JP3562669B2 - 耐熱性接着剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温にさらされる部品に使用できる耐熱性接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高温で使用される金属とセラミックスとの接着、はんだ付けによる熱にさらされる電子部品の封止、回路基板への接着などに使用できる耐熱性接着剤としては、シリコンやシロキサンの無機物を含む接着剤が提案されている。たとえば、特開平5−25452号公報には、ポリイミドシロキサン、ビスマレイン酸イミド樹脂、エポキ化合物およびエポキシ硬化剤を配合することで耐熱フィルムと各種金属箔とを貼り合わすことができる耐熱性接着剤の開示がある。しかし、この耐熱性接着剤ではシロキサンを主成分としているため、得られる接着剤は250℃以上の耐熱性をもつものとはならない。
【0003】
特開平5−148469号公報には、1分子中にエポキシ樹脂と反応し得る官能基及び反応性珪素基を有するシリコン化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、コロイド炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムおよびベントナイトを配合した接着剤組成物の開示がある。この組成物では、無機充填剤と樹脂との結合が弱いため、無機充填剤の添加による耐熱性向上効果は著しくない。
【0004】
特開平5−140524号公報には、シロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、他のエポキシ化合物およびエポキシ硬化剤とからなり、耐熱性、柔軟性に優れた接着剤の開示がある。この接着剤ではポリシロキサンは−Si−O−Si−を基本骨格とする鎖状高分子であるためその耐熱性は200〜250℃でありこれ以上の耐熱性は期待できない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、300℃程度の高温下でも充分な接着力を持つ接着剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は硬化後の接着剤層を形成する無機部と有機部とがしっかり結合することにより耐熱性が高まることに着目し、有機側鎖と層状の無機粒子とが共有結合で結ばれた構造を有する有機珪素系層状高分子を接着剤の成分として用いることに思い至り、本発明の耐熱性接着剤を完成したものである。
【0007】
即ち、本発明の耐熱性接着剤は、珪素、または珪素の一部をAl,Fe,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種の原子により置換した原子を中心とする4面体が複数個平面状に配列した4面体シートと、Mg,Al,Ni,Co,Cu,Mn,Fe,Li,V,Zrから選ばれる少なくとも1種である第2金属を中心原子とする8面体とが複数個平面状に配列した8面体シートと、の積層構造を有し、該4面体シートの中心原子である珪素の一部ないしは全部の原子がそれぞれ共有結合により末端に官能基をもつ有機基と結合してなる有機珪素系層状高分子を有する耐熱性接着剤であって、前記有機基に第1官能基をもつ第1有機珪素系層状高分子と、該第1官能基と反応して硬化させる第2官能基をもつ有機化合物および/または前記有機基に該第2官能基をもつ第2有機珪素系層状高分子と、からなることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の耐熱性接着剤を構成する成分は、第1官能基をもつ第1有機珪素系層状珪素系高分子と、第1官能基と反応して硬化させる第2官能基をもつ有機化合物とからなる。
第1有機珪素系層状高分子は、主として珪素を中心とする4面体が複数個平面状に配列した4面体シートと第2金属を中心原子とする8面体が複数個平面状に配列した8面体シートの積層構造を有する層状の無機層部と、該4面体の珪素に共有結合で強固に結合した有機基をもつ。この第1有機珪素系層状高分子は有機基の有機鎖と層状の無機層とが一体となって耐熱性を付与できる。
【0009】
また有機基の他端に存在する第1官能基が、これと反応して硬化する第2官能基をもつ有機化合物によって接着力を発現することができる。この際、有機鎖と無機層との比率、第1官能基と第2官能基の量により接着剤の耐熱性、接着力、被接着物の物理的性質(強度、柔軟性)などを調整することができる。また第1官能基と第2官能基の種類の組合せを適宜選択することで、通常の接着剤と同様に扱えその接着層の特性を調整できる。
【0010】
第1有機珪素系層状高分子の層状構造を形成する無機層は、8面体シートの両側に4面体シートが形成されたいわゆる2:1型構造のものと、8面体シートの片側に4面体シートが形成されたいわゆる1:1型構造のものとが可能である。接着層に有機鎖を多く含ませたい場合や、有機鎖相互の結合強度を向上させたい場合には、無機層を2:1型構造のものとするのが好ましい。すなわち、4面体シートを構成する珪素原子と8面体シートを構成する第2金属との比を0.5〜1:1の比率では1:1型の層状構造が形成され、珪素原子:第2金属の比率が2:1〜4:3の比率では2:1型の層状構造が形成される。
【0011】
2:1型構造の有機珪素系層状高分子の概念図を図1に示す。この例では無機層の部分構造は、金属原子のマグネシウムを中心とする8面体シート1の両側に珪素原子を中心とする4面体シート2が形成されている。そして、上記珪素原子には4面体シートの一部を構造するものとして、末端に第1官能基(R)を有する有機基(プロピレン鎖を例示する)3が共有結合により珪素に結合している。この第1官能基Rは、これと反応して硬化する第2官能基を有する有機化合物と配合されて接着剤の硬化膜を形成することができる。なお、有機基の一部に末端に第1官能基をもたない、例えば、アルキル基の有機基のものを導入して接着剤の硬化の度合いを調整することもできる。なお、有機基の炭素数は限定されるものではなく、珪素原子に第1官能基(R)が直接に結合していても良い。
【0012】
4面体シートの中心原子は珪素である場合の他、4面体シートの形成が可能な第1金属原子でその一部を置換することも可能である。この場合第1金属は有機基と共有結合を形成できる金属であることが望ましい。第1金属としては、Al、Fe、Ge、Pなどの使用が可能である。4面体シートの中心原子がAl、Fe、Ge、Pとなるのは、珪素との中心原子置換による。
【0013】
8面体シートを形成する第2金属の中心原子はMg、Al、Ni、Co、Cu、Mn、Fe、Li、V、Zrの内の1種類または2種類以上の金属原子から選ばれる。
有機基は、珪素に直接炭素原子が結合したもので、珪素−炭素原子間に酸素原子を介在させない共有結合である。有機基としては、層状珪素系高分子に導入可能でこの高分子に有機材料の特徴を付与しうるものはいずれも用いることができる。そしてこれらの有機基は第1官能基を含む、場合によっては一部に官能基を含まないもが存在しても良い。第1官能基の量を調整して硬化物の性質を調整することができる。
【0014】
本発明の有機珪素系層状高分子は、少なくとも一つのアルコキシ基と、少なくとも一つの第1官能基をもつ有機基を有するアルコキシシランと、第2金属の少なくとも1種の無機塩、有機塩あるいはアルコキシドとの、溶解液または分散液にアルカリを加えてpHを弱アルカリ性に調整し、そのまま、あるいはエージングをすることで製造できる。その際、第1官能基を、あるいはさらに有機基を持たないアルコキシシランを混合することにより、層状高分子表面の官能基や有機側鎖の割合を制御することも可能である。
【0015】
また上記の溶解液または分散液は、水あるいはアルコール、アセトン、有機酸、無機酸の1種類の極性溶媒あるいはその2種類以上の極性溶媒の混合溶媒が利用できる。
上記の溶解または分散液に添加するアルカリは、種類を問わない。アルカリの添加により調整される弱アルカリ性のpHとは、原料系の選択等の要因により一概には規定できないが、たとえば、pH8〜10程度をいう。要するに有機珪素系層状高分子としての結晶化、なわちゲル化が希望する程度の速度で凝るpHであり、かつ有機基が損なわれような強いアルカリ性でなければよい。上記のプロセスは室温程度の温度でも十分におこるが、有機基を損なわない程度の温度に加熱してゲル化させてもよい。
【0016】
ゲル化プロセスは、原料系の選択や、反応条件次第で、直ちに完了する場合もあり、ある程度(たとえば1〜2日間程度)のエージングを要する場合もある。得られた結晶状の有機珪素系層状高分子は、一旦溶媒を排除して乾燥粉末として回収するのが好ましい。
上記の製造工程では、溶解液または分散液をpHを調整しつつ、弱アルカリ性に調整すると、まず第2金属を中心原子とする8面体シートの結晶構造が先行して成長し、これに追従してオルガノアルコキシシランの珪素がアルコキシ基の加水分解の後、脱水縮合により8面体シートに結合し、この珪素を中心に4面体シートの結晶構造も成長していく。したがって、珪素4面体の一部に有機基が共有結合で直接結合した状態でも、珪素4面体シートは8面体シートに追従して形成され、有機珪素系層状高分子が形成される。場合によっては、有機基を有しなシリコンアルコキシドをオルガノアルコキシシランに対して所定の比率で併用して、有機珪素系層状高分子における有機基の割合を調整することができる。
【0017】
また、オルガノアルコキシシランに官能基を持たないものを併用して第1官能基の量を調整して、第2官能基との比率を変えることで接着膜の特性を調整することもできる。
第1官能基を有するオルガノアルコキシシランの原料としては、以下の様な有機珪素化合物を用いることで上記のような有機鎖を有機珪素系層状高分子に導入できる。
【0018】
例えば、エポキシ系:ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3,4−(エポキシブチル)トリメトキシシラン、3,4−(エポキシブチル)トリエトキシシラン、イソシアナート系:3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、チオール系:メルカプトメチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミン系:3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(3−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−〔2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル〕トリメトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオ)ジエトキシメチルシラン、3−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アクリルおよび、メタクリル系:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−アクロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメチルメトキシシラン、N−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニル系:3−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリエトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリイソプロポキシビニルシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アリルチオプロピルトリメトキシシラン、ハロゲン系:ブロモフェニルトリエトキシシラン、4−ブロモフェニルトリメトキシシラン、3−ブロモフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、第1官能基を持たないアルキル系(この系は単独では使用せず他の官能基をもつものと併用される):メチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−イソプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0019】
接着剤の構成
本発明の接着剤は、第1官能基を持つ有機珪素系層状高分子と、第1官能基と反応して硬化させることができる第2官能基をもつ有機化合物および/または第2官能基をもつ有機珪素系層状高分子とから構成されるが、第1官能基と第2官能基の具体的な組合せの例を表1に示す。
【0020】
【表1】
Figure 0003562669
【0021】
さらに、第1官能基を持つ有機珪素系層状高分子に第1官能基を持つ有機化合物を併用して第2官能基をもつ有機化合物および/または第2官能基をもつ有機珪素系層状高分子との配合として接着特性を調整してもよい。例えば、第1官能基をエポキシ基とした場合には、エポキシ基導入有機珪素系層状高分子が粉末であるため、液状のエポキシ樹脂もしくは希釈溶媒でペースト化することが望ましい。この場合、接着剤の耐熱性の点から有機珪素系層状高分子の割合は高いほど好ましく、その割合は、用途により有機珪素系層状高分子が10〜90%の範囲が望ましい。
【0022】
この接着剤は、熱などの刺激で反応硬化する場合、1液性の接着剤として利用可能であるが、反応性が高く混合することで反応が開始する場合はいわゆる2液性接着剤として使用することもできる。
第2官能基を有する有機化合物としては、ポリアミン(脂肪族、芳香族)、ポリアミド、第3アミン、その他酸無水物系の酸無水物、液状メルカプタン、イミダゾール系、ポリサルファイド系、が利用できる。第2官能基をもつ有機珪素系層状高分子としては、アミン系のアミノ基導入有機珪素系層状高分子、メルカプト系のメルカプト基導入有機珪素系層状高分子、が利用できる。また2種以上の第2官能基を有する有機化合物や有機珪素系層状高分子の併用も可能である(たとえば酸無水物とイミダゾール)。さらに市販の硬化促進剤を添加してもよい。
【0023】
また必要に応じて無機充填剤を添加することもできる。たとえば、粘土鉱物、タルク、炭酸カルシウム、シリカゾル、シリカゲル、アルミナ、金属粉などが利用できる。
また第1官能基を有する有機珪素系層状高分子を含まず第1官能基を有する有機化合物と、第2官能基を有する有機珪素系層状高分子との組合せであっても良い。この場合は第2官能基を有する有機珪素系層状高分子が10〜90%の割合の配合とするのが好ましい。
【0024】
接着剤の物性改良のため、ポリウレタン、ナイロン、フェノール、ポリイソシアナート等を加えてポリマーブレンド化してもよい。
第2官能基をもつ有機化合物の具体例を以下に記載する。
第1官能基がアミノ基であり第2官能基がエポキシ基の例
ビスフェノール型エポキシ樹脂:エピコート801、807、808、815、827、828、834(油化シェルエポキシ製)
グリシジルエステル:フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルp−オキシ安息香酸、
グリシジルアミン:N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノフェニルメタン、 レゾルシノールジグリシジルエーテル
複素環式エポキシ樹脂:ジグリシジルヒダントイン、グリシジルグリシドキシドオキシアルキルヒダントイン、 トリグリシジルイソシアヌレート
第1官能基がエポキシ基である場合の第2官能基の例
脂肪族ポリアミン:ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン
脂環式ポリアミン:メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、N−アミノエチルピペラジン
芳香族アミン:メタフェニレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン
変性アミン:アミンアダクト、ポリアミン−エチレノキシドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキシアダクト、ケトイン
第三アミン:トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30),ベンジルジメチルアミン
酸無水物:無水フタル酸、無水トリメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナルジック酸、アルケニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、クロレンド酸無水物、テトラブロム酸無水物
ポリアミド:トーマイド245、2400、2500(富士化成製)、バーサミド125、140(ヘンケル白水製)
硬化促進剤:ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール、第3アミンなどが挙げられる。
【0025】
上記の第1官能基と第2官能基とは2液タイプの接着剤の硬化反応と同様で第1官能基がエポキシ基であると、エポキシ基と付加重合反応するアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基等をもつ有機化合物が使用される。またビニル基、メタクリル基の場合はラジカル重合反応により接着剤を硬化させる。さらにハロゲンの場合は、ハロゲンと置換反応する官能基を利用して硬化反応を進行させる。
【0026】
その他物性向上のため必要に応じて希釈溶媒、添加剤(硬化触媒、開始剤、安定剤)、無機充填剤などを加えてもよい。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により具体的に説明する。
アミノ(第1官能基)−マグネシウム(第2金属):有機珪素系層状高分子(以下アミノ−マグネシウムケイ素系層状高分子のように第1官能基と第2金属名を見出しとしたケイ素系層状高分子と称する)の合成
脱イオン水4000mlに塩化マグネシウム6水和物20.3gを加えて攪拌した。これにメタノール1000mlで希釈した3−アミノプロピルトリエトキシシラン(以下APTSと称する)44.1gを加えた。30分攪拌した後、1N水酸化ナトリウム水溶液200mlを滴下してアミノ−マグネシウムケイ素系層状高分子を合成した。この溶液を室温で7日間放置してエージングし、その後濾過、水洗を行い真空乾燥によって回収した。
【0028】
アミノ−ニッケルケイ素系層状高分子の合成
脱イオン水400mlに塩化ニッケル6水和物23.8gを加えて攪拌した。これにメタノール1000mlで希釈したAPTS44.1gを加えた。30分攪拌の後、1N水酸化ナトリウム水溶液200mlを滴下してアミノ−ニッケルケイ素系層状高分子の合成した。この溶液を室温で7日間放置してエージングし、その後濾過、水洗を行い真空乾燥によって回収した。
【0029】
エポキシ−マグネシウムケイ素系層状高分子の合成
脱イオン水4000mlに塩化マグネシウム6水和物20.3gを加えて攪拌した。これにメタノール1000mlで希釈した3−グリシドキプロピルトリエトキシシラン(GPTS)47.0gを加えた。30分攪拌した後、1N水酸化ナトリウム水溶液200mlを滴下してエポキシ−マグネシウムケイ素系層状高分子の合成した。これを室温で5日間放置してエージングし、その後濾過、水洗を行い真空乾燥によって回収した。
【0030】
X線回折による有機珪素系層状高分子の評価
上記で合成したアミノ−マグネシウムケイ素系層状高分子、アミノ−ニッケルケイ素系層状高分子、エポキシ−マグネシウムケイ素系層状高分子を粉末X線回折法により評価した。結果を図2、図3に示す。X線回折パターンには、それぞれ001、200、060(2θ/deg.CuKα)に明確なピークをもち、層状の無機層がスメクタイト構造の結晶性を有することを示す。このことから得られた有機珪素系層状高分子粉末は、層状珪酸塩構造が形成されていることを確認した。
【0031】
接着剤の調製
上記で合成したエポキシ−マグネシウムケイ素系層状高分子を主成分とする2液性接着剤を調製した。配合比は表2のとおりである。
【0032】
【表2】
Figure 0003562669
接着剤の硬化
調製した接着剤A〜Cの主剤と硬化剤を混合し、この混合物により2枚のスライドガラスを貼り合わせた試験片を作成し、通常のエポキシ型接着剤と同様に硬化接着することを確認した。第1官能基をもつ第1有機珪素系層状高分子(および第1官能基をもつ有機化合物)と第2官能基を持つ有機化合物(および第2官能基をもつ有機珪素系層状高分子)との混合比、硬化条件を表3に示す。
【0033】
【表3】
Figure 0003562669
耐熱性の評価
上記の接着試料を電気炉内で加熱して耐熱試験を行った。大気雰囲気で250℃で1時間加熱し、さらに300℃に昇温して1時間加熱した後、炉から取り出し、試験片のスライドグラス部を剥離方向に外力をゆっくり加えて接着性を確認した。結果を表4に示す。
【0034】
【表4】
Figure 0003562669
表4に示すように本実施例の試料1〜4はいずれも強固な接着力を示し、耐熱性を有すことが明らかである。一方比較例の市販のシリコン系の耐熱性接着剤では、300℃ではいづれも充分な接着性を示さなかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の有機珪素系層状高分子の基本骨格は、ポリシロキサンのような鎖状高分子ではなく、無機充填剤として使用される粘土鉱物と同様の層状珪酸塩構造である。すなわち、珪素を主とする4面体シートと第2金属を中心原子とする8面体シートとの積層体からなる結晶性層状高分子として高度に発達した構造を形成している。また粘土鉱物と違って有機珪素系層状高分子の層状無機層に共有結合した有機鎖を持つためこれを介して有機珪素系層状高分子の無機層と接着剤中の有機化合物とが強固に結合される。このため耐熱性が発揮できる。
【0036】
また、前記4面体シートの中心原子の珪素には、その一部または全部の原子がそれぞれ有機基と結合しているため、有機鎖が充分導入される。しかも中心原子とは共有結合を形成しているので、無機層に可撓性と成形性を付与できる。
さらに、官能基が有機基の末端に存在するので無機層に阻害されることなく容易に硬化反応が進行して硬化膜を形成して接着性を発揮することができる。
【0037】
また、この有機珪素系層状高分子は、層状の無機層を持つため、ガスバリア性が期待できる。このガスバリア性は接着剤内に酸素が侵入して有機鎖を酸化、分解させるのを防ぎ耐熱性向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機珪素系層状高分子の概念図である。
【図2】アミノ−マグネシウムケイ素系層状高分子、アミノ−ニッケルケイ素系層状高分子のX線回折パターンである。
【図3】エポキシ−マグネシウムケイ素系層状高分子のX線回折パターンである。

Claims (9)

  1. 珪素、または珪素の一部をAl,Fe,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種の原子により置換した原子を中心とする4面体が複数個平面状に配列した4面体シートと、Mg,Al,Ni,Co,Cu,Mn,Fe,Li,V,Zrから選ばれる少なくとも1種である第2金属を中心原子とする8面体とが複数個平面状に配列した8面体シートと、の積層構造を有し、該4面体シートの中心原子である珪素の一部ないしは全部の原子がそれぞれ共有結合により末端に官能基をもつ有機基と結合してなる有機珪素系層状高分子を有する耐熱性接着剤であって、
    前記有機基に第1官能基をもつ第1有機珪素系層状高分子と、
    該第1官能基と反応して硬化させる第2官能基をもつ有機化合物および/または前記有機基に該第2官能基をもつ第2有機珪素系層状高分子と、
    からなる耐熱性接着剤。
  2. さらに、前記第1官能基をもつ有機化合物を有する請求項1記載の耐熱性接着剤。
  3. 前記第1官能基および前記第2官能基の一方はエポキシ基であり、他方はアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、酸無水物、チオール基から選ばれる1種である請求項1または2に記載の耐熱性接着剤。
  4. 前記第1官能基および前記第2官能基の一方はイソシアナート基であり、他方はヒドキシル基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、から選ばれる1種である請求項1または2に記載の耐熱性接着剤。
  5. 前記第1官能基および前記第2官能基の一方はチオール基であり、他方はエポキシ基、酸無水物、イソシアナート基、カルボキシル基、ハロゲンから選ばれる1種である請求項1または2に記載の耐熱性接着剤。
  6. 前記第1官能基および前記第2官能基の一方はアミノ基であり、他方はハロゲン、酸無水物、カルボキシル基、アクリル基、メタクリル基から選ばれる1種である請求項1または2に記載の耐熱性接着剤。
  7. 前記第1官能基および前記第2官能基の一方はアクリル基またはメタクリル基であり、他方はアクリル基、メタクリル基、ビニル基、アミノ基から選ばれる1種のである請求項1または2に記載の耐熱性接着剤。
  8. 前記第1官能基および前記第2官能基の一方はビニル基であり、他方はアクリル基、メタクリル基、ビニル基から選ばれる1種である請求項1または2に記載の耐熱性接着剤。
  9. 前記第1官能基および前記第2官能基の一方はハロゲンであり、他方はアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基から選ばれる1種である請求項1または2に記載の耐熱性接着剤。
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