JP3562461B2 - 埋設拡管用油井管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油井戸またはガス井戸に挿入された状態で拡管加工を行われ、このままで使用される埋設拡管用油井管に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は、油井戸またはガス井戸(以下、単に「井戸」という)の従来の施工を模式的に示す垂直断面図である。同図に示すように、従来は、まず第1の管1を油井戸またはガス井戸の土中に埋設し、その内側に第2の管2を埋設し、以下順次、第3の管3および第4の管4を埋設し、最後に、油井またはガス井に到達する第5の管5を埋設することによって、井戸6を施工していた。このため、より深い井戸を構築するためには、その深さに応じて使用する鋼管の量が増えるとともに堀削面積も拡大するため、相当な施工コストを要していた。
【0003】
これまでにも、井戸において使用される鋼管は、軽量化、すなわち材料自体の高強度化によって薄肉化を図ることによる材料使用量の低減により、製造コストの削減が図られてきたものの、材料使用量の低減による製造コストの削減は限界に達した感があった。そこで、よりいっそう製造コストを削減するために、すでに埋設された鋼管の内部に他の鋼管を挿入した後にこの鋼管に拡管加工を行うことによって鋼管使用量を削減するという新しい施工方法が開発され、実用化に向けて検討されている。
【0004】
図4(a) 〜図4(c) は、この新しい施工方法による井戸の施工を模式的に示す説明図である。同図に示すように、この施工方法は、先に土中に埋設された鋼管7の外径よりも小さな外径の鋼管8を井戸内に挿入し(図4(a) 参照)、この鋼管8にマンドレル9等を用いて拡管加工を施し(図4(b) 参照)、これにより、鋼管8を鋼管7に嵌合させた状態で使用し(図4(c) 参照)、以下井戸の深さに応じてかかる作業を適当な回数繰り返していくものである。この施工方法によれば、同一外径の鋼管を使用する深さを、従来よりも大幅に増加することが可能となる。
【0005】
図5は、この施工方法により施工された井戸9の一例を示す説明図である。つまり、図5に示すように、この新しい施工方法によれば、従来の施工方法に比較して、最も外側の鋼管10a の径を小さくすることができ、井戸当たりの鋼管10a 〜10c の総使用量を減らすことができるとともに堀削面積を抑制できる。このため、井戸の施工に要するコストを大幅に削減することができる。
【0006】
ところで、鋼管10a 、10b は、このように井戸9内で拡管してそのままの状態で使用されるため、拡管加工後に熱処理を行うことができず、また、疵などの発生も許されないとともに、拡管加工後の品質を殆ど確認できない。拡管加工後の品質確認することができたとしても、既に拡管加工された鋼管を地中から引き上げることは現実には不可能である。このため、この新しい施工方法に供される鋼管10a 、10b(本明細書では「埋設拡管用油井管」という) には、従来の施工方法では要求されなかった優れた冷間における拡管加工性が要求されている。
【0007】
この新しい施工方法に供される埋設拡管用油井管を適用対象としたものではないが、一般的に鋼管の拡管加工性を高める技術として、特公平6−17542 号公報には、電縫溶接部のメタルフローの状態を特定するとともに鋼中のS含有量を強度および鋼管の寸法によって制御することにより、高強度電縫鋼管全体を熱処理せずに拡管加工性を高めて、棒鋼で製造されてきた自動車用部品の代替が可能な鋼管を製造する発明が提案されている。
【0008】
なお、特許第2957717 号および同第2556643 号には、鋼管の降伏比を下げる技術が提案されている。すなわち、特許第2957717 号には、製管圧延の各段階における加工温度および加工量を特定するものであり、特許第2556643 号は、組成を特定するとともに製管圧延の各段階における加工温度および加工量を特許第2957717 号と同様に特定するものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらのいずれの発明によっても、前述した井戸の新しい施工方法に供され得る優れた冷間における拡管加工性を有する埋設拡管用油井管を提供することは不可能である。
【0010】
すなわち、前述した井戸の新しい施工方法に供される埋設拡管用油井管は、井戸内で拡管加工されそのまま使用され、拡管加工後にその状態を検査することは事実上不可能であるとともにその施工コストも高い。このため、この埋設拡管用油井管には極めて高い信頼性が要求される。一方、一般的に、鋼管の信頼性を高めるためには、全体を熱処理することにより組織の均一化を図ることが必要である。しかし、特公平6−17542 号公報により提案された発明では、必ずしも組織の均一化を図ることができないため、この発明に基づいても前述した井戸の新しい施工方法に供され得る優れた冷間における拡管加工性を有する埋設拡管用油井管を提供することはできない。また、この発明によれば、例えば外径が20mm程度の小径鋼管の拡管加工時の割れ感受性を抑制することは確かに可能であるが、前述した井戸の新しい施工方法に供される埋設拡管用油井管に対しては、このような小径鋼管よりも相当苛酷な拡管加工が行われることになるため、発生する局部応力集中を防ぐことができず、その結果として拡管加工時に割れてしまうおそれがある。
【0011】
また、特許第2957717 号により提案された発明は建築物や橋梁等に供される鋼管を、特許第2556643 号により提案された発明は井戸から掘削された材料を輸送するために地表に設置されるラインパイプに供される鋼管を、それぞれ適用対象とするために、降伏比低下だけを目的としたものであり、拡管加工性は何ら考慮していない。
【0012】
特に、特許第2957717 号では、製管圧延の各段階の加工温度および加工量を規定するため、圧延機器毎に冷却装置や加熱装置を設けて圧延機毎に圧延時間の間隔を確保する必要があり、生産性低下は免れない。また、加工量についても最終寸法に対して適用できる寸法が制限される場合がある。さらに、2相域での加熱は、温度および時間に対する感受性が高いため、常に一定して同じ性質の鋼管を得ることは難しい。このため、製造時の条件管理が非常に複雑となり大量生産に適さない。
【0013】
一方、特許番号第2556643 号により提案された発明は、前述したように、鋼管の熱処理を考慮しておらず組織の均一化を図ることができないため、極めて高い信頼性が要求される、新しい施工方法に供される埋設拡管用油井管に対しては適用することはできない。また、この発明が適用対象とする鋼管の引張強度は、294 〜441N/mm2 と比較的低強度である。このため、450 〜900N/mm 2 程度の高強度が要求される、新しい施工方法に供される埋設拡管用油井管に対しては適用できない。特許番号第2556643 号のみでは対応が困難である。
【0014】
本発明は、井戸に挿入された状態で拡管加工を行われ、このままで使用される埋設拡管用油井管を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、優れた拡管加工性を有する埋設拡管用油井管について鋭意検討を重ねた結果、以下に列記する重要な知見(1) 〜(3) を得た。
【0016】
(1) 拡管加工前の寸法精度、特に肉厚の寸法精度が拡管加工性に大きな影響を及ぼす。しかし、降伏強度と破断強度との比である降伏比が低いと加工硬化が起こり易くなり、これにより、肉厚の寸法によって局部的に集中した応力が分散され、均一な拡管加工を行うことができる。
【0017】
(2) 加工後の割れ等を防いで厳しい拡管加工を可能とするには、靱性が優れることも重要である。
(3) 降伏比を低く保つには、C含有量を制御することが重要である。
【0018】
さらに、これらの重要な知見(1) 〜(3) とともに、従来よりよく知られているように、
(4) 井戸に埋設されて使用される鋼管として要求される基本的特性 (例えば、引張強度、硬度さらには衝撃性能等) を満たすためには、拡管加工後そのまま使用される埋設拡管用油井管についても通常の鋼管と同様にC以外の元素の含有量の制御が有効である。
【0019】
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、鋼管に含有する成分を最適に制御することにより降伏比を低く保ち、これにより優れた拡管加工性を有する埋設拡管用油井管を提供するという技術思想に基づくものである。
【0020】
本発明は、焼入れ焼戻し処理を施されてなるとともに降伏比が0.85以下であることを特徴とする埋設拡管用油井管である。
【0021】
この本発明にかかる埋設拡管用油井管の外径は73.03 〜339.73mmであり、肉厚は5.0 〜18.0mmであり、さらに引張強度は450 〜900N/mm2 であることが、それぞれ例示される。
【0022】
また、この本発明にかかる埋設拡管用油井管では、C含有量が下記(1) 式を満足することが望ましい。
C≧8.3 ×10−10 (YS)3 −0.02 ・・・・・・・(1)
ただし、(1) 式においてCはC含有量 (質量%) を示し、YSは降伏応力 (N/mm2 ) を示す。
【0023】
また、この本発明にかかる埋設拡管用油井管では、Si:0.1 〜0.50% (本明細書では特にことわりがない限り「%」は質量%を意味する) 、Mn:0.3 〜1.5 %、P:0.03%以下およびS:0.010 %以下、sol.Al:0.001 〜0.05%およびN:0.010 %以下を含有することが、例示される。
【0024】
さらに、この本発明にかかる埋設拡管用油井管では、Cr:1.50%以下、Mo:0.80%以下、Cu:0.35%以下、Ni:0.50%以下、Ti:0.03%以下、Nb:0.03%以下、V:0.2 %以下およびCa:0.005 %以下を含有することが、例示される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる拡管加工性に優れた埋設拡管用油井管の実施の形態について、その特徴毎に詳細に分説する。
【0026】
(1) 本実施の形態の埋設拡管用油井管の降伏比は、0.85以下である。
図1に示す拡管試験機11を用いて、コーン12の上に鋼管13を設置し、コーン12と接触していない管端面13a から適当な圧力Fを負荷することにより鋼管13を拡管する拡管試験を行い、鋼管13の拡管前外径Diと拡管終了時外径Dfとの比Df/Di として定義される拡管率のうちで、割れ発生時の拡管率を限界拡管率として測定した。なお、試験機の能力限界時 (加圧力限界等) に達しても割れが発生しなかった場合にはその時点で拡管試験を終了した。
【0027】
その結果、鋼管の降伏比が0.85以下であれば拡管加工が周方向に均一に施され、限界拡管率が向上することがわかった。この理由は、以下の機構がその一つと考えられる。すなわち、拡管加工を行われる前の鋼管の降伏比が0.85以下であれば加工硬化代が高くなる。一方、肉厚が薄いほど拡管加工中に応力集中が発生し易くなるが、鋼管の降伏比が0.85以下であれば加工硬化分により、応力集中がより肉厚の厚い部分に移動することになり、結果として、拡管加工が周方向に均一に行われるようになる。そこで、本発明では、埋設拡管用油井管の降伏比は、0.85以下と限定する。同様の観点から、降伏比の上限値は0.85以下、下限値は0.70以上であることが、それぞれ望ましい。
【0028】
また、同様の観点から、埋設拡管用油井管の外径は73.03 〜339.73mmであり、埋設拡管用油井管の肉厚は5.0 〜18.0mmであり、さらに引張強度は450 〜900N/mm2 であることが望ましい。
(2) 本実施の形態の埋設拡管用油井管のC含有量は、下記(1) 式を満足するとともに、焼入れ焼戻し処理されてなる。ただし、(1) 式においてCはC含有量 (質量%) を示し、YSは降伏応力 (N/mm2 ) を示す。
【0029】
C≧8.3 ×10−10 (YS)3 −0.02 ・・・・・・・(1)
上述した拡管試験の結果、高い靱性を有する鋼管ほど、拡管加工性に優れていたことが判明した。
【0030】
ところで、井戸の従来の施工方法に供される鋼管では、高強度化および高靱性化を図るために高C材を使用して焼戻しマルテンサイト組織を有するものが主流であった。しかし、マルテンサイト組織を有するに十分なC量を添加してしまうと、低強度の鋼管を製造できなくなる。そこで、従来は、低強度鋼管については、熱処理を行わずに製造するか、あるいは焼準熱処理を行うことにより、製造されていた。しかし、熱処理を行わない鋼管や焼準熱処理を行った鋼管は、優れた靱性を保有していない。
【0031】
このため、井戸の従来の施工方法に供される鋼管に対して、高い加工量が加わる拡管加工を行うと、限界拡管率が低下しており、割れ等の加工不良を発生してしまう可能性があった。
【0032】
前述したように、本実施の形態の埋設拡管用油井管は、井戸内に挿入されて埋設された状態で拡管加工を行われ、このままで使用されるため、加工不良の発生抑制について高い信頼性を有することが重要である。このためには、優れた靱性を有することが好ましい。
【0033】
そこで、本実施の形態では、鋼管の降伏強度に応じてC含有量を制御すること、具体的には上記(1) 式を満足するようにC含有量を制御するとともに周知慣用の焼入れ焼戻し処理を行う。なお、この焼入れ焼戻し処理は、熱間圧延終了後にオーステナイト域の適当な温度に再加熱し、適当な時間均熱した後に例えば水焼入れを行い、その後にオーステナイト域以下の適当な温度で適当な時間焼戻し処理することが、例示される。
【0034】
これにより、焼き入れ焼戻し処理した鋼管の降伏比を0.85以下に低減できる。これにより、低強度から高強度の埋設拡管用油井管を製造することができる。
(3) 本実施の形態の埋設拡管用油井管は、目標の強度、靱性等の機械的性質を得るためにはC以外にさらに、Si、Mn、P、Sおよびsol.AlおよびNを必須元素として含有するとともに、Cr、Mo、Cu、Ni、Ti、Nb、VおよびCaを任意添加元素として含有する。以下、これらの元素についてもその含有量の限定理由を説明する。
【0035】
次に、各成分の限定理由について述べる。
Si : 0.1 〜 0.50 %
Siは、通常、鋼の脱酸を目的に添加され、また、焼戻軟化抵抗を高めて強度を上昇させる。脱酸の目的を達成するには0.1 %以上の添加が必要である。一方、0.50%を越えて添加すると、熱間加工性が著しく悪化する。そこで、本実施の形態では、Si含有量は0.1 %以上0.50%以下と限定する。
【0036】
Mn : 0.3 〜 1.5 %
Mnは、鋼の焼入性を増し、埋設拡管用油井管の強度確保に有効である。Mn含有量が0.3%未満であると強度および靱性がともに低下する。一方、Mn含有量が1.5 %を越えると、鋼の肉厚方向等での偏析を増加し、靱性を低下させる。そこで、本実施の形態では、Mn含有量は0.3 %以上1.5 %以下と限定する。
【0037】
P: 0.03 %以下
Pは、不純物として鋼中に不可避的に存在する。P含有量が0.03%を越えると、粒界に偏析して靱性を低下させる。そこで、本実施の形態では、P含有量は0.03%以下と限定する。同様の観点から望ましくは0.015 %以下である。
【0038】
S: 0.010 %以下
Sは、MnSまたはCaと結合した介在物を形成し、熱間圧延の際に延伸するため、靱性への悪影響が大きく、S含有量が0.010 %を超えると靱性を劣化させる。そこで、本実施の形態では、S含有量は0.010 %以下と限定する。同様の観点から望ましくは0.005 %以下である。
【0039】
sol.Al : 0.001 〜 0.05 %
Alは、脱酸のために必要な元素であり、sol.Alの含有量が0.001 %未満であると脱酸不足によって鋼質が劣化し、靱性が低下する。しかし、sol.Al含有量が0.05%を越えると、かえって靱性の低下を招くため好ましくない。そこで、本実施の形態では、sol.Al含有量は0.001 %以上0.05%以下と限定する。
【0040】
N: 0.010 %以下
Nは、不可避的に鋼中に存在するが、Al、TiさらにはNb等と結合して窒化物を形成する。特に、AlNやTiNが多量に析出すると、靱性に悪影響を及ぼす。そこで、本実施の形態では、N含有量は0.010 %以下と限定する。
【0041】
Cr : 1.50 %以下
Crは、焼入れ性を向上させる元素であり、炭酸ガス環境では炭酸ガス腐食を防ぐ役割があり、有益な元素である。しかし、一方で粗大な炭化物を形成しやすい元素でもあるため、適量に抑制すべきである。そこで、本実施の形態では、粗大な炭化物の形成を防ぐ観点からCr含有量の上限値は1.50%と限定する。Cr含有量の下限値は特に定める必要はなく、前述したように0%、すなわちCrは添加しなくてもよい。
【0042】
Mo : 0.80 %以下
Moには、焼入れ性を高める効果や、P等による脆化を抑制する効果等があり、有益な元素である。ただし、高価であるためにコスト上昇をもたらすとともに、炭化物の形態を左右する元素であるために多量の添加は粗大な炭化物の形成による悪影響を及ぼすことがある。そこで、本実施の形態では、Mo含有量は0.80%以下と限定する。また、Moは任意添加元素であるから添加しなくてもよい。
【0043】
Cu : 0.35 %以下
Cuは、固溶強化に寄与するが、Cu含有量が0.35%を超えると赤熱脆性による疵や脆化の影響が強くなる。そこで、本実施の形態では、Cu含有量は0.35%以下と限定する。また、Cuは任意添加元素であるから添加しなくてもよい。
【0044】
Ni : 0.50 %以下
Niは、Cuによる脆化を抑制する効果があり、かつ靱性向上に寄与する。しかし、Ni含有量が0.50%を超えると悪影響がある。そこで、本実施の形態では、Ni含有量は0.50%以下と限定する。また、Niは任意添加元素であるから添加しなくてもよい。
【0045】
Ti : 0.03 %以下
Tiは、TiN として高温域での結晶粗大化を防ぐことに効果がある。しかし、Ti含有量が0.03%を越えるとCと結合してTiCを生成する量が増加し、靱性に悪影響を及ぼす。そこで、本実施の形態では、Ti含有量は0.03%以下と限定する。また、Tiは任意添加元素であるから添加しなくてもよい。
【0046】
Nb : 0.03 %以下
Nbは、NbC、NbNを生成し、高温域での結晶粗大化を防ぐことに効果がある。しかし、Nb含有量が0.03%を超えると偏析や伸延粒の原因となる。そこで、本実施の形態では、Nb含有量は0.03%以下と限定する。また、Nbは任意添加元素であるから添加しなくてもよい。
【0047】
V: 0.2 %以下
Vは、VCを形成し、鋼の高強度化に寄与する。しかし、V含有量が0.2 %を越えると、靱性に悪影響を及ぼす。そこで、本実施の形態では、V含有量は0.2 %以下と限定する。また、Vは任意添加元素であるから添加しなくてもよい。
【0048】
Ca : 0.005 %以下
Caは、硫化物の形態制御に寄与し、靱性改善等に効果がある。しかし、Ca含有量が0.005 %を超えると介在物が多量に発生する。そこで、本実施の形態では、Ca含有量は0.005%以下と限定する。また、Caは任意添加元素であるから添加しなくてもよい。
【0049】
本実施の形態の埋設拡管用油井管の上記以外の組成は、Feおよび不可避的不純物である。
この本実施の形態の埋設拡管用油井管は、前述したように、井戸内に挿入された状態で拡管加工を行われて使用されるため、素材鋼管自体の製法は特に限定を要するものではない。例えば、鋼板の突き合わせ部分を溶接した電縫鋼管 (ERW)や、ビレットから継ぎ目無く製管された継目無鋼管等を適用することができる。
【0050】
このように、本実施の形態の埋設拡管用油井管は、含有する成分を最適に制御することにより降伏比を低く保っている。このため、井戸に挿入された状態で拡管加工を行われる際の冷間における拡管鋼管拡管性に優れており、このままの状態で確実に使用することができ、前述した井戸の新しい施工方法に供され得るものである。このため、堀削コストを削減することができる新しい井戸設計を採用することができる。
【0051】
【実施例】
さらに、本発明を実施例を参照しながら詳細に説明する。
表1に示す組成を有するビレットを、1200〜1250℃に加熱した後、マンネスマン−マンドレル製管法により外径:88.9mm、および肉厚:7.34mmの寸法を有する継目無鋼管を製造した。
【0052】
【表1】
これらの継目無鋼管について、表2に示す焼入れ焼戻し処理QT、焼準熱処理NOR 、および熱処理を行わない圧延ままARのいずれかを行い、作成した鋼管の管軸方向からAPI 規格5CTに規定された弧状引張試験片およびシャルピー試験片を採取し、試料No.1〜試料No.29 とした。
【0053】
なお、焼入れ焼戻し処理QTでは、焼入れ炉でオーステナイト域 (890 ℃〜980 ℃) に再加熱して約20分間均熱をした後、水焼入れを行い、オーステナイト域以下の温度 (450 ℃〜700 ℃) で30分間均熱する焼戻し処理を行った。また、焼準熱処理NOR では、焼入れ炉でオーステナイト域 (890 ℃〜980 ℃) に再加熱し、約20分間均熱する処理を行った。
【0054】
そして、試料No.1〜試料No.29 について弧状引張試験およびシャルピー試験と、図1に示す鋼管試験機を用いた拡管試験とを行った。なお、シャルピー試験は0℃で行った。
【0055】
結果を表2にまとめて示す。なお、経済的効果を享受できるか否かという観点から、限界拡管率:1.3 を超えるものを良好な拡管性を有する鋼管として評価した。
【0056】
【表2】
表2から明らかなように、焼入れ焼戻し処理が施された鋼管の内、降伏比が0.85以下である試料No.1〜試料No.14 は、いずれも、限界拡管率が1.3 を超えており、良好な拡管加工性を有することがわかる。
【0057】
一方、焼入れ焼戻し処理が施された鋼管の内、降伏比が0.85を超える試料No.15〜試料No.25 は、いずれも、限界拡管率1.3 を下回り、拡管加工性が良好でなかった。したがって、降伏比0.85以下を満足しなければ、良好な拡管加工性を有することができない。
【0058】
また、非熱処理品AR (試料No.28 および試料No.29)、および焼準熱処理NOR(試料No.26および試料No.27)も、限界拡管率:1.3 を安定して超えることができなかった。
【0059】
図2には、焼入れ焼戻し処理を行った試料No.1〜試料No.25 について、C量と降伏応力との関係をグラフで示す (非熱処理品および焼準熱処理品を除く) 。図2のグラフでは、降伏比が0.85以下であるものを○印で示し、降伏比が0.85を下回るものを×印で示した。
【0060】
図2のグラフから、C量と降伏応力との間には、降伏比が変化するある境界が存在することが分かる。この試験結果に基づいてこの関係を数式で求めると、図2のグラフにおける式aとなる。この式aは、C≧8.3 ×10−10 (YS)3 −0.02である。すなわち、C≧8.3×10−10 (YS)3 −0.02を満足することにより、降伏比を0.85以下に制御できることがわかる。
【0061】
このように、優れた拡管加工性を有するためには、降伏比0.85以下であることが必要であり、さらに焼入れ焼戻し処理を実施することが望ましいことがわかる。さらに、焼入れ焼戻し鋼管にて降伏比0.85以下を得るためには、C量と降伏応力とが式aの関係を満足することが望ましい。
【0062】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、拡管加工性に優れた埋設拡管用油井管を提供すること、より具体的には、井戸に挿入された状態で拡管加工を行われ、このままで使用される埋設拡管用油井管を提供することができた。
【0063】
かかる効果を有する本発明の意義は、極めて著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】拡管試験機を示す説明図である。
【図2】実施例において、焼入れ焼戻し処理を行った試料について、C量と降伏応力との関係を示すグラフである。
【図3】井戸の従来の施工を模式的に示す垂直断面図である。
【図4】図4(a) 〜図4(c) は、新しい施工方法による井戸の施工を模式的に示す説明図である。
【図5】新しい施工方法により施工された井戸の一例を示す説明図である。
Claims (4)
- 焼入れ焼戻し処理を施されてなるとともに降伏比が0.85以下であることを特徴とする埋設拡管用油井管。
- C含有量が下記(1) 式を満足する請求項1に記載された埋設拡管用油井管。
C≧8.3 ×10−10 (YS)3 −0.02 ・・・・・・・(1)
ただし、CはC含有量 (質量%) を示し、YSは降伏応力 (N/mm2 ) を示す。 - 質量%で、Si:0.1 〜0.50%、Mn:0.3 〜1.5 %、P:0.03%以下およびS:0.010 %以下、sol.Al:0.001 〜0.05%およびN:0.010 %以下を含有する請求項2に記載された埋設拡管用油井管。
- 質量%で、Cr:1.50%以下、Mo:0.80%以下、Cu:0.35%以下、Ni:0.50%以下、Ti:0.03%以下、Nb:0.03%以下、V:0.2 %以下およびCa:0.005 %以下を含有する請求項3に記載された埋設拡管用油井管。
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