JP3562378B2 - 高分子電解質型燃料電池システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
高分子電解質型燃料電池を用いて発電を行う、高分子電解質型燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
以下に、従来より提案されている高分子電解質型燃料電池システムについて説明する。図5に示すように、従来の高分子電解質型燃料電池システムは、燃料ガスと酸化ガスを用いて発電を行う高分子電解質型の燃料電池1と、天然ガスなどの原料を水蒸気改質し水素に富んだ燃料ガスを生成する燃料ガス生成器2と、発電に必要な水素量の1.2倍程度の水素を含む量の燃料ガスを供給するように原料および水の流量を制御する原料制御器3と、燃料ガスを加湿する燃料側加湿器4と、燃料電池1から排出される残余燃料ガス中の水分を分離する燃料側気水分離器5と、原料を燃焼して燃料ガス生成器2を原料から水素に富んだ燃料ガスを生成するのに必要な温度(約700℃)まで昇温する原料燃焼器6と、原料燃焼器6と共に、残余燃料ガスを燃焼して燃料ガス生成器2を原料から水素に富んだ燃料ガスを生成するのに必要な温度まで昇温する残余燃料ガス燃焼器7と、酸化ガスとしての空気を燃料電池1に供給するブロア8と、供給空気を加湿する空気側加湿器9と、燃料電池1から排出される空気中の水分を分離する空気側気水分離器10と、燃料電池1で発生する熱を外部へ放出する熱放出器11とを有している。
【0003】
熱放出器11は、燃料電池1に水を送って冷却する冷却配管12と、配管内の水を循環させ燃料電池1の温度を制御する温度制御器13と、熱を外部へ放出する熱交換器14を備えている。さらに、燃料電池1で発生した熱を給湯に利用できるように、熱交換器14から温水配管15を通して貯湯漕16を接続する。
【0004】
また、図6に示すように、燃料燃焼器6および残余燃料ガス燃焼器7は、ガス供給路6a、7aと空気供給ファン6b、7bとバーナー6c、7cを有し、供給される水素ガスの量に対して空燃比が1.2程度の空気が供給されるように空気供給ファン6b、7bが制御されバーナー6c、7cで燃焼される。燃料電池1に供給する燃料ガスは、水素以外に水蒸気と二酸化炭素や極微量の一酸化炭素を含む。燃料電池1からは、発電に用いられなかった量の水素と水蒸気と二酸化炭素と一酸化炭素の混合ガスが燃料電池1より排出される。排出された残余燃料ガスは、残余燃料ガス燃焼器7に送られて燃焼される。
【0005】
一方、燃料電池1には、発電に必要な酸素量の3倍程度の酸素を含む量の空気を供給する。熱放出器11においては、冷却配管12内の水は、温度制御器13によって燃料電池1の温度が80℃程度になるように流量が制御される。冷却配管12内の水の温度は、燃料電池1を出たところで80℃程度であり、燃津交換器14にて外部に熱を放出し80℃以下の温度になった後、燃料電池1へ流入する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例のような燃料電池システムでは、燃料ガス生成器2を700℃程度まで昇温するために、原料燃焼器6および残余燃料ガス燃焼器7の燃焼温度を1000℃以上にする必要がある。しかしながら、燃料電池1から排出される残余燃料ガスに含まれる水素の割合は非常に低いため、残余燃料ガス燃焼器7の燃焼温度を1000℃以上高温に保つことは非常に困難であり、燃料ガス燃焼器7の温度低下が燃料ガス生成器2の温度状態を不安定にし、燃料ガスの安定供給を損なう。
【0007】
さらに、燃料電池システムの発電電力は、電力負荷に応じて刻々と変化するのが通常であり、それにつれて、燃料電池1から排出される残余燃料ガスの量およびガス中に含まれる残余水素量が変化するため、残余燃料ガス燃焼器7において空気供給ファン7bを用いた燃焼制御を行うのが非常に困難となる。
【0008】
また、高分子電解質型の燃料電池1は、80℃程度で運転されるため、熱放出器11から放出される熱の温度レベルも70℃程度である。そのため、コージェネレーションを行う際の熱利用の用途については、130℃程度以上の温度レベルが必要となる吸収式冷凍機の熱源に適さず、給湯用途に限られてしまう。
【0009】
加えて、システムの起動時においては、燃料電池1は常温であるため十分な発電を行うことが出来きないので、昇温する手段が必要である。燃料ガス生成器2で生成した高温の燃料ガスを燃料電池1に流通せしめて昇温することも考えられるが、燃料ガスは気体であり比熱が小さいため80℃程度まで燃料電池1を昇温するのに長い時間が必要となる。また、燃料ガス生成器2も700℃程度まで昇温されていないときには、燃料ガス中の一酸化炭素濃度が高いため、燃料電池1に燃料ガスを流通させることが出来ない。昇温用のヒータを用いる場合には、電力を消費してしまう問題がある。
【0010】
本発明は、上述したこのような従来の高分子電解質型燃料電池システムが有する課題を考慮して、安定的なコージェネレーションシステムの運転と素早いシステム起動を実現すると共に、熱利用の用途ととして吸収式冷凍機の熱源を採用可能とする高分子電解質型燃料電池システムを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するため本発明の高分子電解質型燃料電池システムは、高分子電解質型燃料電池と、水素を主成分とする燃料ガスを生成する燃料ガス生成器と、前記高分子電解質型燃料電池で発生する熱を放出する熱放出器と、前記高分子電解質型燃料電池が排出する残余燃料ガスを燃焼し、発生した熱を前記熱放出器に伝達する残余燃料ガス燃焼器とを備えたことを特徴とする。
【0012】
このとき、残余燃料ガス燃焼器の燃焼装置に触媒燃焼器を用いたことが有効である。
【0013】
また、熱放出器より放出される熱を、吸収式冷凍機の熱源に用いたことが有効である。
【0014】
さらに、高分子電解質型燃料電池の起動前に、残余燃料ガス燃焼器より熱放出器へ伝達される熱により前記高分子電解質型燃料電池を昇温することが有効である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における高分子電解質型燃料電池システムを示す構成図である。本実施の形態における高分子電解質型燃料電池システムは、燃料ガスと酸化ガスを用いて発電を行う高分子電解質型の燃料電池1と、天然ガスなどを原料を水蒸気改質し、水素に富んだガスを生成する燃料ガス生成器2と、発電に必要な水素量の1.2倍程度の水素を含む量の燃料ガスを供給するように原料および水の流量を制御する原料制御器3と、燃料ガスを加湿する燃料側加湿器4と、燃料電池1から排出される残余燃料ガス中の水分を分離する燃料側気水分離器5と、原料を燃焼して燃料ガス生成器2を原料から水素に富んだ燃料ガスを生成するのに必要な温度(約700℃)まで昇温する原料燃焼器6と、残余燃料ガスを燃焼してその燃焼熱を、燃料電池1で発生する熱を外部へ放出する熱放出器11に伝達する残余燃料ガス燃焼器17と、酸化ガスとしての空気を燃料電池1に供給するブロア8と、供給空気を加湿する空気側加湿器9と、燃料電池1から排出される空気中の水分を分離する空気側気水分離器10とを有している。
【0017】
熱放出器11は、燃料電池1に水を送って冷却する冷却配管12と、配管内の水を循環させ燃料電池1の温度を制御する温度制御器13と、熱を外部へ放出する熱交換器14を備えている。さらに、燃料電池1で発生した熱を給湯に利用できるように、熱交換器14から温水配管15を通して貯湯漕16を接続する。なお、上記の各部材において、図5で示した従来の高分子電解質型燃料電池システムのものと同じ機能を有するものについては、同一符号を付与しており、それらの機能の詳細は、図5で示した従来の高分子電解質型燃料電池システムのものに準ずるものとする。
【0018】
次に、このような本実施の形態の動作を説明する。燃料電池1に供給した燃料ガスのうち、発電に用いらず燃料電池1より排出された残余燃料ガスは、残余燃料ガス燃焼器17に送られて燃焼される。燃焼により発生した熱は、熱放出器11へ伝達される。熱放出器11において、冷却配管12内の水は、燃料電池1、残余燃料ガス燃焼器17からの熱を受ける部分、熱交換器14、温度制御器13という経路で流通し、温度制御器13によって燃料電池1の温度が80℃程度になるように流量が制御される。冷却配管12内の水の温度は、燃料電池1を出たところで80℃程度であり、残余燃料ガス燃焼器17からの熱を受けてさらに昇温される。その後、熱交換器14にて外部に熱を放出し80℃以下の温度になった後、温度制御器13にて再び燃料電池1へ流入する。
【0019】
これにより、残余燃料ガス燃焼器17の燃焼温度は100℃弱でも十分であり、残余燃料ガス中の水素成分が少なくとも、安定した燃焼を実現することができると共に、発電量が変化して残余燃料ガス自体の量や内部に含まれる水素の割合が変化しても、安定した残余燃料ガスの燃焼を実現する。よって安定した発電と熱供給を両立したコージェネレーションシステムが実現できる。
【0020】
さらに残余燃料ガス燃焼器17を触媒燃焼器で構成することにより、燃焼に必要な空気供給ファンが不要になり、より安定しかつ、高効率なコージェネレーションシステムが実現できる。
【0021】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を図面を参照して説明する。図2は、本発明の第2の実施の形態における高分子電解質型燃料電池システムを示す構成図である。本実施の形態における高分子電解質型燃料電池システムは、熱交換器14から熱供給する装置として吸収式冷凍機18を用いることに関する点以外は、上述した第1の実施の形態における高分子電解質型燃料電池システムと同様である。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と基本的に同様のものについては、同一符号を付与し、説明を省略する。また、特に説明のないものについては、第1の実施の形態と同じとする。 熱放出器11において、冷却配管12内の水は、燃料電池1、残余燃料ガス燃焼器17からの熱を受ける部分、熱交換器14、温度制御器13という経路で流通し、温度制御器13によって燃料電池1の温度が80℃程度になるように流量が制御される。
【0022】
冷却配管12内の水の温度は、熱交換器14の入口で130℃程度以上の水蒸気になるように、残余燃料ガス燃焼器17の燃焼温度を確保すべく、原料制御器3は原料および水の流量を制御して、残余燃料ガス17に供給される残余燃料ガス中の水素を制御する。熱交換器14の入口で130℃程度以上の温度が確保されるときには、原料制御器3は発電に必要な水素量の1.2倍程度の水素を含む量の燃料ガスを供給するように原料および水の流量を制御する。これにより、従来、高分子電解質型燃料電池システムの熱利用の形態として困難とされてきた吸収式冷凍機の運転を実現することが可能になる。
【0023】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図3は、本発明の第3の実施の形態における高分子電解質型燃料電池システムを示す構成図である。本実施の形態における高分子電解質型燃料電池システムは、流路切換器19を有する点以外は、上述した第1の実施の形態における高分子電解質型燃料電池システムと同様である。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と基本的に同様のものについては、同一符号を付与し、説明を省略する。また、特に説明のないものについては、第1の実施の形態と同じとする。
【0025】
システム起動時において、燃料ガス生成器2が十分に昇温されておらず、燃料ガス中の一酸化炭素濃度が高い場合、流路切換器19は、図4aに示すように燃料側加湿器4からでた燃料ガスを燃料側気水分離器5へ送り、燃料電池1へは燃料ガスを流通させない。このとき、熱放出器11においては、残余燃料ガス燃焼器17の燃焼熱を用いて冷却配管12内の水を昇温して、燃料電池1へ流通させることにより燃料電池1の昇温を行う。その後、燃料ガス生成器2にて生成される燃料ガス中の一酸化炭素濃度が、燃料電池1を劣化させないレベルまで低下したら、流路切換器19は、図4bに示すように、燃料ガスを燃料電池1へ流通せしめ、燃料電池1から排出されるガスを燃料側気水分離器5へ送る。
【0026】
これにより、燃料電池システムの起動において、燃料電池1を昇温する手段を別にもうける必要が無く、無駄なエネルギー消費が発生することがない。また、システム起動時点から燃料電池1の昇温を行うことができるため、起動時間が短い燃料電池システムが実現される。なお、本発明において、システム起動を本発明の第3の実施の形態を用いて説明したが、燃料ガス生成器2の起動時に生成される燃料ガスの一酸化炭素濃度が、燃料電池1を劣化させる程高くない場合は、流路切換器19を必要とせず、本発明の第1の実施の形態、第2の実施の形態を用いても同様の効果が得られる。さらに、その場合には、燃料ガスをいち早く燃料電池1へ供給できるため、より早いシステム起動が実現できる。
【0027】
さらに、流路切換器19は、システム起動時に燃料生成器2からの燃料ガスを燃料側気水分離器5に送る構成にしても同様の効果が得られることは明白であり、本発明の範囲を超えるものではない。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したところから明らかなように、本発明は、安定的かつ高効率なコージェネレーションシステムの運転と素早いシステム起動を実現すると共に、熱利用の用途ととして吸収式冷凍機の熱源に採用可能とする高分子電解質型燃料電池システムを提供することができる。
【0029】
すなわち、残余燃料ガス燃焼器17の燃焼熱を熱放出器11に伝達することにより、残余燃料ガスの量や水素含有量に左右されず、安定した発電と熱供給を両立したコージェネレーションシステムが実現できる。また、従来、高分子電解質型燃料電池システムの熱利用の形態として困難とされてきた吸収式冷凍機の運転を実現することが可能になる。
【0030】
さらに、残余燃料ガス燃焼器17を触媒燃焼器で構成することにより、燃焼に必要な空気供給ファンが不要になり、より安定しかつ、高効率なコージェネレーションシステムが実現できる。そして、燃料電池システムの起動において、燃料電池1を昇温する手段を別にもうけずに、システム起動時点から燃料電池1の昇温を行うことができるため、起動時間が短く、無駄なエネルギー消費が発生することのない燃料電池システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における高分子電解質型燃料電池システムを示す構成図
【図2】本発明の第2の実施の形態における高分子電解質型燃料電池システムを示す構成図
【図3】本発明の第3の実施の形態における高分子電解質型燃料電池システムを示す構成図
【図4】本発明の第3の実施の形態における流路切換器の動作を示す構成図
【図5】従来の高分子電解質型燃料電池システムを示す構成図
【図6】従来の高分子電解質型燃料電池システムにおける燃焼器を示す構成図
【符号の説明】
1 燃料電池
2 燃料ガス生成器
3 原料制御器
4 燃料側加湿器
5 燃料側気水分離器
6 原料燃焼器
8 ブロア
9 空気側加湿器
10 空気側気水分離器
11 熱放出器
12 冷却配管
13 温度制御器
14 熱交換器
15 温水配管
16 貯湯漕
17 残余燃料ガス燃焼器
Claims (4)
- 高分子電解質型燃料電池と、水素を主成分とする燃料ガスを生成する燃料ガス生成器と、前記高分子電解質型燃料電池で発生する熱を放出する熱放出器と、前記高分子電解質型燃料電池が排出する残余燃料ガスを燃焼し、発生した熱を前記熱放出器に伝達する残余燃料ガス燃焼器とを備えたことを特徴とする高分子電解質形燃料電池システム。
- 残余燃料ガス燃焼器の燃焼装置に触媒燃焼器を用いたことを特徴とする請求項1記載の高分子電解質型燃料電池システム。
- 熱放出器より放出される熱を、吸収式冷凍機の熱源に用いたことを特徴とする請求項1または2記載の高分子電解質型燃料電池システム。
- 高分子電解質型燃料電池の起動前に、残余燃料ガス燃焼器より熱放出器へ伝達される熱により前記高分子電解質型燃料電池を昇温することを特徴とする請求項1、2または3に記載の高分子電解質型燃料電池システム。
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