JP3562809B2 - 高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層とそれを用いた電解質膜−電極接合体および高分子電解質型燃料電池 - Google Patents

高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層とそれを用いた電解質膜−電極接合体および高分子電解質型燃料電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、民生用コジェネレーションや自動車用等の移動体用発電器として有用な高分子電解質型燃料電池、それに用いる電解質膜−電極接合体およびガス拡散層に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高分子電解質型燃料電池は、水素などの燃料ガスと空気などの酸化剤ガスを供給し(一般的に燃料ガス供給側をアノード電極と呼び、また酸化剤ガス供給側はカソード電極と呼ばれる)、白金などの触媒上で電気化学的に反応させるもので、電気と熱とを同時に発生させるものである。このような高分子電解質型燃料電池の一般的な構成の概略を図1に示す。
【0003】
図1において水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜11の両面には白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層12を密着して配置する。さらに触媒層12の外面には、気孔を有する多孔性支持体で構成される一対のガス拡散層13を触媒層12に密着して配置する。通常、多孔性支持体はカーボンペーパーなどのカーボン不織布あるいはカーボンクロス製である。ガス拡散層13と触媒層12によりガス拡散電極14を構成する。なお、このガス拡散電極は単に電極と称される場合もある。
【0004】
ガス拡散電極14の外側には、ガス拡散電極14と高分子電解質膜11とで形成した電解質膜−電極接合体(以下、MEA)15を機械的に固定するとともに、隣接するMEA同士を互いに電気的に直列に接続し、さらにガス拡散電極に反応ガスを供給し、かつ反応により発生した水や余剰のガスを運び去るためのガス流路16を一方の面に形成したセパレータ板17を配置する。ガス流路はセパレータ板17と別に設けることもできるが、セパレータ板の表面に溝を設けてガス流路とする方式が一般的である。また、高分子電解質膜11とセパレータ板17間には反応ガスの漏れを防止するためガスケット18を挟持する。
【0005】
電池運転時、カソード電極においては反応活物質である酸素または空気がガス拡散層を介してガス流路から触媒層へと拡散するとともに、反応によって生成され浸透効果により触媒層からガス拡散層へと浸透してきた過剰な水分をガス拡散層の気孔部から余剰ガスとともに電池外部へと除去する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質膜が含水率の増加に伴ってイオン伝導度が高くなる物性を有しているため、前記高分子電解質膜を湿潤状態に保つことが必要である。このために、一般的には予め反応ガスを所定の湿度に加湿しておき、反応ガスの供給と同時に高分子電解質膜の保湿性の確保が図られている。
【0007】
電極反応の結果、生成された水分の一部はセパレータ板のガス流路を流れる反応ガスとともにガス流路の入口側から出口側へと流され、最終的には燃料電池の外部に排水される。従って、燃料電池内において反応ガスに含まれる水分量は反応ガスの流れ方向で差異を生じ、反応ガスの入口側に比べると、出口側では反応生成水に相当する量だけ多量に水分が含まれることになるため、ガス流路の入口側に比べると出口側では所定以上の高い湿度状態になっている。このために、出口側付近では、ガス拡散層からの水分の排水機能が低下し、極端な場合にはガス拡散層の気孔部が余剰の水分で閉塞されるというフラッディング現象が発生するため、反応ガスの拡散性が阻害されることになり電池電圧が極端に低下するという問題が発生していた。
【0008】
また、反対に出口側でのフラッディング現象の発生を抑制するために、予め湿度を低下させた反応ガスを入口側から供給すると、入口側付近では高分子電解質膜の含水率が低下し、プロトン導電性が低下、すなわちプロトン導電抵抗が増大することによる電池電圧の低下が起こるという問題が発生していた。これらの傾向は電極面積が大きく、またセパレータ板のガス流路が長いほど顕著であった。
【0009】
このような課題に対する解決策の一案として、特開平6−267562号公報に記載された技術がある。この先行文献に記載されているのは、ガス流路の入口側から出口側に向かってガス拡散層の空隙率を増大させるという構成である。このような構成では、ガスの拡散量が電池面内で不均一化しやすい、あるいはガス拡散電極の出口側でガス拡散電極の導電率が低下しやすい、あるいは電池面内でガス拡散電極の導電率が不均一化する等の問題を引き起こすなどの電池の基本性能を低下させる恐れがある。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−267562号公報
【0011】
本発明は上記した従来技術の問題点を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、MEAの全面にわたって特性を均一な水分管理ができ、電池の基本性能を高めたガス拡散層あるいはガス拡散電極を提供し長期にわたり安定動作が可能な高分子電解質型燃料電池を実現することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明のガス拡散層は、多孔性支持体と、前記多孔性支持体上に配置された導電性炭素粒子および高分子材料を含有する高分子含有導電層とを有するガス拡散層であって、前記高分子材料は、結晶化度の異なる少なくとも2種の高分子材料であり、かつ前記高分子材料のうち結晶化度の低い方の高分子材料の量が、ガス拡散層の一端(R3)から他端(L3)に向かって多くなっていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のガス拡散層は、多孔性支持体と、前記多孔性支持体上に導電性炭素粒子および高分子材料を含有する高分子含有導電層とを有するガス拡散層であって、前記高分子材料は、透湿係数の異なる少なくとも2種の高分子材料であり、かつ前記高分子材料のうち透湿係数が大きい方の高分子材料の量が、ガス拡散層の一端(R4)から他端(L4)に向かって多くなっていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電解質膜−電極接合体は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の両面に配置された導電性炭素粒子および金属触媒を含有する触媒層と、前記触媒層の少なくともいずれか一方に対して配置された、前記したいずれかのガス拡散層とを有すること特徴とする。
【0015】
また、本発明の高分子電解質型燃料電池は、前記電解質膜−電極接合体と、その電解質膜−電極接合体の両側に配置されたガス流路を持つ導電性セパレータ板とを有する単電池の積層体を備える高分子電解質型燃料電池であって、前記ガス拡散層に対して配置された前記導電性セパレータ板のガス流路に酸化剤ガスが通流され、かつ前記ガス拡散層の一端(R3、R4)が前記酸化剤ガスの入口側に位置し、あるいは対応し、他端(L3、L4)が前記酸化剤ガスの前記出口側に位置している、あるいは対応していることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
2は本発明の参考となるガス拡散層及びこれを用いたガス拡散電極(電極2a)の構成をガス拡散層側から見た模式図である。
【0017】
図示するようにガス拡散層213aは、炭素繊維で構成される多孔性支持体21aと、その上に形成された少なくとも2種の導電性炭素粒子210a、211aと高分子材料212aで構成される高分子含有導電層22aで構成される。ガス拡散層213aにおいて高分子含有導電層22aの表面に白金を担持した導電性炭素粒子で構成される触媒層23aが配置されガス拡散電極24aが構成される。高分子含有導電層22aは、酸性官能基量がそれぞれ異なる導電性炭素粒子210a、211aが混合されてなり、酸性官能基量の多い方の導電性炭素粒子211aの混合量が高分子含有導電層22aにおいて、その一端(R2)から他端(L2)に向かって多くなっている。
【0018】
ここで、酸性官能基とは具体的にはカルボニル基、水酸基、キノン基、ラクトン基であり、また、酸性官能基量とはカーボンの単位重量当たりの上記した官能基のモル数をいう。図3は従来例におけるガス拡散層およびこれを用いたガス拡散電極(電極2b)の概略を示す構成図である。基本的な構成は電極2aと同一であるが、ガス拡散層213bの面内で導電性炭素粒子210bが酸性官能基量が同一の一つの材料で構成されている点で電極2aと異なる(図3において、図2と同じものは符号を省略した)。
【0019】
図4は前記ガス拡散電極を用いて作製した高分子電解質型燃料電池の概略を示す構成図である。この構成の燃料電池において、高分子電解質膜25の両面に一方の面には電極2aを、他面には電極2bを、各電極の触媒層側を高分子電解質膜側に向けて、高分子電解質膜25に密着して配置し、電解質膜−電極接合体(以下、MEA)を形成する。さらに、MEAの外部にガス流路26を一方の面に形成したセパレータ板27を配置し、セパレータ板27のガス流路26から、電極2a側には符号28で示したガス流路に酸化剤ガスとして空気を、また電極2b側には符号29で示したガス流路に燃料ガスとして水素を通流する。酸化剤ガス用流路28の入口側には図2におけるR2が位置しており、酸化剤ガス用流路28の出口側には図2におけるL2が位置している。
【0020】
前記構成にすることによってMEA全面にわたって均一な水分管理ができる。つまり、電池反応による生成水が発生するために均一な水分管理が困難であった酸化極側のガス拡散層において、酸化剤ガスの出口側では、ガス拡散層中の導電性粒子の酸性官能基量が多いため、導電性粒子は水に濡れ易くなり、ガス拡散層の表面を伝わってセパレータ板のガス流路付近まで運ばれ、酸化剤ガスを介して電池外部に排水されやすくなる。一方、酸化剤ガスの入り口側では、ガス拡散層中の導電性粒子の酸性官能基量が少ないため導電性粒子は水に濡れ難くなる。そのため、セパレータ板のガス流路まで運ばれ難く、電池内部に保持されやすくなるのである。
【0021】
なお、上記における酸性官能基量の異なる導電性炭素粒子としては、アセチレンブラックと、これを空気酸化して酸性官能基量の増加せしめたアセチレンブラックとの組み合わせがあげられるが、これ以外にも(酸性官能基量の多い導電性炭素材料、酸性官能基量の少ない導電性炭素材料)=(ファーネスブラック、アセチレンブラック)、(ファーネスブラック、黒鉛化ブラック)などがあげられる。
【0022】
《第の実施形態》
図5は本発明の第の実施の形態におけるガス拡散層及びガス拡散電極(電極3a)の概略をガス拡散層側から見た構成図である。
図示するようにガス拡散層313は、炭素繊維で構成される多孔性支持体31と、その上に形成された導電性炭素粒子310と少なくとも2種の高分子材料311、312で構成される高分子含有導電層32が形成され構成される。ガス拡散層313の表面に白金を担持した導電性炭素粒子で構成される触媒層33が配置され、ガス拡散電極34が構成される。
【0023】
高分子含有導電層32は結晶化度が異なる高分子材料311、312が混合されてなり、結晶化度の低い方の高分子材料311の混合量が高分子含有導電層32において、その一端(R3)から他端(L3)に向かって多くなっている。このガス拡散電極を用いて作製した高分子電解質型燃料電池の構成は図4と同様であるので、その詳述は省略するが、酸化剤ガスの入口側には図5におけるR3が位置しており、酸化剤ガスの出口側には図5におけるL3が位置している。
【0024】
前記構成にすることによってMEA全面にわたって均一な水分管理ができる。つまり、水の浸透は高分子材料の非晶質部を介して水分が吸収及び拡散し透過することよって起こるため、酸化剤ガスの出口側ではガス拡散層中の高分子材料は結晶化度の低い高分子材料(つまりは非晶質部の多い高分子材料)の存在割合が多くなるため、全体としての高分子材料の非晶質部分が多くなるため透水量は多くなり、ガス拡散層の表面を伝わってセパレータ板のガス流路付近まで運ばれ、酸化剤ガスを介して電池外部に排水されやすくなるのである。一方、酸化剤ガスの入口側では、ガス拡散層中の高分子材料は結晶化度の低い材料の存在割合が少なくなることにより高分子材料の非晶質部が少なくなるため、透水量は少なくなり水が電池内部に保持されやすくなるのである。
【0025】
なお、本実施の形態における高分子材料としては、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、エチルセルロースなどがあげられる。それらは、同じ名称の材料でも結晶化度の異なる材料が種々ある。それらの高分子材料の中から、結晶化度の大きいものと小さいものとの組合せを適宜選択して本実施形態で用いることができる。
【0026】
《第の実施形態》
図6は本発明の第の実施の形態におけるガス拡散層及びガス拡散電極(電極4a)の概略をガス拡散層側から見た構成図である。
【0027】
図示するようにガス拡散層413は、炭素繊維で構成される多孔性支持体41と、その上に形成された導電性炭素粒子410と少なくとも2種の高分子材料411、412で構成される高分子含有導電層42で構成される。ガス拡散層413の表面に、白金を担持した導電性炭素粒子で構成される触媒層43が配置されガス拡散電極44が構成されている。高分子含有導電層42は透湿係数の異なる高分子材料411、412が混合されてなり、透湿係数の大きい方の高分子材料411の混合量が高分子含有導電層42において、その一端(R4)から他端(L4)に向かって多くなっている。
【0028】
このガス拡散電極を用いて作製した高分子電解質型燃料電池の構成は図4と同様であるので、その詳述は省略するが、酸化剤ガスの入口側には図におけるR4が位置しており、酸化剤ガスの出口側には図4におけるL4が位置している。
【0029】
前記構成にすることによってMEA全面にわたって均一な水分管理ができる。つまり、電池反応による生成水が発生するために均一な水分管理が困難であった酸化極側のガス拡散層において、酸化剤ガスの出口側では、ガス拡散層中に透湿係数の大きい高分子材料が多く存在することになるため、透水量が多く、ガス拡散層の表面を伝わってセパレータ板のガス流路付近まで運ばれ、酸化剤ガスを介して電池外部に排水されやすくなる。一方、酸化剤ガスの入り口側では、ガス拡散層中に透湿係数の小さい高分子材料が多く存在することになるため、透水量が少なく、セパレータ板のガス流路まで運ばれ難く、電池内部に保持されやすくなるのである。
【0030】
なお、本実施の形態における透湿係数の異なる高分子材料の具体的な組み合わせとしては、(透湿係数の小さい高分子材料、透湿係数の大きい高分子材料)=(PTFE、ポリイミド)、(PTFE、ポリ塩化ビニル)、(PTFE、酢酸セルロース)、(ポリエチレン、ポリイミド)、(ポリエチレン、ポリ塩化ビニル)、(ポリエチレン、酢酸セルロース)、(ポリプロピレン、ポリイミド )、(ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル)、(ポリプロピレン、酢酸セルロース)などが挙げられる。
【0031】
上記のすべての実施形態に共通して、用いるべき多孔性支持体としては、カーボン材料が好ましいが、以下の実施例でも用いるカーボンペーパーに限らず、他のカーボン不織布を用いても、また、カーボンクロスを用いても、カーボンペーパーを用いた場合と同様に、本発明の目的とする効果が得られる。すなわち、多孔性支持体として必要な特性は、多孔性および導電性を有し、ガス拡散層の構成要素としてある程度の機械的強度があることである。
【0032】
以上の本発明の実施形態においては、上述のようにMEA全面にわたって均一な水分管理が可能となり、電圧が長期にわたり安定した高分子電解質型燃料電池を実現することができる。これは、上述の様にカソード電極において出口側で水の排水が促進され、反対に入口側では透水量が抑制されるため、高分子電解質膜の乾燥やフラッディングによる電池電圧の低下が抑えられるためである。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の参考例および実施例を具体的に説明する。
参考例1−1》
A.ガス拡散電極の製造
平均粒径3μmのアセチレンブラック(以下、ABという)を空気の存在下、400℃で10時間加熱しABを空気酸化した(以下、この空気酸化処理を施したABをABO1という)。AB及びABO1の酸性官能基の存在量を揮発成分組成分析により測定した。
【0034】
揮発成分組成分析はカーボンを真空中で約1000℃で加熱すると、カーボンの表面に存在する酸性官能基が二酸化炭素、一酸化炭素、水素及びメタンの形で脱離することを利用し、そのガス組成を定量することからカーボンの表面に存在する酸性官能基の量を化学的に定量する方法である(カーボンブラック便覧(第3版)、カーボンブラック協会編)。本参考例で用いたAB及びABO1の酸性官能基量は、ABで4.1×10-4mol/g、ABO1で9.8×10-4mol/gであり、空気酸化処理を施したものでは酸性官能基量が増加していることが解った。
【0035】
続いて、AB10gとポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)を主成分とするフッ素樹脂分散液(D−1:ダイキン化学工業(株))2gを混合撹拌し、フッ素樹脂分散液中にABが分散した分散液(以下、分散液e1という)と、ABO1を10gとフッ素樹脂分散液(D−1:ダイキン化学工業(株))2gを混合撹拌し、フッ素樹脂分散液中にABO1が分散した分散液(以下、分散液f1という)とを調製した。分散液e1と分散液f1とを、それぞれ重量混合比で、分散液e1:分散液f1=9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8、1:9、0:10で混合し、分率が異なる10種の混合分散液d1、d2、・・・d10を調製した。
【0036】
次に、多孔性支持体として用意した長さ30cm、幅15cm、厚さ180μmのカーボンペーパー(東レ(株)製:品番TGP−H−060)の上に図7にその構成の概略を模式的に示す印刷装置によりスクリーン印刷した。つまり、カーボンペーパー51の上部に、開口部52を有するマスク53を支持台54を介して配置し、前記マスク53の上部に図示するように、前記した10種の混合分散液を分散液f1の混合割合が少ない順に、カーボンペーパの一端(R2)から他端(L2)に向かって分散液d1、d2、・・・d10を配置し、スクリーン印刷を行った。その後、350℃で焼成することにより、その片面に高分子含有導電層を有するガス拡散層(以下、ガス拡散層g1という)を得た。
【0037】
完成した拡散層g1の透水量をJISZ0208の例による重量法により、R2部分(カーボンペーパーの一端面から15cmの部分)とL2部分(残りの15cmの部分、すなわちカーボンペーパーの他端面から15cmの部分)に分割し評価した。JISZ0208は湿度90%の空気と、乾燥空気を試料を介して隔離し、24時間以内に湿度90%の空気/試料/乾燥空気の境界面1m2を通過する水蒸気の質量を測定する方法である。本参考例では湿度90%の空気と乾燥空気を15cm2のガス拡散層を介して隔離し、湿度90%の空気/ガス拡散層/乾燥空気の境界面(境界面の面積は15cm2になる)を、40℃で24時間の期間に透過する水の量を計測し、境界面の面積1m2に換算した値で比較評価した。
【0038】
このガス拡散層g1の透水量はR2部分で0.8×104g/m2・24h、L2部分で1.8×104g/m2・24hで、R2部分で透水量が少なく、L2部分で透水量が多くなっていることがわかった。続いて、前記拡散層g1の前記高分子含有導電層の片面に、予め粒径が3ミクロン以下のカーボン粉末を、塩化白金酸水溶液に浸漬し、還元処理によりカーボン粉末の表面に白金触媒を担持させ(このときのカーボンと担持した白金の重量比は1:1とした)カーボン粉末を高分子電解質のアルコール溶液中に分散させ、スラリー化しておいたスラリーを均一に塗布して触媒層を形成し、ガス拡散電極(以下、電極h1という)とした。
【0039】
また、カーボンペーパー上全面に印刷する分散液を分散液e1のみにした以外はガス拡散層g1を得たのと全く同一の手段でガス拡散層(以下、ガス拡散層iという)を得た。拡散層iの透水量は均一に0.8×104g/m2・24hであった。続いて、このガス拡散層iを用いて前記したガス拡散電極h1の作製の操作と同様の操作でガス拡散電極(以下、ガス拡散電極jという)を得た。
【0040】
B.高分子電解質型燃料電池の製造
同一の大きさのガス拡散電極h1及びガス拡散電極jを用意し、ガス拡散電極h1及びガス拡散電極jより一回り外寸の大きい高分子電解質膜(デュポン(株)製:NAFION117)の両面に、ガス拡散電極h1およびガス拡散電極jを、それぞれ触媒層を備えた面が高分子電解質と向き合うようにして重ね合わせ、さらに厚み250μmのシリコンゴム製ガスケットを両面に位置合わせした後、130℃、5分間ホットプレスし、高分子電解質膜−電極接合体(以下、MEAという)を得た。
【0041】
このMEAの両側にセパレータ板を配置し作製した単セルを4セル積層させて高分子電解質型燃料電池とした。セパレータ板は厚さ4mmのカーボン製で気密性を有するものを用いた。またガス拡散層と接する表面には、幅2mm、深さ1mmのガス流路を切削加工により形成した。電池スタックの上部及び下部にはSUS304製の金属端板を配し、高分子電解質型燃料電池を固定した。
【0042】
ガス拡散電極h1はそのR2部分がセパレータ板のガス流路の入口側に、またL2部分がガス流路の出口側になるように配置した。ガス拡散電極h1側のセパレータ板のガス流路に入口側から出口側に向かって空気を、またガス拡散電極j側のセパレータ板のガス流路に入口側から出口側に向かって水素を、酸素利用率40%、水素利用率70%で、それぞれ供給し、水素加湿バブラー温度85℃、空気加湿バブラー温度65℃、電池温度75℃で運転したところ、高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この要因は、本参考例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することができたことによる。
【0043】
参考例1−2》
参考例1−1で作製した空気酸化処理をしたABO1を次のように替えた以外は、参考例1−1で作製したガス拡散層g1と全く同一の作製方法で、本参考例のガス拡散層(以下、ガス拡散層g2という)を作製した。すなわち、参考例1−1では、平均粒径3μmのアセチレンブラック(AB)を空気の存在下において、400℃で加熱する時間を10時間としたが、それを5時間として空気酸化処理を施したAB(以下、この空気酸化処理を施したABをABO2という)を得た。このABO2の酸性官能基量を参考例1−1に記載した揮発成分組成分析により測定した結果、7.2×10-4mol/gであった。
【0044】
その後の処理は参考例1−1と同様に、このABO2の10gがフッ素樹脂分散液2g中に分散した分散液(以下、分散液f2という)を調製し、さらに参考例1−1で作製した分散液e1と分散液f2とを参考例1−1と同じように分率が異なる10種の混合をし、10種の混合分散液を調製した。その後、参考例1−1と同様に、カーボンペーパーへのスクリーン印刷、さらに350℃での焼成によりガス拡散層g2を作製した。
【0045】
このガス拡散層g2の透水量を参考例1−1と同様にJISZ0208の重量法によりR2部分とL2部分に分割して評価したところ、透水量はR2部分では0.8×104g/m2・24hで参考例1−1の場合と変化はなかったが、L2部分では1.4×104g/m2・24hであった。すなわち、R2部分で透水量が少なく、L2部分で透水量が多いという状態は参考例1−1と同様であったが、L2部分での透水量が、参考例1−1の場合よりは少なくなっていることがわかった。これは、酸化官能基量について、L2部分の方がR2部分よりも多いものの、参考例1−1のL2部分よりも少なくなっていたためである。
【0046】
このガス拡散層g2を用いて、参考例1−1のガス拡散電極h1の作製と同じ作製方法で、本参考例のガス拡散電極h2を作製した。このガス拡散電極h2とガス拡散電極jとを用いて、参考例1−1の高分子電解質型燃料電池の作製と同じ作製方法で、本参考例の高分子電解質型燃料電池を作製した。
【0047】
この本参考例の高分子電解質型燃料電池の特性を参考例1−1と同じ条件で測定した。すなわち、R2部分とL2部分がそれぞれガス流路の入口側と出口側になるように配置し、ガス拡散電極h2側に空気を、さらにガス拡散電極j側に水素を供給して、参考例1−1と同じ運転条件で運転した。その結果、本参考例の高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この要因は、本参考例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することができたことによる。
【0048】
参考例1−3》
参考例1−1で作製した空気酸化処理をしたABO1を次のように替えた以外は、参考例1−1で作製したガス拡散層g1と全く同一の作製方法で、本参考例のガス拡散層(以下、g3という)を作製した。すなわち、参考例1−1では、平均粒径3μmのアセチレンブラック(AB)を空気の存在下において、400℃で10時間加熱したが、それを200℃で5時間として空気酸化処理を施したAB(以下、この空気酸化処理を施したABをABO3という)を得た。このABO3の酸性官能基量を参考例1−1に記載した揮発成分組成分析により測定した結果、6.3×10-4mol/gであった。
【0049】
その後は、このABO3を用いて参考例1−1あるいは参考例1−2と同様に処理をした。同様な処理であるので以下詳述は省略するが、分散液f1あるいはf2の替わりに分散液f3を調製し、その分散液f3を用いてガス拡散層g1あるいはg2の替わりにガス拡散層g3を作製した。
【0050】
このガス拡散層g3の透水量を参考例1−1と同様にJISZ0208の重量法によりR2部分とL2部分に分割して評価したところ、透水量はR2部分では0.8×104g/m2・24hで参考例1−1の場合と変化はなかったが、L2部分では1.1×104g/m2・24hであった。すなわち、R2部分で透水量が少なく、L2部分で透水量が多いという状態は参考例1−1あるいは参考例1−2と同様であったが、L2部分での透水量が、参考例1−2の場合よりさらに少なくなっていることがわかった。これは、酸化官能基量について、L2部分の方がR2部分よりも多いものの、参考例1−2のL2部分よりもさらに少なくなっていたためである。
【0051】
このガス拡散層g3を用いて、参考例1−1のガス拡散電極h1の作製と同じ作製方法で、本参考例のガス拡散電極h3を作製した。このガス拡散電極h3とガス拡散電極jとを用いて、参考例1−1の高分子電解質型燃料電池の作製と同じ作製方法で、本参考例の高分子電解質型燃料電池を作製した。
【0052】
この本参考例の高分子電解質型燃料電池の特性を参考例1−1と同じ条件で測定した。すなわち、R2部分とL2部分がそれぞれガス流路の入口側と出口側になるように配置し、ガス拡散電極h3側に空気を、さらにガス拡散電極j側に水素を供給して、参考例1−1と同じ運転条件で運転した。その結果、本参考例の高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この要因は、本参考例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することができたことによる。
【0053】
参考例1−4》
参考例1−1で用いたABと、空気酸化処理をしたABO1とを次のように替えた以外は、参考例1−1で作製したガス拡散層g1と全く同一の作製方法で、本参考例のガス拡散層(以下、g4という)を作製した。すなわち、まず参考例1−1では、平均粒径3μmのアセチレンブラック(AB)とABO1を用いたが、本参考例では、その替わりに平均粒径3μmの黒鉛化ブラック(以下、GBという)と、平均粒径3μmのファーネスブラック(以下、FBという)をそれぞれ用いた。これらのGBとFBの酸性官能基量を参考例1−1に記載した揮発成分組成分析により測定した結果、それぞれ0.2×10-4mol/gと5.7×10-4mol/gであった。
【0054】
その後は、これらのGBとFBの組合せを、それぞれ参考例1−1のABとABO1、参考例1−2のABとABO2、参考例1−3のABとABO3の各組合せの替わりに用いて、各参考例と同様に処理をした。同様な処理であるので以下詳述は省略するが、分散液e1の替わりに分散液e2を調製し、さらに分散液f1、f2あるいはf3の替わりに分散液f4を調製し、その分散液e2と分散液f4を用いてガス拡散層g1、g2あるいはg3の替わりにガス拡散層g4を作製した。
【0055】
このガス拡散層g4の透水量を参考例1−1と同様にJISZ0208の重量法によりR2部分とL2部分に分割して評価したところ、透水量はR2部分では0.1×104g/m2・24hで参考例1−1の場合と比べて1桁近く少なくなったが、L2部分では0.9×104g/m2・24hであった。すなわち、R2部分で透水量が少なく、L2部分で透水量が多いという状態は前3者の参考例と同様であったが、R2部分とL2部分での透水量は前3者よりも小さくなり、その一方で、R2部分での透水量とL2部分での透水量との差が、前3者の場合より大きくなっていることがわかった。これは、R2部分およびL2部分での酸化官能基量が、それぞれ前3者よりも少なくなっていた一方、R2部分とL2部分の酸化官能基量の差が、前3者の場合よりも大きくなっていたためである。
【0056】
このガス拡散層g4を用いて、参考例1−1のガス拡散電極h1の作製と同じ作製方法で、本参考例のガス拡散電極h4を作製した。このガス拡散電極h4とガス拡散電極jとを用いて、参考例1−1の高分子電解質型燃料電池の作製と同じ作製方法で、本参考例の高分子電解質型燃料電池を作製した。
【0057】
この本参考例の高分子電解質型燃料電池の特性を参考例1−1と同じ条件で測定した。すなわち、R2部分とL2部分がそれぞれガス流路の入口側と出口側になるように配置し、ガス拡散電極h4側に空気を、さらにガス拡散電極j側に水素を供給して、参考例1−1と同じ運転条件で運転した。その結果、本参考例の高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この要因は、本参考例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することができたことによる。
【0058】
なお、上記参考例1−1〜1−4においては、酸性官能基量の異なる2種の材料の混合割合を10分割して用いたが、混合割合はこれに限定されるものではなく、酸性官能基量が少ないものと多いもの、参考例中で例示したもので言えば、0.2×10-4mol/g〜9.8×10-4mol/gのものの中から適宜選択して混合し、その結果、R2部分からL2部分に向かって酸性官能基量が増加する構成、より好ましくは徐々に増加する構成であれば、上記の参考例群で得られるのと同様な効果が得られることも確認した。
また、上記参考例群では、酸性官能基量の異なる2種の炭素粒子の組合せを例示したが、3種以上の組合せでもR2部分からL2部分に向かって酸性官能基量が増加する構成にすれば、同様な好結果が得られることも別途確認した。
【0059】
《実施例−1》
A.ガス拡散電極の製造
参考例1−1で用いたABを10gと、参考例1−1に記載したD−1の主成分であるPTFEと比べて分子量が異なり結晶化度が低いPTFEを主成分とするフッ素樹脂分散液(ダイキン化学工業(株)製: ルブロン)2gを混合撹拌し、フッ素樹脂分散液ルブロン中にABが分散した分散液(以下、分散液k1という)を調製した後、参考例1−1記載の分散液e1と分散液k1をそれぞれ重量混合比で分散液e1:分散液k1=9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8、1:9、0:10で混合し、分率が異なる10種の混合分散液を調製した。
【0060】
なお、ここで結晶化度とは、結晶化部分と非晶質部分からなる全体量の中に占める結晶化部分の体積%であり、X線測定法で測定することができる。X線測定法による測定の結果、D−1分散液中のPTFEの結晶化度は80%で、ルブロ分散液中のPTFEの結晶化度は40%であった。
【0061】
次に、多孔性支持体として用意した長さ30cm、幅15cm、厚さ180μmのカーボンペーパー(東レ(株)製:品番TGP−H−060)の表面に、一端(R3)から他端(L3)に向かって、分散液k1の混合割合が多くなるように、前記した10種の混合分散液を参考例1−1に記載したものと同じ手段で、スクリーン印刷を行った。その後、350℃で焼成しガス拡散層(以下、ガス拡散層m1)を得た。
【0062】
こうして完成したガス拡散層m1の透水量を、R3部分(カーボンペーパーの一端面から15cmの部分)とL3部分(カーボンペーパーの他端面から15cmの部分)に分割し、JISZ0208の重量法により評価したところ、透水量はR3部部分で0.8×104g/m2・24h、L3部分で1.8×104g/m2・24hで、R3部分で透水量が低く、L3部分で透水量が多くなっていることがわかった。
【0063】
続いて、前記ガス拡散層m1の片面に、予め粒径が3ミクロン以下のカーボン粉末を、塩化白金酸水溶液に浸漬し、還元処理によりカーボン粉末の表面に白金触媒を担持させ(このときのカーボンと担持した白金の重量比は1:1とした)カーボン粉末を高分子電解質のアルコール溶液中に分散させ、スラリー化しておいたスラリーを均一に塗布して触媒層を形成し、ガス拡散電極とした(以下、ガス拡散電極n1という)。
【0064】
B.高分子電解質型燃料電池の製造
同一の大きさのガス拡散電極n1及び参考例1−1で作製したガス拡散電極jを用意し、ガス拡散電極n1及びガス拡散電極jより一回り外寸の大きい高分子電解質膜(デュポン(株)製: NAFION117)の両面に、ガス拡散電極n1およびガス拡散電極jを、それぞれ触媒層を備えた面がそれぞれ高分子電解質と向き合う様にして重ね合わせ、さらに厚み250μmのシリコンゴム製ガスケットを両面に位置合わせした後、130℃、5分間ホットプレスし、MEAを得た。
【0065】
このMEAの両側にセパレータ板を配置し作製した単セルを4セル積層させて高分子電解質型燃料電池とした。セパレータ板は厚さ4mmのカーボン製で気密性を有するものを用いた。またガス拡散層と接する表面には、幅2mm、深さ1mmのガス流路を切削加工により形成した。電池スタックの上部及び下部にはSUS304製の金属端板を配し、高分子電解質型燃料電池を固定した。
【0066】
ガス拡散電極n1はそのR3部分がセパレータ板のガス流路の入口側にまた、L3部分がガス流路の出口側になるように配置した。電極n1側のセパレータ板のガス流路に入口側から出口側に向かって空気を、また電極j側のセパレータ板のガス流路に入口側から出口側に向かって水素を、酸素利用率40%、水素利用率70%で、それぞれ供給し、水素加湿バブラー温度85℃、空気加湿バブラー温度65℃、電池温度75℃で運転したところ、高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、また、3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この原因は、本実施例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することが出来たことによる。
【0067】
《実施例−2》
実施例−1で分散液e1に用いたPTFEを主成分とするフッ素樹脂分散液D−1の替わりに結晶化度80%のポリプロピレンをエタノール中に分散した分散液(この分散液におけるポリプロピレンとエタノールの重量比は20:80)を用いて分散液e1の替わりに分散液e3を作製したこと、および、分散液k1に用いたPTFEを主成分とするフッ素樹脂分散液ルブロンの替わりに結晶化度40%のポリプロピレンをエタノール中に分散した分散液(この分散液におけるポリプロピレンとエタノールの重量比は同じく20:80)を用いて分散液k1の替わりに分散液k2を作製したこと以外は、実施例−1で作製したガス拡散層m1と全く同一の作製方法で、本実施例のガス拡散層(以下、ガス拡散層m2という)を作製した。
【0068】
すなわち、分散液e3と分散液k2とを実施例−1と同じように分率が異なる10種の混合をし、10種の混合分散液を調製した。その後、実施例−1と同様に、カーボンペーパーへのスクリーン印刷、さらに350℃での焼成により、本実施例のガス拡散層m2を作製したのである。
【0069】
このガス拡散層m2の透水量を実施例−1と同様にJISZ0208の重量法によりR3部分とL3部分に分割して評価したところ、透水量はR3部分で、0.8×104g/m2・24h、L3部分で1.8×104g/m2・24hで、実施例−1の場合と変化はなかった。これは、結晶化度について、R2部分およびL2部分の両方について、実施例−1の場合と同様であったためである。
【0070】
このガス拡散層m2を用いて、実施例−1のガス拡散電極n1の作製と同じ作製方法で、本実施例のガス拡散電極n2を作製した。このガス拡散電極n2とガス拡散電極jとを用いて、実施例−1の高分子電解質型燃料電池の作製と同じ作製方法で、本実施例の高分子電解質型燃料電池を作製した。
【0071】
この本実施例の高分子電解質型燃料電池の特性を実施例−1と同じ条件で測定した。すなわち、R3部分とL3部分がそれぞれガス流路の入口側と出口側になるように配置し、ガス拡散電極n2側に空気を、さらにガス拡散電極j側に水素を供給して、実施例−1と同じ運転条件で運転した。その結果、本実施例の高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この要因は、本実施例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することができたことによる。
【0072】
《実施例−3》
実施例−1で分散液e1に用いたPTFEを主成分とするフッ素樹脂分散液D−1の替わりに結晶化度80%のポリエチレンをエタノール中に分散した分散液(この分散液におけるポリエチレンとエタノールの重量比は20:80)を用いて分散液e1の替わりに分散液e4を作製したこと、および、分散液k1に用いたPTFEを主成分とするフッ素樹脂分散液ルブロンの替わりに、結晶化度30%のアクリロニトリルのエタノール溶液(この溶液におけるアクリロニトリルとエタノールの重量比も20:80)を用いて分散液k1の替わりに分散液k3を作製したこと以外は、実施例−1で作製したガス拡散層m1と全く同一の作製方法で、本実施例のガス拡散層(以下、ガス拡散層m3という)を作製した。なお、ガス拡散層の作製工程における350℃での焼成により、高分子含有導電層が形成された。
【0073】
このガス拡散層m3の透水量を実施例−1と同様にJISZ0208の重量法によりR3部分とL3部分に分割して評価したところ、透水量はR3部分では0.8×104g/m2・24hで実施例−1の場合と変化はなかったが、L3部分では2.0×104g/m2・24hであった。すなわち、R3部分で透水量が少なく、L3部分で透水量が多いという状態は実施例−1あるいは実施例−2と同様であったが、L3部分での透水量が、前2者の実施例の場合よりさらに多くなっていることがわかった。これは、結晶化度について、前2者の実施例のL3部分よりもさらに高くなっていたためである。
【0074】
このガス拡散層m3を用いて、実施例−1のガス拡散電極n1の作製と同じ作製方法で、本実施例のガス拡散電極n3を作製した。このガス拡散電極n3とガス拡散電極jとを用いて、実施例−1の高分子電解質型燃料電池の作製と同じ作製方法で、本実施例の高分子電解質型燃料電池を作製した。
【0075】
この本実施例の高分子電解質型燃料電池の特性を実施例−1と同じ条件で測定した。すなわち、R3部分とL3部分がそれぞれガス流路の入口側と出口側になるように配置し、ガス拡散電極n3側に空気を、さらにガス拡散電極j側に水素を供給して、実施例−1と同じ運転条件で運転した。その結果、本実施例の高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この要因は、本実施例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することができたことによる。
【0076】
《実施例−4》
実施例−1で分散液e1に用いたPTFEを主成分とするフッ素樹脂分散液の替わりに結晶化度60%のポリエチレンテレフタレートのm-クレゾール溶液(この溶液におけるポリエチレンテレフタレートとm−クレゾールとの重量比は20:80)を用いて分散液e1の替わりに分散液e5を作製したこと、および、分散液k1に用いたフッ素樹脂分散液ルブロンの替わりに結晶化度10%の塩化ビニルのエタノール溶液(この溶液における塩化ビニルとエタノールとの重量比は20:80)を用いて分散液k1の替わりに分散液k4を作製したこと以外は、前3者の実施例で作製したガス拡散層m1、m2あるいはm3と全く同一の作製方法で、本実施例のガス拡散層(以下、ガス拡散層m4という)を作製した。なお、ガス拡散層の作製工程における350℃での焼成により、高分子含有導電層が形成された。
【0077】
このガス拡散層m4の透水量を実施例−1と同様にJISZ0208の重量法によりR3部分とL3部分に分割して評価したところ、透水量はR3部分では1.2×104g/m2・24hで前3者の実施例の場合よりも多くなっていたが、L3部分でも2.8×104g/m2・24hで、同じく前3者の実施例の場合よりも多くなっていた。これは、結晶化度について、前3者の実施例と比べて、R3部分およびL3部分ともさらに高くなっていたためである。
【0078】
このガス拡散層m4を用いて、実施例−1のガス拡散電極n1の作製と同じ作製方法で、本実施例のガス拡散電極n4を作製した。このガス拡散電極n4とガス拡散電極jとを用いて、実施例−1の高分子電解質型燃料電池の作製と同作製方法で、本実施例の高分子電解質型燃料電池を作製した。
【0079】
この本実施例の高分子電解質型燃料電池の特性を実施例−1と同じ条件で測定した。すなわち、R3部分とL3部分がそれぞれガス流路の入口側と出口側になるように配置し、ガス拡散電極n4側に空気を、さらにガス拡散電極j側に水素を供給して、実施例−1と同じ運転条件で運転した。その結果、本実施例の高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この要因は、本実施例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することができたことによる。
【0080】
なお、上記実施例−1〜−4においては、結晶化度の異なる2種の材料の混合割合を10分割して用いたが、混合割合はこれに限定される物ではなく、結晶化度の高いものと低いもの、実施例中で例示したもので言えば、80%〜10%のものの中から適宜選択して混合し、その結果、R3部分からL3部分に向かって結晶化度が低下する構成、より好ましくは徐々に低下する構成であれば、上記の実施例群で得られるのと同様な効果が得られることも確認した。
また、上記実施例群では、結晶化度の異なる2種の高分子材料の組合せを例示したが、3種以上の組合せでも、R3部分からL3部分に向かって結晶化度が低下する構成であれば、好結果が得られることも別途確認した。
【0081】
《実施例−1》
A.ガス拡散電極の製造
参考例1−1で用いたABを10gと、参考例1−1に記載したPTFEよりも透湿係数の大きい樹脂としてポリイミド樹脂を主成分とするN−メチル−2−ピロリドン溶液(日本合成ゴム(株)製:JALS214)2gを混合撹拌し、ポリイミド樹脂を主成分とするN−メチル−2−ピロリドン溶液中にABが分散した分散液(以下、分散液p1という)を調製した。その後、参考例1−1記載の分散液e1と分散液p1を、それぞれ重量混合比で分散液e1:分散液p1=9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8、1:9、0:10で混合し、分率が異なる10種の混合分散液を調製した。
【0082】
なお、ここで透湿係数とは、単位面積・単位時間・一定気圧における湿度の透過率であり、ここでは日本工業規格JIS−A9511に基づく定義を用いる。測定の結果、分散液e1中のPTFEの透湿係数は0.01g/m・hr・mmHgで、分散液p1中のポリイミド樹脂の透湿係数は0.04g/m・hr・mmHgであった。
【0083】
次に、多孔性支持体として用意した長さ30cm、幅15cm、厚さ180μmのカーボンペーパー(東レ(株)製: 品番TGP−H−060)の表面に、一端(R4)から他端(L4)に向かって、分散液p1の混合割合が多くなるように配置し、前記した10種の混合分散液を参考例1−1に記載したものと同じ手段で、スクリーン印刷を行った。その後、350℃で焼成しガス拡散層(以下、ガス拡散層q1という)を得た。
【0084】
こうして完成したガス拡散層q1の透水量をR4部分(カーボンペーパーの一端面から15cmの部分)とL4部分(カーボンペーパーの他端面から15cmの部分)に分割し、JISZ0208の重量法により評価したところ、透水量はR4部分で0.8×104g/m2・24h、L4部分で1.8×104g/m2・24hで、R4部分で透水量が少なく、L4部分で透水量が多くなっていることがわかった。
【0085】
続いて、前記ガス拡散層q1の片面に、予め粒径が3ミクロン以下のカーボン粉末を、塩化白金酸水溶液に浸漬し、還元処理によりカーボン粉末の表面に白金触媒を担持させ(このときのカーボンと担持した白金の重量比は1:1とした)カーボン粉末を高分子電解質のアルコール溶液中に分散させ、スラリー化しておいたスラリーを均一に塗布して触媒層を形成し、ガス拡散電極とした(以下、ガス拡散電極r1という)。
【0086】
B.高分子電解質型燃料電池の製造
同一の大きさのガス拡散電極r1及び参考例1−1で作製したガス拡散電極jを用意し、ガス拡散電極r1及びガス拡散電極jより一回り外寸の大きい高分子電解質膜(デュポン(株)製;NAFION117)の両面に、ガス拡散電極r1およびガス拡散電極jを、それぞれ触媒層を備えた面がそれぞれ高分子電解質と向き合う様にして重ね合わせ、さらに厚み250μmのシリコンゴム製ガスケットを両面に位置合わせした後、130℃、5分間ホットプレスし、MEAを得た。
【0087】
このMEAの両側にセパレータ板を配置し作製した単セルを4セル積層させて高分子電解質型燃料電池とした。セパレータ板は厚さ4mmのカーボン製で気密性を有するものを用いた。またガス拡散層と接する表面には、幅2mm、深さ1mmのガス流路を切削加工により形成した。電池スタックの上部及び下部にはSUS304製の金属端板を配し、高分子電解質型燃料電池を固定した。
【0088】
ガス拡散電極r1はそのR4部分がセパレータ板のガス流路の入口側にまた、L4部分がガス流路の出口側になるうように配置した。ガス拡散電極r1側のセパレータ板のガス流路に入口側から出口側に向かって空気を、また電極j側のセパレータ板のガス流路に入口側から出口側に向かって水素を、酸素利用率40%、水素利用率70%で、それぞれ供給し、水素加湿バブラー温度85℃、空気加湿バブラー温度65℃、電池温度75℃で運転したところ、高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、また3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この原因は、本実施例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することが出来たことによる。
【0089】
《実施例−2》
実施例−1において分散液p1に用いたポリイミド樹脂を主成分とするN−メチル−2−ピロリドン溶液の替わりに、透湿係数0.1g/m・hr・mmHg%のポリ塩化ビニルのエタノール分散液(この分散液におけるポリ塩化ビニルとエタノールとの重量比は20:80)を用いて分散液p1の替わりに分散液p2を作製したこと以外は、実施例−1で作製したガス拡散層q1と全く同一の作製方法で、本実施例のガス拡散層(以下、ガス拡散層q2という)を作製した。
【0090】
このガス拡散層q2の透水量を実施例−1と同様にJISZ0208の重量法によりR4部分とL4部分に分割して評価したところ、透水量はR4部分では0.8×104g/m2・24hで実施例−1の場合と同様であったが、L4部分では2.3×104g/m2・24hで、実施例−1の場合よりも多くなっていた。これは、透湿係数について、実施例−1と比べて、L4部分において大きくなっていたためである。
【0091】
このガス拡散層q2を用いて、実施例−1のガス拡散電極r1の作製と同じ作製方法で、本実施例のガス拡散電極r2を作製した。このガス拡散電極r2とガス拡散電極jとを用いて、実施例−1の高分子電解質型燃料電池の作製と同じ作製方法で、本実施例の高分子電解質型燃料電池を作製した。
【0092】
この本実施例の高分子電解質型燃料電池の特性を実施例−1と同じ条件で測定した。すなわち、R4部分とL4部分がそれぞれガス流路の入口側と出口側になるように配置し、ガス拡散電極r2側に空気を、さらにガス拡散電極j側に水素を供給して、実施例−1と同じ運転条件で運転した。その結果、本実施例の高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この要因は、本実施例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することができたことによる。
【0093】
《実施例−3》
実施例−1で分散液e1に用いたPTFEを主成分とするフッ素樹脂分散液D−1の替わりに、透湿係数0.01g/m・hr・mmHg%のポリプロピレンをエタノール中に分散した分散液(この分散液におけるポリプロピレンとエタノールの重量比は20:80)を用いて分散液e1の替わりに分散液e3を作製したこと以外は、実施例−1で作製したガス拡散層q1と全く同一の作製方法で、本実施例のガス拡散層(以下、ガス拡散層q3という)を作製した。
【0094】
このガス拡散層q3の透水量を実施例−1と同様にJISZ0208の重量法によりR4部分とL4部分に分割して評価したところ、透水量はR4部分では0.8×104g/m2・24h、L4部分では1.8×104g/m2・24hで、実施例−1の場合と同じであった。これは、用いた材料は異なっていたが、透湿係数についてはR4部分もL4部分も実施例−1の場合と同じであったためである。
【0095】
このガス拡散層q3を用いて、実施例−1のガス拡散電極r1の作製と同じ作製方法で、本実施例のガス拡散電極r3を作製した。このガス拡散電極r3とガス拡散電極jとを用いて、実施例−1の高分子電解質型燃料電池の作製と同じ作製方法で、本実施例の高分子電解質型燃料電池を作製した。
【0096】
この本実施例の高分子電解質型燃料電池の特性を実施例−1と同じ条件で測定した。すなわち、R4部分とL4部分がそれぞれガス流路の入口側と出口側になるように配置し、ガス拡散電極r3側に空気を、さらにガス拡散電極j側に水素を供給して、実施例−1と同じ運転条件で運転した。その結果、本実施例の高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この要因は、本実施例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することができたことによる。
【0097】
《実施例−4》
実施例−1で分散液e1に用いたPTFEを主成分とするフッ素樹脂分散液D−1の替わりに、透湿係数0.01g/m・hr・mmHg%のポリエチレンをエタノール中に分散した分散液(この分散液におけるポリエチレンとエタノールの重量比は20:80)を用いて分散液e1の替わりに分散液e4を作製したこと、および、分散液p1に用いたポリイミド樹脂を主成分とするN−メチル−2−ピロリドン溶液の替わりに、透湿係数0.1g/m・hr・mmHg%の酢酸セルロースのエタノール溶液(この溶液における酢酸セルロースとエタノールの重量比は20:80)を用いて分散液p1の替わりに分散液p3を作製したこと以外は、実施例−1で作製したガス拡散層q1と全く同一の作製方法で、本実施例のガス拡散層(以下、ガス拡散層q4という)を作製した。
【0098】
このガス拡散層q4の透水量を実施例−1と同様にJISZ0208の重量法によりR4部分とL4部分に分割して評価したところ、透水量はR4部分では0.8×104g/m2・24hで前3者の実施例の場合と同じであったが、L4部分では2.3×104g/m2・24hで、実施例−2の場合と同じであった。これは、用いた材料は異なっていたが、透湿係数についてはR4部分は前3者と同じで、L4部分は実施例−2の場合と同じであったためである。
【0099】
このガス拡散層q4を用いて、実施例−1のガス拡散電極r1の作製と同じ作製方法で、本実施例のガス拡散電極r4を作製した。このガス拡散電極r4とガス拡散電極jとを用いて、実施例−1の高分子電解質型燃料電池の作製と同じ作製方法で、本実施例の高分子電解質型燃料電池を作製した。
【0100】
この本実施例の高分子電解質型燃料電池の特性を実施例−1と同じ条件で測定した。すなわち、R4部分とL4部分がそれぞれガス流路の入口側と出口側になるように配置し、ガス拡散電極r4側に空気を、さらにガス拡散電極j側に水素を供給して、実施例−1と同じ運転条件で運転した。その結果、本実施例の高分子電解質型燃料電池は2.8ボルトの電圧を発生し、3000時間経過後も初期電圧を維持し、安定な運転動作を示すものであった。この要因は、本実施例の高分子電解質型燃料電池では、高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、生成水による過剰な水分を安全かつ速やかに排出することができたことによる。
【0101】
なお、上記実施例−1〜−4においては、透湿係数の異なる2種の材料の混合割合を10分割して用いたが、混合割合はこれに限定される物ではなく、透湿係数の小さいものと大きいもの、実施例中で例示したもので言えば、0.8×104g/m2・24h〜2.3×104g/m2・24hものの中から適宜選択して混合し、その結果、R4部分からL4部分に向かって透湿係数が大きくなる構成、より好ましくは徐々に大きくなる構成であれば、上記の実施例群で得られるのと同様な効果が得られることも確認した。また、上記実施例群では、透湿係数の異なる2種の高分子材料の組合せを例示したが、3種以上の組合せでも、R4部分からL4部分に向かって透湿係数が大きくなる構成であれば、同様な好結果が得られることも別途確認した。
【0102】
《比較例》
MEAを挟むべき2枚のガス拡散電極の両方にガス拡散電極jを用いた以外は上記実施例群記載の同様の操作で高分子電解質型燃料電池を作製した。こうして完成した高分子電解質型燃料電池を上記実施例群記載と同一の条件で運転したところ、初期電圧として、上記実施例群の場合と同じ2.8ボルトを示したが、電圧は徐々に低下し、3000時間経過後の電圧は1.8ボルトまで低下し、運転動作は非常に不安定なものであった。この原因は、本比較例の高分子電解質型燃料電池では、MEA内部の水分管理が不十分で、入口側での高分子電解質膜の乾燥、または出口側でのフラッディングによるガス拡散阻害がおこっていたためである。
【0103】
【発明の効果】
以上のように、ガス拡散層において多孔性支持体と導電性炭素粒子と結晶化度の異なる少なくとも2種の高分子材料で構成される高分子含有導電層で構成し、前記高分子材料のうち、結晶化度の低い方の高分子材料の全高分子材料量に占める割合をガス拡散電極の一端から他端に向かって大きくすることでガス拡散層の面内での透水機能を調整でき、MEA内において高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、また生成水による過剰な水分を速やかに排水することができる。また、前記したガス拡散層を利用してガス拡散電極を構成し、高分子電解質型燃料電池を製造することで長期にわたり安定な運転動作を示す高分子電解質型燃料電池が実現できる。
【0104】
また、ガス拡散層において多孔性支持体と導電性炭素粒子と透湿係数の異なる少なくとも2種の高分子材料で構成される高分子含有導電層で構成し、前記高分子材料のうち、透湿係数の大きい方の高分子材料の全高分子材料量に占める割合をガス拡散電極の一端から他端に向かって大きくすることでガス拡散層の面内での透水機能を調整でき、MEA内において高分子電解質を湿潤状態に保ちつつ、また生成水による過剰な水分を速やかに排水することができる。また、前記ガス拡散層を利用してガス拡散電極を構成し、高分子電解質型燃料電池を製造することで長期にわたり安定な運転動作を示す高分子電解質型燃料電池が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の高分子電解質型燃料電池の構成の概略を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の参考となるガス拡散層及びガス拡散電極の概略を模式的に示す一部断面斜視図である。
【図3】従来のガス拡散層及びガス拡散電極の概略を模式的に示す一部断面斜視図である。
【図4】本発明の参考となる高分子電解質型燃料電池の概略を模式的に示す断面図であり、第および第の実施形態の高分子電解質型燃料電池の概略にも共通する図である。
【図5】第の実施形態におけるガス拡散層及びガス拡散電極の概略を模式的に示す一部断面斜視図である。
【図6】第の実施形態におけるガス拡散層及びガス拡散電極の概略を模式的に示す一部断面斜視図である。
【図7】多孔性支持体の表面にガス拡散層の構成分散液をスクリーン印刷にて塗布するための印刷装置の構成の概略を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
11 高分子電解質膜
12 触媒層
13 ガス拡散層
14 ガス拡散電極
15 電解質膜−電極接合体
16 ガス流路
17 セパレータ板
18 ガスケット
21a 多孔性支持体
22a 高分子含有導電層
23a 触媒層
24a ガス拡散電極
25 高分子電解質膜
26 ガス流路
27 セパレータ板
28 酸化剤ガス用流路
29 燃料ガス用流路
210a、210b 導電性炭素粒子
211a 導電性炭素粒子
212a 高分子材料
213a、213b ガス拡散層
31 多孔性支持体
32 高分子含有導電層
33 触媒層
34 ガス拡散電極
310 導電性炭素粒子
311 高分子材料
312 高分子材料
313 ガス拡散層
41 多孔性支持体
42 高分子含有導電層
43 触媒層
44 ガス拡散電極
410 導電性炭素粒子
411 高分子材料
412 高分子材料
413 ガス拡散層
51 カーボンペーパー
52 開口部
53 マスク
54 支持台

Claims (4)

  1. 多孔性支持体と、前記多孔性支持体上に配置された導電性炭素粒子および高分子材料を含有する高分子含有導電層とを有するガス拡散層であって、前記高分子材料は、結晶化度の異なる少なくとも2種の高分子材料であり、かつ前記高分子材料のうち結晶化度の低い方の高分子材料の量が、ガス拡散層の一端(R3)から他端(L3)に向かって多くなっていることを特徴とする高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層。
  2. 多孔性支持体と、前記多孔性支持体上に導電性炭素粒子および高分子材料を含有する高分子含有導電層とを有するガス拡散層であって、前記高分子材料は、透湿係数の異なる少なくとも2種の高分子材料であり、かつ前記高分子材料のうち透湿係数が大きい方の高分子材料の量が、ガス拡散層の一端(R4)から他端(L4)に向かって多くなっていることを特徴とする高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層。
  3. 高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の両面に配置された導電性炭素粒子および金属触媒を含有する触媒層と、前記触媒層の少なくともいずれか一方に対して配置された請求項1または2記載のガス拡散層とを有することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用電解質膜−電極接合体。
  4. 請求項に記載の電解質膜−電極接合体と、前記電解質膜−電極接合体の両側に配置されたガス流路を持つ導電性セパレータ板とを有する単電池の積層体を備える高分子電解質型燃料電池であって、請求項1または2記載のガス拡散層に対して配置された前記導電性セパレータ板のガス流路に酸化剤ガスが通流され、かつ前記ガス拡散層の前記一端(R3、R4)が前記酸化剤ガスの入口側に位置し、前記他端(L3、L4)が前記酸化剤ガスの前記出口側に位置していることを特徴とする高分子電解質型燃料電池
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