演算され、演算された熱交換量33は空調負荷演算回路12に入力される。次に、空調負荷演算回路12で人体発熱負荷変動量と熱交換量との比の補正係数を演算し、該補正係数出力24を空調容量制御回路14に入力し、該空調容量制御回路14においてPID制御温度調節器13から出力された制御出力信号23に補正係数24を乗じた空調容量制御信号を求め、該空調容量制御信号25を図1の実施例で説明したと同様に電動弁15等に出力し、冷媒流量や空調風流量を制御する。以上の他の構成は図2に示す本発明の一実施例の構成と同一である。該実施例では空調ユニットを必要負荷に対し適応制御することができる。
【0026】
図5は本発明の他の実施例の温度計測値の変換を示す図である。図5の(a)の横軸は時刻τを表し、縦軸は列車進入端のプラットホ−ム温度T (τ)から順次列車進行方向に取った各プラットホ−ム温度T (τ)…T (τ)を表す。列車進入端のプラットホ−ム温度T (τ)は列車の進入、発車に伴う空気温度が上昇した列車風の影響のみを受けて変動し、列車進入を受けて時刻τ より温度が上昇し、列車発車後再び元の温度に戻る。一方、プラットホ−ム内側温度T (τ)…T (τ)は、列車の進行に伴う位相遅れΔτ1、i …Δτk、i を持って列車風の影響(プラットホーム各部における直線的温度変化に対し山形の変化部分で示される)を受ける。この際、プラットホ−ム内側温度T (τ)…T (τ)は列車風だけでなく、人の移動に伴う影響等も受けて温度が変動する。ここで、列車風による熱量増減は列車の進入に伴いトンネルよりプラットホ−ムに持ち込まれ、また、列車の発車に伴いプラットホ−ムよりトンネルに排出されるためプラットホ−ムの空調負荷とは成らない。そこで、図5(b)に示すプラットホーム内側温度T (τ)…T (τ)より列車風の影響を除去したプラットホ−ム内側温度の処理温度を演算し、例えばプラットホーム内側温度T (τ)については[T (τ+Δτ1、i )−{T (τ)−T (τ )}]を演算し、このようにして逐次演算し熱容量熱負荷演算回路11、及び、PID制御温度調節器13に出力する。波形の処理は、先ず、プラットホ−ム温度T (τ)の急激な温度上昇が起こる時刻τ に於ける温度T (τ )を次の急激な温度上昇が起こる時刻τi+1 迄の間T (τ)より減じた値を用い、プラットホ−ム内側温度T (τ)の急激な温度上昇が起こる時刻とτ との位相遅れΔτ1、i 後のプラットホ−ム内側温度T (τ)より瞬時毎に減じる事により得られる。時刻τi+1 以降についても同様の処理を繰り返す。本実施例によれば、列車風による影響を除いた適正な空調を行うことができる。
【0027】
次に、本発明による空調システムの制御方法の一実施例を図6により説明する。冷媒は冷凍機101により所定の温度に冷却され、配管110により、複数の空調ユニット102a〜102nに供給される。各空調ユニット内において、冷媒は熱交換器104a等にて外気200あるいは構内からの還気210と熱交換を行い、冷却された空気220a〜220nはファン108a等により駅構内109a〜109nに供給され、構内を空調する。空調の温度制御は以下のように行われる。すなわち空調ユニット102aを例にとれば、駅構内の適当な場所に設置された複数個の温度検出器106a〜106nによる検出温度を制御器107aに導き、さらに冷媒流量150aを入力し、制御用信号170aを発生する。この信号に基づき三方弁105aの開度を変化させ、冷媒流量を制御する。冷媒は空気と熱交換された後、配管111により冷凍機1に戻る。以上は空調ユニット102aについての例であるが、空調ユニット102b,102nについても同様の制御が行われる。そして前記制御器107a〜17nは各空調ユニット毎に設けずに1つにまとめても良い。
【0028】
図7に各空調機が主に担当する空調領域109a〜109nでの検出温度の時間的変化の一例を示す。ここに、Tset,i は目標設定温度、tset,i は設定温度に到達するまでの設定時間である。空調領域109aでは検知した温度301は当初の設定311よりも大きく減少しており、冷却に余裕のあることがわかる。一方、領域109nでは温度変化303は設定313よりも小さく、冷却が不足していることが分かる。このような場合、領域ごとに温度のバラツキが大きく、空調上好ましくない。
【0029】
図8に本発明に関わる冷媒流量制御のためのフローチャートの一実施例を示す。また、図9は図7に示した温度変化の一例の詳細である。以下、図8、9を用いて、制御法の詳細を説明する。
【0030】
i番目の空調機について、ある時刻t1において、各検出器(106a〜106n)の出力Ti (160a〜160n)を入力し、空調領域109iでの熱量の変化Qtr,i=Mi・d Ti/dtを求める。ここにMi は熱容量である。さて設定した時間Δtset,i でTi を設定温度まで冷却するのに必要な熱量は
Qset,i =Mi・( Ti −Tset,i )/ Δtset,i (1)
であるので、これを計算する。
【0031】
さらに冷媒の流量Gi を入力し、冷却熱量Qpull,iを計算する。これは、熱交換器の熱伝達率等を考慮して、容易に計算できる。ついでこの空調領域での熱量バランスは、熱負荷をQin,iとすれば、
Mi・d Ti/d t=Qin,i−Qpull,i (2)
である。これより、熱負荷Qin,iを求める。次の時刻においても熱負荷がほぼ同じと仮定すれば、空調領域を設定時間内に目標温度にまで冷却するのに必要な熱量は
Qi= Qset,i +Qin,i (3)
である。
【0032】
すべての空調機ユニットでの必要冷却量が、供給できるかどうかについて調べる。すなわち冷却必要量の合計ΣQi と冷凍機の最大冷却可能熱量Qmax から、Qr =Qmax −ΣQi を求める。Qr >0ならば冷却能力に余裕があるので、通常のPID制御等を用いて、制御すれば良い。一方Qr <0ならば、温度を設定温度に冷却するために使える熱量(=冷凍機最大除去熱量−熱負荷の合計=Qmax −ΣQin,i=Qr*)を、適正に配分することを考える。
【0033】
本発明によれば、同一の冷媒供給源より冷媒を供給される空調システムにおいて、検出温度と冷媒流量より空調領域での熱負荷を予測し、さらに冷凍機の最大冷却量から熱負荷の合計を除いた熱量を算出し、該熱量を各空調領域での温度が設定温度に達するのに必要な時間がほぼ均一となるように、各空調機ユニットに配分する。
【0034】
該配分のための重み付けを、各ユニットでの冷却度に応じて以下のように行う。すなわち請求項8に関する方法を説明する。冷却度をΔQi =(Qtr,i−[ Qset,i]init) のように与えた場合について述べる。ここに、
[Qset,i]initは最初に設定したとおりに冷却されたとした場合に必要な冷却熱量であり、
[ Qset,i]init=Mi・(Ti,0 −Tset,i)/ tset,i (4)
で与えられる。
【0035】
重み付きの係数Ai を、例えばΔQi の逆数に比例配分すると、
A1:A2:... :An=1/ΔQ1:1/ΔQ2:... :1/ΔQn (5)
となり、Ai が求められる。以上により次の時刻に対する冷却量Qpull,i* は
Qpull,i* =Qin,i+(Ai/ΣAi)・ Qr* (6)
で求められる。最後にこの冷却量を得るのに必要な冷媒流量Gi*を計算し、三方弁105aへの出力を与える。
【0036】
図10は図7に対して図9で示した制御をかけたときの温度変化の一例である。冷却能力を配分することにより、すべての領域で温度変化321〜323が変化し、初期設定に近づき望ましい結果を与えることになる。
【0037】
図11は従来の制御の一例であり、各空調領域の検出温度情報が各空調ユニットに送られ制御のための温度情報が限定され、したがって制御が局所的に行われ、前述した本発明に比較して全体としての適正さを欠くことは明らかである。
【0038】
【発明の効果】
本発明による空調制御システムは、約1mのセンシングピッチで駅構内各部の温度分布と人口密度分布を同時に計測することができるため、構内各部の人口密度の増減に対応した必要空調負荷の増減量を演算し、各空調ユニットをその場所の人口密度に応じて個別に適確に制御できる。また、構内各部の人口密度に応じて各部温度設定値を変えることができるため、空調機動力の削減を図ると共に、電力消費ピ−ク時の空調負荷配分を適正化し、電源設備の小容量化を図ることができる。
【0039】
また、本発明の空調システムの制御方法は、地下鉄駅構内に設置した各空調ユニットの制御を行うにあたり、駅構内の広い範囲にわたる温度と、その時間的な変化を考慮することにより、個々の空調ユニットの冷却量に重み付けすることが可能となり、全体として適正な空調を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す地下鉄駅構内プラットホ−ム部の斜視断面図
【図2】本発明の他の実施例を示す計測、制御装置の構成図
【図3】本発明の他の実施例を示す計測、制御装置の一部の構成図
【図4】本発明の他の実施例を示す計測、制御装置の一部の構成図
【図5】本発明の他の実施例を示す温度計測値の変換図
【図6】本発明の空調システムの制御方法の一実施例を示す図
【図7】各空調ユニットが冷却する主領域での検出温度の時間的変化と、最初に設定した温度の時間的変化の例を示す図
【図8】温度制御のフローチャートの例を示す図
【図9】検出温度の時間的変化の例の詳細図
【図10】制御をかけたことによる温度の時間的変化の例を示す図
【図11】従来の空調ユニットの配置及び制御信号の流れの例を示す図
【符号の説明】
1…プラットホ−ム、2…溝、3…空調ユニット、4…冷媒配管、5…光ファイバ6…防振部材、7…プレ−と、8…光ファイバ形計測装置、9…荷重演算回路、10…人体発熱量演算回路、11…熱容量負荷演算回路、12…空調負荷演算回路、13…PID制御温度調節器、14…空調容量制御回路、15…電動弁、16…ファン、17…熱交換器、18…歪分布出力、19…温度分布出力、20…荷重分布出力、21…人体発熱負荷出力、22…熱容量負荷出力、23…PID制御出力、24…補正係数出力、25…空調容量制御出力、26…温度設定値演算回路、27…温度設定出力、28…人体発熱負荷出力、29…熱量演算回路、30、31…温度センサ、32…流速センサ、28…人体発熱負荷出力
101…冷凍機、102a−102n…空調ユニット、301−303…検出温度の時間的変化の例、321−323…制御をかけた場合の検出温度の時間的変化の例、104…熱交換器、105a−105n…流量調節器、150a−150n…流量信号、106a−106n…温度検出器、160a−160n…検出温度、107a−107n… 制御器、170a−170n…冷媒流量制御信号、108…ファン、109a−109n…各空調ユニットが主に担当する空調領域、220a−220n…冷却空気。

Claims (8)

  1. 熱交換器中を流れる冷媒により温度調整された空気を吹き出す空調ユニットを、地下鉄駅構内等の各部に複数配置して空調を行うようにした空調システムにおいて、構内のホ−ム等の全長に渡って配設され、構内各部温度及び各部歪を測定する光ファイバ形計測装置、該光ファイバ形計測装置からの光に基づき構内の温度分布を求める温度分布演算回路、及び、歪測定量から人口密度分布を求める人口密度分布演算回路を設け、更に、これら演算回路の2系統の出力信号より構内各部の必要空調負荷の負荷増減量を求める負荷増減演算回路、前記温度分布演算回路からの出力を入力し前記負荷増減演算回路からの出力に応じて補正する空調ユニット制御回路を設け、該空調ユニット制御回路により構内各部に設けられた空調ユニットに於ける風量、或いは、冷媒流量もしくは双方を各空調ユニット毎に制御するようにしたことを特徴とする空調制御システム。
  2. 熱交換器中を流れる冷媒により温度調整された空気を吹き出す空調ユニットを、地下鉄駅構内等の各部に複数配置して空調を行うようにした空調システムにおいて、構内のホ−ム等の全長に渡って配設され、構内各部温度及び各部歪を測定する光ファイバ形計測装置、構内の温度分布を求める演算回路、及び、歪測定量から人口密度分布、人口移動状態を求める演算回路を設け、これら演算回路の2系統の出力より構内各部の必要空調負荷の増減量を演算し、更に、各空調ユニットの冷風の吸い込み、吹き出し温度の差、及び、風量を計測する冷風等計測装置を各空調ユニット毎に設け、該冷風計測装置からの出力に基づき顕熱熱交換量を演算し、前記温度分布を入力とする温度制御器の空調ユニット制御出力を該必要空調負荷の増減量と該顕熱熱交換量との比を補正係数として補正し、構内各部に設けられた空調ユニットに於ける風量、或いは、冷媒流量もしくは双方を各空調ユニット毎に制御するようにしたことを特徴とする空調制御システム。
  3. 請求項1又は2に記載の空調制御システムに於いて、人口密度が大きい場所の設定温度値を低くし、逆に人口密度の低い場所の設定温度を高くする演算回路を設けたことを特徴とする空調制御システム。
  4. 請求項1又は2に記載の空調制御システムに於いて、列車進入側プラットホ−ム端部の温度出力値から列車進入に伴う温度上昇値を演算し、光ファイバセンサの各部温度出力値から、該温度上昇値を列車の進行に伴う位相遅れを設けて減算する演算回路を設けたことを特徴とする空調制御システム。
  5. 請求項1又は2に記載の空調制御システムに於いて、光ファイバセンサをプラットホ−ム床面、或いは、床面内にプラットホ−ム基構造との間に空隙を設けて敷設したことを特徴とする空調制御システム。
  6. 冷媒を用いて空気を冷却するための熱交換器と、該熱交換器により冷却された空気を供給する給気ファンと、冷却領域の温度を検出するための検出器と、検出された温度に基づき冷媒の流量を制御する信号を発する制御器と、信号に基づいて流量を制御する装置を備える空調機ユニットに関して、空調機ユニットが複数の冷却領域に対応して複数存在し、それぞれの空調機ユニットが同一の冷媒供給源より冷媒を供給される空調システムにおいて、検出温度と冷媒流量より空調領域での熱負荷を予測し、さらに冷凍機の最大冷却量から熱負荷の合計を除いた熱量を算出し、該熱量を各空調領域での温度が設定温度に達するのに必要な時間がほぼ均一となるように、各空調機ユニットに配分することを特徴とする空調システムの制御方法。
  7. 地下鉄駅構内の空調に適用することを特徴とした請求項6記載の空調システムの制御方法。
  8. 前記熱量の配分を、各時刻での温度勾配から求めた熱量Qtr,iとあらかじめ設定した冷却熱量[ Qset,i]initの差により重み付けを行って決定することを特徴とした請求項6又は7記載の空調システムの制御方法。
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